JP4811931B2 - 圧電薄膜デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、複数の共振器を含む圧電薄膜デバイスに関する。
図8は、従来の圧電薄膜フィルタ9の主要な構成を模式的に示す図である。図8は、圧電薄膜フィルタ9を斜方から見た斜視図となっている。圧電薄膜フィルタ9は、2個の共振器を組み合わせたラダー型のフィルタとなっている。
図8に示すように、圧電薄膜フィルタ9は、圧電体薄膜91と、対向領域E91において圧電体薄膜91を挟んで対向し、第1の共振器を形成する駆動電極921及び931と、対向領域E92において圧電体薄膜91を挟んで対向し、第2の共振器を形成する駆動電極922及び932とを備える。圧電薄膜フィルタ9では、圧電体薄膜91の下面に形成された駆動電極931と932とは、配線電極933によって接続される。
なお、特許文献1は、本願発明と関連する先行技術文献であり、圧電薄膜フィルタに含まれる複数の共振器を接続する配線を積層構造とする技術を開示している。
特開2004−104449号公報
しかし、従来の圧電薄膜フィルタ9では、第1の共振器において励振された弾性波が第2の共振器まで到達し、第2の共振器の共振に起因する副共振が第1の共振器の主共振に重畳する場合がある。逆に、第2の共振器において励振された弾性波が第1の共振器まで到達し、第1の共振器の共振に起因する副共振が第2の共振器の主共振に重畳する場合がある。このような第1の共振器と第2の共振器との干渉は、圧電薄膜フィルタ9の濾波特性に影響を与え、望ましくないリップルの原因となることがある。
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、圧電薄膜フィルタ9に代表される、複数の共振器を含む圧電薄膜デバイスにおいて、複数の共振器の干渉に起因する特性劣化を防ぐことを目的とする。
請求項1の発明は、圧電体薄膜と、第1対向領域において前記圧電体薄膜を挟んで対向するように前記圧電体薄膜の第1主面及び第2主面にそれぞれ形成され、第1共振器を構成する第1駆動電極及び第2駆動電極と、第2対向領域において前記圧電体薄膜を挟んで対向するように前記圧電体薄膜の第1主面及び第2主面にそれぞれ形成され、第2共振器を構成する第3駆動電極及び第4駆動電極と、前記第1主面に形成され、前記第1駆動電極と前記第3駆動電極とを接続する配線電極と、を備え、前記第1駆動電極と前記配線電極との境界及び前記第3駆動電極と前記配線電極との境界の両側で電極の材質が異なる圧電薄膜デバイスである。音響的な減衰が相対的に多い材質で前記配線電極が構成され、音響的な減衰が相対的に少ない材質で前記第1駆動電極、前記第2駆動電極、前記第3駆動電極及び前記第4駆動電極が構成される。前記圧電体薄膜、前記第1駆動電極、前記第2駆動電極、前記第3駆動電極、前記第4駆動電極及び前記配線電極を平面視した場合に、前記第1対向領域の内部の任意の点と前記第2対向領域の内部の任意の点とを結ぶ直線が前記配線電極が形成された領域を横断する。
請求項2の発明は、前記配線電極の膜厚が前記第1駆動電極及び前記第3駆動電極の膜厚より厚い請求項1に記載の圧電薄膜デバイスである。
請求項3の発明は、前記配線電極が金膜を含む請求項1又は請求項2に記載の圧電薄膜デバイスである。前記第1駆動電極、前記第2駆動電極、前記第3駆動電極及び前記第4駆動電極は、モリブデン膜又はタングステン膜からなる。
請求項1ないし請求項3の発明によれば、複数の共振器を音響的に分離することができるので、複数の共振器の干渉に起因する圧電薄膜デバイスの特性劣化を防ぐことができる。
請求項2又は請求項3の発明によれば、配線電極で弾性波を減衰させることができるので、複数の共振器をより確実に音響的に分離することができる。
