JP4810845B2 - ポリエチレン系中空糸状多孔質膜 - Google Patents

ポリエチレン系中空糸状多孔質膜 Download PDF

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Description

本発明は、水処理におけるクリプトスポリジウム等の原虫の除去および除菌および除濁等の濾過のフィルター用途等に好適なポリオレフィン系中空糸状多孔質膜に関する。
精密濾過膜や限外濾過膜等の多孔質膜は、電解コンデンサーやリチウムイオン電池等に利用されているセパレーター用途及び半導体製造に関わる超純水の製造等での電気及びエレクトロニクス関連分野、酵素分離や除菌等を目的とした医薬食品分野等、多方面にわたって実用化されているが、特に近年では、河川や湖沼のクリプトスポリジウム等の原虫の除去および除菌および除濁を行ない上水化、あるいは工業用水化及び下水の除濁等を行なう水処理分野への展開が積極的に成されている。
水処理分野で実用化されている多孔質膜は中空糸状多孔質膜が多用されており、実使用時には、中空糸状多孔質膜を多数本束ねて円筒形のケースに挿入し、両端部をウレタン樹脂等で固定したモジュールと呼ばれる形態で使用される場合と、中空糸状多孔質膜を並行に多数本並べて一つの層として、それをいくつか積層した浸漬型モジュールと呼ばれる形態で使用される場合とがある。
水処理用多孔質膜を製造する主な方法としては、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂を溶解可能な有機液体およびまたは有機固体とを溶解後、熱可塑性樹脂の非溶剤にて相分離させ多孔質膜を得る方法、及び熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂を溶解可能な有機液体及びもしくは有機固体とを高温で溶解後、冷却により樹脂濃厚相と有機物濃厚相とに相分離させ多孔質膜を得る方法等を挙げることができる。
この内、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂を溶解可能な有機液体及び/または有機固体とを高温溶解後、冷却により樹脂濃厚相と有機物濃厚相とに相分離させ多孔質膜を得る方法は、高温で熱可塑性樹脂と有機物を溶解させる為、結晶性の熱可塑性樹脂からの多孔質膜の製造が可能であるばかりでなく、さらに非溶媒も不要となりプロセス上の制御が容易となる利点がある。
上記水処理用多孔質膜で用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースアセテート、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリアクリルニトリル系樹脂等が挙げられる。この中でも、機械的強度や耐薬品性に優れ、且つ廃棄時に問題となるハロゲン系元素を含まない安価な素材として、ポリオレフィン系樹脂が適しており、例えば、特許文献1〜2等に水処理用中空糸状多孔質膜への応用が開示されている。
このようなポリオレフィン系樹脂を溶解可能な有機液体及び/または有機固体としては、例えば、特許文献3等に開示されている流動パラフィンやフタル酸エステル類等が挙げられる。しかしながら、特に後者のフタル酸エステル類はいわゆる環境ホルモンの疑いがあるばかりでなく、抽出溶剤としてもハロゲン系有機溶剤を用いていることから、ポリオレフィン系樹脂を溶解可能な有機液体としては環境問題や作業環境の点で好ましくないという問題がある
また、水処理分野では、膜表面に付着した異物をエアバブリング等により膜自体を物理的に揺らせ除去するなどの操作がなされているが、長期にわたり膜が破断することなく安定して水処理を行なう上で、膜自体の更なる機械的強度の向上が要求されており、その方法の一つとして、中空糸状多孔質膜の原料であるポリオレフィン系樹脂の高分子量化が検討されている。
しかしながら、特許文献4にも開示されているが、粘度平均分子量が100万以上を超える、すなわち、上記特許文献4に記載されている下式より算出される極限粘度が9を超えるような超高分子量ポリオレフィン系樹脂を用いた場合は、押出し成形する際にメルトフラクチャー様の不安定現象が発現して加工性が著しく低下し、多孔質膜自体を得ることが困難となる問題がある。
[η]=6.2×10-4×Mv0.7
また、このようなオレフィン系多孔質膜の例として、特許文献4に開示されている均一な3次元構造を有する多孔質膜が知られている。ここで言う均一な3次元構造とは膜断面方向にわたって孔径や孔の分布がほとんど変わらない構造のことを言う。ところが、このような構造では膜断面全体での透過抵抗が大きくなり、水処理分野等では透水性能を向上させようとすると孔径を大きくする必要が生じる。
しかしながら、孔径を大きくすると必要な濁質の除去性能が低下することになり、一定の透水性能を有しかつ高い除去性能を得ることは困難である。このような問題を解決する方法として、特許文献5により開示されているポリエチレンと有機液体との混合溶融物を中空糸状に押出しエアギャップから冷却浴に押出す際、エアギャップ中の滞在時間を適正化する製造方法、あるいは特許文献6により開示されている、冷却浴を2層構成にする、すなわち上層にポリエチレンと液−液相分離を有する能力を有する水とは非相溶な層を上層とし下層に水層を用いる製造方法がある。さらには前出の特許文献と同様に冷却浴を2相構成にして多孔質膜を得、次いで一定の残留伸び率になるよう延伸する方法が、特許文献7により開示されている。
