JP4811755B2 - 水処理用フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば一般家庭において水道の蛇口などに取り付けたり、あるいはアンダーシンクタイプや据え置きタイプなどとして使用される浄水器に組み込んで、水道水から汚染物質を除去する用途や、その他、上水に限らず中水、排水などの処理の用途に用いられる水処理用フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般家庭などにおいて水道の蛇口等に取り付けて使用される浄水器は、内部に交換カートリッジフィルターを設けて形成されている。この水処理用交換カートリッジフィルターは、活性炭で水中の残留塩素や有機物などを吸着除去し、中空糸膜でミクロサイズの汚れ、赤サビなどを取る構造を有しているのが一般的である。
【0003】
また、近年、水道水から鉛などの重金属を除去する要求が高まっており、例えば、特開平4−243543号公報にみられるように、重金属除去剤として粒状体のイオン交換樹脂や、アルミノ珪酸塩鉱物であるゼオライトを用いて重金属を除去することが知られている。
【0004】
そして水処理用交換カートリッジフィルターの具体的な構造としては、例えば特開平10−85729号公報にみられるような、円筒形の容器からなるカートリッジ内に活性炭の部屋と中空糸膜の部屋をそれぞれ設け、カートリッジ内に導入された水を活性炭の部屋へ送ってカルキ臭やカビ臭などをとり、次いで中空糸の部屋へ送って、活性炭で取り除けなかった微粒子の異物などを除去するというものが挙げられる。また特開平8―71541号公報にみられるような、円筒形の容器からなるカートリッジの中心に中空糸膜からなるチューブを配置すると共にその外周側に活性炭を配置し、カートリッジ内に導入された水を外周側から流して、活性炭の層を通過させた後、中空糸膜を通過させ、処理済の水をカートリッジから出すという構造のものもある。
【0005】
これら特開平10−85729号公報や特開平8−71541号公報のいずれのものも、活性炭は、活性炭が通過せず、水のみが通過するような小径の孔を有する膜に仕切られた部屋の中に、粒状で充填して蓄えた状態で用いられている。また、重金属除去剤を用いる場合においても、活性炭と同様に部屋内に粒状で充填して蓄えた状態で用いられることになる。
【0006】
一方、特開平2−17989号公報には、多孔質プラスチック・マトリックス内に活性炭粒子をトラップした水処理器が開示されている。このものは、多孔質プラスチック・マトリックス中に活性炭を分散させることによって小さな粒径の活性炭を使用できるようにしたものである。また、米国特許第4753728号公報にもポリマーで活性炭を固めたフィルターが開示されており、このものではポリマーとしてメルトインデックスが1.0g/10min未満(ASTM D1238、190℃、15kg Load)である低メルトインデックスのものが用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特開平10−85729号公報や特開平8―71541号公報に開示されている構造のフィルターでは、微粒子の異物を中空糸膜で除去するようにしている。しかし、中空糸膜は高価であり、またフィルター全体における中空糸膜の占める体積割合が大きく、例えばスペースや重量の面で小型にならざるを得ない蛇口直結型水処理器の交換カートリッジフィルターとして用いる場合には、活性炭や重金属除去剤の使用量が制限されることになり、従って活性炭や重金属除去剤によって残留塩素や鉛などを取ることができる寿命が短くなるという問題を有するものであった。また部屋内に粒状の活性炭や粒状の重金属除去剤を充填した状態で用いるので、水が活性炭や重金属除去剤の層中を通過するときに、自然と水が流れる水みちがついてしまい、水は活性炭や重金属除去剤の特定の部分にしか接触せず、活性炭や重金属除去剤は一部だけが使用されることになって、残留塩素や鉛などを除去する性能の寿命が短くなってしまうという問題もあった。
【0008】
