JP4813770B2 - 動物プランクトン用飼料及びそれを用いた動物プランクトンの培養方法 - Google Patents

動物プランクトン用飼料及びそれを用いた動物プランクトンの培養方法 Download PDF

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Description

本発明は、ラビリンチュラ類に属する微生物を含有する動物プランクトン用飼料及びそれを用いた動物プランクトンの培養方法に関する。
魚類及び甲殻類の種苗生産には、初期飼料としてワムシ類、アルテミア、ミジンコ類などの動物プランクトンが必須の餌料となる。近年の魚類栄養学の進歩によりDHAなどのω−3系高度不飽和脂肪酸が海産魚、甲殻類の必須脂肪酸であることが明らかにされ、これら動物プランクトン中のω−3系高度不飽和脂肪酸含量が種苗生産の可否を大きく左右することが示されている。我が国の種苗生産現場においてもω−3系高度不飽和脂肪酸の重要性は広く認識され、動物プランクトンを仔魚に給餌する前にω−3系高度不飽和脂肪酸を用いて栄養強化処理されることが多い。
例えば、ワムシ・ミジンコの場合、通常はナンノクロロプシス、クロレラ、酵母、テトラセルミス、イソクリシスなどの、DHAを全く含まないか、少量しか含有しない飼料を与えて1〜数日間増殖させる(1次培養)。このとき得られるワムシ・ミジンコは、仔魚や幼生の必須脂肪酸要求を十分満足するだけのDHAを含有していない。したがって、このワムシ・ミジンコの栄養価を改善するために、1次培養後にDHAを豊富に含有する飼料を0.5〜24時間与えて栄養強化を行う(2次培養)。この2次培養に用いられる飼料としてDHA強化ユーグレナ、DHA強化クロレラ、DHAエチルエステル、魚油含有マイクロカプセル、魚卵加工物、DHA含有藻類などが市販されている。いずれの市販飼料を用いても、0.5〜24時間の栄養強化処理で相当量のDHAをワムシ・ミジンコに強化できる。
しかし、これらDHA強化飼料のうち、ほとんどの飼料は2次培養にしか使用できず、もし1次培養に使用すると水質悪化やワムシ・ミジンコの斃死などの問題を引き起こす。1次培養と2次培養の両方に使用できる市販飼料はDHA強化クロレラのみであるが、DHA強化クロレラをワムシの1次培養に使用すると、ワムシ培養水中の細菌数増加、脂質過酸化、奇形発生などの問題が生じることがある。さらにDHA強化クロレラはクロレラ濃縮液として市販されており、冷蔵輸送・冷蔵保管が不可欠なことから流通経路や流通コストに問題があった。しかし、スプレードライ、凍結乾燥などの方法で乾燥すると極端に餌料価値が低下し、もはやワムシ培養餌料としては使用不可となるため、DHA強化クロレラに関しては、流通や保管に有利な乾燥品は実用化されていない。
また、アルテミアの場合、市販の乾燥卵を海水中で孵化・開口させたあとに、DHA強化ユーグレナ、DHAエチルエステル、魚油含有マイクロカプセル、魚卵加工物、DHA含有藻類などを原料とするDHAを高濃度に含んだ含有市販飼料を0.5〜24時間与えて栄養強化を行うが、アルテミアはDHAクロレラを消化できないために、アルテミアの栄養強化には用いられない。
このような状況下で、ω−3系高度不飽和脂肪酸を含有する糸状菌を含んでなる微小飼料生物用飼料が開示された(例えば、特許文献1参照)。
特許公報第2664452号明細書
しかし、特許文献1の方法によると、糸状菌を動物プランクトンの飼料にする際には、糸状菌の培養中、培地にω−3系高度不飽和脂肪酸を添加しなければならない。
そこで、本発明は、ω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化せずに生産できる、ラビリンチュラ類に属する微生物を含有する動物プランクトン用飼料及びそれを用いた動物プランクトンの効率的な培養方法を提供することを目的とする。
本発明の動物プランクトン用飼料は、動物プランクトンを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含有する動物プランクトン用飼料であって、前記微生物がビタミンB12及びビタミンEのうち少なくともいずれか一方で栄養強化されていることを特徴とする。
さらに、本発明の動物プランクトン用飼料は、動物プランクトンを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含有する動物プランクトン用飼料であって、ビタミンB12及びビタミンEのうち少なくともいずれか一方を含有してもよい。
