JP4808650B2 - 平版印刷版原版 - Google Patents
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Description
平版印刷版原版では、表面に形成される画像形成層の組成や支持体と画像形成層との密着性が耐刷性に大きな影響を与え、この観点からも、粗面化の状態を制御することで画像形成層との密着性を向上させる技術が一般に採用されている。
なかでも、機械的粗面化処理により比較的大きな凹凸と、それに引き続き行われる電気化学的粗面化処理によるより小さな凹凸を形成することで、画像形成層の密着性、耐刷性やアルミニウム支持体表面の親水性向上を図る技術が有用である。
機械的粗面化処理としては、回転するナイロンブラシとアルミニウム板との間に研磨剤のスラリーを吹き付ける方法が一般的に知られている。また、電解粗面化処理としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法が知られている。
上記平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」という。)としては、粗面化処理が容易であることから、純アルミニウム板あるいは、アルミニウム純度が99.5%以上で、微量の異元素(例えば、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなど)を含む合金板が使用されている。このように、従来の技術においては、高純度のアルミニウム材を平版印刷版用支持体の原料として用いるのが一般的であった。
UCBアルミニウム板に、特定の疎面化処理をして平版印刷版原版用の支持体を製造する方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、ナイロンブラシと研磨材による機械的粗面化処理を実施しているが、混在する不純物の影響によって粗面化の処理性が低下し、平版印刷版用支持体として用いるのに適した表面が得られない場合がある。
さらに電気化学的粗面化を実施した場合、不純物金属の偏在する箇所において、該不純物とアルミニウムとの合金部分が剥離して開口部ができ、微細で均一な粗面化を行うことが困難であった。
公知のダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版においては、アルカリ水溶液可溶性樹脂としてノボラック樹脂等が使用されている。なかでも、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収して熱を発生する物質と、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像形成層を有するものが、高品質の画像が得られる優れた赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版として開示されている(例えば、特許文献3、参照)。
また、ネガ型平版印刷版原版としては、重合開始剤、重合性化合物及び光を吸収して熱を発生する物質を含み、露光領域が重合硬化するラジカル重合型の画像形成層や、熱溶融性の粒子やマイクロカプセルを含み、露光領域が融着して疎水性領域を形成する特に湿式現像処理を必要としない無処理型の画像形成層などを有するものが挙げられる。
<2> 支持体上に、該支持体表面と直接化学結合し得る反応性基、及び、支持体表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有し、下記一般式(2)中の構造単位(iii)および構造単位(iv)を含むポリマーが化学結合してなる親水性層と、画像形成層とをこの順で有することを特徴とする平版印刷版原版。
<3> 前記支持体がアルミニウム支持体であることを特徴とする<1>または<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 前記アルミニウム支持体を構成するアルミニウムの純度が99.4〜95質量%であることを特徴とする<3>に記載の平版印刷版原版。
<5> 前記支持体がプラスチックフィルム支持体であることを特徴とする<1>または<2>に記載の平版印刷版原版。
<6> 前記架橋構造を有する構成成分が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有することを特徴とする、<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<8> 前記画像形成層が、赤外線吸収剤を含有することを特徴とする<7>に記載の平版印刷版原版。
<9> 前記画像形成層が、2層以上の積層構造を有することを特徴とする<1>乃至<8>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<10> 前記画像形成層が、ノボラック樹脂を含有するポジ型画像形成層であることを特徴とする<1>乃至<9>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<11> 前記ポジ型画像形成層が、全アルカリ可溶性樹脂に対してノボラック樹脂を50質量%以上含むアルカリ可溶性樹脂と、スルホニウム化合物またはアンモニウム化合物と、を含有することを特徴とする<10>に記載の平版印刷版原版。
さらに、このポリマーは、側鎖にラクトン構造を有するため、支持体に結合されたポリマーが、アルカリ現像時にアルカリ現像液や水性成分との接触によりラクトン環が開環して、カルボン酸塩と水酸基とが生成する。このため、画像部が除去されて親水性層が露出した部分においては、その酸性基に起因して、いずれの支持体を用いた場合であっても、優れた親水性をその表面に付与することができるものと考えられ、本発明の好ましい態様においては、末端に反応性基を有する親水性ポリマーを用いることで、このポリマーが、支持体表面に片末端で強固に固定化されながら、他端が比較的自由な状態で存在し、ポリマーの運動性に優れるため、親水性の一層の向上を図ることができるものと推定される。
平版印刷版原版の画像形成層としては、現像の際に露光部が可溶化するポジ型および、露光部が不溶化するネガ型が知られており、本発明においては、ポジ型、ネガ型のいずれの画像形成層を有する場合においても優れた効果を奏するが、本発明における特定親水層はアルカリ水溶液との接触により親水性のさらなる向上が可能であるため、ポジ型画像形成層を有する平版印刷版原版に特に好ましく用いることができる。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、該支持体表面と直接化学結合し得る反応性基、或いは、基材表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種と、以下に詳述するラクトン構造とを有する親水性ポリマーが化学結合してなる親水性層と、画像形成層と、をこの順に有することを特徴とする。
ここで、支持体と親水性層と画像形成層とをこの順に有するとは、支持体上にこれらの層がこの順で積層されていることを意味し、必要に応じて設けられる層、例えば、バックコート層、上記親水性層と画像形成層との間に設ける下塗り層、画像形成層の上に設けるオーバーコート層などの公知の層の存在を否定するものではない。
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体は寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、耐久性、可撓性などの特性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム等が挙げられる。
なかでも、支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が特に好ましい。
また、通常、プラスチックフィルムは表面の親水性に劣るものが多いが、以下に詳述する本発明に係る特定親水層をその表面に形成することで、例えば、疎水性のプラスチックフィルムを支持体に用いた場合でも、平版印刷版原版用支持体に要求される優れた親水性とその持続性とを与えることができるため、本発明の平版印刷版原版によれば、支持体基材の選択の幅が拡がるという利点をも有するものである。
本発明に用いられるアルミニウム板について説明する。
本発明のアルミニウム板に用いるアルミニウム材の組成は既知のいかなるものであってもよく、一般に汎用の高純度アルミニウム基板に加え、例えば、アルミニウム含有量が99.4〜95質量%である如き、比較的低純度のアルミニウム基板も、同様に好ましく用いることができる。