一方、特開平2−17989号公報や米国特許第4753728号公報に示すような多孔質プラスチック・マトリックス中に活性炭を分散させて固化したフィルターを用いる場合、より粒径の小さな活性炭を使うことが可能になるので水処理の効率が良くなり、しかも水みちがつくようなことなくフィルター全体に水が流れるようにすることができるので、活性炭による残留塩素などの除去性能を長持ちさせることが可能である。
【0009】
しかし、水処理器のフィルターとして使用する場合、残留塩素や濁り、重金属などを十分に除去することができて、なお且つ、ある程度の流量(通常1.5〜3.0L/min程度)で水をフィルターに通過させることができることを必要とするが、残留塩素などを除去する性能を上げるために、粒径の細かい粉末状の活性炭を使用すると十分な流量を得ることができなくなるものであった。そして、蛇口直結型水処理器のフィルターは前記のように軽量で小型であることが求められるが、活性炭を多孔質プラスチック・マトリクス内に分散させたフィルターの場合、小型にすると塩素などの除去性能を十分に得ることが難しくなると共に、逆に除去性能を高めると十分な流量を得ることが難しくなるものであった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、残留塩素などの除去に加えて重金属を除去する性能を長く維持することができ、また中空糸膜を用いる必要なく微粒子をも除去することができ、しかも蛇口直結型水処理器のようなサイズが制限される用途においても、十分な流量を確保しつつ高い浄水性能を得ることができる水処理用フィルターを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る水処理用フィルターは、水から汚染物質を除去するための水処理用フィルターにおいて、活性炭およびイオン吸着する無機複合体を高分子量多孔質ポリマーからなる結合材で固化した多孔質体によって形成され、前記多孔質体が、金型への前記活性炭と前記無機複合体と前記結合材を含む混合原料の充填中もしくは充填後に振動を加えた後に、加圧により前記活性炭の粒子を座屈させて間隙を緻密化させることによって、前記多孔質体中の前記活性炭の粒子が菱面体充填となっているものであり、前記活性炭及び前記無機複合体は平均粒径が5〜40μmの粒子と40μmを超え200μm以下の粒子を1:1から1:7の質量比の割合で混合したものであることを特徴とするものである。
【0012】
このように活性炭及びイオン吸着する無機複合体を結合材で固化した多孔質のフィルターとすることによって、フィルター内に水みちが作られるようなことがなく、全体に水の流れを行き渡らせることができるものであり、コンパクトでしかも残留塩素などの除去性能において高い性能を得ることができる。また、活性炭及びイオン吸着する無機複合材の粒径を以上のような2種類のものを混合して用いることによって、活性炭による残留塩素や微粒子などを除去する性能を十分なものに保持すると同時に、十分な流量を得ることができる。
また、金型に充填した混合原料に振動を加えることで、大径粒子の間隙に小径粒子が規則充填され、更に加圧によって活性炭の粒子を座屈させて間隙を緻密化させ、活性炭などの粒子間の間隙が最も少なくなる菱面体の充填をとることができ、微粒子の異物を十分に除去することができる。
【0013】
請求項2の発明は、上記の請求項1において、水処理用フィルターを構成する多孔質体の比表面積が、400〜2000m2/gであることを特徴とするものである。
【0014】
このように、結合材で固化した水処理用フィルターの比表面積を所定範囲に設定することで、水中の残留塩素、カビ臭、トリハロメタンなどを十分に除去することができる。
【0015】
請求項3の発明は、上記の請求項1又は2において、結合材としてメルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)の高分子量多孔質ポリマーを使用するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
