JP3739695B2 - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用支持体の製造方法に関し、特に、平版印刷版としたときに、耐汚れ性と耐刷性とを両立することができ、かつ、ポツ状残膜の発生がない、最適な表面形状を有する平版印刷版用支持体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷法は水と油が本質的に混じり合わないことを利用した印刷方式であり、これに使用される平版印刷版の印刷版面には、水を受容して油性インキを反撥する領域(以下、この領域を「非画像部」という。)と、水を反撥して油性インキを受容する領域(以下、この領域を「画像部」という。)とが形成される。
【0003】
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」という。)は、その表面が非画像部を担うように使用されるため、親水性および保水性が優れていること、更にはその上に設けられる画像記録層との密着性が優れていること等の相反する種々の性能が要求される。
支持体の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。また、支持体の保水性が低すぎると、印刷時に湿し水を多くしないとシャドー部のつまりが発生する。よって、いわゆる水幅が狭くなる。
【0004】
また、一方で、粗面化処理を施された支持体の表面に深い凹部が存在すると、その部分の画像記録層の厚みが厚くなるため、形状的に現像が抑制される場合がある。そして、現像が抑制された結果、画像記録層が深い凹部の中に残ってしまい、非画像部に局部的な残膜(以下「ポツ状残膜」ともいう。)が発生し、印刷時の非画像部の汚れの原因となってしまうという問題がある。例えば、光熱変換により発生する熱によりアルカリ現像液に対する可溶性が変化するいわゆるサーマルタイプの画像記録層を設けた平版印刷版原版においては、凹部の底部で画像形成反応が不十分となり、ポツ状残膜が発生する。
このようなポツ状残膜は、露光および現像の条件が厳しい場合に発生しやすい。例えば、サーマルタイプの画像記録層を設けた平版印刷版原版において、生産性の向上のために露光時間を短くしたり、レーザの長寿命化のためにレーザ光エネルギーを低くしたりするなど、レーザの露光量を低くする場合である。また、感度の高い高活性な現像液に対して、本来、画像部となるべき部分に画像抜けが発生しやすい画像記録層を用いるために、感度の低い現像液を用いて現像する場合などもある。
【0005】
これらの性能の良好な平版印刷版用支持体を得るためには、アルミニウム板の表面を砂目立て(粗面化処理)して凹凸を付与するのが一般的である。この凹凸については下記に示すように、様々な形状が提案されている。特開平8−300844号公報には、中波と小波の開口径を規定した大波、中波および小波を有する3重構造が記載されている。特開平11−99758号公報および特開平11−208138号公報には、大小の2重構造において小波の径を規定することが記載されている。特開平11−167207号公報には、大小の2重の凹部(ピット)に加えて更に微小な突起を付与する技術が記載されている。特許第2023476号明細書には、開口径を規定した2重構造が記載されている。特開平8−300843号公報には、表面の滑らかさを示す因子a30を規定した2重構造が記載されている。特開平10−35133号公報には複数の電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)に際して重畳されるピット径の比を規定した構造が記載されている。
【0006】
この砂目立てには、ボールグレイニング、ブラシグレイニング、ワイヤーグレイニング、ブラストグレイニング等の機械的粗面化方法、塩酸および/または硝酸を含む電解液中でアルミニウム板を電解エッチングする電解粗面化方法および米国特許第4,476,006号明細書に記載されている機械的粗面化方法と電解粗面化方法を組み合わせた複合粗面化方法等が用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、耐汚れ性と耐刷性とがトレードオフの関係にあり、耐汚れ性と耐刷性との両立ができなかった。
したがって、本発明は、この問題を解決し、優れた耐汚れ性と高耐刷力とを両立することができ、更に、ポツ状残膜の発生がない平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、平版印刷版用支持体の表面の凹凸構造の大きさおよびその組み合わせについて鋭意検討した結果、特定の大きさの凹凸を組み合わせ、かつ、求められる3次元データにおいて深さ3μm以上の凹部がない場合に、耐汚れ性と耐刷性とのバランスを高い水準で維持することができ、かつ、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜の発生がないことを見出し、また、上述した表面は、機械的粗面化処理において粒子径の小さい研磨剤を用いる方法、硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理において電気量を特定範囲とする方法、または、硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理の前に塩酸水溶液を用いたプレ電解を行う方法により、実現することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供する。
【0010】
(1)アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理および陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記粗面化処理が、回転するローラ状ブラシに、平均粒径20μm以下の研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、アルミニウム板の表面を擦る機械的粗面化処理と、その後に行われる硝酸水溶液を用いた第1電気化学的粗面化処理と、その後に行われる塩酸水溶液を用いた第2電気化学的粗面化処理とを含み、
前記平版印刷版用支持体が、前記機械的粗面化処理により形成された平均波長5〜100μmの大波構造と、前記第1電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、前記第2電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である、平版印刷版用支持体の製造方法。
【0011】
(2)前記研磨剤が平均粒径10μm以下のパミストンまたは平均粒径20μm以下のケイ砂である、上記(1)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
(3)前記研磨剤が平均粒径10μm以下である、上記(1)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【0012】
(4)アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理および陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記粗面化処理が、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が50〜170C/dm 2 である硝酸水溶液を用いた第1電気化学的粗面化処理と、その後に行われる電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が20〜100C/dm 2 である塩酸水溶液を用いた第2電気化学的粗面化処理とを含み、
前記平版印刷版用支持体が、前記第1電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、前記第2電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である、平版印刷版用支持体の製造方法。
【0013】
(5)アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理および陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記粗面化処理が、塩酸水溶液を用いたプレ電解と、硝酸水溶液を用いた第1電気化学的粗面化処理と、その後に行われる塩酸水溶液を用いた第2電気化学的粗面化処理とを含み、
前記平版印刷版用支持体が、前記第1電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、前記第2電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である、平版印刷版用支持体の製造方法。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法により得られる平版印刷版用支持体。
(7)上記(6)に記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
(8)前記画像記録層が、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジタイプの感熱層である、上記(7)に記載の平版印刷版原版
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<表面の砂目形状>
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法により得られる平版印刷版用支持体(以下、単に「本発明の平版印刷版用支持体」ともいう。)は、平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下であることを特徴とする。
本発明において、平均開口径0.5〜5μmの中波構造は、主にアンカー(投錨)効果によって画像記録層を保持し、耐刷力を付与する機能を有する。中波構造のピットの平均開口径が0.5μm未満であると、上層に設けられる画像記録層との密着性が低下し、平版印刷版の耐刷性が低下する場合がある。また、中波構造のピットの平均開口径が5μmを超えると、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数が減るため、やはり耐刷性が低下する場合がある。
【0015】
上記中波構造に重畳される平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造は、主に耐汚れ性を改良する役割を果たす。中波構造に小波構造を組み合わせることで、印刷時に平版印刷版に湿し水が供給された場合に、その表面に均一に水膜が形成され、非画像部の汚れの発生を抑制することができる。小波構造のピットの平均開口径が0.01μm未満であると、水膜形成に大きな効果が得られない場合がある。また、小波構造のピットの平均開口径が0.2μmを超えると、中波構造が崩れてしまい、上述した中波構造による耐刷性向上の効果が得られない場合がある。
【0016】
この小波構造については、ピットの開口径だけでなく、ピットの深さをも制御することで、更に良好な耐汚れ性を得ることができる。即ち、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。これにより均一に形成された水膜が表面に確実に保持され、非画像部の表面の耐汚れ性が長く維持される。
【0017】
上記の中波構造と小波構造とを重畳した構造は、更に、平均波長5〜100μmの大波構造と重畳した構造であってもよい。
この大波構造は、平版印刷版の非画像部の表面の保水量を増加させる効果を有する。この表面に保持された水が多いほど、非画像部の表面は雰囲気中の汚染の影響を受けにくくなり、印刷途中で版を放置した場合にも汚れにくい非画像部を得ることができる。また、大波構造が重畳されていると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、平版印刷版の検版性が優れたものとなる。大波構造の平均波長が5μm未満であると、中波構造との差がなくなる場合がある。大波構造の平均波長が100μmを超えると、露光現像後、露出された非画像部がぎらついて見えてしまい、検版性を損なう場合がある。大波構造の平均波長は、10〜80μmであるのが好ましい。
【0018】
本発明の平版印刷版用支持体において、表面の中波構造の平均開口径、小波構造の平均開口径および開口径に対する深さの平均、ならびに、大波の平均波長の測定方法は、以下の通りである。
【0019】
(1)中波構造の平均開口径
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。大波構造を重畳した構造の場合も同じ方法で測定する。また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。
本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。大波構造を重畳した構造の場合も同様であった。
【0020】
(2)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0021】
(3)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波ピットを少なくとも20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
【0022】
(4)大波構造の平均波長
触針式粗さ計で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Sm を5回測定し、その平均値を平均波長とする。
【0023】
本発明の平版印刷版用支持体は、上述したように、重畳した構造の砂目形状を表面に有し、更に、表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下、好ましくは1個以下である。これにより、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜が発生しなくなる。
本発明者は、ポツ状残膜とその原因となる支持体表面の深い凹部との関係について鋭意研究した結果、該表面の深さ3μm以上の凹部の数が、ポツ状残膜の発生と関係することを見出し、本発明を完成したのである。
【0024】
本発明の平版印刷版用支持体において、深さ3μm以上の凹部の数の測定方法は、以下の通りである。
(5)深さ3μm以上の凹部の数
レーザ顕微鏡を用いて表面の400μm□を非接触で0.01μm走査して3次元データを求め、この3次元データにおいて深さ3μm以上の凹部の数を数える。
【0025】
本発明者は、後述する粗面化処理により深さ3μm以上の凹部が生成する原因について鋭意研究した結果、原因を以下のように推定した。
第一に、機械的粗面化処理を含む粗面化処理を施す場合においては、機械的粗面化処理に用いられる研磨剤の粒子の稜部分がアルミニウム板の表面に深く突き刺さって凹部が形成されること。
第二に、電解粗面化処理を含む粗面化処理を施す場合においては、電解粗面化処理時に電流が特定の箇所に集中してしまうこと。
【0026】
本発明者は、このように原因を推定し、更に、鋭意研究した結果、以下のような手段により、粗面化処理により生成する深さ3μm以上の凹部を表面の400μm□あたり1.5個以下にすることができることを見出した。
即ち、第一の原因である機械的粗面化処理に用いられる研磨剤の粒子が突き刺さることに対しては、下記(i)〜(v)の手段を見出した。
(i)粒子径の小さい研磨剤を用いる。
例えば、沈降分離を行って、粒子径の大きいものを除去し、小さいもののみを用いたり、再粉砕により研磨剤の粒子同士を接触させて磨耗させたりすることにより、研磨剤の粒子径を小さくすることができる。
(ii)尖りが少ない粒子の研磨剤を用いる。
機械的粗面化処理に通常用いられるパミストン(以下「パミス」ともいう。)は、火山灰を粉砕して得られるものであり、粒子は割れたガラスのような板片状で稜部分が尖っている。これに対し、ケイ砂は12面体や24面体に近い形状であり、尖りが少ない。
【0027】
(iii)機械的粗面化処理に用いられるブラシ毛を柔らかいものにする。
例えば、毛径の細いブラシを用いたり、柔らかい材質のブラシを用いたりすることにより、ブラシ毛を柔らかくすることができる。
(iv)機械的粗面化処理に用いられるブラシの回転数を低くする。
スラリー液中に含有される研磨剤粒子に適度に「逃げ」の時間を与えることにより、突き刺さりが抑制される。
(v)機械的粗面化処理に用いられるブラシの押し圧(負荷)を低くする。
【0028】
また、第二の原因である電解粗面化処理時に電流が特定の箇所に集中してしまうことに対しては、下記(vi)〜(viii)の手段を見出した。
(vi)電解粗面化処理において硝酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解が均一に起こりやすくなるように、アルミニウム板の合金成分中のCu量を低くする。
電解粗面化処理においては、通常、酸性の電解液中で交流電流を通電することで、アルミニウムの溶解反応(ピッティング反応)と、溶解して生じた成分が溶解反応部に再付着するスマット付着反応とが、交流のサイクルに従って交互に起こる。ここで、硝酸電解液を用いる場合には、アルミニウム板に含有される合金成分の種類や量の影響を非常に受けやすく、特にCuの影響が大きい。これはCuの存在により、電解粗面化処理時の表面抵抗が高くなるためと考えられる。そのため、合金成分中のCu量を0.002質量%以下とすることにより、電解粗面化処理時の表面抵抗が小さくなるため、電流集中が抑制され、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
【0029】
(vii)電解粗面化処理において硝酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解粗面化処理を行う前にプレ電解を行う。
プレ電解では、ピット形成の起点を均一に形成させることができる。これにより、その後の電解粗面化処理において、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
(viii)電解粗面化処理において塩酸を主体とする電解液を用いる場合には、電解液中に酢酸を含有させる。
塩酸電解においても電流集中によって粗大なピットが形成されることがあるが、酢酸を含有する塩酸電解液を用いると、粗大なピットを形成することなく、均一なピットを全面に形成させることができる。
【0030】
<表面処理>
本発明の平版印刷版用支持体は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、上述した表面の砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させたものである。本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得られるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理および陽極酸化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下に、上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法
が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
これらの方法により得られた本発明の平版印刷版用支持体は、上述したように、2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
【0031】
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0032】
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
【0033】
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2 、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2 であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
特に、深い凹部を形成させないという点で、ブラシ毛の直径は0.5mm以下であるのが好ましい。
【0034】
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点、および、深い凹部を形成させにくいという点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。特に、深い凹部を形成させないという点で、パミストンでは10μm以下であるのが好ましく、また、ケイ砂では20μm以下であるのが好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
【0035】
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
【0036】
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いることで、本発明に特徴的な凹凸構造を表面に形成させることができる。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
【0037】
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
【0038】
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0039】
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0040】
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0041】
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0042】
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。1msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
【0043】
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0044】
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
【0045】
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
【0046】
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dm2 であるのが好ましく、50〜300C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dm2 であるのが好ましい。
また、高濃度および/または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
【0047】
硝酸電解液を用いた電解粗面化処理の前に、下記プレ電解を行うと、該電解粗面化処理において、深い凹部が形成されない。
(プレ電解)
プレ電解は、硝酸電解時のピット形成の起点を形成させる工程である。アルミニウム板の材質の影響を受けにくく、非常に腐食性の高い塩酸を用いてわずかに電解を行うことにより、表面に均一に起点となるピットを形成させることができる。
プレ電解において、塩酸濃度は1〜15g/Lであるのが好ましく、また、陽極時の電気量は30〜70C/m2 であるのが好ましい。
プレ電解の後は、スマット除去のためにアルカリエッチングを行うのが好ましい。アルカリエッチングにおけるアルミニウム溶解量は、0.2〜0.6g/m2 であるのが好ましい。
【0048】
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dm2 であるのが好ましく、20〜70C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dm2 であるのが好ましい。
【0049】
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dm2 と大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。したがって、この場合、平均開口径0.5〜5μmの中波構造を重畳させられないため、本発明の特徴である表面の砂目形状を作ることができない。
【0050】
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm2 、より好ましくは5〜30C/dm2 で行われる。陰極電気量が3C/dm2 未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dm2 を超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0052】
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
【0053】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/m2 であるのが好ましく、1〜5g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m2 未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/m2 であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
【0054】
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2 であるのが好ましく、5〜15g/m2 であるのがより好ましい。エッチング量が3g/m2 未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2 を超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0055】
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/m2 であるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
【0056】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0057】
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
【0058】
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0059】
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0060】
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0062】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
【0063】
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
【0064】
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
【0065】
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2 であるのが好ましく、5〜40A/dm2 であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2 の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2 またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2 程度である。
【0066】
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 であるのが好ましい。1g/m2 未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2 を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2 であるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2 以下になるように行うのが好ましい。
【0067】
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0068】
図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することがあできる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
【0069】
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
【0070】
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
【0071】
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0072】
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
【0073】
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0074】
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2 であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
【0075】
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2 基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
【0076】
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0077】
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体を得るためには公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
【0078】
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。ここで、硝酸電解液を用いる電解粗面化処理において深い凹部を形成させないようにするためには、銅の含有量は、0.002質量%以下であるのが好ましい。
【0079】
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JISA1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JISA3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
【0080】
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
【0081】
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
【0082】
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
【0083】
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
【0084】
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
【0085】
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
【0086】
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
【0087】
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
【0088】
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
【0089】
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
【0090】
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
【0091】
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
【0092】
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
【0093】
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
