JP4340572B2 - 平版印刷版原版 - Google Patents
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Description
中でも、ダイレクト製版用の赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版材料としては、例えば、アルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、キノンジアジド化合物類等のようなポジ型感光性化合物とを添加したものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなポジ型平版印刷版原版の画像部では、ポジ型感光性化合物が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部では、熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成する。
即ち、本発明の目的は、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、耐刷性に優れ、かつ、非画像部における汚れの発生のない平版印刷版原版を提供することにある。
即ち、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、カチオン構造と、アルカリ解離性のプロトンを有する基とスルホン酸イオン(−SO 3 − )とを含む対アニオンと、を側鎖に有する繰り返し単位を構成成分とするポリマー(以下、適宜、「特定ポリマー」と称する。)を含有する中間層、及び、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上する感光性ポジ型記録層、をこの順に設けてなることを特徴とする。
また、本発明において用いられる感光性ポジ型記録層は、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するものであれば如何なるものも用いることができ、例えば、コンベンショナルポジタイプの記録層やサーマルポジタイプの記録層を用いることができる。
即ち、本発明に係る中間層に含有される特定ポリマーは、側鎖にカチオン構造及び対アニオンからなるイオン性の構造を有することで、親水化処理された支持体表面と強固に相互作用を形成できるため、支持体と記録層との密着性が向上し、延いては耐刷性を向上できるものと考えられる。更に、特定ポリマーにおける対アニオンは、アルカリ解離性のプロトンを有する基を含むことから、この基の存在によりアルカリ現像液に対する解離性が良好となるため、該特定ポリマーを含有する中間層は、現像時にアルカリ現像液に接することで容易に溶解・分散される。従って、このような中間層を有する平版印刷版原版の非画像部では、記録層と中間層とが共に除去されることにより、残膜が発生することなく支持体の親水性表面を露出させることができ、非画像部における汚れの発生が効果的に抑制されうるものと考えられる。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、カチオン構造と、アルカリ解離性のプロトンを有する基とスルホン酸イオン(−SO 3 − )とを含む対アニオンと、を側鎖に有する繰り返し単位を構成成分とするポリマー特定ポリマーを含有する中間層、及び、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上する感光性ポジ型記録層、をこの順に設けてなることを特徴とする。
本発明における特定ポリマーを含有する中間層について説明する。まず、特定ポリマーの詳細について説明する。
本発明における特定ポリマーは、上述のように、カチオン構造と、アルカリ解離性のプロトンを有する基とスルホン酸イオン(−SO 3 − )とを含む対アニオンと、を側鎖に有する繰り返し単位を構成成分とする。
本発明における特定ポリマーとして好ましくは、下記一般式(I)で表される部分構造を有するものである。
具体的には、Pで表されるポリマー鎖の側鎖を構成する原子団に対し、プロトンが付加されるか、電子を放出してなるカチオン構造であってもよいし、また、Pで表されるポリマー鎖の側鎖が孤立電子対を有する元素を含む場合には、その孤立電子対に対し、プロトン又は陽イオン型の原子団が配位して生ずるカチオン構造、所謂、オニウムイオンであってもよい。中でも、Yで表されるカチオン構造は、後者のオニウムイオンであることが好ましく、孤立電子対を有する元素が、周期率表第V族又は第VI族の原子であるオニウムイオンであることがより好ましい。
なお、これらの基は更に置換基を有してもよく、その置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
具体的には、アニオン部位は、R−SO3 − で表される基である。ここで、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表し、Arは、置換基を有してもよいアリール基を表す。ここで、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、シアノ基、アミド基、エステル基、カルボニル基等が挙げられる。
Jが−COO−又は−CONH−を表し、Kがフェニレン基又は置換フェニレン基を表す。Kが置換フェニレン基である場合に導入される置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、又はアルキル基が好ましい。
Mは、アルキレン基、分子式がCnH2nO、CnH2nS、又はCnH2n+1Nで表される2価の連結基である。但し、ここで、nは1〜12の整数を表す。
Y1は、窒素原子又はリン原子を表し、Y2は、イオウ原子を表す。
Z−におけるアニオン部位は、R−SO3 − である。ここで、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。
また、Z−におけるアルカリ解離性のプロトンを有する基としては、フェノール性水酸基(Ar−OH)、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)、ホスホン酸基(−PO3H2)、リン酸基(−OPO3H2)、スルホンアミド基(−SO2NH2、−SO2NHR)、−C(CF3)2OH、−COCH2COCF3を表す。ここで、Arは置換基を有してもよいアリール基を表し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表す。
R3、R4、R5、及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、或いは、置換基が結合してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族基、又は炭素数7〜10アラルキル基を表す。
