以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
(1)第一実施形態
(1−1)自律移動装置の構成
まず、図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る自律移動装置1の構成について説明する。図1は、自律移動装置1の構成を示すブロック図である。自律移動装置1は、この自律移動装置1を使用する特定の人(以下「主人」という)のそばについて、主人に追従するように、または主人を誘導するように自律的に移動する。また、自律移動装置1は、カメラ10及び通信機12などによって取得される情報から、主人及びその周囲環境を認識するとともに、認識された周囲環境に基づいて主人との位置関係を決定する。そして、決定された位置関係に基づいて自律移動装置1が移動する。なお、主人が危険であると判断された場合には、例えばスピーカ30から警告音を発したり、バックライト32を点灯させたり、または車輪36を駆動して自律移動装置1を移動させることにより主人の危険度を低減する。
カメラ10は、主人やその周囲環境の画像を取得する一対のCCDカメラと、取得した画像を画像処理することによって主人及びその周囲の障害物や道路標識など(即ち周囲環境)を認識する画像処理部とを有している。この画像処理部では、一対のCCDカメラで取得した画像からエッジ抽出やパターン認識処理などによって主人やその周囲の障害物や道路標識などを抽出して認識する。これにより、主人との位置関係の認識も可能となる。また、左右の取得画像中における主人などの対象物位置の違いを基にして三角測量方式により対象物との距離及び横変位を求め、前フレームで求めた距離に対する変化量から相対速度を求める。カメラ10と後述する電子制御装置(以下「ECU」という)20とは通信回線で接続されており、カメラ10により取得された情報は、この通信回線を介してECU20に伝送される。
通信機12は、送信機13及び受信機14を含んで構成され、例えば、自律移動装置1の周囲にある他の自律移動装置、車両、及び交差点に設置されている信号機や道路に設置されているカメラ、レーダなどのインフラストラクチャとの間で情報を送受信するものである。送信機13は、例えば、主人の位置・移動方向・移動速度などの情報を他の自律移動装置や周辺を走行する車両などに送信する。一方、受信機14は、例えば、他の自律移動装置から送信された他の歩行者の位置・移動方向・移動速度などの情報、周辺を走行する車両から送信された走行車両の位置・移動方向・移動速度・操作状態などの情報、周辺に停車されている車両から送信された停車車両の位置などの情報、及び、上述したインフラストラクチャから送信された信号機の点灯状態や交通状態などの情報を受信する。なお、通信機12は、例えば半径約100mの範囲で情報の送受信を行うことが可能に設定されている。
通信機12とECU20とは、通信回線で接続されることにより、相互に情報の交換が可能となるように構成されている。ECU20で生成された送信情報はこの通信回線を介してECU20から送信機13に伝送される。一方、受信機14によって受信された各種の周囲環境情報は、この通信回線を介してECU20に伝送される。
このように、本実施形態では、カメラ10及び通信機12などによって主人及びその周囲の環境が認識される。より詳細には、例えば、主人の位置・移動方向・移動速度、他の歩行者、自転車や自動車などの位置・形状・移動方向・移動速度・操作状態、停車車両、電柱や落下物などの障害物の位置・形状、及び、信号機の点灯状態や道路標識などの交通状態などの周囲環境が認識される。また、例えば、物体の種類、質量や重量や材質などに関する属性も認識される。ここで、物体の種類に関する属性としては、例えば、大型車、小型車、二輪車、自転車などの分類が挙げられる。質量や重量に関する属性としては、重いか軽いか、また、材質に関する属性としては、表面が軟らかいか硬いかなどが挙げられる。すなわち、カメラ10及び通信機12は特許請求の範囲に記載の周囲環境認識手段として機能する。
ここで、主人であるか否かの認識は、例えば、主人−自律移動装置1間通信の通信情報に主人であることを示すID情報を乗せることにより、または、撮像された人物が着ている衣服の形状や模様が予め学習させておいた主人のものと一致するか否かを判断することにより行うことができる。さらに、指紋や虹彩による認証技術などを組み合わせて用いてもよい。
ECU20は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムなどを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAMなどにより構成されている。そして、上記構成によって、ECU20の内部には、位置関係決定部21、移動状態検出部22、物体認識部23、危険度判断部24、危険回避部25、及びアクチュエータ制御部26が構築されている。
まず、位置関係決定部21は、カメラ10及び通信機12などによって認識された周囲環境に基づいて、主人との位置関係を決定する。ここで、位置関係決定部21は、自律移動装置1の現在地を(カメラ10、通信機12、ECU20を用いて)計算して認識する自己位置認識部と、主人の位置及び移動速度を(カメラ10、通信機12、ECU20を用いて)計算する主人情報計算部と、(静止中及び移動中の)物体の3次元空間における位置、速度、及び形状を(カメラ10、通信機12、ECU20を用いて)計算して認識する物体情報認識部と、主人の周囲の所定のエリアに向かって進入しながら移動する際に必要となる値(例えば、後述する主人の視野、物体の見切り点、及び危険度マップなど)を(カメラ10、通信機12、ECU20を用いて)計算するエリア移動計算部と、から構成されている。
また、移動状態検出部22は、自律移動装置1の移動状態を検出する。ここで、自律移動装置1の移動状態とは、自律移動装置1の移動速度及び移動方向の少なくともいずれか一方を含む移動の様子や移動形態のことである。即ち、自律移動装置1の移動状態とは、自律移動装置1の移動速度及び/又は移動方向を含む移動の様子や移動形態のことである。
また、物体認識部23は、自律移動装置1の移動方向前方に物体が存在した場合に、この物体の上記した移動状態を検出するとともに、自律移動装置1に対するその物体の相対位置関係を認識する。
また、危険度判断部24は、カメラ10及び通信機12により認識された周囲環境に基づいて主人の危険度を判断する。
また、危険回避部25は、危険度判断部24により主人が危険であると判断されたときに、最適な危険回避動作を決定し、主人の危険度を低減させる。
すなわち、ECU20を構成する位置関係決定部21は特許請求の範囲に記載の位置関係決定手段として機能する。また、移動状態検出部22は特許請求の範囲に記載の移動状態検出手段として機能する。また、物体認識部23は特許請求の範囲に記載の物体認識手段として機能する。また、危険度判断部24は特許請求の範囲に記載の危険度判断手段として機能する。また、危険回避部25は特許請求の範囲に記載の危険回避手段として機能する。また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は特許請求の範囲に記載の移動手段として機能する。また、以下に詳述するアクチュエータ制御部26、及びスピーカ30、バックライト32、プロジェクタ42やディスプレイ44などの各アクチュエータは、特許請求の範囲に記載の危険回避手段として機能する。なお、自律移動装置1による追尾以外の移動形態の詳細については後述する。
また、アクチュエータ制御部26は、位置関係決定部21により決定された位置関係に基づいて自律移動装置1を移動させる。なお、アクチュエータ制御部26は、位置関係決定部21により決定された位置関係に基づいて、自律移動装置1の移動モードを複数の移動モードの中から択一的に選択して、その選択した移動モードで自律移動装置1を移動させる。また、アクチュエータ制御部26は、自律移動装置1に予め設定された移動経路と、移動状態検出部22により検出された自律移動装置1の移動状態と、カメラ10及び通信機12などによって認識された主人との位置関係と、に基づいて、自律移動装置1を移動させる。
更に、アクチュエータ制御部26は、物体認識部23により物体の移動状態が検出された場合に、物体認識部23により認識された物体の相対位置関係に基づいて、自律移動装置1を移動させる。また、アクチュエータ制御部26は、危険回避部25により決定された危険回避動作に基づいてスピーカ30、バックライト32、電動モータ34、プロジェクタ42やディスプレイ44などを駆動する。
スピーカ30はECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26から出力される制御信号に応じて、警告音や音声情報などを発することによって主人に注意を促す。バックライト32もECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26により駆動され、例えば危険度に応じた色の光を発することによって主人に注意を促す。また、電動モータ34もECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26により駆動され、電動モータ34に取り付けられている車輪36を回転させることによって自律移動装置1を移動させる。さらに、ECU20には、プロジェクタ42やディスプレイ44が接続されており、危険情報や危険回避情報などの各種情報を投影したり表示したりすることにより、主人に注意を促す。
(1−2)自律移動装置の動作の全体的な概要
次に、図2を併せて参照して、追尾以外の移動形態をとって利便性を高めることが可能な自律移動装置1の動作の全体的な概要について説明する。図2は、自律移動装置1において行われる処理手順の全体的な概要を示すフローチャートである。図2のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、自律移動装置1の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
まず最初のステップS101では、自律移動装置1の移動モード(即ち走行モード)が、主人によって、複数の移動モードの中から択一的に選択されて、自律移動装置1のECU20に対して設定される。そして、ステップS111に進む。この移動モードの選択と設定は、自律移動装置1の自立的な移動の開始前に予め行われる。自律移動装置1の複数の移動モードには、ナビモード制御(別名はモードMn)、追従モード制御(別名はモードMt)、停止モード制御(別名はモードMs)、エリア移動モード制御(別名はモードMm)、及び回避モード制御(別名はモードMa)の5種類のモードが含まれている。このように、自律移動装置1の移動モードの候補として複数の移動モードが用意されているため、これら複数の移動モードを組み合わせることにより、自律移動装置1は主人の移動形態と協調した多用な移動形態をとることが可能となる。