【0094】
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
【0095】
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
【0096】
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
【0097】
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
【0098】
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
【0099】
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
【0100】
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
【0101】
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mm程度であり、0.15mm〜0.4mmであるのが好ましく、0.2mm〜0.3mmであるのがより好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
【0102】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版用原版とすることができる。画像記録層は、特に限定されないが、例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、無処理タイプが好適に挙げられる。以下、これらの好適な画像記録層について、詳細に説明する。
【0103】
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光層を有する本発明の平版印刷版原版に用いられるポジ型感光性樹脂組成物としては、露光の前後で現像液に対する溶解性または膨潤性が変化するものならば使用できるが、その中に含まれる好ましいものとして、o−キノンジアジド化合物が挙げられる。例えば、水不溶性かつアルカリ可溶性の高分子化合物(以下、「アルカリ可溶性高分子化合物」という。)とo−キノンジアジド化合物とを含有するポジ型感光性樹脂組成物の場合、o−キノンジアジド化合物は、少なくとも一つのo−キノンジアジド基を有する化合物で、活性光線によりアルカリ水溶液に対する溶解性を増すものが好ましい。
【0104】
このようなものとしては、種々の構造のものが知られており、例えば、J.KOSAR著「Light−Sensitive Systems」(John Wiley & Sons,Inc,1965年発行)p.336−352に詳細に記載されている。o−キノンジアジド化合物としては、特に種々のヒドロキシ化合物とo−ベンゾキノンジアジドまたはo−ナフトキノンジアジドとを原料とするスルホン酸エステルが好適である。
【0105】
上記のようなo−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステル;米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステル;特公昭63−13,528号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとレゾルシン−ベンズアルデヒド樹脂とのエステル;特公昭62−44,257号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとレゾルシン−ピロガロール・アセトン共縮合樹脂とのエステル;
【0106】
特公昭56−45,127号公報に記載されている末端にヒドロキシ基を有するポリエステルに1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;特公昭50−24,641号公報に記載されているN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドのホモポリマーまたは他の共重合しうるモノマーとの共重合体に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;特公昭54−29,922号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとビスフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステル;特公昭52−36,043号公報に記載されているp−ヒドロキシスチレンのホモポリマーまたは他の共重合しうるモノマーとの共重合体に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとポリヒドロキシベンゾフェノンとのエステルがある。
【0107】
その他、本発明に使用できる公知のo−キノンジアジド化合物としては、特開昭63−80254号、特開昭58−5737号、特開昭57−111530号、特開昭57−111531号、特開昭57−114138号、特開昭57−142635号、特開昭51−36129号、特公昭62−3411号、特公昭62−51459号、特公昭51−483号等の各公報に記載されているもの等を挙げることができる。o−キノンジアジド化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常、5〜60質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。
【0108】
o−キノンジアジド化合物以外の感光性化合物としては、アルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物と光酸発生剤との組み合わせからなる化学増幅系の感光物(光照射感応性混合物)を用いることができる。
【0109】
化学増幅系の感光物に用いられる光酸発生剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)等に記載されているジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書、特開平3−140140号公報等に記載されているアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書等に記載されているホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p.31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報等に記載されているヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Wattet al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、米国特許第3,902,114号,欧州特許第233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書等に記載されているスルホニウム塩、
【0110】
J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載されているセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478 Tokyo,Oct(1988)等に記載されているアルソニウム塩等のオニウム塩;米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報等に記載されている有機ハロゲン化合物;K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1896)、特開平2−161445号公報等に記載されている有機金属/有機ハロゲン化物;S.Hayase et al,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis et al,J.Pholymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu et al,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit et al,Tetrahedron Lett.,(24),2205(1973)、D.H.R.Barton et al,J.ChemSoc.,3571(1965)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein et al,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker et al J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman et al,J.ImagingTechnol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan et al,Macormolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase et al,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis et al,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan et al,Macromolcules,21,2001(1988)、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号の各公報等に記載されているo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤;
【0111】
M.Tunook et al,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner et al,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs et al,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平4−365048号(特願平3−140109号明細書)の各公報等に記載されているイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物;特開昭61−166544号公報等に記載されているジスルホン化合物を挙げることができる。
【0112】
これらの活性光線または放射線の照射により分解して酸を発生する化合物(光酸発生剤)の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常、0.001〜40質量%であり、0.01〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0113】
また、アルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物(酸により開裂しうる化合物)は、−C−O−C−結合または−C−O−Si−結合を有する化合物であり、以下の例を挙げることができる。
(a)少なくとも一つのオルトカルボン酸エステルおよびカルボン酸アミドアセタール群から選ばれるものを含み、その化合物が重合性を有することができ、上記の群が主鎖中の架橋要素として、または側方置換基として生じうるような化合物、
(b)主鎖中に反復アセタールおよびケタール群から選ばれるものを含むオリゴマー性または重合体化合物、
(c)少なくとも一種のエノールエステルまたはN−アシルアミノカーボネート群を含む化合物、
(d)β−ケトエステルまたはβ−ケトアミドの環状アセタールまたはケタール、
(e)シリルエーテル群を含む化合物、
(f)シリルエノールエーテル群を含む化合物、
(g)アルデヒドまたはケトン成分が、現像剤に対して、0.1〜100g/Lの溶解性を有するモノアセタールまたはモノケタール、
(h)第三級アルコール系のエーテル、
(i)第三級アリル位またはベンジル位アルコールのカルボン酸エステルおよび炭酸エステル。
【0114】
光照射感応性混合物の成分として、酸により開裂しうる化合物である上記(a)の化合物は、独国特許出願公開第2,610,842号明細書および同第2,928,636号明細書に記載されている。上記(b)の化合物を含む混合物は、独国特許第2,306,248号明細書および同第2,718,254号明細書に記載されている。上記(c)の化合物は、欧州特許出願公開第0,006,626号明細書および同第0,006,627号明細書に記載されている。上記(d)の化合物は、欧州特許出願公開第0,202,196号明細書に記載されている。上記(e)の化合物は、独国特許出願公開第3,544,165号明細書および同第3,601,264号明細書に記載されている。上記(f)の化合物は、独国特許出願公開第3,730,785号明細書および同第3,730,783号明細書に記載されている。上記(g)の化合物は、独国特許出願公開第3,730,783号明細書に記載されている。上記(h)の化合物は、例えば、米国特許第4,603,101号明細書に記載されている。上記(i)の化合物は、例えば、米国特許第4,491,628号明細書およびJ.M.Frechetらの論文(J.Imaging Sci.30,59−64(1986))に記載されている。
これらのアルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常、1〜60質量%であり、好ましくは5〜40質量%である。
【0115】
感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有してもよい。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体、特開平7−28244号公報に記載されているスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。
これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜200,000であるのが好ましく、また、数平均分子量が200〜60,000であるのが好ましい。アルカリ可溶性高分子化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、80質量%以下の含有量で用いられる。
【0116】
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用することは、画像の感脂性を向上させるうえで好ましい。かかるアルカリ可溶性高分子化合物は、通常、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、90質量%以下の含有量で用いられる。
【0117】
感光性樹脂組成物中には、更に必要に応じて、感度を高めるための環状酸無水物、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料、その他のフィラー等を加えることができる。
【0118】
感光性樹脂組成物中には、感度を高めるために環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加するのが好ましい。
環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等がある。
【0119】
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0120】
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフィン酸類、−リン酸エステル類、カルボン酸類等があり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0121】
上記の環状酸無水物類、フェノール類および有機酸類の含有量の合計は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0122】
露光後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する感光性化合物と、酸と塩を形成して色調を変える有機染料との組み合わせを挙げることができる。
【0123】
焼き出し剤に用いられる露光によって酸を放出する感光性化合物としては、例えば、特開昭50−36,209号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニド;特開昭53−36223号公報に記載されているトリハロメチル−2−ビロンやトリハロメチル−s−トリアジン;特開昭55−62444号公報に記載されている種々のo−ナフトキノンジアジド化合物;特開昭55−77742号公報に記載されている2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物;ジアゾニウム塩等を挙げることができる。これらの化合物は、単独または混合して使用することができ、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.3〜15質量%であるのが好ましい。
【0124】
感光性樹脂組成物においては、光分解して酸性物質を発生する化合物の光分解生成物と相互作用することによってその色調を変える有機染料が、少なくとも1種以上用いられるのが好ましい。
このような有機染料としては、例えば、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、チアジン系、オキサジン系、フェナジン系、キサンテン系、アントラキノン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系の色素を用いることができる。具体的には次のようなものである。
【0125】
ブリリアントグリーン、エオシン、エチルバイオレット、エリスロシンB、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、フェノールフタレイン、1,3−ジフェニルトリアジン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、オレンジIV、ジフェニルチオカルバゾン、2,7−ジクロロフルオレセイン、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、フエナセタリン、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業社製)、ビクトリアピュアーブルーBOH(保土谷化学工業社製)、
【0126】
パテントピュアーブルー(住友三国化学工業社製)、スーダンブルーII(BASF社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、ファーストアッシドバイオレットR、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチル−アミノ−フェニルイミノナフトキノン、p−メトキシベンゾイル−p′−ジエチルアミノ−o′−メチルフェニルイミノアセトアニリド、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルイミノアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等。
【0127】
特に好ましい有機染料は、トリアリールメタン系染料である。トリアリールメタン系染料の中では、特開昭62−2932471号公報、特願平4−112844号明細書(特開平5−313359号公報)に記載されているような対アニオンとしてスルホン酸化合物を有するものが特に有用である。
【0128】
これらの染料は単独でまたは混合して使用することができ、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.3〜15質量%であるのが好ましい。また、必要に応じて他の染料、顔料と併用することができ、その使用量は染料および顔料の総質量に対して70質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0129】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光層を有する本発明の平版印刷版原版に用いられるネガ型感光性樹脂組成物としては、例えば、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有するものが挙げられる。
ネガ型感光性樹脂組成物に用いられるジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩と、ホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられる。上記ジアゾ樹脂としては、例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩;特公昭47−1167号公報に記載されているような、前記縮合物と、スルホン酸塩類、例えば、p−トルエンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂有機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。また、特開昭58−27141号公報に記載されているような3−メトキシ−4−ジアゾ−ジフェニルアミンを4,4′−ビス−メトキシ−メチル−ジフェニルエーテルで縮合させメシチレンスルホン酸塩としたもの等も適当である。更に、特公昭49−48001号公報に記載されている芳香族化合物との共縮合ジアゾ樹脂や、特開平2−29650号公報に記載されている酸基を有する芳香族化合物との共縮合ジアゾ樹脂も好ましく用いられる。また、特開平4−18559号公報に記載されている酸基を有するアルデヒドまたはアセタール化合物で縮合されたジアゾ樹脂も同様に好ましく用いることができる。更に、カルボキシ基、スルホ基、スルフィン酸基、リンの酸素酸基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの有機基を有する芳香族化合物と、ジアゾニウム化合物、好ましくは芳香族ジアゾニウム化合物とを構造単位として含む共縮合体も好ましい。
なお、これらのジアゾ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。ジアゾ樹脂の含有量は、感光層の全固形分に対して、1〜70質量%であるのが好ましく、3〜60質量%であるのがより好ましい。
【0130】
ネガ型感光性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物としては、酸含有量が好ましくは0.1〜5.0meq/g、より好ましくは0.2〜3.0meq/gであり、実質的に水不溶性(即ち、中性または酸性の水溶液に不溶性)で、皮膜形成性を有する有機高分子化合物であって、アルカリ現像液に溶解しまたは膨潤することができ、かつ、上述したジアゾ樹脂の共存下で光硬化して上記現像液に不溶化しまたは非膨潤化するものが好ましい。酸含有量が0.1meq/g未満であると、現像が困難となる場合があり、5.0meq/gを超えると、現像時の画像強度が著しく弱くなる場合がある。
【0131】
特に好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、および、必要に応じて用いられる他の共重合可能なモノマーからなる多元共重合体、特開昭53−120903号公報に記載されているような末端がヒドロキシ基であり、かつ、ジカルボン酸エステル残基を含む基でエステル化された(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸、および、必要に応じて用いられる他の共重合可能なモノマーからなる多元共重合体、特開昭54−98614号公報に記載されているような芳香族性ヒドロキシ基を末端に有する単量体(例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等)、(メタ)アクリル酸、および、必要に応じて用いられるヒドロキシスチレン類、アミノスルホニルフェニル基を有する(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸エステル類等の他の共重合可能なモノマーからなる多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、および、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体を挙げることができる。
【0132】
また、結合剤としては、酸性ポリビニルアルコール誘導体や酸性セルロース誘導体も有用である。
また、ポリビニルアセタールやポリウレタンをアルカリ可溶化した特公昭54−19773号、特開昭57−94747号、同60−182437号、同62−58242号および同62−123453号の各公報に記載されている結合剤も有用である。
【0133】
結合剤の分子量は0.5〜20万であるのが好ましく、2〜15万であるのがより好ましい。
これらの結合剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0134】
感光層におけるジアゾ樹脂および結合剤の含有量は、これら両者の総量を基準にして、ジアゾ樹脂が3〜60質量%であり、結合剤が97〜40質量%であるのが適当である。ジアゾ樹脂の含有量は、少ない方が感度は高いが、3質量%未満であると、結合剤を光硬化させるためには不十分となり、現像時に光硬化膜が現像液によって膨潤し、膜が弱くなる。逆に、ジアゾ樹脂の含有量が60質量%を超えると、感度が低くなり、実用上難点が出てくる。好ましくは、ジアゾ樹脂が5〜40質量%であり、結合剤が95〜60質量%である。
【0135】
上記感光性樹脂組成物の各成分を溶解する溶媒に溶かして、本発明の平版印刷版用支持体上に塗布することによって、本発明の平版印刷版原版が得られる。溶媒は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する中間層を設ける場合には、アルカリ可溶性高分子化合物を溶解しないものが選択される。具体的には、例えば、γ−ブチロラクトン、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフルフリルアルコール、アセトン、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびこれらの溶媒の混合物から適切に選択して使用することができる。
【0136】
上記成分の濃度(固形分)は、2〜50質量%であるのが適当である。塗布量(固形分)としては0.5〜4.0g/m2 であるのが好ましい。0.5g/m2 よりも少ないと、耐刷性が劣化する場合がある。4.0g/m2 よりも多いと、耐刷性は向上するが、感度が低下してしまう場合がある。
【0137】
感光性樹脂組成物中には、塗布性を向上させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0138】
なお、上述したコンベンショナルネガタイプの感光層の下層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けることができる。
【0139】
<フォトポリマータイプ>
(感光層)
フォトポリマータイプの感光層を有する本発明の平版印刷版原版に用いられる光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という。)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という。)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
【0140】
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。
【0141】
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エ−テル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0142】
また、メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等が挙げられる。
【0143】
また、イタコン酸エステルとして、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
また、クロトン酸エステルとして、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
また、イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
また、マレイン酸エステルとして、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
また、本発明においては、これらのエステルモノマーの混合物を用いることもできる。
【0144】
脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレシビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0145】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で表されるヒドロキシ基を有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0146】
CH2 =C(R)COOCH2 CH(R′)OH (A)
(上記式(A)中、RおよびR′は、それぞれHまたはCH3 を表す。)
【0147】
また、特開昭51−37193号公報および特公平2−32293号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能の(メタ)アクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vo1.20,No.7,p.300−308(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0148】
これらのエチレン性不飽和結合含有化合物の含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、30〜70質量%であるのがより好ましい。
【0149】
光重合性組成物に含有される光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができる。以下に光重合開始剤の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG−YAGレーザーを光源とする場合に、種々の光開始系が提案されている。例えば、米国特許第2,850,445号明細書に記載されているある種の光還元性染料、例えば、ローズベンガル、エオシン、エリスロジン;染料と開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号公報)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号公報)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号公報および特開昭54−155292号公報)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号公報)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号公報)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号公報および特開昭58−15503号公報)、ビイミダジール、スチレン誘導体およびチオールの系(特開昭59−140203号公報)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−1504号、特開昭59−140203号、特開昭59−189340号、特開昭62−174203号、特公昭62−1641号の各公報、米国特許第4,766,055号明細書)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63−258903号公報、特開平2−63054号公報等)、染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開昭64−13140号、特開昭64−13141号、特開昭64−13142号、特開昭64−13143号、特開昭64−13144号、特開昭64−17048号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、特開平1−138204号の各公報等)、ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2−179643号公報および特開平2−244050号公報)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号公報)、チタノセンとキサンテン色素更にアミノ基またはウレタン基を含むエチレン性不飽和結合含有化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号公報および特開平4−219756号公報)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号公報)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8−334897号公報)等を挙げることができる。