結合材としてこのようなメルトインデックスのものを用いることによって、活性炭やイオン吸着する無機複合体を固化する際に結合材が液状に溶融せず活性炭やイオン吸着する無機複合体を覆ってしまうことがないので、適度にバインダーとして働かせることができ、しかもより少ない量の結合材で活性炭及びイオン吸着する無機複合体を固めることができるので、フィルター中に含まれる活性炭及びイオン吸着する無機複合体の量を多くすることができ、水を処理する性能を向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明は、上記の請求項1乃至3のいずれかにおいて、イオン吸着する無機複合体がゼオライトであることを特徴とするものであり、また請求項5の発明は、ゼオライトの平均粒子径が10〜40μmであり、ゼオライトの配合量が多孔質体中5〜25質量%であることを特徴とするものである。
【0018】
ゼオライトはアルミノ珪酸塩鉱物であるため、熱安定性に優れ、活性炭とともに結合材で固化する際にイオン交換樹脂の場合のように成形の熱によって変質することがなく、鉛などの重金属の除去性能が劣化することがない。またゼオライトとしてこのような微小な粒子径のものを用いることによって、重金属との接触面積を広くとることができ、重金属の除去性能を十分なものにすることができる。
【0019】
請求項6の発明は、上記の請求項1乃至5のいずれかにおいて、結合材を多孔質体中に10〜35質量%配合しており、かつ多孔質体の密度が0.40〜0.70g/cm3であることを特徴とするものである。
【0020】
フィルターを通過する水の流量は、活性炭等と結合材との混合比や、成形する際の圧力のかけ方にも左右されることになるが、固化した多孔質体の密度を0.40〜0.70g/cm3の範囲内に設定することによって、例えば蛇口直結型水処理用フィルターのようなコンパクトサイズであっても十分な流量を確保することができ、かつ十分に水の汚れを取り除くこともできる。
【0023】
請求項7の発明は、上記の請求項1乃至6のいずれかに記載の水処理用フィルターを、水道の蛇口に直結して取付けられる蛇口直結型水処理器に用いるようにしたものであり、フィルターの全体に水の流れを行き渡らせることができるため、蛇口直結型水処理器用としてサイズに制限があっても、活性炭による残留塩素などを除去する性能の高いものを得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に係る水処理用フィルターAは、活性炭とイオン吸着する無機複合体からなる浄水成分を高分子多孔質ポリマーからなる結合材で固化して得られる多孔質体1によって形成されるものである。
【0025】
ここで、活性炭とは、無数の細孔を有する炭素材であり、ヤシ殻、石炭、木材、ピッチなどを原料として700℃程度に加熱乾溜して炭素質有機物を分解炭化し、これを水蒸気、二酸化炭素、水酸化カリウム、塩化亜鉛などの賦活剤の存在化で高温にて加熱処理し、反応しやすい無定形炭化部分をガス化して取り除くことによって得られたものを用いることができる。
【0026】
本発明の水処理用フィルターAに用いられる活性炭は、上記のいずれの原料を用いたものでも使用できるが、残留塩素除去の際、塩素で脆くなって粉が出難いヤシ殻活性炭が好ましい。またヤシ殻活性炭の中でも、比表面積が500〜2200m2/gのものが好ましく、より好ましくは500〜1800m2/g、更に好ましくは850〜1500m2/gである。尚、多孔質体1中の活性炭の配合量は、後述のイオン吸着する無機複合体や結合材の配合量の残量として設定されるものである。
【0027】
また活性炭の粒子はその形状から粉末状、粒状、破砕状、ビーズ状などに分類され、いずれの形態でも使用することができるが、本発明では、粒径の小さい活性炭と、粒径の大きい活性炭の2種類の活性炭の粒子を混合して用いるようにしている。小径粒子の活性炭としては5〜40μm、好ましくは10〜30μmの平均粒子径を持つ活性炭を用いるものであり、大径粒子の活性炭としては40μmを超え200μm以下、好ましくは40μmを超え120μm以下、より好ましくは40μmを超え100μm以下の平均粒子径を持つ活性炭を用いるものである。そして小径粒子の活性炭と大径粒子の活性炭を、後述のイオン吸着する無機複合体の粒子も含めて、小径粒子と大径粒子が1対1から1対7の質量比の割合になるように混合して用いるものである。ここで、本発明でいう平均粒径とは、各粒径の全粒子の体積の全体に占める割合を粒径の小さい側から累積していき、累積が50%に達したときの粒径(メジアン径)をいう。