ここで、ナビモード制御は、自律移動装置1が主人との位置関係を適切に保ちながら(即ち、主人から見て常に同じ位置で)主人を目的地まで先導しながら移動するモードの制御である。また、追従モード制御は、自律移動装置1が主人の進行方向の前方、後方、左側、及び右側のいずれかのエリアに相対的に留まりながら主人に追従するモードの制御である。また、停止モード制御は、自律移動装置1が移動を中止して停止するモードの制御である。また、エリア移動モード制御は、主人の周囲の所定のエリアに向かって当該エリアに進入しながら移動するモードの制御である。また、回避モード制御は、自律移動装置1の移動方向前方に物体が存在した場合、自律移動装置1がその物体を避けながら移動するモードの制御である。
ステップS111では、ECU20に対して設定された移動モードがナビモードであるか否かが、ECU20によって判定される。ここで、ECU20に対して設定された移動モードがナビモードである場合、ステップS112に進む。ステップS112で行われるナビモード制御の詳細については、後述する。なお、ナビモード制御中に主人が信号待ちしている場合などは、ステップS112から、一時的にステップS141、S151、S111、S121、及びS131の順に進んで停止モード制御となるが、主人の信号待ちが終わると、ステップS131から、ステップS141、S151、S111、及びS112の順に進んで再びナビモード制御となる。ステップS112の後には、ステップS141に進む。
一方、ECU20に対して設定された移動モードがナビモードではない場合、ステップS121に進む。なお、主人と自律移動装置1の距離が所定距離以上離れたことが、カメラ10及び通信機12などによって認識された場合は、ECU20の位置関係決定部21によってナビモードがオフ(即ち非作動)に設定される。このため、主人と自律移動装置1の距離が所定距離以上離れた場合、ステップS121に進む。また、アクチュエータ制御部26が、現在地(即ち自己位置)の推定(即ち推測)に失敗するなどによって、主人を誘導する移動経路を認識することができなくなった場合も、ステップS121に進む。
ステップS121では、ECU20に対して設定された移動モードが追従モードであるか否かが、ECU20によって判定される。ここで、ECU20に対して設定された移動モードが追従モードである場合、ステップS122に進む。ステップS122で行われる追従モード制御の詳細については、後述する。なお、追従モード制御中に主人が停止した場合などは、ステップS122から、一時的にステップS141、S151、S111、S121、及びS131の順に進んで停止モード制御となるが、主人の信号待ちが終わると、ステップS131から、ステップS141、S151、S111、S121、及びS122の順に進んで再び追従モード制御となる。ステップS122の後には、ステップS141に進む。
一方、ECU20に対して設定された移動モードが追従モードではない場合、ステップS131に進む。カメラ10及び通信機12が主人の位置の認識に失敗し、主人の位置を見失った場合は、ECU20の位置関係決定部21によって追従モードがオフ(即ち非作動)に設定される。このため、カメラ10及び通信機12が主人の位置を見失った場合、ステップS131に進む。
ステップS131では、自律移動装置1が移動を中止して停止する。ここで、主人自らが、自律移動装置1との位置関係を調整するなどによって、カメラ10及び通信機12が主人の位置の認識に成功した後で、ステップS141に進む。
ステップS141では、自律移動装置1がエリア移動を要求されているか否かが、ECU20によって判定される。ここで、自律移動装置1がエリア移動を要求されている場合(即ち、位置関係決定部21によって決定された位置関係が、主人の周囲の所定のエリアへの進入という位置関係であった場合)、ステップS142に進む。ステップS142で行われるエリア移動モード制御の詳細については、後述する。ステップS142の後には、ステップS141に戻る。一方、自律移動装置1がエリア移動を要求されていない場合(即ち、位置関係決定部21によって決定された位置関係が上記のエリアへの進入という位置関係ではない場合)、ステップS151に進む。
ステップS151では、自律移動装置1が物体に対する回避を要求されているか否かが、ECU20によって判定される。ここで、自律移動装置1が物体に対する回避を要求されている場合(即ち、物体認識部23により物体の移動状態が検出された場合)、ステップS152に進む。ステップS152で行われる回避モード制御の詳細については、後述する。ステップS152の後には、ステップS141に戻る。一方、自律移動装置1が物体に対する回避を要求されていない場合(即ち、物体認識部23により物体の移動状態が検出されていない場合)、ステップS111に戻る。
このように、ナビモード制御、追従モード制御、停止モード制御、エリア移動モード制御、及び回避モード制御という必要最小限の移動モードを組み合わせることによって、自律移動装置1は、主人Bの移動形態と協調した多用な移動形態をとることが可能となる。これにより、例えば、主人が自律移動装置1に誘導して欲しいと望んだ場合はナビモードが選択されて、主人が自律移動装置1についてきて欲しいと望んだ場合は追従モードが選択されていれば、この主人の両方の要求が実現される。
また、自律移動装置1のために用意して設定すべき移動モードは上記したように5つと少ないため、制御ロジックの構築に要する労力は少なく、この制御ロジックを容易に構築することができる。また、エリア移動モードが用意されているため、主人の周囲の所定のエリアへの進入を行うことによる、主人の移動方向や移動速度などの移動形態の制限が可能となり、主人の保護が可能になる。
(1−3)追従モード制御
次に、図3を併せて参照して、図2のステップS122で行われる追従モード制御の詳細について説明する。図3は、追従モード制御の処理手順を示すフローチャートである。図3のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、追従モード制御による処理が終了されるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
まず最初のステップS201では、自律移動装置1の追従モードが、主人によって、複数の追従モードの中から基本追従モード(別名はモードMo)として選択されて、自律移動装置1のECU20に対して設定される。そして、ステップS211に進む。この追従モードの選択と設定は、自律移動装置1の追従モード制御の開始前に予め行われる。自律移動装置1の複数の追従モードには、追従先行モード(別名はモードMf)、追従左並走モード(別名はモードMl)、追従右並走モード(別名はモードMr)、及び追従後追モード(別名はモードMb)の4種類の追従モードが含まれている。なお、この他に、追従右斜め前並走モードや、追従左斜め後並走モードなどが用意されていてもよい。更に、自律移動装置1自体の向き(前方向き、横向き、後方向きなど)を用意してもよい。このように、自律移動装置1の追従モードの候補として、主人との位置関係の違いに応じた複数の追従モードが用意されているため、自律移動装置1は、主人とその周辺環境の状況に応じた多用な移動形態をとることが可能となる。
ここで、追従先行モードは、自律移動装置1が主人の移動方向前方のエリアに相対的に留まりながら主人に追従するモードである。また、追従左並走モードは、自律移動装置1が主人の左側のエリアに相対的に留まりながら主人に追従するモードである。また、追従右並走モードは、自律移動装置1が主人の右側のエリアに相対的に留まりながら主人に追従するモードである。また、追従後追モードは、自律移動装置1が主人の移動方向後方のエリアに相対的に留まりながら主人に追従するモードである。
ステップS211では、カメラ10及び通信機12などによって認識された主人の移動速度(例えば歩行速度)及び自律移動装置1の移動速度の履歴から、移動状態検出部22が主人及び自律移動装置1の平均移動速度を計算する。そして、ステップS221に進む。
ステップS221では、移動状態検出部22が、後述する「主人が移動する可能性の高い(即ち、重要度の高い)移動方向に対して重み付けした方向重み付けマップW1」と、後述する「主人が移動する可能性の高い距離に対して重み付けした距離重み付けマップW2」とのそれぞれを求め、方向重み付けマップW1と距離重み付けマップW2とを重ね合わせることにより、合成重み付けマップW1+W2を計算によって求める。次に、ステップS231に進む。
ステップS231では、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34が、自律移動装置1が存在するエリア内における合成重み付けマップW1+W2の最も重みがある位置(即ち重みが最大となる位置)に、自律移動装置1を移動させる。そして、ステップS241に進む。
ステップS241では、自律移動装置1がエリア移動を要求されているか否かが、ECU20によって判定される。ここで、自律移動装置1がエリア移動を要求されている場合(即ち、位置関係決定部21によって決定された位置関係が、主人の周囲の所定のエリアへの進入という位置関係であった場合)、ステップS242に進む。ステップS242で行われるエリア移動モード制御の詳細については、後述する。ステップS242の後には、ステップS241に戻る。一方、自律移動装置1がエリア移動を要求されていない場合(即ち、位置関係決定部21によって決定された位置関係が上記のエリアへの進入という位置関係ではない場合)、ステップS251に進む。
ステップS251では、自律移動装置1が物体に対する回避を要求されているか否かが、ECU20によって判定される。ここで、自律移動装置1が物体に対する回避を要求されている場合(即ち、物体認識部23により物体の移動状態が検出された場合)、ステップS252に進む。ステップS252で行われる回避モード制御の詳細については、後述する。ステップS252の後には、ステップS241に戻る。一方、自律移動装置1が物体に対する回避を要求されていない場合(即ち、物体認識部23により物体の移動状態が検出されていない場合)、ステップS261に進む。
ステップS261では、優先順位の高い追従モードが、ECU20によって、複数の追従モードの中から基本追従モードとして選択されて、自律移動装置1のECU20に対して設定される。この優先順位の詳細については、後述する。そして、ステップS211に戻る。
次に、図4及び図5を併せて参照して、上記した4つの追従モードそれぞれの定義の仕方について説明する。図4は、上記した4つの追従モードそれぞれの定義の仕方を説明する説明図である。また、図5は、上記した4つの追従モード間の遷移を決定する際に用いられる優先順位を説明する説明表である。