【0150】
また、近年、400〜410nmの波長のレーザー(バイオレットレーサー)が開発され、それに感応する450nm以下の波長に高感度を示す光開始系が開発されており、本発明にはこれらの光開始系を用いることもできる。例えば、カチオン色素/ボレート系(特開平11−84647号公報)、メロシアニン色素/チタノセン系(特開2000−147763号公報)、カルバゾール型色素/チタノセン系(特願平11−221480号明細書(特開2001−42524号公報))等を挙げることができる。本発明においては、特にチタノセン化合物を用いた系が感度の点で優れているので、好適に用いられる。
【0151】
チタノセン化合物としては、種々のものを用いることができるが、例えば、特開昭59−152396号公報および特開昭61−151197号公報に記載されている各種チタノセン化合物から適宜選んで用いることができる。具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6′−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。
【0152】
チタノセン化合物と組み合わせる色素として好ましいものは、シアニン系、メロシアニン系、キサンテン系、ケトクマリン系、ベンゾピラン系の色素である。
シアニン系色素は、特に限定されないが、下記の構造を有するものが好適に例示される。
【0153】
【化1】
Figure 0003739695
【0154】
(式中、Z1 およびZ2 は、それぞれ独立に、ベンゾイミダゾール環またはナフトイミダゾール環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基を表す。X- は対アニオンを表す。nは、0または1を表す。)
以下にシアニン系色素の具体例を示す。
【0155】
【化2】
Figure 0003739695
【0156】
メロシアニン系色素は、特に限定されないが、下記の構造を有するものが好適に例示される。
【0157】
【化3】
Figure 0003739695
【0158】
(式中、Z3 およびZ4 は、それぞれシアニン色素で通常用いられる5員環および/または6員環の含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表す。R15およびR16は、それぞれアルキル基を表す。Q1 とQ2 は、それぞれ互いに組み合わせることにより、4−チアゾリジノン環、5−チアゾリジノン環、4−イミダゾリキノン環、4−オキサゾリジノン環、5−オキサゾリジノン環、5−イミダゾリジノン環または4′−ジチオラノン環を形成するのに必要な原子群を表す。L1 、L2 、L3 、L4 およびL5 は、それぞれメチン基を表す。mは1または2を表す。hおよびiは、それぞれ独立に、0または1を表す。lは1または2を表す。jおよびkは、それぞれ0〜3の整数を表す。X- は対アニオンを表す。)
【0159】
【化4】
Figure 0003739695
【0160】
(式中、R17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基またはアラルキル基を表す。Z6 は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、アルキル置換もしくはアリール置換された窒素原子、またはジアルキル置換された炭素原子を表す。Z5 は、含窒素ヘテロ5員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。B1 は、置換フェニル基、無置換のもしくは置換された多核芳香環、または、無置換のもしくは置換されたヘテロ芳香環を表す。B2 は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アミノ基、アシル基またはアルコキシカルボニル基を表す。B1 とB2 は、互いに結合して環を形成していてもよい。)
以下にメロシアニン系色素の具体例を示す。
【0161】
【化5】
Figure 0003739695
【0162】
【化6】
Figure 0003739695
【0163】
キサンテン系色素としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、エチルエオシン、アルコール可溶性エオシン、ピロニンY、ピロニンBを挙げることができる。
【0164】
ケトクマリン系色素は、特に限定されないが、下記の構造を有するものが好適に例示される。
【0165】
【化7】
Figure 0003739695
【0166】
(式中、R19、R20およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。R22およびR23は、それぞれ独立に、アルキル基を表すが、少なくとも一方が炭素数4〜16個のアルキル基を表すのが好ましい。R20とR21、および、R22とR23は、互いに結合して環を形成していてもよい。R24は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基、カルボキシ基、またはそのエステル誘導体もしくはアミド誘導体の基を表す。R25は、炭素原子数3〜17の複素環残基−CO−R26を表す。R26は、
【0167】
【化8】
Figure 0003739695
【0168】
を表す。)
以下にケトクマリン系色素の具体例を示す。
【0169】
【化9】
Figure 0003739695
【0170】
ベンゾピラン系色素は、特に限定されないが、下記の構造を有するものが好適に例示される。
【0171】
【化10】
Figure 0003739695
【0172】
(式中、R27〜R29は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。R27〜R29は、それらがそれぞれ結合することができる炭素原子とともに、非金属原子からなる環を形成していてもよい。R30〜R32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ芳香族基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基またはアルケニル基を表す。R29は、R31と同じであってもよいし、Z9 を介してR31と同じ基がつながったものでもよい。Z9 はカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基またはアリーレンジカルボニル基を表す。また、R31およびR32は、ともに非金属原子からなる環を形成していてもよい。Z7 はO、S、NHまたは置換基を有する窒素原子を表す。Z8 は、
【0173】
【化11】
Figure 0003739695
【0174】
を表す。G1 およびG2 は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはフルオロスルホニル基を表す。ただし、G1 とG2 は同時に水素原子を表すことはない。また、G1 およびG2 は、炭素原子とともに非金属原子からなる環を形成していてもよい。)
以下にベンゾピラン系色素の具体例を示す。
【0175】
【化12】
Figure 0003739695
【0176】
更に、光重合性組成物は、上記光重合開始剤に加えて、必要に応じて、2−メルカプトベンスチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物を含有することができる。水素供与性化合物を含有することにより、更に光重合開始能力が向上することが知られている。
【0177】
これらの光重合開始剤(系)の含有量は、上記エチレン性不飽和結合含有化合物100質量部に対し、0.05〜100質量部であるのが好ましく、0.1〜70質量部であるのがより好ましく、0.2〜50質量部であるのが更に好ましい。
【0178】
光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。このような有機高分子重合体として、例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。
このような有機高分子重合体としては、側鎖にカルボキシ基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号および特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0179】
また、高分子結合剤としては、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体を用いることもできる。また、ヒドロキシ基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものも有用である。
【0180】
中でも、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体および〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。
また、水溶性有機高分子重合体として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が有用である。
また、硬化皮膜の強度を向上させるためには、アルコール可溶性ポリアミド、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等も有用である。
また、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号の各公報に記載されているポリウレタン樹脂も有用である。
【0181】
これらの有機高分子重合体には、側鎖にラジカル反応性基を導入することにより、硬化皮膜の強度を向上させることができる。付加重合反応しうる官能基として、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が、光照射によりラジカルになりうる官能基として、メルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等が、極性基として、カルボキシ基、イミド基等がそれぞれ挙げられる。付加重合反応しうる官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等のエチレン性不飽和結合基が特に好ましいが、アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルホ基およびアンモニオ基からなる群から選ばれる官能基も有用である。
【0182】
光重合性組成物の現像性を維持するためには、本発明における高分子結合剤は適当な分子量および酸価を有するのが好ましい。重量平均分子量は、5000〜30万であるのが好ましく、また、酸価は20〜200であるのが好ましい。
【0183】
高分子結合剤は光重合性組成物中に任意の量を混和させることができるが、光重合性組成物の全固形分に対し、10〜90質量%であるのが好ましく、30〜80質量%であるのがより好ましい。90質量%を超えると、形成される画像強度等の点で好ましくない。
また、エチレン性不飽和結合含有化合物と高分子結合剤との質量比は、1/9〜9/1であるのが好ましく、2/8〜8/2であるのがより好ましく、3/7〜7/3であるのが更に好ましい。
【0184】
光重合性組成物は、以上の必須成分のほかに、光重合性組成物の製造中または保存中においてエチレン性不飽和結合含有化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を含有するのが好ましい。
好適な熱重合禁止剤としては、ハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0185】
また、光重合性組成物には、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を含有させて、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の含有は、光重合性組成物の全固形分に対して、約0.5〜約10質量%であるのが好ましい。
【0186】
更に、光重合性組成物には、感光層の着色を目的として、着色剤を含有させてもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6等)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料;エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料等の染料が挙げられる。着色剤の含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、約0.5〜約20質量%であるのが好ましい。
また、光重合性組成物には、硬化皮膜の物性を改良するため、無機充填剤;ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を含有させてもよい。これらの含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、10質量%以下であるのが好ましい。
【0187】
光重合性組成物は、後述する接着層上に塗布する際には、種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライト、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート−3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは混合して使用することができる。塗布溶液の濃度(固形分)は、1〜50質量%であるのが好ましい。
光重合性組成物には、塗布面質を向上させるために、界面活性剤を含有させることができる。
【0188】
感光層の被覆量(固形分)は、約0.1〜約10g/m2 であるのが好ましく、0.3〜5g/m2 であるのがより好ましく、0.5〜3g/m2 であるのが更に好ましい。
【0189】
また、通常、上記感光層の上には、酸素の重合禁止作用を防止するために、酸素遮断性保護層が設けられる。
酸素遮断性保護層に含有される水溶性ビニル重合体としては、ポリビニルアルコール、その部分エステル、エ−テル、アセタール、それらに必要な水溶性を有せしめるような実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するその共重合体が挙げられる。
ポリビニルアルコールとしては、71〜100%加水分解され、重合度が300〜2400のものが挙げられる。具体的には、クラレ社製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、それらの共重合体が挙げられる。
その他の有用な重合体としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴムが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0190】
酸素遮断性保護層を塗布する際に用いる溶媒としては、純水が好ましいが、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を純水と混合して用いてもよい。
塗布溶液の濃度(固形分)は、1〜20質量%であるのが好ましい。
酸素遮断性保護層には、更に塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えてもよい。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトールが挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマー等を添加してもよい。
酸素遮断性保護層の被覆量は、乾燥後の質量で、約0.1〜約15g/m2 であるのが好ましく、約1.0〜約5.0g/m2 であるのがより好ましい。
【0191】
(接着層)
フォトポリマータイプの感光層の下層として、以下に示す接着層を設けるのは、本発明の好ましい態様の一つである。
接着層は、アルケニル基、アルキニル基等のラジカルによって付加反応を起こしうる官能基(以下「付加反応性官能基」という。)を有するシリコーン化合物を含有する。
接着層の塗設は、下記式(1)で表される有機シリコーン化合物(以下「有機シリコーン化合物(1)」という。)を用いて、平版印刷版用支持体の表面を処理することにより、支持体表面の金属、金属酸化物、水酸化物、−OH基、支持体の化成処理によって形成されるシラノール基等と反応させて、有機シリコーン化合物と支持体表面との間に共有結合を形成させ、下記式(2)で表される官能基を支持体表面に結合させ、または植え付ければよい。
【0192】
1 Si(OR2 3 (1)
(上記式(1)中、R1 は付加反応性官能基を表す。OR2 は加水分解可能なアルコキシ基または−OCOCH3 基を表す。)
(R3 O)2 (R1 )Si− (2)
(上記式(2)中、R3 はR2 と同種もしくは異種のアルキル基、水素原子または隣接する別のSi原子との結合を表す。)
【0193】
また、有機シリコーン化合物(1)の代わりに、付加反応性官能基(R1 )が中央のSi原子に2個以上結合している下記式(1a)または(1b)で表される有機シリコ−ン化合物を用いることもできる。
(R1 2 Si(OR2 2 (1a)
(R1 3 SiOR2 (1b)
【0194】
また、付加反応性官能基(R1 )が−O−を介して中央のSi原子に結合する官能基である場合は、有機シリコーン化合物(1)の代わりに、下記式(1c)で表される有機シリコーン化合物を用いることもできる。
(R1 4 Si (1c)
【0195】
有機シリコーン化合物は、中央のSi原子に結合する1〜4個のR1 のうち少なくとも1個が加水分解されずに残っている状態で平版印刷版用支持体に塗布される。有機シリコーン化合物を平版印刷版用支持体上に塗設する際、そのまま用いてもよく、適当な溶媒で希釈して用いてもよい。
平版印刷版用支持体上で有機シリコーン化合物をより強固に結合させるために、水および/または触媒を加えることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類が好適に例示され、また、触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の酸;アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基が好適に例示される。
【0196】
平版印刷版用支持体上の付加反応性官能基の量は、結合させる付加反応性官能基の種類によって異なるが、通常、10nm2 あたり0.01〜1000個であり、0.05〜200個であるのが好ましく、0.1〜50個であるのがより好ましい。付加反応性官能基量が10nm2 あたり0.01個未満であると、十分な光接着強度が得られにくい。有機シリコーン化合物を厚く塗り重ねることによって、10nm2 あたりの付加反応性官能基量を実質的にいくらでも多くすることができるが、最表面に露出した状態で存在させることのできる付加反応性官能基量は10nm2 あたり高々10個であるので、厚く塗り過ぎても無駄になる。付加反応性官能基量が多すぎて、非画像部の親水性が不足しないようにするためには、10nm2 あたりの付加反応性官能基の量を1000個以下とするのが好ましい。
【0197】
したがって、有機シリコーン化合物を希釈する溶媒の種類と量、支持体表面上での加水分解用に加える水の量(添加する場合)、支持体表面上での加水分解を促進するための触媒の種類および量(添加する場合)、有機シリコーン化合物の溶液を支持体上に施用する方法、支持体に施用した後の乾燥雰囲気、乾燥温度、乾燥時間等のプロセスパラメータを種々変更し、支持体表面に保持される付加反応性官能基の量が上記範囲となるように制御することが必要である。支持体表面に保持される付加反応性官能基の量は、接着層を設けた後の支持体表面をケイ光X線分析法、赤外線吸収法等の適当な方法で測定し、表面に存在するSi原子量の定量、炭素−炭素の多重結合量の定量等を行うことによって決定することができる。
【0198】
本発明においては、有機シリコーン化合物(1)のみを用いて支持体表面に接着層を塗設しただけでは、平版印刷版としたときに印刷汚れを生じる場合がある。本発明の平版印刷版用支持体に、付加反応性官能基により結合した接着層を設け、更に光重合性組成物を塗布して感光層を設け、これに像様露光して画像通りの界面光接着を起こさせ、現像液で未露光部を取り去ることにより、支持体上には光のパターン通りの光重合密着膜が残る。これにインクと水を塗ると、インクは光重合接着した像様露光部に、水は未露光部にそれぞれ付着するが、上記有機シリコーン化合物を単独で使用した場合には、水が付着するべき未露光部に過剰の有機官能基が存在して水のほかにインクも付着し、印刷物上に汚れとなって観察されることがある。
【0199】
そこで、この印刷汚れを防ぐために、平版印刷版用支持体の表面上に付加反応性官能基(R1 )のほかにヒドロキシ基を多く固定して、親水性を強くすることが好ましい。好ましくは、平版印刷版用支持体の表面への付加反応性官能基の結合において、有機シリコーン化合物(1)のほかに、下記式(3)で表される有機シリコーン化合物(以下「有機シリコーン化合物(3)」という。)を併用し、支持体表面に上記式(2)で表される反応サイトを結合すると同時に、下記式(4)で表される親水性サイトを結合することが好ましい。
【0200】
Si(OR4 4 (3)
(上記式(3)中、−OR4 は加水分解可能なアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基または−OCOCH3 基である。R4 はR2 と同じであっても、異なっていてもよい。)
(R3 O)2 (OH)Si− (4)
(上記式(4)中、R3 はアルキル基、水素原子または隣接する別のSi原子との結合を表す。)
【0201】
上記式(4)においては、R3 が水素原子であるのが親水性の面からは最も好ましい。なお、R3 が水素原子以外のものである場合は、必要に応じて、表面をアルカリ溶液で洗うことによって、親水性を高めることができる。
【0202】
有機シリコーン化合物(1)と有機シリコーン化合物(3)との混合比は、支持体の性状によってそれぞれのものの支持体表面への結合(植えつけ)効率が変動するため、一概に好適な範囲を決めることができない。しかし、具体的には、両者の比を種々に変えて接着層を設け、付加反応性官能基R1 に基づく光接着性と、上記式(4)で示される部分構造に由来する親水性とが両立する条件を実験的に確定して使用することになる。いずれにしても、付加反応性官能基の量が上記範囲となるようにすればよい。
具体的には、有機シリコーン化合物(1)に対する有機シリコーン化合物(3)の混合モル比は、0.05〜500であるのが好ましく、0.2〜200であるのがより好ましく、1〜100であるのが更に好ましい。また、上記範囲で、有機シリコーン化合物(3)に由来する親水性基の量を多くすればするほど非画像部の親水性が増す。ただし、親水性基の密度が低い場合でも、付加反応性官能基を親水化処理することによって親水性基の密度を向上させることができる。
【0203】
平版印刷版用支持体の表面への付加反応性官能基の結合には、大別すると、上述したように、有機シリコーン化合物をそのまま用いる方法(以下「SC法」という。)と、有機シリコーン化合物を加水分解するとともに重縮合させて得られた−Si−O−Si−結合を含む無機高分子に付加反応性官能基が固定された形の有機無機複合体を用いる方法(以下「SG法」という。)とがある。この有機無機複合体を平版印刷版用支持体に塗布して乾燥させると、無機高分子部分が支持体と密着し、付加反応性官能基はそのまま支持体表面に残る。
【0204】
SC法の場合、平版印刷版用支持体の表面における付加反応性官能基の結合位置は支持体表面上の特定の性質をもった位置となりやすく、支持体表面上に一様に分布させるのが困難な場合がある。つまり、特定の酸点や塩基点においてのみSi原子との間の共有結合が形成され、付加反応性官能基の分布が平版印刷版用支持体表面の酸点や塩基点の分布に支配されやすい。したがって、光接着強度や非画像部親水性にムラを生じる場合がある。こうした状況のときはSG法を用いるのが有利である。
【0205】
細かく見れば、上述したSC法、SG法のほかに、中間の態様、例えば、有機シリコーン化合物(1)中のOR2 の一部または全部が加水分解して2分子または3分子が結合した形の有機シリコーン化合物を出発原料として用いることもできる。
【0206】
SG法によれば、有機シリコーン化合物(1)を、必要に応じて、有機シリコーン化合物(3)と所望の混合比に混合し、液中で、必要により触媒の存在下で、付加反応性官能基R1 では反応を起こさせずに−OR2 および−OR4 で加水分解させるとともに重縮合反応を行わせて、中心のSi原子が−Si−O−Si−結合でつながった無機高分子を含む液状組成物として、これを平版印刷版用支持体表面に塗布し、必要に応じて、乾燥させることによって、支持体上に付加反応性官能基を結合することができる。SG法を用いると、平版印刷版用支持体の表面上に結合固定される付加反応性官能基の分布が支持体表面の酸点や塩基点等の化学的な性質の分布に左右されることが少ない。また、出発原料として有機シリコーン化合物(1)と有機シリコーン化合物(3)とを併用する場合、上記式(2)で示される付加反応性官能基サイトと上記式(4)で示される親水性サイトとの相対比が有機シリコーン化合物(1)と有機シリコーン化合物(3)の仕込み比でほぼ決められるため、最適表面を得るための処方決定の道筋がSC法よりも整然とするという利点がある。
【0207】
有機シリコーン化合物(1)の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
CH2 =CH−Si(OCOCH3 3
CH2 =CH−Si(OC 25 3
CH2 =CH−Si(OCH3 3
CH2 =CHCH2 −Si(OC 25 3
CH2 =CHCH2 NH(CH2 3 −Si(OCH3 3
CH2 =CHCOO−(CH2 3 −Si(OCH3 3
CH2 =CHCOO−(CH2 3 −Si(OC 25 3
CH2 =C(CH3 )COO−(CH2 3 −Si(OCH3 3
CH2 =C(CH3 )COO−(CH2 3 −Si(OC 25 3
CH2 =C(CH3 )COO−(CH2 4 −Si(OCH3 3
CH2 =C(CH3 )COO−(CH2 5 −Si(OCH3 3
CH2 =CHCOO−(CH2 4 −Si(OCH3 3
(CH2 =C(CH3 )COO−(CH2 3 2 −Si(OCH3 2
CH2 =C(CH=CH2 )−Si(OCH3 3
CH2 =CH−SO2 NH−(CH2 3 −Si(OCH3 3
CH2 =CH−ph−O−Si(OCH3 3
(式中、phは、ベンゼン環を示す。以下同じ。)、
CH2 =CH−ph−CONH−(CH2 3 −Si(OCH3 3
CH2 =CH−ph−CH2 NH−(CH2 3 −Si(OCH3 3
HC≡C−Si(OC 25 3
CH3 C≡C−Si(OC 25 3
【0208】
【化13】
Figure 0003739695
【0209】
CH2 =CHCH2 O−Si(OCH3 3
(CH2 =CHCH2 O)4 Si 、
HO−CH2 −C≡C−Si(OC 25 3
CH3 CH2 CO−C≡C−Si(OC 25 3
CH2 =CHS−(CH2 3 −Si(OCH3 3
CH2 =CHCH2 O−(CH2 2 −SCH2 −Si(OCH3 3
CH2 =CHCH2 S−(CH2 3 −S−Si(OCH3 3
(CH3 3 CCO−C≡C−Si(OC 25 3
(CH2 =CH)2 N−(CH2 2 −SCH2 −Si(OCH3 3
CH3 COCH=C(CH3 )−O−Si(OCH3 3
【0210】
また、有機シリコーン化合物(3)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラフェノキシシラン、テトラアセトキシシランを挙げることができる。中でも、テトラエトキシシランが好ましい。
【0211】
平版印刷版用支持体の表面へ付加反応性官能基を結合するのにSC法を用いる場合もSG法を用いる場合も、溶媒の種類、支持体への施用方法、乾燥方法等は共通であるが、SG法の場合、付加反応性官能基が保持された無機高分子組成物をあらかじめ調液しておく必要がある。以下にその好ましい具体例を示す。
有機シリコーン化合物(1)および有機シリコーン化合物(3)を加水分解とともに重縮合させてSG法に好適な組成物とするのに用いることができる溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類である。
溶媒の使用量は、使用する有機シリコーン化合物(1)および有機シリコーン化合物(3)の総質量に対して、通常、0.2〜500倍であり、0.5〜100倍であるのが好ましく、1〜20倍であるのがより好ましい。使用量が0.2倍未満であると、反応液が経時でゲル化しやすく不安定となり好ましくない。また、500倍を超えると、反応が数日を要するようになり好ましくない。
有機シリコーン化合物を加水分解するために加える水の量は、通常、有機シリコーン化合物1モルあたり0.1〜1000モルであり、0.5〜200モルであるのが好ましく、1.5〜100モルであるのがより好ましい。水の量が有機シリコーン化合物1モルあたり0.1モル未満であると、加水分解とそれに続く重縮合反応の進行が非常に遅くなり、安定な表面処理が可能となるまでに数日を要するので好ましくない。一方、水の量が有機シリコーン化合物1モルあたり1000モルを超えると、生成した組成物を金属表面に塗設した場合に、密着不良を起こすほか、組成物の経時安定性が悪く、すぐにゲル化してしまうことが多いため、塗布作業を安定して行いにくくなる。
【0212】
SG法に好適な組成物を調液するための反応温度は、室温から100℃程度までが通常であるが、後述する触媒の種類によっては室温より低い温度または100℃を超える温度を用いることもできる。また、溶媒の沸点よりも高い温度で反応させることも可能であり、必要に応じて、反応器に還流冷却器を付設することができる。
【0213】
必要に応じて使用される触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、リンゴ酸、シュウ酸等の酸;アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基が挙げられる。触媒の添加量は、有機シリコーン化合物(1)および、必要に応じて、追加される有機シリコーン化合物(3)の合計量に対して、通常、有機シリコーン化合物1モルあたり0.001〜1モルであり、0.002〜0.7モルであるのが好ましく、0.003〜0.4モルであるのがより好ましい。触媒添加量を有機シリコーン化合物1モルあたり1モルより多くしても、その添加効果に比べて経済的に特に利益があるわけではない。
【0214】
酢酸、リンゴ酸等の弱酸を触媒として用いる場合は、反応温度を40〜100℃とするのが好ましいが、硫酸、硝酸等の強酸を触媒として用いる場合は、10〜60℃とするのが好ましい。リン酸を触媒として用いる場合は、10〜90℃で反応を行わせることができる。
【0215】
SG法に用いられる組成物の調液工程、および、これを平版印刷版用支持体に塗布し乾燥する工程において、多くの場合、熱が加えられるが、揮発性の酸を触媒として使用すると、周囲の装置に揮発して付着し、これを腐食させることがある。したがって、主として鉄を素材とする装置でこの方法を使用する場合は、不揮発性の硫酸および/またはリン酸を触媒として用いるのが好ましい。
【0216】
以上述べたように、有機シリコーン化合物(1)と有機シリコーン化合物(3)と、有機溶媒、水、および、場合により触媒からなる組成物を、適当な反応温度、反応時間、および場合により適当なかくはん条件を選んで反応させると、加水分解とともに重縮合反応が起こり、Si−O−Si結合を含む高分子またはコロイド状高分子が生成し、液状組成物の粘度が上昇し、ゾル化する。有機シリコーン化合物(1)と有機シリコーン化合物(3)とを併用してゾル液を調製する場合、両方の有機シリコーン化合物を反応の最初から反応容器内に装荷してもよく、一方のみで加水分解と重縮合反応をある程度進めた後に他方を加え、反応を終了させてもよい。
SG法に用いられる上記ゾル液は、室温で放置すると重縮合反応が引き続き進行しゲル化することがある。したがって、一度上記の方法で調液したゾル液を、平版印刷版用支持体への塗布時に希釈のために使用する溶媒と同種の溶媒であらかじめ希釈しておくことにより、ゾル液のゲル化を防止し、または遅延させることができる。
【0217】
SC法およびSG法のいずれにおいても、支持体上に目的量の有機シリコーン化合物または付加反応性官能基を結合するために、また、支持体上での有機シリコーン化合物または付加反応性官能基の分布ムラがないようにするために、これらの処理液を支持体に塗布する前に溶媒を加えて濃度調整を行うことが好ましい。