R6は、炭素数1〜10のアルキリジン基又は置換アルキリジンであることが好ましい。R3とR4、R6とR7は、それぞれ結合して環を形成してもよい。
j、k、及びmは、それぞれ独立して、0又は1を表すが、jとkは同時に0ではないことが好ましい。
R8は、置換基が結合してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族基、炭素数7〜10のアラルキル基を表す。
Kは、フェニレン基又は置換フェニレン基を表し、置換フェニレン基である場合その置換基は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
Mは、炭素数1〜2のアルキレン基、又は酸素原子で連結した炭素数1〜2のアルキレン基を表す。
Z−おけるアニオン部位は、R−SO3 − である。ここで、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。
また、Z−おけるアルカリ解離性のプロトンを有する基としては、フェノール性水酸基(Ar−OH)、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)、スルホンアミド基(−SO2NH2、−SO2NHR)である。ここで、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表す。
jは0であり、kは1である。R8は炭素数1〜3のアルキル基である。
なお、特定ポリマーが共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又は、グラフト共重合体の何れであってもよい。
なお、下記に示す具体例中では、対アニオンが(Z2-)で表されているモノマーを列挙しているが、ここに記載の(Z2-)には、後に列挙する対アニオンの具体例を任意に組み合わせることができる。
本発明に係る特定ポリマーは、支持体との更なる相互作用の強化、又は記録層との相互作用を強化する目的で、その他のモノマー成分を共重合したものであってもよい。上記その他のモノマー成分としては、例えば、親水化処理基板との密着性向上と現像液溶解性向上の観点からは「酸基を有するモノマー」、記録層との密着性向上の観点からは「記録層と相互作用可能な官能基を有するモノマー」等が挙げられる。
特定ポリマーに好適に用いられる酸基を有するモノマーについて説明する。
酸基を有するモノマーに含まれる酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、又はホスホン酸基が特に好ましいが、これらに限定されるものではない。
カルボン酸基を有するモノマーとしては、カルボン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
上記カルボン酸基を有するモノマーの好ましい例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
ここで、特定ポリマーを製造する際の共重合性や原料入手性の観点からは、R1〜R4中に、下記一般式(2)で表される有機基を1〜2個有することが好ましく、1個有することが特に好ましい。重合の結果として得られる特定ポリマーの柔軟性の観点からは、R1〜R4のうち、下記一般式(2)で表される有機基の他は、アルキル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また、同様の理由から、R1〜R4がアルキル基である場合は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
このような2価の連結基のうち、特に好ましい具体例を以下に挙げる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スルホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
上記スルホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、及び4−スチレンスルホン酸、等が挙げられる。
ホスホン酸基を有するモノマーとしては、ホスホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
ホスホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、等が挙げられる。
以下に、その他のモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(4) 脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
(10) スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類;
(11) メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類;
(12) エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類;
(14) パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトンなどのラクトン基含有モノマー;
(15) ポリエチレングリコールモノ(メタ)アタリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのエチレンオキシド基含有モノマーなど。
上記その他のモノマーの中でも、(4)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、(5)アクリル酸エステル類、(6)メタクリル酸エステル類、を共重合させることがより好ましい。
本発明に係る中間層は、上述した中間層の各成分を溶解した塗布液(中間層形成用塗布液)を、後述する支持体上に種々の方法により塗布することにより設けることができる。中間層を塗布する方法には、特に制限はないが、代表的なものとしては次の方法が挙げられる。
即ち、(1)メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはこれらの混合溶剤、又は、これらの有機溶剤と水との混合溶剤に、本発明における特定ポリマーを溶解させた溶液を、支持体上に塗布、乾燥して設ける塗布方法。或いは、(2)メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤、又はこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に、本発明における特定重合体を溶解させた溶液に、支持体を浸漬し、しかる後、水洗又は空気などによって洗浄、乾燥して中間層を設ける塗布方法を挙げることができる。
また、中間層形成用塗布液には、平版印刷版の調子再現性改良のために、紫外光や可視光、赤外光などを吸収する物質を添加することもできる。