一方、異方性構造を有する多孔質膜の例としては、特許文献8により開示されているポリオレフィン系微多孔膜が挙げられる。この膜はポリオレフィンと可塑剤を溶融混練後シート状に成形し少なくとも一軸方向に延伸し、その後可塑剤を抽出し微多孔膜を得る。この際、多孔径が異なる2種類の微多孔膜をし、この2種類の微多孔膜を積層し全体的に異方性構造を有する多孔質膜を提供している。更に他の例として外表面部に最小孔径層を有する外面緻密型異方性スポンジ構造ポリエチレン中空糸状多孔膜の開示(特許文献9)や膜断面内に最小孔径層を有する内部緻密型異方性スポンジ構造ポリエチレン中空糸状多孔質膜(特許文献10)が知られている。
特開平6−27745号公報 特開2001−87636号公報 特開2002−269556号公報 特開2001−190940号公報 特開平3−42025号公報 特開2001−87632号公報 特開2001−190939号公報 特開2000−212323号公報 特開2001−157827号公報 特開2001−157826号公報
かかる開示により、膜断面方向で孔径や孔の分布が均一でなく、すなわち異方性の膜構造を有し、膜断面の一部に緻密な細孔を有する分離膜が得られ、透水量と除濁性が両立できる膜が得られる。しかしながら、上述のように多孔質膜やその製造方法に関し種々の開示があるが、いずれにおいても前述の諸問題、すなわち樹脂溶剤の問題や高分子量化に対応した機械的物性に優れ、かつ高い透水性能及び高い除去性能を有する多孔質膜を製造する技術の開示はなされていない。
本発明は、上記の点を解決しようとするものであり、機械的物性や膜性能に優れ、且つ環境問題に配慮した、ポリオレフィン系中空糸状多孔質膜を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、ポリオレフィン系樹脂を炭素数10以上20未満の高級アルコールに溶解して得られたポリオレフィン溶液に、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して潤滑剤成分を0.10重量部以上5.00重量部以下添加して押出し成形して得られたポリオレフィン系中空糸状多孔質膜であって、該ポリオレフィン系中空糸状多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂の極限粘度が7dl/g以上、空孔率が60%〜90%、平均粒径0.05〜1.0μmのラテックス標準粒子を95%以上阻止することを特徴とするポリオレフィン系中空糸状多孔質膜を提供する。
本発明は、押出し安定性に優れ、且つ機械的物性や膜特性に優れ、且つ環境に配慮したポリオレフィン系中空糸状多孔質膜として有用である。
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン等のα−ポリオレフィン、およびこれらの共重合体及びブレンド物である。その中でも、ポリエチレンが機械的物性と膜性能のバランスに優れ好ましい。
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂を溶解可能な有機液体または有機固体としては、炭素数が10以上20未満の高級アルコールを用いるのが好ましい。炭素数が10未満の高級アルコールでは、その沸点が低く、紡糸ノズルから押出し後、エアギャップを経て冷却浴に突入するまでの間に押出し物表面から高級アルコール成分が揮発し易くなり、押出し物表面の樹脂濃度が増大することにより、得られる多孔質膜の表面は極めて密な構造になるため、適当でない。従って、高級アルコールの炭素数は11以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。一方、炭素数が20より大きい高級アルコールではポリオレフィン溶液を冷却した際、ポリオレフィン濃厚相と高級アルコール濃厚相へと液−液相分離する温度と、ポリオレフィン濃厚相が凝固する温度との間の温度領域が極めて小さくなり、多孔質構造制御が困難となり適当でない。従って、高級アルコールの炭素数は19以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
これらの高級アルコールの例としては、工業的に安価に入手可能であるという観点から炭素数が偶数の化合物が適当であり、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール等の直鎖高級アルコールを挙げることができる。これらは単独で用いる必要はなく、これらの混合物であってもよい。さらに高級アルコールは直鎖構造に限定されるのではなく、分子構造中に二重結合や側鎖に官能基を有する化合物であってもよい。
