JP4504177B2 - 層状チタン酸ナノシートの製造方法 - Google Patents
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また、チタン化合物の中には、厚さがナノスケールのシートを形成するものがある(例えば、非特許文献1及び2、並びに特許文献1参照)。
チタン化合物ナノシートは層状チタン化合物をソフト化学的な処理により結晶構造の基本単位である層にまで剥離することにより得られ、分子レベルの厚み(nmレベル)に対して横方向にはその数百倍以上のサイズ(μmレベル)をもち、高表面積であることから、各種用途への応用が期待される。
しかしながら、この方法は、アミン類と水とを混合するものであるため、水と相溶性が乏しい長鎖のアミン類を適用することは困難であり、有機化合物に対する分散性の優れた層状チタン酸ナノシート分散液を製造することは困難であった。
この方法は、具体的には、まずCs2CO3:TiO2(モル比)=1:5.2の混合粉末を800℃で20時間焼成して、レピドクロサイト型層状チタン酸化物であるCs0.7Ti1.825□0.175O4(□は空孔)を合成し、この粉末を1モル/L程度の塩酸水溶液中で攪拌することで、層状構造を維持したまま、層間のCsイオンを全て水素イオンに入れ換えて、Cs0.7Ti1.825□0.175O4・H2Oの組成をもつ水素型物質に誘導する。次いで、これに塩基物質であるテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを含む溶液を作用させ、層間に上記塩基物質をインターカレートさせ、コロイド液を得る方法である。
しかしながら、この方法は、チタンを含有する原料を高温で焼成する必要があり、その後の操作も煩雑である。
しかしながら、この方法で用いる第4級アルキルアンモニウムヒドロキシドは、メチル基又はペンチル基を有する化合物であり、得られる層状チタン酸ナノシート水溶液は有機化合物に対する分散性が悪く、有機反応への適用性が悪いという欠点があった。
かかる観点から、層状チタン酸ナノシート、特に有機物質に対する分散性に優れた層状チタン酸ナノシートを簡便に効率よく製造する方法が求められていた。
すなわち、本発明は、
(1)予めチタン源を加水分解して得られた水酸化チタンとアミン類とを接触させる層状ナノシートの製造方法であって、該水酸化チタンが、チタンアルコキシドのアルコール溶液と水を混合し、加水分解して得られるものであり、該アミン類が、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、水酸化チタンとアミン類とを10〜150℃で接触させる、レピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法、
(2)予めチタン源を加水分解して得られた水酸化チタンとアミン類とを接触させる層状ナノシートの製造方法であって、該水酸化チタンが、チタン塩の加水分解により得られるものであり、該アミン類が、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、水酸化チタンとアミン類とを10〜150℃で接触させる、レピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法、及び
(3)上記(1)、(2)の製造方法により得られるレピドクロサイト型層状チタン酸ナノシート、
を提供する。
ここで層状チタン酸ナノシートは、チタンを中心として8個の酸素が配位した8面体構造を基本ユニットとし、このユニットが平面状に並んだ構造を有する。本発明において、層状チタン酸ナノシートは、具体的には3チタン酸、4チタン酸、5チタン酸、6チタン酸、レピドクロサイト型などの構造を有するチタン酸ナノシートを包含する。
本発明の方法においては、アミン類として、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種が用いられる。
前記アミン類としては、具体的には、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクチルアミンなどの炭素数2以上のアルキル基を有するアミン類が挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの置換アミン類も用いることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中では、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルオクチルアミンなどの炭素数4以上、好ましくは炭素数6以上のアルキル基を有するアミン類が特に好適に用いられる。
また、ナノシート生成の観点から、アミン類濃度9mmol/Lの水溶液におけるpHが9以上であることが好ましい。
本発明の方法においては、水酸化チタンを生成するチタン源として、加水分解により水酸化チタンを生成するチタンアルコキシド又はチタン塩が用いられる。
ここで、水酸化チタンは、Ti(OH)2、Ti(OH)3、Ti(OH)4又はH4TiO4なる組成式を有するものを包含する。
チタンアルコキシドとしては、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、一般的な入手のし易さ、取り扱い性の観点からチタンテトライソプロポキシドが好ましい。
本発明においては、このチタンアルコキシドの加水分解は、チタンアルコキシドのアルコール溶液と水を混合し、必要により加熱することにより行われる。
前記チタンアルコキシドのアルコール溶液の調整には、アルコールとして、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコールなどが好ましく用いられる。