上記いずれかの動物プランクトン用飼料を与えるのは、ワムシ、アルテミア、又はミジンコであることが好ましい。また、上記いずれかのラビリンチュラ類に属する微生物が、スラウストキトリウム科またはラビリンチュラ科に属することが好ましい。また、上記いずれかの動物プランクトン用飼料は、クロレラ及び酵母のうち少なくとも一つをさらに含有してもよい。また、上記いずれかの動物プランクトン用飼料は、ω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化されていなくてもよい。
さらに、本発明の培養方法は、ラビリンチュラ類に属する微生物のみを飼料として、動物プランクトンを培養する培養方法である。本培養方法において、前記ラビリンチュラ類に属する微生物がω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化されていなくてもよいが、前記微生物が、ビタミンB12及びビタミンEの少なくともいずれか一方で栄養強化されていることが好ましい。
本発明によれば、ω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化せずに生産できる、ラビリンチュラ目に属する微生物を含有する動物プランクトン用飼料及びそれを用いた動物プランクトンの効率的な培養方法を提供することができる。
以下、実施例を挙げながら、本発明の実施の形態について詳細に述べる。
まず、本発明の動物プランクトン用飼料は、動物プランクトンを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含む。
ここで、ラビリンチュラ類とは、ラビリンチュラ目に分類されるべき一群の微生物を指す(海洋と生物 2001年23巻1号 7−18頁参照)。即ち、現在ラビリンチュラ目に分類されることが明らかになっている微生物と、これら微生物と分子進化的に近縁関係にある微生物とを含む。特に後者に関しては、現在は他の目に分類されているか、分類が明らかでないが、分子進化的にはラビリンチュラ目に分類されるべき微生物も含まれる。例えば、現在ラビリンチュラ目に分類されることが明らかになっている微生物として、ヤブレツボカビ科とラビリンチュラ科とがある。ヤブレツボカビ科には、Japonochytrium属、Labyrinthuloides属の一部、Schizochytrium属の一部、Traustochytrium 属の一部、Ulkenia属が属し、例えば、種としてはJaponochytrium marinum、Labyrinthuloides haliotidis、Schizochytrium aggregatum、Schizochytrium Limacinum、Traustochytrium aggregatum、Traustochytrium aureum、Traustochytrium pachydermum、Traustochytrium striatum、Ulkenia profunda、Ulkenia radiata、Ulkenia visurgensisなどが属する。ラビリンチュラ科には、Aplanochytrium属、Labyrinthula属、Labyrinthuloides 属の一部、Schizochytrium 属の一部、Traustochytrium 属の一部が属し、例えば、種としてはAplanochytrium kerguelense、Labyrinthula sp.、Labyrinthuloides minuta、Schizochytrium minutun、Traustochytrium multirudimentaleなどが属する。分子進化的にはラビリンチュラ目に分類されるべき微生物として、Quahaug Parasite X(Dis.Aquat.Organ., 42, 185-190, 2000)、Diplophrys sp.(ATCC50360)(Dis.Aquat.Organ., 19, 129-136, 1994)、Diplophrys marinaなどがあり、本明細書では、これらを全てラビリンチュラ類と呼ぶ。なお、これらの微生物は、American Culture Collection(ATCC)や独立行政法人製品評価技術基盤機構などの研究機関から容易に入手可能であるが、自然界から取得することも可能である(後述)。