従って、本発明における支持体として、通常、高品質の印刷版には適用し難い、使用済みアルミニウム飲料缶を溶解させたUBC(Used Beverage Can:使用済み飲料缶)地金を圧延して得られるアルミニウム材、あるいは、UBC地金を他のアルミニウム地金とを任意の割合で混合して調整した材料をも好適に用いることができる。
アルミニウム合金に含有される不可避不純物としては、例えば、鉛、ニッケル、スズ、インジウム、ホウ素等が挙げられる。
量%であり、Cr含有量が0.01〜0.05質量%、Zn含有量が0.1〜0.3質量%、残部がAl含有量95〜99.4質量%と不可避不純物とからなるアルミニウム板が用いられる。
本発明においては、Fe含有量は、0.3〜1質量%である。好ましくは、0.30超〜0.70質量%、より好ましくは、0.30超〜0.50質量%である。
また、Si含有量は、アルミニウム板の電気化学的粗面化に影響を及ぼし、0.03質量%未満では、電気化学的粗面化処理においてピットが溶解し均一な表面構造とならない場合がある。
本発明においては、Si含有量は、0.15〜1質量%である。好ましくは0.20〜0.50質量%、より好ましくは、0.20超〜0.40質量%である。
Cuの含有量は、電気化学的粗面化処理に大きく影響する。特に、硝酸を含有する電解液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(以下、単に「硝酸交流電解」という。)では、Cuの含有量が0.0001質量%より少ないと電解の温度変動に対してラチチュードが狭くなる場合がある。
Cuの含有量は、0.1〜1質量%である。好ましくは、0.10〜0.50質量%より好ましくは、0.10〜0.30質量%である。
Tiの含有量は0.01〜0.5質量%である。好ましくは、0.02〜0.3質量%、より好ましくは、0.02〜0.05質量%である。
Mgの含有量は0.1〜1.5質量%である。好ましくは、0.30〜1.5質量%、より好ましくは、0.50〜1.35質量%である。
Mnの含有量は0.1〜1.5質量%である。好ましくは、0.30〜1.40質量%、より好ましくは、0.50〜1.30質量%である。
また、これらの含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、Cr含有量は0.01〜0.1質量%であり、好ましくは、0.01〜0.08質量%、より好ましくは、Cr含有量が0.01〜0.05質量%である。
Zn含有量は0.1〜1.5質量%である。好ましくは、0.1〜1.3質量%、より好ましくは、0.1〜0.3質量%である。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が120MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。なお、この0.2%耐力については、理化学事典第4版(岩波書店)、743ページに記載されており、汎用の引っ張り試験機を用いることにより測定することができる。
特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさがってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。
また、アルミニウム板は、引張強度が140〜300N/mm2、JIS Z2241およびZ2201に規定される伸びが1〜10%であるのがより好ましい。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
支持体がアルミニウム材からなる場合、該アルミニウム基板は、上記のようにして得られたアルミニウム基板表面に、シリケート処理を施すことが、親水性層との密着強度向上の観点から好ましい。
シリケート処理を施す方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を任意に使用することができるが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩を溶解した水溶液に、上記アルミニウム基材を浸漬する方法などが挙げられる。
この場合のアルカリケイ酸塩水溶液の濃度は、1〜30質量%程度が好ましく、2〜15質量%程度がより好ましい。また、該水溶液のpHは、25℃でpH10〜13程度が好ましい。本発明係るシリケート処理は、このような水溶液を15〜80℃、好ましくは15〜50℃に保ち、上記アルミニウム基材を0.5〜120秒間、好ましくは5〜60秒間、該水溶液に浸漬することにより実施される。
また、上記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液には、該水溶液のpHを高くするために、水酸化物を添加してもよい。そのような水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。このような水酸化物の添加量は、該水溶液中0.01〜10質量%程度が好ましく、0.05〜5.0質量%程度がより好ましい。
さらに、アルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を添加してもよい。そのようなアルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。このようなアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。金属塩の添加量は、該水溶液中0.01〜10質量%程度がこのましく、0.05〜5.0質量%程度がより好ましい。
本発明の平版印刷版原版においては、支持体上に、該支持体表面と直接化学結合し得る反応性基、及び、支持体表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基、及び、特定の官能基を有する親水性のポリマーが化学結合してなる親水性層(以下、適宜、特定親水性層と称する)を備えることを特徴とする。
以下、このような特定親水性層を構成するポリマーについて説明する。
[(1)支持体表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有し、一般式(1)中の構造単位(i)および構造単位(ii)を含むポリマー〔特定ポリマー(1)〕]
本発明の特定親水性層は、支持体と直接または架橋構造を有する構成成分を介して化学結合を形成しうる反応性基と、ラクトン構造とを有する親水性ポリマーにより形成される。
ここで、アルミニウム基材表面と直接化学結合し得る反応性基としては、アルミニウム基材表面に存在する−Al3+或いは−OH等の官能基と化学結合可能な官能基、例えば、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、ハロシリル基(クロロシリル基など)、アミノシリル基のような官能基が挙げられ、有機材料からなる支持体を用いた場合には、例えば、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、ハロシリル基(クロロシリル基など)、アミノシリル基、などが挙げられる。
後者において、支持体表面と架橋構造を有する構成成分とは、後述するゾルゲル架橋成分やビニル重合性基、エポキシ重合性基、オキセタン重合性基などを含む化合物の如き成分を指す。
このような反応性基は、親水性ポリマーの鎖状構造の末端、側鎖のいずれにあってもよいが、高保水性の観点からは末端に位置するほうが好ましく、膜強度の点からは側鎖にあるほうが好ましく、これらから適宜選択または組み合わせればよい。
好ましくは、構造内に炭素原子を1〜20含む置換基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜15の置換基であり、特に好ましくは炭素数1〜8の置換基である。
R1、R2、R3、R4が炭素数1〜30の置換基を表す場合の置換基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基などが挙げられる。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。ヘテロ環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピリジニル基などが挙げられる。
L3として、特に好ましい構造としては、−(C=O)−O−が挙げられる。これは、レーザ露光によりラクトン構造を有するY1が乖離した場合、この連結基との関連でカルボン酸基を生じうるためである。特にポジ型の画像形成層を有する場合、生じたカルボン酸基によって露光部の現像が促進され、すぐれた画像形成性が発現され、印刷汚れの発生が効果的に抑制される。
