高圧部と中圧部と低圧部を有する蒸気タービンを一般的な蒸気タービンとするとき、このような蒸気タービンの従来の構造は前述した通りであるが、このような構造は、部品点数が多くまた大きな設置スペースを必要とし、高コストであって、近年の低コスト化およびコンパクト化の要求に対して不都合な構造となっている。
一方、低コスト化の強い要請により近年は一体のタービンケーシングに格納される一本のタービンロータに高温部と低温部の両方を形成させるとともに低圧部分を単流化してコンパクト化を図ることが要求されてきている。この実現に伴い、クロスオーバー管を廃止することが可能となって、低コスト化と流れの管損失等の排除によるタービン性能向上に貢献することが可能であるという付随効果も期待できる。
既述の如く、コンバインドサイクル発電設備用の蒸気タービンにおいては、発電設備の効率向上の目的で蒸気タービンの蒸気条件の高温高圧化が、発電設備の高出力化の目的で蒸気タービンの蒸気流量の増大が、発電所建設費用の抑制などの目的で低コスト化ならびにコンパクト化が、発電設備の経済的な運用の目的で蒸気タービンの起動特性の向上が、それぞれ従来にも増して強く要請されて来ている。
蒸気タービンの蒸気条件の高温高圧化の要請に対して、タービンロータの高温にさらされる部分は、高温での強度を強化してクリープ損傷の発生を抑制することが要求される。蒸気流量増大の要請は、蒸気タービン低圧最終段落の排気流量の増大に直結し、蒸気タービン最終段動翼の長大化が要求される。低コスト化やコンパクト化の要請は、最大出力が100MW以上のタービンでは複流構造が支配的であった蒸気タービン低圧部分において、単流構造化を強く要求しており、それ故に蒸気タービン最終段動翼には更なる長大化が要求される。蒸気タービン最終段動翼の長大化に伴って、蒸気タービンロータの少なくとも低圧最終ホイール位置の部分では、低温での高強度を強化し靭性を改善してタービンロータの脆性破壊を予防することが要求される。蒸気タービンの起動特性の向上の要請に対しては、蒸気タービンロータの高温部の非定常熱応力を低減して、低サイクル疲労損傷を予防することが要求される。
従来は、強度的に低圧部が複流構造でしか成立し得なかった蒸気流量を、単流構造で実現させるべく蒸気タービン最終段動翼の長大化が要求されてきており、60Hz機用で翼長33.5インチ(約851mm)以上の長翼や50Hz機用で翼長36インチ(約914mm)以上の長翼が開発されてきている。
しかしながら、傾斜熱処理ロータにおいては、高温で高強度が要求される部分も低温で高強度高靭性が要求される部分も化学成分は同一である。このため、熱処理温度を変えて達成できる強度レベルには自ずと限界がある。熱処理温度の調整だけでは材料に要求される機能、例えばクリープ破断強度や破面遷移温度などを満足出来ないことがある。蒸気タービンロータ材に適用されているような比較的安価な低合金鋼においては、その高温強度、例えば105時間クリープ破断強度や低温靭性、破面遷移温度は、Niの含有量の影響を受ける。しかして、鋼製の60Hz機用40インチ(約1016mm)以上の長翼や50Hz機用48インチ(約1219mm)以上の長翼を配する蒸気タービンロータで、高温高強度部分と低温高強度高靭性部分を有するタービンロータを傾斜熱処理ロータとして製作することは現状技術では困難な状況となっている。
近年のコンバインドサイクル発電設備での急速起動の要請に対応すべく高温部位における蒸気タービン起動停止過程に伴う非定常熱応力低減の要求が強まってきている。
一般に蒸気タービンロータの熱応力を低減するには、タービンロータの肉厚を薄くすることが効果的であることが知られており、そのためには大きな非定常熱応力が発生するタービンロータの高温部分の中心孔の直径を大きくすることが要求される。しかしながら、ロータジャーナル部分のロータ外径が小さいために、大きな中心孔を設けることが出来ないことから、タービンロータ高温部の中心孔の直径を大きく形成することが一般には困難な状況である。他方、低圧最終段落ホイール位置では、回転による遠心力の作用によって発生する応力が極めて高く、そのために低温での高強度高靭性はこの部分で要求されている。低圧最終段落ホイール位置におけるこの応力は、中心孔を大きくするほど高くなるため、中心孔は可能な限り小径であることが望ましい。従って、当該位置に大きな中心孔を設けることが出来ないことからも、タービンロータ高温部の中心孔の直径を大きく形成することが一般には困難な状況となっている。
なお、溶接によって接合した蒸気タービンロータとして、高温部の中心孔の直径とロータジャーナル部分の中心孔の直径を異径にして起動停止に伴う非定常熱応力を低減する開発が行われている(例えば、特開平8-284603号参照)。この公報における溶接位置は、ロータジャーナル部分の近傍の位置であって、上述の高温で高強度のタービンロータと低温で高強度高靭性のタービンロータを接合するための溶接とは異なる内容のものである。この特許公報に記載の内容の中心孔拡大方法を適用した場合、高温高強度のタービンロータ部分と低温高強度高靭性のタービンロータ部分を接合するには更に少なくとももう一個所の溶接部を形成する必要がある。したがって、二個所以上の溶接による溶接作業量の増大と溶接曲りの重畳によって極めて高コストのタービンロータとなることが懸念される。
以上のように、蒸気タービンの蒸気条件の高温高圧化の要請に対してタービンロータの高温にさらされる部分は高温での強度を強化してクリープ損傷の発生を抑制することが要求される。蒸気流量増大の要請は、蒸気タービン低圧最終段落の排気流量の増大に直結し、蒸気タービン最終段動翼の長大化が要求される。低コスト化やコンパクト化の要請は、最大出力が100MW以上のタービンでは、複流構造が支配的であった蒸気タービン低圧部分において単流構造化を強く要求しており、それ故に蒸気タービン最終段動翼には更なる長大化が要求される。蒸気タービン最終段動翼の長大化に伴って蒸気タービンロータの少なくとも低圧最終ホイール位置の部分では低温での高強度を強化し靭性を改善してタービンロータの脆性破壊を予防することが要求される。蒸気タービンの起動特性の向上の要請に対しては、蒸気タービンロータの高温部の非定常熱応力を低減して低サイクル疲労損傷を予防することが要求される。
これらの要求に対して、その対応策として、蒸気タービン最終段動翼の長大化や傾斜熱処理ロータ、溶接接合ロータの採用とタービンロータ高温部の薄肉化が考案されているものの、要求レベルの高さに対して未だ不十分であったり実現性に乏しい内容のままであったりという状況となっている。