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂溶液中のポリオレフィン系樹脂の濃度は5〜30重量%が好ましい。ポリオレフィン系樹脂濃度が5重量%を下回ると、得られる膜の強度が低下してしまうばかりでなく、溶液粘度も低下して押出し成形が困難となることがある。従って、ポリオレフィン溶液の濃度は6重量%以上がより好ましく、7重量%以上がさらに好ましい。一方、ポリオレフィン系樹脂濃度が30重量%より大きくなると、膜構造が全体的に緻密化して好ましくないばかりでなく、成形時に溶液濃度が高くなることから、押出し成形が困難となることがある。従って、ポリオレフィン溶液の濃度は29重量%以下がより好ましく、28重量%以下がさらに好ましい。
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂は、中空糸状多孔質膜形成後の極限粘度で7dl/g以上となるものが好ましい。中空糸状多孔質膜形成後の極限粘度が7dl/g未満となるようなポリオレフィン系樹脂を原料として使用した場合、得られる膜の機械的強度や中空糸状多孔質膜の成形性の観点から、上記記述の有機液体に高濃度で混合する必要が生じ、その影響で緻密な構造を有する濾過性能の低い膜となり易い。従って、上記記述の有機液体との配合比の範囲も踏まえた上で推奨されるポリオレフィン系樹脂は、極限粘度8〜20dl/gが好ましく、9〜18dl/gがより好ましい。極限粘度が20dl/gを超えるようなポリオレフィン系樹脂を原料に用いた場合は、上記記述の有機液体に極めて低い濃度でしか混合し難くなり、機械的強度や濾過性能の劣る中空糸状多孔質膜となり易い。
本発明ではポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、潤滑剤成分を0.10重量部以上6.00重量部以下添加することが好ましい。ここで言う潤滑剤成分とは押出し成形時の加工を容易にさせる添加剤であり、ポリオレフィン系溶液とダイスや押出し機中及び特に紡糸ノズル内金属壁面との摩擦を低減させ、メルトフラクチャー様の吐出不安定現象を抑制できる効果を有する添加剤を指す。その作用機構は明確ではないが、せん断変形等による流動場で潤滑剤成分がダイスやノズルの金属壁面側に濃縮した層を形成し、ポリオレフィン系溶液と金属壁面との摩擦抵抗を低減すると推定する。
このような潤滑剤成分の具体的な例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸類およびそのエステル類、オレイン酸やエルカ酸等の不飽和脂肪酸及びそのエステル類、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド類、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類、等の有機系潤滑剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛などに代表される脂肪酸金属塩及びシリカ、炭酸カルシウムなどの無機微粒子が挙げられる。
これらの潤滑剤成分のうち、本発明でより好ましくは、ポリオレフィン系溶液調製温度および押出し成形温度の−50℃以上程度の融点を有する添加剤を用いるのが好ましい。溶液調製温度や押出し成形温度より著しく融点が低い潤滑剤成分を用いた場合、耐熱性・熱安定性の観点から充分な効果が期待できない可能性がある。さらに、上述のポリオレフィン系溶液中で耐熱性・熱安定性の観点の他、ポリオレフィン系溶液を押出し成形しポリオレフィン系多孔質膜前駆体を得、ポリオレフィン系樹脂と高温で均一な溶液相が形成可能であり冷却により二相分離する能力を有する有機物を抽出し、最終的にポリオレフィン系多孔質膜を得るのであるが、このポリオレフィン系多孔質膜中に残留及びブリードアウトし難い潤滑剤成分が好ましい。これらの観点から本発明に用いる潤滑剤成分としては脂肪酸金属塩が好ましい。
このような潤滑剤成分の添加量が0.10重量部を下回ると安定押し出しの効果は認められなくなることがある。したがって、潤滑剤成分の添加量は0.2重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。また、6.00重量部より多くなると、安定押し出しに対する効果は認められるが、機械的物性の低下につながることがある。したがって、潤滑剤成分の添加量は5.8重量部以下がより好ましく、5.5重量部以下がさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を溶解可能な有機物との混合及び溶解は、以下のような形態で実施できる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂、上記有機物及び潤滑剤成分をそれぞれ所定量計量し、加熱可能なミキサーにて加熱攪拌する。この際、加熱温度は樹脂融点の+10〜+100℃が望ましい。これ以上の温度になると、溶解時間にもよるがポリオレフィン系樹脂や有機物が分解する可能性があり、中空糸状多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂の極限粘度が7dl/g以下となり易い。従って、加熱温度は樹脂融点+80℃以下がより好ましく、樹脂融点+70℃以下がさらに好ましい。一方、加熱温度が上記範囲より低い場合、有機物の樹脂溶解能にもよるが、溶解に長時間を要することとなり、中空糸状多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂が劣化して極限粘度が7dl/g以下となる可能性がある。また、樹脂または混合物の粘度が高くなり、均一な溶解が得られないという問題が生じる可能性がある。従って、加熱温度は樹脂融点+20℃以上がより好ましく、樹脂融点+30℃以上がさらに好ましい。