ラクトン構造としては、ラクトン構造を有していればいかなる構造でも用いることができるが、好ましくは5員環または6員環ラクトン構造である。ラクトン構造部分は置換基を有しているものであってもよい。
なお、ラクトン構造におけるL1との結合位置には特に制限はなく、任意の位置で結合することができる。
好ましいラクトン構造として、以下に示す(LC1−1)〜(LC1−12)で表されるラクトン構造を挙げることができる。これらは上述の置換基を有していてもよい。
直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、などが挙げられる。
また、これらの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、以下に示す構造単位において、Rxは、水素原子、CH3、CH2OH、又は、CF3を表し、好ましくは、水素原子、又は、CH3である。
また、本発明において親水性層を構成するポリマーの他の好ましい態様として、支持体表面と直接化学結合し得る反応性基、及び、支持体表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有し、下記一般式(2)中の構造単位(iii)および構造単位(iv)を含むポリマーが挙げられる。
特定ポリマー(2)は、シランカップリング基を有する構造単位(iii)と、ラクトン構造を有する構造単位(iv)という少なくとも2種の繰返し単位を共に有する高分子化合物である。また、構造単位(iii)、および、構造単位(iv)は、それぞれ単一でも複数の種類を組み合わせてもよく、さらに、構造単位(iii)及び構造単位(iv)以外の繰返し単位(共重合成分)を含んでいてもよい。
一般式(2)における、構造単位(iii)と構造単位(iv)とのモル組成比は、99.5:0.5〜0.5:99.5であることが好ましく、99:1〜50:50がさらに好ましく、98:2〜70:30が特に好ましい。
R5、R6、R7、R8、R9、およびR10としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基などが挙げられる。
R5、R6、R7、R8、R9、およびR10の具体的な例としては、前述の一般式(1)の説明において、R1、R2、R3およびR4の例として挙げたものが、同様に挙げられる。
以下に、本発明に好適に用い得る特定ポリマー(2)の具体例〔例示化合物(2−1)〜(2−12)〕を、その構造単位とGPC法により測定した重量平均分子量(Mw)により示すが、以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、併用しうる構造単位としては、構造単位(i)、構造単位(ii)、構造単位(iii)、および構造単位(iv)で表されるものの他に、既知の種々のモノマーに由来する構造を挙げることができる。
好ましい例としては、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等に由来する公知のモノマーものなどが挙げられる。このような共重合を行うことで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
本発明に係る表面としては、上記ポリマー中の架橋性基が、直接支持体(例えばアルミニウム)表面上の−SiO− Na+、−Al3+、或いは−OH基などの官能基と化学結合したものでもよく、あるいは、上記ポリマーを含有する塗布液を調製し、基材表面に塗布、乾燥することで、該架橋性基の加水分解、縮重合により、架橋構造(ゾルゲル架橋構造)を形成したものであってもよい。
ゾルゲル架橋構造を形成するにあたっては、特定親水性ポリマーと、下記一般式(3)で表される架橋成分とを混合して基材表面に塗布・乾燥することが好ましい。下記一般式(3)で表される架橋成分としては、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす化合物であり、前記特定親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な皮膜を形成する。
R14及びR15がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は分子量1000以下であることが好ましい。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
<塗布液の調製>
本発明における親水性層形成用塗布液組成物を調製するにあたっては、前記した如き、特定の官能基を有する親水性ポリマー、具体的には、特定ポリマー(1)、特定ポリマー(2)を用いることを要するが、このような特定親水性ポリマーの含有量は、固形分換算で、10質量%以上、50質量%未満とすることが好ましい。特定ポリマーの含有量が上記範囲において、十分な膜強度を有し、且つ、皮膜特性が良好でクラック発生の懸念がない塗膜を形成することができ、好ましい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
本発明においては、このような支持体表面上に形成された親水性層上に画像形成層を設けることで平版印刷版原版を得ることができる。本発明において、ここに設けられる画像形成層は既知の任意のものであってよいが、効果の観点からは、赤外線レーザなどのヒートモード露光による画像形成が可能な画像形成層であることが好ましい。
画像形成層は単層構造であっても、複数の層からなる積層構造を有したものであってもよい。
好ましくはダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版であり、さらに好ましくノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収して熱を発生する物質と、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像形成層を有するものであり、特に好ましくは、該画像形成層が2層構成となっているものに、好適に用いることができる。
以下に、各種の平版印刷版原版について説明する。
本発明が好ましく用いられる、赤外線レーザによる赤外線露光により画像形成可能な平版印刷版原版について説明する。これらは、赤外線レーザ露光によりアルカリ水溶液に対する可溶性が変化する材料を用いるネガ型或いはポジ型の画像形成層、インク受容性領域を形成し得る疎水化前駆体を含有し、赤外線レーザ露光部において疎水化領域が形成される画像形成層など、公知の画像記録方式が任意に選択される。
本発明における前記特定親水性層は、上記のいずれの画像形成層を形成した場合でも優れた効果を示すが、アルカリ水溶液と接触することで親水性が向上することから、ポジ型画像形成層に好適に用いられる。
以下、それぞれの画像形成層について詳細に説明する。
本発明の好ましい態様として、ノボラック型フェノール樹脂(以下、適宜、ノボラック樹脂と称する)を50質量%以上と光熱変換剤とを含有し、赤外線レーザにより記録可能な画像形成層を設けたポジ型画像形成層を有する平版印刷原版が挙げられる。画像形成層は炭層であっても、複数の画像形成層からなる積層構造を有していてもよい。
まず、ノボラック型フェノール樹脂について説明する。ノボラック樹脂は、少なくとも1種のフェノール類を酸性触媒下、アルデヒド類又はケトン類の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
ここで、フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられ、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等が、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
本発明における画像形成層は、光熱変換剤を含有することが好ましい。ここで用いられる光熱変換剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
本発明の画像記録における画像形成層を調製するにあたっては、更に分解性溶解抑止剤を添加することができる。特にオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質(分解性溶解抑止剤)を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩及び、o−キノンジアジド化合物が好ましく、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩がより好ましい。
また、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)、特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)、特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)などで示されるジアゾニウム塩を挙げることができる。
さらに、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することができる。このような化合物の添加量としては、本発明に係る画像形成層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明に係る画像形成層中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許6,117,913号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の添加量としては、画像形成層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、本発明に係る画像形成層中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでいてもよい。酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像形成層中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
以上のようにして得られた本発明の画像記録材料における画像形成層は、皮膜形成性及び皮膜強度に優れ、且つ、赤外線の露光により、露光部が高いアルカリ可溶性を示す。
2−1.重合硬化層
ネガ型画像形成層の1つとして、重合硬化層が挙げられる。この重合硬化層には、(A)赤外線吸収剤と(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物とを含有し、好ましくは(D)バインダーポリマーを含有する。赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起して硬化する。
また、画像形成層の他の態様としては、酸架橋層が挙げられる。酸架橋層には、(E)光又は熱により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤と称する)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下、架橋剤と称する)とを含有し、さらに、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性ポリマーを含む。この酸架橋層においては、光照射又は加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士あるいは架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。このとき、赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、画像形成層中には(A)赤外線吸収剤が配合される。
赤外線レーザで画像形成可能な画像形成層には、赤外線吸収剤を含有する。赤外線吸収剤としては、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点からは波長800nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願平2001−6326、特願平2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
ラジカル発生剤は、光、熱、或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。本発明に適用可能なラジカル発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを選択して使用することができ、例えば、オニウム塩、トリハロメチル基を有するs−トリアジン化合物、オキサゾール化合物などの有機ハロゲン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アリールアジド化合物、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、チオキサントン類等のカルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素塩化合物、ジズルホン化合物等が挙げられる。
前記一般式(B−1)〜(B−3)中のZ11−、Z21−、Z31−は無機アニオン若しくは、有機アニオンを表すが、無機アニオンとしては、ハロゲンイオン(F−、Cl−、Br−、I−)、過塩素酸イオン(ClO4 −)、過ホウ素酸イオン(BrO4 −)、テトラフルオロボレートイオン(BF4 −)、SbF6 −、PF6 −等が挙げられ、有機アニオンとしては、有機ボレートアニオン、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオン、カルボン酸イオン、R40−SO3H−、R40−SO2 −、R40−SO2S−、R40−SO2N−−Y−R40イオン(ここで、R40は炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Yは単結合、−CO−、−SO2−、を表す。)等が挙げられる。
これらのオニウム塩は、画像形成層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、高感度な記録が達成され、また、印刷時における非画像部の汚れ発生が抑制される。
これらのオニウム塩は必ずしも画像形成層に添加されなくてもよく、画像形成層に隣接して設けられる別の層へ添加してもよい。
本態様における画像形成層に使用されるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いる事ができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
CH2=C(R41)COOCH2CH(R42)OH
(ただし、R41およびR42は、HまたはCH3を示す。)
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
このような画像形成層においては、画像形成層の膜性向上の観点からさらにバインダーポリマーを使用することが好ましく、バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、画像形成層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。
例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
好ましい含有量は、画像形成層の全固形分質量に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、さらに0.5〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量の範囲において、高感度な記録が達成でき、さらに、得られる平版印刷用の非画像部における汚れの発生が抑制される。
本実施の形態において、熱により分解して酸を発生する酸発生剤は、200〜500nmの波長領域の光を照射する又は100℃以上に加熱することにより、酸を発生する化合物をいう。
前記酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、熱分解して酸を発生しうる、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
上述の酸発生剤のうち、下記一般式(E−1)〜(E−5)で表される化合物が好ましい。
前記式中、R1、R2、R4及びR5は、炭素数1〜14の炭化水素基が好ましい。
このようなオニウム塩は、特開平10−39509号公報段落番号[0010]〜[0035]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載されている。
前記添加量が、0.01質量%未満であると、画像が得られないことがあり、50質量%を超えると、平版印刷用原版とした時の印刷時において非画像部に汚れが発生することがある。
上述の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
次に、架橋剤について説明する。架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