まず、図4に示されるように、主人Bが例えば前方に向いた方向を主軸Zfの方向とする。そして、主人Bを回転中心の軸として、この主軸Zfから、水平な地面に平行に、主人から見て左方向に角度Θ(以下、方向角度Θという。)だけ向いた場合を考える。この場合の方向角度Θは、主人から見て左方向に向いた場合を正の角度(0度以上かつ360度未満)とし、主人から見て右方向に向いた場合を負の角度(0度未満かつ−360度以下)とする。例えば、方向角度405度とは、方向角度45度と実質的に同じ角度を意味し、主人Bから見て左斜め前の方向を意味する。また、方向角度−450度とは、方向角度−90度と実質的に同じ角度を意味し、主人Bから見て右の方向を意味する。
ここで、上記した4つの追従モードがカバーするエリア(即ち可動領域)を規定するための方向角度(即ち、方向を定める主軸Zfからの角度)について説明する。追従先行モードは、正の角度である方向角度Θ1(0度以上90度未満)と、負の角度である方向角度Θ3(0度未満−90度以下)とがなす2つの角度のうち大きくない方の角度の範囲において自律移動装置1が存在しながら主人Bに追従するモードである。なお、自律移動装置1は主人Bから所定距離以内に存在することとする。また、追従左並走モードは、上記の方向角度Θ1と、正の角度である方向角度Θ2(90度以上180度未満)とがなす2つの角度のうち大きくない方の角度の範囲において自律移動装置1が存在しながら主人Bに追従するモードである。また、追従右並走モードは、上記の方向角度Θ3と、負の角度である方向角度Θ4(−90度未満−180度以上)とがなす2つの角度のうち大きくない方の角度の範囲において自律移動装置1が存在しながら主人Bに追従するモードである。また、追従後追モードは、上記の方向角度Θ2と方向角度Θ4とがなす2つの角度のうち大きくない方の角度の範囲において自律移動装置1が存在しながら主人Bに追従するモードである。
なお、追従先行モードの可動領域の中心軸(即ち、代表軸Zf)の方向角度Θ5(以下、追従先行モードの中心軸方向角度Θ5という。)は、Θ1とΘ3の平均である。また、追従左並走モードの可動領域の中心軸(即ち、代表軸Zl)の方向角度Θ6(以下、追従左並走モードの中心軸方向角度Θ6という。)は、Θ1とΘ2の平均である。また、追従右並走モードの可動領域の中心軸(即ち、代表軸Zr)の方向角度Θ7(以下、追従右並走モードの中心軸方向角度Θ7という。)は、Θ3とΘ4の平均である。また、追従後追モードの可動領域の中心軸(即ち、代表軸Zb)の方向角度Θ8(以下、追従後追モードの中心軸方向角度Θ8という。)は、Θ1とΘ3の平均と180度との和である。
このように、上記した4つの追従モードは、主人Bからの距離及び主人Bから見た方向角度によって定義される。なお、上記した4つの追従モードは、上記説明したような扇形状のエリアに限られず、例えば矩形や三角形などの形状であってもよい。
次に、上記した4つの追従モード間の遷移を決定する際の優先順位について、図5を参照して説明する。この優先順位は、上記したステップS261において用いられる。図5は、上記した基本追従モードとしてどの追従モードが択一的に選択されたかによって、どの追従モードに遷移しやすいかを示している。なお、この優先順位は、自律移動装置1のECU20に対して予め設定されているが、主人の好みに合わせて設定の変更が可能にしてもよい。例えば、基本追従モードとして追従先行モードMfが選択されている場合、次に遷移しやすい追従モードとして、1番目に優先順位の高い追従モードは追従先行モードMfであり、2番目に優先順位の高い追従モードは追従左並走モードMl又は追従右並走モードMrであり、3番目に優先順位の高い追従モードは追従後追モードMbである。同様に、基本追従モードとして追従左並走モードMlが選択されている場合、次に遷移しやすい追従モードとして、1番目に優先順位の高い追従モードは追従左並走モードMlであり、2番目に優先順位の高い追従モードは追従右並走モードMrであり、3番目に優先順位の高い追従モードは追従後追モードMbであり、4番目に優先順位の高い追従モードは追従先行モードMである。
同様に、基本追従モードとして追従右並走モードMrが選択されている場合、次に遷移しやすい追従モードとして、1番目に優先順位の高い追従モードは追従右並走モードMrであり、2番目に優先順位の高い追従モードは追従左並走モードMlであり、3番目に優先順位の高い追従モードは追従後追モードMbであり、4番目に優先順位の高い追従モードは追従先行モードMである。同様に、基本追従モードとして追従後追モードMbが選択されている場合、次に遷移しやすい追従モードとして、1番目に優先順位の高い追従モードは追従後追モードMbであり、2番目に優先順位の高い追従モードは追従左並走モードMl又は追従右並走モードMrであり、3番目に優先順位の高い追従モードは追従先行モードMfである。
次に、図6(a)及び図6(b)を併せて参照して、主人Bが移動する可能性の高い移動方向について説明する。図6(a)は、主人Bが移動する可能性の高い(即ち、重要度の高い)移動方向に対して重み付け(即ち、格付け)した「方向重み付けマップW1」である。重みが大きいほど濃く示されている。また、図6(b)は、図6(a)の重み付けを、縦軸を重みの大きさ、横軸を角度Θとして示したグラフである。重みが大きいほど縦軸の方向に高い位置に示されている。図6(a)及び図6(b)に示されるように、上記した4つの追従モードそれぞれの代表軸Zf,Zl,Zr,Zbを中心として最も重くなるように重み付けされている。従って、代表軸Zf,Zlの間の方向角度Θ1、代表軸Zl,Zbの間の方向角度Θ2、代表軸Zf,Zrの間の方向角度Θ3、代表軸Zr,Zbの間の方向角度Θ4の各方向においては、最も軽い重み付けとなる。
なお、方向重み付けマップW1における、移動方向に対する重み付けは、上記のように方向角度Θ1,Θ2,Θ3,Θ4の方向中心に重み付けされていなくてもよく、例えば正規分布に基づいて重み付けされてもよい。
次に、図7(a)及び図7(b)を併せて参照して、主人Bが移動する可能性の高い移動距離について説明する。図7(a)は、主人Bが移動する可能性の高い(即ち、重要度の高い)移動距離に対して重み付け(即ち、格付け)した「距離重み付けマップW2」である。重みが大きいほど濃く示されている。また、図7(b)は、図7(a)の重み付けを、縦軸を重みの大きさ、横軸を最も重い地点を中心とした主人Bからの距離として示したグラフである。重みが大きいほど縦軸の方向に高い位置に示されている。
主人Bが移動する可能性が最も高い領域(即ち、楕円形状Hによって示される領域)に関して、図7(a)及び図7(b)に示されるように、主人Bの現在地から、前方の移動距離Df及び後方の移動距離Dbは長く、左側方向の移動距離Dl及び右側方向の移動距離Drは短い。従って、主人Bが移動する可能性が等しい地点を結んだ線(即ち、この可能性の等しい等高線が示す線)は、この移動距離Df(及び移動距離Dfと等しい移動距離Db)を長径とし、この移動距離Dl(及び移動距離Dlと等しい移動距離Dr)を短径とする基準楕円形状となっている。
ここで、主人Bが移動する可能性を、高、中、低、の3種類に区分すると、この可能性が高程度の領域が示す楕円形状Hの周囲、即ち外側及び内側のそれぞれには、この可能性が中程度の領域が示す楕円形状M,M’のそれぞれが位置している。更に、この楕円形状Mの外側には、この可能性が低程度の領域が示す楕円形状Lが位置している。また、この楕円形状M’の内側には、この可能性が低程度の領域が示す楕円形状L’が位置している。なお、楕円形状H,M,M’L,L’は、各楕円形状の中心、長径方向、及び短径方向が同一であり、互いに相似形状である。ここで、移動距離Df(及び移動距離Db)は、主人B(即ち、主人Bに追従している自律移動装置1)の現在の前後方向の移動速度を速度Voとし、主人Bの所定の移動に要する一定の所定時間を時間Toとした場合の、速度Voと時間Toの積によって求められる。
なお、主人Bの現在の前後方向の移動速度を速度Voとするのではなく、主人Bの所定時間内における移動速度の平均を速度Voとしてもよい。また、距離重み付けマップW2における、移動距離に対する重み付けは、上記のように楕円形状に重み付けされていなくてもよく、例えば矩形状に重み付けされていてもよい。
次に、図8を併せて参照して、合成重み付けマップW1+W2について説明する。図8は、合成重み付けマップW1+W2を説明するための説明図である。図8に示されるように、合成重み付けマップW1+W2は、上記した方向重み付けマップW1と、上記した距離重み付けマップW2とを重ね合わせることにより求められる。この重ね合わせの結果、最も重みが最大となる領域が、主人Bが移動する可能性の高い領域として自律移動装置1によって認識されて、自律移動装置1はこの領域に移動する。
このように、上記の複数の追従モードの中から選択と設定が行われるので、主人の好みのモードで自律移動装置1を主人に対して追従させることができる。また、上記したように、主人Bの現在の移動速度に応じて重み付けが変更されるので、例えば主人Bが走行中の場合、自律移動装置1は主人Bに対して通常より遠い距離に位置しながら追従する。これにより、主人Bの不安感を低減させることができる。また、例えば移動中の主人Bが急停止した場合、主人Bの現在の移動速度に応じて重み付けが変更されるので、自律移動装置1は主人Bに衝突することなく移動継続又は停止することができる。
(1−4)ナビモード制御
次に、図9を併せて参照して、図2のステップS112で行われるナビモード制御について説明する。図9は、ナビモード制御において行われる処理手順を示すフローチャートである。図9のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、自律移動装置1の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
まず最初のステップS301では、自律移動装置1に予め設定された移動経路と、移動状態検出部22により検出された自律移動装置1の移動状態と、位置関係決定部21によって認識された主人Bとの位置関係(即ち、自律移動装置1からみた主人Bの相対的な位置関係)とに基づいて、アクチュエータ制御部26が、自律移動装置1の直近の移動方向及び移動速度を示す移動ベクトル(即ち、移動方向を有する移動速度Vと移動時間Tとの積)を求めて、この移動ベクトルに基づいて自律移動装置1を移動させる。なお、移動ベクトルを求める際に用いる移動速度Vや移動時間Tは、主人Bごとに異なる履歴の平均値を用いてもよい。移動経路と移動状態と位置関係に基づいたアクチュエータ制御部26による自律移動装置1の移動については、後述する。そして、ステップS302に進む。