従って、コンバインドサイクル発電設備用の蒸気タービンにおいて、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することがこれまでできていなかった。
ところで、溶接では溶接表面から割れが発生しないことと、溶接表面に応力集中を助長するような凹凸形成されないことが常に要求される。溶接接合ロータにおいてはロータ外表面側から超音波探傷法によって溶接部の欠陥を検査する方法が一般的であるが、ロータ内表面側の溶接初層の割れや変形の有無の検査方法としては不十分であった。
最近、低コスト化やコンパクト化高性能化の強い要請によって、コンバインドサイクル発電用の中容量の蒸気タービンにおいて、図28に示すような形式の蒸気タービンが知られている。この蒸気タービンは、CrMoV鋼で形成した高圧部分21の高圧ロータ22を一体の高圧タービンケーシング23に格納し、CrMoV鋼で形成した中圧部分24の中圧ロータ25とNiCrMo鋼で形成した低圧部分26の低圧ロータ27を溶接によって接合してその中圧部分24と低圧部分26を一体の中低圧ケーシング28に格納した二車室構造からなる。そして、このような蒸気タービンに用いられるタービンロータは、高圧ロータ22と中圧ロータ25の間にカップリングフランジ29を形成して高圧ロータ22と中圧ロータ25とをカップリングボルト30で締結して一本の蒸気タービンロータとした図29に概略構造を示すようなタービンロータ31を有し、このカップリングボルト30で締結された1本の蒸気タービンロータ31両端近傍に各一個ずつのジャーナル軸受32,33を配し、また高圧部分21と中圧部分24の間に一個のジャーナル軸受34を配した、全段落が単流構造となっている。この構造のタービンは、全段が単流構造となったことにより全長が短縮できること、クロスオーバ管を廃止することができることにより、低コスト・コンパクトな構造となっている。
しかしながら、この全段落単流構造の蒸気タービンは、高圧部と中圧部との間にカップリングフランジ29が形成され、カップリングボルト30によって当該カップリングフランジ29を締結する構造となっている。このため、少なくとも当該カップリングフランジ厚さとナット並びに挿入ボルト長さとの合計値に相当する長さ分は軸受スパン(隣り合う軸受の間の距離)が長くなって、軸系安定性に悪影響を及ぼすという問題がある。
また、カップリングボルト30によって当該カップリングフランジ29を締結する構造となっているために、フランジの加工やボルト、ナット等の構成部品の製作およびカップリングフランジ締結作業等の費用が発生しており、まだ十分な低コスト化・コンパクト化が図られていない。
さらに、コンバインドサイクル発電設備用の蒸気タービンにおいては、発電設備の経済的な運用の目的として、蒸気タービンの起動特性の向上が従来にも増して強く要請されている。蒸気タービンの起動特性の向上に対しては、蒸気タービンロータの高温部の非定常熱応力を低減し、低サイクル疲労損傷を予防することが必須である。
既述の如く、蒸気タービンロータの熱応力を低減するには、タービンロータの肉厚を薄くすることが効果的であり、そのためには大きな非定常熱応力が発生するタービンロータの高温部分の中心孔の直径を大きくすることが有効であるが、当該位置に大きな中心孔を設けることが出来ないことから、タービンロータ高温部の中心孔の直径を大きく形成することが一般には困難な状況となっている。
また、ボルト締結による接合ロータでは、接合部を介して蒸気が中心孔に流入する可能性がある。この中心孔に流入した蒸気は、ロータジーャナル部分などの低温部位に触れて凝縮して水として溜り、タービンロータの温度に外乱を与える要因となって、タービンロータの軸振動やラビングを誘発してタービンの運転に支障をきたすことがある。
本発明の目的は蒸気タービンの蒸気条件の高温高圧化の要請に対して、タービンロータの高温にさらされる部分は高温での強度を強化してクリープ損傷の発生を抑制し、低コスト化とコンパクト化の要請に対して、蒸気タービン低圧部分を単流構造化し蒸気タービン最終段動翼を長大化するとともに蒸気タービンロータの少なくとも低圧最終ホイール位置の部分で低温での高強度と高靭性を十分に確保してタービンロータの脆性破壊を予防し、蒸気タービンの起動特性の向上の要請に対して、蒸気タービンロータの高温部の非定常熱応力を低減して低サイクル疲労損傷を予防することを可能ならしめる蒸気タービンロータに関する技術を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明では、二種類の異なる材料をボルト締結によって接合して一本のタービンロータを形成するとともに、接合されたこのタービンロータはその両端近傍をそれぞれジャーナル軸受によって支持される蒸気タービン用の接合ロータであり、当該接合ロータは少なくともどちらか一方の軸端にカップリングフランジを有するタービンロータであって、当該接合ロータの前記ジャーナル軸受位置の間に蒸気タービンの高圧部と中圧部と低圧部が形成されているボルト締結タイプの高中低圧一体接合ロータまたは高圧部と低圧部が形成されているボルト締結タイプの高低圧一体接合ロータにおいて、前記ジャーナル軸受位置の間におけるボルト締結による接合は一個所のみであって、当該接合ロータのボルト締結による接合位置は高圧第一段落近傍または中圧第一段落近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイールの間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置であって、最高温度が作用する部分を有する高温側ロータ部分は重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分は高圧第一段落部分または中圧第一段落部分を有し、低圧最終段落部分を有する低温側ロータ部分は2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分には貫通する中心孔を形成し、当該中心孔は低温側ロータ部分とのボルト締結端から中圧第一段ホイールまたは高圧第一段ホイールの位置を越えた高温側ロータ部分のジャーナル軸受側にある任意の段落の範囲までの中心孔の直径が高温側ロータ部分のジャーナル軸受位置の中心孔の直径よりも大きい蒸気タービンロータとしている。