前記(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物又は複素環化合物が挙げられる。但し、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物のうち、中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
また、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物では、中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(F−1)〜(F−4)で表される化合物がより好ましい。
これらの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上できる点で好ましい。
なかでも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体が最も好ましい。
その他、米国特許第4,026,705号、英国特許第1,539,192号の各明細書に記載され、使用されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
前記添加量が、5質量%未満であると、得られる画像記録材料の画像形成層の耐久性が低下することがあり、80質量%を超えると、保存時の安定性が低下することがある。
原料の入手性の点で、前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。また、その置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
上記のうち、高感度化が可能である点で、Ar1としては、置換基を有していないベンゼン環、ナフタレン環、或いは、ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチオ基、炭素数12以下のアルキルカルバモイル基、又はニトロ基等を置換基として有するベンゼン環、又はナフタレン環がより好ましい。
本発明に適用可能な架橋層に使用可能なアルカリ水可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。前記ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
前記ノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000のものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いればよい。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられ、中でも、入手の容易性及び物性の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
本実施の形態に使用可能な、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーとしては、例えば、下記一般式(G−1)〜(G−4)で表される構成単位のうちのいずれか1種を含むポリマーを挙げることができる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
本実施の形態に使用可能なアルカリ水可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を組合せて使用してもよい。
アルカリ水可溶性樹脂の添加量が、5質量%未満であると、画像形成層の耐久性が劣化することがあり、95質量%を超えると、画像形成されないことがある。
このようなネガ型の画像形成層には、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
また、本発明においては、画像形成層が重合硬化層である場合、塗布液の調製中あるいは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像形成層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明の平版印刷版用支持体に適用し得るさらなる画像形成層として、加熱または輻射線の照射により疎水性領域を形成しうる化合物(以下、適宜、疎水化前駆体と称する)を含有する感熱画像形成層が挙げられる。このような画像形成層は、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルなどのように、加熱により、互いに融着したり、例えば、マイクロカプセルであれば、その内包物が熱により化学反応を起こしたりして、画像部領域即ち疎水性領域(親インク領域)を形成する化合物を含有し、これらは好ましくは、親水性のバインダー中に分散されているので、画像形成(露光)後は、印刷機シリンダー上に平版印刷版原版を取付け、湿し水および/またはインキを供給することで、特段の現像処理を行なうことなく、機上現像できることが特徴である。
上記(a)および(b)に共通の熱反応性官能基としては、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基)、付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基)、同じく付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒドロキシル基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基またはヒドロキシル基が挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基は、これらに限定されず、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよい。
(a)微粒子ポリマーに好適な熱反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物基およびそれらを保護した基が挙げられる。熱反応性官能基のポリマー微粒子への導入は、ポリマーの重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
熱反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチルアクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、二官能アクリレート、二官能メタクリレートが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有するモノマーは、これらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有しないモノマーは、これらに限定されない。
微粒子ポリマー表面の親水性をこのような好ましい状態にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーあるいはオリゴマー、または親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてやればよいが、微粒子の表面親水化方法はこれらに限定されるものではなく、公知の種々の表面親水化方法を適用することができる。
(a)微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのが好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
(a)微粒子ポリマーの添加量は、画像形成層固形分の50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%がさらに好ましい。
(b)マイクロカプセルに好適な熱反応性官能基としては、先に(a)、(b)に共通のものとして挙げた官能基の他、例えば、重合性不飽和基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアネートブロック体などが挙げられる。
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたは不飽和カルボン酸アミドと単官能もしくは多官能のイソシアネートまたはエポキシドとの付加反応物、および、単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に用いられる。