ポリオレフィン溶液の別の調製法としては、単軸あるいは二軸のスクリューを有する押出し機を利用する方法が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂を溶解する有機物が室温で固体の場合は、あらかじめポリオレフィン系樹脂と該有機物を所定量ブレンドして押出し機に投入すれば良く、好適である。
尚、ポリオレフィン溶液には、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えることは何ら問題がない。酸化防止剤としては、添加物として公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系等の酸化防止剤などが挙げられるが、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを用いるのが好ましい。
このようにして調製されたポリオレフィン溶液は、ギアポンプで定量的に紡糸ノズルを介して押出し、中空糸の形状に成形する。中空糸を成形する場合は、二重管ノズルを用いることができるが、通常、溶融紡糸でもよく用いられているC型タイプや三点ブリッジタイプのノズルを用いることができる。成形する際のノズル温度はポリオレフィン系樹脂の融点+10〜+100℃が好ましく、ポリオレフィン系樹脂溶液の相分離温度より高い範囲が望ましい。ノズル温度が上記温度範囲より高い場合、ポリオレフィン樹脂の劣化により中空糸状多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂の極限粘度が7dl/g以下となる可能性があり、またエアギャップ中での有機物の揮発により、成形体中の樹脂濃度が高くなり多孔質膜構造の制御が難しくなる可能性がある。従って、ノズル温度はポリオレフィン系樹脂の融点+80℃以下がより好ましく、ポリオレフィン系樹脂の融点+70℃以下がさらに好ましい。一方、ノズル温度が上記温度範囲より低い場合、溶液粘度の増加にともない成形が困難になるのみならず、多孔質構造の制御が難しくなるという問題が生じる。従って、ノズル温度はポリオレフィン系樹脂の融点+20℃以上がより好ましく、ポリオレフィン系樹脂の融点+30℃以上がさらに好ましい。
また、二重管ノズルを用いる場合は中空部成形流体を注入する必要がある。中空部成形流体としては、ポリオレフィン系樹脂および有機液体または有機固体とは非反応性の気体または液体を用いることができるが、液体の場合、中空糸状多孔質膜前駆体を作成後に抽出工程を加える必要が生じ、工程時間を増やすこととなる。従って、非反応性の気体を用いることが好ましく、その中でも特に、不活性ガスである窒素ガスを用いることが好ましい。
上記により成形された中空糸状成形体は、エアギャップを経て冷却浴に導かれ冷却固化されて多孔質膜前駆体を得る。この際、冷却浴条件が本発明においては極めて重要である。ノズルより吐出された中空糸状成形体は、エアギャップ通過時にも若干の高級アルコールの揮発が起こり中空糸状成形体表面の相分離が開始されるが、膜特性や膜性能に影響を与えるような相分離は、冷却浴に導入された後の冷却条件が大きく影響しているものと考えられる。従って、所望の膜特性や膜性能を得るためには、冷却浴の温度と浸漬時間との組合せについて適宜試行錯誤のうえ適正な条件設定を行う必要がある。たとえば、中空糸状多孔質膜の外表面の孔径を大きくするためには、冷却浴温度を比較的高く設定し、浸漬時間も長くとるようにすればよい。
本発明においては、エアギャップから冷却浴に導入する際、高級アルコールと相溶性がある液体槽に少なくとも0.1秒以上浸漬し、次いで水槽にて冷却固化させる2段相分離により多孔質膜前駆体を得るのが好ましい。液体槽に0.1秒以上浸漬することにより、中空糸状多孔質膜外表面の孔径が適度に大きくなり、高い透水性能を有する多孔質膜が得られる。従って、浸漬時間は0.15秒以上がより好ましく、0.2秒以上がさらに好ましい。逆に、浸漬時間があまり長いと中空糸状多孔質膜外表面の孔径が過度に大きくなり易く、除去性能の低下を引き起こしてしまうことがある。従って、浸漬時間は2.0秒以下がより好ましく、1.0秒以下がさらに好ましい。
2段相分離の具体的な実施形態としては、高級アルコールと相溶性があり水とは非相溶である液体であれば、上層に高級アルコールに対して相溶性のある液体、下層には高級アルコールと相溶せず、かつ高級アルコールよりも比重の重い液体、例えば水を配置した冷却浴を用いてもよいが、高級アルコールと相溶性のある液体槽と水槽を別々に配しても何ら問題はない。