【0028】
このような2種類の粒径分布を有する活性炭及びイオン吸着する無機複合体を前記のような比率で混合し、これを高分子多孔質ポリマーからなる結合材で結合・固化することによって、大径粒子の間隙に小径粒子が充填され、活性炭及びイオン吸着する無機複合体を緻密に充填にした多孔質体1を得ることができるものであり、塩素などの除去性能や、微粒子の異物の除去性能が高く、また水の十分な流通量を長期に渡って得ることができる水処理用フィルターAとして使用することができるものである。
【0029】
ここで、小径の活性炭として平均粒径が5μmよりも細かいものを用いると、多孔質体1中の空隙が少なくなってしまい、十分な水の流量が得られなくなるおそれがある。また大径粒子の活性炭として平均粒子径が200μmを超えるものを用いると、多孔質体1中の空隙が大きくなり、微粒子の異物をろ過して除去する性能が悪くなると共に、水が通過する空隙が大きくなる結果、活性炭に接触することなく多孔質体1を通過してしまう水が多くなり、水中の残留塩素などの除去性能が悪くなるおそれがある。
【0030】
また本発明において、活性炭と混合して使用されるイオン吸着する無機複合体としては、ゼオライト、二酸化チタン、シリカゲルなどを挙げることができるが、その中でもゼオライトを用いることが好ましい。ゼオライトは、主にナトリウムやカリウムのアルカリ金属と、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属を含み、水分子を結晶水の形で保有するアルミノ珪酸塩鉱物である。そしてゼオライトは分子レベルの大きさの穴を無数に有し、吸収・吸着し易い特性と、鉱物中の陽イオンが水中で他の陽イオンと互いに入れ替わるイオン交換特性を有している。このためにゼオライトは鉛などの重金属イオンを容易に吸着して除去する性能を有するものである。更にゼオライトは熱安定性に優れており、活性炭とともに結合材で固化する成形を行なう際に、イオン交換樹脂を用いる場合のように成形時の熱により変質することがなく、鉛などの重金属を除去する性能が低下するようなことがないものである。
【0031】
ここで、ゼオライトは天然ゼオライトと合成ゼオライトに大きく分けることができ、いずれのものも使用することができるが、水に溶けないという点で合成ゼオライトが好ましい。またゼオライトは重金属との接触面積を広くとるために平均粒子径が約10〜30μmの微小なものを用いるのが好ましいが、このような微小な平均粒子径のものを得るうえでも合成ゼオライトが好ましい。
【0032】
ゼオライトの配合量は、水処理用フィルターAを構成する多孔質体1の全体の5〜25質量%の範囲が好ましい。ゼオライトの配合量が5質量%に満たないと、重金属を十分に除去する効果が認められず、また25質量%を超えると、相対的に活性炭の配合量が減ることになるので好ましくない。
【0033】
また、活性炭やイオン吸着する無機複合体の粒子を結合させる結合材としては、水処理用フィルターAとしての用途として問題なく使用できるために無毒性であることが必要になるとともに、単体で成形した場合に多孔質体を形成しやすい樹脂であることが好ましい。具体的には分子量が数十万〜数百万程度の超高分子量ポリエチレンで原料の粒子径が約100μm、カサ密度が0.3g/cm3未満の樹脂を用いることができるものであり、メルトインデックスが1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)であるものが好ましい。
【0034】
結合材のメルトインデックスが1.1g/10min未満であると、多孔質体1を成形する時の流動性が不足し、活性炭やイオン吸着する無機複合体を固めるために、結合材の量を多くしなければならくなり、この結果、多孔質体1中に活性炭やイオン吸着する無機複合体が占める割合が相対的に少なくなり、多孔質体1を水処理用フィルターAとして用いるにあたって水の処理性能が低くなってしまうおそれがある。また、結合材のメルトインデックスが、2.3g/10minを超えると、多孔質体1を成形する際に溶融したポリマーが活性炭の細孔部やイオン吸着する無機複合体の表面を覆ってしまい、多孔質体1を水処理用フィルターAとして用いるにあたって水処理性能が阻害されるおそれがあるので好ましくない。