この目的に使用する溶媒としてはアルコール類、特にメタノールが好適であるが、他の溶剤、有機化合物、無機添加剤、界面活性剤等を加えることもできる。他の溶剤の例としては、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、アセチルアセトン、エチレングリコールが挙げられる。
添加することのできる有機化合物の例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ノボラック樹脂、ピロガロール−アセトン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコールが挙げられる。
無機添加剤の例としては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナが挙げられる。
エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等の高沸点溶剤は、支持体に塗布する濃度にまで希釈された液の安定性を高め、支持体に結合された付加反応性官能基の反応再現性を保証する働きがある。ノボラック樹脂、ピロガロール−アセトン樹脂等の有機化合物も同様の効果を有するが、得られる支持体の表面の親水性を低下させる副作用があり、添加量を細かく調整する必要がある。
【0218】
SG法に好適なゾル液または液状組成物は、平版印刷版用支持体の表面に塗設した後、風乾させ、または加熱乾燥させると、Si−O−Si結合からなる無機高分子がゲル化すると同時に支持体表面と共有結合する。乾燥は、溶媒、残留水および場合により添加される触媒を揮散させるために行うが、省くこともできる。
SC法においては、この乾燥工程は溶媒、残留水等の揮散という目的のほかに、有機シリコーン化合物と平版印刷版用支持体との密着性を高くするという目的を有する。したがって、目的によっては、乾燥終了後にも更に加温し、加熱を継続してもよい。乾燥および場合により継続されるその後の加熱における最高温度は、付加反応性官能基が分解しない温度であるのが好ましい。したがって、使用される乾燥温度条件は、通常、室温から200℃であり、室温から150℃であるのが好ましく、室温から120℃であるのがより好ましい。乾燥時間は、通常、1秒〜30分間であり、5秒〜10分間であるのが好ましく、10秒〜3分間であるのがより好ましい。
【0219】
本発明において用いられる液状組成物(有機シリコーン化合物またはその溶液もしくはゾル液)の施工方法は、ハケ塗り、浸せき塗布、アトマイジング、スピンコーティング、ドクターブレード塗布等、各種のものも使用することができ、必要とする処理膜厚等を勘案して決められる。
【0220】
<サーマルポジタイプ>
(感熱層)
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。ここで、アルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含する。したがって、サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ現像液に接触すると溶解する特性を有する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、下記(1)〜(6)の酸性基のうち少なくとも一つを高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
【0221】
(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R)(以下「活性イミド基」という。)
(4)カルボキシ基(−CO2 H)
(5)スルホ基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 2
【0222】
上記(1)〜(6)中、Arは、置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0223】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が、アルカリ現像液に対する溶解性、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0224】
つぎに、これらのアルカリ可溶性高分子化合物の重合成分の代表的な例について述べる。
(1)フェノール性ヒドロキシ基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性ヒドロキシ基と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられ、例えば、フェノール性ヒドロキシ基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0225】
具体的には、例えば、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等が挙げられる。これらフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0226】
(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基(−NH−SO2 −)と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられ、例えば、アクリロイル基、アリル基またはビニロキシ基と、モノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平8−123029号公報に記載されている一般式(I)〜(V)で示される化合物が挙げられる。
【0227】
(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマーとして、具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0228】
(3)活性イミド基を有する重合性モノマーとしては、特開平11−84657号公報に記載されている活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、1分子中に、活性イミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物とからなる重合性モノマーが挙げられる。
(3)活性イミド基を有する重合性モノマーとしては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0229】
(4)カルボキシ基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、1分子中に、カルボキシ基と、重合可能な不飽和基とをそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホ基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、1分子中に、スルホ基と、重合可能な不飽和基とをそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、1分子中に、リン酸基と、重合可能な不飽和基とをそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0230】
サーマルポジタイプの感熱層に用いられるアルカリ可溶性高分子化合物を構成する、上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
共重合の方法としては、従来公知のグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0231】
前記共重合体は、共重合させる上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているのが好ましく、20モル%以上含まれているのがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
【0232】
本発明では、化合物を共重合して共重合体を形成する場合、その化合物として、上記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m12)の化合物を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0233】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート等のアルキルアクリレート、
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、
【0234】
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドまたはメタクリルアミド、
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、
【0235】
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類、
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類、
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、
【0236】
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド、
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0237】
アルカリ可溶性高分子化合物としては、赤外線レーザー等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0238】
また、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物は、その重量平均分子量が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0239】
アルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その合計の含有量が、感熱層の全固形分に対して、1〜90質量%であるのが好ましく、2〜70質量%であるのがより好ましく、2〜50質量%であるのが更に好ましい。含有量が1質量%未満であると、耐久性が悪化する傾向にあり、また、90質量%を超えると、感度および画像形成性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0240】
本発明に用いられる光熱変換物質は、光を吸収して発熱する物質である。光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。
本発明における光熱変換物質は、記録に用いられる光を吸収して熱に変換する機能を有するものであれば特に限定されないが、記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。
【0241】
前記顔料としては、市販の顔料、ならびに、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料を利用することができる。
【0242】
前記顔料の種類としては、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラックを用いることができる。
【0243】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0244】
前記顔料の粒径は、0.01〜10μmの範囲にあるのが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあるのがより好ましく、0.1〜1μmの範囲にあるのが更に好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満であると分散物の感熱層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを超えると感熱層の均一性の点で好ましくない。
【0245】
前記顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、例えば、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダーが挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0246】
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。
【0247】
本発明においては、これらの顔料または染料の中でも、赤外光または近赤外光を吸収するものが、赤外光または近赤外光を発光するレーザの利用に適する点で特に好ましい。
【0248】
そのような赤外光または近赤外光を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好適に用いられる。また、赤外光または近赤外光を吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号の各公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号の各公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号の各公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書に記載されているシアニン染料、米国特許第5,380,635号明細書に記載されているジヒドロペリミジンスクアリリウム染料を挙げることができる。
【0249】
また、前記染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、特開昭58−220143号、特開昭59−41363号、特開昭59−84248号、特開昭59−84249号、特開昭59−146063号および特開昭59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩等、特公平5−13514号公報、特公平5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物;Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125、Epolight IV−62A(いずれもエポリン社製)等は特に好ましく用いられる。
【0250】
また、前記染料として特に好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)または(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0251】
これらの顔料または染料の含有量は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合、特に好ましくは1〜10質量%である。顔料または染料の含有量が0.01質量%未満であると感度が低くなる場合があり、また、50質量%を超えると感熱層の均一性が失われ、感熱層の耐久性が悪くなる場合がある。
【0252】
これらの染料または顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが好ましい。
【0253】
感熱層は、更に、必要に応じて、種々の添加剤を含有することができる。例えば、熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用すると、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図ることができるので、好ましい。そのような物質としては、例えば、オニウム塩、キノンジアジド類、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物が挙げられる。
【0254】
オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩が挙げられる。
【0255】
中でも、好適なものとしては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Balet al,Polymer,21,423(1980)および特開平5−158230号公報に記載されているジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書および特開平3−140140号公報に記載されているアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478,Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号明細書および同4,069,056号明細書に記載されているホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& amp、Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号公報および特開平2−296514号公報に記載されているヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同第233,567号、同第297,443号、同第297,442号、米国特許第4,933,377号、同第3,902,114号、同第410,201号、同第339,049号、同第4,760,013号、同第4,734,444号、同第2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同第3,604,580号および同第3,604,581号の各明細書に記載されているスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)およびJ.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載されているセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478,Tokyo,Oct(1988)に記載されているアルソニウム塩が挙げられる。
【0256】
オニウム塩の対イオンとしては、例えば、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。中でも、六フッ化リン酸;トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0257】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。
【0258】
本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons.Inc.)p.339−352に記載されている化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物または芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号明細書および同第3,188,210号明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0259】
更に、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許文献に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号等の各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、独国特許第854,890号等の各明細書に記載されているものを挙げることができる。
【0260】
オニウム塩やo−キノンジアジド化合物の添加量は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜30質量%の範囲である。
これらの化合物は単一で使用できるが、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0261】
また、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318号公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2個または3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することができる。このような化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0262】
感熱層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を含有させることもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0263】
また、感熱層には、必要に応じて、低分子量の酸性基を有する化合物を含有させてもよい。酸性基としては、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホ基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
【0264】
また、感熱層は、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を含有することもできる。
環状酸無水物類としては、例えば、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。
【0265】
フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンが挙げられる。
【0266】
有機酸類としては、例えば、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類が挙げられる。具体的には、例えば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸が挙げられる。
【0267】
上記の環状酸無水物類、フェノール類および有機酸類の含有量は、添加される層の全固形分に対して、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜15質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質量%であるのが特に好ましい。
【0268】
また、感熱層は、現像条件の変化に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報および特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報および特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許出願公開第950,517号明細書に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を含有することができる。
【0269】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」、第一工業社製)が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の添加量は、それぞれ、添加される層の全固形分に対して、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0270】
また、感熱層は、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を含有することができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み合わせが例示される。具体的には、特開昭50−36209号公報および特開昭53−8128号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組み合わせ、特開昭53−36223号、特開昭54−74728号、特開昭60−3626号、特開昭61−143748号、特開昭61−151644号および特開昭63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組み合わせが挙げられる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、いずれも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0271】
画像着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料が挙げられる。具体的には、例えば、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)が挙げられる。また、特開昭62−293247号公報および特開平5−313359号公報に記載されている染料は特に好ましい。
これらの染料の添加量は、添加される層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜3質量%であるのがより好ましい。
【0272】
また、感熱層は、塗膜の柔軟性等を付与するために、必要に応じ、可塑剤を含有することができる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマーが用いられる。
本発明の感熱層は1層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
【0273】
感熱層は、通常、上記各成分を溶媒に溶かして得られる感熱層塗布液を、平版印刷版用支持体上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶媒は単独でまたは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましい。
【0274】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0275】
また、感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。上記範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性が低下する。
【0276】
本発明における感熱層には、塗布性を改善するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の添加量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0277】
(下塗層)
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、必要に応じて、下塗層を設けることができる。
下塗層に含有される成分としては種々の有機化合物が挙げられる。例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0278】
下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液を平版印刷版用支持体上に塗布し乾燥させて設ける方法と、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸せきさせて上記化合物を吸着させ、その後水等によって洗浄し乾燥させて設ける方法である。
前者の方法では、上記の有機化合物の好ましくは0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布することができる。また、後者の方法では、溶液の濃度は好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%であり、浸せき温度は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であり、浸せき時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好ましくは2秒〜1分である。
上記方法に用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸等の酸性物質により、pH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を含有することもできる。
下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 であるのが適当であり、5〜100mg/m2 であるのが好ましい。被覆量が2mg/m2 未満であると、十分な耐刷性が得られない場合がある。また、200mg/m2 を超えても同様である。
【0279】
上記のようにして作成されたサーマルポジタイプの感熱層を有する平版印刷版用原版は、通常、像露光および現像処理が施される。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、中でも、固体レーザ、半導体レーザが好ましい。発光波長としては、760〜850nmが好ましい。
【0280】
<サーマルネガタイプ>
(感熱層)
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層であれば、いずれのものも適用することができる。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、光重合層が好適に挙げられる。光重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物とを含有し、好ましくは更に(D)バインダーポリマーを含有する。
光重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
【0281】
また、光重合層のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋層が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。
酸架橋層においては、光照射または加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士の間または架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。このとき、赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。
【0282】
また、このほかにも、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子が(J)親水性高分子マトリックス中に分散され、露光部の熱により疎水性のポリマーが溶融し、互いに融着してポリマーによる疎水性(親インク性)領域、即ち、画像部を形成する感熱層も好適に挙げられる。
【0283】
光重合層に用いられる各化合物について以下に述べる。
(A)赤外線吸収剤
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。赤外線吸収剤が発生させた熱により、ラジカル発生剤や酸発生剤が分解し、ラジカルや酸を発生させる。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0284】
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される光熱変換物質として、上記に例示した染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとして、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。中でも、シアニン色素が好ましく、特に、下記一般式(I)で示されるシアニン色素が最も好ましい。
【0285】
【化14】
Figure 0003739695
【0286】
一般式(I)中、X1 は、ハロゲン原子または−X2 −L1 を表す。ここで、X2 は酸素原子または硫黄原子を表し、L1 は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。R1 およびR2 は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感熱層塗布液の保存安定性から、R1 およびR2 は、それぞれ炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1 とR2 とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。Y1 およびY2 は、それぞれ独立に、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を表す。R3 およびR4 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を表す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基およびスルホ基が挙げられる。R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を表し、原料の入手性から、水素原子であるのが好ましい。