ここで、高級アルコールと相溶性がある液体槽を用いずに直接水槽にすると、冷却浴に突入した際、成形物は収縮固化を開始するが、ポリオレフィン溶液中の高級アルコール剤成分が一気に成形物外に揮発し、得られる多孔質膜の表面は極めて密な構造となり、水処理分野等で利用する際には高い透水性能が得られないことがある。
ところで、高級アルコールと相溶性がある液体としては、ポリオレフィン系樹脂溶解に用いた炭素数が10以上20未満の高級アルコールである、例えば1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノールなどの直鎖高級アルコールを挙げることができるが、室温付近で液体状態である1−デカノールや1−ドデカノールが好ましい。また、炭素数が10未満のアルコール系化合物、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、1−ヘキサノール、1-オクタノール等でも差し支えない。また、n-ヘキサン、n-オクタン及び流動パラフィン等の脂肪族化合物等も使用することができる。
このようにして得られた中空糸状多孔質膜前駆体は、適当な抽出溶剤により、ポリオレフィン系樹脂を溶解させた高級アルコールを抽出することにより、ポリオレフィン系多孔質膜を得ることができる。抽出溶剤は制限されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂を溶解可能な有機液体または有機固体として高級アルコールを使用しているため、メタノール、エタノール、ヘキサンに代表される汎用の有機溶剤が使用可能であり、ハロゲン系有機溶剤等の環境問題に関わる溶剤を使用する必要はない。抽出方法は、中空糸状多孔質膜前駆体の量にもよるが、例えば、抽出溶剤にエタノールを用いる場合は、30℃に加温して2時間浸漬することで高級アルコールを抽出することができる。また、抽出溶剤は、純水に30分間浸漬することで除去することができる。
このようにして得られた中空糸状多孔質膜は、外径1000〜2000μm、内径400〜1400μm、空孔率が60%〜90%、平均粒径0.05〜1.0μmのラテックス標準粒子を95%以上阻止する膜構造となる。このような膜構造を有する中空糸状多孔質膜を作成する為に特に推奨される条件は、ポリオレフィン系樹脂の極限粘度が9〜18dl/g、ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン樹脂の重量%が10〜30重量%、高級アルコールと相溶性のある液体槽に0.1秒以上浸漬することである。
本発明の中空糸状多孔質膜は、空孔率が60〜90%であることが好ましい。空孔率が60%未満になると透水量が低下し、造水コストの増加等につながることがある。逆に90%を超えると機械的物性の低下に繋がることがある。従って、空孔率は65〜85%がより好ましく、70〜80%がさらに好ましい。
本発明の中空糸状多孔質膜は、平均粒径0.05〜1.0μmのラテックス標準粒子を95%以上阻止することが好ましい。0.05μm未満の平均孔径を有する膜となると、濾過抵抗が増加し、著しい透水量の低下につながる。逆に1.0μm以上の平均孔径を有する膜となると、除濁やクリプトスポリジウム等の原虫類の捕捉が困難となり易い。従って、平均孔径は0.07〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.3μmがさらに好ましい。
本発明の中空糸状多孔質膜は、破断強度が5.0MPa以上、破断伸度が70%以上であることが好ましい。破断強度が5.0MPa未満、破断伸度が70%未満となると、エアバブリング等の物理的な洗浄に対する耐久性が低下し易く、長期に渡り膜の濾過性能を維持することが困難となる可能性がある。従って、破断強度は5.5MPa以上、破断伸度は80%以上がより好ましく、破断強度は6.0MPa以上、破断伸度は100%以上がさらに好ましい。しかしながら、破断強度が12MPa、あるいは破断伸度が500%を超える中空糸状多孔質膜となると膜構造に大きな変化が生じ易く、濾過性能あるいは長期耐久性能いずれかを損ない、水処理分野には適さない膜となることがある。
本発明の中空糸状多孔質膜は、透水量が8000L/m2・hr・MPa以上であることが好ましい。水処理分野で用いられる中空糸状多孔質膜は、多数本の膜を束ねて円筒型ケースに挿入する加圧式モジュールと呼ばれる形態と、平行に並べた多数本の膜を幾層か重ねて水槽に浸漬する浸漬型モジュールと呼ばれる形態に大別でき、目標とする造水量にもよるが、ユニット単体の造水量は可能な限り多い方が良い。造水量を増やすためには、モジュールに使用する膜の本数を増やせば良いが、ユニットの設置スペースを拡大や造水エネルギーの増加等、造水コストの増加を招くことになる。従って、使用する中空糸状多孔質膜としては可能な限り高い透水量を有することが望ましく、10000L/m2・hr・MPa以上がより好ましく、12000L/m2・hr・MPaがさらに好ましい。しかしながら、透水量が50000L/m2・hr・MPaを超える中空糸状多孔質膜となると膜構造に大きな変化が生じ易く、濾過性能あるいは長期耐久性能いずれかを損ない、水処理分野には適さない膜となることがある。