本発明では、二種類の異なる材料をボルト締結によって接合して一本のタービンロータを形成するとともに、接合されたこのタービンロータは高温側ロータ部分と低温側ロータ部分の材料が異なっている接合ロータであり、低温側ロータ部分の高温側ロータ部分が接合されていない方の軸端部の近傍がジャーナル軸受によって支持されるとともに高温側ロータ部分の低温側ロータ部分が接合されていない方の軸端部にカップリングフランジを有し、当該接合ロータには蒸気タービンの中圧部及び低圧部が形成されているとともに当該接合ロータが一体のタービンケーシングに格納されているようなボルト締結タイプの中低圧一体接合ロータにおいて、当該中低圧一体接合ロータに形成されるタービン段落範囲内においてボルト締結による接合は一個所のみであって、当該接合ロータのボルト締結による接合位置は中圧第一段落近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイールの間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置であって、最高温度が作用する部分を有する高温側ロータ部分は重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分は中圧第一段落を有し、低圧最終段落を有する低温側ロータ部分は2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分には貫通する中心孔を形成し、当該中心孔は低温側ロータ部分とのボルト締結端から中圧第一段ホイールの位置を越えた範囲までの中心孔の直径が高温側ロータ部分の低温側ロータ部分と接合されていない方の軸端部のカップリングフランジの近傍の中心孔の直径よりも大きい蒸気タービンロータとしている。
本発明では、二種類の異なる材料を溶接によって接合して一本のタービンロータを形成するとともに、接合されたこのタービンロータはその両端近傍をそれぞれジャーナル軸受によって支持される蒸気タービン用の接合ロータであり、当該接合ロータは少なくともどちらか一方の軸端にカップリングフランジを有するタービンロータであって、当該接合ロータの前記ジャーナル軸受位置の間に蒸気タービンの高圧部と中圧部と低圧部が形成されている溶接接合タイプの高中低圧一体接合ロータまたは高圧部と低圧部が形成されている溶接接合タイプの高低圧一体接合ロータにおいて、前記ジャーナル軸受位置の間における溶接による接合は一個所のみであって、当該接合ロータの溶接による接合位置は高圧第一段落近傍または中圧第一段落近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイールの間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置であって、最高温度が作用する部分を有する高温側ロータ部分は重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分は高圧第一段落部分または中圧第一段落部分を有し、低圧最終段落部分を有する低温側ロータ部分は2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分には貫通する中心孔を形成し、当該中心孔は低温側ロータ部分との溶接接合位置から中圧第一段落ホイールまたは高圧第一段落ホイールの位置を越えた高温側ロータ部分のジャーナル軸受側にある任意の段落の範囲までの中心孔の直径が高温側ロータ部分のジャーナル軸受位置の中心孔の直径よりも大きい蒸気タービンロータとしている。
本発明では、二種類の異なる材料を溶接によって接合して一本のタービンロータを形成するとともに、接合されたこのタービンロータは高温側ロータ部分と低温側ロータ部分の材料が異なっている接合ロータであり、低温側ロータ部分の溶接接合されていない方の軸端部の近傍がジャーナル軸受によって支持されるとともに高温側ロータ部分の溶接接合されていない方の軸端部にカップリングフランジを有し、当該接合ロータには蒸気タービンの中圧部及び低圧部が形成されているとともに当該接合ロータが一体のタービンケーシングに格納されているような溶接接合タイプの中低圧一体接合ロータにおいて、当該中低圧一体接合ロータに形成されるタービン段落範囲内において溶接による接合は一個所のみであって、当該接合ロータの溶接による接合位置は中圧第一段落近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイールの間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置であって、最高温度が作用する部分を有する高温側ロータ部分は重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分は中圧第一段落を有し、低圧最終段落を有する低温側ロータ部分は2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分には貫通する中心孔を形成し、当該中心孔は溶接接合部分から中圧第一段落ホイール位置を越えた範囲までの中心孔の直径が高温側ロータ部分のカップリングフランジ近傍の中心孔の直径よりも大きい蒸気タービンロータとしている。
本発明では、蒸気タービンのロータにおいて、二種類の異なる材料を接合して一本のロータを形成するとともに、接合されたこのロータはその両端近傍をそれぞれジャーナル軸受によって支持されるとともにロータの中間部分がもう一個のジャーナル軸受によって支持される形式の蒸気タービン用の接合ロータであり、接合されたこのロータは少なくともどちらか一方の軸端にカップリングフランジを有するロータであって、当該接合ロータの一方の隣り合うジャーナル軸受の間に一体の高圧タービンケーシングを配置してその内部に蒸気タービンの高圧段落部分を格納し、当該接合ロータの他方の隣り合うジャーナル軸受の間に一体の中低圧タービンケーシングを配置してその内部に蒸気タービンの中圧部分と低圧部分を格納し、当該接合ロータの高圧部分のホイールと中圧部分のホイールとが隣り合っている間の範囲内にボルト締結によるカップリングフランジを設けることなく、当該接合ロータの両端のジャーナル軸受位置の内側の範囲内において接合は一個所のみであって、当該接合ロータの接合位置は中圧第一段落近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイールの間の位置にあることを特徴とする蒸気タービンロータとしている。