以下では、2個の共振器を組み合わせたラダー型のフィルタ(以下、「圧電薄膜フィルタ」)を例として、本発明の圧電薄膜デバイスの望ましい実施形態について説明する。しかし、以下の実施形態は、本発明の圧電薄膜デバイスが圧電薄膜フィルタのみに限定されることを意味するものではない。すなわち、本発明における圧電薄膜デバイスとは、一般的に言えば、複数の共振器を含む圧電薄膜デバイス全般を意味しており、複数の共振器を含むフィルタ、デュプレクサ、トリプレクサ及びトラップ等を包含している。また、圧電薄膜デバイスに含まれる共振器の数が2個であることも必須ではなく、圧電薄膜デバイスが3個以上の共振器を含む場合にも本発明は適用可能である。
<1 圧電薄膜フィルタの構成>
<1.1 全体構成>
図1〜図4は、本発明の望ましい実施形態に係る圧電薄膜フィルタ1の構成を示す模式図である。図1は、圧電薄膜フィルタ1を斜方から見た斜視図、図2は、圧電薄膜フィルタ1を上方から見た平面図、図3は、図1のIII-IIIの切断線における圧電薄膜フィルタ1の断面を示す断面図、図4は、圧電薄膜フィルタ1に含まれる2個の共振器R11及びR12の電気的な接続を示す回路図となっている。なお、図1には、説明の便宜上、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系が定義されている。
図1〜図4に示すように、圧電薄膜フィルタ1は、支持基板11の上に、接着層12、キャビティ形成膜13、下面電極15(151〜153)、圧電体薄膜16及び上面電極17(171〜173)をこの順序で積層した構造を有している。
<1.2 圧電体薄膜>
圧電体薄膜16は、圧電体基板を除去加工することにより得られる。より具体的には、圧電体薄膜16は、単独で自重に耐え得る厚み(例えば、50μm以上)を有する圧電体基板を、単独で自重に耐え得ない膜厚(例えば、10μm以下)まで除去加工で薄肉化することにより得られる。
圧電体薄膜16を構成する圧電材料としては、所望の圧電特性を有する圧電材料を選択することができるが、水晶(SiO2)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)及びランガサイト(La3Ga3SiO14)等の粒界を含まない単結晶材料を選択することが望ましい。圧電体薄膜16を構成する圧電材料として単結晶材料を用いることにより、圧電体薄膜16の電気機械結合係数及び機械的品質係数を向上することができるからである。
また、圧電体薄膜16における結晶方位も、所望の圧電特性を有する結晶方位を選択することができる。ここで、圧電体薄膜16における結晶方位は、共振器R11及びR12の共振周波数や反共振周波数の温度特性が良好となる結晶方位とすることが望ましく、周波数温度係数が「0」となる結晶方位とすることがさらに望ましい。
圧電体基板の除去加工は、切削、研削及び研磨等の機械加工並びにエッチング等の化学加工等により行う。ここで、複数の除去加工方法を組み合わせ、加工速度が速い除去加工方法から、加工対象に生じる加工変質が小さい除去加工方法へと除去加工方法を段階的に切り替えながら圧電体基板を除去加工すれば、高い生産性を維持しつつ、圧電体薄膜16の品質を向上し、圧電薄膜フィルタ1の特性を向上することができる。例えば、圧電体基板を固定砥粒に接触させて削る研削及び圧電体基板を遊離砥粒に接触させて削る研磨を順次行った後に、当該研磨によって圧電体基板に生じた加工変質層を仕上げ研磨により除去するようにすれば、圧電体基板を削る速度が早くなり、圧電薄膜フィルタ1の生産性を向上することができるとともに、圧電体薄膜16の品質を向上することにより、圧電薄膜フィルタ1の特性を向上することができる。なお、圧電体基板の除去加工のより具体的な方法については、後述する実施例において説明する。
このような圧電薄膜フィルタ1では、圧電体薄膜16をスパッタリング等により成膜した場合と異なり、圧電体薄膜16を構成する圧電材料や圧電体薄膜16における結晶方位が下地の制約を受けないので、圧電体薄膜16を構成する圧電材料や圧電体薄膜16における結晶方位の選択の自由度が高くなっている。したがって、圧電薄膜フィルタ1では、所望の特性を実現することが容易になっている。