【0035】
従って、結合材が上記の範囲のメルトインデックスを有するポリマーであると、成形時の高温において適度な溶融粘度を示し、溶融したポリマーで活性炭の細孔部やイオン吸着する無機複合体の表面を覆ってしまうようなことなく多孔質体1を成形することができるものであって、400〜2000m2/gの高い比表面積を有する多孔質体1を得ることができるものであり、多孔質体1を高い浄水性能を有する水処理用フィルターAとして使用することができるものである。
【0036】
また上記の超高分子量ポリエチレンの粒子を結合材として用いて成形をおこなうと、球状が重なり合った性状になるので、低密度、高空隙率の多孔質体1を形成することができるものであり、水処理用フィルターAとして高い機能を得ることができるものである。
【0037】
結合材の混合割合は、多孔質体1の全体に対して10〜35質量%に設定するのが好ましく、かつ結合材を固化した後の多孔質体1の密度が0.4〜0.70g/cm3になるように成形するのが好ましい。
【0038】
結合材の配合量が多孔質体1の全体に対して10質量%未満であると、活性炭やイオン吸着する無機複合体を固化することが困難になり、逆に35質量%を超えると、結合材が活性炭やイオン吸着する無機複合体の表面を覆う部分が多くなり過ぎて、活性炭やイオン吸着する無機複合体によって水を有効に浄化できなくなるおそれがある。また、多孔質体1の密度が0.4g/cm3未満であると、多孔質体1の剛性が低くなってしまい、多孔質体1を水処理用フィルターAとして用いるにあたって脆く崩れ易くなるので好ましくない。逆に多孔質体1の密度が0.70g/cm3を超えると、多孔質体1が緻密になり過ぎて空隙が少なくなり、多孔質体1を水処理用フィルターAとして用いるにあたって、十分な水の流量を得ることができなくなるおそれがある。
【0039】
そして、上記の所定量の配合で活性炭及びイオン吸着する無機複合体と結合材を混合し、この混合原料を金型に充填する。このとき、金型への充填中、もしくは金型への充填後に、混合原料に振動を加えることによって、大径粒子の間隙に小径粒子を規則充填させるようにしてある。大径粒子の間隙に小径粒子を規則充填させると、活性炭及びイオン吸着する無機複合体の小径粒子と大径粒子の最適配合比は、小径粒子と大径粒子が同密度、同空隙率と仮定し、菱面体の理想最密充填をとるなら質量比でεZ:Z(但しε(空隙率)=0.2595、Z=大径粒子の質量)、すなわち約1:4で与えられる。しかし、イオン吸着する無機複合体の粒子径、密度を考慮するとその配合比の範囲は1:1でも緻密化が得られ、また振動後に活性炭粒子を座屈させ間隙を緻密化させることでその配合比の範囲は1:7まで可能である。従って、活性炭及びイオン吸着する無機複合体と結合材を含む混合原料の充填中もしくは充填後に振動を加えた後に、加圧により活性炭の粒子を座屈させて間隙を緻密化させることによって、活性炭の粒子が菱面体充填となった多孔質体1を得ることができるものであり、粒子間の間隙が最も少なくなる菱面体の理想充填をとることで、水中の微粒子の異物を十分にろ過して除去することができるものである。
【0040】
水処理用フィルターAとして用いる多孔質体1の作製方法としては、次のような方法が挙げられる。すなわち、金型に上記のように充填された混合原料を200℃前後の温度にて所定時間加熱し、圧縮し、そして冷却することによって、多孔質フィルター1を作製することができるものであり、加熱後の圧縮量を調整することによって、多孔質体1の密度を上記のような0.4〜0.70g/cm3の範囲に形成することができるものである。
【0041】
図1は本発明の水処理用フィルターAとして使用される多孔質体1の一例を示すものであり、水処理用フィルターAは多孔質体1をベースとして他のものと組み合わせて構成することができる。例えば、図2及び図3に示すものでは、直径45〜50mmφ、高さ60mm程度のサイズで中心に直径10〜15mmφ程度の中心孔4を上下に貫通して設けた円筒形に多孔質体1を作製してあり、多孔質体1の上面と下面に不透水性のキャップ2、3を被せて取付けることによって、水処理用フィルターAを形成するようにしてある。下面のキャップ3には多孔質体1の中心孔4に合致する通水孔5が設けてある。
