JP2004361483A - 感光性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高感度、且つ、画像部における耐アルカリ性、即ち、現像ラチチュードに優れた赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録材料として好適な感光性組成物を提供する。
【解決手段】(A)側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有する高分子化合物、及び(B)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有する高分子化合物、及び(B)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線の露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する感光性組成物に関し、より詳細には、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザを走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なポジ型平版印刷版原版の記録層として有用な感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の感光性組成物が可視画像形成や平版印刷版材料として使用されている。また、平版印刷における近年のレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは、高出力かつ小型の物が容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料は、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂(以下、適宜、「アルカリ可溶性樹脂」と称する)と、光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とするものである。ポジ型平版印刷版の画像形成機構に際しては、未露光部(画像部)において、IR染料等が、バインダー樹脂と相互作用を形成しバインダー樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、一方、露光部(非画像部)においては、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解し得るようになって画像を形成する。
【0004】
しかしながら、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料では、様々な使用条件における未露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差、すなわち現像ラチチュードが未だ充分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起き易いという問題があった。
【0005】
このような問題は、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料とUV露光により製版するポジ型平版印刷版材料との製版メカニズムの本質的な相違に由来する。即ち、UV露光により製版するポジ型平版印刷版材料では、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、オニウム塩やキノンジアジド化合物類とを必須成分とするが、このオニウム塩やキノンジアジド化合物類は、未露光部(画像部)でバインダー樹脂との相互作用により溶解阻止剤として働くだけでなく、露光部(非画像部)では、光によって分解して酸を発生し、溶解促進剤として働くという二つの役割を果たすものである。
【0006】
これに対し、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料におけるIR染料等は、未露光部(画像部)の溶解阻止剤として働くのみで、露光部(非画像部)の溶解を促進するものではなく、さらに、露光部の支持体との界面近傍では、発生した熱が支持体へと拡散し、効率よく画像形成に使用されないこともあって、残膜が発生しやすいという欠点を有する。したがって、より高感度な赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料が望まれていた。
【0007】
このような問題を解決する目的で、アルカリ現像液に対する溶解性の高いバインダー樹脂を使用して熱処理により耐アルカリ性を発現する方法(例えば、特許文献1参照。)や、メラミン誘導体のごとくアミノ基を有し反応性の高い化合物を添加する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されているが、これらの方法では、長時間におよぶ熱処理が必要となったり、現像前の状態が不安定なものとなり、保存安定性が低下する懸念がある。
また、画像部の残膜率の保持や、画像部と非画像部のコントラストを高めることを目的に、光熱変換物質及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物にポリアクリル酸等の有機酸を併用した例(例えば、特許文献3参照。)や、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体を併用した例(例えば、特許文献4参照。)などが示されているが、画像形成性、特に画像部の耐アルカリ性と、保存安定性の両立という観点からは、未だ不充分なレベルである。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−520953号公報
【特許文献2】
特開平11−202481号公報
【特許文献3】
特開平10−282643号公報
【特許文献4】
特開2001−324808号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた、本発明の目的は、高感度を維持しながら、画像部における耐アルカリ性、及び、現像ラチチュードに優れた赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録材料として好適な感光性組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、アルカリ可溶性樹脂として特定の構造単位を有する高分子化合物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の感光性組成物は、(A)側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有する高分子化合物(以下、適宜「特定高分子化合物」と称する)、及び(B)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
また、特定高分子化合物に含まれる上記有機連結基としては、下記一般式(i)〜(iii)で示される構造を有することが好ましい。
【0012】
【化2】
【0013】
(式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基または単結合を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
本発明の感光性組成物は、前記(A)、(B)に加え、さらに、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
【0014】
このような感光性組成物からなる皮膜は、上記特定高分子化合物中に含まれる酸基が、酸基同士、アミド基、アミノ基、又は赤外線吸収剤等と、水素結合等による強固な相互作用を形成し、さらに、酸基とアミド基及びアミノ基の少なくとも一方とで分子内に錯構造を形成し、このため、アルカリ現像液に対する耐性に優れる。特に、上記酸基が有機連結基を介して主鎖に結合していることにより、酸基と高分子主鎖とがある程度の距離を置いて存在し、有機連結基がスペーサーとしての機能を果たすため、上記アミド基またはアミノ基、或いは赤外線吸収剤等と酸基との相互作用が形成され易く、耐アルカリ現像性がより向上するものと考えられる。
また、上記皮膜は、その作用機構は明確ではないが、赤外線レーザの露光、熱エネルギーの付与により前記相互作用が容易に解除され、従来の感光性組成物と比較して高感度化を実現している。さらに、この相互作用の解除により、主鎖構造と距離をおいて存在する運動性の高い酸基に起因して良好なアルカリ溶解性が発現されるため、露光領域(非画像部)はアルカリ現像液によって速やかに除去され、所望されない残膜の発生を抑制することができる。
従って、本発明の感光性組成物が適用された平版印刷版原版の記録層は、優れた現像ラチチュードを発揮することができるものと考えられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性組成物は、(A)側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有する高分子化合物(特定高分子化合物)、及び(B)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。また、本発明の感光性組成物は、皮膜形成性の観点から、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
以下、本発明の感光性組成物の各成分について詳細に説明する。
【0016】
〔(A)特定高分子化合物〕
本発明に係る(A)特定高分子化合物は、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有することを特徴とする。
【0017】
(側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位)
まず、特定高分子化合物における必須の構造単位の1つである、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位について説明する。このような構成単位としては、炭素を含む原子数1以上の有機連結基を介して高分子主鎖に酸基が連結された構造単位であれば、特に制限なく用いることができる。
<酸基>
上記構造単位における酸基としては、酸解離定数pKaが12以下の酸基であれば限定することなく用いることができる。具体的には、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボン酸基、フェノール性水酸基、チオール基の他、特開平11−84657号公報に記載のスルホンアミド基、活性イミド基等を用いることができる。
本発明の感光性組成物をアルカリ性水溶液で現像する場合の現像性の観点からは、酸基のpKaは8以下であることが好ましく、また、該感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合に、現像後の画像部に印刷インキ等の有機成分を着肉させることを考慮するとpKaが2以上であることがより好ましい。
そのような観点から、上記具体例の中でも、ホスホン酸基、カルボン酸基が好ましく、原料入手および合成が容易なことからカルボン酸基が特に好ましい。
【0018】
<有機連結基>
本発明に係る有機連結基としては、少なくとも1つの炭素原子を含む原子数1以上の有機基であれば限定することなく用いることができるが、酸基が、酸基同士、アミド基、アミノ基、又は赤外線吸収剤等の感光性組成物内の極性成分と相互作用を形成して、未露光部における耐アルカリ性を向上させるといった観点や、露光部におけるアルカリ現像性の観点から、有機連結基の原子数、即ち、主鎖と酸基との間に介在する有機連結基を構成する原子の総数、が4〜18であることが好ましく、原子数が6〜12であることがさらに好ましく、原子数が8〜10であることが最も好ましい。
このような有機連結基の具体例としては、アルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または下記構造式(i)〜(iii)から選択される構造のもの等が挙げられ、ラジカル重合により高分子化合物を合成する場合の重合性や入手性等の観点から、フェニレン基に代表されるアリーレン基、または下記構造式(i)の如くカルボニル構造を有するものが好ましく、下記構造式(i)で表されるものが特に好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基又は単結合を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
Yとしては、炭素数1〜16のアルキレン基または単結合が好ましく、アルキレン基内のメチレン(−CH2−)は、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−又は−OCO−)、アミド結合(−CONR−又は−NRCO−;Rは水素原子またはアルキル基)で置換されていてもよく、メチレン基を置換する結合としてはエーテル結合、エステル結合が特に好ましい。このような2価の連結基Yのうち、特に好ましい具体例を以下に挙げる。
【0021】
【化4】
【0022】
ここで、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位として特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明に係る特定高分子化合物の構成成分としては、このような構造単位の2種類以上を適宜含んでいてもよい。なお、例示中(P)はポリマー主鎖を表す。
【0023】
【化5】
【0024】
(側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位)
次に、特定高分子化合物におけるもう一方の必須の構造単位であるアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位について説明する。
<側鎖にアミド基を有する構造単位>
本発明に係る、アミド基を有する構成単位とは、単結合または有機基を介して、高分子主鎖にアミド基が連結された構造単位であれば特に限定することなく用いることができる。