この圧電体薄膜16には、圧電体薄膜16の上面と下面との間を貫通し、対向領域E11及びE12以外の領域において圧電体薄膜16を挟んで対向する上面電極173と下面電極153とを導通させるバイアホールVH1が形成されている。バイアホールVH1は、その内側面に成膜された導電体薄膜により上面電極173と下面電極153とを短絡している。
<1.3 上面電極及び下面電極>
上面電極17及び下面電極15は、それぞれ、圧電体薄膜16の上面及び下面に導電材料を成膜することにより形成された導電体薄膜である。
上面電極17及び下面電極15を構成する導電材料は、特に制限されないが、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びタンタル(Ta)等の金属から選択することが望ましい。もちろん、上面電極17及び下面電極15を構成する導電材料として合金を用いてもよい。また、複数種類の導電材料を重ねて成膜することにより、上面電極17及び下面電極15を形成してもよい。
上面電極171は、対向領域E11において、圧電体薄膜26を挟んで下面電極151と対向し、上面電極171及び下面電極151を駆動電極とする共振器(直列共振器)R11を構成している。上面電極171は、対向領域E11から+Y方向へ引き出された後に延伸方向が+X方向及び−Y方向へ順次折り曲げられ、引き出された部分の一部は、外部への配線が接続されるパットP11となっている。
上面電極172は、対向領域E12において、圧電体薄膜26を挟んで下面電極152と対向し、上面電極172及び下面電極152を駆動電極とする共振器(並列共振器)R12を構成している。上面電極172は、対向領域E12から−Y方向へ引き出された後に延伸方向が−X方向及び+Y方向へ順次折り曲げられ、引き出された部分の一部は、外部への配線が接続されるパットP12及びP14となっている。
上面電極173は、対向領域E11及びE22以外において、圧電体薄膜26を挟んで下面電極153と対向している。上面電極173と下面電極153とはバイアホールVH1によって導通しているので、圧電薄膜フィルタ1では、外部に露出した上面電極173を介して下面電極15へ励振信号が給電される。上面電極173の一部は、外部への配線が接続されるパットP13となっている。
下面電極153は、下面電極151と下面電極152とを接続する配線電極であるとともに、共振器R11及びR12を音響的に分離する弾性波の障壁となっている。ここで、下面電極153は、下面電極151及び下面電極152との導通を確実に得るために、境界B1及びB2において下面電極151及び下面電極152とをわずかに重ねて成膜することが望ましい。
圧電薄膜フィルタ1では、下面電極153の材質は、下面電極151及び152の材質と異なっている。したがって、圧電薄膜デバイス1においては、境界B1及びB2の両側で電極の材質、すなわち、弾性率及び密度が異なっており、境界B1及びB2は、音響インピーダンスが急激に変化する弾性波の反射端となっている。このような反射端B1及びB2により、圧電薄膜フィルタ1では、共振器R11において励振された弾性波が共振器R12へ到達することを妨げるとともに、共振器R12において励振された弾性波が共振器R11へ到達することを妨げ、共振器R11及びR12の干渉によるリップルの発生等の特性劣化を防止している。
さらに、圧電薄膜フィルタ1では、下面電極153の膜厚を下面電極151及び152の膜厚より厚くしている。これにより、圧電薄膜フィルタ1では、境界B1及びB2を超えて共振器R11から共振器R12へ向かう弾性波及び共振器R12から共振器R11へ向かう弾性波を下面電極153を構成する金属の粘性によって減衰させ、共振器R11において励振された弾性波が共振器R12へ到達することをさらに確実に妨げるとともに、共振器R12において励振された弾性波が共振器R11へ到達することをさらに確実に妨げている。このため、圧電薄膜フィルタ1では、駆動電極である上面電極171及び172並びに下面電極151及び152は、モリブデンやタングステンのような音響的な減衰が少ない材質で構成することが望ましい一方で、配線電極である下面電極153は、粘性が高い金属の膜で構成することが望ましく、粘性が特に高い金膜を含んで構成することが特に望ましい。ただし、圧電体薄膜16と金膜との接着性が良好でない場合は、圧電体薄膜16と金膜との間に他の金属の膜(例えば、クロム膜)を介在させて接着性を向上することが望ましい。