ステップS302では、移動状態検出部22が、上記した移動ベクトルによって示される自律移動装置1の直近の移動先となる移動点を基準とした後述の重み付けマップW3を計算する。そして、ステップS303に進む。
ステップS303では、位置関係決定部21が、方向重み付けマップW1と、距離重み付けマップW2と、上記した重み付けマップW3とに基づいて、全体の重みWallを計算する。そして、ステップS311に進む。
ステップS311では、自律移動装置1のECU20に対して設定された基本追従モードがカバーするカバーエリア(即ち可動領域)と、上記した重み付けマップW3とが重なるかが、ECU20によって判定される。このエリアと重み付けマップW3とが重なる場合は、後述のステップS361に進む。また、このエリアと重み付けマップW3とが重ならない場合は、後述のステップS321に進む。
ステップS321では、上記したエリアと重み付けマップW3とが重なるようにするために、自律移動装置1の直近の移動先を計算するのに用いた移動時間Tを、ECU20が所定時間ΔTだけ短く設定する。なお、このとき、上記したエリアと重み付けマップW3とが重なるようにするために、重み付けマップW3のエリアを拡大させてもよい。ステップS321の後には、ステップS331に進む。
ステップS331では、所定時間ΔTだけ短く設定された移動時間Tは、移動時間に関する所定の閾値である移動時間閾値Tminより大きいかどうかが、ECU20によって判定される。所定時間ΔTだけ短く設定された移動時間Tが移動時間閾値Tminより大きい場合は、ステップS301に戻る。また、所定時間ΔTだけ短く設定された移動時間Tが移動時間閾値Tminより大きくない場合(即ち、小さいか等しい場合)、ステップS341に進む。
ステップS341では、アクチュエータ制御部26が、所定時間ΔTだけ短く設定された移動時間Tを用いて、再び、上記したような移動ベクトルがECU20による計算によって求められる。更に、移動状態検出部22が、再計算された移動ベクトルを基準とした、後述の重み付けマップW3を再計算する。そして、ステップS351に進む。
ステップS351では、自律移動装置1のECU20に対して設定されていない他の追従モードのそれぞれがカバーするカバーエリア(即ち可動領域)と、上記した重み付けマップW3とが重なるかが、ECU20によって判定される。このエリアと重み付けマップW3とが重なる場合は、後述のステップS361に進む。また、このエリアと重み付けマップW3とが重ならない場合は、後述のステップS362に進む。
ステップS361では、重み付けマップW3と重なる上記したエリアをカバーする追従モードが、基本追従モードとしてECU20によって変更される。更に、このエリアと重み付けマップW3との重なりが最大となる地点(即ち、最も重み付けされた地点)がECU20によって求められ、この地点まで、アクチュエータ制御部26が自律移動装置1を移動させる。そして、ステップS371に進む。
ステップS362では、上記したエリアと重み付けマップW3とが重なっていないため、一定時間だけ、ECU20による制御が停止される。このため、自律移動装置1の移動も停止される。ステップS362の後には、ステップS371に進む。
ステップS371では、上記した移動ベクトルの計算に用いる移動時間Tを、初期の値としての移動時間である初期値Tminに設定し、ステップS301に戻る。
次に、図10を併せて参照して、移動経路GRと移動状態と位置関係に基づいた、アクチュエータ制御部26による自律移動装置1の移動について説明する。図10は、移動経路GRと移動状態と位置関係に基づいた自律移動装置1の移動を説明する説明図である。この移動経路GRは、主人Bを目的地まで誘導させるための誘導経路であり、自律移動装置1のECU20に予め設定されている。また、この自律移動装置1の移動状態には、自律移動装置1の移動速度や移動方向などの移動に関する情報が含まれている。
まず、上記した移動経路GRと上記した移動ベクトルMVとの交点が、自律移動装置1の直近の移動先となる移動点MPとして、アクチュエータ制御部26によって求められる(ステップS301)。次に、この移動点MPを基準(中心)とした、「自律移動装置1が移動する可能性の高い(即ち、重要度の高い)領域に関して重み付けした重み付けマップW3」を、移動状態検出部22が計算する(ステップS311)。重み付けマップW3は、基準となっている移動点MPに近いほど(マップW3の内側ほど)、重く重み付けされている。なお、重み付けマップW3は、自律移動装置1に近いほど重く重み付けされていてもよく、また、非対称形状であってもよい。そして、この重み付けマップW3と上記したカバーエリア内の合成重み付けマップW1+W2との重なりが最大となる地点(即ち、最も重み付けされた地点)がアクチュエータ制御部26によって求められ、この地点まで、自律移動装置1が移動する。
次に、図11(a)〜図11(j)を併せて参照して、移動経路GRと移動状態と位置関係に基づいた自律移動装置1の移動制御の一連の流れについて説明する。図11(a)〜図11(j)は、この移動制御の一連の流れの一例を説明する説明図である。
まず、図11(a)に示すように、移動ベクトルMVを求めた後で移動点MPを求め、移動点MPに基づいて重み付けマップW3を計算する。なお、ここでは基本追従モードとして追従右並走モードが選択されているとする。次に、図11(b)に示すように、重み付けマップW3と追従右並走モードのカバーエリア内の合成重み付けマップW1+W2との重なりが最大となる地点(即ち、所定距離だけ前方の地点)まで、自律移動装置1が移動する。そして、図11(c)に示すように、主人Bが移動すると、再度、新たな移動先となる移動点MPを計算する。その後で、図11(d)に示すように、再度、新たな移動点MPに基づいて重み付けマップW3を計算し、重み付けマップW3と追従右並走モードのカバーエリア内の合成重み付けマップW1+W2との重なりが最大となる地点(即ち、所定距離だけ左斜め前方の地点)まで、自律移動装置1が移動する。
次に、図11(e)に示すように、再度、移動ベクトルMVを求めた後で移動点MPを求め、移動点MPに基づいて重み付けマップW3を計算する。そして、図11(f)に示すように、再度、重み付けマップW3と追従右並走モードのカバーエリア内の合成重み付けマップW1+W2との重なりが最大となる地点(即ち、所定距離だけ左斜め前方の地点)まで、自律移動装置1が移動する。その後で、図11(g)に示すように、再度、移動ベクトルMVを求めた後で移動点MPを求め、移動点MPに基づいて重み付けマップW3を計算する。このとき、このエリアと重み付けマップW3とが重ならなかったこととする。
次に、図11(h)に示すように、自律移動装置1の直近の移動先を計算するのに用いた移動時間Tを、所定時間ΔTだけ短く設定する。更に、再度、移動ベクトルMVを求めた後で移動点MPを求め、移動点MPに基づいて重み付けマップW3を計算する。ここでも、このエリアと重み付けマップW3とが重ならなかったこととする。このとき、図11(i)に示すように、自律移動装置1が主人Bの移動を妨げるように、基本追従モードとして追従先行モードが選択される。この場合、自律移動装置1は主人Bの移動方向前方のエリアに移動する。これに対して、図11(j)に示すように、主人Bは自律移動装置1の進行方向左側のエリアに移動するため、この移動の後で、基本追従モードとして追従右並走モードが選択される。このように、主人Bが自らの移動方向や移動場所などを調整することによって、自律移動装置1との位置関係を適切に保つことができる。この結果、主人Bの歩き方の癖といった移動形態を、自律移動装置1の移動形態に反映させることも可能となる。
(1−5)エリア移動モード制御
次に、図12を併せて参照して、図2のステップS142で行われるエリア移動モード制御の詳細について説明する。図12は、エリア移動モード制御の処理手順を示すフローチャートである。図12のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、エリア移動モード制御による処理が終了されるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
まず最初のステップS401では、カメラ10及び通信機12などによって、主人Bの位置、顔向き、視線方向などが認識される。更に、これらの認識結果に基づいて、主人Bの視野が計算される。次のステップS411では、計算によって求められた主人Bの視野内に存在する各物体についての見切り点が、カメラ10及び通信機12などによって選択される。ここで、見切り点とは、主人Bの視野内に存在する物体のそれぞれについての、主人Bから最も遠い距離に位置する角となる部分のことである。見切り点の説明については後述する。
そして、次のステップS421では、選択された見切り点のそれぞれを中心に、主人Bと当該物体との相対速度を用いて、主人Bの視野内における危険度マップが計算される。ここで、危険度マップとは、主人Bの周囲に存在する危険な物体(又は障害となりそうな物体など)の位置とその危険度の大きさ(高さ)とを示したマップのことである。危険度マップの説明については後述する。なお、ここでは、事前にECU20に格納されている地図情報や、カメラ10及び通信機12などによって取得された周辺環境の認識結果などから、物体の移動方向や配置などがECU20によって認識されている場合には、死角から飛び出してくると思われる物体の移動ベクトルが示す方向についてだけ、この危険度マップを計算してもよい。ステップS421の後には、ステップS401に戻る。
次に、図13を併せて参照して、主人Bの視野内に存在する各物体に関する見切り点と危険度マップとについて説明する。図13は、主人Bの視野VF内に存在する各物体H1,H2,H3に関する見切り点BP1,BP2を含む危険度マップである。ここでは、主人Bの視野VF内に、壁面を有する板状物体H1,H2と移動物体H3が存在するとして説明する。板状物体H1,H2は、互いに略直角な位置関係になるように、板状物体H1,H2それぞれの一端が接触した配置となっている。このとき、この板状物体H1,H2の接触部分(即ち角となる部分)が、見切り点BP1としてカメラ10及び通信機12などによって認識される。なお、ここでは、この板状物体H1,H2それぞれの他端は、主人Bの視野VF内には存在していないこととする。また、移動物体H3が、主人Bの視野内において主人Bに向かって移動している。ここで、この移動物体H3は、例えば五角形の形状を有しているとする。このとき、この移動物体H3の五角形の1つの角となる部分が、見切り点BP2としてカメラ10及び通信機12などによって認識される。
