JP2009145841A - 平版印刷版原版 - Google Patents

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JP2009145841A JP2007325989A JP2007325989A JP2009145841A JP 2009145841 A JP2009145841 A JP 2009145841A JP 2007325989 A JP2007325989 A JP 2007325989A JP 2007325989 A JP2007325989 A JP 2007325989A JP 2009145841 A JP2009145841 A JP 2009145841A
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Abstract

【課題】非画像部の汚れ防止性、及び画像部と支持体との密着性に起因する耐刷性のいずれにも優れた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】支持体上に、下記グラフト共重合体Aを含有する中間層と、画像形成層とをこの順に有することを特徴とする平版印刷版原版。
グラフト共重合体A:下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位を含み、且つ、そのどちらか一方の構造単位を枝成分に含むと共に、構造内のカルボキシル基の一部又は全部が塩基によって中和されている共重合体
一般式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜30の置換基等を表し、Lは単結合又は(n+1)価の連結基を表し、Mは水素原子又は対カチオンを表し、nは1〜10の整数を表す。一般式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜30の置換基等を表し、Yは−C(=O)O−を含む炭素数2〜30の置換基を表す。
Figure 2009145841

【選択図】なし

Description

本発明は、支持体上に、特定の共重合体を含有する中間層と、画像形成層とをこの順で有することを特徴とする平版印刷版原版に関する。更に詳しくは、画像部での高い耐刷性と非画像部での良好な汚れ性を両立する、新規な平版印刷版原版に関する。
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。近年、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、そのようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザ光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すこと無く、直接印刷版を製造するコンピューター トゥ プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
このような走査露光可能な平版印刷版原版としては、親水性支持体上にレーザ露光によりラジカルやブレンステッド酸などの活性種を発生しうる感光性化合物を含有した親油性感光性樹脂層(以下、画像形成層ともいう)を設けた構成が提案され、既に上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザ走査し活性種を発生せしめ、その作用によって画像形成層に物理的、或いは化学的な変化を起こし不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。
特に、親水性支持体上に、感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーを含有する光重合型の画像形成層、並びに必要に応じて酸素遮断性の保護層を設けた平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)は、生産性に優れ、更に現像処理が簡便であり、解像度や着肉性もよいといった利点から、望ましい印刷性能を有するものである。
また、アルカリ水溶液可溶性樹脂としてノボラック樹脂等が使用したダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版が知られている。なかでも、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収して熱を発生する物質と、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物を添加した画像形成層を有するものが、高画質の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版として開示されている(例えば、特許文献2参照)。
これらの平版印刷版原版においては、画像形成層と支持体との密着性向上や、画像形成層の未露光領域の現像除去性を高めるために、支持体と画像形成層との間に中間層(下塗り層、又は、密着改良層と称されることもある)を設けることが一般的に行われている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、従来の中間層を用いた場合には、長時間、特には、高温高湿条件下で長時間保存した場合の現像除去性が低下したり、中間層の上層に画像形成層を塗布する際に画像形成層の溶媒により中間層が溶解或いは膨潤することにより耐刷性や汚れ性に悪影響が生じる場合があり、近年の高耐刷化と低汚れ性の要求レベル向上に応えられる商品の開発が要望されている。
中間層においては、酸基を有する高分子化合物を用いる例が知られている(例えば、特許文献4参照)。また、この特許文献4には、酸基としてスルホン酸又はカルボン酸を有する高分子化合物を中間層に用いた例が開示されている。このような化合物は、特定の平版印刷版原版においては良好な耐刷性と耐汚れ性を与えるが、例えば、耐刷性を向上させるために、支持体の表面粗さ(Ra)を大きくした高耐久性の平版印刷版原版などに用いた場合においては、十分な耐汚れ性を得ることが困難な場合があった。
また、従来の中間層に用いられる高分子化合物は、ビニル重合体系の高分子化合物としてランダム共重合体を用いる例が一般的であるが、その他、グラフトポリマーを中間層に用いる例についても知られている(例えば、特許文献5参照)。この特許文献5では、特定の構造を有するグラフトポリマーを中間層に用いることで、耐刷性及び非画像部における耐汚れ性に関しては一定の改良効果を奏するものではあるが、これらの更なる改良が望まれているのが現状である。
特開平10−228109号公報 特公平7−103171号公報 特開2001−272787号公報 特開2005−99113号公報 特開2004−101549号公報
上記課題を考慮した本発明の目的は、非画像部の汚れ防止性、及び画像部と支持体との密着性に起因する耐刷性のいずれにも優れた平版印刷版原版を提供することにある。
本発明者は鋭意研究した結果、支持体上に、特定の構造を有するグラフト共重合体を含有する中間層と、画像形成層とをこの順に形成することにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の通りである。
本発明の平版印刷版原版は、 支持体上に、以下に示すグラフト共重合体Aを含有する中間層と、画像形成層とをこの順に有することを特徴とする。
グラフト共重合体A:幹成分となる高分子鎖に、枝成分となる高分子鎖が共重合体した枝分かれ構造を有する共重合体であって、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位を含み、且つ、そのどちらか一方の構造単位を前記枝成分に含むと共に、構造内のカルボキシル基の一部又は全部が塩基によって中和されている共重合体
Figure 2009145841
〔上記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、又はハロゲン原子を表す。Lは、単結合又はn+1価の連結基を表す。Mは、水素原子又は対カチオンを表す。nは、1〜10の整数を表す。〕
Figure 2009145841
〔上記一般式(2)中、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、又はハロゲン原子を表す。Yは、−C(=O)O−を含む炭素数2〜30の置換基を表す。〕
本発明において、グラフト共重合体Aは、以下の態様であることが好ましい。
・グラフト共重合体Aが、構造内のカルボキシル基の一部が塩基によって中和されているものであること
・グラフト共重合体Aが、構造内のカルボキシル基の20モル%〜80モル%が塩基によって中和されているものであること
・グラフト重合体Aにおいて、前記一般式(1)で表される構造単位の含有量と、前記一般式(2)で表される構造単位の含有量と、のモル比が0.9:0.1〜0.3:0.7であること
また、本発明の平版印刷版原版は、以下の態様であることが好ましい。
・画像形成層が、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有し、好ましくは、更に赤外線吸収剤を含有すること
・画像形成層が赤外線レーザで記録可能であること
・画像記録層上に、ポリビニルアルコール、有機樹脂からなる微粒子、及び雲母粒子を含有する保護層を有すること
本発明の作用機構は明確ではないが、以下のように推測される。
即ち、本発明に用いられるグラフト共重合体Aは、支持体との相互作用性基として主に機能する一般式(1)中の(COM)で表される基と、画像形成層との相互作用性基として主に機能する一般式(2)中のYで表される基と、を含むものである。特に、このような二種の基がグラフト共重合体構造中に含まれることにより、それぞれの相互作用性基を分子中で集中させることが可能なため、一般的なランダム共重合体構造に比べると効率的に支持体及び画像形成層との密着性を発現しうるものと考えられる。
さらに、本発明においては、一般式(1)中の(COM)をはじめ、構造内のカルボキシル基の一部または全部が塩基にて中和されているグラフト共重合体を用いることを特徴としている。平版印刷版原版において、一般的には、中間層と画像形成層との間に明確な界面を形成することが中間層の機能発現のためには好ましく、層混合が起きた場合には、画像形成層が支持体に直接接触することにより、現像不良や印刷物の汚れといった故障を生じる場合がある。本発明者らは、中間層に用いる共重合体のカルボキシル基を完全にあるいは部分的に中和することにより、その共重合体の、画像形成層を形成する際に用いられる塗布液中の有機溶媒への溶解度を減少させることが可能であり、カルボキシル基が中和されずに大量に残存している共重合体に比べて、中間層と画像形成層との層混合が起きにくいことを見出し、特に、共重合体がグラフト共重合体である場合においてその効果が一層高くなるという予想外の効果を見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、非画像部の汚れ防止性、及び画像部と支持体との密着性に起因する耐刷性のいずれにも優れた平版印刷版原版を提供することができる。
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、後述するグラフト共重合体Aを含有する中間層と、画像形成層とをこの順に有することを特徴とする平版印刷版原版。
ここで、支持体上に中間層と画像形成層とをこの順に有するとは、支持体上にこの2層がこの順で積層されていることを意味し、必要に応じて設けられる層、例えば、バックコート層、下塗り層、オーバーコート層などの公知の層の存在を否定するものではない。
以下、平版印刷版原版を構成する各要素について順次説明する。
<中間層>
本発明における中間層は、以下に示すグラフト共重合体Aを含有することを特徴としている。
なお、本発明においてグラフト共重合体Aとは、「高分子の命名法・用語法」、(社)高分子学会 高分子命名法委員会訳、2007年、7頁の1.28に定義された構造の高分子化合物を示す。
まず、このグラフト共重合体Aについて、説明する。
〔特定グラフト共重合体〕
本発明において、中間層に用いられるグラフト共重合体Aは、幹成分となる高分子鎖に、枝成分となる高分子鎖が共重合体した枝分かれ構造を有する共重合体であって、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位を含み、且つ、そのどちらか一方の構造単位を前記枝成分に含むと共に、構造内のカルボキシル基の一部又は全部が塩基によって中和されている共重合体であることを特徴とする。以下、このグラフト共重合体を、特定グラフト共重合体と称して、説明する。
まず、下記一般式(1)で表される構造単位について説明する。
Figure 2009145841
上記一般式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、又はハロゲン原子を表す。Lは、単結合又はn+1価の連結基を表す。Mは、水素原子又は対カチオンを表す。nは、1〜10の整数を表す。
は、水素原子、炭素数1〜30の置換基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シアノ基)、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を表す。中でも、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子、塩素原子であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基である。
は、単結合又はn+1価の連結基を表す。ここで、連結基とは、少なくとも1個の非金属原子からなる2価以上の基を示し、好ましくは、原子数0〜60の炭素原子、原子数0〜10の窒素原子、原子数0〜50の酸素原子、及び原子数0〜20の硫黄原子を組み合わせて成り立つものである。
例えば、2価の連結基として好ましくは、−CR−、−O−、−C=O−、−S−、−S=O−、−S(=O)−、−NR−、ビニレン基、フェニレン基、シクロアルキレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基(ここで、Rは水素原子又は置換基を表す。)の構造単位が、単独で、又は、組合わされて構成されるものを挙げることができる。
また、3価の連結基の例としては、3置換のベンゼン環や、−C−CH−N−(CH−)、−N−(CH−)、4価の連結基の例としては、4置換のベンゼン環が挙げられる。
として特に好ましくは、単結合、−O(CH−、−NH(CH−、−COO−、−CONH−、フェニレン基である(p及びqはそれぞれ0〜20の整数を表す。)。
なお、Lで表される(n+1)価の連結基は、置換基を有していてもよいく、その置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Mは、水素原子又は対カチオンを表す。但し、本発明における特定グラフト共重合体中のカルボキシル基が、一般式(1)で表される構造単位に起因するもののみである場合、一般式(1)で表される構造単位中のMが全て水素原子であることはない。
Mで表される対カチオンとしては、公知の任意のものを用いることが可能であるが、好ましい例としては、アルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、周期表2族の金属イオン(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、その他の金属イオン(アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛など)など、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン(メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、モルホリニウム、グアニジニウムなど)などを挙げることができる。更に好ましくは、アルカリ金属イオン、周期表2族の金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。特に好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンを挙げることができる。
nは、1〜10の整数を表し、好ましくは、1〜6の整数であり、より好ましくは、1〜4の整数である。ここで、nが2以上である場合には、Lで表される連結基に、−COMが複数個結合していることを示す。
以下、一般式(1)で表される構造単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記の具体例において繰り返し単位に「4.5」とあるのは、PEO部分が平均で4.5の繰返し数に相当する混合物であることを示す。
Figure 2009145841
Figure 2009145841
Figure 2009145841
Figure 2009145841
次に、下記一般式(2)で表される構造単位について説明する。
本発明において、一般式(2)で表される構造単位は、一般式(1)で表される構造単位とはその構造が異なり、Yは−COOMを有しないものである。
Figure 2009145841
上記一般式(2)において、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、又はハロゲン原子を表す。Yは、−C(=O)O−を含む炭素数2〜30の置換基を表す。