また、本発明の中空糸状多孔質膜は、外径1000〜2000μm、内径400〜1400μmであることが好ましい。水処理分野で用いられる中空糸状多孔質膜は、外圧濾過、内圧濾過いずれの場合も表面積がより広い方が良いが、使用目的や使用環境に応じて外径、内径は任意に変更することができる。モジュールにした時の造水量や長期に渡って濾過性能を維持する観点から言えば、外径1200〜1500μm、内径600〜900μmがより好ましい。
このようにして得られる中空糸状多孔質膜は、機械的物性および膜特性の観点から延伸や熱処理を実施してもよい。これらの延伸や熱処理は有機物抽出前の多孔質前駆体の状態で実施してもよい。
以下、本発明の内容および効果を実施例によって説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(極限粘度の測定)
本発明における極限粘度は、135℃のデカリンに中空糸状多孔質膜を溶解して、ウベローデ型毛細粘度管により種々の希薄溶液の比粘度を測定し、その比粘度を濃度で除した値の濃度に対するプロットの最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より決定した。なお、多孔質膜に対して1重量%の酸化防止剤(商標名「ヨシノックスBHT」吉富製薬製)を添加し、135℃で4時間攪拌溶解して測定溶液を調整した。
(吐出線速度と紡糸速度の比(ドラフト比))
ドラフト比(Ψ)は、以下の式で与えられる。
ドラフト比(Ψ)=紡糸速度(Vs)/吐出線速度(V)
(ラテックス標準粒子の阻止率、および平均孔径の測定)
本発明における中空糸状多孔質膜のラテックス標準粒子の阻止率は、少なくとも3種類以上平均粒径の異なるラテックス標準粒子を用いて測定し、95%以上の除去率を示した時に用いたラテックス標準粒子の平均粒径を、中空糸状多孔質膜の平均孔径として定義した。
(1)阻止率
所定のフィルターを通して濾過した純水に、ラテックス標準粒子を0.001重量%となるよう投入した原水W0の吸光度と、それを中空糸状多孔質膜で濾過した透過水W1の吸光度を日立製作所製吸光光度計「U−2000」で測定し、下式に基づいて阻止率を算出した。
阻止率=(1−W1/W0)×100[%]
(空孔率の測定)
100cm長の中空糸状多孔質膜を、ループ状にして2−プロパノール中に10分間、2−プロパノール50wt%水溶液中に30分間、純水中に30分間浸漬した後に室温中に15分間放置した湿潤状態の膜重量A1を測定し、次いで50℃のオーブン中で4時間真空乾燥した後の膜重量A0を測定し、空孔率0とした場合の100cm長の中空糸の体積Vとして、下式に基づいて空孔率を算出した。
空孔率=(A1−A0)[g]/V[cm3]×100[%]
(中空糸状多孔質膜の外径及び内径測定)
かみそりで中空糸状多孔質膜断面を切り出し、拡大鏡(Nikon.12A投影機)により、肉眼で中空糸状多孔質膜の外径及び内径を測定した。
(透水量の測定)
本発明における透水量は以下の方法で測定し、算出した。
(1)膜性能評価用ミニモジュールの作製
5本の中空糸状多孔質膜でループを形成し、中空糸状多孔質膜の開口端部側をホルダーに挿入してエポキシ樹脂で封止した。この際、ホルダーの反対側の端部から中空糸状多孔質膜が数cm突出する状態で封止を行ない、エポキシ樹脂が硬化したのち、この突出部を切断することにより、中空糸状多孔質膜の開口部を形成した。従って、形成された中空糸状多孔質膜の開口部は10個となり、このミニモジュールの有効長は38.5cmであった。
(2)外径基準透水量
作成したミニモジュールをエタノール50wt%水溶液中に1時間浸漬した後、直ちに所定の評価装置に配して、25℃純水、差圧0.02MPaにて1分間の透水量を測定した。得られた透水量より、下式に基づいて外径基準透水量を算出した。
外径基準透水量=実透水量×60/0.02/膜有効長×中空糸外径×π×開口部数[L/m2・hr・MPa]
(引張り破断強度、引張り破断伸度)
本発明における引張り破断強度および引張り破断伸度は,弾性率は、オリエンティック社製「テンシロン」を用い、試料長20mm(チャック間長さ)、伸長速度100mm/minの条件で歪ー応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定し、破断点での応力を膜断面積あたりに換算した数値を破断強度(MPa)、破断点での伸度を破断伸度(%)とした。なお、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