上記したように見切り点が定まると、この定められた見切り点のそれぞれを中心として、主人Bと当該物体との相対速度を用いて、主人Bの視野内における危険度の大きさが計算される。この場合の危険度の大きさは、見切り点と主人Bとが接触するまでの予想時間CTが短いほど、大きくなる。なお、見切り点と主人Bとが接触するまでの予想時間CTとは、主人Bから上記した各物体H1,H2,H3それぞれまでの距離を、主人Bに対する各物体H1,H2,H3それぞれの相対速度で除することによって得られる値のことである。危険度の大きさが等しいと感知された地点を結んだ線(即ち、等感度線CL)は、物体認識部23によって認識される。
次に、図14を併せて参照して、危険度の等感度線CLについて説明する。図14は、予想時間CTの変化に対する危険度の大きさの変化の一例を示すグラフである。縦軸は危険度の大きさを、横軸は上記した予想時間CTの大きさを示している。見切り点と主人Bとが接触するまでの予想時間CTが無限大の場合、危険度の大きさはゼロに等しく、この予想時間CTが小さくなればなる程、危険度の大きさは増大していく。即ち、見切り点と主人Bとが短時間で接触する可能性が高い程、危険性が高いことを示している。
次に、図15を併せて参照して、実際の交通環境における見切り点の認識方法について説明する。図15は、実際の交通環境の一例における見切り点の認識方法について説明する説明図である。互いに隣接する二車線R1,R2のうち一方の車線R1に乗用車H4,H5が縦列停車しており、他方の車線R2に乗用車H6が白矢印で示される方向に移動しているとして説明する。主人Bは、車線R1に近い側の歩道SWから、停車中の乗用車H4,H5の間を通って車線R1を横断しようとしている。なお、主人Bの視野VF内に、移動物体としての乗用車H4,H5の一部が存在している。このとき、主人Bの視野VF内に存在する乗用車H4,H5のそれぞれについての、視野VF内で主人Bから最も遠い距離に位置する角となる部分が、見切り点BP1,BP2のそれぞれとしてカメラ10及び通信機12などによって認識される。
次に、図16を併せて参照して、危険度マップの他の一例について説明する。図16は、主人Bが黒矢印で示される方向に移動する際の危険度マップの他の一例である。ここでは、主人Bの周囲に、壁面を有する板状物体H7,H8と移動物体H9が存在するとして説明する。板状物体H7,H8は、互いに交差した位置関係になるように、板状物体H7,H8それぞれの一端が接触した配置となっている。このとき、板状物体H7,H8それぞれの略中心部分C7,C8それぞれの主人Bに対する相対速度が、物体認識部23によって検出される。また、この略中心部分C7,C8それぞれを中心とした板状物体H7,H8それぞれについての危険度マップが計算される。また、移動物体H9が、主人Bに向かって速度Veで移動している場合について説明する。ここで、この移動物体H3は、例えば五角形の形状を有しているとする。このとき、この移動物体H3の五角形の重心部分C9の主人Bに対する相対速度Vrが、物体認識部23によって認識される。なお、この相対速度Vrの詳細な求め方については、後述する。また、この重心部分C9を中心とした重心部分C9についての危険度マップが計算される。
このように、乗用車などの移動物体や障害物に限らず、その他の道路環境(例えば、信号、標識、表示、横断歩道、ガードレール、死角など)に基づいて危険度マップが計算され、この危険度マップに基づいて、自律移動装置1が主人Bの周囲の所定の危険エリアに向かって進入しながら移動する。この結果、主人Bのこの危険エリアへの進入が防止され、主人Bの安全が確保される。また、この危険度マップを利用することにより、交通量の制御を行うことも可能となる。
(1−6)回避モード制御
次に、図17を併せて参照して、図2のステップS152で行われる回避モード制御の詳細について説明する。図17は、回避モード制御の処理手順を示すフローチャートである。図17のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、回避モード制御による処理が終了されるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
まず最初のステップS501では、主人Bの視野内に物体が存在しているか否かが、カメラ10及び通信機12などによって判定される。物体が存在していない場合は、再びステップS501に戻る。また、物体が存在している場合は、後述のステップS511に進む。
ステップS511では、存在していると判定された物体の属性が、カメラ10及び通信機12などによって認識される。ここで、物体の属性とは、この物体が何であるかについての情報のことであり、例えば、乗用車であるか自転車であるか歩行者であるかなどの情報のことである。そして、ステップS521に進む。
ステップS521では、属性が認識された物体の移動状態が、物体認識部23により検出される。ここで、物体の移動状態とは、例えば、移動速度及び移動方向の少なくともいずれか一方を含む情報のことである。そして、ステップS531に進む。
ステップS531では、物体認識部23が、移動状態が検出された物体についての後述の物体重み付けマップW4を計算によって求める。そして、ステップS541に進む。
ステップS541では、主人Bの視野内に、未だ他にも物体が存在しているか否かが、カメラ10及び通信機12などによって判定される。未だ他に物体が存在している場合は、ステップS511に戻る。また、もう他に物体が存在していない場合は、ステップS551に進む。
ステップS551では、物体認識部23が、上記した方向重み付けマップW1と、上記した距離重み付けマップW2と、上記した重み付けマップW3と、上記した物体重み付けマップW4とを、計算によって合計して求める。そして、ステップS561に進む。
ステップS561では、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34が、合計した重み付けにおいて最も重みがある位置(即ち合計した重み付けが最大となる位置)に、自律移動装置1を移動させる。そして、ステップS501に戻る。
次に、図18(a)及び図18(b)を併せて参照して、物体重み付けマップW4を計算する際に必要となる上記した相対速度Vrについて説明する。図18(a)は、主人Bが黒矢印で示される方向に移動する際に、主人Bに向かって移動する移動物体H9の各種速度を説明するための説明図である。また、図18(b)は、上記した相対速度Vrの詳細な求め方を説明する説明図である。ここでは、移動物体H9は、質量はMeであり、速度Veで移動しているとする。また、この移動物体H9は、例えば五角形の形状を有しているとする。このとき、この移動物体H9の五角形の重心部分C9の主人Bに対する相対速度Vrが、物体認識部23によって認識される。なお、この相対速度Vrは、図18(b)に示されるように、移動物体H9の移動速度Veと、移動物体H9に対する主人Bの相対速度である−Vとの合成ベクトルとして求められる。
次に、図19(a)、図19(b)、及び図19(c)を併せて参照して、物体重み付けマップW4について説明する。物体重み付けマップW4は、重み付けマップW3から重み付けを減算する位置と減算の大きさを示すマップである。図19(a)、図19(b)、及び図19(c)のそれぞれは、移動物体H9が一定速度、減速中、及び加速中というそれぞれの移動速度で移動している場合の、移動物体H9の物体重み付けマップW4である。
図19(a)に示すように、一定速度で移動(自律移動装置1から見た移動物体H9の相対的な移動も含む)中の移動物体H9の物体重みの大きさは、「衝突時の衝撃の大きさ」と「重み係数」の積によって求められる。「衝突時の衝撃の大きさ」は、「主人Bに対する移動物体H9の質量比(即ち、移動物体H9の質量Meを主人Bの質量Mbで除することによって得られる値)」と「上記した相対速度Vr」との力積によって求められる。
また、「重み係数」は、移動物体H9の重心から近傍の位置WR1において「1」と設定され、移動物体H9の重心から遠ざかるにつれて重み係数は減少していき、移動物体H9の重心から所定距離(又はそれ以上)の位置WR0において重み係数は「0」と設定されている。即ち、重み係数が等しい地点を結んだ線は円形状となる。また、重み係数が異なると、これらの円形状の径も異なり、重み係数が小さくなるほど径も大きくなる。
なお、移動物体H9は一定速度で移動中のため、これら複数の円形状は同心円の円形状となる。また、建造物の壁面といったような固定障害物の質量は、予めECU20に設定された最大値とする。また、質量を推測することができないために不明な場合などは、予めECU20に設定された最大値としてもよく、当該物体の属性を認識した上で当該属性に基づく質量を決定してもよい。
ここで、図19(b)に示すように、減速しながら移動中の移動物体H9の重み係数について説明する。移動物体H9は減速しながら移動しているため、重み係数が異なるこれら複数の円形状のそれぞれの中心は、重み係数が大きくなるほど、移動物体H9の移動方向後方に位置している。更に、図19(c)に示すように、加速しながら移動中の移動物体H9の重み係数について説明する。移動物体H9は加速しながら移動しているため、図19(b)に示される円形状が、移動方向に長径となるとともに移動方向に垂直な方向に短径となった楕円形状になっている。このように、物体の属性(乗用車や自転車や歩行者など)や、物体の移動速度及び加減速の様子や、物体の移動方向の自由度などに応じて、物体重み付けマップW4を編心させるなどの変形を行ってもよい。
次に、図20を併せて参照して、重み係数の大きさの決定方法について説明する。図20は、重み係数の大きさと、主人Bと移動物体H9が接触するまでの予想時間CTと、の関係を示すグラフである。例えば、カメラ10及び通信機12などによって、移動物体H9の属性が人物であると認識された場合(又は、移動物体H9の質量が主人Bと同じ質量であると認識された場合)、図20のラインL1に示すように、この予想時間CTの所定時間だけの増加に伴って、重み係数の所定の大きさだけ減少する。即ち、重み係数が所定の割合で減少していく。
ここで、カメラ10及び通信機12などによって、移動物体H9の属性が例えば乗用車であると認識された場合(又は、移動物体H9の質量が主人Bより大きい質量であると認識された場合)、図20のラインL2に示すように、この予想時間CTがゼロから所定時間になるまで増加しても、重み係数は若干減少するのみでほとんど減少しない(即ちラインL1より減少度合いは小さい)。しかしながら、予想時間CTがこの所定時間を超えて増加すると、重み係数は急激に減少する(即ちラインL1より減少度合いは大きい)。言い換えれば、予想時間CTが長くなっても、主人Bより質量が大きいことから安全率はあまり低くならないため、所定時間を越えるまでは重み係数はほとんど減少しない。なお、移動物体H9の質量が大きいほど、重み係数のこの減少度合いは小さくなる。