また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能のアルコール、アミンまたはチオールとの付加反応物、および、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能アルコール、アミンまたはチオールとの置換反応物も好適である。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸またはクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
(b)マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な解像度と経時安定性が得られる。
従って、熱によってマイクロカプセル同志が、溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
このような溶剤は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
本態様における感熱画像形成層には、前記画像形成性を有する(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのほか、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。
(反応開始剤、反応促進剤)
前記感熱画像形成層においては、必要に応じてこれらの反応を開始しまたは促進する化合物を添加してもよい。反応を開始しまたは促進する化合物としては、例えば、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩またはジフェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートが挙げられる。
これらの化合物は、画像形成層固形分の1〜20質量%の範囲で添加するのが好ましく、3〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られる。
本発明におけるこのような感熱画像形成層には親水性樹脂を添加しても良い。親水性樹脂を添加することにより機上現像性が良好となるばかりか、感熱画像形成層自体の皮膜強度も向上する。
親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。
親水性樹脂の感熱画像形成層への添加量は、画像形成層固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。この範囲内で、良好な機上現像性と皮膜強度が得られる。
本発明は、赤外線レーザ露光以外の平版印刷版原版にも好ましく用いることができる。以下に、赤外線レーザ露光以外の平版印刷版原版および画像形成層の例について詳細に説明する。
ポジ型画像形成層の好ましい例としては、以下に示す従来公知のポジ型画像形成層[(a)〜(b)]を挙げることができる。
(b)酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性化合物と酸発生剤との組み合わせを含有してなる化学増幅型ポジ型画像形成層。
(d)EP652483号、特開平6−502260号に記載の現像処理不要な平版印刷版を作製することが出来る、カルボン酸エステルポリマーと、酸発生剤若しくは赤外線吸収剤とを含有してなるレーザー感応性ポジ型画像形成層。
(e)特開平11−095421号に記載のアルカリ可溶性化合物、及び熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含有してなるレーザー感応性ポジ型画像形成層。
(f)アルカリ現像溶出型ポジ平版印刷版を作製することができる、赤外線吸収剤、ノボラック樹脂、及び溶解抑止剤を含有してなるアルカリ現像溶出ポジ型画像形成層。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
―アルミニウム基板の作製―
表1記載の組成の使用済み飲料缶(UBC)地金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った。引き続き冷間圧延を行って、厚さ0.3mm、幅1060mmに仕上げ、アルミニウム板AL−1、AL−2を得た。組成がJIS A 1050のアルミニウム材料に上記と同様の処理をしてアルミニウム板AL−3を得た。それぞれの組成を表1に示す。なお、表中の数値の単位は質量%である。
得られた各アルミニウム板を以下に示す表面疎面化処理に供して、平版印刷版用支持体P−1〜P−5を得た。
表面処理は、以下の(a)〜(e)の処理を連続的に(表2に記載のとおり)行うことにより実施した。
比重1.13のパミストン(平均粒径30μm)を水に懸濁させた懸濁液を研磨スラリー液として用い、回転ブラシを1本とし、粗面化後のRaが0.58μmとなるようにブラシ回転数250rpmで機械的粗面化を行った。
ブラシ下部の2本の支持ローラは、直径200mmのステンレス鋼製ローラをの中心間の距離300mmで用いた。
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度370g/L、アルミニウムイオン濃度100g/L、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、3g/m2であった。その後、ニップローラで液切りし、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを80mm間隔で有する構造を有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理した後、ニップローラで液切りした。
特開2005−35034号公報の35ページ(b)から36ページ(h)に記載の方法により、電気化学的粗面化処理を実施した。UBCアルミニウム材に対して電気化学的粗面化処理を行った支持体P−1では、部分的な未エッチング部が発生して、均一な表面構造が得られなかった。
特開2005−35034号公報の図4に示される陽極酸化処理装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解液としては、170g/L硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度33℃)を用いた。陽極酸化処理は、アルミニウム板がアノード反応する間(約16秒)の平均電流密度が15A/dm2となるように行い、最終的な酸化皮膜量は2.4g/m2であった。なお、アルミニウム板がアノード反応にあずかる時間は16秒であった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りした。
アルミニウム板をケイ酸ソーダ2.5質量%水溶液(液温20℃)に10秒間浸せきさせた。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム板表面のSi量は、3.5mg/m2 であった。その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りした。更に、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させた。
1.特定ポリマー(1−26)の合成
1L三口フラスコにアクリルアミド17.3g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.5g、2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル メタクリレート 10.4g、及び1−メトキシ−2−プロパノール 200mlを取り、80℃窒素気流下で、あらかじめ1−メトキシ−2−プロパノール 6mlに溶解したジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 216mg0.5gを加えた。4時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。イソプロピルアルコール500mlを加え、析出した固体をろ取し、水洗して親水性ポリマーを得たGPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量9000のポリマーであり、13C−NMR(DMSO−d6)により末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された、前記例示化合物(1−26)の構造を有するポリマーであることが確認された。他の特定ポリマーについても、同様にして合成した。
2−1.塗布液組成物の調整