【0042】
この水処理用フィルターAを水処理器に取り付けたときの水の流れは、多孔質体1の外周面から多孔質体1内を通過し、中心孔4内に湧き出して通水孔5から排出されるという経路になり、多孔質体1内を通過する際に、活性炭によって水中の残留塩素や有機物などが吸着除去されると共に、イオン吸着する無機複合体によって鉛などの重金属が吸着除去され、さらにミクロサイズの汚れや赤サビのような微粒子の異物は多孔質体1によってろ過されて除去される。
【0043】
上記のように円筒形状の多孔質体1で形成される本発明の水処理用フィルターAは、例えば図4に示すような水道の蛇口6に直接取り付けられる蛇口直結型の水処理器7に装着して使用することができる。水処理器7には浄水口8と原水口9が設けてあり、水の流れを矢印で示すように、水道の蛇口6から供給された水を切替レバー10などによって、処理を行う経路へ水を誘導して水処理用フィルターAで処理した水を浄水口8から出す場合と、何も処理せずそのまま通過させて原水口9から出す場合の切り換えがができるようになっている。そして水を水処理用フィルターAで処理する場合には、上記と同様にして、水は水処理用フィルターAを構成する多孔質体1の外周面から多孔質体1内を通過し、中心孔4内に湧き出して浄水口8から排出されるものであり、多孔質体1内を通過する際に、活性炭によって水中の残留塩素や有機物などを吸着除去すると共に、イオン吸着する無機複合体によって鉛などの重金属を吸着除去し、さらにミクロサイズの汚れや赤サビのような微粒子の異物を多孔質体1によってろ過して除去することができる。このように、微粒子の異物は多孔質体1によって除去することができるので、微粒子の異物を除去するための中空糸膜を水処理器7内に設ける必要がなくなるものである。
【0044】
水処理用フィルターAは実際には周囲を覆うカバー11も含めてカートリッジ12としての形態で供給されるものであり、蛇口6に固定されている基体13に脱着自在に取り付けるようにしてある。従って水処理用フィルターAの交換はカートリッジ12の全体で行なわれる。なお、本発明の水処理用フィルターAを構成する多孔質体1は他の添加物を混入してもよく、また水処理用フィルターAは別のフィルターと組み合わせて用いることも可能である。
【0045】
次に本発明の実施例および比較例を示す。
【0046】
【実施例】
[実施例1]
平均粒径が約20μmの活性炭と平均粒径が約55μmの活性炭(両者とも、武田薬品工業(株)製「Mグレード」)を用い、また平均粒子径約25μmのゼオライト(エンゲルハルド社製イオン交換ゼオライト「ALSI L70」)を15質量%(混合物の全体に対して)用い、小径粒子(約20μmの活性炭と約25μmのゼオライト)と大径粒子(約55μmの活性炭)を1:2.4の質量比で混合した。さらにこれに高分子量多孔質ポリマー(Ticona Gmbh製「HostalenGUR2105」、メルトインデックス1.5g/10min)を15質量%配合して混合した。次にこの混合物を金型に充填した後、振動し、更に加圧して粒子の間隙を緻密化させた。その後、約200℃で1時間加熱し、圧縮量を調整した後、冷却することによって、ブロック密度が0.60g/cm3、比表面積が980m2/gで、外径φ48mm×内径φ11mm×長さ60mmの円筒状の多孔質体1を成形した。そしてこの多孔質体1の両端に一方に通水孔5を設けたポリエチレン製のキャップ2,3を被せることによって、図2及び図3のような水処理用フィルターAを得た。
【0047】
[実施例2]
小径粒子(約20μmの活性炭と約25μmのゼオライト)と大径粒子(約55μmの活性炭)を1:4.7の質量比で混合して用いるようにし、ゼオライトの配合量を全体の10質量%にした他は、実施例1と同様にして、ブロック密度が0.60g/cm3、比表面積が970m2/gの水処理用フィルターAを得た。
【0048】
[比較例1]
平均粒径が55μmの活性炭の代わりに平均粒径が250μmの活性炭を用いるようにした他は、実施例1と同様にして、ブロック密度が0.55g/cm3、比表面積が960m2/gの水処理用フィルターAを得た。
【0049】
[比較例2]