ここで、Rは、前記一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
Yは、−C(=O)O−を含む炭素数2〜30の置換基を表し、好ましくは、炭素数が2〜20の置換基、より好ましくは炭素数2〜10の置換基である。
以下、このYについてより具体的に説明する。
Yとしては、−X−C(=O)O−R、又は、−X’−OC(=O)−R’で表されることが好ましい。
R及びR’は、各々独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基が挙げられ、中でも、アルキル基、アリール基が好ましい。また、これらの基は、更に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基(1置換アミノ基、2置換アミノ基)、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシロキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、スルホ基、カルボン酸エステル基、硫酸エステル基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、リン酸エステル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ポリアルキレンオキシ基およびその誘導体(例えば、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、アルコキシ(ポリエチレンオキシ)基、アルコキシ(ポリプロピレンオキシ)基、アシロキシ(ポリエチレンオキシ)基、アシロキシ(ポリプロピレンオキシ)基、アルキルカルバモイル(ポリエチレンオキシ)基、アルキルカルバモイル(ポリエチレンオキシ)基、アルキルカルバモイル(ポリプロピレンオキシ)基、アリールカルバモイル(ポリエチレンオキシ)基、アリールカルバモイル(ポリプロピレンオキシ)基など)等の基や、これらの基の組合せによる複合基を置換基として更に有していてもよい。
R及びR’で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等が挙げられる。
R及びR’で表されるアリール基としては、フェニル基、4−メトキシフェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−ノニルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基等が挙げられる。
また、X及びX’は、各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表す。
X及びX’で表される2価の連結基としては、主鎖骨格とC(=O)O−R、又は、−OC(=O)−R’とを結合しうる基であれば、特に制限はなく、具体的には、アルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基など)、エーテル基、チオエーテル基、フェニレン基(1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基など)、ポリエチレンオキシ基等が挙げられる。
本発明においては、製造適性及び効果の点から、X及びX’が、単結合であることが好ましい。
Yの好ましい例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プルピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基などのカルボン酸アルキルエステル基が挙げられる。
また、Yの特に好ましい例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プルピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基などが挙げられる。
以下、一般式(2)で表される構造単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記の具体例において繰り返し単位に「4.5」とあるのは、(CHCH)部分が平均で4.5の繰返し数に相当する混合物であることを示す。
Figure 2009145841
本発明における特定グラフト共重合体は、前述の、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位のどちらか一方の構造単位を枝成分に有することを特徴としている。このように枝成分にいずれか一方の構造単位が含まれていることで、それぞれの構造単位を集中的に配置することが可能になり、ランダム共重合体に比べて効率的な機能発現が可能となる。
また、本発明における特定グラフト共重合体は、構造内のカルボキシル基の一部又は全部が塩基によって中和されていることを特徴としており、中でも、画像形成層を形成する際に用いられる塗布液中の溶剤への溶解性を低下させると共に、適度な疎水性を付与できる点から、特定グラフト共重合体の構造内のカルボキシル基の一部が塩基によって中和されていることが好ましい。
また、特定グラフト共重合体におけるカルボキシル基の中和度としては、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%が更に好ましい。
ここでいう中和度とは、特定グラフト共重合体中に存在する全てのカルボキシル基のうち、塩基で中和されている割合(多価の塩基の場合は1価の塩基に換算する)をモル%で表したものである。
本発明における特定グラフト共重合体において、一般式(1)で表される構造単位の含有量と、一般式(2)で表される構造単位の含有量とのモル比は、好ましくは0.9:0.1〜0.1:0.9であり、更に好ましくは0.9:0.1〜0.3:0.7であり、特に好ましくは0.8:0.2〜0.3:0.7である。
一般式(1)で表される構造単位、及び、一般式(2)で表される構造単位、はそれぞれ1種類のみであっても、2種類以上組み合わされていてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、一般式(1)で表される構造単位、及び、一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位を更に含んでいてもよい。また、重合開始剤、連鎖移動剤などに由来する成分をポリマーの末端、或いは、側鎖に含有していてもよい。
他の構造単位としては、例えば、−SOH、−OSOH、−PO、−OPO、−CONHSO−を含む基、−SONHSO−を含む基、更には、窒素原子、リン原子、又はイオウ原子を含むオニウム基を有する構造単位が好ましく、中でも、支持体吸着性を向上させ、耐刷性を高めるという観点から、窒素原子を含むオニウム基を有する構造単位が好ましい。
本発明における特定グラフト共重合体は、前述のように、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位のどちらか一方の構造単位を枝成分に有することを要し、その両方の構造単位を、枝成分に有していてもよい。なお、本発明におけるグラフト共重合体において、幹成分に一般式(1)で表される構造単位を含み、且つ、枝成分に一般式(2)で表される構造単位を含むものであることがより好ましい。
本発明における特定グラフト共重合体の合成は、常法により行うことができる。
具体的には、枝成分に相当する構造を有するマクロモノマーを幹成分と共重合する方法、枝成分に相当する高分子化合物を、高分子反応により幹成分に相当する高分子鎖と反応させる方法、など任意の方法を選択することができる。
なお、本発明における特定グラフト共重合体の構造は、質量分析法、NMR法などの公知の解析法、並びに、これらの解析法を適宜組み合わせることにより、ランダム共重合体と区別することが可能である。
また、本発明におけるグラフト共重合体を合成する際には、以下のようにして、カルボキシル基に対して対カチオンを導入する方法を用いることができる。
一般式(1)で表される構造単位に相当する単量体、及び、一般式(2)で表される構造単位に相当する単量体と、を少なくとも含有する原料を用いてグラフト共重合体を合成した後に中和を行う方法、一般式(1)で表される構造単位に相当する単量体の一部又は全部をあらかじめ中和した単量体をあらかじめ用意し、これと、一般式(2)で表される構造単位に相当する単量体を少なくとも含有する原料を用いてグラフト共重合体を合成する方法、などが好ましく選択される。
特定グラフト共重合体中に含まれる未反応モノマー量は任意であるが、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明における特定グラフト共重合体の平均分子量は任意であってよいが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定した時、重量平均分子量(Mw)が1000〜5000,000であることが好ましく、また2,000〜1000,000の範囲であることが更に好ましく、5000〜500,000の範囲であることが特に好ましい。
本発明のグラフト共重合体において、枝成分及び幹成分中の構造単位の繰り返し単位数については特に制限はないが、枝成分中の構造単位については、好ましくは2〜300であり、更に好ましくは2〜150であり、特に好ましくは2〜70である。一方、幹成分中の構造単位については、好ましくは2〜10000であり、更に好ましくは10〜5000であり、特に好ましくは30〜1000である。
また、本発明における特定グラフト共重合体において、枝成分を構成する構造単位と幹成分を構成する構造単位とを連結する構造には、特に制限はなく、合成法に応じて、種々の構造が導入されうるが、具体的には、例えば、以下に示す構造が挙げられる。
即ち、単結合、アルキレン基、(メチレン基、エチレン基、プロピレン基など)、エーテル基、チオエーテル基、フェニレン基(1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基など)、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレイド基等の構造や、これらが組み合わされた複合構造が挙げられる。この中でも、好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。
Figure 2009145841
以下に、本発明における特定グラフト共重合体の好ましい例(例示化合物(a−1)〜(a−40))を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2009145841
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Figure 2009145841
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次に、本発明における特定グラフト共重合体の合成例を示すが、本発明における特定グラフト共重合体の合成法はこれらに限定されるものではない。なお、本発明に係る他の特定グラフト共重合体も同様の方法で合成することができる。
(合成例1:例示化合物(a−8)の合成)
−マクロモノマーM−1の合成−
反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル17.1質量部を取り、80℃に昇温して窒素気流下で30分間攪拌した。別途、メタクリル酸メチル20.0質量部、2−メルカプトプロピオン酸1.3質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル1.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル68.5質量部の混合溶液を調製し、反応容器に2時間をかけて滴下した。80℃で4時間30分反応させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.5質量部を加え、90℃に昇温して更に2時間攪拌した後に冷却した。反応溶液を真空乾燥して、下記構造の中間体IM−1を得た。中間体IM−1のGPC数平均分子量は2100であった。
得られた中間体IM−1を6.8質量部、グリシジルメタクリレート1.5質量部、N,N−ジメチルドデシルアミン0.3質量部、4−メトキシフェノール0.12質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量部を反応容器に取り、115℃で8時間反応させた後に冷却した。反応溶液を真空乾燥して、下記構造のマクロモノマーM−1を得た。
Figure 2009145841
続いて、反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル9.6質量部を取り、75℃に昇温して窒素気流下で30分間攪拌した。別途、マクロモノマーM−1を10質量部、メタクリル酸8.6質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.9質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル38.6質量部の混合溶液を調製し、反応容器に2時間をかけて滴下した。75℃で4時間30分反応させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.46質量部を加え、90℃に昇温して更に2時間攪拌した。反応溶液を20℃以下に冷却した後、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液52質量部を加えて攪拌し、前記例示化合物(a−8)の溶液を得た。GPC法による重量平均分子量は58000であった。
(中間層の形成)
本発明おける中間層は、以下の2つの方法を用いることで形成することができる。
即ち、第1の方法としては、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの有機溶剤、これらの混合溶剤、これら有機溶剤と水との混合溶剤に、前述の特定グラフトポリマーを溶解させた溶液を、アルミニウム支持体上に塗布、乾燥して設ける方法である。
また、第2の方法としては、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤、これらの混合溶剤、これら有機溶剤と水との混合溶剤に、前述の特定グラフトポリマーを溶解させた溶液中に、アルミニウム支持体を浸漬して高分子化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥する方法である。
前者の方法では、特定グラフトポリマーを0.005〜10質量%の濃度で含む溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。
また、後者の方法では、特定グラフトポリマーを含む溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
上述の特定グラフトポリマーを含む溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸、フェニルスルホン酸などの有機ホスホン酸、安息香酸、クマル酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸など種々有機酸性物質、ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライドなどの有機酸クロライド等によりpHを調整し、pH=0〜12、より好ましくはpH=3〜10の範囲で使用することもできる。
本発明における中間層の乾燥後の被覆量は、2mg/m〜100mg/mが適当であり、好ましくは5mg/m〜50mg/mである。上記被覆量が2mg/mよりも少ないと、十分な効果が得られない。また、100mg/mより多くても同様である。
なお、本発明における中間層中の特定グラフトポリマーは、1種を単独で含んでいてもよいし、構成成分の種類、構成成分の組成比、分子量などの異なるものを、2種類以上混合して含んでいてもよい。
本発明における中間層中の特定グラフト共重合体は、1種を単独で含んでいてもよいし、構造単位の種類、構造単位の組成比、分子量などの異なるものを、2種類以上混合して含んでいてもよい。
本発明における中間層中の特定グラフト共重合体の含有量は、中間層中の全固形分に対して、1質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましく、50質量%〜100質量%が更に好ましい。
また、本発明における中間層には、本発明の効果を損なわない範囲において、特定グラフト共重合体の他に、更に他の公知の化合物を併用してもよい。
公知の中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−84674号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352854号、特開2001−209170号、特願平11−284091号等に記載のものを挙げることができ、ここで用いられている化合物を本発明における中間層に適用してもよい。
<画像形成層>
本発明においては、上述のようにして形成された中間層上に画像形成層を設けることで平版印刷版原版を得ることができる。
本発明において、ここに設けられる画像形成層は既知の任意のものであってよいが、ヒートモード又はフォトンモードで記録可能であるものが好ましく、効果の観点からは、赤外線レーザなどのヒートモード露光による画像形成が可能な画像形成層であることが好ましい。