(実施例1)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン145M」三井化学(極限粘度 9.3dl/g))1.6kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)6.4kg、ポリエチレン樹脂に対してステアリン酸カルシウム(ナカライテスク)を1重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン20重量%溶液を作成した。得られたポリエチレン溶液を、外径3.0mm、内径1.8mm、スリット幅0.6mmの二重管型紡糸ノズルから、紡糸温度175℃で1孔あたり3.0g/minの吐出量で押出した。二重管型紡糸ノズルの内管からは、中空部成形流体として窒素ガスを1.0cc/minの速度で送流した。押出された中空状物は、10mmのエアギャップを介して35℃の1−ドデカノール槽に0.2秒間浸漬後、30℃の水槽で冷却し中空糸状多孔質膜前駆体を巻き取った。この際、ドラフト比2.5とした。ノズルからの吐出状態は、メルトフラクチャー様の吐出不安定現象は観察されず良好であった。このようにして得られた中空糸状多孔質膜前駆体から、エタノールにより、1−ドデカノールを抽出し中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜の外径/内径は1250μm/600μmであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表1に示す。
(実施例2)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン240M」三井化学(極限粘度 16.0dl/g))0.8kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)7.2kg、ポリエチレン系脂に対してステアリン酸カルシウム(ナカライテスク)を2重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン10重量%溶液を作成した。得られたポリエチレン溶液は、実施例1と同様の方法で中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜は外径/内径が1243μm/594μmであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表1に示す。
(実施例3)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン320M」三井化学(極限粘度 18.0dl/g)0.64kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)7.36kg、ポリエチレン樹脂に対してステアリン酸カルシウム(ナカライテスク)を3重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン8重量%溶液を作成した。得られたポリエチレン溶液は、実施例1と同様の条件で中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜の外径/内径は1248μm/583μmであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表1に示す。
(実施例4)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン145M」三井化学(極限粘度9.3dl/g))2.0kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)6.0kg、ポリエチレン樹脂に対し、ステアリン酸カルシウム(ナカライテスク)を4重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン25重量%溶液を作成した。得られたポリエチレン溶液は、実施例1と同様の方法で中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜の外径/内径は1275μm/624μmであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表1に示す。
(実施例5)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン145M」三井化学(極限粘度9.3dl/g))1.52kgに1−オクタデカノール(ナカライテスク)6.48kg、ポリエチレン樹脂に対してステアリン酸カルシウム(ナカライテスク)を1重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン19重量%溶液を作成した。得られたポリエチレン溶液は、実施例1と同様の方法で中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜の外径/内径は1246μm/578μmであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表1に示す。
(比較例1)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン340M」三井化学(極限粘度 21.0dl/g))0.4kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)7.6kg、ポリエチレン樹脂に対してステアリン酸カルシウム(ナカライテスク)を5重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン5重量%溶液を作成した。得られた溶液は外径3.0mm、内径1.8mm、スリット幅0.6mmの二重管型紡糸ノズルから、紡糸温度200℃で1孔あたり3.0g/分の吐出量で押出そうとしたが、メルトフラクチャー様の押出し不安定現象が観察され、さらに孔曲がりも発生した。紡糸温度を230℃まで上げたが改善されず、中空糸状多孔質膜を得ることができなかった。