これらラビリンチュラ類に属する微生物は、一般に、動物プランクトンを栄養強化するために有効な量のω−3系高度不飽和脂肪酸を固有に含有する。従って、動物プランクトン飼料として、動物プランクトンを栄養強化するために有効な量のω−3系高度不飽和脂肪酸を含有するラビリンチュラ類に属する微生物を用いる場合、ω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化しなくても良いが、培養時に、ω−3系高度不飽和脂肪酸を培養液中に添加することにより、さらにω−3系高度不飽和脂肪酸を栄養強化してもよい。ここで、動物プランクトンを栄養強化するために有効な量のω−3系高度不飽和脂肪酸とは、動物プランクトンの培養に際し、増殖や栄養強化を可能にし、2次培養を不要にする量のことである。その適量は動物プランクトンによっても異なるが、乾燥細胞中のDHA含有率は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。ω−3系高度不飽和脂肪酸の栄養強化処理により、総脂肪酸中の70−80%をDHAが占める微生物を調製することも可能である。なお、ω−3系高度不飽和脂肪酸とは、ω−3の位置に二重結合を有し、3個以上の二重結合を炭素鎖中に有する脂肪酸のことであり、例えば、エイコサテトラエン酸、EPA、ドコサペンタエン酸、DHA等がある。ラビリンチュラ類に属する微生物は、これらのω−3系高度不飽和脂肪酸を、そのまま含有しても、エステルの形態で含有しても、油脂の形態で含有してもよい。
このような動物プランクトンを栄養強化するために有効な量のω−3系高度不飽和脂肪酸を含有するラビリンチュラ類に属する微生物を、ビタミンB12及びビタミンEの少なくとも一方で栄養強化する。例えば、ビタミンB12またはビタミンEを添加した培地中で、上記微生物を培養することにより、ビタミンの栄養強化をすることができる。この際添加するビタミンB12は、コバラミン及びその置換同族体である、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、コバマミド等、並びにそれらのエステルを含む。また、ビタミンEは、トコフェロール類及びトコトリエノール類並びにそれらのエステルを含む。添加形態は、精製した化学分子に限らず、それらを多く含む食品などの抽出物や抽出油などでもよい。
ラビリンチュラ類の栄養強化には、ビタミンB12及びビタミンEのどちらか一方のみを使用してもよく、両方のみを使用してもよく、また、これらに他の栄養強化物質を加えて使用してもよい。
ラビリンチュラ類をω−3系高度不飽和脂肪酸、ビタミンB12やビタミンEで栄養強化する際、必要に応じて、乳化剤を適量使用してもよい。乳化剤としては、例えば大豆レシチンやポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどが使用可能であるが、本発明は乳化剤の種類により限定されない。
以上のように、動物プランクトンを栄養強化するために有効な量のω−3系高度不飽和脂肪酸を含有する、ビタミンB12及びビタミンEの少なくとも一方で栄養強化したラビリンチュラ類に属する微生物を培養して増殖させた後、遠心分離などで集菌し、菌体を凍結乾燥あるいはスプレードライなどにより乾燥することで、目的の乾燥飼料が得られる。
なお、本発明の動物プランクトン用飼料として、その飼料の形態は限定されない。例えば、ビタミンB12及びビタミンEの少なくとも一方で栄養強化したラビリンチュラ類に属する微生物を生きたまま動物プランクトン用飼料にしてもよいが、上記のような乾燥飼料は、輸送・保存に好都合であり、最も好ましい形態である。
この乾燥飼料は、上記処理した微生物以外に、キャリア、他の栄養強化成分、他の飼料となる物質などを含有しても良いが、上記処理した微生物のみを含有するのが好ましい。
また、ビタミンを飼料中へ添加するには、ラビリンチュラ類に属する微生物をビタミンで栄養強化するほうが好ましいが、栄養強化していないラビリンチュラ類に属する微生物の凍結乾燥飼料に、例えば粉末のような形状のビタミンを混合してもよい。
このようにして作製した動物プランクトン用飼料を、例えばシオミズツボワムシ、Brachionus plicatilis、Brachionus rotundiformisなどのワムシ類、ミジンコ、Artemia franciscanaなどのアルテミア類などの動物プランクトンを培養するために用いるが、対象の動物プランクトンの種類はこれらに限定されない。このようにして、動物プランクトンの培養に対して本発明の飼料を用いることにより、十分な量のω−3系高度不飽和脂肪酸を動物プランクトンに供給することができるため、ω−3系高度不飽和脂肪酸を供給するために行う2次培養を行う必要が無くなる。なお、培養の際の、培地、培養密度、培養様式、培養温度などの培養条件は、特に限定されず、常法に従って培養すればよい。