加えて、圧電薄膜フィルタ1では、下面電極153の幅を下面電極151及び152の幅と同じにすることにより、対向領域E11の内部の任意の点と対向領域E12の内部の任意の点とを結ぶ直線が下面電極153を横断するようにしているので、共振器R11及びR12の干渉をより確実に防ぐことができる。
このような上面電極17及び下面電極15により、圧電薄膜フィルタ1は、独立した共振器R11及びR12をモノリシックに一体化したラダー型のバンドパスフィルタとなっている。
<1.4 支持基板>
支持基板11は、圧電薄膜フィルタ1の製造途上で圧電体基板を除去加工するときに、下面電極15及びキャビティ形成膜13が下面に形成された圧電体基板を接着層12を介して支持する支持体としての役割を有している。加えて、支持基板11は、圧電薄膜フィルタ1の製造後に、下面電極15及びキャビティ形成膜13が下面に形成され、上面電極17が上面に形成された圧電体薄膜16を接着層12を介して支持する支持体としての役割も有している。したがって、支持基板11には、圧電体基板を除去加工するときに加わる力に耐え得ることと、圧電薄膜フィルタ1の製造後にも強度が低下しないこととが要請される。
支持基板11の材料及び厚さは、このような要請を満足するように、適宜選択することができる。ただし、支持基板11の材料を、圧電体薄膜16を構成する圧電材料と近い熱膨張率、より望ましくは、圧電体薄膜16を構成する圧電材料と同じ熱膨張率を有する材料、例えば、圧電体薄膜16を構成する圧電材料と同じ材料とすれば、圧電薄膜フィルタ1の製造途上において、熱膨張率の差に起因する反りや破損を抑制することができ、圧電薄膜フィルタ1の製造後において、熱膨張率の差に起因する特性変動や破損を抑制することができる。なお、熱膨張率に異方性がある材料を用いる場合、圧電体薄膜16と支持基板11とで各方向の熱膨張率がともに同じとなるように配慮することが望ましく、支持基板11と圧電体薄膜16とに同じ圧電材料を用いる場合、支持基板11と圧電体薄膜16とで結晶方位を一致させることが望ましい。
<1.5 接着層>
接着層12は、圧電薄膜フィルタ1の製造途上で圧電体基板を除去加工するときに、下面電極15及びキャビティ形成膜13が下面に形成された圧電体基板を支持基板11に接着固定する役割を有している。加えて、接着層12は、圧電薄膜フィルタ1の製造後に、下面電極15及びキャビティ形成膜13が下面に形成され、上面電極16が上面に形成された圧電体薄膜15を支持基板11に接着固定する役割も有している。したがって、接着層12には、圧電体基板を除去加工するときに加わる力に耐え得ることと、圧電薄膜フィルタ1の製造後にも接着力が低下しないこととが要請される。
このような要請を満足する接着層12の望ましい例としては、有機接着剤、望ましくは、充填効果を有し、接着対象が完全に平坦ではなくても十分な接着力を発揮するエポキシ接着剤(熱硬化性を利用するエポキシ樹脂の接着剤)やアクリル接着剤(光硬化性及び熱硬化性を併用するアクリル樹脂の接着剤)により形成された接着層12を挙げることができる。このような樹脂を採用することにより、圧電体基板と支持基板11との間に期待しない空隙が生じることを防止し、当該空隙により圧電体基板の除去加工時にクラック等が発生することを防止可能である。ただし、このことは、これ以外の接着層12によって圧電体薄膜15と支持基板11とが接着固定されることを妨げるものではない。
<1.6 キャビティ形成膜>
キャビティ形成膜13は、絶縁材料を成膜することにより得られた絶縁体膜である。キャビティ形成膜13を構成する絶縁材料は、特に制限されないが、二酸化ケイ素(SiO2)等の絶縁材料から選択することが望ましい。
キャビティ形成膜13は、圧電体薄膜16の対向領域E11及びE12以外の領域に形成され、圧電体薄膜16の対向領域E11及びE12を支持基板11から離隔させるキャビティ(空洞)C11及びC12を形成している。