また、カメラ10及び通信機12などによって、移動物体H9の属性が例えば自転車であると認識された場合(又は、移動物体H9の質量が主人Bより小さい質量であると認識された場合)、図20のラインL3に示すように、この予想時間CTがゼロから所定時間になるまで増加すると、重み係数は急激に減少する(即ちラインL1より減少度合いは大きい)。しかしながら、予想時間CTがこの所定時間を超えて増加しても、重み係数は若干減少するのみでほとんど減少しない(即ちラインL1より減少度合いは小さい)。言い換えれば、予想時間CTが短くなっても、主人Bより質量が小さいことから安全率は低いままであるため、重み係数は急激に減少する。なお、移動物体H9の質量が小さいほど、重み係数のこの減少度合いは大きくなる。
次に、図21(a)及び図21(b)を併せて参照して、物体重み付けマップW4の他の二例について説明する。図21(a)及び図21(b)のそれぞれは、物体重み付けマップW4の他の二例である。まず一方の例として、図21(a)に示すように、障害物となる移動物体H10が例えば七角形状といったように多角形状であるような場合を考える。ここで、この移動物体H10を、カメラ10及び通信機12などによって仮想的に(例えば三角形の微小な面などに)分割し、それぞれの面(又は辺)の略中心部分における速度ベクトルV1〜V7を求めてこれら速度ベクトルV1〜V7を合成して合成ベクトルVAを求める。更に、この移動物体H10の重心の移動ベクトルVCと合成ベクトルVAとを合成することにより、主人Bに対する相対速度Vrを計算して求める。そして、この相対速度Vrを用いて、上記した方法によって物体重みが求められて、物体重み付けマップW4が計算される。
また他方の例として、図21(b)に示すように、板状物体H7,H8は、互いに交差した位置関係になるように、板状物体H7,H8それぞれの一端が接触した配置となっている。ここで、板状物体H7,H8それぞれの面(又は辺)における速度ベクトルV8,V9のそれぞれを求めてこれら速度ベクトルV8,V9を合成して合成ベクトルを求め、この合成ベクトルを用いて主人Bに対する相対速度Vrを計算して求める。そして、この相対速度Vrを用いて、上記した方法によって物体重みが求められて、物体重み付けマップW4が計算される。
次に、図22(a)、図22(b)、及び図22(c)を併せて参照して、自律移動装置1が移動物体H9を避けながら移動する際の一連の動きについて説明する。図22(a)、図22(b)、及び図22(c)は、自律移動装置1が移動物体H9を避けながら移動する際の動きの変化を時系列的に示した説明図である。
まず、図22(a)に示すように、自律移動装置1が、追従右並走モードで主人Bに追従しながら移動しているとする。即ち、自律移動装置1は、主人Bの右側のエリアErに相対的に留まりながら主人に追従している。なお、既に移動状態検出部22が、上記した重み付けマップW3を計算している。このとき、カメラ10及び通信機12などによって、主人Bの視野内に物体が存在していると判定される。次に、上記したように、移動物体H9の属性が認識され、移動物体H9の移動状態が検出されて、物体重み付けマップW4が計算される。なお、他に物体が存在しているとは判定されないため、ここで、方向重み付けマップW1、距離重み付けマップW2、重み付けマップW3、及び物体重み付けマップW4の合計が計算される。
次に、図22(b)に示すように、合計した重み付けが最大となる位置に、自律移動装置1が移動する。ここで、物体重み付けマップW4は、上記したように、重み付けマップW3から重み付けを減算する位置と減算の大きさを示すマップである。このため、自律移動装置1は、上記した重み付けの合計の計算結果に基づいて、主人Bの右側のエリアErにおける後方部分に移動している。
次に、図22(c)に示すように、再度、重み付けマップW3が計算され、移動物体H9の属性が認識され、移動物体H9の移動状態が検出されて、物体重み付けマップW4が計算される。なお、ここでも他に物体が存在しているとは判定されないため、方向重み付けマップW1、距離重み付けマップW2、重み付けマップW3、及び物体重み付けマップW4の合計が計算される。そして、合計した重み付けが最大となる位置に、自律移動装置1が移動する。自律移動装置1は、上記した重み付けの合計の計算結果に基づいて、主人Bから見た後方のエリアEbに移動している。このようにして、自律移動装置1が確実に物体を避けながら移動することができる。
次に、図23(a)、図23(b)、及び図23(c)を併せて参照して、自律移動装置1が移動物体を避けながら移動する際の一連の動きの他の例について説明する。図23(a)、図23(b)、及び図23(c)のそれぞれは、自律移動装置1が移動物体を避けながら移動する際の一連の動きの変化の他の第一例、第二例、及び第三例のそれぞれを時系列的に示した説明図である。図23(a)、図23(b)、及び図23(c)のそれぞれの図においては、動きの変化が(I)、(II)、(III)の順に時系列的に示されている。なお、始めは自律移動装置1が追従右並走モードで主人Bに追従しながら移動していることを前提として説明する。即ち、始めは自律移動装置1が主人Bの右側のエリアErに相対的に留まりながら主人Bに追従しているとする。なお、これは例であって、始めの追従モードがどのモードであるかは特に限定されない。ここで、既に移動状態検出部22が、上記した重み付けマップW3を計算している。
第一例として、図23(a)の(I)に示すように、主人Bが直進方向に移動しているところに、物体C(人間)が主人Bの移動方向と反対の方向で自律移動装置1に向かって移動しているとする。ここで、主人Bの視野内に物体Cが存在していると判定される。次に、上記したように、物体重み付けマップW4が計算されて、マップW1〜W4の合計が計算される。次に、図23(a)の(II)に示すように、物体Cは主人Bに更に近づくが、合計した重み付けが最大となる位置は自律移動装置1の進行方向前方に依然として存在しているため、自律移動装置1は主人Bの右側のエリアに相対的に留まり続けながら、主人Bに追従移動する。次に、図23(a)の(III)に示すように、物体Cは主人Bに更に近づく。これに対して、合計した重み付けが最大となる位置に、自律移動装置1が移動する。ここで、物体重み付けマップW4は、上記したように、重み付けマップW3から重み付けを減算する位置と減算の大きさを示すマップである。このため、自律移動装置1は、上記した重み付けの合計の計算結果に基づいて、主人Bから見た後方のエリアに移動している。この結果、自律移動装置1が確実に物体を避けながら移動することができる。
第二例として、図23(b)の(I)に示すように、主人Bが右斜め前方向に移動しているところに、物体Cが主人Bに対向する位置から直進方向で主人Bに向かって移動しているとする。ここで、主人Bの視野内に物体Cが存在していると判定される。次に、上記したように、物体重み付けマップW4が計算されて、マップW1〜W4の合計が計算される。次に、図23(b)の(II)に示すように、主人Bが移動方向を直進方向に変更する。ここで、物体Cは主人Bに更に近づくが、主人Bは右斜め前方向に移動していたために、物体Cは主人Bから見て左斜め前方向に存在している。これに対して、合計した重み付けが最大となる位置は自律移動装置1の進行方向前方に依然として存在しているため、自律移動装置1は主人Bの右側のエリアに相対的に留まり続けながら、主人Bに追従移動する。次に、図23(b)の(III)に示すように、物体Cは主人Bに更に近づくが、重み付けマップW3から重み付けを減算する領域は、主人Bを挟んで自律移動装置1の位置と反対側にある。このことから、合計した重み付けが最大となる位置は自律移動装置1の進行方向前方に依然として存在しているため、自律移動装置1は主人Bの右側のエリアに相対的に留まり続けながら、主人Bに追従移動する。この結果、自律移動装置1が確実に物体を避けながら移動することができる。
第三例として、図23(c)の(I)に示すように、主人Bが左斜め前方向に移動しているところに、物体Cが主人Bに対向する位置から直進方向で主人Bに向かって移動しているとする。ここで、主人Bの視野内に物体Cが存在していると判定される。次に、上記したように、物体重み付けマップW4が計算されて、マップW1〜W4の合計が計算される。次に、図23(c)の(II)に示すように、主人Bが移動方向を直進方向に変更する。ここで、物体Cは主人Bに更に近づくが、主人Bは左斜め前方向に移動していたために、物体Cは主人Bから見て右斜め前方向に存在している。これに対して、自律移動装置1は、上記した重み付けの合計の計算結果に基づいて、主人Bの後方のエリアに移動している。次に、図23(c)の(III)に示すように、物体Cは主人Bに更に近づく。これに対して、合計した重み付けが最大となる位置に、自律移動装置1が再移動する。ここで、自律移動装置1は、上記した重み付けの合計の計算結果に基づいて、主人Bの左側のエリアに移動している。この結果、自律移動装置1が確実に物体を避けながら移動することができる。
このように、上記した方向重み付けマップW1と、上記した距離重み付けマップW2と、上記した重み付けマップW3と、上記した物体重み付けマップW4とが、計算によって求められているため、上記した追従モード制御やナビモード制御などの制御から大きく外れることなく、障害物となる物体から回避することができるとともに、主人Bを回避させることができる。また、物体の属性に応じて物体重み付けマップW4が求められているため、この物体から主人Bをより適切かつ安全に回避させることが可能となる。更に、障害物となる物体が仮想的に分割された上で物体重み付けマップW4が求められるので、形状が複雑な物体でも容易に物体重み付けマップW4が求められる。
(2)第二実施形態
(2−1)エリア移動モード制御
次に、図24を用いて、第二実施形態に係る自律移動装置2によって行われるエリア移動モード制御の詳細について説明する。図24は、このエリア移動モード制御の処理手順を示すフローチャートである。図24のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、エリア移動モード制御による処理が終了されるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
なお、自律移動装置2は、エリア移動モード制御の方法が上述した第一実施形態と異なる。その他の構成については、第一実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
まず最初のステップS601では、カメラ10及び通信機12などによって、主人Bの現在の移動速度Vから、将来通過するであろうと思われる横断歩道の開始地点(即ちゲートGo)がどれであるかが予測される。主人Bは、このゲートGoに向けられて点灯している信号機の点灯状態に基づいて、歩道から当該横断歩道上を移動して車道を横断するか否かを判断する。なお、ゲートGoの位置や当該信号機の点灯状態などの情報は、通信機12によって、上述したインフラストラクチャから受信される。