本発明によれば、この接合タービンロータの高温部のクリープ損傷が抑制でき、低温部は脆性破壊を防止できることから信頼性が高い安全なタービンロータを提供できる。また、高温側ロータの高温部位の中心孔の直径を拡大するためのロータの接合と高温側ロータと低温側ロータとを接合するための接合という目的の異なる接合に関し、接合の個所を工夫して接合部が一個所で済むようにしたので低コストで信頼性の高い接合ロータを提供できる。また、接合ロータとして高温部のロータ中心孔を拡大したので、タービンロータの内外面温度差が小さくなって非定常熱応力が低減することから低サイクル疲労損傷が防止でき、発電設備の経済的運用に貢献することが可能となる。また、接合部の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下として材料のクリープ温度域以下の温度としたので、接合部位のクリープの進行による接合ロータの曲りの懸念を払拭できる。このため、接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念もなく、また接合部の材料の脆化を促進するような高温にもさらされないので接合部の健全性を維持することができる。また接合部の蒸気が運転中に湿ることがないので材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できることから、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。
また、溶接接合ロータの場合、高温側ロータ部分または低温側ロータ部分の少なくともどちらか一方のタービンロータ部分に貫通する中心孔を必ず設けるので、中心孔を介して溶接中や溶接後の内表面の状態を監視または検査することが可能となり信頼性が高く安全な溶接接合ロータを製作することができる。
また、接合ロータにおいて低圧最終段落ホイール位置には中心孔を形成させない場合をも考案したことにより、当該位置のタービンロータに作用する遠心効果応力を中心孔がある場合に比べて大幅に低減できることになり、従来に増して長大な蒸気タービン最終段動翼を適用でき、蒸気タービンの高出力化への貢献や低圧部単流化による低コスト化・コンパクト化に貢献できる。
ボルト締結による接合ロータにおいては、縦弾性係数が高温側ロータ材料及び低温側ロータ材料よりも小さく常温において150GPa以下である金属を概略円筒形状に形成して作成した円筒状金属部品の端面が高温側ロータ部分と低温側ロータ部分との接合面にそれぞれ接触するように配して高温側ロータと低温側ロータをボルト締結により接合することをも考案したことにより、タービンロータの接合部分を完全にシールすることが可能となって、中心孔への蒸気の流入を阻止することができ運転に支障をきたすような軸振動やラビングの発生を防止している。
更に、接合ロータの高温部分においてタービンロータの肉厚を薄くし、かつ、当該部分の内外面の直径比をb/aが2.2<b/a<6に制限することを考案したので、タービンロータの当該部分に突出した熱応力が発生しないようにすることができ、従って、熱応力による低サイクル疲労損傷が発生しない安全な蒸気タービンロータを提供でき、発電設備の経済的な運転に貢献できる。
また、以上において本発明として説明したいずれかの接合ロータをタービンロータとして適用した蒸気タービンとしてあるので、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請に応える応え、社会に貢献することができる。
さらに、本発明によれば、一体の高圧ケーシングと一体の中低圧ケーシングで構成される二車室形式の蒸気タービンで全段落を単流構造としてクロスオーバ管を廃止して低コスト化・コンパクト化を図った蒸気タービンにおいて、従来、高圧部と中圧部との間に必ず形成されていたカップリングフランジを廃止ししたので、タービンロータ全長を少なくとも当該カップリングフランジ厚さとナット並びに挿入ボルト長さとの合計値に相当する長さ分短縮することができて、軸受スパンが短くなって、軸系安定性を改善することが可能となるために従来よりもコンパクトかつ大容量で高性能な蒸気タービンを提供できる。コンパクト化は発電所建設費用の低減に大きく貢献する。また、フランジの加工やボルト、ナット等の構成部品の製作およびカップリングフランジ締結作業等の費用の発生を回避することができることから、蒸気タービン製造コストを低減することができる。
また、溶接またはボルト締結によるによる高温ロータ部分と低温ロータ部分の接合部の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下としたので、接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念もなく、また材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できる。従って、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。
また、中間部のジャーナル軸受位置のロータ直径を要求される強度から決定される直径よりも大きくしたので、当該部分のロータ表面の熱伝達率が高くなって軸受潤滑油によるロータ冷却効果が顕著になる。従って、中間部に軸受を設置するために必要な幅を狭くすることができ短縮できることから、さらなるコンパクト化と軸系安定性の確保に貢献できる。
また、高温側ロータの高温部位の中心孔の直径を拡大するための接合と高温側ロータと低温側ロータとを接合するための接合という目的の異なる接合に関し、接合の個所を工夫してそれらの接合部が一個所で済むように考案したので、低コストで信頼性の高い接合ロータを提供できる。また、高温部のロータ中心孔を拡大したので、低サイクル疲労損傷が防止でき、発電設備の経済的運用に貢献することが可能となる。また、蒸気タービンロータの低圧最終段落ホイール位置には中心孔を形成させないこととしたため、従来に増して長大な蒸気タービン最終段動翼を適用でき、蒸気タービンの高出力化への貢献や低圧部単流化による低コスト化・コンパクト化に貢献できる。
以下、本発明の実施の形態について図1ないし図24を図面を参照して説明する。
「第1の実施の形態」
