JP4811628B2 - 集光フィルム及び太陽電池ユニット - Google Patents
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Description
先に述べた微細なmoth−eye構造は、太陽電池にとっては非常に有効な手法と考えられるものの、これを太陽電池の最外層に設けた場合、屋外で長期間に渡り曝露されて汚れ逆に光を遮断する恐れがある。また、これを避けるため、moth−eye構造をユニット内部の受光面側に設けた場合、太陽電池セル3を封止している封止材(樹脂)との屈折率差が小さく、そのため効率よく外部光を取り入れることができず、従来はほとんど採用されてこなかった。本発明者らは、moth−eye構造を太陽電池ユニットに取り入れることを種々検討し、本発明を完成するに至った次第である。
上記集光フィルム1aと、その集光フィルムの微細凸部側に、その微細凸部に相補(隙間無く、完全に噛み合う)して接着する微細凹部が多数形成され、かつその屈折率が集光フィルム1aにおける屈折率よりも小さい型フィルム(集光フィルムの凸部形成の鋳型となる型フィルム)2aとが重層されてなる、外観は平滑な型フィルム付き集光フィルム(1a+2a)も提供する。
本発明の集光フィルムは、上で述べたように、片面は平滑で、他面は微細凸部を規則的に多数敷き詰めるように形成した集光フィルムであって、その微細凸部の各々の形状は、略同一形状の円錐状もしくは多角錐状であり、かつ、その屈折率は1.4以上で透明であることを特徴とする集光フィルム1aである。
屈折率の大きい集光フィルムの凸部がそれよりも屈折率の小さい型フィルム(又は封止材)側へ向いている、すなわち、屈折率の大きい集光フィルムの凸部の広がりが型フィルム(又は封止材)の反対側(すなわち、太陽電池セル側へ)向いていると、あらゆる角度から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入される。型フィルムや封止材における屈折率は、好ましくは1.4〜1.6である。
集光フィルムに用いる屈折率の大きい樹脂としては、微細な凹凸形状を付与しやすい樹脂が好ましく用いられ、そのような樹脂としては、型フィルムに用いられるUV硬化型樹脂(後述)のほかに、加熱または加圧により流動する熱可塑性樹脂を使うことができる。例えば、天然ゴム(屈折率(以下、nともいう)=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)等の(ジ)エン類、
ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)などのポリエステル類、
エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は、必要に応じて、2種以上併用することができる。これら樹脂の軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好ましい。太陽電池ユニットの使用環境温度が通常は80℃以下であることと加工性を考慮すると、上記樹脂の軟化温度は特に好ましくは80〜120℃である。
このような無機微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、酸化アンチモン、インジウムスズ混合酸化物、アンチモンスズ混合酸化物などであり、これらは必要に応じて、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、高級脂肪酸などで表面処理がなされていてもよい。
(R1)n−M−(OR2)m
ここで、MはTi、Zn、Zr、Al、Si、Sb、Be、Cd、Cr、Sn、Cu、Ga、Mn、Fe、Mo、V、W及びCeから選ばれる金属であり、好ましくはTi、Zn又はZrである。R1は、炭素数1〜10の有機基である。R2は、炭素数1〜10の有機基である。R1及びR2はMに複数個結合しているが、それぞれはすべて同一でも、違っていてもよい。nは0以上の整数、mは1以上の整数で、n+mは、Mの価数に等しい。ゾルゲル法による有機・無機ハイブリッド材料を得るとき、用いる金属アルコキシドは一種類でも複数種類でもよい。
本発明で用いる型フィルムの樹脂は、透明で、集光フィルムにおける樹脂よりも屈折率が小さいものであれば特に限定しないが、好ましいものはUV硬化性樹脂である。UV硬化性樹脂の樹脂組成やUV硬化方法は特に選ばない。
ここで(A)成分のバインダーポリマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルと、これらと共重合し得るその他のビニルモノマーを構成モノマとして共重合してなる共重合体が用いられる。これらの共重合体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いることもできる。アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステル又はメタクリル酸無置換アルキルエステルや、これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル及びメタクリル酸置換アルキルエステルなどが挙げられる。