1-は、対アニオンを示す。ただし、R1 〜R8 のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-は必要ない。Z1-は、感熱層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンまたはスルホン酸イオンであるのが好ましく、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオンまたはアリールスルホン酸イオンであるのがより好ましい。
【0287】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特願平11−310623号明細書(特開2001−133969号公報)の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0288】
前記顔料としては、市販の顔料、ならびに、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料を利用することができる。具体的には、例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される光熱変換物質として、上記に例示した顔料が挙げられる。
これらの顔料の詳細は、サーマルポジタイプの感熱層に用いられる顔料と同様である。
【0289】
染料または顔料の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましく、更に、染料の場合には、0.5〜10質量%であるのが更に好ましく、また、顔料の場合には、1.0〜10質量%であるのが更に好ましい。
含有量が0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、平版印刷版とした場合に、非画像部に汚れが発生することがある。
【0290】
(B)ラジカル発生剤
ラジカル発生剤としては、例えば、オニウム塩が挙げられる。具体的には、例えば、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。これらのオニウム塩は酸発生剤としての機能も有するが、後述するラジカル重合性化合物と併用すると、ラジカル重合開始剤として機能する。本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(III)〜(V)で表されるオニウム塩である。
【0291】
【化15】
Figure 0003739695
【0292】
上記一般式(III)中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を表す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基および炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11- はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンおよびスルホン酸イオンからなる群から選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、アリールスルホン酸イオンである。
【0293】
上記一般式(IV)中、Ar21は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を表す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基および炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21- はZ11- と同義の対イオンを表す。
【0294】
上記一般式(V)中、R31、R32およびR33は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を表す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基および炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31- はZ11- と同義の対イオンを表す。
【0295】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特願平11−310623号明細書(特開2001−133969号公報)の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
【0296】
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であるのが好ましく、360nm以下であるのがより好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、本発明の平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0297】
これらのオニウム塩の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.1〜50質量%であるのが好ましく、0.5〜30質量%であるのがより好ましく、1〜20質量%であるのが更に好ましい。含有量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また、50質量%を超えると印刷時非画像部に汚れが発生する場合がある。これらのオニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのオニウム塩は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0298】
(C)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。
【0299】
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と、単官能または多官能のイソシアネート類またはエポキシ類との付加反応物、単官能または多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能または多官能のアルコール類、アミン類またはチオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能または多官能のアルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0300】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物であるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステルの具体例は、フォトポリマータイプの感光層に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物として、上記に例示したものが挙げられる。
【0301】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号および特開昭57−196231号の各公報に記載されている脂肪族アルコール系エステル類、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号および特開平2−226149号の各公報に記載されている芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載されているアミノ基を含有するもの等も好適に挙げられる。
【0302】
また、イソシアネート基とヒドロキシ基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(VI)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0303】
CH2 =C(R41)COOCH2 CH(R42)OH (VI)
(上記式(VI)中、R41およびR42は、それぞれHまたはCH3 を表す。)
【0304】
これらのラジカル重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか2種以上を併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数や異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出という点で好ましくない場合がある。また、感熱層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択および使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもありうる。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じるなどの問題を生じうる。
【0305】
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の配合比は、多くの場合、感熱層の全固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、20〜75質量%であるのがより好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成および塗布方法も実施しうる。
【0306】
(D)バインダーポリマー
本発明においては、更にバインダーポリマーを使用するのが好ましい。バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。線状有機ポリマーとしては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像または弱アルカリ水現像を可能とするために、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、感熱層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水または弱アルカリ水の種類や、有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボキシ基を有するラジカル重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、同様に、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体が挙げられる。このほかに、ヒドロキシ基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたもの等が有用である。
【0307】
特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており、好適である。
【0308】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号の各公報等に記載されている酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性および低露光適性の点で有利である。
【0309】
更に、このほかに、水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるために、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0310】
本発明で使用される線状有機ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5000以上であり、より好ましくは1万〜30万であり、また、数平均分子量は、好ましくは1000以上であり、より好ましくは2000〜25万である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上であり、好ましくは1.1〜10である。
【0311】
これらの線状有機ポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれであってもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0312】
バインダーポリマーは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。バインダーポリマーの含有量は、感熱層の全固形分に対して、20〜95質量%であるのが好ましく、30〜90質量%であるのがより好ましい。含有量が20質量%未満であると、画像形成した際、画像部の強度が不足する場合がある。また、含有量が95質量%を超えると、画像形成されない場合がある。また、ラジカル重合性化合物と線状有機ポリマーとの質量比は、1/9〜7/3であるのが好ましい。
【0313】
つぎに、酸架橋層に用いられる各化合物について以下に述べる。
(A)赤外線吸収剤
酸架橋層に必要に応じて用いられる赤外線吸収剤は、前記光重合層において説明した(A)赤外線吸収剤と同様のものを用いることができる。
赤外線吸収剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましく、更に、染料の場合には、0.5〜10質量%であるのが更に好ましく、また、顔料の場合には、1.0〜10質量%であるのが更に好ましい。
含有量が、0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、平版印刷版としたときに、非画像部に汚れが発生することがある。
【0314】
(E)酸発生剤
酸発生剤とは、200〜500nmの波長領域の光を照射し、または100℃以上に加熱することにより、酸を発生する化合物をいう。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる公知の化合物およびそれらの混合物;酸を発生する基または化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
酸発生剤としては、下記式(I)〜(V)で表される化合物が好ましい。
【0315】
【化16】
Figure 0003739695
【0316】
上記式(I)〜(V)中、R1 、R2 、R4 およびR5 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。R3 は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10以下の炭化水素基または炭素数10以下のアルコキシ基を表す。Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R6 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の整数を表す。
1 、R2 、R4 およびR5 は、それぞれ炭素数1〜14の炭化水素基であるのが好ましい。
【0317】
上記式(I)〜(V)で表される酸発生剤の好ましい態様は、本願出願人によって提案された特願平11−320997号明細書(特開2001−142230号公報)の段落番号[0197]〜[0222]に詳細に記載されている。これらの化合物は、例えば、特開平2−100054号公報および特開平2−100055号公報に記載されている方法により合成することができる。
【0318】
また、酸発生剤として、ハロゲン化物、スルホン酸等を対イオンとするオニウム塩を用いることもできる。中でも、下記一般式(VI)〜(VIII)で表されるヨードニウム塩、スルホニウム塩およびジアゾニウム塩のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げることができる。
【0319】
【化17】
Figure 0003739695
【0320】
上記一般式(VI)〜(VIII)中、X- は、ハロゲン化物イオン、ClO4 - 、PF6 - 、SbF6 - 、BF4 - またはR7 SO3 - を表す。ここで、R7 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Ar3 およびAr4 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R8 、R9 およびR10は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化水素基を表す。
このようなオニウム塩は、特開平10−39509号公報の段落番号[0010]〜[0035]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載されている。
【0321】
酸発生剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.1〜25質量%であるのがより好ましく、0.5〜20質量%であるのが更に好ましい。
酸発生剤の含有量が0.01質量%未満であると、画像が得られないことがあり、また、50質量%を超えると、平版印刷版としたときに、印刷時において非画像部に汚れが発生することがある。
の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0322】
(F)架橋剤
架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、
(iii)エポキシ化合物。
【0323】
以下、上記(i)〜(iii)の化合物について詳述する。
(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基またはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物または複素環化合物が挙げられる。ただし、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物または複素環化合物の中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
また、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物または複素環化合物の中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物がより好ましい。
【0324】
【化18】
Figure 0003739695
【0325】
【化19】
Figure 0003739695
【0326】
上記一般式(1)〜(4)中、L1 〜L8 は、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を表す。
これらの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上させることができる点で好ましい。
【0327】
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許出願公開第0,133,216号、西独特許第3,634,671号および同第3,711,264号の各明細書に記載されている、単量体およびオリゴマー−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物ならびに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、欧州特許出願公開第0,212,482号明細書に記載されているアルコキシ置換化合物等が挙げられる。
中でも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体がより好ましい。
【0328】
(iii)エポキシ化合物としては、一つ以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー等のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物が挙げられる。
そのほかに、米国特許第4,026,705号明細書および英国特許第1,539,192号明細書に記載されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0329】
架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化合物を用いる場合の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜75質量%であるのがより好ましく、20〜70質量%であるのが更に好ましい。
架橋剤の添加量が、5質量%未満であると、得られる画像記録材料の感熱層の耐久性が低下することがあり、また、80質量%を超えると、保存時の安定性が低下することがある。
【0330】
本発明においては、架橋剤として、(iv)下記一般式(5)で表されるフェノール誘導体も好適に使用することができる。
【0331】
【化20】
Figure 0003739695
【0332】
上記一般式(5)中、Ar1 は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。
前記芳香族炭化水素環としては、原料の入手性の点で、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環が好ましい。また、前記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
上記のうち、Ar1 としては、高感度化が可能である点で、置換基を有していないベンゼン環またはナフタレン環;ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチオ基、ニトロ基等を置換基として有するベンゼン環またはナフタレン環がより好ましい。
【0333】
1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、水素または炭素数12以下の炭化水素基を表す。R1 、R2 およびR3 としては、それぞれ水素原子、メチル基が好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立に、1〜8の整数を表す。
【0334】
(G)アルカリ可溶性高分子化合物
アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
【0335】
中でも、フェノールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下で反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好ましい。
ノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000であるものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いるのが好ましい。
【0336】
また、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも、ノボラック樹脂と同様に好適に用いられる。前記ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシ基が一つ以上結合したアリール基が挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。中でも、入手の容易性および物性の観点から、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーの具体例としては、下記式(IX)〜(XII)で表される構成単位のうちのいずれか1種を含むポリマーを挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0337】
【化21】
Figure 0003739695
【0338】
上記式(IX)〜(XII)中、R11は、水素原子またはメチル基を表す。R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基または炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。ここで、R12とR13とが結合して縮環し、ベンゼン環、シクロヘキサン環等を形成していてもよい。R14は、単結合または炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R15は、単結合または炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R16は、単結合または炭素数10以下の2価の炭化水素基を表す。X1 は、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合またはアミド結合を表す。pは、1〜4の整数を表す。qおよびrは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
【0339】
アルカリ可溶性高分子化合物としては、本願出願人によって提案された特願平11−320997号明細書(特開2001−142230号公報)の段落番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されている。
アルカリ可溶性高分子化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0340】
アルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜95質量%であるのが好ましく、10〜95質量%であるのがより好ましく、20〜90質量%であるのが更に好ましい。
アルカリ水可溶性樹脂の含有量が、5質量%未満であると、感熱層の耐久性が劣化することがあり、また、95質量%を超えると、画像形成されないことがある。
【0341】
また、酸架橋層としては、上述した以外にも、特開平8−276558号公報に記載されているフェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特開平7−306528号公報に記載されているジアゾニウム化合物を含有するネガ型記録材料、特開平10−203037号公報に記載されている環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架橋反応を利用したネガ型画像形成材料等を用いることもできる。
【0342】
つぎに、(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子と(J)親水性高分子マトリックスとを用いる感熱層に用いられる各化合物について以下に述べる。
(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子
疎水性熱溶融性樹脂微粒子(以下「微粒子ポリマー」という。)は、微粒子ポリマー同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散するものがより好ましい。
微粒子を形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル;それらの共重合体のラテックス等が好ましいものとして挙げられる。
親水性表面を有する微粒子ポリマーは、微粒子を構成するポリマー自体が親水性であるもの、ポリマーの主鎖または側鎖に親水性基を導入して親水性を付与したもの等のポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマー、親水性オリゴマーまたは親水性低分子化合物を、微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0343】
微粒子ポリマーの他の好ましい特性として、画像部の膜強度を向上させるという観点から、微粒子ポリマーが熱反応性官能基を有するポリマーにより構成されることが挙げられる。
前記熱反応性官能基としては、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等);付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等);付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基;縮合反応を行うカルボキシ基とヒドロキシ基またはアミノ基;開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基またはヒドロキシ基等を挙げることができる。しかし、加熱により化学結合が形成される機能を有するものであれば、どのような反応を行う官能基でもよい。これらの熱反応性官能基の微粒子ポリマーへの導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0344】
微粒子ポリマーの含有量は、感熱層の全固形分に対して、50質量%以上であるのが好ましく、60〜95質量%であるのがより好ましい。
【0345】
感熱層に、上記のような熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーを用いる場合は、必要に応じて、これらの反応を開始しまたは促進する化合物を添加してもよい。反応を開始しまたは促進する化合物としては、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物を挙げることができる。具体的には、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩またはジフェニルヨードニウム塩等を含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナート等が挙げられる。
これらの化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1〜20質量%であるのが好ましく、3〜10質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像する場合にも機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られる。
【0346】
(J)親水性高分子マトリックス
上記微粒子ポリマーは、親水性樹脂からなるマトリックス中に分散させることで、機上現像する場合には機上現像性が良好となり、更に感熱層自体の皮膜強度も向上する。
親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル等の親水基を有するものが好ましい。
【0347】
親水性樹脂の具体例としては、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。
【0348】
親水性樹脂の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像する場合にも良好な機上現像性が得られ、また、良好な皮膜強度が得られる。
【0349】
このような(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子と(J)親水性高分子マトリックスとを用いる感熱層に、上述した(A)赤外線吸収剤を含有させることにより、赤外線レーザ照射等による画像記録が可能となる。
用いられる赤外線吸収剤は先に例示したものと同様であり、赤外線吸収剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、30質量%以下であるのが好ましく、5〜25質量%であるのがより好ましく、7〜20質量%であるのが更に好ましい。上記範囲内であると、良好な感度が得られる。
【0350】
(K)その他の成分
サーマルネガタイプの感熱層は、上記各成分のほかに、必要に応じて、更に、種々の化合物を添加してもよい。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も着色剤として好適に用いることができる。これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。着色剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましい。
【0351】
また、感熱層が光重合層である場合、塗布液の調製中または保存中において、ラジカル重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが好ましい。
好適な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合防止剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0352】
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0353】
更に、感熱層は、必要に応じて、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を含有することができる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0354】
上記感熱層を設けて本発明の平版印刷版原版を得るには、上記各成分を溶媒に溶かして、平版印刷版用支持体上に塗布すればよい。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。溶媒は、単独でまたは混合して使用される。溶媒中の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0355】