<実施例>
以下では、本発明の望ましい実施形態に係る圧電薄膜フィルタ1に関する実施例について説明する。
本実施例では、圧電体薄膜16及び支持基板11を構成する圧電材料としてニオブ酸リチウムの単結晶、キャビティ形成膜13を構成する絶縁材料として二酸化ケイ素及び接着層12を構成する材料としてエポキシ接着剤を用いて圧電薄膜フィルタ1を作製した。
本実施例の圧電薄膜フィルタ1は、製造原価の低減のために、図5の断面図に示すように、多数(典型的には、数100個〜数1000個)の圧電薄膜フィルタ1を一体化した集合体U1を作製した後に、集合体U1をダイシングソーで切断して個々の圧電薄膜フィルタ1へ分離することによって得られている。
以下では、便宜上、集合体U1に含まれる1個の圧電薄膜フィルタ1に着目して説明を進めるが、集合体U1に含まれる他の圧電薄膜フィルタ1も着目した圧電薄膜フィルタ1と同時平行して製造されている。
続いて、図6〜図7の断面図を参照しながら、実施例に係る圧電薄膜フィルタ1の製造方法を説明する。
圧電薄膜フィルタ1の製造にあたっては、最初に、厚み0.5mm、直径3インチのニオブ酸リチウム単結晶の円形ウエハ(36度カットY板)を圧電体基板19及び支持基板11として準備した。
そして、圧電体基板19の下面の全面に膜厚700オングストロームのタングステン膜をスパッタリングにより成膜し、一般的なフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングを行い下面電極151及び152を得た(図6(A))。
さらに、圧電体基板19の下面の全面にに膜厚200オングストロームのクロム膜と膜厚2000オングストロームの金膜とをスパッタリングにより順次成膜し、一般的なフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングを行い下面電極153を得た(図6(B))。
続いて、圧電体基板19の下面の全面に膜厚1μmの二酸化ケイ素膜をスパッタリングにより成膜し、圧電体基板19を除去加工して得られる圧電体薄膜16において対向領域E11及びE12となるべき領域に成膜された二酸化ケイ素膜をフッ酸を用いたウエットエッチングにより除去した。これにより、圧電体薄膜16において対向領域E11及びE12となるべき領域以外にキャビティ形成膜13が形成されたことになる(図6(C))。
さらに続いて、支持基板11の上面に接着層12となるエポキシ接着剤を塗布し、支持基板11の上面と、下面電極15及びキャビティ形成膜13が形成された圧電体基板19の下面とを張り合わせた。そして、支持基板11及び圧電体基板19に圧力を印加してプレス圧着を行い、接着層12の厚みを0.5μmとした。しかる後に、張り合わせた支持基板11及び圧電体基板19とを200℃の環境下で1時間放置してエポキシ接着剤を硬化させ、支持基板11と圧電体基板19を接着した。これにより、圧電体基板19の、圧電体薄膜16において対向領域E11及びE12となるべき領域の下方に、深さが約1μmのキャビティC11及びC12が形成された(図6(D))。
支持基板11と圧電体基板19との接着が完了した後、圧電体基板19を支持基板11に接着した状態を維持したまま、支持基板11の下面を研磨治具に接着固定し、圧電体基板19の上面を固定砥粒の研削機で研削加工し、圧電体基板19の厚みを50μmまで薄肉化した。さらに、圧電体基板19の上面をダイヤモンド砥粒で研磨加工し、圧電体基板19の厚みを2μmまで薄肉化した。最後に、ダイヤモンド砥粒による研磨加工で圧電体基板19に生じた加工変質層を除去するために、遊離砥粒及び不繊布系研磨パッドを使用して圧電体基板19の仕上げ研磨を行い、厚みが1.00μmの圧電体薄膜16を得た(図7(E))。
次に、圧電体薄膜16の上面(研磨面)を有機溶剤で洗浄し、膜厚が200オングストロームのクロム膜と膜厚が2000オングストロームの金膜とを圧電体薄膜16の上面に順次成膜し、得られた積層膜を一般的なフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングすることにより、圧電体薄膜16の、バイアホールVH1を形成すべき部分のみを露出させたエッチングマスクM1を得た(図7(F))。