図1は、請求項1に記載の発明の一実施の形態を示し、高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。図2は、請求項2に記載の発明の一実施の形態を示し、中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。
図1に示す蒸気タービン用の接合ロータ101は、二種類の異なる材料をボルト151を用いた締結によって接合して一本のタービンロータとして形成されたものであって、接合されたこのタービンロータはその両端近傍を一個ずつ合計二個のジャーナル軸受152H,152Lによって支持されている。ここでHは高温側を、Lは低温側を意味する。この接合ロータ101は、ジャーナル軸受15Lで支持される側の軸端にカップリングフランジ2を有し、前記2個のジャーナル軸受152H,152Lの間に、蒸気タービンの高圧部103と中圧部104と低圧部105とを形成しているボルト締結タイプの高中低圧一体接合ロータ、又は高圧側ロータ部分121と低圧側ロータ部分122とを形成しているボルト締結タイプの高低圧一体接合ロータである。この接合ロータ101において、二個のジャーナル軸受152H,152Lの間におけるボルト151締結による接合は一個所110のみである。また、接合ロータ101のボルト締結による接合位置110は、高圧第一段落106の近傍または中圧第一段落107の近傍の最高温度位置と、低圧最終段落ホイール128の間の位置であるとともに、定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分121は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高圧第一段落106の部分または中圧第一段落107の部分を有する。一方、低圧最終段落108を有する低温側ロータ部分122は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。高温側ロータ部分121には、貫通する中心孔109が形成されている。この中心孔109は、低温側ロータ部分122とのボルト締結部110を始点として、ここから高圧第一段ホイール126の位置を越えた高温側ロータ部分121のジャーナル軸受152H側にある任意の段落の範囲までの中心孔の直径59を、高温側ロータ部分121のジャーナル軸受152Hの位置の中心孔の直径69よりも大きく形成している。
図2に示す蒸気タービン用の接合ロータ201は、二種類の異なる材料をボルト251を用いた締結によって接合して一本のタービンロータとして形成されたものであって、接合されたこのタービンロータは高温側ロータ部分221と低温側ロータ部分222の材料が異なっている。この接合ロータ201は、低温側ロータ部分222の高温側ロータ材料が接合されていない方の軸端部の近傍をジャーナル軸受252Lによって支持されるとともに、高温側ロータ部分221の低温側ロータ材料が接合されていない方の軸端部にはカップリングフランジ202が設けられている。また、この接合ロータ201は、蒸気タービンの中圧部204及び低圧部205が形成されているとともに、この接合ロータ201が一体のタービンケーシングに格納されているようなボルト締結タイプの中低圧一体接合ロータである。この接合ロータ201において、当該中低圧一体接合ロータに形成されるタービン段落範囲内においてボルト締結による接合は一個所のみであって、当該接合ロータのボルト締結による接合位置は中圧第一段落207の近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール228の間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分221は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、中圧第一段落207を有する。また、低圧最終段落208を有する低温側ロータ部分222は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。高温側ロータ部分221には、貫通する中心孔209が形成されている。この中心孔209は、低温側ロータ部分222とのボルト締結端を始点として、ここから中圧第一段ホイール227の位置を越えた範囲までの中心孔の直径259が、高温側ロータ部分221の低温側ロータ部分222と接合されていない方の軸端部のカップリングフランジ202の近傍の中心孔の直径269よりも大きくなされている。
このように構成された第1の実施の形態における蒸気タービン用の接合ロータ101は、二種類の異なる材料をボルト151を用いた締結によって接合して一本のタービンロータを形成するとともに、接合されたこのタービンロータはその両端近傍を一個ずつ合計二個のジャーナル軸受152H,152Lによって支持される蒸気タービン用の接合ロータであり、当該接合ロータ101は少なくともどちらか一方の軸端にカップリングフランジ102を有するタービンロータであって、当該接合ロータ101の二個のジャーナル軸受152H,152Lの間の位置に蒸気タービンの高圧部103と中圧部104と低圧部105が形成されているボルト締結タイプの高中低圧一体接合ロータ又は高圧部と低圧部形成されているボルト締結タイプの高定圧一体接合ロータにおいて、高温高強度のCrMoV鋼からなる高温側ロータ部分121と低温高強度高靭性のNiCrMoV鋼からなる低温側ロータ部分122とをボルト151で接合したので、この接合タービンロータの高温部はクリープ損傷が抑制でき、低温部は脆性破壊を防止できることから信頼性が高い安全なタービンロータを提供できる。また、高温側ロータ部分121の高温部位の中心孔の直径を拡大するためのボルト締結接合と高温側ロータ部分121と低温側ロータ部分122とを接合するためのボルト接合という目的の異なるボルト接合110に関し、接合の個所を工夫して接合部が一個所で済むようにしたので、低コストで信頼性の高い接合ロータを提供できる。本発明では、接合ロータとして高温部のロータ中心孔109を拡大したのでタービンロータの内外面温度差が小さくなって非定常熱応力が低減することから低サイクル疲労損傷が防止でき、発電設備の経済的運用に貢献することが可能となる。また、ボルト接合部110の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下として材料のクリープ温度域以下の温度としたので締結ボルトのクリープの進行による接合ロータの曲りの懸念を払拭できて接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念もなく、また締結ボルト材料の脆化を促進するような高温にもさらされないので締結ボルトの健全性を維持することができ、またボルト接合部の蒸気が運転中に湿ることがないので材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できることから、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。なお、図2に示す接合ロータ201についても同様である。