感熱層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報および特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報および特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0356】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0357】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業社製)等が挙げられる。
【0358】
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感熱層塗布液中に占める割合は、それぞれ感熱層の全固形分に対して、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0359】
また、塗布し乾燥させて得られる感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、通常、0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大きくなるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。
【0360】
<無処理タイプ>
無処理タイプの感熱層は、熱可塑性微粒子ポリマー、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、および、スルホン酸発生ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分を含有する。
【0361】
熱可塑性微粒子ポリマーとしては、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号、同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーを好適なものとして挙げることができる。
具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等のモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。中でも、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを用いるのが好ましい。
【0362】
スルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマー等を挙げることができる。
【0363】
しかし、特に好ましいのは、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーおよび熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルである。
これらに共通に用いられる熱反応性官能基としては、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等);付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等);付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基;縮合反応を行うカルボキシ基とヒドロキシ基またはアミノ基;開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基またはヒドロキシ基等を挙げることができる。しかし、加熱により化学結合が形成される機能を有するものであれば、どのような反応を行う官能基でもよい。
【0364】
このような熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーとしては、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、酸無水物;それらを保護した基を有するものを挙げることができる。これらの基のポリマー粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0365】
重合時に導入する場合は、これらの基を有するモノマーを乳化重合し、または懸濁重合するのが好ましい。
そのような基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレートまたはそのアルコール等によるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチルアクリレートまたはそのアルコール等によるブロックイソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレート等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル等を挙げることができるが、熱反応性官能基を有しないモノマーであれば、これらに限定されない。
熱反応性官能基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0366】
上記熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの中でも、微粒子ポリマー同士が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で、水に分散するものが、特に好ましい。微粒子ポリマーのみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した時の皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度よりも高い温度で乾燥して作製した時の皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このように微粒子ポリマー表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマーもしくはオリゴマー、または親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてやればよいが、その方法はこれらに限定されるものではない。
【0367】
熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの凝固温度は、70℃以上であるのが好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上であるのがより好ましい。
熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのが更に好ましい。平均粒径が大きすぎると解像度が悪くなり、また、小さすぎると経時安定性が悪くなってしまう。
【0368】
熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの含有量は、感熱層の全固形分に対して、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。
【0369】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、上記熱反応性官能基を有する化合物を内包している。この熱反応性官能基を有する化合物としては、重合性不飽和基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、酸無水物、アミノ基、 エポキシ基およびイソシアネート基ならびにそのブロック体から選ばれた少なくとも一個の官能基を有する化合物を挙げることができる。
【0370】
重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく、このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらの化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体およびオリゴマーもしくはそれらの混合物またはそれらの共重合体が挙げられる。
【0371】
重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)、そのエステルおよびアミドが挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルおよび不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが挙げられる。
また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたは不飽和カルボン酸アミドと、単官能もしくは多官能イソシアネートまたはエポキシドとの付加反応物、および、単官能または多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に挙げられる。
また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能または多官能のアルコール、アミンおよびチオールとの付加反応物、更に、ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能または多官能アルコール、アミンおよびチオールとの置換反応物も好適に挙げられる。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸またはクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
【0372】
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルである、重合性不飽和基を有する化合物のモノマーの具体例としては、フォトポリマータイプの感光層に用いられるエチレン性不飽和結合含有化合物として上記に例示した、各アクリル酸エステル、各メタクリル酸エステル、各イタコン酸エステル、各クロトン酸エステル、各イソクロトン酸エステルおよび各マレイン酸エステルが挙げられる。
【0373】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号および特開昭57−196231号の各公報に記載されている脂肪族アルコール系エステル類、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号および特開平2−226149号の各公報に記載されている芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載されているアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0374】
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等を挙げることができる。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報に記載されているシクロへキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0375】
また、重合性不飽和基を有する化合物として、イソシアネート基とヒドロキシ基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適に用いられ、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(I)で示されるヒドロキシ基を有する不飽和モノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性不飽和基を含有するウレタン化合物等が挙げられる。
【0376】
CH2 =C(R1 )COOCH2 CH(R2 )OH (I)
(上記式(I)中、R1 およびR2 は、それぞれHまたはCH3 を示す。)
【0377】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号および特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレートや、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号および特公昭62−39418号の各公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適なものとして挙げることができる。
【0378】
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号および特開平1−105238号の各公報に記載されている、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物を好適なものとして挙げることができる。
【0379】
その他の好適なものの例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号および同52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシアクリレート類等の多官能の(メタ)アクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号および同1−40336号の各公報に記載されている特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載されているビニルホスホン酸系化合物等も好適なものとして挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載されているペルフルオロアルキル基を含有する化合物も好適に使用される。更に、日本接着協会誌、20巻7号、p.300−308(1984年)に、光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも好適に使用することができる。
【0380】
エポキシ基を有する化合物としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはポリフェノール類またはそれらの水素添加物のポリグリシジルエーテル等が好適に挙げられる。
【0381】
イソシアネート基を有する化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート;それらをアルコールまたはアミンでブロックした化合物が好適に挙げられる。
【0382】
アミノ基を有する化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン等が好適に挙げられる。
【0383】
ヒドロキシ基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類等が好適に挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸等の脂肪族多価カルボン酸等が好適に挙げられる。
酸無水物を有する化合物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が好適に挙げられる。
【0384】
エチレン性不飽和結合を有する化合物の共重合体としては、アリルメタクリレートの共重合体が好適に挙げられる。具体的には、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0385】
熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの製造方法としては、公知の方法が適用できる。例えば、マイクロカプセルの製造方法として、米国特許第2,800,457号明細書および同第2,800,458号明細書に記載されているコアセルベーションを利用した方法、英国特許990,443号明細書、米国特許第3,287,154号明細書、特公昭38−19574号、同42−446号および同42−711号の各公報に記載されている界面重合法による方法、米国特許第3,418,250号明細書および同第3,660,304号明細書に記載されているポリマーの析出による方法、米国特許第3,796,669号明細書に記載されているイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3,914,511号に記載されているイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4,001,140号、同第4,087,376号および同第4,089,802号の各明細書に記載されている尿素−ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4,025,445号明細書に記載されているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報および同51−9079号公報に記載されているモノマー重合によるin situ法、英国特許第930,422号明細書および米国特許第3,111,407号明細書に記載されているスプレードライング法、英国特許第952,807号明細書および同第967,074号明細書に記載されている電解分散冷却法等を用いることができる。
【0386】
熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルに用いられるマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものであるのが好ましい。この観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはこれらの混合物が好ましく、中でも、ポリウレアおよび/またはポリウレタンがより好ましい。上記マイクロカプセル壁には、上記熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0387】
熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが更に好ましい。平均粒径が大きすぎると解像度が悪くなり、また、小さすぎると経時安定性が悪くなってしまう。
【0388】
このような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルは、マイクロカプセル同士が熱により合体するものであってもよいし、合体しないものであってもよい。要は、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面またはマイクロカプセル外に滲み出したもの、または、マイクロカプセル壁に浸入したものが、熱により化学反応を起こせばよい。また、添加された親水性樹脂、または、添加された低分子化合物と反応してもよい。また、2種以上のマイクロカプセルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士を反応させてもよい。
したがって、熱によってマイクロカプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0389】
感熱層における熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの含有量は、感熱層の全固形分に対して、10〜60質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度および耐刷性が得られる。
【0390】
熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを感熱層に含有させる場合、内包物を溶解させることができ、かつ、壁材を膨潤させることができる溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物のマイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤の選択は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレアやポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
【0391】
具体的には、メタノール、エタノール、第三ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられるが、本発明はこれらに限られない。また、これらの溶剤を2種以上用いてもよい。
【0392】
また、マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。その添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが有効であり、10〜90質量%であるのが好ましく、15〜85質量%であるのがより好ましい。
【0393】
無処理タイプの感熱層が、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーおよび/または熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有する場合には、必要に応じて、これらの反応を開始させまたは促進させる化合物を添加してもよい。反応を開始させまたは促進させる化合物としては、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物を挙げることができる。例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、オニウム塩(ジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩等)、アシルホスフィン、イミドスルホナート等が挙げられる。
これらの化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1〜20質量%であるのが好ましく、3〜10質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られる。
【0394】
無処理タイプの感熱層には親水性樹脂を含有させてもよい。親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜強度も向上する。また、親水性樹脂を架橋硬化させて、現像処理不要の平版印刷版原版を得ることができる。
親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するものや、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
【0395】
親水性樹脂の具体的としては、フォトポリマータイプの感光層に用いられる(J)親水性高分子マトリックスとして用いられる親水性樹脂として列挙したものが挙げられる。
【0396】
また、上記親水性樹脂は、架橋硬化させて用いてもよい。親水性樹脂を架橋硬化させる耐水化剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアルデヒド類;N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂等のメチロール化合物;ジビニルスルホン、ビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)等の活性ビニル化合物;エピクロルヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミド・ポリアミン・エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等のエポキシ化合物;モノクロル酢酸エステル、チオグリコール酸エステル等のエステル化合物;ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物等のポリカルボン酸類;ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩等の無機系架橋剤;変成ポリアミドポリイミド樹脂等が挙げられる。
そのほかに、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用することができる。
【0397】
無処理タイプの感熱層においては、親水性樹脂の中でも、ゾルゲル変換系結着樹脂を用いるのが好ましい。以下、詳細に説明する。
無処理タイプの感熱層に好適に用いられるゾルゲル変換系結着樹脂としては、多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状構造を形成し、かつ、多価元素が未結合のヒドロキシ基、アルコキシ基等も有していて、これらが混在した樹脂状構造となっている高分子体であって、ヒドロキシ基、アルコキシ基等が多い段階ではゾル状態であり、エーテル結合化が進行するのに伴って網目状の樹脂構造が強固となるような高分子体が挙げられる。
【0398】
ゾルゲル変換系結着樹脂は、樹脂組織の親水性度が変化する性質に加えて、ヒドロキシ基等の一部が固体微粒子に結合することによって固体微粒子の表面を修飾し、親水性度を変化させる働きをも併せ持っている。
ゾルゲル変換を行うヒドロキシ基、アルコキシ基等を有する多価元素は、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。中でも、ケイ素を用いるシロキサン結合によるゾルゲル変換系が好ましい。以下、シロキサン結合によるゾルゲル変換系について説明するが、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等を用いるゾルゲル変換系は、下記の説明のケイ素をそれぞれの元素に置き換えて実施することができる。
【0399】
シロキサン結合によるゾルゲル変換系は、ゾルゲル変換が可能な、少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を含む系である。
【0400】
ゾルゲル変換によって形成される無機親水性結着樹脂は、好ましくはシロキサン結合およびシラノール基を有する樹脂である。無処理タイプの感熱層は、少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を含むゾルの系である塗布液を平版印刷版用支持体に塗布し、塗布後、シラノール基の加水分解縮合が進んでシロキサン骨格の構造が形成され、ゲル化が進行することによって形成される。
また、このゾルゲル変換系によって形成される感熱層は、膜強度、柔軟性等の物理的性能の向上や、塗布性の改良等を目的として、後述する有機親水性ポリマー、架橋剤等を含有することもできる。
【0401】
ゲル構造を形成するシロキサン樹脂は、下記一般式(I)で表され、また、少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物は、下記一般式(II)で表される。また、感熱層に含まれる物質系は、必ずしも一般式(II)で表されるシラン化合物単独である必要はなく、一般に、シラン化合物が部分加水分解により重合したオリゴマーからなっていてもよく、シラン化合物とそのオリゴマーの混合組成からなっていてもよい。
【0402】
【化22】
Figure 0003739695
【0403】
上記一般式(I)のシロキサン系樹脂は、下記一般式(II)で示されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形成され、一般式(I)中のR01〜R03の少なくとも一つはヒドロキシ基を表し、他は下記一般式(II)中の記号のR0 およびYから選ばれる有機残基を表す。i、jおよびkは、それぞれ独立に、0以上の整数を表すが、これらの合計が0となることはない。
【0404】
(R0 n Si(Y)4-n (II)
【0405】
上記一般式(II)中、R0 はヒドロキシ基、炭化水素基またはヘテロ環基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR1 、−OCOR2 または−N(R3 )(R4 )を表す。R1 およびR2 は、それぞれ炭化水素基を表す。R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。nは、0〜3の整数を表す。
【0406】
上記一般式(II)中のR0 の炭化水素としては、例えば、炭素数1〜12の置換されていてもよい直鎖状または分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等)、炭素数2〜12の置換されていてもよい直鎖状または分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等)、炭素数7〜14の置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等)、炭素数5〜10の置換されていてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)が挙げられる。
【0407】
これらに用いられる置換基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を表す。以下同じ。)、−OCOR′基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″′)基(R″およびR″′は、それぞれ独立に、水素原子またはR′を表す。以下同じ。)、−NHCONHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3 基(ただし、三つのR′は、同一であっても、異なっていてもよい。)、−CONHR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。
上記アルキル基等は、複数の上記置換基により置換されてもよい。その場合、複数の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0408】
上記一般式(II)中のR0 のヘテロ環基としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環していてもよいヘテロ環基が挙げられる。
ヘテロ環としては、例えば、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。置換基としては、上記アルキル基等に用いられる置換基と同様のものを用いることができる。また、上記ヘテロ環基は、複数の上記置換基により置換されてもよい。その場合、複数の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0409】
上記一般式(II)中のYの−OR1 基のR1 としては、例えば、炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基を表す。このような脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキソ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキサプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる。
【0410】
上記一般式(II)中のYの−OCOR2 基のR2 としては、例えば、R1 と同一の内容の脂肪族基、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基が挙げられる。このような芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0411】
上記一般式(II)中のYの−N(R3 )(R4 )基のR3 およびR4 の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基が挙げられる。このような脂肪族基としては、上記R1 と同様の内容のものが挙げられる。
3 およびR4 の炭素数の総和が16以内であるのが好ましい。
上記一般式(II)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0412】
即ち、例えば、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロピルシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0413】
無機親水性結着樹脂の形成には、上記一般式(II)で示されるシラン化合物とともに、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合して成膜可能な金属化合物を併用することができる。
このような金属化合物としては、例えば、Ti(OR′)4 、TiCl4 、Zn(OR′)2 、Zn(CH3 COCHCOCH3 2 、Sn(OR′)4 、Sn(CH3 COCHCOCH3 4 、Sn(OCOR′)4 、SnCl4、Zr(OR′)4 、Zr(CH3 COCHCOCH3 4 、Al(OR′)3 、Al(CH3 COCHCOCH3 3 等が挙げられる。
【0414】
更に、一般式(II)で示されるシラン化合物、および、それと併用することができる上記金属化合物の加水分解反応および重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましい。