以下の組成によりポリマー溶液1、触媒液1をそれぞれ調整し、テトラメトキシシランと混合してゾルゲル液組成物1を作成した。ゾルゲル液組成物1は、20℃にて2時間撹拌した。なお、ポリマー溶液1の溶媒は、ポリマーの水への溶解性が低い場合には、メタノールを添加して調整した。
<ポリマー溶液1>
本発明のポリマー[例示化合物(1−26)] 0.5g
水 12.6g
<触媒液1>
エタノール 54.9g
アセチルアセトン 2.46g
テトラエトキシチタン 2.81g
水 0.44g
<ゾルゲル液組成物1>
ポリマー溶液1 13.1g
触媒液1 2.9g
テトラメトキシシラン 1.49g
<希釈液1>
水 74.1g
日産化学工業(株)製 スノーテックスC(20%水分散物) 26g
スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(5%水溶液) 5.5g
<塗布液組成物1>
ゾルゲル液組成物1 17.54g
希釈液1 10.1g
得られた支持体上の表面接触角(空中水滴)を協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定し、上記塗布液組成物を塗布しないアルミニウム基板と比較した。結果を表3に示す(単位:度)。表3から、以下のことがわかる。
基板表面の表面物性は、本発明のポリマーにより制御され、好ましい親水化がなされ、低い接触角を示すことが確認できる。低純度のアルミニウムから得られたアルミニウム支持体P−1〜P−4においても親水化の効果が高いことがわかる。また、P−1とP−2とを比較すると、電解疎面化処理を行わない基板で本発明の効果が高いこと、さらに、P−2とP−3とを比較すると、シリケート処理を施した基板で親水性向上効果が特に高いことがわかる。
(画像形成層の形成)
前記のようにして得られた平版印刷版用支持体に下記の方法で画像形成層を形成し、本発明ならびに比較例のポジ型平版印刷版原版を得た(表4に記載)。すなわち、以下の画像形成層用塗布液1をバーコーターで塗布し、TABAI社製PERFECT OVEN PH200にて130℃50秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が1.3g/m2の画像形成層(下層)を設けた。その後、以下の画像形成層用塗布液2をバーコーターで塗布し、TABAI社製PERFECT OVEN PH200にて130℃60秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が0.26/m2の画像形成層を設け、実施例1の赤外線感光性平版印刷版原版を得た。
なお、表4において、「ポリマー」の欄に「なし」の記載がある比較用試料は、前記ゾルゲル塗布液組成物を塗布することによる親水性層の形成を行うことなく、表2に記載の如く表面処理されたアルミニウム基板上に画像形成層を塗布したことを示している。
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/
アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体 1.9g
(36/34/30質量%:重量平均分子量50000、酸価2.65)
・m/pクレゾールノボラック 0.3g
(m/p=6/4、重量平均分子量4500、未反応クレソ゛ール0.8質量%含有)
・シアニン染料A(下記構造) 0.13g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.13g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−
ナフタレンスルホン酸イオンに変えたもの 0.078g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF780、大日本インキ化学
工業(株)製メチルエチルケトン30%) 0.2g
・メチルエチルケトン 16.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
・γ−ブチロラクトン 8.0g
・フェノール/m/p クレゾールノボラック 0.27g
(フェノール/m/p=5/3/2 質量平均分子量5000、
未反応クレゾール0.8質量%含有)
・アクリル系樹脂B(下記構造) 0.042g
・シアニン染料A(前記構造) 0.019g
・長鎖アルキル基含有ポリマーA 0.042g
・スルホニウム塩化合物C(下記構造) 0.065g
・アンモニウム化合物D(下記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF780、大日本インキ化学
工業(株)製メチルエチルケトン30%) 0.02g
・フッ素系界面界面活性剤E(下記構造)
(メチルエチルケトン60%) 0.032g
・メチルエチルケトン 13.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.0g
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール59gを入れ、80℃に加熱した。窒素気流下、n−メタクリル酸ステアリル42.0g、メタクリル酸16.0g、重合開始剤V−601(和光純薬製)0.714g、及び1−メトキシ−2−プロパノール59gからなる溶液を2時間半かけて滴下した。更に、80℃で2時間反応させた。反応混液を室温に冷却して、1000mlの水に反応液を注ぎ込んだ。デカンテーション後、メタノールで洗浄し、得られた液状生成物を減圧乾燥することで、下記に示す(a)長鎖アルキル基含有ポリマーA73.5gを得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均分子量を測定した結果、66,000であった。
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetter3244VFSにて、ドラム回転速度150rpmで露光エネルギーを変えてパワー露光した。その後、富士フイルム(株)製自動現像機LP−940Hに、富士フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込み、現像液温度32℃、現像時間12秒で現像処理した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。現像後の平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロン226を用いて印刷した。
画像形成層の膜減り、汚れ防止性、放置汚れ防止性を下記の方法で評価した。
前記印刷評価において、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価した。この数字が大きいほど、耐刷性に優れている。
(2)汚れ防止性
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
汚れ防止性をブランケットの汚れの程度が少ない方から◎、○、△、×の4段階で評価した。
◎:全く汚れず
○:目視では汚れが確認できず(ルーペで確認できる程度)
△:部分的に汚れる
×:完全に汚れる
上記汚れ防止性の評価において、1万枚印刷した後、版を1時間放置し、その後、再度印刷を開始して、非画像部のブランケットの汚れを目視で評価した。
なお、放置汚れ防止性の評価基準は、上記汚れ防止性の評価基準と同様のものを用いた。
(4)画像部の現像による膜減りの評価
未露光の平版印刷版原版をその後、富士フイルム(株)製自動現像機LP−940Hに、富士フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込み、現像液温度32℃、現像時間12秒で現像処理した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。
現像前後の感光層の光学濃度を測定し、現像前の濃度を100%としたときの相対濃度を現像膜減りとして表した。
これに対し、本発明に係る親水性層を設けなかった比較例1の平版印刷版原版は、基板との密着性に起因する現像膜減り、耐刷性、汚れ防止性のいずれにおいても、本発明に比べて性能が劣っていた。
実施例1記載の平版印刷版原版のアルミニウム支持体を、粗面化処理を施さないポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚0.3mm)とした以外は、前記実施例1と同様に親水層及び画像形成層を設けて実施例10の平版印刷版原版を得た。この平版印刷版原版を実施例1と同様に評価した。