「第2の実施の形態」
図3は、請求項3に記載の発明の一実施の形態を示し、高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。図4は、請求項5に記載の発明の一実施の形態を示し、中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。
図3に示す蒸気タービン用の接合ロータ301は、二種類の異なる材料を溶接351によって接合して一本のタービンロータを形成している。この接合ロータ301は、その両端近傍を一個ずつ合計二個のジャーナル軸受152H,152Lによって支持されるとともに、少なくともどちらか一方の軸端例えば、軸受152Lで支持される側の軸端にカップリングフランジ102を有する。この接合ロータ101は、二個のジャーナル軸受152H,152Lの位置の間に、蒸気タービンの高圧部103と中圧部104と低圧部105が形成されている溶接接合タイプの高中低圧一体接合ロータ、または高圧部と低圧部が形成されている溶接接合タイプの高低圧一体接合ロータである。この接合ロータ301において、二個のジャーナル軸受152H,152L位置の間における溶接接合351は一個所のみであり、この接合ロータ301の溶接接合351の位置は、高圧第一段落106の近傍または中圧第一段段落107の近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール128との間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が400℃以下150℃以上の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分321は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高圧第一段落部分または中圧第一段落部分を有する。低圧最終段落108の部分を有する低温側ロータ部分322は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。溶接の種類はタングステンイナートガス溶接であって、溶接作業時における溶接部内周面330の監視ならびに溶接施工後の溶接部内周面330の検査を実施することが可能なように高温側ロータ部分321と低温側ロータ部分322の少なくともどちらか一方のタービンロータ部分には貫通する中心孔309を必ず設けた蒸気タービンロータとしている。
図4に示す蒸気タービン用の接合ロータ401は、二種類の異なる材料を溶接によって接合して一本のタービンロータを形成している。この接合ロータ401は、高温側ロータ部分421と低温側ロータ部分422の材料が異なっている接合ロータであり、低温側ロータ部分422の溶接接合されていない方の軸端部の近傍がジャーナル軸受252Lによって支持されるとともに、高温側ロータ部分421の溶接接合されていない方の軸端部にカップリングフランジ202を有している。この接合ロータ401には、蒸気タービンの中圧部204及び低圧部205が形成されている。この接合ロータ401が一体のタービンケーシングに格納されているような溶接接合タイプの中低圧一体接合ロータにおいて、当該中低圧一体接合ロータに形成されるタービン段落範囲内において溶接接合351は一個所のみである。この接合ロータ401の溶接による接合位置は、中圧第一段落204の近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール228の間の位置であるとともに、定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分421は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、中圧第一段落207を有する。低圧最終段落208を有する低温側ロータ部分422は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。溶接の種類は、タングステンイナートガス溶接である。また、この接合ロータ401は、溶接作業時における溶接部内周面330の監視ならびに溶接施工後の溶接部内周面330の検査を実施することが可能なように、高温側ロータ部分421と低温側ロータ部分422の少なくともどちらか一方のタービンロータ部分には貫通する中心孔409を必ず設けている。
このように構成された第2の実施の形態における図3に示す蒸気タービン用の接合ロータ301は、高温高強度のCrMoV鋼からなる高温側ロータ部分321と低温高強度高靭性のNiCrMoV鋼からなる低温側ロータ部分322とを溶接351で接合したので、この溶接接合タービンロータの高温部はクリープ損傷が抑制でき、低温部は脆性破壊を防止できる。また、溶接接合部の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下として材料のクリープ温度域以下の温度としたので溶接部のクリープの進行による接合ロータの曲りの懸念を払拭できて接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念をなくすことができる。また、溶接接合部の材料の脆化を促進するような高温にもさらされないので、溶接接合部の健全性を維持することができる。また、溶接接合部の蒸気が運転中に湿ることがないので、材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できる。従って、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。また、高温側ロータ部分または低温側ロータ部分の少なくともどちらか一方のタービンロータ部分に貫通する中心孔309を必ず設けるので、中心孔を介して溶接中や溶接後の内表面の状態を監視または検査することが可能となり信頼性が高く安全な溶接接合ロータを製作することができる。なお、図4に示す接合ロータ401についても同様である。