触媒は、酸もしくは塩基性化合物をそのままで、または、水、アルコール等の溶媒に溶解させた状態として用いることができる(以下、酸を用いるものを「酸性触媒」、塩基性化合物を用いるものを「塩基性触媒」という。)。溶媒に溶解させる場合の濃度は、特に限定されないが、濃度が濃い方が加水分解反応および重縮合反応の速度が速くなる傾向がある。ただし、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成することがあるため、塩基性触媒の濃度(水溶液での濃度換算)は1N以下であるのが好ましい。
【0415】
酸性触媒および塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒が好ましい。具体的には、酸性触媒としては、ハロゲン化水素(例えば、塩酸)、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸)、構造式RCOOHで表されるカルボン酸のRに置換基を有する置換カルボン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸)等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、アンモニア性塩基(例えば、アンモニア水)、アミン類(例えば、エチルアミン、アニリン)等が挙げられる。
【0416】
上述したように、無処理タイプの感熱層としては、ゾル−ゲル法によって作成される感熱層(親水性樹脂としてゾルゲル変換系結着樹脂を含有させた感熱層)が好ましい。上記ゾル−ゲル法の詳細は、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記載されている。
【0417】
親水性樹脂の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜70質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、良好な機上現像性および皮膜強度が得られる。
【0418】
無処理タイプの感熱層には、光熱変換物質を添加することが必要である。光熱変換物質は、波長700nm以上の光を吸収する物質であればよく、種々の顔料、染料および金属微粒子を用いることができる。
【0419】
前記顔料としては、市販の顔料、ならびに、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料を利用することができる。具体的には、例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される光熱変換物質として、上記に例示した顔料が挙げられる。
【0420】
これらの顔料は、サーマルポジタイプの感熱層に含有される顔料と同様に、表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。
【0421】
中でも、赤外線を吸収する顔料が、赤外線を発光するレーザの利用に適する点で好ましい。このような赤外線を吸収する顔料としては、カーボンブラックが好ましく、中でも、水溶性または親水性の樹脂と分散しやすく、かつ、親水性を損わないように、親水性樹脂やシリカゾルで表面がコートされたカーボンブラックが特に好ましい。
顔料の粒径は、0.01μm〜1μmの範囲にあることが好ましく、0.01μm〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。
【0422】
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料等の染料が挙げられる。中でも、赤外線を吸収する染料が、赤外線を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
【0423】
赤外線を吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号の各公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号の各公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号の各公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム染料、英国特許434,875号明細書に記載されているシアニン染料や米国特許第4,756,993号明細書に記載されている染料、米国特許第4,973,572号明細書に記載されているシアニン染料、特開平10−268512号公報に記載されている染料を挙げることができる。
【0424】
また、染料として、米国特許第5,156,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン染料、米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩等、特公平5−13514号公報および同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物;Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125(いずれもエポリン社製)等も好適に用いられる。
中でも、特に好ましい染料は水溶性染料であり、以下に具体例を構造式で列挙する。
【0425】
【化23】
Figure 0003739695
【0426】
【化24】
Figure 0003739695
【0427】
【化25】
Figure 0003739695
【0428】
【化26】
Figure 0003739695
【0429】
【化27】
Figure 0003739695
【0430】
【化28】
Figure 0003739695
【0431】
【化29】
Figure 0003739695
【0432】
【化30】
Figure 0003739695
【0433】
前記金属微粒子としては、光熱変換性で光照射によって熱融着する金属微粒子であれば特に限定されないが、8〜11族(第VIII族および第IB族)に属する金属の単体または合金の微粒子であるのが好ましく、Ag、Au、Cu、PtおよびPdから選ばれる金属の単体または合金の微粒子であるのがより好ましい。
金属微粒子は、分散安定剤を含む水溶液に上記金属の塩または錯塩の水溶液を添加し、更に還元剤を添加して金属コロイドとした後、不要な塩類を除去して用いられる。
【0434】
分散安定剤としては、例えば、クエン酸、シュウ酸等のカルボン酸およびその塩;PVP、PVA、ゼラチン、アクリル樹脂等のポリマーが挙げられる。
還元剤としては、例えば、卑金属塩(例えば、FeSO4 、SnSO4 )、水素化ホウ素化合物、ホルマリン、デキストリン、ブドウ糖、ロッセル塩、酒石酸、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸塩が挙げられる。
金属コロイドの平均粒子径は、1〜500nmであるのが好ましく、1〜100nmであるのがより好ましく、1〜50nmであるのが更に好ましい。その分散度は多分散でもよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好ましい。
不要な塩類を除去する方法としては、例えば、限外ろ過法;コロイド分散系にメタノールと水との混合溶液またはエタノールと水との混合溶液を添加して、自然沈降させ、または遠心沈降させて、その上澄み液を除去する方法が挙げられる。
【0435】
光熱変換物質の含有量は、顔料または染料の場合、感熱層の全固形分に対して、30質量%以下であるのが好ましく、5〜25質量%であるのがより好ましく、7〜20質量%であるのが更に好ましい。また、金属微粒子の場合、感熱層の全固形分の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、20質量%以上であるのが更に好ましい。金属微粒子の含有量が5質量%未満であると、感度が低くなってしまう場合がある。
【0436】
無処理タイプの感熱層には、必要に応じて、上述した成分以外に、種々の化合物を含有することができる。例えば、耐刷性を一層向上させるために多官能モノマーを感熱層のマトリックス中に含有させることができる。このような多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に内包されるモノマーとして例示したものを用いることができる。特に好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレートを挙げることができる。
【0437】
また、無処理タイプの感熱層には、画像形成後、画像部と非画像部との区別をつけやすくするため、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)、特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタン等の顔料も、同様に好適に用いることができる。
これらの含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましい。
【0438】
また、無処理タイプの感熱層がエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する場合、その不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが好ましい。
好適な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合防止剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0439】
また、無処理タイプの感熱層には、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0440】
更に、無処理タイプの感熱層は、必要に応じて、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を含有することができる。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0441】
また、無処理タイプの感熱層は、無機微粒子を含有することができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム等が挙げられる。これらは光熱変換性ではなくても、皮膜の強化、感熱層の表面粗面化による界面接着性の強化等の効果を奏する。
無機微粒子の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1.0〜70質量%であるのが好ましく、5.0〜50質量%であるのがより好ましい。1%以下であると期待される効果が小さく、また、70質量%以上であると本来必要な光熱変換物質の含有量が制約される場合がある。
【0442】
また、無処理タイプの感熱層は、親水性ゾル状粒子を含有することができる。親水性ゾル状粒子としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、酸化マグネシウムゾル、炭酸マグネシウムゾル、アルギン酸カルシウムゾルが好適に挙げられる。中でも、シリカゾル、アルミナゾル、アルギン酸カルシウムゾルまたはこれらの混合物が好ましい。これらは光熱変換性ではなくても、親水性の向上、ゾルゲル膜の強化等の効果を奏する。
【0443】
シリカゾルは、表面に多くのヒドロキシ基を有し、内部はシロキサン結合(−Si−O−Si)で構成されている。シリカゾルは、粒子径1〜100nmのシリカ超微粒子が、水または極性溶媒の中に分散したものであり、コロイダルシリカとも称されている。シリカゾルの詳細は、加賀美敏郎、林瑛監修「高純度シリカの応用技術」第3巻、(株)シーエムシー(1991年)に記載されている。
アルミナゾルは、5〜200nmのコロイドの大きさを有するアルミナ水和物(ベーマイト系)であり、水中の陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン等のハロゲンイオン、酢酸イオン(acetate)等のカルボン酸アニオン(carboxylato)等)を安定剤としてアルミナが分散されたものである。
これらの親水性ゾル状粒子は、いずれも、市販品として容易に入手することができる。
【0444】
上記親水性ゾル状粒子の平均粒径は、10〜50nmであるのが好ましく、10〜40nmであるのがより好ましい。親水性ゾル状粒子の粒径が上記範囲内であると、親水性樹脂内において、光熱変換物質として含有される金属微粒子等や、上述した疎水性熱溶融性樹脂微粒子等の疎水性化前駆体(露光しない状態では疎水性であり、露光により疎水性となる成分)とともに安定に分散して、感熱層の膜強度を十分に保持することができ、また、レーザー光等により露光して製版し、平版印刷版として印刷したときに、非画像部へのインキの付着汚れを生じない、極めて親水性に優れたものになるという効果が得られる。
【0445】
上記光熱変換物質(好ましくはカーボンブラック、金属微粒子)と上記親水性ゾル状粒子の存在割合は、質量比で、100/0〜30/70であるのが好ましく、100/0〜40/60であるのがより好ましい。
また、光熱変換物質、疎水性化前駆体および親水性ゾル状粒子の合計の含有量は、感熱層の全固形分に対して、2〜95質量%であるのが好ましく、5〜85質量%であるのがより好ましい。
【0446】
感熱層は、通常、上記各成分を溶媒に溶かして得られる感熱層塗布液を、親水層(陽極酸化皮膜層または親水化処理後の陽極酸化皮膜層)上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの溶剤は単独でまたは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(全固形分)の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましい。
【0447】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0448】
また、感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。上記範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性が低下する。
【0449】
本発明における感熱層には、塗布性を改善するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の添加量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0450】
<バックコート層>
このようにして、本発明の平版印刷版用支持体上に、各種の画像記録層を設けて得られた本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層(以下「バックコート層」という。)を設けることができる。
バックコート層の主成分としては、ガラス転移点20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好適に用いられる。
飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸ユニットとジオールユニットとからなる。ジカルボン酸ユニットとしては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0451】
バックコート層は、更に、着色のための染料、顔料等;平版印刷版用支持体との密着性を向上させるためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸、カチオン性ポリマー等;滑り剤として通常用いられる、ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンよりなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜含有することができる。
【0452】
バックコート層の厚さは、基本的には合紙がなくとも画像記録層を傷付けにくい程度であればよく、0.01〜8μmであるのが好ましい。厚さが0.01μm以下であると、平版印刷版原版を重ねて取り扱った場合の画像記録層の擦れ傷を防ぐことが困難となる。厚さが8μmを超えると、印刷中、平版印刷版の周辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させることがある。
【0453】
バックコート層を平版印刷版原版の裏面に被覆するには種々の方法を適用することができる。例えば、上記各成分を適当な溶媒の溶液にして、または乳化分散液にして、塗布し乾燥させる方法、あらかじめフィルム状に成形したものを接着剤や熱で貼り合わせる方法、溶融押し出し機で溶融皮膜を形成し、貼り合わせる方法等が挙げられる。
中でも、上述した塗布量を確保するうえで好ましいのは、溶液にして塗布し乾燥させる方法である。溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独でまたは混合して用いられる。塗布の方式および条件としては、画像記録層を塗布する方式および条件の多くを利用することができる。即ち、例えば、コーティングロッドを用いる方法、エクストルージョン型コーターを用いる方法、スライドビードコーターを用いる方法が利用できる。
バックコート層は、画像記録層を設ける前に設けてもよく、設けた後に設けてもよく、画像記録層と同時に設けてもよい。
【0454】
[露光および現像処理]
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の種類に応じて、従来公知の露光および現像処理を行って平版印刷版とすることができる。
中でも、画像記録層が少なくとも、赤外域に光吸収域がある光熱変換物質(赤外線吸収剤)を含有する場合は、デジタルデータに基づき赤外線レーザーを照射して所望の画像様に露光し、後述するようにアルカリ現像液を用いる方法で現像処理を行うのが好ましい。
このような方法で、露光および現像処理を行うと、ポジ型の平版印刷版原版(サーマルポジタイプ)の場合は、露光部の画像記録層に含有される赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部の画像記録層のみが発熱してアルカリ可溶性となり、アルカリ現像液を用いた現像処理により、露光部の画像記録層のみが除去されて所望の画像が形成される。また、ネガ型の平版印刷版原版(サーマルネガタイプ)の場合は、露光部の画像記録層に含有される赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部の画像記録層のみが発熱して酸を発生し、この酸により共存する架橋剤が架橋反応を起こし、露光部の画像記録層のみがアルカリ不溶性となる一方、未露光部の画像記録層がアルカリ現像液を用いた現像処理により除去されて、所望の画像が形成される。
また、画像記録層がコンベンショナルポジタイプである場合は、同様に、後述するアルカリ現像液を好適に用いることができる。画像記録層がコンベンショナルネガタイプである場合は、例えば、特開平3−103857号公報に記載されているような現像液を用いることができる。
【0455】
以下、上記方法の現像処理に用いられるアルカリ現像液(以下、単に「現像液」ともいう。)について説明する。
現像処理に用いられるアルカリ現像液はアルカリ性水溶液であり、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択して用いることができるが、ケイ酸アルカリまたは非還元糖と、塩基とを含有するアルカリ水溶液が好適に挙げられ、特にpH12.5〜14.0のものがより好適に挙げられる。
【0456】
ケイ酸アルカリは、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等のアルカリ金属ケイ酸塩;ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0457】
ケイ酸アルカリを用いるアルカリ水溶液においては、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2 とアルカリ酸化物M2 O(Mはアルカリ金属またはアンモニウム基を表す。)との混合比率および濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
中でも、酸化ケイ素SiO2 とアルカリ酸化物M2 Oとの混合比率(SiO2 /M2 O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。SiO2 /M2 Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷版原版に用いられるアルミニウム板をエッチングしてしまうという弊害が生じることがあり、また、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0458】
また、上記アルカリ水溶液におけるケイ酸アルカリの濃度は、1〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましく、4〜7質量%であるのが更に好ましい。濃度が1質量%未満であると、現像性および処理能力が低下することがあり、また、10質量%を超えると、沈殿や結晶を生成しやすくなり、更に廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0459】
非還元糖と塩基とを含有するアルカリ水溶液において、「非還元糖」とは、遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味する。非還元糖は、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類と、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体と、糖類に水素添加して還元した糖アルコールとに分類され、これらのいずれも好適に用いることができる。
【0460】
上記トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロースが挙げられる。
上記配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。
上記糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット等;二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)等が挙げられる。上述した非還元糖の中でも、糖アルコール、サッカロースが好ましく、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ水溶液における非還元糖の含有量は、0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
【0461】
上記ケイ酸アルカリまたは上記非還元糖と組み合わせて用いられる塩基としては、従来公知のアルカリ剤を適宜選択することができる。
アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ剤としては、更に、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も好適に挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0462】
中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらを用いると、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。
また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0463】
アルカリ現像液は、上述したアルカリ水溶液に、界面活性剤を含有させて得られる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0464】
初めに、ノニオン界面活性剤について詳細に説明する。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、下記一般式(I)で表される非イオン性化合物が好適に挙げられる。
A−W (I)
上記一般式(I)中、Aは、A−HのlogPが1.5以上である疎水性有機基を表す。Wは、W−HのlogPが1.0未満である非イオン性の親水性有機基を表す。ここで、logPとは、C.Hansch,A.Leo,“Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology”,J.Wile & Sons(1979)に記載されているように、疎水性パラメータとして一般的に使用されるものであり、目的とする分子(A−HおよびW−H)のオクタノール/水の2層系に対して、各層に分配される割合から算出した平衡濃度比Pの対数として定義される。ここでは、上記一般式(I)中のAおよびWの各基を特定する指標として使用しており、AおよびWの各有機基に便宜的に水素原子結合させた、A−H構造およびW−H構造に対して、A.K.Ghoseet.al,J.Comput.Chem.9,80(1988)に記載されている方法に基づき、既知データより計算し、求めたものである。
【0465】
具体的な構造としては、有機基AおよびWは、互いに異なり、それぞれ上述のlogPを満足する1価の有機残基を表す。このような有機残基は、互いに同じであってもよく異なっていてもよい置換基(例えば、ハロゲン原子)を有していてもよく、かつ、不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、カルボキシラート基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、シアノ基またはニトロ基を表す。
【0466】
置換基を有していてもよく、かつ、不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基としては、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基が挙げられる。
【0467】
アルキル基は、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が好適に挙げられる。
その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基が挙げられる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、または、炭素原子数5から10までの環状のアルキル基が好ましい。
【0468】
置換アルキル基は、置換基とアルキレン基との結合により構成される。
置換アルキル基に用いられる置換基としては、水素以外の1価の非金属原子団が用いられる。置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、
【0469】
アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、
【0470】
アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基およびその共役塩基基(以下「カルボキシラート基」という。)、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、
【0471】
アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3 H)およびその共役塩基基(以下「スルホナト基」という。)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、
【0472】
N−アシルスルファモイル基およびその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2 NHSO2 −(alkyl))およびその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2 NHSO2 −(aryl))およびその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2 −(alkyl))およびその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2 −(aryl))およびその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(O−(alkyl))3 )、アリーロキシシリル基(−Si(O−(aryl))3 )、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3 )およびその共役塩基基、
【0473】
ホスホノ基(−PO 32 )およびその共役塩基基(以下「ホスホナト基」という。)、ジアルキルホスホノ基(−PO3 −(alkyl)2 )、ジアリールホスホノ基(−PO3 −(aryl)2 )、アルキルアリールホスホノ基(−PO3 (−(alkyl))−(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3 H−(alkyl))およびその共役塩基基(以下「アルキルホスホナト基」という。)、モノアリールホスホノ基(−PO3 H−(aryl))およびその共役塩基基(以下「アリールホスホナト基」という。)、ホスホノオキシ基(−OPO 32 )およびその共役塩基基(以下「ホスホナトオキシ基」という。)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3 −(alkyl)2 )、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3 −(aryl)2 )、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3 (−(alkyl))−(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3 H−(alkyl))およびその共役塩基基(以下「アルキルホスホナトオキシ基」という。)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3 H−(aryl))およびその共役塩基基(以下「アリールホスホナトオキシ基」という。)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0474】
上記アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基が挙げられる。
【0475】
上記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基が挙げられる。
上記アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基、フェニルエチニル基が挙げられる。
上記アシル基(R4 CO−)の具体例としては、R4 が水素原子または上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基もしくはアルキニル基である基が挙げられる。
【0476】
置換アルキル基に用いられるアルキレン基としては、上述した炭素数1から20までのアルキル基の水素原子のいずれか一つを除し、2価の有機残基としたものが挙げられ、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状または炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基が好適に挙げられる。
好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、
【0477】
【化31】
Figure 0003739695
【0478】
ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基が挙げられる。
【0479】
アリール基としては、例えば、1〜3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものが挙げられる。その具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基が挙げられる。これらの中では、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0480】
置換アリール基は、置換基がアリール基に結合したものであり、上記アリール基の環形成炭素原子上に、置換基として水素以外の1価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、置換アルキル基における置換基が挙げられる。
置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、
【0481】
スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基が挙げられる。
【0482】
アルケニル基としては、例えば、置換アルキル基の置換基として上述したものが挙げられる。
