JP4603873B2 - 平版印刷版原版および平版印刷方法 - Google Patents
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Description
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキおよび/または湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法および工程を指す。
従来の製版方法では、感光性の平版印刷版原版に対して、低照度から中照度で像様露光を行い、画像記録層における光化学反応による像様の物性変化によって画像記録を行う。これに対して、上述した高出力レーザーを用いる方法では、露光領域に極短時間に大量の光エネルギーを照射して、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換させ、その熱により、画像記録層において化学変化、相変化、形態または構造の変化等の熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に利用する。したがって、画像情報はレーザー光等の光エネルギーによって入力されるが、画像記録は光エネルギーに加えて熱エネルギーによる反応も加味された状態で行われる。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼ばれ、光エネルギーを熱エネルギーに変えることは光熱変換と呼ばれる。
このように微粒子の単なる熱融着による合体で画像を形成させる方法は、良好な機上現像性を示すものの、画像強度(支持体との密着性)が極めて弱く、耐刷性が不十分であるという問題を有していた。
また、特許文献4には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合
物とを含有する画像記録層(感光層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。
このような重合反応を用いる方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、実用的な観点から見ると、機上現像性、細線再現性および耐刷性のいずれも未だ不十分であり、実用化には至っていない。
しかし、この技術は、機上現像性は良好ではあるが、細線再現性および耐刷性は未だ不十分である。
1.粗面化処理後に陽極酸化処理を施したアルミニウム支持体上に、印刷インキ及び/または湿し水により除去可能である、赤外線吸収剤と、重合開始剤と、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物と、親水性の主鎖および疎水性セグメントのグラフト鎖を有するグラフトポリマーとを含有する画像記録層を有し、該グラフトポリマーの含有量が、該画像記録層の全固形分に対して20〜70質量%である平版印
刷版原版。
2.前記重合開始剤がオニウム塩であることを特徴とする前記1に記載の平版印刷版原版。
3.前記画像記録層中にマイクロカプセルを含むことを特徴とする前記1又は2に記載の平版印刷版原版。
4.前記1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に油性インキと水性成分とを供給して、画像記録層の赤外線未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
本発明は、上記1〜4に係る発明であるが、以下、他の事項も含めて説明している。
好なレベルにすることが可能になったと考えられる。
また、親水性主鎖/疎水性セグメントのグラフト鎖のグラフトポリマーが果たす作用機構は、明確ではないが、該グラフトポリマーが存在することにより、画像記録層中で親水性パートと疎水性パートとが局在化し、画像記録層未露光部では、局在化した親水性パートによって水の浸透性が上がるため機上現像性が向上し、画像記録層露光部では、親水性パートの周囲も重合硬化が起こるため水の浸透性が抑制され、良好な画像が形成されると推定される。また、グラフトポリマー中で量的に大部を占めるグラフト鎖が疎水性であるため、その周囲で重合硬化して生成した画像が十分な耐水性と機械的強度をもち、その結果、前記特許文献5に記載の親水性のポリエチレンオキシド鎖/疎水性主鎖のグラフトポリマーを用いた場合とは異なり、細線再現性および耐刷性が優れたものになっていると推定される。
第2の形態において、本発明の平版印刷版原版は、赤外線レーザーによる画像記録が可能であり、機上現像が可能な平版印刷版原版であって、支持体上に赤外線吸収剤と親水性の主鎖および疎水性セグメントのグラフト鎖を有するグラフトポリマーとを含有する画像記録層を有することを特徴とする。
また、本発明の平版印刷方法は、上記平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に油性インキと湿し水を供給して、画像記録層の赤外線未露光部分を除去し、印刷するものである。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成要素および印刷方法について詳細に説明する。
まず、前記第1の形態について説明する。
<親水性セグメントのグラフト鎖を有するグラフトポリマー>
第1の形態において、グラフトポリマーは疎水性の幹に親水性セグメントのグラフト鎖を枝として有するグラフトポリマーであり、該親水性セグメントが、アミド基含有単量体、酸基含有単量体、酸基含有単量体のアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩含有単量体および水酸基含有単量体から選ばれる少なくとも一つの親水性単量体単位を50モル%以上含有する重合体であることを特徴とする。該親水性セグメントは、より好ましくは前記親水性単量体単位を70モル%以上含有する。
また、上記親水性セグメントは、前記親水性単量体の他に疎水性単量体を共重合して親水性度を調節した重合体であってもよく、その場合の親水性セグメント中の疎水性単量体は、50モル%未満が好ましく、より好ましくは30モル%未満である。
上記のごとき親水性セグメントを有するグラフトポリマーを用いることによって機上現像性を良好に保ちつつ、細線再現性および耐刷性が優れた平版印刷版原版が得られる。
これら3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明のグラフトポリマーを合成することができるが、特に製造適性、合成の容易さという観点からは「3.マクロマー法」が優れている。マクロマーを使用したグラフトポリマーの合成は、高分子学会編「新高分子実験学2、高分子の合成・反応」共立出版(株)1995年刊行に記載されている。また山下雄也、他著「マクロモノマーの化学と工業」アイピーシー、1989年刊行にも詳しく記載されている。第1の形態において、グラフトポリマーは枝部が親水性セグメントであり、親水性マクロマーと疎水性モノマーの共重合により容易に得られる。
第1の形態において、使用される親水性マクロマー(マクロモノマーとも呼ばれる。)の親水性セグメントは、アミド基含有単量体、酸基含有単量体、酸基含有単量体のアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩含有単量体および水酸基含有単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体単位を50モル%以上含有する重合体である。