「第3の実施の形態」
図5は、請求項4に記載の発明の一実施の形態を示し、高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。図6は、請求項6に記載の発明の一実施の形態を示し、中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。
図5に示す蒸気タービン用の接合ロータ501は、二種類の異なる材料を溶接によって接合して一本のタービンロータを形成している。この接合ロータ501は、その両端近傍を一個ずつ合計二個のジャーナル軸受152H,152Lによって支持され、少なくともどちらか一方の軸端例えば、軸受152Lで支持される側の軸端にカップリングフランジ102を有する。この接合ロータ501は、二個のジャーナル軸受152の位置の間に蒸気タービンの高圧部103と中圧部104と低圧部105が形成されている溶接接合タイプの高中低圧一体接合ロータまたは高圧部3と低圧部5が形成されている溶接接合タイプの高低圧一体接合ロータである。二個のジャーナル軸受152の位置の間における溶接接合351は一個所のみであって、当該接合ロータ501の溶接接合351の位置は高圧第一段落106の近傍または中圧第一段段落107の近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール128の間の位置であとともに、定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分521は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高圧第一段落部分または中圧第一段落部分を有し、低圧最終段落108の部分を有する低温側ロータ部分522は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。高温側ロータ部分521には、貫通する中心孔109が形成され、当該中心孔109は、低温側ロータ部分522との溶接接合351の位置から高圧第一段落ホイール126の位置を越えた高温側ロータ部分521のジャーナル軸受152Hの側にある任意の段落の範囲までの中心孔の直径159を高温側ロータ部分521のジャーナル軸受152Hの位置の中心孔の直径169よりも大きいように形成している。
図6に示す蒸気タービン用の接合ロータ601は、二種類の異なる材料を溶接によって接合して一本のタービンロータを形成している。この接合ロータ601は、高温側ロータ部分621と低温側ロータ部分622の材料が異なっている接合ロータであり、低温側ロータ部分622の溶接接合されていない方の軸端部の近傍がジャーナル軸受252Lによって支持されるとともに高温側ロータ部分621の溶接接合されていない方の軸端部にカップリングフランジ202を有する。当該接合ロータ601は、蒸気タービンの中圧部204及び低圧部205が形成されているとともに当該接合ロータ601が一体のタービンケーシングに格納されているような溶接接合タイプの中低圧一体接合ロータである。この中低圧一体接合ロータ601に形成されるタービン段落範囲内において、溶接接合351は一個所のみであって、当該接合ロータ601の溶接による接合位置は、中圧第一段落204の近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール228の間の位置であるとともに定格運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分621は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、中圧第一段落207を有し、低圧最終段落208を有する低温側ロータ部分622は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。高温側ロータ部分621には、貫通する中心孔209が形成され、この中心孔209は、溶接接合351の部分から中圧第一段落ホイール227の位置を越えた範囲までの中心孔の直径259が高温側ロータ部分621のカップリングフランジ202の近傍の中心孔の直径269よりも大きいように形成されている。
このように構成された図5で示す第3の実施の形態における蒸気タービン用の接合ロータ501では、高温高強度のCrMoV鋼からなる高温側ロータ部分521と低温高強度高靭性のNiCrMoV鋼からなる低温側ロータ部分522とを溶接で接合したので、この接合ロータ501の高温部はクリープ損傷が抑制でき、低温部は脆性破壊を防止できる。また、溶接接合部351の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下として材料のクリープ温度域以下の温度としたので、溶接部のクリープの進行による接合ロータの曲りの懸念を払拭できて接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念もなく、また溶接接合部の材料の脆化を促進するような高温にもさらされないので、溶接接合部の351健全性を維持することができる。また、溶接接合部の蒸気が運転中に湿ることがないので、材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できることから、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。また、高温側ロータ部分521に貫通する中心孔109を必ず設けるので、中心孔を介して溶接中や溶接後の内表面の状態を監視または検査することが可能となり信頼性が高く安全な溶接接合ロータを製作することができる。また、高温側ロータ部分521の高温部位の中心孔の直径を拡大するための溶接接合と高温側ロータ部分521と低温側ロータ部分522とを接合するための溶接接合という目的の異なる溶接接合に関し、接合の個所を工夫して接合部が一個所で済むように考案したので、低コストで信頼性の高い接合ロータとして実用に供することが可能となる。また、接合ロータとすることによって高温部のロータ中心孔を拡大したので非定常熱応力が低減可能となって低サイクル疲労損傷を防止することができ、発電設備の経済的な運転に大きく貢献できる。なお、図6に示す接合ロータ601についても同様の作用を奏する。