加水分解において加える水分量は、水酸化チタンを得るために必要な量以上であればよいが、チタン源の質量に対して5〜50倍の質量が好ましく、10〜15倍の質量がより好ましい。
加水分解の温度及び時間は、用いるチタンアルコキシドに応じ、適宜選択することができる。
チタン塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、二塩化チタン等の塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタニルなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、一般的に入手しやすく、チタン原料として汎用される四塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルがより好ましい。
チタン塩は、水と混合することにより、又は水との混合後、加熱することにより水酸化チタンを生成することができるが、その際、更にアルカリを共存させてもよい。水酸化チタンを生成させる際に共存させるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類水酸化物が挙げられる。更にはアンモニアや上記アミン類もアルカリとして使用することができる。これらの中では、入手のし易さ、取り扱い性の観点から、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアミン類がより好ましい。アルカリの添加量は、チタン塩水溶液のpHが2以上となる量、より好ましくはpHが4以上となる量が好ましい。
加水分解において加える水分量は、水酸化チタンを得るために必要な量以上であればよいが、チタン源の質量に対して5〜50倍の質量が好ましく、10〜15倍の質量がより好ましい。
加水分解の温度及び時間は、用いるチタン塩に応じ、適宜選択することができる。
なお、チタンとともに、他の元素、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、鉄などを共存させ、複合化することもできる。
得られた水酸化チタンは、溶液に分散したまま、あるいは溶媒を除去して粉末として用いることができる。
本発明の方法においては、このようにして得られた水酸化チタンとアミン類とを混合し、接触させることにより、層状チタン酸ナノシートを製造するが、混合の際には、水を共存させることが好ましい。共存させる水分量は、水酸化チタンとアミン類の合計のモル数以上あればよい。
また、アミン類に相溶性の高い溶媒を添加することで、炭素数の多いアルキル基を有するアミン類の溶解性を向上させることができ、好ましい。かかる溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコールなどのアルコール、アセトン、テトラヒドロフランなどの含酸素有機溶媒、及びアセトニトリルなどの含窒素有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコールが好ましい。
水酸化チタンを混合する際の温度は、特に限定されないが、2〜200℃で有機カチオン含有層状チタン酸のナノシートが好ましく生成する。長鎖アミンの安定性の観点から、10〜150℃がより好ましく、20〜100℃が更に好ましい。反応時間は0.1〜20時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
また、層構造を発達させるために、アミン類と水酸化チタンを混合した後に、更に50〜200℃で水熱合成を行ってもよい。
このようにして、有機カチオン含有層状チタン酸ナノシートを含有する透明分散液を得ることができる。また、乾燥により該分散液から水又は溶媒を除去することで、有機カチオン含有層状チタン酸ポリアニオンナノシートが製造される。
このとき用いられる有機溶媒としては、水はもとより、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネートなどの含酸素有機溶媒、及びアセトニトリルなどの含窒素有機溶媒などを挙げることができる。
分散液中のチタン濃度は、酸化チタン(TiO2)換算で0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%が更に好ましい。
本発明において、X線回折により、層間隔はカチオンサイズが大きくなるにしたがって増大することが確認されており、有機カチオンは層間に存在しているものと考えられる。このことから、特に炭素数2以上の有機カチオンを含有する層状チタン酸ナノシートが、有機溶媒への分散性を良好にしているものと推定される。
実施例1
四塩化チタン1.18mmol(0.22g)を蒸留水150gに氷冷しながら溶解し、溶解後、室温になるまで放置した。その後、5%アンモニア水をpHが7になるまで添加し、水酸化チタンを得た。
水酸化チタンを濾別、洗浄後、再度蒸留水150gを添加し、攪拌しながら10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液3.53g(1.36mmol)を添加した。攪拌を続けると、無色透明溶液になった。このときのTiO2換算濃度は0.06%であり、Ti/テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのモル比は0.87であった。
得られた無色透明溶液をガラス板上に数滴滴下し、乾燥させた膜を用いてX線回折分析を行った。その結果、図1に示すようなX線回折パターンが得られた。このX線パターンでは、d値で16.60(角度2θで5.32°)付近に主ピーク(第1ピーク)が認められ、次いで第2ピークがd=8.56(10.33°)付近に、第3ピークがd=5.71(15.51°)付近に認められた。第1ピークに対して第2ピーク、第3ピークのd値はそれぞれ約1/2及び1/3になっていることから層構造であることが確認でき、第1ピークの相関距離がテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの分子サイズに相当することより、層間に有機カチオンが挟まれた構造と推定された。また、無色透明溶液をラマン分光分析した結果、層状チタン酸(レピドクロサイト型層状酸化チタン)に特有の278cm-1、442cm-1、702cm-1付近にピークが得られた。
