JP4806384B2 - 配線基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に樹脂材料により形成された配線基板およびその製造方法に関する。
多層配線基板は、複数の配線基板が積層された構造を有している。また、多層配線基板を構成する各配線基板は、絶縁基板と、絶縁基板の両面に設けられる銅箔と、絶縁基板に形成されるスルーホール導体とを含んで構成されている。絶縁基板は、ガラス織布と熱硬化性樹脂との複合材料から成る。スルーホール導体は、絶縁基板の厚み方向に貫通するスルーホールに銅めっきを被着させた構造を有している。そして、隣接する配線基板同士は、スルーホール導体や銅箔を介して電気的に接続される。このような多層配線基板は、たとえば半導体素子を収納するパッケージの一部として使用される。
半導体素子の処理速度の高速化に伴って、半導体素子を構成する絶縁材料を、電気信号の伝播速度が速い低誘電率の材料とすることが求められている。通常使用される樹脂ではその分子構造に起因して低誘電率化が難しいため、絶縁材料中に気泡を含有させて低誘電率化を図る技術が試みられている。ところが、気泡を含有させると、絶縁材料から成る配線基板の強度が低下し、配線基板と半導体素子との間に生じる熱応力によって配線基板または半導体素子が損傷するおそれがあることから、絶縁材料中に気泡を含有させて低誘電率化を図る場合、配線基板と半導体素子との熱膨張率の差を小さくすることが求められる。
また、半導体素子のI/O(input/output)数が増加する一方で、半導体素子の高密度化で半導体素子自身は小形化が進み、半導体素子の小形化に伴って、半導体素子と配線基板とを接続するバンプの小形化が進んでいる。バンプの小形化が進むとバンプによる電極の接続強度が低下することから、同様に、半導体素子と配線基板との熱応力を小さくするために両者間の熱膨張率の差を小さくすることが求められている。
以上の例からわかるように、種々の状況によって半導体素子と配線基板との熱膨張率の差を小さくすることが重要となってきている。
そこで、0以下の熱膨張率を有し、かつ、ヤング率の高い樹脂繊維と熱硬化性樹脂とを用いて配線基板を構成することによって、半導体素子に近い熱膨張率を実現する試みが提案されている(たとえば特許文献1および特許文献2参照)。
特公平2−59637号公報 特開平5−254048号公報
しかしながら、上述の配線基板においては、樹脂繊維と樹脂繊維を覆う絶縁樹脂との界面に、樹脂繊維と絶縁樹脂との熱膨張率の差に起因する残留応力が発生する。樹脂繊維は、ガラス繊維のような細い繊維とすることが困難であるので、絶縁樹脂と樹脂繊維との接触面積が小さくなる。したがって前記残留応力は、さらに大きくなる。
このような樹脂繊維と絶縁樹脂とを用いた配線基板において、ドリルあるいはレーザー等でスルーホールを形成すると、スルーホールの形成時に印加される応力等によって樹脂繊維と絶縁樹脂との間に隙間が形成されることがある。かかるスルーホールの内部にめっき等により銅等から成るスルーホール導体を形成すると、上記隙間に銅が析出し、隣り合うスルーホール導体間の絶縁性が著しく低下するという問題がある。
したがって本発明の目的は、隣り合う内部導体同士の電気的な絶縁性を高く維持することが可能な配線基板、およびその製造方法を提供することである。
本発明は、複数の繊維糸と、該繊維糸を覆う樹脂板と、該樹脂板を厚み方向に貫通する複数の貫通孔と、を有する基板と、前記貫通孔の内面から露出し、前記繊維糸と前記樹脂板との間に形成された空隙に設けられる封止体と、前記封止体を被覆し、前記貫通孔の内部に形成される内部導体と、を備え、前記封止体は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、アルコールエーテル型エポキシ樹脂と、イミダゾール類と、を有することを特徴とする配線基板である。
また本発明は、前記配線基板において、前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の分子量は、300以上600以下であり、全成分中の含有量が10重量%以上55重量%以下であることを特徴とする配線基板である。
また本発明は、前記配線基板において、前記封止体は、前記貫通孔の内面全体を被覆するように設けられることを特徴とする配線基板である。
また本発明は、前記配線基板において、前記内部導体は、前記基板の前記貫通孔に充填されて形成されることを特徴とする配線基板である。