また、本発明における画像形成層としては、後述の(B)重合開始剤、(C)重合性化合物、及び(D)バインダーポリマーを含有する重合硬化層(ネガ型画像形成層)であることが好ましく、特に、更に(A)赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
また、画像形成層は単層構造であっても、複数の層からなる積層構造を有したものであってもよい。
以下に、画像形成層の種類の異なる各種の平版印刷版原版について説明する。
(赤外線レーザ記録型平版印刷版原版)
本発明に好適な、赤外線レーザにより画像形成可能な平版印刷版原版について説明する。これらは、赤外線レーザ露光によりアルカリ水溶液に対する可溶性が変化する材料を用いるネガ型或いはポジ型の画像形成層、インク受容性領域を形成し得る疎水化前駆体を含有し、赤外線レーザの露光部に疎水化領域が形成される画像形成層など、公知の画像記録方式が任意に選択される。
まず、ポジ型或いはネガ型の画像形成層について述べる。このような画像形成層は、赤外線レーザによる像様露光の後、アルカリ水溶液で現像処理され、アルカリ現像性が活性光線の照射により低下し、照射(露光)部が画像部領域となるネガ型と、逆に現像性が向上し、照射(露光)部が非画像部領域となるポジ型の2つに分けられる。
ポジ型の画像形成層としては、相互作用解除系(感熱ポジ)画像形成層、公知の酸触媒分解系、o−キノンジアジド化合物含有系等が挙げられる。これらは光照射や加熱により発生する酸や熱エネルギーそのものにより、層を形成していた高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより水やアルカリ水に可溶となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。
また、ネガ型の画像形成層としては、公知の酸触媒架橋系(カチオン重合も含む)画像形成層、重合硬化系画像形成層が挙げられる。これらは、光照射や加熱により発生する酸が触媒となり、画像形成層を構成する化合物が架橋反応を起こし硬化して画像部を形成するもの、或いは、光照射や加熱により生成するラジカルにより重合性化合物の重合反応が進行し、硬化して画像部を形成するものである。
本発明における中間層は、上記のいずれの画像形成層を形成した場合でも優れた効果を示すが、ネガ型画像形成層に好適に用いられる。
以下、それぞれの画像形成層について詳細に説明する。
1.ポジ型画像形成層
本発明の好ましい態様として、アルカリ可溶性樹脂と、スルホニウム化合物又はアンモニウム化合物と、を含有し、かつ、前記アルカリ可溶性樹脂中の50質量%以上がノボラック樹脂であり、赤外線レーザにより記録可能な画像形成層を設けたポジ型画像形成層を有する平版印刷原版が挙げられる。また、このポジ型画像形成層には、感度を高めるために、後述する(A)赤外線吸収剤を含有することがより好ましい態様である。ポジ型画像形成層は単層であっても、複数の画像形成層からなる積層構造を有していてもよい。
〔ノボラック型フェノール樹脂〕
まず、ノボラック型フェノール樹脂について説明する。ノボラック樹脂は、少なくとも1種のフェノール類を酸性触媒下、アルデヒド類又はケトン類の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
ここで、フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられ、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等が、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
好ましくは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールから選択されるフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドから選択されるアルデヒド類又はケトン類との重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60の(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
これらのノボラック樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」という)が、好ましくは500〜20,000、更に好ましくは1,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜12,000のものが用いられる。重量平均分子量がこの範囲内にあると、充分な皮膜形成性及び、露光部のアルカリ現像性に優れるため好ましい。
画像形成層のバインダー樹脂として前記ノボラック樹脂を用いる場合、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、バインダー樹脂のすべてが前記ノボラック樹脂であってもよく、また、それ以外の樹脂を併用することもできる。他の樹脂を併用する場合においても、ノボラック樹脂が主バインダーであることが好ましく、画像形成層を構成するバインダー樹脂(アルカリ可溶性樹脂)中に占めるノボラック樹脂の割合は50質量%以上であることが好ましく、65〜99.9質量%の範囲であることが更に好ましい。
併用可能なバインダー樹脂としては、一般に用いられる水不溶且つアルカリ可溶性の、高分子中の主鎖及び側鎖の少なくとも一方に酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることができる。ノボラック樹脂以外のフェノール樹脂、例えば、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル樹脂等も好ましく用いられる。併用可能な樹脂としては、具体的には、例えば、特開平11−44956号公報や、特開2003−167343号公報などに記載のポリマーを挙げることができる。
〔光熱変換剤〕
本発明における画像形成層は、光熱変換剤を含有することが好ましい。ここで用いられる光熱変換剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。更に、特開2005−99685号公報の26−38頁に記載された化合物が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に特開2005−99685号公報の一般式(a)で示されるシアニン色素が、本発明の感光性組成物で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
〔分解性溶解抑止剤〕
本発明におけるポジ型画像形成層には、更に分解性溶解抑止剤を添加することができる。特に、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質(分解性溶解抑止剤)を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩及び、o−キノンジアジド化合物が好ましく、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩がより好ましい。
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えば、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号、特開2006−293162号公報、特開2004−117546号公報の明細書に記載のアンモニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開2006−293162号公報、特開2006−258979号公報に記載のスルホニウム塩を挙げることができる。
また、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)、特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)、特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)などで示されるジアゾニウム塩を挙げることができる。
これ以外の好ましいオニウム塩として、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
これらのオニウム塩は、1種類のみを用いても、複数の化合物を用いてもよい。また、画像形成層が積層構造を有する場合には、単一層のみに添加しても複数の層に添加してもよく、また、複数の種類からなる化合物を、層を分けて添加してもよい。
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物或いは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
更に、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂或いはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/又は、o−キノンジアジド化合物の添加量は、好ましくは、本発明にかかる画像形成層の全固形分に対し、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に用いられる添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
〔その他の添加剤〕
本発明に係る画像形成層中には、更に、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することができる。このような化合物の添加量としては、本発明に係る画像形成層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明に係る画像形成層中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許6,117,913号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の添加量としては、画像形成層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、本発明に係る画像形成層中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでいてもよい。酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
その他、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類を画像形成層に添加する場合、画像形成層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
また、本発明に係る画像形成層の塗布液を調製する場合には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像形成層中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
本発明の平版印刷版原版の画像形成層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、画像形成層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。更に本発明に係る画像形成層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、更には、特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物、及び、特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物などを目的に応じて適宜添加することができる。
以上のようにして得られた本発明の画像記録材料における画像形成層は、皮膜形成性及び皮膜強度に優れ、且つ、赤外線の露光により、露光部が高いアルカリ可溶性を示す。
2.ネガ型画像形成層
2−1.重合硬化層
ネガ型画像形成層の1つとして、重合硬化層が挙げられる。この重合硬化層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)重合開始剤と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)重合性化合物と、を含有し、好ましくは(D)バインダーポリマーを含有する。赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起して硬化する。
2−2.酸架橋層
また、画像形成層の他の態様としては、酸架橋層が挙げられる。酸架橋層には、(E)光又は熱により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤と称する)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下、架橋剤と称する)とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性ポリマーを含む。この酸架橋層においては、光照射又は加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士或いは架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。このとき、赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、画像形成層中には(A)赤外線吸収剤が配合される。
〔(A)赤外線吸収剤〕
赤外線レーザで画像形成可能な画像形成層には、赤外線吸収剤を含有する。赤外線吸収剤としては、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点からは波長800nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願平2001−6326、特願平2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2009145841

これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(A)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2009145841

一般式(A)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L、又は以下に示す基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xaは後述するZaと同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2009145841
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像形成層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを示す。ただし、一般式(A)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。好ましいZaは、画像形成層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(A)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は、分散物の画像形成層塗布液中での安定性及び画像形成層の均一性の観点から、0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
画像形成層中における、赤外線吸収剤の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が最も好ましい。この範囲において、高感度な記録が可能であり、非画像部における汚れの発生もなく、高画質の画像形成が可能である。
〔(B)重合開始剤〕
(B)重合開始剤は、光、熱、或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、(C)重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。
本発明に適用可能な重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを選択して使用することができ、例えば、オニウム塩、トリハロメチル基を有するs−トリアジン化合物、オキサゾール化合物などの有機ハロゲン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アリールアジド化合物、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、チオキサントン類等のカルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素塩化合物、ジズルホン化合物等が挙げられる。
本発明において、特に好適に用いられる重合開始剤としては、オニウム塩が挙げられ、なかでも、下記一般式(B−1)〜(B−3)で表されるオニウム塩が好ましく用いられる。