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以上に記載された発明の実施の形態及び以下に示す具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
以下、実施例を挙げ、さらに具体的に本発明を説明する。
<ラビリンチュラ類微生物の取得>
ヤブレツボカビ科Thraustochytrium aureumはATCCより入手した(ATCC 28211)。ラビリンチュラ科Labyrinthula sp.は 独立行政法人製品評価技術基盤機構より入手した(IFO 33215)。
ヤブレツボカビ科M−8株は以下のようにして取得した。まず、石垣島のマングローブ林で採取した海水・落葉を300ml三角フラスコに入れ、松花粉(ここでは宮崎市周辺海岸にて採取したものを用いた)を約0.05g添加した。室温にて1週間放置し、水面の松花粉を含むように海水を採取し、シャーレ中に調製したポテトデキストロース寒天培地上に0.1mlを塗布した。28℃で5日間培養し、クリーム色でつやのないコロニーをピックアップして新しい寒天培地上に塗布した。3日後、増殖した微生物を顕微鏡下で観察し、ラビリンチュラ類であることを細胞のサイズ、形態から判断してスラント培地に保存した。なお、M−8株は特許生物寄託センターに寄託済みであり、そこから入手可能である(寄託番号:FERM P-19755)。
<ビタミンEまたはビタミンB12強化ラビリンチュラを含む動物プランクトン飼料の生産>
ヤブレツボカビ科M−8株、ラビリンチュラ科Thraustochytrium aureum (ATCC 28211)、またはラビリンチュラ科Labyrinthula sp. (IFO 33215)を用い、培地(グルコース30g、イースト・エキストラクト10g、を50%濃度の人工海水1Lに溶解し、pHを2〜9に調製したもの)中、28℃で定常状態になるまで(約72時間)培養し、遠心分離して菌体を回収した。その後、PBSで、数回菌体を洗浄した後、凍結乾燥し、動物プランクトン飼料とした。
なお、ラビリンチュラ類微生物をビタミンB12及び/またはビタミンEで栄養強化する場合は、それぞれビタミンB12(シアノコバラミン)10μg及び/またはビタミンE100mgを上記培地中に加えた培地で培養した。
<ビタミンB12含量について、ビタミンB12強化クロレラとB12+E強化ラビリンチュラ類微生物との比較>
市販のビタミンB12強化クロレラ(商品名:生クロレラV12,クロレラ工業(株)製;懸濁液として販売されている)とビタミンB12とビタミンEで栄養強化したM−8のビタミンB12含量を比較した。
==試料の調製==
市販のビタミンB12強化クロレラ懸濁液を、細胞(サンプルA)と上澄み(サンプルB)に遠心分離した。これらのサンプルと、実施例1と同様に調製した、栄養強化していないM−8(以下、M−8(0)と記す;サンプルC)及びビタミンB12とビタミンEで栄養強化したM−8(以下、M−8(B12/E)と記す;サンプルD)中のビタミンB12の含有量を測定した。
==ビタミンB12測定方法==
ビタミンB12含量は、以下のバイオアッセイ法により分析した。
100ml三角フラスコに計量した各サンプル2gに、水40ml、0.57M酢酸緩衝液10ml、及び0.05%シアン化カリウム溶液0.4mlを加え、沸騰水浴中で30分間加熱し、ビタミンB12を抽出した。放冷後、10%メタリン酸0.6mlを添加し、水を加えて全量100mlにし、濾過した。濾液25mlを取り、1M NaOHを用いてpH6.0に調製した後、水を加えて全量50mlにし、測定値が標準検量線の上にのるように適当に希釈して試験溶液とした。試験溶液0.1ml、水1.4ml、ライヒマニB12定量基礎培地1.5mlを試験管に分注し、121℃でオートクレーブ滅菌したライヒマニ接種培地でLactobacillus delbrueckii subsp.Lactis(ATCC 7830)を少量接種した。37℃で21時間培養後、スペクトロメータで600nmにおける濁度を測定し、既知濃度のB12溶液を用いてあらかじめ作製した標準検量線を用いて、各サンプル中のビタミンB12含有量を計算した。