また本発明は、複数の繊維糸と、該繊維糸を覆う樹脂板と、該樹脂板を厚み方向に貫通する貫通孔と、を有する基板を準備する工程と、前記貫通孔の内面に液状樹脂を塗布して、前記樹脂板と前記繊維糸との間に形成された空隙に前記液状樹脂を充填する工程と、前記液状樹脂を硬化させて封止体を形成する工程と、前記封止体を覆うように前記貫通孔の内部に内部導体を形成する工程と、を備え、前記液状樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体と、アルコールエーテル型エポキシ樹脂前駆体と、イミダゾール類と、を含むことを特徴とする配線基板の製造方法である。
また本発明は、前記配線基板の製造方法において、液状樹脂の粘度が30mPa・s以上200mPa・s以下の範囲であることを特徴とする配線基板の製造方法である。
また本発明は、前記配線基板の製造方法において、イミダゾール類は、液状であることを特徴とする配線基板の製造方法である。
本発明によれば、貫通孔を形成する際に、繊維糸と樹脂板と間に空隙が形成されていても、空隙を封止体によって覆うことができる。これによって、貫通孔内に被着される内部導体が複数形成される場合、隣り合う内部導体同士が空隙を介して短絡することを防ぐことができる。
また封止体は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、アルコールエーテル型エポキシ樹脂と、イミダゾール類と、を備えた組成を有することから、封止体と該封止体上に形成される内部導体との接続強度を大きくすることができ、内部導体が封止体から不所望に剥離することを防止することが可能となる。
また本発明によれば、前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の分子量は、300以上600以下であり、全成分中の含有量が10重量%以上55重量%以下である。このように分子量および含有量を設定することによって、封止体を空隙に設ける場合に、封止体が硬化する前における液状樹脂の常温粘度を30mPa・s以上200mPa・s以下の範囲に設定することができる。これによって封止体を上記空隙に良好に充填することができる。
さらに本発明によれば、封止体は前記貫通孔の内面全体を被覆するように設けられる。これによって貫通孔の内面より露出する繊維糸を封止体によって確実に被覆することができるので、隣接する内部導体同士の短絡をより確実に防止できる。
図1は、本発明の実施の一形態の多層配線基板を構成する配線基板1を簡略化して示す断面図であって、一部を拡大して示す。図1では、理解を容易にするため1層の配線基板1を示すが、本実施形態においては、多層配線基板は、複数の配線基板1を、配線基板1の厚み方向に積層して構成されているものとする。
<多層配線基板の概略構造>
多層配線基板を構成する配線基板1は、絶縁基板2と、銅等の導電材料から成る導電層3とを含んで構成されていることから、各絶縁基板2間には導電層3が介在された形となっている。また、絶縁基板2は、厚み方向に貫通するスルーホール導体6(内部導体)を有しており、かかるスルーホール導体6によって、多層配線基板内において異なる平面上に配置された複数の導電層3同士が電気的に接続されている。
<絶縁基板2の概略構造>
絶縁基板2は、複数の繊維糸4と、該繊維糸4を覆う樹脂板5と、該樹脂板5厚み方向に貫通する複数のスルーホール10(貫通孔)が形成される。スルーホール10の内面9には、絶縁性を有する封止体8が設けられる。またスルーホール10の内面9には、封止体8を被覆するように前述のスルーホール導体6が設けられる。
<繊維糸4および樹脂板5の材料>
繊維糸4は、たとえばポリベンズオキサゾール、全芳香族ポリアミドまたは全芳香族ポリエステル等の樹脂材料からなる繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、もしくは、ガラス繊維(たとえば、特にSガラス、Tガラス等の低熱膨張率を有するガラス繊維)によって形成しても良い。
また、樹脂板5を構成する熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ系樹脂、トリアジン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、フェノール樹脂、フッ素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種など一般に配線基板1に使用される樹脂であればなんでもよい。
<空隙7の説明>
絶縁基板2は、繊維糸4と樹脂板5との間には、空隙7が形成される。この空隙7は、繊維糸4を液状の熱硬化性樹脂に含浸し硬化させて樹脂板5を形成するときに、繊維糸4と液状の熱硬化樹脂との熱膨張率の差に起因して発生する。また空隙7は、絶縁基板2にドリルやレーザー等でスルーホール10を形成するときに、繊維糸4や樹脂板5に作用する応力によって、生じることがある。図1では、理解を容易にするため、空隙7を誇張して示しているが、実際には図1に示すような大きな空隙7が形成されることはまれであり、通常は、単に繊維糸4と樹脂板5とが剥がれている状態である。