また、本発明においてアミド基とは、一般的なアミド基の構造(−CO−NH−、又は−NH−CO−)に加え、該アミド基構造中のHが炭化水素基により置換された、−CO−NR−、又は−NR−CO(Rは一価の炭化水素基を表す)で表される構造のものを包含する。ここで、Rで表される炭化水素基としては、炭素数1〜20程度のアルキル基、又は炭素数6〜20程度のアリール基、アラルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数1〜6程度のアルキル基、又は、フェニル基が特に好ましい。
なお、アミド基が、アミド基同士、又はアミノ基、酸基、赤外線吸収剤等の感光性組成物内の極性成分と相互作用を形成して、未露光部における耐アルカリ性を向上させるといった観点から、アミド基が末端に存在する場合、−CO−NR2における窒素原子上のRの少なくとも1つは水素原子であることが好ましく、また、中間に存在する場合には、アミド基構造中のHが炭化水素基により置換されていないもの(−CO−NH−、又は−NH−CO−)が好ましい。
また、高分子主鎖とアミド基とを連結する有機基としては、前記酸基を有する構造単位における有機連結基と同様に、炭素数4以上のものが好ましいが、単結合を介して直接高分子主鎖に連結されているものも好適に用いることができる。
【0025】
<側鎖にアミノ基を有する構造単位>
本発明に係る、アミノ基を有する構成単位とは、単結合または有機基を介して、高分子主鎖にアミノ基が連結された構造単位であれば特に限定することなく用いることができる。
また、本発明におけるアミノ基は、一般的なアミノ基の構造(−NH2)に加え、該アミド基構造中のHが炭化水素基により置換された、−NHR1、−NR1R2(R1、R2はそれぞれ独立に一価の炭化水素基を表す。また、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表される2級アミン、3級アミン、又は、ピリジル基などを包含する。ここで、R1、R2で表される炭化水素基としては、炭素数1〜20程度のアルキル基、又は炭素数6〜20程度のアリール基、アラルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数1〜6程度のアルキル基、又は、フェニル基が特に好ましい。
なお、アミノ基が、アミノ基同士、アミド基、酸基、または赤外線吸収剤等の感光性組成物内の極性成分と相互作用を形成して、未露光部における耐アルカリ性を向上させるといった観点から、本発明におけるアミノ基は、上記−NHR1、−NR1R2で表される2級アミン、または3級アミンであることが好ましく、ここで、R1およびR2の少なくとも1つは、アルキル基であることが好ましい。
また、高分子主鎖とアミド基とを連結する有機基としては、前記酸基を有する構成単位における有機連結基と同様に、炭素数4以上のものが好ましいが、単結合を介して直接高分子主鎖に連結されているものも好適に用いることができる。
【0026】
本発明に用いられる、アミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位として特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明に係る特定高分子化合物の構成成分としては、このような構造単位の2種類以上を適宜含んでいてもよい。なお、例示中(P)はポリマー主鎖を表す。
【0027】
【化6】
【0028】
(その他の共重合成分)
本発明に係る特定高分子化合物は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記の必須成分以外にも種々の構造単位を共重合成分として有することができる。特に、特定高分子化合物に柔軟性や溶剤溶解性を付与する観点から、アルキル(メタ)アクリレートを共重合性分として用いることが好ましい(なお、本明細書においては、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある)。アルキル(メタ)アクリレートは側鎖となるアルキル基による柔軟性を付与する観点から炭素原子数2以上のアルキル基であることが好ましく、組み合わされる酸基を含有する重合成分により異なるが、柔軟性を高めるためにアルキル基は炭素原子数3以上であることがより好ましい。感光層組成物を構成する樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を併用する場合の混和性、相溶性を阻害しないためには該アルキル基の炭素原子数は10以下であることが好ましく、炭素原子数8以下であることがより好ましい。
【0029】
共重合成分として好適に用いられるアルキルアクリレートの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、アルキルメタクリレートの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルがなど挙げられ、中でも、柔軟性の観点から、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシルが好ましく、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチルが特に好ましい。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレート以外の共重合成分としては、前記必須の構成単位を形成しうるモノマーと共重合可能なモノマー成分であれば特に限定されるものではないが、共重合成分として好ましいものとしては、以下の(1)〜(10)に挙げるモノマーを挙げることができる。
(1)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等の置換基を有するアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の置換基を有するアルキルメタクリレート。
(4)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(5)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(6)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(7)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(8)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(10)N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0031】
本発明に係る(A)特定高分子化合物を構成する共重合成分のうち、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位の共重合比は、全共重合成分中3〜60モル%であることが好ましく、10〜50モル%であることがより好ましい。側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位の共重合比がこの範囲内において、未露光部の耐アルカリ性および露光部のアルカリ現像性の双方が良好で、優れた現像ラチチュードが達成できる。また、このような特定高分子化合物を含む感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合、インクの着肉性に優れるため好ましい。
アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位の共重合比は、全共重合成分中0.5〜70モル%であることが好ましく、1〜55モル%であることがより好ましい。アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位の共重合比がこの範囲内において、未露光部の耐アルカリ性に優れ、また、本発明の効果である広い現像ラチチュードが達成できる。また、このような特定高分子化合物を含む感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合、優れた画像形成性を有し、インクの着肉性に優れるため好ましい。
【0032】
本発明に係る特定高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜300,000、更に好ましくは20,000〜200,000、特に好ましくは35,000〜150,000のものが用いられる。この範囲内において、十分な塗膜(皮膜形成性)および優れた現像性が得られる。
また、特に本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合の、感光性組成物全固形分中の特定高分子化合物の含有量は、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、更に1質量%〜20質量%であることが好ましい。この範囲において、本発明に係る平版印刷版原版は、画像形成性およびバーニング時の耐刷性に優れるため好ましい。
【0033】
以下に、本発明に好適に用いられる(A)特定高分子化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の感光性組成物においては、必要に応じてこれら特定高分子化合物の2種類以上を混合して用いることもできる。なお、例示中、組成比はモル比を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
本発明に係る特定高分子化合物は、上述した酸基、アミド基及び/又はアミノ基を有するモノマーと、必要に応じて併用されるその他の共重合成分とを、適当な溶媒に溶かし、公知の重合方法により共重合することができる。このような官能基を有するモノマーとしては、該官能基を有し、且つ、共重合可能な不飽和結合を有するものが好適に用いられる。特に好ましい重合方法としてはラジカル重合、アニオン重合が挙げられ、製造の容易さからラジカル重合が最も好ましい。
【0040】
ラジカル重合を行う際に必要に応じて用いられる反応溶媒としては、酸基、アミド基及び/又はアミノ基を有するモノマー、及び、その他の共重合成分を溶解することができる溶媒であれば限定することなく用いることができ、ラジカル重合反応に対する影響が小さい点や、各モノマーの溶解性の観点から、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。
【0041】
また、ラジカル重合反応の際には、必要に応じて重合開始剤を用いてもよい。このような重合開始剤としては、種々の熱重合開始剤や光重合開始剤を用いることができるが、取り扱い性や入手性の観点からアゾ系熱重合開始剤が好ましく、好ましい開始剤としてはV−70,V−60,V−65(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾニトリル化合物;VA−545,VA−041(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミジン化合物;VA−080,VA−082(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミド化合物;V−601,V−501,VF−077(いずれも和光純薬工業(株)製)等のその他のアゾ化合物が挙げられ、中でも、V−65やV−601が特に好ましい開始剤として挙げられる。
更に、重合に際しては、メルカプト化合物等に代表される公知の連鎖移動剤を併用することにより共重合体の末端部の組成や分子量を制御してもよい。更に各々のモノマー単位は共重合体中にブロック又はランダムのいずれの状態で導入してもよい。
【0042】
〔(B)赤外線吸収剤〕
本発明に用いられる赤外線吸収剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0043】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0044】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0045】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0046】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0047】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の感光性組成物で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0048】
【化12】
【0049】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa−は、後述するZa−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0050】
【化13】
【0051】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層に用いた場合の、記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0052】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0053】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0054】
【化14】
【0055】
【化15】
【0056】
【化16】
【0057】
【化17】
【0058】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0059】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0063】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X2及びX3の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0067】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0071】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0072】