Figure 2009145841
式(B−1)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11−は、無機アニオン又は有機アニオンを表す。
式(B−2)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21−はZ11−と同義の対イオンを表す。
式(B−3)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31−はZ11−と同義の対イオンを表す。
前記一般式(B−1)〜(B−3)中のZ11−、Z21−、Z31−は無機アニオン若しくは、有機アニオンを表すが、無機アニオンとしては、ハロゲンイオン(F、Cl、Br、I)、過塩素酸イオン(ClO )、過ホウ素酸イオン(BrO )、テトラフルオロボレートイオン(BF )、SbF 、PF 等が挙げられ、有機アニオンとしては、有機ボレートアニオン、スルホン酸イオン、ホスホン酸イオン、カルボン酸イオン、R40−SO、R40−SO 、R40−SO、R40−SO−Y−R40イオン(ここで、R40は炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜20のアリール基を表し、Yは単結合、−CO−、−SO−、を表す。)等が挙げられる。
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものを挙げることができる。
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
これらのオニウム塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらのオニウム塩は、画像形成層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、高感度な記録が達成され、また、印刷時における非画像部の汚れ発生が抑制される。
これらのオニウム塩は必ずしも画像形成層に添加されなくてもよく、画像形成層に隣接して設けられる別の層へ添加してもよい。
〔(C)重合性化合物〕
本態様における画像形成層に使用される重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物であるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステルの具体例は、特開2001−133696号公報の段落番号[0037]〜[0042]に記載されており、これらを本発明にも適用することができる。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(VI)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
一般式(VI)
CH=C(R41)COOCHCH(R42)OH
(ただし、R41及びR42は、H又はCHを示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
更に、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌 vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらのラジカル重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上がこのましい。また、画像部即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものが良く、更に、異なる官能数・異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、画像形成層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。画像形成層中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、画像形成層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、画像形成層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
〔(D)バインダーポリマー〕
このような画像形成層においては、画像形成層の膜性向上の観点から更にバインダーポリマーを使用することが好ましく、バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、画像形成層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。
例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
特にこれらの中で、ベンジル基又はアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
更にこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量については好ましくは5000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーは、画像形成層塗布液の全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%の割合で画像形成層中に添加される。添加量が20質量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95質量%を越える場合は、画像形成されない。またラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機ポリマーは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
次に、酸架橋層の構造単位について説明する。ここで用いられる赤外線吸収剤は、前記重合硬化型画像形成層におけるのと同様のものを用いることができる。
好ましい含有量は、画像形成層の全固形分質量に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、更に0.5〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量の範囲において、高感度な記録が達成でき、更に、得られる平版印刷用の非画像部における汚れの発生が抑制される。
〔(E)酸発生剤〕
本実施の形態において、熱により分解して酸を発生する酸発生剤は、200〜500nmの波長領域の光を照射する又は100℃以上に加熱することにより、酸を発生する化合物をいう。
前記酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、熱分解して酸を発生しうる、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
上述の酸発生剤のうち、下記一般式(E−1)〜(E−5)で表される化合物が好ましい。
Figure 2009145841
前記一般式(E−1)〜(E−5)中、R、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Rは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10以下の炭化水素基又は炭素数10以下のアルコキシ基を表す。Ar、Arは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の整数を表す。
前記式中、R、R、R及びRは、炭素数1〜14の炭化水素基が好ましい。
前記一般式(E−1)〜(E−5)で表される酸発生剤の好ましい態様は、特開2001−142230号公報の段落番号[0197]〜[0222]に一般式(I)〜(V)の化合物として詳細に記載されている。これらの化合物は、例えば、特開平2−100054号、特開平2−100055号に記載の方法により合成することができる。
また、(E)酸発生剤として、ハロゲン化物やスルホン酸等を対イオンとするオニウム塩も挙げることができ、中でも、下記一般式(E−6)〜(E−8)で表されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げることができる。
Figure 2009145841
前記一般式(E−6)〜(E−8)中、Xは、ハロゲン化物イオン、ClO 、PF 、SbF 、BF 、又はRSO を表し、ここで、Rは、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Ar、Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R、R、R10は、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化水素基を表す。
このようなオニウム塩は、特開平10−39509号公報段落番号[0010]〜[0035]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載されている。
酸発生剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が最も好ましい。
前記添加量が、0.01質量%未満であると、画像が得られないことがあり、50質量%を超えると、平版印刷用原版とした時の印刷時において非画像部に汚れが発生することがある。
上述の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
〔(F)架橋剤〕
次に、架橋剤について説明する。架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
以下、前記(i)〜(iii)の化合物について詳述する。
前記(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物又は複素環化合物が挙げられる。但し、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物のうち、中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
また、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物では、中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(F−1)〜(F−4)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2009145841

Figure 2009145841
前記一般式(F−1)〜(F−4)中、L〜Lは、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を表す。
これらの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上できる点で好ましい。
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許公開(以下、「EP−A」と示す。)第0,133,216号、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号に記載の、単量体及びオリゴマー−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、EP−A第0,212,482号明細書に記載のアルコキシ置換化合物等が挙げられる。
なかでも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体が最も好ましい。
(iii)エポキシ化合物としては、1以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー状のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。
その他、米国特許第4,026,705号、英国特許第1,539,192号の各明細書に記載され、使用されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化合物を用いる場合の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
前記添加量が、5質量%未満であると、得られる画像記録材料の画像形成層の耐久性が低下することがあり、80質量%を超えると、保存時の安定性が低下することがある。
本発明においては、架橋剤として、(iv)下記一般式(F−5)で表されるフェノール誘導体も好適に使用することができる。
Figure 2009145841
前記一般式(F−5)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、R、R及びRは水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を表す。mは2〜4の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。
原料の入手性の点で、前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。また、その置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
上記のうち、高感度化が可能である点で、Arとしては、置換基を有していないベンゼン環、ナフタレン環、或いは、ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチオ基、炭素数12以下のアルキルカルバモイル基、又はニトロ基等を置換基として有するベンゼン環、又はナフタレン環がより好ましい。
上記R、Rで表される炭化水素基としては、合成が容易であるという理由から、メチル基が好ましい。Rで表される炭化水素基としては、感度が高いという理由から、メチル基、ベンジル基等の炭素数7以下の炭化水素基であることが好ましい。更に、合成の容易さから、mは2又は3であることが好ましく、nは1又は2であることが好ましい。
〔(G)アルカリ水可溶性高分子化合物〕
本発明に適用可能な架橋層に使用可能なアルカリ水可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。前記ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
中でも、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下、反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好ましい。
前記ノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000のものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いればよい。
また、前記側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも好ましく、該ポリマー中のヒドロキシアリール基としては、OH基が1以上結合したアリール基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられ、中でも、入手の容易性及び物性の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
本実施の形態に使用可能な、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーとしては、例えば、下記一般式(G−1)〜(G−4)で表される構成単位のうちのいずれか1種を含むポリマーを挙げることができる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
Figure 2009145841
一般式(G−1)〜(G−4)中、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12及びR13は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基又は炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。また、R12とR13が結合、縮環してベンゼン環やシクロヘキサン環を形成していてもよい。R14は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R15は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R16は、単結合又は炭素数10以下の2価の炭化水素基を表す。Xは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を表す。pは、1〜4の整数を表す。q及びrは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
これらのアルカリ可溶性高分子としては、特開2001−142230号公報の段落番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されている。