本発明で用いられる親水性マクロマーは、この親水性セグメントの末端に重合性基を結合して得られる。
親水性マクロマーと共重合する疎水性モノマーの特に有用なものとしては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知の疎水性モノマーが挙げられる。これらのモノマーの中から適宜その1種をまたは2種以上を選択してグラフトポリマーを合成することができる。
。
でき、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
また、本発明のグラフトポリマーの重量平均分子量は、5000〜100万が好ましく、より好ましくは1万〜50万である。
<疎水性セグメントのグラフト鎖を有するグラフトポリマー>
第2の形態において、グラフトポリマーは親水性の主鎖(幹)に疎水性セグメントのグラフト鎖を枝として有するグラフトポリマーである。このグラフトポリマーを用いることによって、機上現像性を良好に保持しつつ、細線再現性および耐刷性が優れた平版印刷版原版を提供できる。
本発明で使用される疎水性マクロマー(マクロモノマーともいう)の疎水性セグメントとしては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の
公知の疎水性モノマーから選ばれた1種を重合したもの、または2種以上を共重合したものが挙げられる。本発明の疎水性マクロマーは、この疎水性セグメントの末端に重合性基を結合して得られる。
第2の形態において、主鎖を形成する親水性モノマーとしては、アミド基含有単量体、酸基含有単量体、酸基含有単量体のアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩含有単量体、水酸基含有単量体等の公知の親水性モノマーが挙げられる。これらの親水性モノマーの中から適宜選択した1種以上を上記疎水性マクロマー1種以上と共重合してグラフトポリマーを合成することができる。
また、グラフトポリマーの重量平均分子量としては、5000〜100万が好ましく、より好ましくは1万〜50万である。
本発明の平版印刷版原版を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収
剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
に記載されている顔料が利用できる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
本発明において用いられる赤外線吸収剤の含有量は、感度や、印刷時に発生する非画像部の汚れの観点から、画像記録層を構成する全固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
本発明の画像記録層には、ラジカルを発生させる重合開始剤およびラジカルにより重合硬化する重合性化合物を含有させることが好ましい。さらに、バインダーポリマー、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物などの添加剤を、必要に応じて含有させることができる。以下、それら
について説明する。
本発明の画像記録層には、熱、光またはその両方のエネルギーにより、ラジカルを発生させ、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる重合開始剤を含有させることが好ましい。中でも、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤が有用である。このようなラジカル発生剤は前述した赤外線吸収剤と組み合わせて用いることにより、赤外線レーザーを照射した際に赤外線吸収剤が発熱し、その熱によりラジカルを発生し、ヒートモード記録が可能となる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジドなどが挙げられるが、オニウム塩が高感度であり、好ましい。以下に、本発明においてラジカル重合開始剤として好適に用い得るオニウム塩について説明する。好ましいオニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。本発明において特に好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(II)〜(IV)で表されるオニウム塩である。
フルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
アミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
よい。
本発明の画像記録層には、効率的な硬化反応を行うため重合性化合物を含有させることが好ましい。本発明に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
本発明の画像記録層には、前記グラフトポリマー以外に、バインダーポリマーを含有させることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
インキに対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
ルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
本発明において、画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることが
できる。
本発明の画像記録層には、焼き出し画像生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中または保存中においてラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
本発明の画像記録層は、画像部の硬化皮膜強度向上および非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
本発明の画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有しても良い。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩等が上げられる。
本発明においては、上記の画像記録層構成成分を画像記録層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する態様であり、もう一つは、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させる態様(マイクロカプセル型画像記録層)である。さらに、マイクロカプセル型画像記録層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセル型画像記録層においては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有させることが好ましい態様である。より良好な機上現像性を得るためには、画像記録層は、マイクロカプセル型画像記録層であることが好ましい。
本発明の画像記録層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