【化24】
【0073】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0074】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0075】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0076】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光性組成物中における顔料の優れた分散安定性が得られ、本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合にも均一な記録層が得られる。
【0077】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0078】
これらの顔料もしくは染料は、感度、記録層の均一性および耐久性の観点から、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
【0079】
〔(C)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性樹脂としては、水不溶且つアルカリ可溶性であれば特に限定はなく、高分子中の主鎖及び側鎖の少なくとも一方に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。酸性基に関しては、予め酸性基を有しているモノマーを重合して導入する方法と、重合後の高分子反応によって導入する方法、及びそれらを併用する方法のいずれの方法で導入してもよい。
【0080】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、プラスチック・エージ株式会社“フェノール樹脂”、アイピーシー株式会社“フェノール樹脂の合成・硬化・強靱化及び応用”、日刊工業新聞社“プラスチック材料講座(15)フェノール樹脂”、工業調査会株式会社“プラスチック全書(15)フェノール樹脂”等に記載されるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を用いることができ、特に制限はないが、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を、高分子の主鎖及び側鎖の少なくとも一方に中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0081】
(1)フェノール性水酸基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0082】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0083】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、本発明においては、(1)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(フェノール樹脂)が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を充分に確保する点から最も好ましい。
本発明に用いられるフェノール樹脂としては、具体的には、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、画像形成性や熱硬化性の観点からノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましく、安定性の点からノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、原料入手性、汎用性の観点からノボラック樹脂が特に好ましい。
【0084】
ノボラック樹脂とは、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
【0085】
本発明におけるフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60の(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0086】
なお、本発明の感光性組成物には、後述する溶剤抑止剤を含有することが好ましく、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。感度の観点からは、酸価が2.0mmol/g未満、好ましくは1.75mmol/g未満、の前記特定高分子化合物を併用し、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で20〜80:0〜60:0〜40の混合フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合体を組み合わせて使用することが特に好ましく、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で20〜45:0〜60:0〜40の混合フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合体との組合わせが最も好ましい。
【0087】
これらのノボラック樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」という)が、好ましくは500〜20,000、更に好ましくは1,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜12,000のものが用いられる。重量平均分子量がこの範囲内にあると、充分な皮膜形成性及び、露光部のアルカリ現像性に優れるため好ましい。
【0088】
以上、これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、感光性組成物全固形分中の(C)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、皮膜形成性及び耐アルカリ現像性向上の観点からは、50質量%〜95質量%であることが好ましく、更に70質量%〜93質量%であることが好ましい。以下、この態様を例に挙げて説明する。
【0089】
〔その他の成分〕
本発明の感光性組成物を調製するにあたっては、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。特にオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質(分解性溶剤抑止剤)を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩及び、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましく、ジアゾニウム塩を熱分解性の溶解抑止剤として添加することが特に好ましい。
【0090】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivelloet al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0091】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0092】
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0093】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0094】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/又は、o−キノンジアジド化合物の添加量は、本発明の感光性組成物を平版印刷版の記録層に用いる場合、好ましくは記録層の全固形分に対し、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0095】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に用いられる添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0096】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0097】
さらに、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することができる。このような化合物の添加量としては、本発明の感光性組成物を平版印刷版の記録層に用いる場合には、記録層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明の感光性組成物中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許6,117,913号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の添加量としては、本発明の感光性組成物を平版印刷版の記録層に用いる場合、該記録層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、本発明の感光性組成物中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでいてもよい。酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
【0098】
その他、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の平版印刷版原版の記録層に添加する場合、記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0099】
また、本発明に係る感光性組成物を、平版印刷版原版の記録層塗布液に用いる場合には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
【0100】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0101】
本発明の感光性組成物には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0102】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、感光性組成物全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。更に本発明の感光性組成物中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0103】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、さらには、特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物、及び、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物などを目的に応じて適宜添加することができる。
以上のようにして得られた本発明の感光性組成物は、皮膜形成性及び皮膜強度に優れ、且つ、赤外線の露光により、露光部が高いアルカリ可溶性を示すことから、赤外線対応のポジ型平版印刷版原版の記録層として好適に用いられる。
【0104】
〔平版印刷版原版への応用〕
本発明の感光性組成物を、平版印刷版原版の記録層に適用する場合は、上記感光性組成物を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより記録層を形成することができる。また、目的に応じて、後述する保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0105】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明の感光性組成物からなる記録層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0106】
〔樹脂中間層〕
本発明の感光性組成物が適用される平版印刷版原版には、必要に応じて、支持体と記録層との間に樹脂中間層を設けることができる。
この樹脂中間層を設けることで、支持体と記録層との間の高分子からなる樹脂中間層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、記録層は、この樹脂中間層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、その一方、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この樹脂中間層は有用であると考えられる。
【0107】
樹脂中間層は、アルカリ可溶性樹脂を主成分とした層として構成されるが、記録層と樹脂中間層の境界を明瞭にするためには、中間層に用いられるアルカリ可溶性樹脂は記録層に用いられるアルカリ可溶性樹脂と異なるものを主成分として用いることが好ましい。樹脂中間層に好適に用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、N−(p−アミノスルホニルフェニル)(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアクリロニトリルの共重合体、4−マレイミドベンゼンスルホンアミドとスチレンの共重合体、(メタ)アクリル酸とN−フェニルマレイミド及び(メタ)アクリルアミドの共重合体等の高極性なユニットを有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
〔支持体〕
平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