本実施の形態に使用可能なアルカリ水可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を組合せて使用してもよい。
アルカリ水可溶性高分子化合物の添加量としては、画像形成層の全固形分に対し5〜95質量%が好ましく、10〜95質量%がより好ましく、20〜90質量%が最も好ましい。
アルカリ水可溶性樹脂の添加量が、5質量%未満であると、画像形成層の耐久性が劣化することがあり、95質量%を超えると、画像形成されないことがある。
また、本発明に係る画像形成層に適用できる公知の記録材料としては、特開平8−276558号公報に記載のフェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特開平7−306528号公報に記載のジアゾニウム化合物を含有するネガ型記録材料、特開平10−203037号公報に記載されている環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架橋反応を利用したネガ型画像形成材料などが挙げられ、これらに記載の画像形成層を本発明におけるネガ型画像形成層としての酸架橋層に適用することができる。
[その他の成分]
このようなネガ型の画像形成層には、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
また、本発明においては、画像形成層が重合硬化層である場合、塗布液の調製中或いは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
また、本発明における画像形成層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像形成層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
更に、本発明における画像形成層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
3.疎水化前駆体含有画像形成層
本発明の平版印刷版用支持体に適用し得るさらなる画像形成層として、加熱又は輻射線の照射により疎水性領域を形成しうる化合物(以下、適宜、疎水化前駆体と称する)を含有する感熱画像形成層が挙げられる。このような画像形成層は、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、又は、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルなどのように、加熱により、互いに融着したり、例えば、マイクロカプセルであれば、その内包物が熱により化学反応を起こしたりして、画像部領域即ち疎水性領域(親インク領域)を形成する化合物を含有し、これらは好ましくは、親水性のバインダー中に分散されているので、画像形成(露光)後は、印刷機シリンダー上に平版印刷版原版を取付け、湿し水及び/又はインキを供給することで、特段の現像処理を行なうことなく、機上現像できることが特徴である。
このような画像形成層は、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、又は、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有する。
上記(a)及び(b)に共通の熱反応性官能基としては、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基)、付加反応を行うイソシアネート基又はそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基)、同じく付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基又はヒドロキシル基が挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基は、これらに限定されず、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよい。
[(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー]
(a)微粒子ポリマーに好適な熱反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物基及びそれらを保護した基が挙げられる。熱反応性官能基のポリマー微粒子への導入は、ポリマーの重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
熱反応性官能基をポリマーの重合時に導入する場合は、熱反応性官能基を有するモノマーを用いて乳化重合又は懸濁重合を行うのが好ましい。
熱反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチルアクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、二官能アクリレート、二官能メタクリレートが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有するモノマーは、これらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有しないモノマーは、これらに限定されない。
熱反応性官能基をポリマーの重合後に導入する場合に用いられる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応が挙げられる。
上記(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの中でも、画像形成性の観点からは、微粒子ポリマー同志が熱により容易に融着、合体するものが好ましく、また、機上現像性の観点から、その表面が親水性で、水に分散するものが、特に好ましい。また、微粒子ポリマーのみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度よりも高い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。
微粒子ポリマー表面の親水性をこのような好ましい状態にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマー或いはオリゴマー、又は親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてやればよいが、微粒子の表面親水化方法はこれらに限定されるものではなく、公知の種々の表面親水化方法を適用することができる。
(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの熱融着温度は、70℃以上であることが好ましいが、経時安定性を考えると80℃以上が更に好ましい。ただし、あまり熱融着温度が高いと感度の観点からは好ましくないので、80〜250℃の範囲が好ましく、100〜150℃の範囲であることが更に好ましい。
(a)微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのが好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
(a)微粒子ポリマーの添加量は、画像形成層固形分の50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%が更に好ましい。
[(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル]
(b)マイクロカプセルに好適な熱反応性官能基としては、先に(a)、(b)に共通のものとして挙げた官能基の他、例えば、重合性不飽和基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアネートブロック体などが挙げられる。
重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であるのが好ましい。そのような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定されずに用いることができる。これらは、化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、即ち、二量体、三量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、及びそれらの共重合体である。
具体的には、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)、そのエステル、不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが好ましい。
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又は不飽和カルボン酸アミドと単官能若しくは多官能のイソシアネート又はエポキシドとの付加反応物、及び、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に用いられる。
また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミドと、単官能若しくは多官能のアルコール、アミン又はチオールとの付加反応物、及び、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミドと、単官能若しくは多官能アルコール、アミン又はチオールとの置換反応物も好適である。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸又はクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
これらの具体的な化合物としては、本願出願人が先に提案した特開2001−27742号公報の段落番号〔0014〕乃至〔0035〕に、また、これらの化合物を内包するマイクロカプセルの詳細な製造方法については、同〔0036〕乃至〔0039〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用し得る。
(b)マイクロカプセルに好適に用いられるマイクロカプセル壁は、三次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、又はこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよい。
(b)マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な解像度と経時安定性が得られる。
(b)熱反応性官能基を有するマイクロカプセルを用いた画像形成機構では、マイクロカプセル材料、そこに内包物された化合物、更には、マイクロカプセルが分散された画像形成層中に存在する他の任意成分などが、反応し、画像部領域即ち疎水性領域(親インク領域)を形成するものであればよく、例えば、前記したようなマイクロカプセル同士が熱により融着するタイプ、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面或いはマイクロカプセル外に滲み出した化合物、或いは、マイクロカプセル壁に外部から浸入した化合物が、熱により化学反応を起こすタイプ、或いは、それらのマイクロカプセル材料や内包された化合物が添加された親水性樹脂、或いは、添加された低分子化合物と反応するタイプ、2種類以上のマイクロカプセル壁材或いはその内包物に、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせるものを用いることによって、マイクロカプセル同士を反応させるタイプなどが挙げられる。
従って、熱によってマイクロカプセル同志が、溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
(b)マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、10〜60質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範囲であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度及び耐刷性が得られる。
(b)マイクロカプセルを画像形成層に添加する場合、内包物が溶解し、かつ、壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましく、15〜85質量%であるのが特に好ましい。
[その他の成分]
本態様における感熱画像形成層には、前記画像形成性を有する(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、又は、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのほか、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。
(反応開始剤、反応促進剤)
前記感熱画像形成層においては、必要に応じてこれらの反応を開始し又は促進する化合物を添加してもよい。反応を開始し又は促進する化合物としては、例えば、熱によりラジカル又はカチオンを発生するような化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩又はジフェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートが挙げられる。
これらの化合物は、画像形成層固形分の1〜20質量%の範囲で添加するのが好ましく、3〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果又は反応促進効果が得られる。
(親水性樹脂)
本発明におけるこのような感熱画像形成層には親水性樹脂を添加しても良い。親水性樹脂を添加することにより機上現像性が良好となるばかりか、感熱画像形成層自体の皮膜強度も向上する。
親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、並びに加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
親水性樹脂の感熱画像形成層への添加量は、画像形成層固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。この範囲内で、良好な機上現像性と皮膜強度が得られる。
このような熱応答性の画像形成層(感熱画像形成層)を、赤外線レーザ光の走査露光等により画像形成するため、(A)赤外線吸収剤を画像形成層に含有させる。好ましい添加量は、画像形成層塗布液全固形分中、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。含有量が上記範囲にあると、感度、画像形成性ともに優れた画像形成層となる。
疎水化前駆体を含む画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に溶解、若しくは分散し、塗布液を調製し、前記支持体の親水性表面上に塗布される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
(その他の平版印刷版原版)
本発明は、赤外線レーザ露光以外の平版印刷版原版にも好ましく用いることができる。以下に、赤外線レーザ露光以外の平版印刷版原版及び画像形成層の例について詳細に説明する。
ポジ型画像形成層の好ましい例としては、以下に示す従来公知のポジ型画像形成層[(a)〜(b)]を挙げることができる。
(a)ナフトキノンジアジドとノボラック樹脂とを含有してなる従来から用いられているコンベンショナルポジ型画像形成層。
(b)酸分解性基で保護されたアルカリ可溶性化合物と酸発生剤との組み合わせを含有してなる化学増幅型ポジ型画像形成層。
上記(a)及び(b)は、いずれも当分野においてはよく知られたものであるが、以下に示すポジ型画像形成層((c)〜(f))と組み合わせて用いることが更に好適である。
(c)特開平10−282672号に記載の現像処理不要な平版印刷版を作製することができる、スルホン酸エステルポリマーと赤外線吸収剤とを含有してなるレーザー感応性ポジ型画像形成層。
(d)EP652483号、特開平6−502260号に記載の現像処理不要な平版印刷版を作製することができる、カルボン酸エステルポリマーと、酸発生剤若しくは赤外線吸収剤とを含有してなるレーザー感応性ポジ型画像形成層。
(e)特開平11−095421号に記載のアルカリ可溶性化合物、及び熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含有してなるレーザー感応性ポジ型画像形成層。
(f)アルカリ現像溶出型ポジ平版印刷版を作製することができる、赤外線吸収剤、ノボラック樹脂、及び溶解抑止剤を含有してなるアルカリ現像溶出ポジ型画像形成層。
本発明の平版印刷版原版は、中間層上に、画像記録層用塗布液を塗布して画像形成層を形成することで、製造することができる。
本発明の平版印刷版原版は、中間層や画像形成層に加え、目的に応じて、保護層、樹脂中間層、下塗り層、バックコート層などを有していてもよく、これらの層は、画像形成層と同様に塗布法により形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を、また、水溶性の画像形成層を用いる場合には、水、或いはアルコール類等の水性溶媒を挙げることができるがこれに限定されるものではなく、画像形成層の物性にあわせて適宜選択すればよい。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/mが好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