本発明に係る感光性ポジ型記録層について説明する。本発明において感光性ポジ型記録層としては、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するものであれば如何なるものも用いることができ、例えば、紫外線露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するコンベンショナルポジタイプの記録層や、赤外線露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するサーマルポジタイプの記録層を用いることができる。本発明においては、サーマルポジタイプの記録層が好適であり、以下、サーマルポジタイプの記録層(以下、適宜、「記録層」と称する。)について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
サーマルポジタイプの記録層は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)赤外線吸収剤、及び、必要に応じて、(C)その他の成分を含有して構成されることが好ましい。以下、記録層に含有される各成分について、順次説明する。
本発明に係る記録層は、アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。該アルカリ可溶性樹脂は、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。
中でも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖及び/又は側鎖中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、及びピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。更に、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
組み合わせる場合には、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などを併用してもよい。
本発明に係る記録層は、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。該赤外線吸収剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点からは、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボン酸イオン、及びスルホン酸イオンであり、アルカリ可溶性樹脂との相溶性や塗布液への溶解性の観点からは、ハロゲンイオン、及び、カルボン酸イオンやスルホン酸イオンの有機酸イオンが好ましく、より好ましくはスルホン酸イオンであり、中でもアリールスルホン酸イオンが特に好ましい。
本発明に係る記録層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。特にオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質(分解性溶剤抑止剤)を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩及び、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましく、ジアゾニウム塩を熱分解性の溶解抑止剤として添加することが特に好ましい。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
本発明には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許6,117,913号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の添加量としては、本発明の平版印刷版原版の記録層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、本発明には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでいてもよい。酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の記録層中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
本発明に係る記録層は、上記した記録層を構成する各成分を溶媒に溶かして、前記中間層上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明における記録層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
本発明に係る記録層は重層構造をとってもよく、例えば、下層(支持体側)として、アルカリ可溶性高分子からなる樹脂層を、上層として、先に述べた記録層を、設け2層構造とすることができる。
これにより、露光によりアルカリ現像液への溶解性が低下する記録層(上層)が、露光面又はその近傍に設けられることで赤外線レーザーに対する感度が良好となると共に、支持体と該記録層との間にこの樹脂層(下層)が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザーの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることからの高感度化が図れる。
また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった記録層(上層)がこの樹脂層(下層)の保護層として機能するために、現像安定性が良好になると共にディスクリミネーションに優れた画像が形成され、かつ、経時的な安定性も確保されるものと考えられる。更に、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、更には、支持体に隣接して存在するこの樹脂層(下層)がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分となったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる場合がある。
特に好ましい支持体処理としては、アルミニウム板に、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理、硝酸を含有する電解液を用いた電気化学的粗面化処理及び塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施すことが好ましい。このような処理を行った支持体は非常に高い表面積を有している。