上記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように、支持体として適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0109】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するため、例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0110】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。該親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0111】
本発明が適用される平版印刷版原版は、支持体上にポジ型の記録層を設けたものであるが、必要に応じてその間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0112】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
【0113】
上記のようにして作製されたポジ型平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0114】
本発明の感光性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0115】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の感光性組成物を平版印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0116】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0117】
本発明が適用される平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0118】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0119】
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0120】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができる。水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本願実施例においては、本発明の感光性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版についての評価を行い、その評価を本発明の感光性組成物の評価とする。
【0122】
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程(a)〜(j)を組み合わせて処理することで支持体A、B、C、Dを作製した。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0123】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0124】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0125】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0126】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0127】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0128】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0129】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0130】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0131】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0132】
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.5g/m2となるようにして支持体Aを作製した。
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Bを作製した。
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Cを作製した。
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体Dを作製した。
【0133】
上記によって得られた支持体A、B、C、Dに続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
上記で得られたアルミニウム支持体A〜Dを温度30℃の3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.8mg/m2であった。
【0134】
(下塗り処理)
上記のようにして得られた、アルカリ金属ケイ酸塩処理後の各アルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は13mg/m2であった。
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0135】
【化25】
【0136】
〔実施例1〜8、比較例1、2〕
得られた支持体A〜Dに、以下の記録層塗布液(感光性組成物)を塗布して、150℃のオーブンで1分間乾燥し、乾燥膜厚が1.4g/m2のポジ型赤外線感光性組成物層を有する、実施例1〜8、及び、比較例1、2のポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0137】
<記録層塗布液>
・ノボラック樹脂 表1に記載の量
(フェノール/m−クレゾール/p−クレゾール=20/50/30
重量平均分子量8,000、未反応フェノール類0.2重量%含有)
・表1記載の特定高分子化合物 表1に記載の量
・下記構造の赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.018g
・下記構造の赤外線吸収剤(シアニン染料B) 0.024g
・2,4,6−トリス(ヘキシルオキシ) 0.01g
ベンゼンジアゾニウム−2−ヒドロキシ
−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネート
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物 0.06g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを 0.015g
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料
・フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 15g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7g
【0138】
【化26】
【0139】
なお、前記記録層塗布液に特定高分子化合物を添加しなかったものを比較例1とした。また、本発明に係る特定高分子化合物に代えて、本発明の範囲外のアルカリ可溶性樹脂であるAP−C1(下記構造)を用いたものを比較例2とした。
【0140】
【化27】
【0141】
[平版印刷版原版の評価]
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた実施例1〜8、及び、比較例1、2の平版印刷版原版に対して、Creo社製Trendsetter 3244VSFにてビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液A又はBの、水の量を変更することにより希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間22秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。結果を表1に示す。
【0142】
<アルカリ現像液A組成>
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 95.0質量%
【0143】
<アルカリ現像液B組成>
・Dソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15質量%
【0144】
〔感度および保存安定性の評価〕
<感度>
得られた実施例1〜8、及び、比較例1、2の平版印刷用原板に対して、Creo社製Trendsetter3244VFSにて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、アルカリ現像液Aを用い、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の感光層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0145】
<保存安定性>
得られた実施例1〜8、及び、比較例1、2の平版印刷版原版を、温度30℃、相対湿度80%の条件下、30日間保存した後に、上記の感度評価と同様の方法で感度を測定した。保存の前後で感度の値が変化しないものほど保存安定性が良好であると評価する。
【0146】
【表1】
【0147】
表1の結果より、特定高分子化合物を含有する本発明の感光性組成物を記録層に用いた実施例1〜8の平版印刷版原版は、特定高分子化合物を用いなかった比較例1、2の平版印刷版原版に比べ、現像ラチチュードおよび感度に優れていることが確認された。また、強制経時の前後において感度の変化が少なく、保存安定性にも優れていることが確認された。
【0148】
〔実施例9〜12、比較例3、4〕
得られた支持体に、下記組成の第1層(下層)用塗布液をワイヤーバーで塗布した後、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥して、乾燥後の塗布量を0.9g/m2とした。
得られた下層付き支持体に、下記組成の第2層(上層)用塗布液をワイヤーバーで塗布した。塗布後、乾燥オーブンで、145℃で70秒間の乾燥を行い、乾燥後の総塗布量を1.3g/m2として、重層構造の記録層を有する実施例9〜12、及び、比較例3、4のポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0149】
<第1層(下層)用塗布液>
【0150】
【化28】
【0151】
<第2層(上層)用塗布液>
・表2記載の特定高分子化合物 表2に記載の量
・ノボラック樹脂 表2に記載の量
(フェノール/m−クレゾール=30/70、
重量平均分子量4,600、未反応フェノール類0.4重量%含有)
・赤外線吸収剤(前記シアニン染料A) 0.029g
・1−(4−メチルベンジル)−1−フェニルピペリジニウムの 0.004g
5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸塩
・フッ素系界面活性剤(前記ポリマー1) 0.015g
・フッ素系界面活性剤(下記ポリマー2) 0.003g
・メチルエチルケトン 6.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.3g
【0152】
【化29】
【0153】
なお、前記第2層(上層)用塗布液に特定高分子化合物を用いなかったものを比較例3とした。また、本発明に係る特定高分子化合物に代えて、本発明の範囲外のアルカリ可溶性樹脂であるAP−C1を用いたものを比較例4とした。AP−C1は、比較例2に用いたものと同様である。
【0154】
〔現像ラチチュード、感度および保存安定性の評価〕
得られた実施例9〜12、及び、比較例3、4の平版印刷版原版に対し、露光機を富士写真フイルム(株)製LuxelPLATESETTER T−6000に変更した以外は、実施例1〜8と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度および保存安定性の評価を行った。なお、感度はドラム回転数900rpmのときのビーム強度とした。結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2の結果より、特定高分子化合物を含有する本発明の感光性組成物を記録層として用いた実施例9〜12の平版印刷版原版は、記録層が重層構造をとった場合においても、特定高分子化合物を用いなかった比較例3、4の平版印刷版原版に比べ、現像ラチチュードおよび感度に優れていることが確認された。また、強制経時の前後において感度の変化が少なく、保存安定性にも優れていることが確認された。
以上、実施例によれば、本発明の感光性組成物は、赤外線対応のポジ型平版印刷版原版の記録層として有用であることがわかった。