<支持体>
本発明における支持体には、公知の任意のものを用いることが可能であるが、好ましい例としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板が特に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。後述のような親水化処理が施されたものを用いることもまた好ましい。
本発明において好適な支持体としてのアルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。
このようなアルミニウム支持体には、後述の表面処理が施され、親水化されることが好ましい。
(粗面化処理)
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更、塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組合せて用いることもできる。その中でも、粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm〜400C/dmの範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm〜400C/dmの条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度範囲の15〜65質量%硫酸と接触させる方法、及び、特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
以上のように処理された後、処理面の表面粗さRaが、好ましくは、0.2〜0.7μm、更に好ましくは、0.3〜0.65μm、特に好ましくは、0.45〜0.60μmであれば、特に、方法、条件は限定しない。
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理には、電解浴の主成分として、硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液を単独、若しくは複数種類組合せて用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属イオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/mの範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。
以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/mの範囲に入るように処理条件が選択されることが好ましい。
(親水化処理)
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として2〜40mg/m、より好ましくは4〜30mg/mで形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
前記親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記の陽極酸化処理及び親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
<保護層>
本発明の平版印刷版原版が、前述のような重合硬化層(ネガ型画像形成層)を有する場合、画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や水分、塩基性物質等の低分子化合物の画像形成層への混入を防止する目的で、該画像形成層の上に、保護層を設けることが好ましい。
本発明においては、保護層が、ポリビニルアルコールと、有機樹脂からなる微粒子と、雲母粒子と、を含有することが好ましい。なお、本発明における保護層は重層構造を有していてもよく、その場合、最上層が、ポリビニルアルコール、有機樹脂からなる微粒子、及び雲母粒子を含有する層であることが好ましい。このような保護層を設置することにより、塗布液中での有機樹脂微粒子の安定性向上、膜強度の向上、マット性の付与がなされ、感度の向上だけではなく、経時保存性の向上や、セーフライト適性の向上が達成できると共に、変形などによる劣化やキズの発生を抑制することが可能となる。また、更に、保護層にマット性が付与した場合には、平版印刷版原版を積層した場合、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する別の平版印刷版原版の支持体裏面との接着防止及び、保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを抑制することが可能となる。
以下、有機樹脂からなる微粒子、雲母粒子(雲母化合物)、ポリビニルアルコール、について説明する。
(有機樹脂からなる微粒子)
本発明における有機樹脂からなる微粒子は、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版の支持体裏面との接着及び、保護層表面とアルミニウム支持体裏面との間で生じるこすりキズを抑制するために添加するものである。このような、マット剤として働く微粒子に望まれる基本的特性は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、空気中の湿分や、温度によって、軟化したり、ベトついたりすることが無い、保護層表面に適当な、凹凸を付与し、接着表面積を減少させるものが好ましい。また、こすりキズ抑制の観点からは、マット粒子は、比較的柔かく、弾性が有り、硬いAl面とこすれた時に生じる応力を緩和できるものが好ましい。更に、微粒子は保護層のバインダーである、ポリビニルアルコールと親和性が高く、膜中に良く混練され、膜表面から脱離することが無いものが好ましい。加えて、有機樹脂からなる微粒子の大きさは、平均粒径が2.0から15μm、好ましくは、3.0μmから12μmである。粒径の分布は単分散でも多分散でも良いが、単分散が好ましい。
このような特性を備えた有機樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、及びそれらとポバールとの共重合体、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル類などの合成樹脂粒子、及びキチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロース等の天然高分子微粒子が挙げられる。中でも、合成樹脂微粒子は、粒子サイズ制御の容易さや、表面改質により所望の表面特性を制御し易いなどの利点がある。
このような、有機樹脂からなる微粒子の製造方法は、PMMAのような比較的に硬い樹脂では、破砕法による微粒子化も可能であるが、乳化・懸濁重合法により粒子を合成する方法が、粒子径制御の容易性、精度から現在主流に採用されている。これら微粒子粉体の製造方法は、「超微粒子と材料」日本材料科学会編、裳華房1993年発刊、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版2005年発刊等に詳細に記載されている。
これら有機樹脂からなる微粒子の市販品としては、綜研化学社製の架橋アクリル樹脂MX−300、MX−500、MX−1000、MX−1500H、MR−2HG、MR−7HG,MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−7G、MR−10G、MR−5C、MR−7GC、スチリル樹脂系のSX−350H、SX−500H、積水化成品工業製のアクリル樹脂MBX−5、MBX−8、MBX−12MBX−15、MBX−20,MB20X−5、MB30X−5、MB30X−8、MB30X−20、SBX−6、SBX−8、SBX−12、SBX−17、三井化学製のポリオレフィン樹脂ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W405、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100、根上工業製のポリアクリル樹脂アートパール J−5P、J−6P、J−7Pなどが挙げられる。
これらの有機樹脂からなる微粒子は、粉体で供給されるものは、ポリビニルアルコールの水溶液中に、ホモジナイザーや、ホモミキサー、ボールミル、ペイントシェーカーなどの簡易な分散機により分散する。このとき必要により界面活性剤を加え、分散すると分散した粒子はより安定化する。このような分散に用いる界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、何れも使用可能である。ノニオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルエステル類、ポリエチレングリコールアリールエーテル類などが挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキル又はアリールスルホン酸塩型、アルキル又はアリール硫酸エステル塩型、アルキル又はアリールリン酸塩エステル型、アルキル又はアリールカルボン酸塩型の界面活性剤が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩型、アルキルピリジニウム塩型、アルキルアンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。より具体的には、これら界面活性剤の更に多くの具体例については「最新・界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」堀内照夫、鈴木敏幸編集 技術教育出版社に記載されるものを挙げることができる。
なお、三井化学製ケミーパルシリーズの微粒子では、水に分散した状態で供給されるため、これらの分散物を、直接、ポリビニルアルコールの水溶液中に添加撹拌し、保護層用塗布液を作製する。
保護層に含まれる有機樹脂からなる微粒子の真比重は、0.90から1.30の範囲にあり、平均粒子径が2.0〜15μmであることが好ましく、真比重が、0.90から1.20の範囲にあり、3.0〜12μmであることがより好ましい。
この有機樹脂からなる微粒子の保護層固形分中の含有量は、1.0質量%〜20質量%が好ましく、2.0質量%〜10質量%がより好ましい。添加量が少なすぎると、表面マット効果が発現せず、接着防止効果や、耐キズ性効果は不十分となり、添加量が多すぎると、感度低下や、保護層表面から粒子が離脱して、故障の原因となる。
(雲母化合物)
本発明において用いられる雲母粒子とは、例えば、一般式:A(B,C)2−510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K,Na,Caの何れか、B及びCは、Fe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、Dは、Si又はAlである。〕などで表される天然雲母、合成雲母等の雲母群などが挙げられる。
上記雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に、合成スメクタイトも有用である。
本発明においては、上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、この膨潤性合成雲母は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明において有用であり、特に、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
本発明において使用される雲母化合物の形状としては、有機樹脂微粒子への吸着の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
本発明において使用される雲母化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは、厚さが1〜50nm、面サイズ(長径)が1〜20μm程度である。
雲母化合物の保護層に含有される量は、有機樹脂からなる微粒子の添加量及び種類によるが、有機樹からなる脂微粒子の質量に対して雲母粒子の質量比が3:1から2:3の範囲であることが好ましく、2:1から1:1の範囲がより好ましい。有機樹脂からなる微粒子に対し少なすぎると、分散性向上の効果は小さく、多すぎると、支持体裏面と擦り合わせた時の耐キズ性が低下する。複数種の雲母化合物を併用した場合でも、これらの雲母化合物の合計の量が上記の重量比であることが必要である。
(ポリビニルアルコール)
本発明における保護層に必要な要件は、画像形成層との密着性には優れるが、その表面は低接着性でかつ、露光後の現像工程で容易に除去できることである。
このような保護層に望まれる基本的特性を得るために、本発明においては、保護層のバインダー成分として、ポリビニルアルコールを用いる。ポリビニルアルコールは優れた被膜形成性と比較的に低接着性表面を有する。
本発明において用いられるポリビニルアルコールは、ケン化度が85〜99、好ましくは91.0〜99である。ケン化度がこの範囲であれば、必要な酸素遮断性と低接着性表面を有するため、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部が、エステル、エーテル及びアセタールで置換されていてもよいし、また、一部が変性されていてもよいし、更に、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。
一般には、使用するポリビニルアルコールのケン化度が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)酸素遮断性が高くなる。本発明に係る保護層において、例えば、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールと、雲母化合物及び有機樹脂からなる微粒子とを併用することにより、保護層の酸素遮断性を更に一層向上させることができる。
ポリビニルアルコールは、重合度が200〜2400の範囲のものが好ましい。
具体的には、株式会社クラレ製の、PVA−102、PVA−103、PVA−104、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−117H、PVA−135H、PVA−HC、PVA−617、PVA−624、PVA−706、PVA−613、PVA−CS、PVA−CST、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセノールNL−05、NM−11、NM−14、AL−06、P−610、C−500、A−300、AH−17、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、JF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JM−05、JM−10、JM−17、JM−17L、JT−05、JT−13、JT−15等が挙げられる。
更に、本発明において好ましい特定ポリビニルアルコールとしては、例えば、イタコン酸やマレイン酸変性のカルボキシ変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコール等も好適なものとして挙げられる。
これら酸変性ポリビニルアルコールも好ましく使用できる。好適な酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製のKL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製のゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製のAF−17、AT−17等が挙げられる。
上記のポリビニルアルコールは、保護層中の全固形分量に対して、45〜95質量%の範囲で含有されることが好ましく、50〜90質量%の範囲で含有されることがより好ましい。45質量%未満であると被膜形成性が不十分で感度が低下し、95質量%を超えると、積層した平版印刷版原版同士の接着を抑制する効果が表れにくくなる。
上記ポリビニルアルコールは、少なくとも1種を用いればよく、複数種を併用してもよい。複数種のポリビニルアルコールを併用した場合でも、その合計の量が上記の質量範囲であることが好ましい。
なお、本発明における保護層は、その効果を損なわない範囲において、ポリビニルアルコール以外のバインダー成分を含んでいてもよい。
保護層中のポリビニルアルコールの含有量や中間層の被覆量等は、酸素遮断性・現像除去性、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。
本発明における保護層は、25℃−60%RH1気圧における酸素透過度が、0.5ml/m・day以上100ml/m・day以下であることが好ましく、この酸素透過度を達成する組成を選択することが好ましい。
また、本発明に係る保護層には、画像形成層を露光する際に用いる光(本発明においては赤外光)の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
(保護層の形成)