空隙7は、繊維糸4の熱膨張率とそれに含浸された熱硬化性樹脂から成る樹脂板5との熱膨張率の差が大きいほど発生しやすい。繊維糸4を構成するガラスの熱膨張率は、たとえばEガラスでは12ppm/℃程度であり、Sガラスでは3ppm/℃程度、Tガラスでは5ppm/℃程度であり、また、樹脂板5を構成する樹脂材料の熱膨張率は、−5〜0ppm/℃程度であるため、両社の熱膨張係数の差は比較的大きく、繊維糸4と樹脂板5との間に空隙7が発生しやすい。
<封止体8の概略構造>
封止体8は、絶縁性を有し、隣接するスルーホール10に形成されるスルーホール導体6と絶縁するために設けられる。封止体8は、少なくとも空隙7の内部に設けられており、本実施形態においては、封止体8は空隙7の内部に充填された形となっている。したがって、スルーホール10を形成する際に、繊維糸4と樹脂板5と間に空隙が形成されていても、空隙7を封止体8によって覆うことができる。これによって、スルーホール19内に被着されるスルーホール導体6が複数形成される場合、隣り合うスルーホール導体6同士が空隙7を介して短絡することを防ぐことができる。なお、封止体8は、後に詳述するように、スルーホール10の内面9に液状樹脂を含浸させるとともに、この液状樹脂を硬化して形成される。
<スルーホール導体6の概略構造>
スルーホール導体6は、スルーホール10の内部に形成されており、端部が絶縁基板2の主面に被着された導電層3と電気的に接続されている。このようなスルーホール導体6は、めっき法によってスルーホール10に充填されて形成される。なお、スルーホール導体6は、必ずしもスルーホール10に充填される必要はなく、スルーホール10の内面9に被着されているだけでも良い。絶縁基板2には、複数のスルーホール10が形成され、隣接するスルーホール10の間隔であるスルーホールピッチが500μm以下であり、本実施の形態では、スルーホールピッチが250μm以下、特に175μm以下の近接したスルーホール10が形成される。
<配線基板1の製造方法>
次に、配線基板1の製造方法について説明する。図2は、配線基板1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。図2では、理解を容易にするため1層の配線基板1を示す。図3は、配線基板1の製造方法を示すフローチャートである。
(1)ステップa1にて、図2(a)に示すように、繊維糸4から成る織布に熱硬化性樹脂を含浸した絶縁基板2を準備し、ステップa2に移る。
絶縁基板2中の織布は、レーザーによるスルーホール10の加工の精度を高めるために、偏平処理を施すことが望ましい。この偏平処理によって、繊維糸の密度の相違によるスルーホール径のばらつきの発生が抑制され、均一なホール径のスルーホール10を形成することができる。
(2)ステップa2は、図2(b)に示すように、この絶縁基板2に対して複数のスルーホール10を形成し、ステップa3に移る。
スルーホール10は、たとえばレーザー加工、ドリル加工およびルーター加工の少なくともいずれかの方法によって形成される。スルーホール10の形成は、レーザー加工では、炭酸ガスレーザ、YAGレーザー、およびエキシマレーザーなどの照射による加工など公知の方法が採用される。スルーホール加工を行なう際には、絶縁基板2の表裏に表面部を保護するための保護フィルムを密着させて加工することができる。
(3)ステップa3では、スルーホール10が形成された絶縁基板2のクリーニングを行い、ステップa4に移る。
(4)ステップa4では、スルーホール10の内面9に、液状樹脂を塗布して、表面に樹脂が塗布された状態で雰囲気を減圧し、再び大気圧に戻してから、ステップa5に移る。
液状樹脂の塗布は、絶縁基板2の全体に樹脂を塗布するか、前記液状樹脂が収容された容器に所定の時間、浸漬させることによって行われる。絶縁基板2を液状樹脂に対して含浸させると、液状樹脂が毛細管現象によってスルーホール10の内面に入り込み、空隙7が液状樹脂によって充填される。この際、基板表面が樹脂で覆われた状態で雰囲気を減圧すると基板表面に残留する気泡が抜け、その後、大気圧に戻すことで空隙7が液状樹脂による充填が促進される。その結果、スルーホール10のピッチが250μm以下の非常に近接している場合に、スルーホール10内にスルーホール導体6を形成しても、スルーホール導体6間における絶縁不良の発生を抑制し、回路の信頼性を高めることができる。また、この液状樹脂の含浸によって、外部から水分が侵入してマイグレーションが発生することが抑制され、また、基板温度が上昇した場合に空隙の膨張によって基板が破損することも良好に防止される。