【0157】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明は、高感度を維持しながら、画像部における耐アルカリ性、及び、現像ラチチュードに優れた赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録材料として好適な感光性組成物を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線の露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する感光性組成物に関し、より詳細には、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザを走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なポジ型平版印刷版原版の記録層として有用な感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の感光性組成物が可視画像形成や平版印刷版材料として使用されている。また、平版印刷における近年のレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは、高出力かつ小型の物が容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料は、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂(以下、適宜、「アルカリ可溶性樹脂」と称する)と、光を吸収し熱を発生するIR染料等とを必須成分とするものである。ポジ型平版印刷版の画像形成機構に際しては、未露光部(画像部)において、IR染料等が、バインダー樹脂と相互作用を形成しバインダー樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、一方、露光部(非画像部)においては、発生した熱によりIR染料等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解し得るようになって画像を形成する。
【0004】
しかしながら、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料では、様々な使用条件における未露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差、すなわち現像ラチチュードが未だ充分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起き易いという問題があった。
【0005】
このような問題は、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料とUV露光により製版するポジ型平版印刷版材料との製版メカニズムの本質的な相違に由来する。即ち、UV露光により製版するポジ型平版印刷版材料では、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、オニウム塩やキノンジアジド化合物類とを必須成分とするが、このオニウム塩やキノンジアジド化合物類は、未露光部(画像部)でバインダー樹脂との相互作用により溶解阻止剤として働くだけでなく、露光部(非画像部)では、光によって分解して酸を発生し、溶解促進剤として働くという二つの役割を果たすものである。
【0006】
これに対し、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料におけるIR染料等は、未露光部(画像部)の溶解阻止剤として働くのみで、露光部(非画像部)の溶解を促進するものではなく、さらに、露光部の支持体との界面近傍では、発生した熱が支持体へと拡散し、効率よく画像形成に使用されないこともあって、残膜が発生しやすいという欠点を有する。したがって、より高感度な赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料が望まれていた。
【0007】
このような問題を解決する目的で、アルカリ現像液に対する溶解性の高いバインダー樹脂を使用して熱処理により耐アルカリ性を発現する方法(例えば、特許文献1参照。)や、メラミン誘導体のごとくアミノ基を有し反応性の高い化合物を添加する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されているが、これらの方法では、長時間におよぶ熱処理が必要となったり、現像前の状態が不安定なものとなり、保存安定性が低下する懸念がある。
また、画像部の残膜率の保持や、画像部と非画像部のコントラストを高めることを目的に、光熱変換物質及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性組成物にポリアクリル酸等の有機酸を併用した例(例えば、特許文献3参照。)や、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体を併用した例(例えば、特許文献4参照。)などが示されているが、画像形成性、特に画像部の耐アルカリ性と、保存安定性の両立という観点からは、未だ不充分なレベルである。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−520953号公報
【特許文献2】
特開平11−202481号公報
【特許文献3】
特開平10−282643号公報
【特許文献4】
特開2001−324808号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた、本発明の目的は、高感度を維持しながら、画像部における耐アルカリ性、及び、現像ラチチュードに優れた赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録材料として好適な感光性組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、アルカリ可溶性樹脂として特定の構造単位を有する高分子化合物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の感光性組成物は、(A)側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有する高分子化合物(以下、適宜「特定高分子化合物」と称する)、及び(B)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
また、特定高分子化合物に含まれる上記有機連結基としては、下記一般式(i)〜(iii)で示される構造を有することが好ましい。
【0012】
【化2】
【0013】
(式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基または単結合を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
本発明の感光性組成物は、前記(A)、(B)に加え、さらに、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
【0014】
このような感光性組成物からなる皮膜は、上記特定高分子化合物中に含まれる酸基が、酸基同士、アミド基、アミノ基、又は赤外線吸収剤等と、水素結合等による強固な相互作用を形成し、さらに、酸基とアミド基及びアミノ基の少なくとも一方とで分子内に錯構造を形成し、このため、アルカリ現像液に対する耐性に優れる。特に、上記酸基が有機連結基を介して主鎖に結合していることにより、酸基と高分子主鎖とがある程度の距離を置いて存在し、有機連結基がスペーサーとしての機能を果たすため、上記アミド基またはアミノ基、或いは赤外線吸収剤等と酸基との相互作用が形成され易く、耐アルカリ現像性がより向上するものと考えられる。
また、上記皮膜は、その作用機構は明確ではないが、赤外線レーザの露光、熱エネルギーの付与により前記相互作用が容易に解除され、従来の感光性組成物と比較して高感度化を実現している。さらに、この相互作用の解除により、主鎖構造と距離をおいて存在する運動性の高い酸基に起因して良好なアルカリ溶解性が発現されるため、露光領域(非画像部)はアルカリ現像液によって速やかに除去され、所望されない残膜の発生を抑制することができる。
従って、本発明の感光性組成物が適用された平版印刷版原版の記録層は、優れた現像ラチチュードを発揮することができるものと考えられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性組成物は、(A)側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有する高分子化合物(特定高分子化合物)、及び(B)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。また、本発明の感光性組成物は、皮膜形成性の観点から、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
以下、本発明の感光性組成物の各成分について詳細に説明する。
【0016】
〔(A)特定高分子化合物〕
本発明に係る(A)特定高分子化合物は、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位と、側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位と、を有することを特徴とする。
【0017】
(側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位)
まず、特定高分子化合物における必須の構造単位の1つである、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位について説明する。このような構成単位としては、炭素を含む原子数1以上の有機連結基を介して高分子主鎖に酸基が連結された構造単位であれば、特に制限なく用いることができる。
<酸基>
上記構造単位における酸基としては、酸解離定数pKaが12以下の酸基であれば限定することなく用いることができる。具体的には、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボン酸基、フェノール性水酸基、チオール基の他、特開平11−84657号公報に記載のスルホンアミド基、活性イミド基等を用いることができる。
本発明の感光性組成物をアルカリ性水溶液で現像する場合の現像性の観点からは、酸基のpKaは8以下であることが好ましく、また、該感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合に、現像後の画像部に印刷インキ等の有機成分を着肉させることを考慮するとpKaが2以上であることがより好ましい。
そのような観点から、上記具体例の中でも、ホスホン酸基、カルボン酸基が好ましく、原料入手および合成が容易なことからカルボン酸基が特に好ましい。
【0018】
<有機連結基>
本発明に係る有機連結基としては、少なくとも1つの炭素原子を含む原子数1以上の有機基であれば限定することなく用いることができるが、酸基が、酸基同士、アミド基、アミノ基、又は赤外線吸収剤等の感光性組成物内の極性成分と相互作用を形成して、未露光部における耐アルカリ性を向上させるといった観点や、露光部におけるアルカリ現像性の観点から、有機連結基の原子数、即ち、主鎖と酸基との間に介在する有機連結基を構成する原子の総数、が4〜18であることが好ましく、原子数が6〜12であることがさらに好ましく、原子数が8〜10であることが最も好ましい。
このような有機連結基の具体例としては、アルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または下記構造式(i)〜(iii)から選択される構造のもの等が挙げられ、ラジカル重合により高分子化合物を合成する場合の重合性や入手性等の観点から、フェニレン基に代表されるアリーレン基、または下記構造式(i)の如くカルボニル構造を有するものが好ましく、下記構造式(i)で表されるものが特に好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基又は単結合を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
Yとしては、炭素数1〜16のアルキレン基または単結合が好ましく、アルキレン基内のメチレン(−CH2−)は、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−又は−OCO−)、アミド結合(−CONR−又は−NRCO−;Rは水素原子またはアルキル基)で置換されていてもよく、メチレン基を置換する結合としてはエーテル結合、エステル結合が特に好ましい。このような2価の連結基Yのうち、特に好ましい具体例を以下に挙げる。
【0021】
【化4】
【0022】
ここで、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位として特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明に係る特定高分子化合物の構成成分としては、このような構造単位の2種類以上を適宜含んでいてもよい。なお、例示中(P)はポリマー主鎖を表す。
【0023】
【化5】
【0024】
(側鎖にアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位)
次に、特定高分子化合物におけるもう一方の必須の構造単位であるアミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位について説明する。
<側鎖にアミド基を有する構造単位>
本発明に係る、アミド基を有する構成単位とは、単結合または有機基を介して、高分子主鎖にアミド基が連結された構造単位であれば特に限定することなく用いることができる。
また、本発明においてアミド基とは、一般的なアミド基の構造(−CO−NH−、又は−NH−CO−)に加え、該アミド基構造中のHが炭化水素基により置換された、−CO−NR−、又は−NR−CO(Rは一価の炭化水素基を表す)で表される構造のものを包含する。ここで、Rで表される炭化水素基としては、炭素数1〜20程度のアルキル基、又は炭素数6〜20程度のアリール基、アラルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数1〜6程度のアルキル基、又は、フェニル基が特に好ましい。
なお、アミド基が、アミド基同士、又はアミノ基、酸基、赤外線吸収剤等の感光性組成物内の極性成分と相互作用を形成して、未露光部における耐アルカリ性を向上させるといった観点から、アミド基が末端に存在する場合、−CO−NR2における窒素原子上のRの少なくとも1つは水素原子であることが好ましく、また、中間に存在する場合には、アミド基構造中のHが炭化水素基により置換されていないもの(−CO−NH−、又は−NH−CO−)が好ましい。
また、高分子主鎖とアミド基とを連結する有機基としては、前記酸基を有する構造単位における有機連結基と同様に、炭素数4以上のものが好ましいが、単結合を介して直接高分子主鎖に連結されているものも好適に用いることができる。
【0025】