置換アルケニル基は、置換基が上記アルケニル基に結合したものである。好ましい置換基の例としては、上述した置換アルキル基における置換基が挙げられる。
置換アルケニル基の好ましい具体例としては、
【0483】
【化32】
Figure 0003739695
【0484】
が挙げられる。
【0485】
アルキニル基としては、例えば、置換アルキル基の置換基として上述したものが挙げられる。
置換アルキニル基は、置換基が上記アルキニル基に結合したものである。好ましい置換基の例としては、上述した置換アルキル基における置換基が挙げられる。
【0486】
ヘテロ環基は、ヘテロ環上の水素を一つ除した1価の基、および、この1価の基から更に水素を一つ除し、上述の置換アルキル基における置換基が結合してできた1価の基である。
好ましいヘテロ環の例としては、
【0487】
【化33】
Figure 0003739695
【0488】
【化34】
Figure 0003739695
【0489】
が挙げられる。
【0490】
置換オキシ基(R5 O−)としては、R5 が水素以外の1価の非金属原子団であるものを用いることができる。
好ましい置換オキシ基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基が挙げられる。
【0491】
これらの置換オキシ基に置換基として用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリール基が挙げられる。また、これらの置換オキシ基に置換基として用いられるアシル基(R6 CO−)としては、R6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であるのものが挙げられる。
上記置換オキシ基の中では、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基が好ましい。
【0492】
好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシが挙げられる。
【0493】
置換チオ基(R7 S−)としては、R7 が水素以外の1価の非金属原子団であるものを用いることができる。
好ましい置換チオ基の例としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アシルチオ基が挙げられる。
【0494】
これらの置換チオ基に置換基として用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリール基が挙げられる。また、これらの置換チオ基に置換基として用いられるアシル基(R6 CO−)としては、R6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であるのものが挙げられる。
上記置換チオ基の中では、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
【0495】
好ましい置換チオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、エトキシエチルチオ基、カルボキシエチルチオ基、メトキシカルボニルチオ基が挙げられる。
【0496】
置換アミノ基(R8 NH−,(R9 )(R10)N−)としては、R8 、R9 およびR10が、それぞれ水素以外の1価の非金属原子団のものを用いることができる。
置換アミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基が挙げられる。
【0497】
これらの置換アミノ基に置換基として用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリール基が挙げられる。また、これらの置換アミノ基に置換基として用いられるアシル基(R6 CO−)としては、R6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であるのものが挙げられる。
上記置換アミノ基の中では、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、アシルアミノ基が好ましい。
【0498】
好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基が挙げられる。
【0499】
置換カルボニル基(R11−CO−)としては、R11が水素以外の1価の非金属原子団であるものを用いることができる。
置換カルボニル基の好ましい例としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基が挙げられる。
【0500】
これらの置換カルボニル基に置換基として用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリール基が挙げられる。また、アシル基(R6 CO−)としては、R6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基であるのものが挙げられる。
上記置換カルボニル基の中では、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基が好ましく、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基がより好ましい。
【0501】
好ましい置換カルボニル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基が挙げられる。
【0502】
置換スルフィニル基(R12−SO−)としては、R12が水素以外の1価の非金属原子団であるものを用いることができる。
置換スルフィニル基の好ましい例としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基が挙げられる。
これらの置換スルフィニル基に置換基として用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリール基が挙げられる。
上記置換スルフィニル基の中では、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基が好ましい。
好ましい置換スルフィニル基の具体例としては、へキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基が挙げられる。
【0503】
置換スルホニル基(R13−SO2 −)としては、R13が水素原子以外の1価の非金属原子団であるものを用いることができる。
置換スルホニル基の好ましい例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が挙げられる。
これらの置換スルホニル基に置換基として用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリール基が挙げられる。
好ましい置換スルホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基が挙げられる。
【0504】
スルホナト基(−SO3 −)は、上述したように、スルホ基(−SO3 H)の共役塩基陰イオン基を意味する。スルホナト基は、通常、対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、金属イオン類(Na+ 、K+ 、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0505】
カルボキシラート基(−CO2 −)は、上述したように、カルボキシ基(−CO2 H)の共役塩基陰イオン基を意味する。カルボキシラート基は、通常、対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。対陽イオンは、スルホナト基の場合と同様である。
【0506】
置換ホスホノ基は、ホスホノ基の有するヒドロキシ基の一つまたは二つが他の有機オキソ基によって置換されたものを意味する。
好ましい置換ホスホノ基の例としては、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。
置換ホスホノ基の中では、ジアルキルホスホノ基、ならびにジアリールホスホノ基が好ましい。
好ましい置換ホスホノ基の具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基が挙げられる。
【0507】
ホスホナト基(−PO3 2- 、−PO3 - )は、ホスホノ基(−PO3 2 )の酸第一解離または酸第二解離に由来する共役塩基陰イオン基を意味する。ホスホナト基は、通常、対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。対陽イオンは、スルホナト基の場合と同様である。
【0508】
置換ホスホナト基とは、上述した置換ホスホノ基の有するヒドロキシ基を一つ有機オキソ基に置換したものの共役塩基陰イオン基を意味する。
好ましい置換ホスホナト基としては、モノアルキルホスホノ基(−PO3 H−(alkyl))、モノアリールホスホノ基(−PO3 H−(aryl))の共役塩基が挙げられる。置換ホスホナト基は、通常、対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。対陽イオンは、スルホナト基の場合と同様である。
【0509】
上記一般式(I)中、Aが芳香族を含有する有機基であり、Wがポリオキシアルキレン基を含有する非イオン性の有機基であるのが好ましい。
【0510】
A−HおよびW−Hの具体例を以下に示す。
【0511】
【化35】
Figure 0003739695
【0512】
【化36】
Figure 0003739695
【0513】
また、上記一般式(I)で表されれる非イオン性化合物の具体例を以下に示す。
【0514】
【化37】
Figure 0003739695
【0515】
【化38】
Figure 0003739695
【0516】
【化39】
Figure 0003739695
【0517】
上記一般式(I)で表される非イオン性化合物の中でも、下記式(I−A)または(I−B)で示される化合物が好ましい。
【0518】
【化40】
Figure 0003739695
【0519】
(上記式(I−A)および(I−B)中、R1 およびR2 は、それぞれHまたは炭素数1〜100のアルキル基を表す。nおよびmは、それぞれ独立に、0〜100の整数を表す。)
【0520】
上記一般式(I−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
上記一般式(I−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
【0521】
上記一般式(I−A)または(I−B)で表される化合物のそれぞれにおいて、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数(n)は、3〜50であるのが好ましく、5〜30であるのがより好ましく、また、ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数(m)は、0〜10であるのが好ましく、0〜5であるのがより好ましい。
上記一般式(I−A)または(I−B)で表される化合物は、ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部とがランダムの共重合体であってもよく、ブロックの共重合体であってもよい。
上記一般式(I−A)または(I−B)で表されるノニオン芳香族エーテル系活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0522】
つぎに、ノニオン界面活性剤以外の界面活性剤について説明する。
アニオン界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Y−23)等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類;ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Y−24)、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Y−25)、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Y−26)、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Y−27)等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム(Y−28)等のアルキル硫酸塩類;ドデシルスルホン酸ナトリウム(Y−29)等のアルキルスルホン酸塩類;ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム(Y−30)等のスルホコハク酸エステル塩類等が挙げられる。
【0523】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド(Y−31)等の第四級アンモニウム塩類;ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類;ポリオキシエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。第四級アンモニウム塩類の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0524】
【化41】
Figure 0003739695
【0525】
(上記式中、R4 〜R7 は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を表す。X- は、酸基イオン、酸エステルイオン(例えば、R−O−SO3 - )、ハロゲンイオン、水酸化物イオン等の陰イオンを表す。)
【0526】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げられる。
アミノカルボン酸型両性界面活性剤の具体例としては、下記式で表される化合物およびその塩類が挙げられる。
【0527】
【化42】
Figure 0003739695
【0528】
(上記式中、R8 およびR9 は、それぞれ炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。d、eおよびfは、それぞれ独立に、1〜10の整数を表す。)
8 およびR9 は、それぞれ脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、直鎖であっても分岐していてもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
上記式の化合物の塩類としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0529】
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0530】
【化43】
Figure 0003739695
【0531】
(上記式中、R10〜R12は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。gは1〜10の整数を表す。)
10〜R12は、それぞれ脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、直鎖であっても分岐していてもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
【0532】
界面活性剤の含有量は、現像液中、0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜8.0質量%であるのがより好ましく、1.0〜5.0質量%であるのが更に好ましい。含有量が少なすぎると、現像性低下および感光層成分の溶解性低下を招き、逆に多すぎると、平版印刷版の耐刷性を低下させる。
【0533】
アルカリ現像液は、キレート剤を含有することができる。キレート剤としては、例えば、Na2 2 7 、Na5 3 3 、Na3 3 9 、Na2 4 P(NaO3 P)PO3 Na2 、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)等のポリリン酸塩;エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等のアミノポリカルボン酸類;2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等の有機ホスホン酸類が挙げられる。
【0534】
キレート剤の含有量は、使用される硬水の硬度およびその使用量に応じて決定されるが、使用時の現像液中、0.001〜5質量%であるのが好ましく、0.01〜1.0質量%であるのがより好ましく、0.05〜0.5質量%であるのが更に好ましい。
【0535】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の作成
(実施例1)
<アルミニウム板>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
【0536】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行うことにより行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0537】
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は10μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.48mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0538】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0539】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0540】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0541】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0542】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0543】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2 であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0544】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0545】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0546】
(j)陽極酸化処理
図4に示す構造の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、実施例1の平版印刷版用支持体を得た。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2 であった。
【0547】
(実施例2〜6および比較例1〜6)
上記(a)機械的粗面化処理において、ナイロンブラシの毛径ならびに研磨剤の種類および平均粒径を第1表に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2〜6および比較例1〜6の平版印刷版用支持体を得た。
【0548】
(実施例7)
上記(a)を行わず、かつ、上記(d)において、電気量をアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で170C/dm2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例7の平版印刷版用支持体を得た。
【0549】
(実施例8)
上記(d)の前に下記(k)プレ電解および(l)アルカリエッチング処理を行い、かつ、上記(d)において、電気量をアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で400C/dm2 とした以外は、実施例7と同様の方法により、実施例8の平版印刷版用支持体を得た。
(k)プレ電解
塩酸濃度5g/Lの水溶液を用いて、プレ電解を行った。陽極時の電気量は30C/m2 とした。
(l)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度1質量%、アルミニウムイオン濃度4.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を30℃で行い、アルミニウム板を0.8g/m2 溶解し、前段のプレ電解を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0550】
(比較例7および8)
上記(d)において、電解液および電気量を第2表に示すように変更した以外は、実施例7と同様の方法により、比較例7および8の平版印刷版用支持体を得た。
【0551】
2.平版印刷版用支持体の表面形状の測定
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面の凹部について、下記(1)〜(5)の測定を行った。
結果を第1表および第2表に示す。なお、第1表および第2表中、「−」は、該当する波長の凹部がなかったことを示す。
【0552】
(1)中波構造の平均開口径
SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率2000倍で撮影し、得られたSEM写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
【0553】
(2)小波構造の平均開口径
高分解能SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
【0554】
(3)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において開口径0.3μm以下の小波ピットを20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出した。
【0555】
(4)大波構造の平均波長
触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Sm を5回測定し、その平均値を平均波長とした。2次元粗さ測定は、以下の条件で行った。
cut off0.8、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
【0556】
(5)深さ3μm以上の凹部の数
レーザ顕微鏡(Micromap520、(株)菱化システム製)を用いて表面の400μm□を非接触で0.01μm走査して3次元データを求め、この3次元データにおいて深さ3μm以上の凹部の数を数えた。
なお、レーザ顕微鏡としては、上記で用いたもののほか、例えば、(株)KEYENCE製の超深度形状測定顕微鏡VK5800も同様に用いることができる。
【0557】
3.平版印刷版原版の作成
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、サーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原版を得た。画像記録層を設ける前には、後述するようにアルカリ金属ケイ酸塩処理による親水化処理を行った。
【0558】
上記で得られた平版印刷版用支持体を、温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽の中に10秒間浸せきさせることで、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後の平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は10mg/m2 であった。
【0559】
<下塗液組成>
・下記高分子化合物 0.2g
・メタノール 100g
・水 1g
【0560】
【化44】
Figure 0003739695
【0561】
更に、下記組成の感熱層塗布液を調製し、下塗りした平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.7g/m2 になるよう塗布し、乾燥させて感熱層(サーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
【0562】
<感熱層塗布液組成>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 1.0g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.05g
・メチルエチルケトン 12g
【0563】
【化45】
Figure 0003739695
【0564】
4.露光および現像処理
上記で得られた各平版印刷版原版には、下記の方法で画像露光および現像処理を行い、平版印刷版を得た。
平版印刷版原版を出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2 )の半導体レーザーを装備したCREO社製TrenndSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cm2 で像様露光した。なお、後述するポツ状残膜の評価のためには、版面エネルギー量を20〜140mJ/cm2 まで20mJ/cm2 おきに変えて露光を行ったサンプルを準備した。
その後、非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2 Oよりなるカリウム塩5.0質量%およびオルフィンAK−02(日信化学社製)0.015質量%を含有する水溶液1Lに下記化合物aを添加したアルカリ現像液を用いて現像処理を行った。現像処理は、上記アルカリ現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。なお、化合物aの代わりに、下記化合物bまたはcを同じ添加量で添加したアルカリ現像液を用いた場合であっても、同様に現像処理を行うことができた。
<化合物a〜c>
化合物a:C1225N(CH2 CH2 COONa)2
化合物b:C1225O(CH2 CH2 O)7
化合物c:(C6 132 CHO(CH2 CH2 O)20
【0565】
5.平版印刷版の評価
上記で得られた平版印刷版のポツ状残膜、耐汚れ性および耐刷性を下記の方法で評価した。
(1)ポツ状残膜
各版面エネルギー量で露光したサンプルの現像後の非画像部を光学顕微鏡で倍率100倍で観察し、1mm四方の面積におけるポツの有無を調べた。ポツが観察されないサンプルの版面エネルギー量の最小値により、ポツ状残膜を評価した。版面エネルギー量が小さいほどポツ状残膜が発生しにくいことを意味している。
結果を第1表および第2表に示す。
【0566】
(2)耐汚れ性
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
その結果、実施例1〜8および比較例1〜8のいずれの平版印刷版用支持体を用いた場合においても、耐汚れ性は十分であることが分かった。
【0567】
(3)耐刷性
小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
その結果、実施例1〜8および比較例1〜8のいずれの平版印刷版用支持体を用いた場合においても、20万枚印刷終了後でもベタ画像の濃度が薄くなり始めず、耐刷性は十分であることが分かった。
【0568】
第1表および第2表から明らかなように、特定波長の中波構造と特定波長の小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりの深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である本発明の平版印刷版用支持体(実施例1〜8)を用いた本発明の平版印刷版原版は、露光および現像の条件を厳しくしても、ポツ状残膜の発生が少ない。このことは、通常の条件であれば、ポツ状残膜が発生しないことを意味する。
これに対して、深さ3μm以上の凹部の数が多すぎる場合(比較例1〜8)は、ポツ状残膜の発生がある。即ち、通常の条件で露光および現像を行ったときにポツ状残膜の発生するおそれがある。
【0569】
【表1】
Figure 0003739695
【0570】
【表2】
Figure 0003739695
【0571】
【発明の効果】
以上に説明したように、表面形状に特徴を有する本発明の平版印刷版用支持体を用いれば、従来トレードオフの関係から脱しえなかった耐汚れ性と耐刷性のバランスを高い水準で維持し、かつ、露光および現像の条件を厳しくしてもポツ状残膜の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【図4】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (8)

  1. アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理および陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
    前記粗面化処理が、回転するローラ状ブラシに、平均粒径20μm以下の研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、アルミニウム板の表面を擦る機械的粗面化処理と、その後に行われる硝酸水溶液を用いた第1電気化学的粗面化処理と、その後に行われる塩酸水溶液を用いた第2電気化学的粗面化処理とを含み、
    前記平版印刷版用支持体が、前記機械的粗面化処理により形成された平均波長5〜100μmの大波構造と、前記第1電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、前記第2電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である、平版印刷版用支持体の製造方法。
  2. 前記研磨剤が平均粒径10μm以下のパミストンまたは平均粒径20μm以下のケイ砂である、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  3. 前記研磨剤が平均粒径10μm以下である、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
  4. アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理および陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
    前記粗面化処理が、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が50〜170C/dm 2 である硝酸水溶液を用いた第1電気化学的粗面化処理と、その後に行われる電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が20〜100C/dm 2 である塩酸水溶液を用いた第2電気化学的粗面化処理とを含み、
    前記平版印刷版用支持体が、前記第1電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、前記第2電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である、平版印刷版用支持体の製造方法。
  5. アルミニウム板に、少なくとも、粗面化処理および陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、
    前記粗面化処理が、塩酸水溶液を用いたプレ電解と、硝酸水溶液を用いた第1電気化学的粗面化処理と、その後に行われる塩酸水溶液を用いた第2電気化学的粗面化処理とを含み、
    前記平版印刷版用支持体が、前記第1電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、前記第2電気化学的粗面化処理により形成された平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、該表面の400μm□あたりに存在する深さ3μm以上の凹部の数が1.5個以下である、平版印刷版用支持体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用支持体の製造方法により得られる平版印刷版用支持体。
  7. 請求項に記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設けてなる平版印刷版原版。
  8. 前記画像記録層が、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジタイプの感熱層である、請求項7に記載の平版印刷版原版
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