なお、液状樹脂をスルーホール10内に充填させる際に、絶縁基板2の配設空間を10torr〜大気圧の間で減圧と加圧を繰り返すことによって行われる。かかる圧力調整によって、液状樹脂の毛細管現象を促進させ、液状樹脂を空隙7に良好に充填することが可能となる。
(5)ステップa5では、絶縁基板2を液状樹脂が収容された容器から取り出し、余分な液状樹脂を除去した後、ステップa6に移る。
液状樹脂の除去は、絞りロールによる方法、圧縮空気の吹き付けによる方法がある。
(6)ステップa6では、図2(c)に示すように、液状樹脂を硬化させて封止体8を形成し、ステップa7に移る。
液状樹脂の硬化は、絶縁基板2を120〜250℃の環境下で10分〜120分保持することによって行われる。
(7)ステップa7では、絶縁基板2を過マンガン酸溶液に浸漬し、スルーホール10の内面9および絶縁基板2に厚み方向の表面部を膨潤させ、表面にパラジウム触媒を付着させ、ステップa8に移る。
(8)ステップa8では、スルーホール10の内面9および絶縁基板2の前記表面部を無電解めっきによって、たとえば1μmの厚さで銅をめっきし、ステップa9に移る。
(9)ステップa9では、スルーホール10の内面9および絶縁基板2に前記表面部に銅の電気めっきを行い、無電解めっきと合計でたとえば18μmの銅をめっきして、スルーホール10にスルーホール導体6を形成し、絶縁基板2の前記表面部にめっき層(図示せず)を形成し、ステップa10に移る。このように無電解めっきおよび電解めっきによって、図2(d)に示すように、スルーホール10に銅を充填してスルーホール導体6を形成する。
(10)ステップa10では、めっき層の表面部に感光性のレジストを貼り、ステップa11に移る。
(11)ステップa11では、レジストに所定のパターンを露光して、現像を行い、めっき層をエッチングすることによって所定の回路を形成した後、レジストを剥離し、ステップa12に移る。このようにスルーホール導体6を形成した前記絶縁基板2の表面に、図2(d)に示すように、導電層3を形成する。これによって配線基板1が製造される。導電層3を形成する方法としては、前述のようにたとえばパターンめっき法などが採用される。したがってスルーホール導体6によって、絶縁基板2の厚み方向両端面部に対向して配置される導電層3を導通させることができる。
(12)ステップa12では、配線基板1を洗浄および乾燥して、ステップa13に移る。
(13)ステップa13では、ステップa12にて製造された配線基板1を所望の枚数積層して、多層配線基板を形成し、ステップa14に移る。
(14)ステップa14では、仕上げ工程が行われ、本フローを終了し、多層配線基板が完成する。
<液状樹脂(封止体)の材料>
図4は、液状樹脂の製造方法を示すフローチャートである。液状樹脂は、前記樹脂板5の樹脂材料と同系の樹脂が好適に用いられる。ステップb1にて、液状樹脂を構成する複数種のエポキシ樹脂前駆体と、該エポキシ樹脂前駆体を熱により硬化ならしめる硬化剤と、が調合され、ステップb2に移る。ステップb2では、これら材料が混合されて液状樹脂が生成され、ステップb3に移る。ステップb3では、ステップb2にて混合された液状樹脂の粘度を測定し、本フローを終了する。
図4に示すフローチャートでは、ステップb1にて、複数種のエポキシ樹脂前駆体と硬化剤とを調合して、ステップb2にて混合し、ステップb3に移っているが、これに限ることはない。たとえばステップb1にて複数種のエポキシ樹脂前駆体を調合し、ステップb2にて加熱した状態で混合し、さらにステップb1に戻り、ステップb2にて混合した液状の混合物に硬化剤を調合し、再びステップb2にて混合して、液状樹脂を生成してもよい。このように加熱した状態で複数種のエポキシ樹脂前駆体だけを混合することによって、より確実に複数種のエポキシ樹脂前駆体を溶解および混合することができ、また硬化剤を調合していない混合物を加熱した状態で混合するので、混合物が硬化剤によって不所望に硬化することを防ぐことができる。
液状樹脂の粘度は、スルーホール10が埋まらず、かつスルーホール10の内面9の微細な空隙7に浸透できる粘度が好ましく、たとえば常温において30mPa・s以上200mPa・s以下が望ましい。ここで常温とは25℃である。粘度は、ブルックフィールド社製HBDVIIIによって、角度0.8度、半径24mmのコーン・スピンドルを用いて、ずり速度187.5sec−1の条件で測定した25℃のときの粘度である。粘度が30mPa・s未満であると、図3のa3で示した余分除去工程において図1で示した空隙7部分に充填された樹脂までも除去してしまう。また200mPa・sを超えると、図3のa3で示した余分除去工程においてスルーホールの貫通性が悪くなるため望ましくない。ここでスルーホールの貫通性とは、塗布した液状樹脂がスルーホール内で貫通せずに残存してしまうことである。このような状態になるとa6以降のめっき工程で不具合が発生する。
