JP4808328B2 - 安全長靴 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は安全長靴に関し、特に甲部にアラミド繊維等の強度の高い繊維からなるフェルトや不織布等からなる補強布を有する安全長靴に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は例えば消防長靴として用いられる従来の編み上げ式の安全長靴の外観形状を示した斜視図であり、図5は図4で示した安全長靴の踵部を示した図であり、図6は図5のVI−VIラインの断面構造図である。
【0003】
これらの図を参照して、安全長靴11は使用する人の足を保護する足部13と脛を保護する胴部15とから構成されている。
【0004】
その断面構造は図6に示されているように、足部13に対しては裏底17の上面に中芯68及び当中底69が形成され、更にその上に踏抜防止板70を介して中底71が形成されている。中底71の上面には靴の内面となる裏布66が全面に布設されている。
【0005】
一方、胴部15側に対しては裏底17にその一部が接するように形成された縁巻ゴム18と、縁巻ゴム18の内面側に胴ゴム61及び下胴ゴム62が形成され、更にその内面に突き刺し防止用の2枚のケプラーフェルト64a,ケプラーフェルト64bよりなる補強布23が形成されている。尚、このケプラーフェルトはパラ系芳香族アラミド繊維等の強度の高い繊維から構成されている。そして、補強布23の内面側にはカブトゴム65が形成され、更にその内面は靴の内部に面する裏布66が底部側から全面に敷設されている。尚、補強布23は安全長靴11の甲部21及び踵部22の全面に形成されており、使用者の甲や踵を保護している。
【0006】
安全長靴11の足部13及び胴部15は以上のように断面構成されており、使用者の足の作業時における安全を確保している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の安全長靴では、補強布は突き刺し防止用に必要であるが、その目的上、引張強度が強く且つ引張加重に対する変形度は小さい。その結果、全面に補強布が布設されている甲部及び踵部の変形量が小さいため、履いたり脱いだりするために多大な力が必要となり、迅速な使用が困難であった。特にこの安全長靴を消防用に用いる場合等にあっては、迅速に履けないことが大きな問題となる。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、突き刺し防止機能を保持しつつ、装着及び脱着が容易な安全長靴を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、甲部及び踵部の内面に補強布を備えた安全長靴において、踵部の少なくとも一部において補強布に切欠きを形成し、引張荷重を加えた際の踵部の少なくとも一部の変形度を、引張荷重を加えた際の甲部及び踵部の他の部分の変形度より大きくなるように設定したことを特徴とするものである。
【0010】
このように構成すると、使用時に他の部分より切欠き部に対応する踵部が変形しやすくなる。
【0011】
請求項2記載の発明は、甲部及び踵部の内面に補強布を備えた安全長靴において、補強布を、踵部の少なくとも一部に形成される第1の補強布と踵部の他の部分に形成される第2の補強布とから構成し、同一引張荷重に対する第1の補強布の伸び量を第2の補強布の伸び量より大きくし、引張荷重を加えた際の踵部の少なくとも一部の変形度を、引張荷重を加えた際の甲部及び他の部分の変形度より大きくなるように設定したことを特徴とするものである。
【0012】
このように構成すると、使用時に他の部分より第1の補強布が布設された踵部が変形しやすくなる。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、切欠き部に対応する踵部が他の部分より変形しやすくなるので、切欠き部を設けるだけで長靴の履く動作や脱ぐ動作が容易となり、使用勝手が向上する。
【0016】
請求項2記載の発明は、第1の補強布が布設された踵部が他の部分より変形しやすくなるので、所定の伸び量の第1の補強布を設定することで踵部の変形度合を所望の程度に容易に調整することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の第1の実施の形態による安全長靴の外観形状を示した斜視図であり、図2は図1で示した安全長靴の踵部を示した図である。
【0019】
これらの図を参照して、安全長靴11は使用者の足を保護する足部13と脛を保護する胴部15とから構成されている。足部13は靴底となる裏底17と、裏底17の上方外方端に接続する縁巻ゴム18と、縁巻ゴム18に接続する甲部21及び踵部22とから構成されている。又、足部13の前方上部にはつま先補強ゴム19が形成され、その内部にはつま先を保護するための鋼製の先芯20が形成されている。尚、甲部21及び踵部22に対しては補強布23が形成されているが、これについては後述する。
【0020】
一方、胴部15の側面部25には水除27が形成されており、これの開閉を行なうファスナ26が上下に取り付けられている。これによって安全長靴11の着脱を容易としている。尚、胴部15の上端全周には視認性を強化するための反射テープ33が全周に形成されている。又、足部13の甲部21の上面から胴部15の前面部29にかけて水除31が形成され、これの開度を調整する紐30によって編み上げ式の構造となっている。