エッチングマスクM1の形成後、65℃に加熱したバッファードフッ酸で圧電体薄膜16のエッチングを行い、圧電体薄膜16の上面と下面との間を貫通するバイアホールVH1を形成して下面電極153を露出させるとともに、エッチングマスクM1をエッチングにより除去した(図7(G))。
さらに、圧電体薄膜16の上面の全面に厚み700オングストロームのタングステン膜をスパッタリングにより成膜し、一般的なフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングを行い、上面電極17を得た(図7(H))。このとき、バイアホールVH1の内側面にもタングステン膜が形成されるので、上面電極171と下面電極15との導通が確保される。
このようにして得られた圧電薄膜フィルタ1の濾波特性を評価したところ、実用上問題となるようなリップルはなく、挿入損失も小さいことがわかった。
<比較例>
本発明の範囲外の比較例では、下面電極153を膜厚が700オングストロームのタングステン膜とし、下面電極151及び152と同時に下面電極153を形成した以外は実施例と同様の手順で圧電薄膜フィルタを作製した。このようにして得られた圧電薄膜フィルタの濾波特性を評価したところ、実用上問題となるようなリップルが観察され、挿入損失も大きいことがわかった。
本発明の望ましい実施形態に係る圧電薄膜フィルタ1の斜視図である。 本発明の望ましい実施形態に係る圧電薄膜フィルタ1の平面図である。 図1のIII-IIIの切断線における圧電薄膜フィルタ1の断面を示す断面図である。 圧電薄膜フィルタ1に含まれる2個の共振器R11及びR12の電気的な接続を示す回路図である。 多数の圧電薄膜フィルタ1を一体化した集合体U1を切断して個々の圧電薄膜フィルタ1へ分離する様子を示す図である。 実施例に係る圧電薄膜フィルタ1の製造方法を説明する図である。 実施例に係る圧電薄膜フィルタ1の製造方法を説明する図である。 従来の圧電薄膜フィルタ9の斜視図である。
符号の説明
1 圧電薄膜フィルタ
11 支持基板
12 接着層
13 キャビティ形成膜
15 下面電極
16 圧電体薄膜
17 上面電極
171,172 上面電極(駆動電極)
173 上面電極(配線電極)

Claims (3)

  1. 圧電体薄膜と、
    第1対向領域において前記圧電体薄膜を挟んで対向するように前記圧電体薄膜の第1主面及び第2主面にそれぞれ形成され、第1共振器を構成する第1駆動電極及び第2駆動電極と、
    第2対向領域において前記圧電体薄膜を挟んで対向するように前記圧電体薄膜の第1主面及び第2主面にそれぞれ形成され、第2共振器を構成する第3駆動電極及び第4駆動電極と、
    前記第1主面に形成され、前記第1駆動電極と前記第3駆動電極とを接続する配線電極と、
    を備え、
    前記第1駆動電極と前記配線電極との境界及び前記第3駆動電極と前記配線電極との境界の両側で電極の材質が異なり、音響的な減衰が相対的に多い材質で前記配線電極が構成され、音響的な減衰が相対的に少ない材質で前記第1駆動電極、前記第2駆動電極、前記第3駆動電極及び前記第4駆動電極が構成され、
    前記圧電体薄膜、前記第1駆動電極、前記第2駆動電極、前記第3駆動電極、前記第4駆動電極及び前記配線電極を平面視した場合に、前記第1対向領域の内部の任意の点と前記第2対向領域の内部の任意の点とを結ぶ直線が前記配線電極が形成された領域を横断する圧電薄膜デバイス。
  2. 前記配線電極の膜厚が前記第1駆動電極及び前記第3駆動電極の膜厚より厚い請求項1に記載の圧電薄膜デバイス。
  3. 前記配線電極が金膜を含み、前記第1駆動電極、前記第2駆動電極、前記第3駆動電極及び前記第4駆動電極がモリブデン膜又はタングステン膜からなる請求項1又は請求項2に記載の圧電薄膜デバイス。
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