==結果==
各サンプル中のビタミンB12含有量を表1に示す。
Figure 0004813770
サンプルA及びサンプルBのビタミンB12含有量を比較すると、ビタミンB12強化市販クロレラの場合、ビタミンB12全量のうち、75%が細胞外 (サンプルB)に存在し、クロレラ自体(サンプルA)が含んでいるのは、25%にすぎず、量的にも8.9μg/100gと、わずかなものであった。それに対し、サンプルDのM−8(B12/E)のビタミンB12含有量は250μg/100gとなり、サンプルCのM−8(0)と比較すると、約100倍の取り込みが見られ、量的にも、ビタミンB12強化市販クロレラに比べ、約28倍の取り込みであった。
このことから、ビタミンB12強化市販クロレラは、ビタミンB12を細胞に取り込ませず、クロレラとは別に添加しているか、取り込ませていたとしても、取り込みはわずかなレベルに過ぎないことが明らかになった。対照的に、ビタミンB12強化M−8株は多量のビタミンB12を細胞内に取り込んでいることが示された。
<B12強化ラビリンチュラ類微生物によるワムシ培養>
==動物プランクトン用飼料の調製==
ラビリンチュラ類は、ヤブレツボカビ科とラビリンチュラ科に大別できる。ここでは、ヤブレツボカビ科の代表として、M−8株及びThraustochytrium aureum(ATCC28211)を、ラビリンチュラ科の代表として、Labyrinthula sp.を用い、動物プランクトン用飼料を調製して、ワムシの培養を行った。表2に、用いた微生物の種類、及びビタミンB12強化の有無を示す。
Figure 0004813770
==ワムシ培養方法==
実施例1と同様に調製した上記6種類の動物プランクトン用飼料を用いて、ワムシの培養を行った。人工海水(千寿製薬社、商品名;マリンアートハイ)にS型ワムシを530個体/mLの濃度で接種し、28℃で5日間培養し、毎日ワムシの濃度を測定した。なお、一日に一度、表2に記載の飼料を300mg/Lの濃度で投与した。
==結果==
測定したワムシの濃度を表3に示す。
Figure 0004813770
いずれの飼料の場合でも、ビタミンB12強化ラビリンチュラ類(サンプルB、D、F)を用いた時のみワムシが増殖し、ビタミンB12で強化しない微生物(サンプルA、C、E)ではワムシは増殖しなかった。また、この効果は、ラビリンチュラ目の異なる科に属する微生物で確認されたので、ラビリンチュラ目に属する微生物であれば、広く一般的に、この効果が得られると考えられる。
<ワムシの増殖に対する、M−8(B12/E)と、クロレラ及びパン酵母との比較>
==培養方法==
実施例1に記載した方法により調製した市販のビタミンB12強化クロレラ(サンプルA)、市販のパン酵母(サンプルB)、栄養強化していないクロレラ(サンプルC)及びM−8(B12/E)(サンプルD)を用い、ワムシを培養した。なお、ワムシの培養方法は、ワムシの接種濃度が510個体/mLの濃度である以外は、実施例3のワムシ培養方法に準じる。
==結果==
測定したワムシの濃度を表4に示す。
Figure 0004813770
市販のビタミンB12強化クロレラ及び市販のパン酵母に比べ、M−8(B12/E)を含む動物プランクトン用飼料を用いると、培養5日後のワムシの濃度が約2〜7倍になった。このように、B12+E強化ラビリンチュラ類微生物は、従来の飼料と比較して、ワムシの増殖に対してかなり優れていることが明らかになった。
<M−8(B12/E)と、クロレラまたは酵母とを併用したワムシの培養>
==併用培養方法==
実施例1に記載した方法により、M−8(B12/E)を含む動物プランクトン用飼料を調製した。この飼料に対し、クロレラまたは酵母を添加し、ワムシの併用培養を行った。用いた飼料の組み合わせ及び濃度を表5に示す。
Figure 0004813770
なお、ワムシの培養方法は、実施例4のワムシ培養方法に準じる。なお今回は、ワムシの密度だけでなく、5日間の培養後、ワムシに含まれる総脂質中のDHAの割合の分析及び細菌密度の測定を行った。
==DHAの測定方法==
試料1gに対し、水1.5ml及びクロロホルム−メタノール(1:2)溶液6mlを加え、激しく振とうし、脂質を抽出した。遠心分離後、上澄みを回収した。残渣に2mlのクロロホルムを加え、振とうし、遠心した後、上澄みを回収し、先に回収した上澄みと合わせた。0.88%塩化カリウム溶液で洗浄後、減圧乾固し、総脂質とした。