記録層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2 であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2 であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
支持体に表面処理を施した後または下塗層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 )4 、Si(OC2 H5 )4 、Si(OC3 H7 )4 、Si(OC4 H9 )4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
本発明の平版印刷方法に用いられる本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザーによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。
下塗層としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、エチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
下塗層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2 であるのが好ましく、3〜30mg/m2 であるのがより好ましい。
本発明の平版印刷方法に用いられる本発明の平版印刷版原版においては、画像記録層における傷等の発生防止、酸素遮断、高照度レーザー露光時のアブレーション防止のため、必要に応じて、画像記録層の上に保護層を設けることができる。
本発明においては、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、画像記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。したがって、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3、458、311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
しい。
保護層の膜厚は、0.1〜5μmが適当であり、特に0.2〜2μmが好適である。
本発明の平版印刷方法においては、上述した本発明の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する。
本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2 であるのが好ましい。
本発明の平版印刷方法においては、上述したように、本発明の平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
ない。なお、以下の実施例において、実施例1〜15及び26〜30は参考例である。
(親水性マクロマーの合成)
アクリルアミド30g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをエタノール70gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後、白色沈殿をろ過し、十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを30.8g得た(カルボン酸価0.78meq/g、重量平均分子量1.3×103)。
得られたプレポリマー20gをN,N−ジメチルアセトアミド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、130℃に昇温して6時間反応した。反応後、アセトンに投入し、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマーを23.4g得た。(重量平均分子量:1.4×103)。1H−NMR(D2O)6.12,5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークの存在と、カルボン酸価(0.023meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。親水性マクロマーのガラス転移温度をセイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量計(DSC)により測定したところ、160℃であった。
N,N−ジメチルアセトアミドアミド15gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記マクロマー10g、メタクリル酸メチル5g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル150mgをN,N−ジメチルアセトアミドアミド15gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成
物を沈殿させ、よく洗浄して、疎水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(A−1)14.5gを得た。重量平均分子量を表1に示す。
上記合成例の疎水性モノマー(メタクリル酸メチル)を表1のように代えた以外はグラフトポリマー(A−1)の合成と同様の方法でグラフトポリマー(A−2)〜(A−5)を得た。重量平均分子量を表1に示す。
(親水性マクロマーの合成)
N,N−ジメチルアクリルアミド40g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをエタノール95gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後、白色沈殿をろ過し、十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを38.5g得た(カルボン酸価0.75meq/g、重量平均分子量1.25×103)。
得られたプレポリマー20gをN,N−ジメチルアセトアミド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、130℃に昇温して6時間反応した。反応後、アセトンに投入し、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマーを23.4g得た。(重量平均分子量:1.33×103)。1H−NMR(D2O)6.12,5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークの存在と、カルボン酸価(0.019meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。親水性マクロマーのガラス転移温度をセイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量計(DSC)により測定したところ、90℃であった。
N,N−ジメチルアセトアミドアミド15gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記マクロマー10g、メタクリル酸メチル5g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル150mgをN,N−ジメチルアセトアミドアミド15gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、疎水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(B−1)14.5gを得た(重量平均分子量1.0×105)。