特に集光フィルムでは、屈折率を高くすることが必要であるが、このためには(A)成分及び/又は(B)成分に臭素、イオウ原子を含んでいることが有利である。臭素含有モノマの例としては、第一工業製薬社製、ニューフロンティアBR−31、ニューフロンティアBR−30、ニューフロンティアBR−42Mなどが挙げられる。イオウ含有モノマ組成物としては、三菱瓦斯化学社製、IU−L2000、IU−L3000、IU−MS1010が挙げられる。ただし、本発明で使用される臭素、イオウ原子含有モノマ(それを含む重合物)は、ここに挙げたものに限定されるものではない。
1.型フィルム用の感光性樹脂組成物の調製
バインダ樹脂(A成分)としてのヒタロイドHA7885(日立化成工業社製):50重量部、
架橋性モノマ(B成分)としてのファンクリルFA−321M(日立化成工業社製):50重量部、及び
光開始剤(C成分)としてのIRGACURE184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製):3.0重量部、を有機溶媒のメチルエチルケトンに溶かしワニス(感光性樹脂組成物)とした。このワニスをシリコンウエハ上に約5000Åとなるように膜を形成し、エリプソメーターで屈折率を測定したところ1.48であった。
図2に、型フィルムの調製方法を示す。25μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム8上に、先に調製した感光性樹脂組成物を均一に塗布し、80〜100℃の熱風対流式乾燥機で約10分間かけて乾燥した。これに、底辺長さが50μmで頂角120°の多数の微細ピラミッド状突起を一面に敷き詰めうる形状の金型を押し当てると共に、PETフィルム裏面側から紫外線を照射して、感光性樹脂組成物を硬化させた後、金型を剥がした。PETフィルム8上に、金型の微細ピラミッド状突起を写し取った型フィルム2aを得た。
酸化チタン微粒子TTO−S−2(石原テクノ製):100重量部、ファーミンDM2465(花王社製):20重量部、及び酢酸ブチル:76重量部をとり、ビーズミルを用いて混合し分散液とした。この酸化チタン微粒子分散液196重量部に、タッフィーTF−4200(日立化成工業社製)を714重量部加え、攪拌し、集光フィルム用の高屈折樹脂組成物(熱可塑性樹脂)とした。この樹脂組成物をシリコンウエハ上に約5000Åとなるように膜を形成し、エリプソメーターで屈折率を測定したところ1.7であった。
図3は集光フィルムの調製方法である。PETフィルム(基材)8の上に金型の微細ピラミッド状凸部を写し取った凹部をもつ型フィルム2aが形成され、その凹部模様の上に上記集光フィルム用の高屈折樹脂組成物(熱可塑性樹脂)を塗布し、80〜100℃の熱風対流式乾燥機を通過させ、約10分間かけて乾燥した。PETフィルム(基材)8上の型フィルム2aの上に集光フィルム1aを得た。これから、基材8だけを剥離・除去すれば型フィルム付き集光フィルム(1a+2a)が得られ、基材8及び型フィルム2aを剥離・除去すれば集光フィルム1aが得られる。
フィルム付き集光フィルム(1a+2a)の集光フィルム側を、予め90℃に加熱したガラス板に対面させるようにして熱圧着させ、測定用サンプルとした。
透過および反射スペクトルの測定は、アタッチメントとして積分球を備えた分光光度計V−570(日本分光社製)を用い行なった。それぞれ、表側(集光フィルム側)および裏側(ガラス側)から光を入射させ、各々の透過スペクトル及び反射スペクトル透過を測定した。図5は用いた透過スペクトル測定装置の概略図であり、図6は用いた反射スペクトル測定装置の概略図である。また、図7に測定用サンプルの透過スペクトルを示し、図8に測定用サンプルの反射スペクトルを示した。また、次の表1に波長580nmにおける透過率及び反射率を示した。
波長580nmにおける透過率は、表面側(集光フィルム側)を入射面としたときに131.9%、裏面側(ガラス板側)を入射面としたときに76.8%であり、波長580nmにおける反射率は、表面側(集光フィルム側)を入射面としたときに3.3%、裏面側(ガラス板側)を入射面としたときに39.7%であった(表1)。
図9は、載置・固定したサンプルの一点を中心として回転可能な回転ステージ上に、ガラス板16に熱圧着させた型フィルム付き集光フィルム(1a+2a)を、そのガラス板側が検出器に合うように固定した。また、ハロゲンランプ(光源)からの光をレンズを用いて平行光にし、ビーム径が2mmとなるようにスリットを設けた。サンプルのない状態での垂直入射における受光量を100として、入射角度を変えながらサンプルからの出射強度を求めると、入射角40°のときに84%であった。
ガラス板16に熱圧着させた型フィルム付き集光フィルム(1a+2a)をそのままアセトン中に浸漬し、室温で1時間放置したあと、その集光フィルムを剥がすと、ガラス面に樹脂が残ることなく、集光フィルムはガラス板からきれいに剥離することができた。
また、PET(基材)及び型フィルム付き集光フィルム(1a+2a+8)、接着層7及び保護ガラス6の一体積層体を、その集光フィルム面側を太陽電池セル3に接するようにして、太陽電池セル3に熱圧着した場合も、上記のような剥離条件では、太陽電池セル3上に樹脂残りすることなくきれいに剥離することができた。
型フィルム作製時に、底辺が30μmで頂角が90°の多数の微細ピラミッド状突起を一面に敷き詰めうる形状の金型を使用した以外はすべて実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角40°のときに出射強度が84%であった。