<側鎖にアミノ基を有する構造単位>
本発明に係る、アミノ基を有する構成単位とは、単結合または有機基を介して、高分子主鎖にアミノ基が連結された構造単位であれば特に限定することなく用いることができる。
また、本発明におけるアミノ基は、一般的なアミノ基の構造(−NH2)に加え、該アミド基構造中のHが炭化水素基により置換された、−NHR1、−NR1R2(R1、R2はそれぞれ独立に一価の炭化水素基を表す。また、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表される2級アミン、3級アミン、又は、ピリジル基などを包含する。ここで、R1、R2で表される炭化水素基としては、炭素数1〜20程度のアルキル基、又は炭素数6〜20程度のアリール基、アラルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数1〜6程度のアルキル基、又は、フェニル基が特に好ましい。
なお、アミノ基が、アミノ基同士、アミド基、酸基、または赤外線吸収剤等の感光性組成物内の極性成分と相互作用を形成して、未露光部における耐アルカリ性を向上させるといった観点から、本発明におけるアミノ基は、上記−NHR1、−NR1R2で表される2級アミン、または3級アミンであることが好ましく、ここで、R1およびR2の少なくとも1つは、アルキル基であることが好ましい。
また、高分子主鎖とアミド基とを連結する有機基としては、前記酸基を有する構成単位における有機連結基と同様に、炭素数4以上のものが好ましいが、単結合を介して直接高分子主鎖に連結されているものも好適に用いることができる。
【0026】
本発明に用いられる、アミド基およびアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位として特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明に係る特定高分子化合物の構成成分としては、このような構造単位の2種類以上を適宜含んでいてもよい。なお、例示中(P)はポリマー主鎖を表す。
【0027】
【化6】
【0028】
(その他の共重合成分)
本発明に係る特定高分子化合物は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記の必須成分以外にも種々の構造単位を共重合成分として有することができる。特に、特定高分子化合物に柔軟性や溶剤溶解性を付与する観点から、アルキル(メタ)アクリレートを共重合性分として用いることが好ましい(なお、本明細書においては、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある)。アルキル(メタ)アクリレートは側鎖となるアルキル基による柔軟性を付与する観点から炭素原子数2以上のアルキル基であることが好ましく、組み合わされる酸基を含有する重合成分により異なるが、柔軟性を高めるためにアルキル基は炭素原子数3以上であることがより好ましい。感光層組成物を構成する樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を併用する場合の混和性、相溶性を阻害しないためには該アルキル基の炭素原子数は10以下であることが好ましく、炭素原子数8以下であることがより好ましい。
【0029】
共重合成分として好適に用いられるアルキルアクリレートの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、アルキルメタクリレートの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルがなど挙げられ、中でも、柔軟性の観点から、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシルが好ましく、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチルが特に好ましい。
【0030】
アルキル(メタ)アクリレート以外の共重合成分としては、前記必須の構成単位を形成しうるモノマーと共重合可能なモノマー成分であれば特に限定されるものではないが、共重合成分として好ましいものとしては、以下の(1)〜(10)に挙げるモノマーを挙げることができる。
(1)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等の置換基を有するアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の置換基を有するアルキルメタクリレート。
(4)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(5)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(6)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(7)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(8)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(10)N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0031】
本発明に係る(A)特定高分子化合物を構成する共重合成分のうち、側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位の共重合比は、全共重合成分中3〜60モル%であることが好ましく、10〜50モル%であることがより好ましい。側鎖に有機連結基を介して結合した酸基を有する構造単位の共重合比がこの範囲内において、未露光部の耐アルカリ性および露光部のアルカリ現像性の双方が良好で、優れた現像ラチチュードが達成できる。また、このような特定高分子化合物を含む感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合、インクの着肉性に優れるため好ましい。
アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位の共重合比は、全共重合成分中0.5〜70モル%であることが好ましく、1〜55モル%であることがより好ましい。アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有する構造単位の共重合比がこの範囲内において、未露光部の耐アルカリ性に優れ、また、本発明の効果である広い現像ラチチュードが達成できる。また、このような特定高分子化合物を含む感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合、優れた画像形成性を有し、インクの着肉性に優れるため好ましい。
【0032】
本発明に係る特定高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜300,000、更に好ましくは20,000〜200,000、特に好ましくは35,000〜150,000のものが用いられる。この範囲内において、十分な塗膜(皮膜形成性)および優れた現像性が得られる。
また、特に本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合の、感光性組成物全固形分中の特定高分子化合物の含有量は、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、更に1質量%〜20質量%であることが好ましい。この範囲において、本発明に係る平版印刷版原版は、画像形成性およびバーニング時の耐刷性に優れるため好ましい。
【0033】
以下に、本発明に好適に用いられる(A)特定高分子化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の感光性組成物においては、必要に応じてこれら特定高分子化合物の2種類以上を混合して用いることもできる。なお、例示中、組成比はモル比を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
本発明に係る特定高分子化合物は、上述した酸基、アミド基及び/又はアミノ基を有するモノマーと、必要に応じて併用されるその他の共重合成分とを、適当な溶媒に溶かし、公知の重合方法により共重合することができる。このような官能基を有するモノマーとしては、該官能基を有し、且つ、共重合可能な不飽和結合を有するものが好適に用いられる。特に好ましい重合方法としてはラジカル重合、アニオン重合が挙げられ、製造の容易さからラジカル重合が最も好ましい。
【0040】
ラジカル重合を行う際に必要に応じて用いられる反応溶媒としては、酸基、アミド基及び/又はアミノ基を有するモノマー、及び、その他の共重合成分を溶解することができる溶媒であれば限定することなく用いることができ、ラジカル重合反応に対する影響が小さい点や、各モノマーの溶解性の観点から、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。
【0041】
また、ラジカル重合反応の際には、必要に応じて重合開始剤を用いてもよい。このような重合開始剤としては、種々の熱重合開始剤や光重合開始剤を用いることができるが、取り扱い性や入手性の観点からアゾ系熱重合開始剤が好ましく、好ましい開始剤としてはV−70,V−60,V−65(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾニトリル化合物;VA−545,VA−041(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミジン化合物;VA−080,VA−082(いずれも和光純薬工業(株)製)等のアゾアミド化合物;V−601,V−501,VF−077(いずれも和光純薬工業(株)製)等のその他のアゾ化合物が挙げられ、中でも、V−65やV−601が特に好ましい開始剤として挙げられる。
更に、重合に際しては、メルカプト化合物等に代表される公知の連鎖移動剤を併用することにより共重合体の末端部の組成や分子量を制御してもよい。更に各々のモノマー単位は共重合体中にブロック又はランダムのいずれの状態で導入してもよい。
【0042】
〔(B)赤外線吸収剤〕
本発明に用いられる赤外線吸収剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0043】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0044】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0045】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0046】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0047】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の感光性組成物で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0048】
【化12】
【0049】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa−は、後述するZa−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0050】
【化13】
【0051】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層に用いた場合の、記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0052】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0053】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0054】
【化14】
【0055】
【化15】
【0056】
【化16】
【0057】
【化17】
【0058】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0059】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0063】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X2及びX3の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0067】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0071】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0072】
【化24】
【0073】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0074】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0075】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0076】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光性組成物中における顔料の優れた分散安定性が得られ、本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合にも均一な記録層が得られる。
【0077】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0078】
これらの顔料もしくは染料は、感度、記録層の均一性および耐久性の観点から、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
【0079】