液状樹脂を構成するエポキシ樹脂前駆体としては、たとえば、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのノボラック樹脂前駆体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシン、ビスヒドロキシジフェニルエーテル等の多価フェノール類、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸イソフタル酸等の多価カルボキシ化合物等とエピクロルヒドリンまたは2−メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂前駆体、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族および脂環式エポキシ樹脂前駆体が用いられる。硬化剤としては、たとえば、アミン類、酸無水物類、イミダゾール類、フェノール類、ジシアンジアミド等が好適に用いられ、これらは単独または組み合わせて使用することができる。また、封止体8には、上記のような一分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物とともに、一分子中にエポキシ基を1個のみ有する化合物を適宜加えることもできる。
液状樹脂は、好適には、一分子中にエポキシ基を2個有するビスフェノールF型エポキ
シ樹脂前駆体と、一分子中にエポキシ基を1個〜3個有するアルコールエーテル型エポキシ樹脂前駆体と、液状のイミダゾール類とを有する。
前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体の分子量は、好適には、300以上600以下である。ビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体の分子量が600を超えると、液状樹脂の状態での粘度が高くなりスルーホール10の内面9の微細な空隙7に浸透しにくくなり、またスルーホール10がビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体によって埋まりやすくなるため望ましくない。またビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体の分子量が300未満の状態は、その構造上存在しないので、用いることができない。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体は、液状樹脂の全成分中の含有量が10重量%以上55重量%以下である。ビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体が封止体8の全成分中の10%未満であると耐熱性が劣るため望ましくなく、55%を超えると液状樹脂の状態における粘度が高くなり前記空隙7に浸透しにくくなり、またスルーホール10がビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体によって埋まりやすくなるため望ましくない。
アルコールエーテル型エポキシ樹脂前駆体は、液状樹脂の粘度を塗布に適した30mPa・s以上200mPa・s以下(25℃)にするために用いられる。
イミダゾール類については、2−エチル4−メチルイミダゾール、1−ベンジル2―メチルイミダゾール、ならびに1−ベンジル2−フェニルイミダゾール等、および変性イミダゾールが好適に用いられる。イミダゾール類が粒子として残存するとスルーホール10の内面9の微細な空隙7に浸透しにくくなるため、液状の形で液状樹脂中に存在していることが好ましい。
このような液状樹脂を硬化することによって、前述したように封止体8が空隙7に形成され、封止体8の材料は液状樹脂と基本的に同様である。したがって、上述した樹脂前駆体の材料は、そのまま封止体8の組成となると考えてよい。
本実施の形態の製造方法で製造した液状樹脂に関するデータの一例を表1〜3に示す。
表1には、液状樹脂として用いた2種類の実施例と2種類の比較例のそれぞれにおけるビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体、アルコールエーテル型エポキシ樹脂前駆体、及びイミダゾール類の重量比率とそれぞれの粘度を示している。
Figure 0004806384
表2には本実施の形態の製造方法で製造した配線基板のスルーホールのめっき不良率を示している。スルーホールの不良とはスルーホール内が液状樹脂による封止体により貫通していない場合に発生する。
Figure 0004806384
表2に示すように液状樹脂の粘度が200mPa・sを超える比較例1ではスルーホールの不良が発生しており、余分除去の工程にて液状樹脂の除去が不十分であることが確認できる。