ゼオライトを配合しないようにした他は、実施例1と同様にして、ブロック密度が0.55g/cm3、比表面積が940m2/gの水処理用フィルターAを得た。
【0050】
上記の実施例1,2及び比較例1,2で得られた水処理用フィルターAについて、国際的試験・認定機関『NSF International』の飲料水処理装置に関する規格(No.53:健康への影響に関する除去性能基準)に準じて、残留塩素、VOC(揮発性有機化合物)、溶解性及びコロイド状鉛、シスト(原虫の嚢子)の除去能力の評価を実施した。これらの結果を表1〜表5に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
上記の各表において除去能力を示す数値は、水処理用フィルターAに流量0.5GPM(約1.9L/min)で水を通し、試験開始直後及び表に記載した時間経過後に測定をおこなったときの値である。表1〜5に示す数値は、各除去対象物において濾過された総濾過水量における除去率を示している。表2ではVOCとして代表されるクロロホルムを用いて評価した。また表5に示す数値は、シストの代替として約0.5〜5μm微粒子を用い、流量の減少時点での除去率を示す。
【0057】
上記の各表にみられるように、実施例1及び2では、比較例1よりコロイド状鉛、シストの項目において高い除去率を示しており、また比較例2では溶解性鉛及びコロイド状鉛においても除去できていないものであった。
【0058】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に係る水処理用フィルターは、水から汚染物質を除去するための水処理用フィルターにおいて、活性炭およびイオン吸着する無機複合体を高分子量多孔質ポリマーからなる結合材で固化した多孔質体によって形成され、活性炭は平均粒径が10〜40μmの粒子と40μmを超え200μm以下の粒子を1:1から1:7の質量比の割合で混合したものであるから、活性炭及びイオン吸着する無機複合体は結合材で固化されており、活性炭やイオン吸着する無機複合体の層に水みちが作られるようなことがなくなって、全体に水の流れを行き渡らせることができるものであり、活性炭による残留塩素などの除去性能やイオン吸着する無機複合体による重金属の除去性能を長く維持することができるものである。また活性炭及びイオン吸着する無機複合体として上記のような粒径が異なる2種類のものを混合して用いることによって、大径粒子の間隙に小径粒子を充填させることができ、水の流用を確保しつつ活性炭による残留塩素や微粒子の異物などを除去する性能を高く得ることができるものである。さらに、微粒子の異物は水が多孔質体を通過する際にろ過して除去されるものであり、中空糸膜を用いるような必要がなくなるものである。
また請求項1の発明は、金型への活性炭とイオン吸着する無機複合体と結合材を含む混合原料の充填中もしくは充填後に、振動を加えた後に加圧により活性炭の粒子を座屈させて間隙を緻密化させることによって、多孔質体中の粒子が菱面体充填となるようにしたので、大径粒子の間隙に小径粒子を規則充填させることができると共に活性炭粒子の座屈によって間隙を緻密化させることができ、粒子間の間隙が最も少なくなる菱面体の充填をとった多孔質体を得ることができるものであり、多孔質体による微粒子の異物の除去性能を高く得ることができるものである。
【0059】
また請求項2の発明は、水処理用フィルターとして用いる多孔質体の比表面積が400〜2000m2/gであるので、活性炭やイオン吸着する無機複合体の接触面積を大きくすることができ、活性炭による残留塩素などの除去性能やイオン吸着する無機複合体による重金属の除去性能を高く得ることができるものである。
【0060】
また請求項3の発明は、結合材としてメルトインデックスが、1.1〜2.3g/10minの高分子量多孔質ポリマーを使用するようにしたので、活性炭やイオン吸着する無機複合体の表面を結合材で覆ってしまうことがなくなると共に、少ない量の結合材で活性炭及びイオン吸着する無機複合体を固めることができて、多孔質体に含まれる活性炭及びイオン吸着する無機複合体の量を多くすることができるものであり、活性炭及びイオン吸着する無機複合体による水処理の性能を向上させることができるものである。
【0061】