(比較例2)
ポリエチレン樹脂(「ニポロンハード5700」東ソー(極限粘度 1.5dl/g))3.36kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)4.64kg、ポリエチレン樹脂に対して、酸化防止剤(「イルガノックス1010」(長瀬産業(株))を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン42重量%溶液を作成した。得られた溶液は、紡糸温度を155℃とした以外は、実施例1の同様の方法で中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜の外径/内径は1287μm/653μmであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表2に示す。樹脂濃度が高いため膜強度は優れていたが、空孔率が60%以下で透水量は著しく低下し、水処理用には適さない膜性能であった。
(比較例3)
ポリエチレン樹脂(「ハイゼックスミリオン240M」三井化学(極限粘度 16.0dl/g)0.32kgに1−ドデカノール(ナカライテスク)7.68kg、ポリエチレン樹脂に対してステアリン酸カルシウムを0.5重量部、酸化防止剤(「イルガノックス1010」長瀬産業)を0.2重量部添加して、170℃にて加熱混合し、ポリエチレン4重量%溶液を作成した。得られた溶液は、実施例1の同様の方法で中空糸状多孔質膜を作成した。得られた中空糸状多孔質膜の外径/内径は1222μm/555μmであったが、扁平化しており、非常に真円度の低いものであった。得られた中空糸状多孔質膜の物性および膜性能を表2に示す。樹脂濃度が低いため90%以上の空孔率であり、透水量は高い値であったが、膜強度が著しく低下した。また、ラテックス標準粒子の阻止率より求めた膜の平均孔径は3.0μmであり、水処理用には適さない膜性能であった。
(比較例4)
エアギャップを経て直接水槽に導いた以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の外径/内径は1258μm/612μmであった。押出された中空糸状物が冷却浴に突入した際、高級アルコール剤成分が一気に成形物外に揮発し、外表面が緻密化した影響からか、0.020μmのラテックス標準粒子でも阻止率が100%を示し、著しく透水量が低下したため、水処理用には適さない膜性能であった。
Figure 0004810845
Figure 0004810845
ポリオレフィン系樹脂を炭素数10以上20未満の高級アルコールに溶解して得られたポリオレフィン溶液に、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して潤滑剤成分を0.10重量部以上6.00重量部以下添加して、押出し成形することにより得られるポリオレフィン系中空糸状多孔質膜であって、該ポリオレフィン系中空糸状多孔質膜を構成するポリオレフィン系樹脂の極限粘度が8dl/g以上、空孔率が60%〜90%、平均粒径0.05〜1.0μmのラテックス標準粒子を95%以上阻止するポリオレフィン系中空糸状多孔質膜である。このような特性を有するため、水処理におけるクリプトスポリジウム等の原虫の除去および除菌および除濁等の濾過のフィルター用途等に好適であり、したがって産業の発展に寄与することが大である。

Claims (4)

  1. 粘度平均分子量が100万超であるポリエチレン樹脂を炭素数10以上20未満の高級アルコールに溶解して得られた5〜30重量%ポリエチレン溶液に、ポリエチレン樹脂100重量部に対して脂肪酸金属塩を0.10重量部以上6.00重量部以下添加して、押出し成形して得られるポリエチレン系中空糸状多孔質膜であって、該ポリエチレン系中空糸状多孔質膜を構成するポリエチレン樹脂の極限粘度が9〜20dl/g、空孔率が70%〜90%、平均孔径が0.07〜0.5μmであることを特徴とするポリエチレン系中空糸状多孔質膜
  2. 破断強度が5.0MPa以上であり、破断伸度が70%以上であることを特徴とする請求項1記載のポリエチレン系中空糸状多孔質膜
  3. 透水量が8000L/m2・hr・MPa以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエチレン系中空糸状多孔質膜
  4. ポリエチレン溶液に酸化防止剤を添加して製造されたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリエチレン系中空糸状多孔質膜
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