本発明における保護層は、有機樹脂からなる微粒子が分散する分散液と雲母化合物が分散する分散液とを攪拌混合し、その分散液と、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分(又は、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分を溶解した水溶液)と、を配合してなる保護層用塗布液を、画像形成層上に塗布することで形成される。
保護層に用いる雲母化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に雲母化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性雲母化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した雲母化合物の2〜15質量%の分散物は高粘度或いはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。
この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、有機樹脂からなる微粒子の水分散物と混合し、充分攪拌した後、ポリビニルアルコールを含むバインダー成分(又は、特定ポリビニルアルコールを含むバインダー成分を溶解した水溶液)と配合して調製するのが好ましい。
この保護層用塗布液には、塗布性を向上のための界面活性剤や被膜の物性改良のための水溶性の可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。更に、この塗布液には、画像形成層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
本発明に係る保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号又は特開昭55−49729号に記載されている方法を適用することができる。
本発明に係る保護層の塗布量は、0.1g/m〜4.0g/mであることが好ましい。更に好ましくは0.3g/m〜3.0g/mである。0.1g/m未満であると、保護層の膜強度が維持できず、耐キズ性が悪化する場合がある。また、3.0g/mを超えると、露光により保護層に入射した光の散乱が発生し、画質悪化を引き起こしたり、酸素透過度が下がりすぎて、セーフライト適性が悪化する場合がある。
なお、本発明に係る保護層は、重層構造を有していてもよい。その際にも、塗布量は、その重層構造の保護層の総量で上記の範囲にあることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版は、支持体と画像形成層との密着性に優れると共に、現像により速やかに親水性の支持体表面が露出することで、非画像部の印刷汚れ性が改善され、厳しい印刷条件においても、高画質の印刷物が多数枚得られる。
本発明の平版印刷版原版は、その画像形成層に応じた公知の製版方法を適用し、平版印刷版を得ることができる。
その後、得られた平版印刷版は、印刷機にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
(消去処理)
なお、画像形成層が露光により可溶化するポジ型である場合、画像露光、及び現像処理の後、得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば、原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去する消去処理を行うことができる。
この消去処理は、具体的には、例えば、オリジナル画像の一部を消去して用いる場合、非画像部領域に所望されない残膜が生じた場合、連続処理において画像と画像との境界面が露光されずに残る場合などに使用され、形成された画像の画質に大きな影響を与えるものである。
本発明の平版印刷版原版において、前記特定グラフト共重合体を含有する中間層は、比較的極性が高い構造単位を有しており、極性溶媒への溶解性に優れる。消去処理で用いられる消去液は高極性の成分を有することから、本発明における特定グラフト共重合体は消去液に対して親和性に優れ、消去処理により容易に除去されて、非画像部に汚れのない、優れた画像が形成される。つまり、本発明の平版印刷版原版がポジ型画像形成層を有する態様である場合には、消去性に優れるといった効果も更に有するものである。
消去処理は、例えば、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開昭59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
以下、消去処理に用いられる消去液の一般的な組成について説明する。
消去液は、一般的には、画像形成層を溶解するための有機溶剤と、汚れを防止するための酸性物質、及び、フッ素系界面活性剤を含むものが好ましい。また、消去液は、更に、水、印刷インキ、画像部保護等の現像インキを除去する溶剤、湿潤剤、粘性調整剤、着色剤、上記フッ素系界面活性剤以外の界面活性剤を必要により含有することができる。
画像形成層を溶解するための有機溶剤としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ヘキサノラクトンなどのラクトン類(慣用名:環状分子内エステル)、メトキシグリコール、エトキシグリコールなどのグリコール類、メチル−イソブチルケトン、エチル−イソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、その他ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの特殊溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独又は2種以上を併用することができるが、消去液の全成分に対し25〜99.89質量%添加するのが好ましい。
汚れを防止するための酸性物質としては、リン酸、フッ化水素、フッ化ジルコン酸等のフッ素含有化合物、クエン酸、乳酸等が挙げられるが、これらのうちリン酸、フッ素含有化合物が好ましく、なかでも、排液処理の容易性からはリン酸を使用するのが特に好ましい。
これらの酸性物質も単独又は2種以上を併用することができる。添加量は0.1〜20質量%が好ましく、リン酸の場合には0.5〜15質量%が好ましい。
また、消去液中に、1〜20質量%の水を添加すると酸性度が上がり、汚れ防止効果が向上したり、汚れ防止のため保護ガム引きをした後の版の場合には、保護ガムを事前に水で除去することなく消去作業することができる利点を有する。
消去液に使用されるフッ素系界面活性剤としては、陰イオン性又は非イオン性のフッ素系界面活性剤が好ましいが、非イオン性のフッ素系界面活性剤が特に好ましい。非イオン性のフッ素系界面活性剤の特に好ましい例としては、下記一般式(i)又は(ii)で示されるフルオロ脂肪族基とポリオキシアルキレン基とを有するフルオロ脂肪族オリゴマーが挙げられる。
(RQ[(OR)Q’A] (i)
[(RQ{(OR)Q’A’} (ii)
ここでRはフルオロ脂肪族基を示し、QはRとORとを共有結合させる連結基を示し、ORはポリオキシアルキレン基を示し、Aは一価の末端有機基、例えば、アシル基、アルキル基、アリール基などを示し、A’は、少なくとも1つはQと結合したRが他のQに結合することを条件に、A又は単結合を示し、Q’はA又はA’とRとを共有結合させる結合基を示し、mは2以上の整数を示し、nは2以上の整数を示し、xは5以上の整数を示す。
本発明において好適に用いられる消去液に使用されるフッ素系界面活性剤は、市販品として入手することができ、具体的な例としては、FC−430、FC−431(以上3M社製)、メガファックF−141、同F−142、同F−142D、同F−143、同F−144、同F−144D、同F−528、同F−170、同F−171、同F−172、同F−173、同F−177、同F−183、同F−184(以上、大日本インキ化学工業(株)製)などを挙げることができる。
フッ素系界面活性剤の添加量は、使用する溶剤や他の添加剤などによって変わるが消去液の全組成物中0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%が特に好ましい。
消去液に含まれる任意成分である湿潤剤の好ましい種類としては、水に可溶な多価アルコール類、例えば、グリセリン、グリコール、ポリグリコール等が有用である。湿潤剤の添加により、消去部分の有機溶剤の蒸発による乾燥を防止するのを補助したり、消去液を水又は現像液で除去するまで親水性を保持させることができる。
粘度調整剤は、被消去域に消去液を塗布する際、消去液の流動性を低下させることにより、消去液のにじみを減少させるのを補助したり、塗被する際の筆などの塗布用具からのたれを抑制し、ハンドリング性を向上するために添加することができる。このような粘度調整剤は、処理後に流水で完全に除去しうるものが好ましく、水溶性の樹脂であって、他の消去液成分に可溶性のものが好ましい。
具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の改質セルロース、ポリ酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、二酸化ケイ素の微粉末でアエロジルの商品名をもつ物質も、粘度調整剤として使用しうる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〜7、比較例1〜3〕
(サーマルポジ型平版印刷版原版)
−アルミニウム基板の作製−
JIS A 1050のアルミニウム材料を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った。引き続き冷間圧延を行って、厚さ0.3mm、幅1060mmに仕上げ、アルミニウム板ALを得た。
<表面疎面化処理>
アルミニウム板ALに対し、以下に示す表面疎面化処理に供して、平版印刷版用支持体P−1、P−2を得た。
表面処理は、以下の(a)〜(e)の処理を連続的に(表1に記載のとおり)行うことにより実施した。
Figure 2009145841
(a)ブラシと研磨剤を用いる機械的粗面化処理
比重1.13のパミストン(平均粒径30μm)を水に懸濁させた懸濁液を研磨スラリー液として用い、回転ブラシを1本とし、粗面化後のRaが0.58μmとなるようにブラシ回転数250rpmで機械的粗面化を行った。
ローラ状ブラシとしては、毛長50mm、毛の直径0.295mmの6・10ナイロンの毛を、直径300mmのステンレス鋼製ローラの表面に孔を開けて密になるように植設したものを用いた。
ブラシ下部の2本の支持ローラは、直径200mmのステンレス鋼製ローラを中心間の距離300mmで用いた。
ローラ状ブラシは、ブラシを回転させる駆動モータの負荷がブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kwプラスになる圧力で押し付け、粗面化面における回転方向がアルミニウムウェブWの搬送方向と同方向になるように回転させた。
研磨材スラリーの温度と比重とから研磨材の濃度を連続的に求め、濃度が一定になるように、水及びパミストンをスラリー回収槽に補充しつつ、機械的粗面化を行った。また、機械的粗面化において粉砕され、細粒化したパミストンは、粒子径調整部における分級器で除去し、前記研磨材スラリー中のパミストンの粒度分布がほぼ一定になるようにした。なお、分級器としては、サイクロンを用いた。
(b)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度370g/L、アルミニウムイオン濃度100g/L、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、3g/mであった。その後、ニップローラで液切りし、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを80mm間隔で有する構造を有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理した後、ニップローラで液切りした。
(c)電気化学的粗面化処理
特開2005−35034号公報の35ページ(b)から36ページ(h)に記載の方法により、電気化学的粗面化処理を実施した。
(d)陽極酸化処理
特開2005−35034号公報の図4に示される陽極酸化処理装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解液としては、170g/L硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度33℃)を用いた。陽極酸化処理は、アルミニウム板がアノード反応する間(約16秒)の平均電流密度が15A/dmとなるように行い、最終的な酸化皮膜量は2.4g/mであった。なお、アルミニウム板がアノード反応にあずかる時間は16秒であった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りした。
(e)シリケート処理
アルミニウム板をケイ酸ソーダ2.5質量%水溶液(液温20℃)に10秒間浸せきさせた。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム板表面のSi量は、3.5mg/mであった。その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りした。更に、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させた。
−中間層の形成−
まず、下記表2に記載の特定グラフト共重合体又は比較用化合物を、濃度が0.31質量%となるようにメタノールに溶解した。なお、メタノールへの溶解性が低い化合物については、上記濃度の溶液が調製されるまで、メタノールに対しN−メチルピロリドンを混合した混合溶液を使用した。
次に、調製された溶液を、下記表2に記載の支持体上に固形分量が17mg/mとなるように塗布し、120℃で1分間加熱乾燥させて中間層を形成した。
なお、下記表2及び表3中に記載の特定グラフト共重合体(a−10)、(a−11)、(a−16)、及び(a−17)等は、前述した具体例を示す。また、比較用化合物(C−1)、(C−2)は、下記の構造を有する化合物である。
Figure 2009145841
−画像形成層の形成−
前記のようにして形成された中間層上に、下記の方法で画像形成層を形成し、実施例1〜7、比較例1〜3のポジ型平版印刷版原版を得た。
即ち、以下の画像形成層用塗布液1をバーコーターで塗布し、TABAI社製PERFECT OVEN PH200にて130℃50秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が1.3g/mの画像形成層(下層)を設けた。その後、以下の画像形成層用塗布液2をバーコーターで塗布し、TABAI社製PERFECT OVEN PH200にて130℃60秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が0.26/mの画像形成層(上層)を設けた。
(ポジ型画像形成層用塗布液1)
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/
アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体 1.9g
(36/34/30質量%:重量平均分子量50000、酸価2.65)
・m/pクレゾールノボラック 0.3g
(m/p=6/4、重量平均分子量4500、未反応クレゾール0.8質量%含有)
・シアニン染料A(下記構造) 0.13g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.13g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−
ナフタレンスルホン酸イオンに変えたもの 0.078g
・フッ素系界面活性剤 0.2g
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製メチルエチルケトン30%)
・メチルエチルケトン 16.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
・γ−ブチロラクトン 8.0g
Figure 2009145841
(ポジ型画像形成層用塗布液2)
・フェノール/m/pクレゾールノボラック 0.27g
(フェノール/m/p=5/3/2、質量平均分子量5000、未反応クレゾール0.8質量%含有)
・アクリル系樹脂B(下記構造) 0.042g
・シアニン染料A(前記構造) 0.019g
・長鎖アルキル基含有ポリマーA(後述のもの) 0.042g
・スルホニウム塩化合物C(下記構造) 0.065g
・アンモニウム化合物D(下記構造) 0.004g
・フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製メチルエチルケトン30%)
・フッ素系界面活性剤E(下記構造)
(メチルエチルケトン60%) 0.032g
・メチルエチルケトン 13.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.0g
Figure 2009145841
Figure 2009145841
[合成例1:長鎖アルキル基含有ポリマーAの合成]