適量(数mg分)の脂質にトリコサン酸(23:0)2mgを加え、1N水酸化カリウム−95%エタノール溶液を15ml加え、95℃で1時間、還流加熱した。石油エーテル20mlで3回洗浄し、回収した水層に6N塩酸3〜4mlを加え、ジエチルエーテル20mlで3回抽出し、回収したジエチルエーテルを合わせて、60mlとした。等量の水で3回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧乾固した。200μlのDMFに溶解し、ガスクロマトグラフィーを用いて、DHA量と総脂質量を測定した。
==結果==
測定したワムシの濃度を表6、ワムシに含まれる総脂質中のDHAの割合を表7、培養後の総細菌数を表8に示す。
Figure 0004813770
Figure 0004813770
Figure 0004813770
クロレラとパン酵母の併用(サンプルA)に比べ、どちらかをM−8(B12/E)を含む動物プランクトン用飼料に変える(サンプルB、C)と、培養5日後のワムシの濃度が2倍以上になった(表6)。このように、他の飼料との併用の場合も、B12+E強化ラビリンチュラ類微生物の方が、ワムシの増殖により有効であることが示された。
また、表7に示すように、M−8(B12/E)を含む動物プランクトン用飼料を併用した場合(サンプルB、C)、DHAがワムシ体内に蓄積しており、ワムシの栄養価も向上した。その結果、ワムシのω−3系高度不飽和脂肪酸栄養強化を行う必要が無くなり、種苗生産の効率化・省力化が可能になった。
さらに、M−8(B12/E)を含む動物プランクトン用飼料を併用した場合、培養液中に混在している細菌密度も初期密度から大して変化が無く(表8)、培養環境の改善も見られた。

Claims (10)

  1. ワムシを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含有するワムシ用飼料であって、
    前記微生物がビタミンB12で栄養強化されていることを特徴とするワムシ用飼料。
  2. ワムシを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含有するワムシ用飼料であって、
    前記微生物がビタミンB12及びビタミンEで栄養強化されていることを特徴とするワムシ用飼料。
  3. ワムシを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含有するワムシ用飼料であって、
    ビタミンB12をさらに含有することを特徴とするワムシ用飼料。
  4. ワムシを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有するラビリンチュラ類に属する微生物を含有するワムシ用飼料であって、
    ビタミンB12及びビタミンEをさらに含有することを特徴とするワムシ用飼料。
  5. 前記ラビリンチュラ類に属する微生物が、スラウストキトリウム科またはラビリンチュラ科に属することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のワムシ用飼料。
  6. クロレラ及び酵母のうち少なくとも一つをさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のワムシ用飼料。
  7. 前記ラビリンチュラ類に属する微生物が、ω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化されていないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のワムシ用飼料。
  8. ワムシを栄養強化するのに有効な量の、ω−3系高度不飽和脂肪酸、そのエステル、及びそれを含む油脂のうちの少なくとも一つを含有し、ビタミンB12で栄養強化されているラビリンチュラ類に属する微生物を飼料として、ワムシを培養する培養方法。
  9. 前記ラビリンチュラ類に属する微生物がω−3系高度不飽和脂肪酸で栄養強化されていないことを特徴とする請求項8に記載の培養方法。
  10. 前記ラビリンチュラ類に属する微生物が、ω−3系高度不飽和脂肪酸及びビタミンEの少なくともいずれか一方で栄養強化されていることを特徴とする請求項8または9に記載の培養方法。
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