上記合成例の疎水性モノマー(メタクリル酸メチル)を表2のように代えた以外はグラフトポリマー(B−1)の合成と同様の方法でグラフトポリマー(B−2)〜(B−5)
を得た。重量平均分子量を表2に示す。
1−メトキシ−2−プロパノール53gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温後、メタクリル酸メチル22g、ポリオキシエチレンモノメタクリレート(日本油脂(株)製 ブレンマーPME1000)30g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル250mgを1−メトキシ−2−プロパノール53gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、比較用グラフトポリマー(C−1)を45g得た(重量平均分子量1.3×105)。
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム板表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
<平版印刷版原版の作製>
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版1〜10および比較用平版印刷版原版1’を得た。
・下記の赤外線吸収剤(1) 0.05g
・下記の重合開始剤(1) 0.2g
・表3に記載のグラフトポリマー 0.5g
・重合性化合物 1.0g
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート
(新中村化学工業(株)製、NKエステルM−315)
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.02g
・下記のフッ素系界面活性剤(1) 0.1g
・メチルエチルケトン 18.0g
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
一般に、ネガ型平版印刷版原版の場合、露光量が少ないと画像記録層(感光層)の硬化度が低くなり、露光量が多いと硬化度が高くなる。画像記録層の硬化度が低すぎる場合には、平版印刷版の耐刷性が低くなり、また、小点や細線の再現性が不良となる。一方、画像記録層の硬化度が高い場合には、耐刷性が高くなり、また、小点や細線の再現性が良好となる。
本実施例では、以下に示すように、上記で得られたネガ型平版印刷版原版1〜10および1’を、上述した同一の露光量条件で耐刷性および細線再現性を評価することにより、平版印刷版原版の感度の指標とした。即ち、耐刷性における印刷枚数が高いほど、また、細線再現性における細線幅が細いほど、平版印刷版原版の感度が高いと言える。
前記のように印刷を開始し、100枚印刷後、印刷用紙上の非画像部にインキ汚れのない印刷物が得られるまでに要した印刷用紙の枚数を数え、機上現像枚数とした。枚数が少ないほど機上現像性が高いと評価する。
上述したように100枚印刷して非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物の細線チャート(10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、60、80、100および200μmの細線を露光したチャート)を25倍のルーペで観察し、途切れることなくインキで再現された細線幅により、細線再現性を評価した。結果を表3に示す。
上述のように細線再現性評価の印刷を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表3に示す。
実施例1で用いたのと同じ支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.8g/m2の画像記録層を形
成して平版印刷版原版11〜15および比較用平版印刷版原版2’を得た。
・水 8g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 10g
・メチルエチルケトン 2g
・下記の赤外線吸収剤(2) 0.03g
・表4記載のグラフトポリマー 0.1g
・下記のマイクロカプセル(1)(固形分換算で) 1g
・上記の重合開始剤(1) 0.1g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.02g
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.5g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成(株)製、ODB)1g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸Na塩) 0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.3μmであった。
比較例2より、細線再現性および耐刷性が優れていることが分かる。
〔疎水性マクロマーの合成〕
メチルメタクリレート42g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをメチルエチルケトン84gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合性開始剤2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後、水中に投入し、ポリマーを沈殿させ、濾過した後、水で十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを43.5g得た(カルボン酸価0.75meq/g、重量平均分子量1.8×103)。
得られたプレポリマー20gをN,N−ジメチルアセトアミド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、130℃に昇温して6時間反応した。反応後、水中に投入し、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートメタクリル酸メチルマクロモノマーを23.4g得た。(重量平均分子量:1.8×103)。1H−NMR(CDCl3)6.12,5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークと、カルボン酸価(0.043meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。
1−メトキシ−2−プロパノール15gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記マクロマー10g、メタクリルアミド5g、熱重合性開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル150mgを1−メトキシ−2−プロパノール15gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、疎水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(A’−1)14.5gを得た(重量平均分子量1.30×105)。