型フィルム作製時に、底辺が20μmで頂角が60°の多数の微細ピラミッド状突起を一面に敷き詰めうる形状の金型を使用した以外はすべて実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角40°のときに出射強度が85%であった。
型フィルム作製時に、底辺が10μmで頂角が40°の多数の微細ピラミッド状突起を一面に敷き詰めうる形状の金型を使用した以外はすべて実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角40°のときに出射強度が85%であった。
高屈折樹脂組成物の作製時に、酸化チタン微粒子分散液を98重量部、タッフィーTF−4200(日立化成工業社製)を714重量部とした以外はすべて実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角40°のときに出射強度が84%であった。この樹脂組成物をシリコンウエハに約5000Åになるように膜を形成し、エリプソメーターで、屈折率を測定したところ1.6であった。
高屈折樹脂組成物の作製時に、酸化チタン微粒子分散液を20重量部、タッフィーTF−4200(日立化成工業社製)を714重量部とした以外はすべて実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角40°のときに出射強度が81%であった。この樹脂組成物をシリコンウエハに約5000Åになるように膜を形成し、エリプソメーターで、屈折率を測定したところ1.5であった。
ポリセットDH−75C−2(日立化成工業社製)100重量部に対し、イルガキュア187(チバガイギー社製)を5重量部、チタニウムテトライソプロポキシドを100重量部加え、1時間攪拌した。これをシリコンウエハに塗布し、高圧水銀灯を用い1000mJ/cm2で露光したものを、エリプソメーターを用いて屈折率を測定したところ、2.2であった。
この樹脂組成物を実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角度が40°のとき出射強度が87%であった。
実施例1〜6で使用したガラスをそのまま用いて、透過および反射スペクトルを測定した。波長が580nmでの透過率及び反射率は、それぞれ91.4%、8.6%であった(表1参照)。
型フィルム作製時に、金型を使用しなかった以外はすべて実施例1と同様な手法により、測定用サンプルを作製し、出射強度入射角度依存性の測定をしたところ、入射角40°のときに出射強度が75%であった。表2にこれらの結果をまとめた。
ガラス同士を太陽電池用充填材であるEVAを用いて150℃、1MPaで熱圧着した。これをアセトンに浸漬したが、ガラス同士を剥離することはできなかった。その他、トルエン、キシレン、n−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドにも同様に浸漬してみたが、いずれも剥離はできなかった。
1a:集光フィルム(高屈折率樹脂;固化後又は硬化後)
2:型フィルム用樹脂
2a:型フィルム(固化後又は硬化後)
3:太陽電池セル
4:封止材(充填材)
5:裏面フィルム
6:保護ガラス
7:接着層
8:基材(PET)フィルム
9:金型
10:サンプル
11:検出器
12:積分球
13:レンズ
14:スリット
15:回転ステージ
16:ガラス板
Claims (9)
- 保護ガラス、集光フィルム、太陽電池セルがこの順に構成される太陽電池ユニットの太陽電池セル受光面に積層する型フィルム付き集光フィルムで、片面は平滑であり、他面は微細凸部を多数敷き詰めるように形成した集光フィルムであって、前記微細凸部の各々の形状は、略同一形状の円錐状もしくは多角錐状であり、かつ、その屈折率は1.4以上で透明である集光フィルムと、前記集光フィルムの微細凸部側に、その微細凸部に相補して接着する微細凹部が多数形成され、かつその屈折率が前記集光フィルムにおける屈折率よりも小さい型フィルムとが重層されてなる型フィルム付き集光フィルム。
- 集光フィルムの円錐状もしくは多角錐状の頂角は150度よりも小さい、請求項1の型フィルム付き集光フィルム。
- 集光フィルムの微細凸部の形状は四角錐である、請求項1又は2の型フィルム付き集光フィルム。
- 集光フィルムの四角錐の底辺の長さが0.1μm以上8000μm以下である、請求項1〜3いずれかの型フィルム付き集光フィルム。
- 集光フィルムのフィルム材料は、樹脂と屈折率の高い無機材料との複合物とからなる請求項1〜4いずれかの型フィルム付き集光フィルム。
- 集光フィルムの樹脂と屈折率の高い無機材料との複合物は、樹脂中でゾルゲル反応を起こして得られる複合物である、請求項5の型フィルム付き集光フィルム。
- 太陽電池セルの受光面に、請求項1〜6のいずれかの型フィルム付き集光フィルムが、その集光フィルム側を太陽電池セル側にして積層されている太陽電池ユニット。
- 太陽電池セルの受光面に、請求項1〜6のいずれかの型フィルム付き集光フィルムが、その平滑面を太陽電池セル側にして積層され、更にその上に封止材が積層されている太陽電池ユニット。
- 請求項7又は8の太陽電池ユニットであって、太陽電池セルの下側には、更に、封止材及び裏面フィルムが積層されている太陽電池ユニット。
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