表3には上記した配線基板の絶縁信頼性試験結果を示す。試験条件は温度が130度、湿度が85%、スルーホール間に印加する電圧が5ボルトである。試験したスルーホール数は100であり、試験後にスルーホール断面切断結果からスルーホール間にマイグレーションが発生しているものを不良とした。
Figure 0004806384
表3に示すように液状樹脂の粘度が30mPa・s未満である比較例2では絶縁不良が発生しており、余分除去の工程にて液状樹脂を過剰に除去してしまい、絶縁信頼性が向上していないことが確認できる。
以上説明したように、本発明の配線基板1では、スルーホール内における繊維糸4と樹脂板5との間の空隙7を封止体8によって覆うことができる。これによって隣り合うスルーホール導体6同士が、空隙7を介して不所望に導通することを防ぐことができる。
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の範囲内で種々の変更・改良が可能である。
たとえば、上述の実施形態においては、封止体8がスルーホール10の内面9の繊維糸4付近のみを覆うように構成しているが、たとえば図5に示すように、封止体8は、スルーホール10の内面9の全域を覆うように構成してもよい。これによってスルーホール導体6同士の短絡を封止体8によってより確実に防止できる。
また上述の実施形態においては、封止体8を構成する液状樹脂をスルーホール10に充填する際に、配線基板1全体を液状樹脂に浸漬しているが、これに限らず、スルーホール10の密集部にのみ液状樹脂を滴下しても良い。
本発明の実施の一形態の多層配線基板を構成する配線基板1を簡略化して示す断面図であって、一部を拡大して示す。 配線基板1の製造工程の一部を段階的に示す断面図である。 配線基板1の製造方法を示すフローチャートである。 液状樹脂の製造方法を示すフローチャートである。 配線基板1の他の例を簡略化して示す断面図であって、一部を拡大して示す。
符号の説明
1 配線基板
2 絶縁基板
3 導電層
4 繊維糸
5 樹脂板
6 スルーホール導体
7 空隙
8 封止体
9 内面
10 スルーホール

Claims (7)

  1. 複数の繊維糸と、該繊維糸を覆う樹脂板と、該樹脂板を厚み方向に貫通する複数の貫通孔と、を有する基板と、
    前記貫通孔の内面から露出し、前記繊維糸と前記樹脂板との間に形成された空隙に設けられる封止体と、
    前記封止体を被覆し、前記貫通孔の内部に形成される内部導体と、を備え、
    前記封止体は、
    ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、
    アルコールエーテル型エポキシ樹脂と、
    イミダゾール類と、を有することを特徴とする配線基板。
  2. 請求項1に記載の配線基板において、
    前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の分子量は、300以上600以下であり、全成分中の含有量が10重量%以上55重量%以下であることを特徴とする配線基板。
  3. 請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の配線基板において、
    前記封止体は、前記貫通孔の内面全体を被覆するように設けられることを特徴とする配線基板。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の配線基板において、
    前記内部導体は、前記基板の前記貫通孔に充填されて形成されることを特徴とする配線基板。
  5. 複数の繊維糸と、該繊維糸を覆う樹脂板と、該樹脂板を厚み方向に貫通する貫通孔と、を有する基板を準備する工程と、
    前記貫通孔の内面に液状樹脂を塗布して、前記樹脂板と前記繊維糸との間に形成された空隙に前記液状樹脂を充填する工程と、
    前記液状樹脂を硬化させて封止体を形成する工程と、
    前記封止体を覆うように前記貫通孔の内部に内部導体を形成する工程と、を備え、
    前記液状樹脂は、
    ビスフェノールF型エポキシ樹脂前駆体と、
    アルコールエーテル型エポキシ樹脂前駆体と、
    イミダゾール類と、を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
  6. 請求項5記載の液状樹脂は常温粘度が30mPa・s以上200mPa・s以下の範囲であることを特徴とする配線基板の製造方法。
  7. 請求項6に記載の配線基板の製造方法において、
    イミダゾール類は、液状であることを特徴とする配線基板の製造方法。
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