その結果、現像膜減り100%、耐刷性8万枚、汚れ防止性◎、放置汚れ性○であり、プラスチックフィルム支持体を用いた場合でも、アルミニウム支持体を用いた場合と同様の、良好な印刷性能を示すことがわかった。
親水性層形成用塗布液組成物の調整において、ポリマー溶液1の調整において使用した特定ポリマー[例示化合物(1−26)]を、下記比較用ポリマーに代えた他は、実施例1と同様にして比較例2の平版印刷版原版を得て、実施例1と同様に評価した。
その結果、汚れ防止性、放置汚れ防止性はいずれも実用上問題のない良好なレベルであったが、現像膜減りが98%、耐刷性の結果は10万枚であった。このことから、本発明の特定ポリマーを用いて形成した親水性層を設けることで、表面親水性のみならず、従来品に比較して基板との密着性、耐刷性が改良されていることがわかる。
−サーマルネガ型平版印刷版原版−
下記組成のネガ型画像形成層塗布液を調製し、実施例1〜実施例5で用いた親水性層を形成したアルミニウム支持体に、この画像形成層塗布液を乾燥後の塗布量(画像形成層塗布量)が1.3g/m2になるよう塗布し、乾燥させてサーマルネガタイプの画像形成層を形成し、サーマルネガ型平版印刷版原版11〜15を得た。
<ネガ型画像形成層塗布液>
・赤外線吸収剤:シアニン染料A(前記構造) 0.07g
・酸発生剤[SH−1](下記構造) 0.3g
・架橋剤[KZ−1](下記構造) 0.5g
・アルカリ可溶性高分子 1.5g
(マルカリンカーM S−4P、丸善石油化学(株)製)
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.035g
(保上ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・無水フタル酸 0.05g
・メチルエチルケトン 12g
・メチルアルコール 10g
・1−メトキシ−2−プロパノール 4g
・3−メトキシ−1−プロパノール 4g
得られたネガ型平版印刷版原版11〜15を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。露光後、ウィスコンシン社製オーブンにて288°F、75秒間、加熱処理した後、富士写真フイルム(株)製自動現像機LP940Hを用いて現像処理を行い、実施例11〜15のネガ型平版印刷版11〜15を得た。現像液は、同社製DP−4の1:8水希釈水を用い、現像浴の温度は30℃とし、フィニッシャーは、同社製FP−2Wの1:1水希釈液を用いた。
上記で得られたネガ型平版印刷版11〜15について、前記条件で印刷を継続し、実施例1と同様に、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価し、耐刷性の指標とした。また、実施例1と同様に、汚れ防止性、放置汚れ防止性を評価した。
その結果、耐刷性は、8万枚〜12万枚の範囲であり、汚れ防止性、放置汚れ防止性は◎−○ランクであり、画像形成層をサーマルネガ型に代えた場合においても、サーマルポジ型画像形成層におけるのと同様に、耐刷性、汚れ防止性、放置汚れ防止性はいずれも良好であることが確認された。
−サーマルネガ(マイクロカプセル)型平版印刷版原版−
<マイクロカプセル(1)の合成>
油相成分として、キシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)5g、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのオリゴマー(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMR−200)3.8g、下記構造のビニルオキシ化合物4g、下記構造の赤外線吸収色素[IR−2]1.5g、及びパイオニンA−41−C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル18gに溶解した。
水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を5%テトラエチレンペンタアミン水溶液25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液(1)の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。また、マイクロカプセルの平均粒径は0.34μmであった。
下記組成のマイクロカプセル型画像形成層塗布液を調製し、実施例1〜実施例5で用いた親水性層を形成したアルミニウム支持体に、乾燥後の塗布量(画像形成層塗布量)が1.0g/m2になるよう塗布し、乾燥させてマイクロカプセル型の画像形成層を形成し、マイクロカプセル型平版印刷版原版16〜20を得た。
<マイクロカプセル型画像形成層塗布液>
・上記合成で得られたマイクロカプセル液(1) 25g
・下記構造の酸前駆体 0.5g
・水 75g
得られたマイクロカプセル型平版印刷版原版16〜20を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、版面エネルギー300mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、印刷を行った。湿し水としては、富士写真フイルム(株)製、IF−102の4%溶液を使用し、インキとしては、大日本インキ化学工業(株)製、バリウス墨を使用した。
上記で得られたマイクロカプセル型平版印刷版16〜20について、前記条件で良好な印刷物が得られることを確認した後も印刷を継続し、実施例1と同様に、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価し、耐刷性の指標とした。また、実施例1と同様に、汚れ防止性、放置汚れ防止性を評価した。
その結果、耐刷性は、5万枚〜8万枚の範囲であり、汚れ防止性、放置汚れ防止性は◎−○ランクであり、画像形成層をサーマルネガ(マイクロカプセル)型に代えた場合においても、サーマルポジ型画像形成層におけるのと同様に、汚れ防止性、放置汚れ防止性がいずれも良好であった。
Claims (11)
- 支持体上に、該支持体表面と直接化学結合し得る反応性基、及び、支持体表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有し、下記一般式(1)中の構造単位(i)および構造単位(ii)を含むポリマーが化学結合してなる親水性層と、画像形成層とをこの順で有することを特徴とする平版印刷版原版。
- 支持体上に、該支持体表面と直接化学結合し得る反応性基、及び、支持体表面と架橋構造を有する構成成分を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有し、下記一般式(2)中の構造単位(iii)および構造単位(iv)を含むポリマーが化学結合してなる親水性層と、画像形成層とをこの順で有することを特徴とする平版印刷版原版。
- 前記支持体がアルミニウム支持体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平版印刷版原版。
- 前記アルミニウム支持体を構成するアルミニウムの純度が99.4〜95質量%であることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版原版。
- 前記支持体がプラスチックフィルム支持体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平版印刷版原版。
- 前記架橋構造を有する構成成分が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記画像形成層が、赤外線レーザで記録可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記画像形成層が、赤外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の平版印刷版原版。
- 前記画像形成層が、2層以上の積層構造を有することを特徴とする請求項1至請求項8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記画像形成層が、ノボラック樹脂を含有するポジ型画像形成層であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
- 前記ポジ型画像形成層が、全アルカリ可溶性樹脂に対してノボラック樹脂を50質量%以上含むアルカリ可溶性樹脂と、スルホニウム化合物またはアンモニウム化合物と、を含有することを特徴とする請求項10に記載の平版印刷版原版。
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