次のステップS611では、主人Bによって通過されるであろうと予測されたゲートGoに対応する上記した信号機の点灯状態は現在、赤信号であるか否かが、ECU20によって判定される。ゲートGoに対応する信号機は現在、赤信号でない場合は、再びステップS601に戻る。また、ゲートGoに対応する信号機は現在、赤信号である場合は、後述のステップS621に進む。
次のステップS621では、主人Bの現在の移動速度Vに基づいて、ゲートGoに到着するまでの予想時間CTが、移動状態検出部22によって計算されて求められる。ここで、予想時間CTの変化に対する、主人Bが晒される危険の大きさ(即ち危険度)の変化に関する関係図(グラフ)については、図14を併せて参照しながら既に上記した。即ち、予想時間CTが無限大の場合、危険度の大きさはゼロに等しく、この予想時間CTが小さくなればなる程、危険度の大きさは増大していく。このため、赤信号であるゲートGoに主人Bが到達するのに要する時間が短くなる程、赤信号のときに横断歩道上を移動する可能性が高くなることから、危険性が高いことを示している。ステップS621の後には、ステップS631に進む。
次のステップS631では、計算によって求められた予想時間CTと、主人Bが晒される危険の大きさ(即ち危険度)との間の上記した関係図を用いて、物体認識部23が後述の危険度マップを計算によって求める。なお、この危険度マップに基づいて、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34が、自律移動装置1を移動させる。ステップS631の後には、ステップS601に戻る。
次に、図25を併せて参照して、危険度マップについて説明する。図25は、危険度マップを説明するための説明図である。主人Bは、追従先行モードの自律移動装置1と、歩道SWを移動している。主人B及び自律移動装置1の移動方向前方には、ゲートGoが位置している。このため、このゲートGoが、将来通過するであろうと予測されるゲートとなる。なお、このゲートGoに対応する信号機は現在、赤信号である。このため、主人Bの現在の移動速度Vに基づいて予想時間CTが計算され、予想時間CTの変化に対する危険度の変化に関する関係図に基づいて、図25に示したような危険度マップが作成される。ここで、危険度マップは、予想時間CTが無限大の場合(即ちゲートGoの中心から自律移動装置1までの距離が無限大の場合)、危険度の大きさはゼロに等しく、この予想時間CTが小さくなればなる程(即ちゲートGoの中心から自律移動装置1までの距離が短くなればなる程)、危険度の大きさが増大していくことを示している。なお、カメラ10及び通信機12などによって取得される情報から、主人Bの生体に関する情報(即ち、生体信号)を検知して、主人Bの感情(例えば焦っている又は怒っているなど)に応じて危険度を変更してもよい。
(3)第三実施形態
(3−1)エリア移動モード制御
次に、図26を用いて、第三実施形態に係る自律移動装置3によって行われるエリア移動モード制御の詳細について説明する。図26は、このエリア移動モード制御の処理手順を示すフローチャートである。図26のフローチャートに示される処理は、主としてECU20によって行われるものであり、エリア移動モード制御による処理が終了されるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
なお、自律移動装置3は、エリア移動モード制御の方法が上述した第一及び第二実施形態と異なる。その他の構成については、第一及び第二実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
まず最初のステップS701では、カメラ10及び通信機12などによって、主人Bの現在の移動速度Vから、ゲートGoがどれであるかが予測される。なお、ゲートGoの位置や当該信号機の点灯状態などの情報は、通信機12によって、上述したインフラストラクチャから受信される。ステップS701の後には、ステップS711に進む。
次のステップS711では、ゲートGoに対応する信号機の点灯状態(即ち信号機の点灯色)に応じて、後述の「危険度に関する関数」(以下、危険度関数という。)を選択する。この危険度関数は、信号機の点灯色に応じて三種類、用意されている。ステップS711の後には、ステップS721に進む。
次のステップS721では、選択された危険度関数を用いて、物体認識部23が危険度マップを計算によって求める。なお、この危険度マップに基づいて、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34が、自律移動装置1を移動させる。ステップS721の後には、ステップS701に戻る。
次に、図27(a)、図27(b)、図27(c)、及び図27(d)を併せて参照して、危険度関数について説明する。図27(a)は、時間(t)が経過するのに伴う自律移動装置3からゲートGoまでの距離の変化を示すグラフである。また、図27(b)、図27(c)、及び図27(d)のそれぞれは、信号機の点灯色が赤、青、及び黄であるそれぞれの場合に応じて用意された三種類の危険度関数のグラフのそれぞれであり、横軸は主人BがゲートGoに到着するまでの時間を示し、縦軸は危険度の大きさ(最大は「1」、最小は「0」)を示している。
図27(a)に示すように、将来通過するであろうと予測されたゲートGoまでの距離Dの地点から当該ゲートGoまで、主人Bが移動する場合を考える。図27(a)に示されるグラフは、このゲートGoに対応する信号機が、赤信号の場合の(I)と、青信号の場合の(II)と、黄信号又は青の点滅信号の場合の(III)と、の3つに大別することができる。
線分F1によって示される移動パターンは、このゲートGoに対応する信号機が赤信号であるときから主人Bが移動し始めて、時間T1が経過してゲートGoに到着した時も赤信号から点灯色が変わっていない場合を示している。また、線分F2によって示される移動パターンは、このゲートGoに対応する信号機が赤信号であるときから主人Bが移動し始めて、時間T2が経過してゲートGoに到着した時は赤信号から青信号に点灯色が変わっていた場合を示している。また、線分F3によって示される移動パターンは、このゲートGoに対応する信号機が赤信号であるときから主人Bが移動し始めて、時間T3が経過してゲートGoに到着した時は赤信号から青信号を経て黄信号(又は青の点滅信号)に点灯色が変わっていた場合を示している。なお、線分F1で示される移動速度よりも、線分F2で示される移動速度の方が低速であり、線分F2で示される移動速度よりも、線分F3で示される移動速度の方が低速である。
ここで、(I)において、時間T1が経過して主人BがゲートGoに到着してから、信号機が赤信号から青信号に変わるまでの時間を時間Trbとする。また、(II)において、時間T2が経過して主人BがゲートGoに到着してから、信号機が青信号から黄信号(又は青の点滅信号)に変わるまでの時間を時間Tbyとする。また、(III)において、時間T3が経過して主人BがゲートGoに到着してから、信号機が黄信号(又は青の点滅信号)から赤信号に変わるまでの時間を時間Tyrとする。
このとき、主人BがゲートGoに到着した時も赤信号から点灯色は変わらないとカメラ10及び通信機12などによって予測された場合、図27(b)の危険度関数が選択される。このとき、図27(b)に示されるように、上記の時間Trbを経過する前に主人BがゲートGoに到着する速度で移動している場合、信号機は赤信号のままなので、危険度関数によって危険度「1」と定められている。しかしながら、上記の時間Trbを経過してから主人BがゲートGoに到着する速度で移動している場合、信号機は青信号に変わっているので、上記の時間Trbを経過するほど減少するように危険度が定められている。
また、主人BがゲートGoに到着した時は赤信号から青信号に点灯色が変わっているとカメラ10及び通信機12などによって予測された場合、図27(c)の危険度関数が選択される。このとき、図27(c)に示されるように、上記の時間Tbyを経過する前に主人BがゲートGoに到着する速度で移動している場合、主人BがゲートGoに到着するまでの時間が長くなるほど青信号から変わってしまう可能性が高くなるので、危険度が徐々に上昇するように定められている。そして、時間Tbyが経過して主人BがゲートGoに到着すると、青信号ではなくなっているので、危険度「1」が定められている。
また、主人BがゲートGoに到着した時は黄信号又は青の点滅信号に点灯色が変わっているとカメラ10及び通信機12などによって予測された場合、図27(d)の危険度関数が選択される。このとき、図27(d)に示されるように、赤信号に変わる直前又は赤信号に変わった状態であるため、ゲートGoに到着するまでの時間に関わりなく、危険度「1」が定められている。
次に、図28(a)、図28(b)、図28(c)、及び図28(d)を併せて参照して、信号機の点灯状態によって異なる危険度マップの他の四例について説明する。図28(a)、図28(b)、図28(c)、及び図28(d)のそれぞれは、危険度マップの他の四例である。なお、いずれの例においても、主人Bは、追従先行モードの自律移動装置1と、歩道SWを移動している。また、主人B及び自律移動装置1の移動方向前方には、ゲートGoが位置している。このため、このゲートGoが、将来通過するであろうと予測されている。
まず第一例として、図28(a)に示すように、主人BがゲートGoに対して直進しながら到着した時も赤信号から点灯色は変わらないとカメラ10及び通信機12などによって予測された場合について説明する。この場合の危険度マップにおいては、上記の時間Trbを経過する前に主人BがゲートGoに到着する距離に主人Bが位置している場合、即ち、主人BとゲートGoとの距離が距離D1(主人Bの通常の移動速度V1と時間Trbとの積で得られる値の距離)未満の場合、危険度「1」と定められている。更に、上記の時間Trbを経過してから主人BがゲートGoに到着する距離に主人Bが位置している場合、即ち、主人BとゲートGoとの距離が距離D1以上の場合、ゲートGoから遠い地点に位置するほど危険度が減少するように定められている。
また第二例として、図28(b)に示すように、主人BがゲートGoに対して直進しながら到着した時も赤信号から点灯色は変わらないとカメラ10及び通信機12などによって予測され、主人Bが通常の移動速度V1よりも高速な移動速度V2で移動している場合について説明する。この場合の危険度マップにおいては、主人Bの移動速度が高速になっているため、危険度「1」と定められている距離D2は上記の距離D1よりも長くなっている。