【0021】
最初の使用の際には、ファスナ26を上端まで上げた状態で紐30を緩めて足を安全長靴11内部に入れる。そして紐30を閉めこんでいきその上端で結束して、水除31の開度を足に合わせて調整する。次にファスナ26を最下端まで移動させて水除27によって側面部25を広げ、足を安全長靴11から抜き出す。
【0022】
これによって使用前の胴部15の調整は完了する。次にこの安全長靴11を実際に使用する際には、紐30の調整はせずにファスナ26を引き下げた状態で胴部15の上方部を広げて足を装着する。そしてファスナ26を引上げて胴部15の上方部を締めることによって、安全長靴11の装着は完了する。
【0023】
図2を参照して、そのVI−VIラインで示す断面構造は従来例の図5の断面構造として示した図6の構造と同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。この実施の形態においては、踵部22における補強布23に対して切欠き35を形成している。すなわち、切欠き35は補強布23の上端部と裏底17底部との距離H(約13cm)に対してAの寸法(約9cm)を有し、踵部22の幅W(約10cm)に対してBの寸法(約6cm)を有したものとしている。
【0024】
これによって踵部22において切欠き35が形成されている部分とその周囲の補強布23が形成されている部分とに対して、同一荷重に対する変形量に差が生じる。すなわち、切欠き35の部分の踵部22は周囲に比べて容易に変形するため、使用時の安全長靴11への足の出し入れが容易となる。
【0025】
尚、この実施の形態においては、切欠き35を図に示すような形状及び上記の寸法としているが、形状、寸法はこれに限らず、踵部22の少なくとも一部においてその変形度が、全面に補強布23を形成しているものに比べて大きくなるような形状、寸法であればよい。
【0026】
図3はこの発明の第2の実施の形態による安全長靴の踵部の形状を示した概略図である。
【0027】
図を参照して、踵部22を囲う補強布23は、斜線で示す第1の補強布37とその両側に接続する第2の補強布38とで構成されている。そして第1の補強布37の同一引張荷重に対する変形度合は第2の補強布38のそれより大きくなるようにこれらの補強布が設定されている。
【0028】
例えば、第2の補強布38の構造は図6の断面構造で示したような2枚のケプラーフェルト64a,ケプラーフェルト64bより構成し、第1の補強布37はこのいずれか1枚のケプラーフェルトを斜線の部分だけ取除いたような構造としても良い。これによって第1の補強布37の変形度合は第2の補強布38のそれより大きくなり、安全長靴11の使用時における足の出し入れが容易となる。
【0029】
この第2の実施の形態による安全長靴にあっては、踵部22においてある程度の補強はしつつ、装着容易性も向上させるという双方の効果を奏するものである。
【0030】
尚、上記の各実施の形態では、補強布としてケプラーフェルトを用いているが、これに代えて引裂強度の高い不織布を用いても良い。
【0031】
又、上記の第2の実施の形態では、第1の補強布を1枚のフェルトとし、第2の補強布を2枚のフェルトとしてそれらの変形度合いを異ならせる構成を例示しているが、強度(変形度)の異なる補強布を同一枚数用いて、踵部の変形を容易とするように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態よる安全長靴の外観形状を示した斜視図である。
【図2】図1で示した安全長靴の踵部の概略形状を示した図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態による安全長靴の踵部の概略形状を示した図である。
【図4】従来の安全長靴の外観形状を示した斜視図である。
【図5】図4で示した安全長靴の踵部の概略形状を示した図である。
【図6】図5のVI−VIラインの断面構造図である。
【符号の説明】
11…安全長靴
21…甲部
22…踵部
23…補強布
35…切欠き
37…第1の補強布
38…第2の補強布
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

Claims (2)

  1. 甲部及び踵部の内面に補強布を備えた安全長靴において、
    前記踵部の少なくとも一部において、前記補強布に切欠きを形成し、引張荷重を加えた際の前記踵部の少なくとも一部の変形度を、前記引張荷重を加えた際の前記甲部及び前記踵部の他の部分の変形度より大きくなるように設定したことを特徴とする、安全長靴。
  2. 甲部及び踵部の内面に補強布を備えた安全長靴において、
    前記補強布を、前記踵部の少なくとも一部に形成される第1の補強布と前記踵部の他の部分に形成される第2の補強布とから構成し、同一引張荷重に対する前記第1の補強布の伸び量を前記第2の補強布の伸び量より大きくし、引張荷重を加えた際の前記踵部の少なくとも一部の変形度を、前記引張荷重を加えた際の前記甲部及び前記他の部分の変形度より大きくなるように設定したことを特徴とする、安全長靴。
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