前記無色透明溶液を、真空乾燥機を用いて60℃で乾燥し、白色粉体を得た。この粉体0.1gに対して水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランの各溶媒を9.9g添加して攪拌した。攪拌後の様子を目視観察した結果、全ての溶液で透明溶液となっており、チタン酸ナノシートが十分に分散した分散溶液が得られたことを確認できた。
イソプロピルアルコール10mLにチタンテトライソプロポキシド0.34g(1.18mmol)を溶解させたチタン源を、攪拌している蒸留水150gに加えて、加水分解し、生成した水酸化チタンを含む懸濁液を得た。
この水酸化チタンを含む懸濁液を攪拌しながら、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液3.53g(1.36mmol)を添加した。攪拌を続けると、無色透明溶液になった。このときのTiO2換算濃度は0.06%であり、Ti/テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのモル比は0.87であった。
得られた無色透明溶液を用いて、実施例1と同様に乾燥してX線回折分析を行った。その結果、図1に示すように層構造を示すX線回折パターンが得られ、生成したチタン酸が層間に有機カチオンを挟んだ層構造であることが確認できた。
前記無色透明溶液を、実施例1と同様に乾燥して得た白色粉体を用いて、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランの各溶媒との分散性を評価した結果、全ての溶液で透明溶液となっており、チタン酸ナノシートが各溶媒に十分に分散していることを確認できた。
実施例3
30%硫酸チタン溶液0.94g(硫酸チタン換算:1.18mmol)を蒸留水150gに溶解した。その後、5%アンモニア水をpHが7になるまで添加し、水酸化チタンを得た。
水酸化チタンを濾別、洗浄後、再度蒸留水150gを添加し、攪拌しながら10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液3.53g(1.36mmol)を添加した。攪拌を続けると、無色透明溶液になった。このときのTiO2換算濃度は0.06%であり、Ti/テトラブチルアンモニウムヒドロキシドのモル比は0.87であった。
得られた無色透明溶液をガラス板上に数滴滴下し、乾燥させた膜を用いてX線回折分析を行った。その結果、図1に示すように層構造を示すX線回折パターンが得られ、生成したチタン酸が層間に有機カチオンを挟んだ層構造であることが確認できた。また、無色透明溶液をラマン分光分析した結果、層状チタン酸(レピドクロサイト型層状酸化チタン)に類似するピークが得られた。
前記無色透明溶液を、真空乾燥機を用いて60℃で乾燥し、白色粉体を得た。この粉体0.1gに対して水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランの各溶媒を9.9g添加して攪拌した。攪拌後の様子を目視観察した結果、全ての溶液で透明溶液となっており、チタン酸ナノシートが十分に分散した分散溶液が得られたことを確認できた。
Claims (7)
- 予めチタン源を加水分解して得られた水酸化チタンとアミン類とを接触させる層状ナノシートの製造方法であって、該水酸化チタンが、チタンアルコキシドのアルコール溶液と水を混合し、加水分解して得られるものであり、該アミン類が、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、水酸化チタンとアミン類とを10〜150℃で接触させる、レピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法。
- チタンアルコキシドが、チタンテトライソプロポキシドである、請求項1に記載のレピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法。
- 予めチタン源を加水分解して得られた水酸化チタンとアミン類とを接触させる層状ナノシートの製造方法であって、該水酸化チタンが、チタン塩の加水分解により得られるものであり、該アミン類が、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、水酸化チタンとアミン類とを10〜150℃で接触させる、レピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法。
- チタン塩が、四塩化チタン、硫酸チタン及び硫酸チタニルから選ばれる1種又は2種以上である、請求項3に記載のレピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法。
- アミン類が、炭素数2以上のアルキル基を有するものである、請求項1〜4のいずれかに記載のレピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法。
- 水酸化チタンとアミン類の混合比率が、水酸化チタン/アミン類のモル比で0.1〜2である、請求項1〜5のいずれかに記載のレピドクロサイト型層状チタン酸ナノシートの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる、レピドクロサイト型層状チタン酸ナノシート。
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