中でも、記録層がサーマルポジタイプであれば、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
モノマー(M−1)は以下のように合成した。
1Lビーカーに、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド20.0g(78.8mmol)、H2O700mlを入れ、室温で攪拌しながら溶解し、そこに、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩21.13g(78.8mmol)を添加し、30分攪拌した。析出した結晶をろ過、水洗し、乾燥してモノマー(M−1)を25.46g(収率69.7%)で得た。モノマー(M−1)の構造を以下に示す。
モノマー(M−2)は以下のように合成した。
1Lビーカーに、4−スルホベンゾイックアシッドカリウム塩30.0g(124.8mmol)、H2O650mlを入れ、室温で攪拌しながら溶解し、そこに、ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド31.69g(124.8mmol)を添加し、30分攪拌した。析出した結晶をろ過し、乾燥してモノマー(M−2)を31.75g(収率65.3%)で得た。モノマー(M−2)の構造を以下に示す。
特定ポリマー(P−1)は以下のように合成した。
MeOH15.6gを加えた300ml三口フラスコに、70℃、窒素雰囲気下で、上記合成モノマー(M−1)6.95g(15.0mmol)、パラビニル安息香酸12.59g(85.0mmol)、V−601 1.151g(5.0mmol)、MeOH62.5gの溶液を2時間かけて滴下し、更に4時間反応させた。反応液を水で再沈し、ろ過乾燥して特定ポリマー(P−1)を15.37g得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特定ポリマー(P−1)の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、13,000であった。
特定ポリマー(P−2)は以下のように合成した。
MeOH15.1gを加えた300ml三口フラスコに、70℃、窒素雰囲気下で、上記合成モノマー(M−2)6.29g(15.0mmol)、パラビニル安息香酸12.59g(85.0mmol)、V−601 1.151g(5.0mmol)、MeOH60.4gの溶液を2時間かけて滴下し、更に4時間反応させた。反応液を水で再沈し、ろ過乾燥して特定ポリマー(P−2)を15.57g得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特定ポリマー(P−2)の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、10,000であった。
特定ポリマー(P−5)は以下のように合成した。
DMAc6.7gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、上記合成モノマー(M−1)4.17g(9.0mmol)、ビニルベンジルイミノ二酢酸3.0g(12.0mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート1.17g(9.0mmol)、V−601 0.460g(2.0mmol)、DMAc26.7gの溶液を2時間かけて滴下し、更に4時間反応させた。反応液をアセトンで再沈し、ろ過乾燥して特定ポリマー(P−5)を6.76g得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特定ポリマー(P−5)の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、64,000であった。
特定ポリマー(P−6)は以下のように合成した。
DMAc10.2gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、上記合成モノマー(M−2)3.78g(9.0mmol)、ビニルベンジルイミノ二酢酸3.0g(12.0mmol)、ヒドロキシエチルメタクリレート1.17g(9.0mmol)、V−601 0.460g(2.0mmol)、DMAc24.6gの溶液を2時間かけて滴下し、更に4時間反応させた。反応液をアセトンで再沈し、ろ過乾燥して特定ポリマー(P−6)を6.74g得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特定ポリマー(P−6)の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、59,000であった。
特定ポリマー(P−11)は以下のように合成した。
DMAc6.5gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、上記合成モノマー(M−1)4.17g(9.0mmol)、ビニルベンジルイミノ二酢酸3.0g(12.0mmol)、メタクリル酸メチル0.90g(9.0mmol)、V−601 0.460g(2.0mmol)、DMAc25.8gの溶液を2時間かけて滴下し、更に4時間反応させた。反応液をアセトンで再沈し、ろ過乾燥して特定ポリマー(P−11)を6.29g得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特定ポリマー(P−11)の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、54,000であった。
特定ポリマー(P−12)は以下のように合成した。
DMAc6.1gを加えた200ml三口フラスコに、75℃、窒素雰囲気下で、上記合成モノマー(M−2)3.78g(9.0mmol)、ビニルベンジルイミノ二酢酸3.0g(12.0mmol)、メタクリル酸メチル0.90g(9.0mmol)、V−601 0.460g(2.0mmol)、DMAc24.6gの溶液を2時間かけて滴下し、更に4時間反応させた。反応液をアセトンで再沈し、ろ過乾燥して特定ポリマー(P−12)を5.81g得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、特定ポリマー(P−12)の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、48,000であった。
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、下記に示す処理することで支持体1及び支持体2を作製した。
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.5mg/dm2であった。
上記(a)〜(k)の各工程を順に行い、(e)工程におけるエッチング量は3.5g/m2となるようにして支持体1を作製した。