また第三例として、図28(c)に示すように、主人BがゲートGoに対して直進しながら到着した時は青信号に点灯色が変わっているとカメラ10及び通信機12などによって予測された場合について説明する。この場合の危険度マップにおいては、上記の時間Tbyを経過してから主人BがゲートGoに到着する距離に主人Bが位置している場合、即ち、主人BとゲートGoとの距離が距離D3(主人Bの移動速度V3と時間Tbyとの積で得られる値の距離)以上の場合、危険度「1」と定められている。しかしながら、上記の時間Tbyを経過する前に主人BがゲートGoに到着する距離に主人Bが位置している場合、即ち、主人BとゲートGoとの距離が距離D3未満の場合、主人BとゲートGoとの距離が長いほど危険度は高く定められている。
また第四例として、図28(d)に示すように、主人BがゲートGoに対して斜めの方向で到着した時でも、危険度は同様の方法で定められている。即ち、主人BとゲートGoとの距離が距離D3以上の場合、危険度「1」と定められている。しかしながら、主人BとゲートGoとの距離が距離D3未満の場合、主人BとゲートGoとの距離が長いほど危険度は高く定められている。
次に、図29(a)及び図29(b)を併せて参照して、歩行者に停止を指示する標識が認識された場合に変化する危険度マップについて説明する。ここでは、例えば、歩行者に停止を指示する「止まれ」という標識SSが認識された場合について説明する。図29(a)の(I)〜(IV)は、標識SSが認識された場合の危険度マップの一連の変化を示す説明図である。また、図29(b)は、標識SSが認識されたときの危険度関数のグラフであり、横軸は主人Bが標識SSに到着するまでの時間を示し、縦軸は危険度の大きさ(最大は「1」、最小は「0」)を示している。なお、主人Bは、追従先行モードの自律移動装置1と、歩道SWを移動している。また、主人B及び自律移動装置1の移動方向前方には、標識SSが位置している。このため、標識SSが、将来通過するであろうと予測される標識となる。
まず、図29(a)の(I)に示すように、標識SSがカメラ10及び通信機12などによって認識された場合について説明する。この場合の危険度マップにおいては、図29(b)に示すように、時間Tsを経過する前に主人Bが標識SSに到着する距離に主人Bが位置している場合、即ち、主人Bと標識SSとの距離が距離D5(主人Bの通常の移動速度V1と時間Tsとの積で得られる値の距離)未満の場合、危険度「1」と定められている。更に、上記の時間Tsを経過してから主人Bが標識SSに到着する距離に主人Bが位置している場合、即ち、主人Bと標識SSとの距離が距離D5以上(例えば距離D4)の場合、標識SSから遠い地点に位置するほど危険度が減少するように定められている。標識SSがカメラ10及び通信機12などによって認識された後では、図29(a)の(II)〜図29(a)の(IV)に示すように、自律移動装置3の移動速度は速度V1〜速度V3へと徐々に減速され、これに応じるように、主人Bの移動速度も減速される。
次に、図30(a)及び図30(b)を併せて参照して、歩行者に右折又は左折を指示する標識が認識された場合の危険度マップについて説明する。ここでは、例えば、歩行者に右折を指示する標識SRが認識された場合について説明する。図30(a)は、標識SRが認識された場合の危険度マップである。また、図30(b)は、標識SRが認識されたときの危険度関数のグラフであり、横軸は主人Bが標識SRに到着するまでの時間を示し、縦軸は危険度の大きさ(最大は「1」、最小は「0」)を示している。なお、主人Bは、追従先行モードの自律移動装置1と、歩道SWを移動している。また、主人B及び自律移動装置1の移動方向前方には、標識SRが位置している。このため、標識SRが、将来通過するであろうと予測される標識となる。
まず、図30(a)に示すように、標識SSがカメラ10及び通信機12などによって認識された場合について説明する。この場合の危険度マップにおいては、歩道SWと歩道SWに隣接する車道との境界線において危険度「1」と定められている。更に、右折すべき位置に到着する時間Trを経過すると、標識SRにおいて右折して標識SRから離れて移動するほど危険度が減少するように定められている。このように、歩道SWと歩道SWに隣接する車道との境界線の属性に応じて、危険度が設定されている。
次に、図31を併せて参照して、上記したような境界線の属性による、危険度の変化について説明する。図31は、歩道SWに横断歩道CWが接続されており、横断歩道CWとの接続がない部分については、歩道SWと歩道SWに隣接する車道VRとの境界線にガードレールGGが設置されている交通環境を示すマップである。この場合、横断歩道CWと横断歩道CWに隣接する車道VRとの境界線においてはやや高い危険度が設定されており、ガードレールGGにおいてはより高い危険度が設定されている。なお、横断歩道CWに設定される危険度は、歩道線や歩道ブロックなどに設定される危険度と同じ高さにしてもよい。
(4)上記したモード制御の組み合わせ
次に、図32を併せて参照して、上記したモード制御の組み合わせによる自律移動装置の動き方の一例について説明する。図32は、交差点における、上記したモード制御の組み合わせによる自律移動装置の動き方の一例を示すマップである。図32に示すように、主人B1〜B5のそれぞれが自律移動装置C1〜C5のそれぞれを伴って歩行している。主人B1は、歩道SW1において、横断歩道CWを渡ろうとしている。このとき、自律移動装置C1は、カメラ10及び通信機12などによって危険だと推測されたエリアに基づいて、エリアEmd(最も危険だと判断されたエリア)を推測して、主人B1を誘導する。エリアEmdは、エリアEvr(車道VR側の危険エリア)と、エリアEbc(主人B1から見て死角となる危険エリア)と、エリアEtd(主人B1の進行方向における危険エリア)と、エリアErs(主人B1から見て前方が赤信号になっている危険エリア)と、エリアErt(右折車Crtが存在する危険エリア)と、に基づいて計算されている。
また、主人B2は、追従先行モードの自律移動装置C2の誘導に従って歩道SW2上を移動している。また、主人B3は、建物Bldと主人B3との衝突を防ごうとする自律移動装置C3の誘導に従って歩道SW2上を移動している。また、主人B4は、追従先行モードの自律移動装置C4の誘導に従って横断歩道上を移動している。また、主人B5は、対向してくるBkeと主人B5との衝突を防ごうとする自律移動装置C5の誘導に従って歩道SW3上を移動している。
(5)作用効果
上記したような自律移動装置1〜3やC1〜C5によれば、例えば主人Bのそばについて自律的に移動しつつ、カメラ10及び通信機12などによって認識された周囲環境に基づいて位置関係決定部21が主人Bとの位置関係(例えば、上記した移動モード)を決定し、位置関係決定部21が決定した位置関係に基づいてアクチュエータ制御部26及び電動モータ34が当該自律移動装置を移動させる。これにより、主人Bとの位置関係が決定されて、この位置関係に基づいてこの自律移動装置は移動するため、主人Bの後の追尾に加えて、この追尾以外の移動形態(例えばナビモード制御による移動形態)をとることが可能となり、目的地へ行こうとする際の主人Bにとっての利便性を高めることができる。この結果、この自律移動装置は、移動中の主人Bを誘導したり保護したりすることが可能となる。
また、位置関係決定部21により決定された位置関係と上記した優先順位とに基づいて、当該自律移動装置の移動モードが、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34によって複数の移動モードの中から択一的に選択されて、当該選択された移動モード(例えば回避モード制御による移動形態)で当該自律移動装置が移動する。これにより、例えば主人Bとの位置関係に応じた移動モードが選択されて自律移動装置が移動するため、主人Bは障害物を回避するなどというように、更に利便性を高めることができる。
また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、予め設定された移動経路GRと、当該自律移動装置の移動状態(例えば、上記した移動ベクトル)と、主人Bとの位置関係と、に基づいて、当該自律移動装置を移動させることができる。これにより、自律移動装置は、移動すべき経路を、より適切な移動速度/及び又は移動方向で、より適切な位置関係を保ちながら移動するため、適切な移動形態による目的地までの移動というように、更に利便性を高めることができる。
また、アクチュエータ制御部26及び電動モータ34は、物体認識部23により物体の移動状態が検出された場合に、物体認識部23により認識された物体の相対位置関係(例えば、上記した危険度マップ)に基づいて、当該自律移動装置を移動させることができる。これにより、自律移動装置は、例えば主人Bの後の追尾に加えて、この追尾以外の移動形態(例えば回避モード制御による移動形態)をとることが可能となり、主人Bは障害物を回避するなどというように、更に利便性を高めることができる。
また、危険度判断部24は、危険度判断部24により主人Bが危険であると判断された場合に、その危険から主人Bを回避モードで回避させたりすることにより、主人Bの危険度を低減させることができる。これにより、主人Bのそばについて自律的に移動するとともに、その主人Bの安全を確保して主人Bを保護することが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、主人Bやその周囲環境を認識する手段として、上述したカメラ10や通信機12に加え、レーザレーダやミリ波レーダなどのセンサ類を用いてもよい。
また、上記実施形態では、自律移動装置1,2,3の移動手段及びその駆動力源として車輪36と電動モータ34を用いたが、移動手段及びその駆動力源は、車輪36や電動モータ34に限られることなく、例えばキャタピラや小型のエンジンなどを用いることもできる。また、主人Bの危険度の求め方も、上記実施形態には限られない。
また、バックライト32の数や配置を変えることにより、自律移動装置1,2,3を全体的に光らせたり、または部分的に光らせたりしてもよい。さらに、主人Bの危険度に応じてバックライト32の色や点滅パターンを変化させてもよい。
1〜3,C1〜C5…自律移動装置、10…カメラ、12…通信機、20…ECU、21…位置関係決定部、22…移動状態検出部、23…物体認識部、24…危険度判断部、25…危険度回避部、26…アクチュエータ制御部、30…スピーカ、32…バックライト、34…電動モータ、36…車輪、B,B1〜B5…主人、Bld…建物、BP1…見切り点、C…物体、CL…等感度線、Crt…右折車、CW…横断歩道、GG…ガードレール、Go…ゲート、GR…移動経路、H1〜H3,H7〜H10…物体、H4〜H6…乗用車、MP…移動点、MV…移動ベクトル、R1,R2…車線、SR,SS…標識、SW,SW1〜SW3…歩道、VA…合成ベクトル、VC…移動ベクトル、VF…視野、VR…車道、Zf,Zl,Zr,Zb…代表軸。