上記グラフトポリマー(A’−1)の合成に用いた親水性モノマー(メタクリルアミド)を表5のように代えた以外はグラフトポリマー(A’−1)の合成と同様の方法で疎水性マクロマーと親水性モノマーとを共重合してグラフトポリマー(A’−2)〜(A’−5)を得た。重量平均分子量を表5に示す。
〔疎水性マクロマーの合成〕
スチレン44g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをメチルエチルケトン88gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合性開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニ
トリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後、水中に投入し、ポリマーを沈殿させ、濾過した後、水で十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマー43.5gを得た(カルボン酸価0.76meq/g、重量平均分子量1.9×103)。
得られたプレポリマー20gをN,N−ジメチルアセトアミド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、130℃に昇温して6時間反応した。反応後、水中に投入し、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートスチレンマクロモノマーを23.4g得た。(重量平均分子量:1.8×103)。1H−NMR(CDCl3)6.12,5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークと、カルボン酸価(0.041meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。
1−メトキシ−2−プロパノール15gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記末端メタクリレートスチレンマクロモノマー10g、メタクリルアミド5g、熱重合性開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル150mgを1−メトキシ−2−プロパノール15gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、疎水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(B’−1)14.5gを得た(重量平均分子量1.2×105)。
グラフトポリマー(B’−1)の合成で用いた親水性モノマー(メタクリルアミド)の代わりに表6に示す親水性モノマーを用いた以外はグラフトポリマー(B’−1)の合成と同様の方法でグラフトポリマー(B’−2)〜(B’−5)を得た。重量平均分子量を表6に示す。
フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール53gを採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記メタクリル酸メチル22g、ポリオキシエチレンモノメタクリレート(日本油脂(株)製 ブレンマーPME1000)30g、熱重合性開始剤2,2−アゾビスイソブチロニトリル250mgを1−メトキシ−2−プロパノール53gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。反応溶液を、沈殿させよく洗浄して、比較グラフトポリマー(C’−1)を45g得た(重量平均分子量1.3×105)。
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A1050)の表面の圧延油を除去す
るため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム板表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
<平版印刷版原版の作製>
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版16〜25および比較用平版印刷版原版3’を得た。
・上記の赤外線吸収剤(1) 0.05g
・上記の重合開始剤(1) 0.2g
・表7に記載のグラフトポリマー 0.5g
・重合性化合物 1.0g
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート
(新中村化学工業(株)製、NKエステルM−315)
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.02g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.1g
・メチルエチルケトン 18.0g
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(4)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.8g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版26〜30および比較用平版印刷版原版4’を得た。
・水 8.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0g
・メチルエチルケトン 2.0g
・上記の赤外線吸収剤(2) 0.03g
・表8に記載のグラフトポリマー 0.1g
・上記のマイクロカプセル(1)(固形分換算で) 1.0g
・上記の重合開始剤(1) 0.1g
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.02g
・重合性化合物 1.0g
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート
(新中村化学工業(株)製、NKエステルM−315)
Claims (4)
- 粗面化処理後に陽極酸化処理を施したアルミニウム支持体上に、印刷インキ及び/または湿し水により除去可能である、赤外線吸収剤と、重合開始剤と、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物と、親水性の主鎖および疎水性セグメントのグラフト鎖を有するグラフトポリマーとを含有する画像記録層を有し、該グラフトポリマーの含有量が、該画像記録層の全固形分に対して20〜70質量%である平版印刷版原版。
- 前記重合開始剤がオニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
- 前記画像記録層中にマイクロカプセルを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に油性インキと水性成分とを供給して、画像記録層の赤外線未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
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