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体2を作製した。
上記工程のうち(a)(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体3を作製した。
上述の様に作製された支持体1上に、下記の中間層形成用塗布液を塗布した後、80℃で15秒間乾燥し、中間層を設けた。乾燥後の被覆量は、15mg/m2であった。
・表1に記載の特定ポリマー 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
−共重合体1の合成−
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ツ口フラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。
上記により得られた支持体上(種類については表1に記載)に、以下の記録層形成用塗布液1を塗布量が0.85g/m2になるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVENPH200にてWind Controlを7に設定して110℃で50秒間乾燥した。その後、記録層形成用塗布液2を塗布量が0.30g/m2になるよう塗布したのち、120度で1分間乾燥し、実施例1、3、5、6、及び8の平版印刷版原版を得た。
・前記共重合体1 2.133g
・シアニン染料A(下記構造) 0.109g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.030g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸
のアニオンに変えたもの 0.100g
・メガファックF780、大日本インキ工業(株)社製
(塗布面状改良フッ素系界面活性剤) 0.035g
・メチルエチルケトン 25.38g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 13.2g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量
4500、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.3478g
・前記シアニン染料A 0.0192g
・下記オニウム塩B 0.0115g
・メガファックF780(20%)、大日本インキ化学工業(株)製
(面状改良界面活性剤) 0.022g
・メチルエチルケトン 13.07g
・1−メトキシ−2−プロパノール 6.79g
上記により得られた支持体1上に、以下の画像形成層塗布液3を乾燥後の塗布量が1.2g/m2となるように塗布し、実施例2、4、及び10の平版印刷版原版を得た。
・m,p−クレゾールノボラック 0.93g
(m/p比=6/4、重量平均分子量7,300、
未反応クレゾール0.4質量%含有)
・下記ビニルポリマー(1) 0.07g
・赤外線吸収剤(前記シアニン染料A) 0.017g
・赤外線吸収剤(下記シアニン染料B) 0.023g
・2,4,6−トリス(ヘキシルオキシ)
ベンゼンジアゾニウム−2−ヒドロキシ
−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネート 0.01g
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物 0.06g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.015g
・フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 15g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7g
実施例1の中間層形成用塗布液における特定ポリマー(P−1)に代えて、下記比較用ポリマー(PA−0)を用いた他は、実施例1と同様にして、比較例1の平版印刷版原版を得た。
実施例1において、中間層を設けなかった他は、実施例1と同様にして、比較例2の平版印刷版原版を得た。
得られた実施例1〜8、比較例1、2の各平版印刷版原版を、下記のようにして露光・現像して各平版印刷版を得た。得られた各平版印刷版について、非画像部の耐汚れ性、及び、耐刷性について、以下の如く評価を行った。
[露光・現像]
得られた実施例1〜8、比較例1、2の各平版印刷版原版を、CREO社製TrenndSetter3244Fを用い、セッター露光量、8.0W、150rpmで像様露光した。
次に、実施例1〜5、及び実施例8、比較例1、2の各平版印刷版原版は、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液である富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−2を標準使用条件で用いて、また、実施例6、7の各平版印刷版原版は、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液(富士写真フイルム製PS版用現像液DP−4)を標準使用条件で用いて、それぞれ自動現像機900NPにより現像した。これにより、実施例1〜5、及び実施例8、比較例1、2の各平版印刷版を得た。
得られた各平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
評価基準は、全く汚れていなかったものを◎、殆ど汚れていないものを○、顕著に汚れていたものを×とした。結果を第1表に示す。
得られた各平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表1に示す。
更に、特定ポリマーを中間層に含有する実施例の平版印刷版原版は、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液(非シリケート現像液)用いた場合であっても、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液(シリケート現像液)を用いた場合であっても、良好に現像でき、実用上問題のない平版印刷版を得ることができることが判明した。
Claims (1)
- 支持体上に、カチオン構造と、アルカリ解離性のプロトンを有する基とスルホン酸イオン(−SO 3 − )とを含む対アニオンと、を側鎖に有する繰り返し単位を構成成分とするポリマーを含有する中間層、及び、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上する感光性ポジ型記録層、をこの順に設けてなることを特徴とする平版印刷版原版。
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