また請求項4の発明は、イオン吸着する無機複合体としてゼオライトを用いるようにしたので、ゼオライトはアルミノ珪酸塩鉱物であって熱安定性に優れ、結合材で固化成形をする際の熱により変質することがなく、鉛などの重金属を吸着して除去する性能が低下することがなくなるものである。
【0062】
また請求項5の発明は、ゼオライトの平均粒子径が10〜40μmであり、ゼオライトの配合量が多孔質体中5〜25質量%であるので、微小粒子のゼオライトと重金属との接触面積を広くとることができ、重金属の除去性能を高く得ることができるものである。
【0063】
また請求項6の発明は、結合材を多孔質体中に10〜35質量%配合しており、かつ多孔質体の密度が0.40〜0.70g/cm3であるので、水の流量を確保しつつ活性炭及びイオン吸着する無機複合体による水処理性能を高く得ることができるものであり、コンパクトなサイズであっても十分な流量を確保しつつかつ十分に水の汚れを取り除くことができるものである。
【0065】
また請求項7の発明は、上記の水処理用フィルターを、水道の蛇口に直結して取付けられる蛇口直結型水処理器に用いるようにしたものであり、上記の水処理フィルターは水みちが作られるようなことなく全体に水の流れを行き渡らせることができるものであって、蛇口直結型水処理器用としてサイズに制限があっても、活性炭による残留塩素の除去やイオン吸着する無機複合体による重金属の除去の性能の高く得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水処理用フィルターの実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の水処理用フィルターの実施の形態の他の一例を示す斜視図である。
【図3】図2におけるイ−イ断面図である。
【図4】本発明の水処理用フィルターを組みこんだ水処理器の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 水処理用フィルター
2 キャップ
3 キャップ
4 中心孔
Claims (7)
- 水から汚染物質を除去するための水処理用フィルターにおいて、活性炭およびイオン吸着する無機複合体を高分子量多孔質ポリマーからなる結合材で固化した多孔質体によって形成され、前記多孔質体が、金型への前記活性炭と前記無機複合体と前記結合材を含む混合原料の充填中もしくは充填後に振動を加えた後に、加圧により前記活性炭の粒子を座屈させて間隙を緻密化させることによって、前記多孔質体中の前記活性炭の粒子が菱面体充填となっているものであり、前記活性炭及び前記無機複合体は平均粒径が5〜40μmの粒子と40μmを超え200μm以下の粒子を1:1から1:7の質量比の割合で混合したものであることを特徴とする水処理用フィルター。
- 前記多孔質体の比表面積が、400〜2000m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の水処理用フィルター。
- 前記結合材としてメルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)の高分子量多孔質ポリマーを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理用フィルター。
- 前記無機複合体がゼオライトであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水処理用フィルター。
- 前記ゼオライトの平均粒子径が10〜40μmであり、前記ゼオライトの配合量が前記多孔質体中5〜25質量%であることを特徴とする請求項4に記載の水処理用フィルター。
- 前記結合材を前記多孔質体中に10〜35質量%配合しており、かつ前記多孔質体の密度が0.40〜0.70g/cm3であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水処理用フィルター。
- 水道の蛇口に直結して取付けられる蛇口直結型水処理器に用いられるものであることを特徴とする請求項1乃至6項のいずれか一項に記載の水処理用フィルター。
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