〔(C)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性樹脂としては、水不溶且つアルカリ可溶性であれば特に限定はなく、高分子中の主鎖及び側鎖の少なくとも一方に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。酸性基に関しては、予め酸性基を有しているモノマーを重合して導入する方法と、重合後の高分子反応によって導入する方法、及びそれらを併用する方法のいずれの方法で導入してもよい。
【0080】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、プラスチック・エージ株式会社“フェノール樹脂”、アイピーシー株式会社“フェノール樹脂の合成・硬化・強靱化及び応用”、日刊工業新聞社“プラスチック材料講座(15)フェノール樹脂”、工業調査会株式会社“プラスチック全書(15)フェノール樹脂”等に記載されるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を用いることができ、特に制限はないが、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を、高分子の主鎖及び側鎖の少なくとも一方に中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0081】
(1)フェノール性水酸基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0082】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0083】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、本発明においては、(1)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(フェノール樹脂)が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を充分に確保する点から最も好ましい。
本発明に用いられるフェノール樹脂としては、具体的には、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、画像形成性や熱硬化性の観点からノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましく、安定性の点からノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、原料入手性、汎用性の観点からノボラック樹脂が特に好ましい。
【0084】
ノボラック樹脂とは、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
【0085】
本発明におけるフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60の(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0086】
なお、本発明の感光性組成物には、後述する溶剤抑止剤を含有することが好ましく、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。感度の観点からは、酸価が2.0mmol/g未満、好ましくは1.75mmol/g未満、の前記特定高分子化合物を併用し、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で20〜80:0〜60:0〜40の混合フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合体を組み合わせて使用することが特に好ましく、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で20〜45:0〜60:0〜40の混合フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合体との組合わせが最も好ましい。
【0087】
これらのノボラック樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」という)が、好ましくは500〜20,000、更に好ましくは1,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜12,000のものが用いられる。重量平均分子量がこの範囲内にあると、充分な皮膜形成性及び、露光部のアルカリ現像性に優れるため好ましい。
【0088】
以上、これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の感光性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合、感光性組成物全固形分中の(C)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、皮膜形成性及び耐アルカリ現像性向上の観点からは、50質量%〜95質量%であることが好ましく、更に70質量%〜93質量%であることが好ましい。以下、この態様を例に挙げて説明する。
【0089】
〔その他の成分〕
本発明の感光性組成物を調製するにあたっては、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。特にオニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質(分解性溶剤抑止剤)を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩及び、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましく、ジアゾニウム塩を熱分解性の溶解抑止剤として添加することが特に好ましい。
【0090】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivelloet al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0091】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0092】
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0093】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0094】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/又は、o−キノンジアジド化合物の添加量は、本発明の感光性組成物を平版印刷版の記録層に用いる場合、好ましくは記録層の全固形分に対し、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0095】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に用いられる添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0096】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0097】
さらに、画像のディスクリミネーション(疎水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することができる。このような化合物の添加量としては、本発明の感光性組成物を平版印刷版の記録層に用いる場合には、記録層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明の感光性組成物中には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許6,117,913号明細書に用いられているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。このような化合物の添加量としては、本発明の感光性組成物を平版印刷版の記録層に用いる場合、該記録層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、本発明の感光性組成物中には、必要に応じて低分子量の酸性基を有する化合物を含んでいてもよい。酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を挙げることができる。中でもスルホン酸基を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類や脂肪族スルホン酸類を挙げることができる。
【0098】
その他、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の平版印刷版原版の記録層に添加する場合、記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0099】
また、本発明に係る感光性組成物を、平版印刷版原版の記録層塗布液に用いる場合には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
【0100】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0101】
本発明の感光性組成物には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0102】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、感光性組成物全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。更に本発明の感光性組成物中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0103】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、さらには、特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物、及び、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物などを目的に応じて適宜添加することができる。
以上のようにして得られた本発明の感光性組成物は、皮膜形成性及び皮膜強度に優れ、且つ、赤外線の露光により、露光部が高いアルカリ可溶性を示すことから、赤外線対応のポジ型平版印刷版原版の記録層として好適に用いられる。
【0104】
〔平版印刷版原版への応用〕
本発明の感光性組成物を、平版印刷版原版の記録層に適用する場合は、上記感光性組成物を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより記録層を形成することができる。また、目的に応じて、後述する保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0105】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性印刷版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、感光膜の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明の感光性組成物からなる記録層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0106】
〔樹脂中間層〕
本発明の感光性組成物が適用される平版印刷版原版には、必要に応じて、支持体と記録層との間に樹脂中間層を設けることができる。
この樹脂中間層を設けることで、支持体と記録層との間の高分子からなる樹脂中間層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、記録層は、この樹脂中間層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、その一方、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この樹脂中間層は有用であると考えられる。
【0107】
樹脂中間層は、アルカリ可溶性樹脂を主成分とした層として構成されるが、記録層と樹脂中間層の境界を明瞭にするためには、中間層に用いられるアルカリ可溶性樹脂は記録層に用いられるアルカリ可溶性樹脂と異なるものを主成分として用いることが好ましい。樹脂中間層に好適に用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、N−(p−アミノスルホニルフェニル)(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアクリロニトリルの共重合体、4−マレイミドベンゼンスルホンアミドとスチレンの共重合体、(メタ)アクリル酸とN−フェニルマレイミド及び(メタ)アクリルアミドの共重合体等の高極性なユニットを有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
〔支持体〕
平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
上記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように、支持体として適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0109】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するため、例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0110】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。該親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0111】