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール59gを入れ、80℃に加熱した。窒素気流下、n−メタクリル酸ステアリル42.0g、メタクリル酸16.0g、重合開始剤V−601(和光純薬製)0.714g、及び1−メトキシ−2−プロパノール59gからなる溶液を2時間半かけて滴下した。更に、80℃で2時間反応させた。反応混液を室温に冷却して、1000mlの水に反応液を注ぎ込んだ。デカンテーション後、メタノールで洗浄し、得られた液状生成物を減圧乾燥することで、下記に示す長鎖アルキル基含有ポリマーA73.5gを得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均分子量を測定した結果、66,000であった。
Figure 2009145841
−平版印刷版原版の評価−
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetter3244VFSにて、ドラム回転速度150rpm、版面エネルギー100mJ/cmの条件で露光した。その後、富士フイルム(株)製自動現像機LP−940Hに、富士フイルム(株)製現像液DT−2(1:8で希釈したもの)及び富士フイルム(株)製フィニッシャーFG−1(1:1で希釈したもの)を仕込み、現像液温度32℃、現像時間12秒で現像処理した。この時の現像液の電導度は43mS/cmであった。現像後の平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロン226を用いて印刷した。
画像部の耐刷性、非画像部の汚れ防止性、及び消去性について、下記の方法にて評価した。
(1)画像部の耐刷性の評価
前記のように印刷に供して、どれだけの枚数が十分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて評価した。この数字が大きいほど、耐刷性に優れている。評価結果を表2に示す。
(2)非画像部の汚れ防止性の評価
三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。評価結果を表2に示す。
汚れ防止性をブランケットの汚れの程度が少ない方から◎、○、△、×の4段階で評価した。
◎:全く汚れず
○:目視では汚れが確認できず(ルーペで確認できる程度)
△:部分的に汚れる
×:完全に汚れる
(3)消去性の評価
現像後の平版印刷版の画像部の一部を、富士フイルム(株)製消去液RP−1Kを用いて処理し、前述のように印刷を行って、非画像部における汚れ発生の有無を目視にて確認した。評価結果を表2に示す。
汚れの程度が少ない方から◎、○、△、×の4段階で評価した。
◎:全く汚れず
○:目視では汚れが確認できず(ルーペで確認できる程度)
△:部分的に汚れる
×:完全に汚れる
Figure 2009145841
表2の結果から、以下のことがわかる。
実施例1〜5及び比較例1、2の平版印刷版原版は、シリケート処理を行ったアルミニウム支持体を用いたものである。
実施例1〜5の平版印刷版原版は、中間層に特定グラフト共重合体を用いたものであり、耐刷性、汚れ防止性、消去性の点で優れた性能を示し、比較例1、2と比べて、特に耐刷性の点で優れていることが分かる。
これに対し、中間層に比較用化合物(C−1)(ランダム共重合体)を用いた比較例1は、耐刷性の点で劣っていることが分かる。また、中間層に比較用化合物(C−2)(ランダム共重合体)を用いた比較例2は、汚れ性、及び消去性の点で劣っていることが分かる。
また、実施例6、7及び比較例3の平版印刷版原版は、シリケート処理を行わなかったアルミニウム支持体を用いたものである。
実施例6、7の平版印刷版原版は、中間層に特定グラフト共重合体を用いたものであり、中間層に比較用化合物(C−2)(ランダム共重合体)を用いた比較例3の平版印刷版原版に比べ、耐刷性に優れ、また、汚れ防止性も良好であることが分かる。
また、実施例7の平版印刷版原版のように、一般式(1)で表される部分構造と、一般式(2)で表される部分構造とのいずれをも枝成分に有する特定グラフト共重合体を用いた場合も、実施例1〜6の平版印刷版原版と同様に、耐刷性、汚れ防止性、及び消去性ともに良好な結果を得ることができた。
このように、本実施例においては、高分子化合物の精密構造の制御により中間層の性質が変化し、従来公知の高分子化合物を用いた中間層に比べて、耐刷性、汚れ防止性の優れた平版印刷版原版が得られるという予想外の効果を奏することがわかる。
〔実施例8〜11、比較例4、5〕
−サーマルネガ型平版印刷版原版(酸架橋型)−
−中間層の形成−
下記表3に記載の特定グラフト共重合体又は比較用化合物を、濃度が0.31質量%となるようにメタノールに溶解した。得られた溶液を前記表1に記載の支持体P−2上に固形分量が10mg/mとなるように塗布し、120℃で1分間加熱乾燥させて中間層を形成した。
−画像形成層−
下記組成のネガ型画像形成層塗布液を調製し、画像形成層塗布液を上記のようにして形成された中間層上に乾燥後の塗布量(画像形成層の塗布量)が1.3g/mになるよう塗布し、乾燥させてサーマルネガタイプの画像形成層を形成し、サーマルネガ型平版印刷版原版を得た。
<ネガ型画像形成層塗布液>
・赤外線吸収剤:シアニン染料A(前記構造) 0.07g
・酸発生剤[SH−1](下記構造) 0.3g
・架橋剤[KZ−1](下記構造) 0.5g
・アルカリ可溶性高分子 1.5g
(マルカリンカーM S−4P、丸善石油化学(株)製)
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.035g
(保上ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・無水フタル酸 0.05g
・メチルエチルケトン 12g
・メチルアルコール 10g
・1−メトキシ−2−プロパノール 4g
・3−メトキシ−1−プロパノール 4g
Figure 2009145841
〔露光、現像処理、及び印刷〕
得られたネガ型平版印刷版原版10を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光後、ウィスコンシン社製オーブンにて288°F、75秒間、加熱処理した後、富士写真フイルム(株)製自動現像機LP940Hを用いて現像処理を行い、実施例10のネガ型平版印刷版10を得た。現像液は、同社製DP−4の1:8水希釈水を用い、現像浴の温度は30℃とし、フィニッシャーは、同社製FP−2Wの1:1水希釈液を用いた。
現像後の平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。
〔評価〕
上記で得られたネガ型平版印刷版について、実施例1と同様の方法で、耐刷性、及び汚れ防止性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 2009145841
表3の結果より、画像形成層をサーマルネガ型に代えた場合においても、サーマルポジ型画像形成層におけるのと同様に、中間層に特定グラフト共重合体を用いた実施例8〜11の平版印刷版原版では、耐刷性、及び汚れ防止性が、いずれも良好であることが確認された。一方で、中間層に比較用化合物(ランダム共重合体)の(C−1)、(C−2)を用いた比較例4、5の平版印刷版原版では、実施例8〜11に比べて耐刷性と汚れ防止性の点で、劣っていた。
〔実施例12〜15、比較例6、7〕
−サーマルネガ型平版印刷版原版(重合硬化型)−
(支持体の作製)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
この板を、15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥し支持体とした。
このアルミニウム支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.53μmであった。
<中間層の形成>
次に、このアルミニウム支持体表面に、下記の中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、100℃10秒間乾燥した。塗布量(乾燥後の被覆量)は11mg/mであった。
(中間層用塗布液)
・下記表4に記載の特定グラフト共重合体又は比較用化合物 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
ここで、中間層用塗布液に用いた特定グラフト共重合体(a−10)、(a−11)、(a−16)、及び(a−17)は、前述した具体例を示す。
また、中間層用塗布液に用いた比較化合物(C−1)、(C−2)は、前述の比較化合物(C−1)、(C−2)である。
(画像形成層の形成)
上記のようにして形成された中間層上に、下記の画像形成層用塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥後の塗布量が0.9g/mとなるように塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間乾燥して画像形成層を形成した。
(画像形成層用塗布液)
・赤外線吸収剤(下記構造のIR−1) 0.038g
・重合開始剤A(下記構造のS−1) 0.061g
・重合開始剤B(下記構造のI−1) 0.094g
・メルカプト化合物(下記構造のSH−1) 0.015g
・増感助剤(下記構造のT−1) 0.081g
・付加重合性化合物(下記構造のM−1) 0.428g
・バインダーポリマーA(下記構造のB−1) 0.311g
・バインダーポリマーB(下記構造のB−2) 0.250g
・バインダーポリマーC(下記構造のB−3) 0.062g
・重合禁止剤(下記構造のQ−1) 0.0012g
・銅フタロシアニン顔料分散物 0.159g
・フッ素系界面活性剤 0.0081g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 5.886g
・メタノール 2.733g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.886g
Figure 2009145841
Figure 2009145841
(保護層の塗設)
<下部保護層>
画像形成層表面に、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)界面活性剤A(日本エマルジョン社製、エマレックス710)及び界面活性剤B(アデカプルロニックP−84:旭電化工業株式会社製)の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/mであった。
<上部保護層>
下部保護層表面に、有機フィラー(アートパールJ−7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L−3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)、増粘剤(セロゲンFS−B、第一工業製薬(株)製)、及び界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/界面活性剤の含有量割合は、4.7/2.8/69.7/18.6/4.2(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.8g/mであった。
このようにして、実施例12〜15、比較例6、7の平版印刷版原版を得た。
<評価>
(1)感度評価
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpi、外面ドラム回転数150rpm、出力0〜8Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。露光後、富士フイルム(株)社製LP−1310Newsを用い、30℃12秒で現像した。現像液は、富士フイルム(株)社製DH−Nの1:4水希釈水を用い、フィニッシャーは、富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1水希釈液を用いた。
現像して得られた平版印刷版の画像部濃度をマクベス反射濃度計RD−918を使用し、該濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。測定した濃度が0.8を得るのに必要な露光量の逆数を感度の指標とした。なお、評価結果は、実施例1で得られた平版印刷版の感度を100とし、他の平版印刷版の感度はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が優れていることになる。結果を表4に示す。
(2)生保存性評価(経時安定性評価)
未露光状態の平版印刷版原版を、45℃75%RHで3日間保存した後、下記の(3)耐刷性評価と同様の方法で露光・現像して、非画像部濃度をマクベス反射濃度計RD−918を使用し測定した。また、作製直後の平版印刷版原版についても、同様の方法で露光・現像を行い、非画像部濃度を測定した。
ここで、保存前後の非画像部濃度の差Δを求め、生保存性の指標とした。
Δの値が小さいほど生保存性がよく、0.02以下が実用上問題ないレベルである。結果を表4に示す。
(3)耐刷性評価
作製された平版印刷版原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpiの80%平網画像を、出力8W、外面ドラム回転数206rpm、版面エネルギー100mJ/cmで露光した。露光後、水道水による水洗により保護層を除去した後、(1)感度評価の現像工程と同じ方法で現像した。そして、得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷を行い、ベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数(刷了枚数)を耐刷性の指標とした。結果を表4に示す。
(4)印刷汚れ性評価
上記(3)耐刷性評価と同様の方法で得られた平版印刷版を、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて1万枚印刷した。また、平版印刷版原版を60℃75%Rhで2日間強制経時した後、上記(3)耐刷性評価と同様の方法で平版印刷版を作製して、経時してないものと同様に印刷を行った。
印刷汚れ性は、非画像部のインキ汚れを目視で5段階評価した。数字が大きいほど耐汚れ性に優れることを示す。評価が4以上は実用的なレベルであり、評価3では許容される下限である。結果を表4に示す。
Figure 2009145841
表4に明らかなように、実施例12〜15の平版印刷版原版は、耐刷性が高く、且つ、非画像部の汚れ性も良好であり、両者のバランスに優れており、良好な印刷性能を発現することが可能であることが分かる。
以上のように本発明の平版印刷版原版は、耐刷性及び汚れ防止性に優れ、良好な印刷性能を発現することが可能である。

Claims (8)

  1. 支持体上に、以下に示すグラフト共重合体Aを含有する中間層と、画像形成層とをこの順に有することを特徴とする平版印刷版原版。
    グラフト共重合体A:幹成分となる高分子鎖に、枝成分となる高分子鎖が共重合体した枝分かれ構造を有する共重合体であって、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位を含み、且つ、そのどちらか一方の構造単位を前記枝成分に含むと共に、構造内のカルボキシル基の一部又は全部が塩基によって中和されている共重合体
    Figure 2009145841
    〔上記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、又はハロゲン原子を表す。Lは、単結合又はn+1価の連結基を表す。Mは、水素原子又は対カチオンを表す。nは、1〜10の整数を表す。〕
    Figure 2009145841
    〔上記一般式(2)中、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、又はハロゲン原子を表す。Yは、−C(=O)O−を含む炭素数2〜30の置換基を表す。〕
  2. 前記グラフト共重合体が、構造内のカルボキシル基の一部が塩基によって中和されているものであることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記グラフト共重合体が、構造内のカルボキシル基の20モル%〜80モル%が塩基によって中和されているものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
  4. 前記グラフト重合体において、前記一般式(1)で表される構造単位の含有量と、前記一般式(2)で表される構造単位の含有量と、のモル比が0.9:0.1〜0.3:0.7であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  5. 前記画像形成層が、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  6. 前記画像形成層が、更に赤外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の平版印刷版原版。
  7. 前記画像形成層が赤外線レーザで記録可能であることを特徴とする請求項6に記載の平版印刷版原版。
  8. 前記画像記録層上に、ポリビニルアルコール、有機樹脂からなる微粒子、及び雲母粒子を含有する保護層を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
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