本発明が適用される平版印刷版原版は、支持体上にポジ型の記録層を設けたものであるが、必要に応じてその間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0112】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
【0113】
上記のようにして作製されたポジ型平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0114】
本発明の感光性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0115】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の感光性組成物を平版印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0116】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0117】
本発明が適用される平版印刷版原版においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0118】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力平版印刷版としたい場合には、所望によりバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0119】
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0120】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができる。水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本願実施例においては、本発明の感光性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版についての評価を行い、その評価を本発明の感光性組成物の評価とする。
【0122】
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程(a)〜(j)を組み合わせて処理することで支持体A、B、C、Dを作製した。
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0123】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0124】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0125】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0126】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0127】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0128】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0129】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0130】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0131】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0132】
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.5g/m2となるようにして支持体Aを作製した。
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Bを作製した。
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体Cを作製した。
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体Dを作製した。
【0133】
上記によって得られた支持体A、B、C、Dに続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
上記で得られたアルミニウム支持体A〜Dを温度30℃の3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.8mg/m2であった。
【0134】
(下塗り処理)
上記のようにして得られた、アルカリ金属ケイ酸塩処理後の各アルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は13mg/m2であった。
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0135】
【化25】
【0136】
〔実施例1〜8、比較例1、2〕
得られた支持体A〜Dに、以下の記録層塗布液(感光性組成物)を塗布して、150℃のオーブンで1分間乾燥し、乾燥膜厚が1.4g/m2のポジ型赤外線感光性組成物層を有する、実施例1〜8、及び、比較例1、2のポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0137】
<記録層塗布液>
・ノボラック樹脂 表1に記載の量
(フェノール/m−クレゾール/p−クレゾール=20/50/30
重量平均分子量8,000、未反応フェノール類0.2重量%含有)
・表1記載の特定高分子化合物 表1に記載の量
・下記構造の赤外線吸収剤(シアニン染料A) 0.018g
・下記構造の赤外線吸収剤(シアニン染料B) 0.024g
・2,4,6−トリス(ヘキシルオキシ) 0.01g
ベンゼンジアゾニウム−2−ヒドロキシ
−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネート
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物 0.06g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを 0.015g
1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料
・フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 15g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7g
【0138】
【化26】
【0139】
なお、前記記録層塗布液に特定高分子化合物を添加しなかったものを比較例1とした。また、本発明に係る特定高分子化合物に代えて、本発明の範囲外のアルカリ可溶性樹脂であるAP−C1(下記構造)を用いたものを比較例2とした。
【0140】
【化27】
【0141】
[平版印刷版原版の評価]
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた実施例1〜8、及び、比較例1、2の平版印刷版原版に対して、Creo社製Trendsetter 3244VSFにてビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液A又はBの、水の量を変更することにより希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間22秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。結果を表1に示す。
【0142】
<アルカリ現像液A組成>
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 95.0質量%
【0143】
<アルカリ現像液B組成>
・Dソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15質量%
【0144】
〔感度および保存安定性の評価〕
<感度>
得られた実施例1〜8、及び、比較例1、2の平版印刷用原板に対して、Creo社製Trendsetter3244VFSにて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、アルカリ現像液Aを用い、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の感光層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0145】
<保存安定性>
得られた実施例1〜8、及び、比較例1、2の平版印刷版原版を、温度30℃、相対湿度80%の条件下、30日間保存した後に、上記の感度評価と同様の方法で感度を測定した。保存の前後で感度の値が変化しないものほど保存安定性が良好であると評価する。
【0146】
【表1】
【0147】
表1の結果より、特定高分子化合物を含有する本発明の感光性組成物を記録層に用いた実施例1〜8の平版印刷版原版は、特定高分子化合物を用いなかった比較例1、2の平版印刷版原版に比べ、現像ラチチュードおよび感度に優れていることが確認された。また、強制経時の前後において感度の変化が少なく、保存安定性にも優れていることが確認された。
【0148】
〔実施例9〜12、比較例3、4〕
得られた支持体に、下記組成の第1層(下層)用塗布液をワイヤーバーで塗布した後、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥して、乾燥後の塗布量を0.9g/m2とした。
得られた下層付き支持体に、下記組成の第2層(上層)用塗布液をワイヤーバーで塗布した。塗布後、乾燥オーブンで、145℃で70秒間の乾燥を行い、乾燥後の総塗布量を1.3g/m2として、重層構造の記録層を有する実施例9〜12、及び、比較例3、4のポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0149】
<第1層(下層)用塗布液>
【0150】
【化28】
【0151】
<第2層(上層)用塗布液>
・表2記載の特定高分子化合物 表2に記載の量
・ノボラック樹脂 表2に記載の量
(フェノール/m−クレゾール=30/70、
重量平均分子量4,600、未反応フェノール類0.4重量%含有)
・赤外線吸収剤(前記シアニン染料A) 0.029g
・1−(4−メチルベンジル)−1−フェニルピペリジニウムの 0.004g
5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸塩
・フッ素系界面活性剤(前記ポリマー1) 0.015g
・フッ素系界面活性剤(下記ポリマー2) 0.003g
・メチルエチルケトン 6.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.3g
【0152】
【化29】
【0153】
なお、前記第2層(上層)用塗布液に特定高分子化合物を用いなかったものを比較例3とした。また、本発明に係る特定高分子化合物に代えて、本発明の範囲外のアルカリ可溶性樹脂であるAP−C1を用いたものを比較例4とした。AP−C1は、比較例2に用いたものと同様である。
【0154】
〔現像ラチチュード、感度および保存安定性の評価〕
得られた実施例9〜12、及び、比較例3、4の平版印刷版原版に対し、露光機を富士写真フイルム(株)製LuxelPLATESETTER T−6000に変更した以外は、実施例1〜8と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュード、感度および保存安定性の評価を行った。なお、感度はドラム回転数900rpmのときのビーム強度とした。結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2の結果より、特定高分子化合物を含有する本発明の感光性組成物を記録層として用いた実施例9〜12の平版印刷版原版は、記録層が重層構造をとった場合においても、特定高分子化合物を用いなかった比較例3、4の平版印刷版原版に比べ、現像ラチチュードおよび感度に優れていることが確認された。また、強制経時の前後において感度の変化が少なく、保存安定性にも優れていることが確認された。
以上、実施例によれば、本発明の感光性組成物は、赤外線対応のポジ型平版印刷版原版の記録層として有用であることがわかった。
【0157】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明は、高感度を維持しながら、画像部における耐アルカリ性、及び、現像ラチチュードに優れた赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版の記録材料として好適な感光性組成物を提供することができる。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007010906A (ja) * | 2005-06-29 | 2007-01-18 | Fujifilm Holdings Corp | 感光性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版 |
JP2017173842A (ja) * | 2006-03-10 | 2017-09-28 | ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシーRohm and Haas Electronic Materials LLC | フォトリソグラフィーの組成物および方法 |
WO2020004035A1 (ja) * | 2018-06-27 | 2020-01-02 | 富士フイルム株式会社 | ポジ型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法及びポジ型感光性樹脂組成物 |
-
2003
- 2003-06-02 JP JP2003156800A patent/JP2004361483A/ja active Pending
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