「第4の実施の形態」
図7及び図8は、請求項14に記載の発明の一実施の形態を示し、それぞれ、ボルト締結による高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図と、溶接接合による高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。図9は、図8に示す実施の形態の他の一例を示す縦断面図である。
図7および図8に示す接合ロータ701,801においては、高温側ロータ部分721、821には貫通する中心孔109を形成し、低温側ロータ部分722、822の低圧最終段落ホイール128が存在する位置には中心孔を形成させない蒸気タービンロータが示されている。図9に示す接合ロータ901の如く、部分的な中心孔909を形成する場合も実施の変形例として含まれる。
タービンロータの任意の段落部分を取り出して考え、簡単に一様厚さ回転円板として近似してその遠心効果応力分布を表わすと、中心孔のある場合と中心孔のない場合の応力分布は図10のようになり、中心孔がない場合の最大応力は中心孔がある場合の最大応力に比べて大幅に小さくなることが知られている。本実施の形態では極めて大きな遠心効果応力が作用する低圧最終段落ホイール位置のロータ中心部での応力を軽減する目的でタービンロータの低圧最終段落ホイール位置には中心孔を形成しないこととした。従って、当該位置のタービンロータに作用する遠心効果応力の最大値を、中心孔がある場合に比べて大幅に低減できることになり、従来に増して長大な蒸気タービン最終段動翼を適用でき、蒸気タービンの高出力化への貢献や低圧部単流化による低コスト化・コンパクト化に貢献できる。
「第5の実施の形態」
図11は、請求項19に記載の発明の一実施の形態として示す蒸気タービンロータの接合部を表わしている部分的な縦断面図である。
図11においては、高温側ロータ部分121と低温側ロータ部分122をボルト151を用いて接合する接合ロータ1001において、縦弾性係数が高温側ロータ部分121の材料及び低温側ロータ部分122の材料よりも小さく常温において150GPa以下である金属を概略円筒形状に形成して作成した円筒状金属部品1031の端面1032が高温側ロータ部分121のボルト接合側の端面1034と低温側ロータ部分122のボルト接合側の端面1035にそれぞれ接触するように配して、高温側ロータ121と低温側ロータ122をボルト151の締結により接合した蒸気タービンロータとしている。
ボルト締結による接合ロータでは、接合部を介して蒸気が中心孔に流入する可能性があり、中心孔に流入した蒸気はロータジーャナル部分などの低温部位に触れて凝縮して水として溜る。このため、タービンロータの温度に外乱を与える要因となって、タービンロータの軸振動やラビングを誘発してタービンの運転に支障をきたすことがある。図11に示す接合ロータ1001では、上述の円筒状金属部品1031をその端面が高温側ロータ部分121と低温側ロータ部分122の接合側の端面にそれぞれ接触するように面圧を持たせて配しているので、タービンロータの接合部分を完全にシールすることが可能となる。したがって、中心孔への蒸気の流入を阻止することができ、運転に支障をきたすような軸振動やラビングの発生を防止している。この円筒状金属部品1031は、縦弾性係数が常温において150GPa以下とされ、高温側ロータ部分121や低温側ロータ部分122に比べておおよそ70%以下の値を有する金属によって形成されるので、常に復元力を確保することができる。従って、タービンロータの接合部分を完全にシールすることが可能となり、中心孔への蒸気の流入を阻止することができ、運転に支障をきたすような軸振動やラビングの発生を防止することができる。
「第6の実施の形態」
図12及び図13は、請求項7に記載の発明の一実施の形態を示し、それぞれ、ボルト締結による高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図と、溶接接合による高中低圧一体接合ロータである蒸気タービンロータの縦断面図である。
図12においては、ボルト151を用いた締結によって高中低圧一体に形成した接合ロータ1101において、高温側ロータ部分121の中圧第一段落107の位置のタービンロータの胴部の最大直径をbとしその段落位置の中心孔の直径をaとするときに直径比b/aが、2.2<b/a<6を満足する蒸気タービンロータとしている。
図13においては、溶接接合151を用いた締結によって高中低圧一体に形成した接合ロータ1201において、高温側ロータ部分521の中圧第一段落107の位置のタービンロータの胴部の最大直径をbとしその段落位置の中心孔の直径をaとするときに直径比b/aが、2.2<b/a<6を満足する蒸気タービンロータとしている。
ローター中心孔の円周方向の熱応力STは、内表面温度をT1、外表面温度をT2、外内径比をρ=b/aとし、Cを定数とするとき、ST=C(T2−T1)β1, β1=2ρ2/(ρ2−1)−1/lnρ で表され、縦軸に熱応力S、横軸に外内径比b/aをとると図14の実線STで示すグラフとなる。従って、中心孔の熱応力を薄肉円筒b/a≒1の熱応力の1.5倍以下に抑えるには、外内径比b/aは約6以下とすることが必要である。一方、ロータ表面の軸方向の熱応力SRは、ホイール付根の形状変化を滑らかにして応力集中率が小さくなるように工夫すると応力集中率KをK=2程度にすることが可能であるためK=2を用いると、SR=C(T2−T1)β2, β2=2(2−β1 ) で表され、縦軸に熱応力S、横軸に外内径比b/aをとると図14の実線SRで示すグラフとなる。従って、ロータ表面の軸方向の熱応力SRをロータ中心孔の円周方向の熱応力STと同レベルすなわち薄肉円筒の熱応力の1.5倍以下に抑えるには、外内径比b/aを約2.2以上とする必要がある。このように、外内径比b/aを2.2<b/a<6とすることによって高温部におけるロータ熱応力が過大になることを抑制できるという効果を発揮する。蒸気タービンロータにおいて大きな非定常熱応力が発生し易い高温部分において、タービンロータの肉厚を薄くして内外面温度差の発生を小さくして熱応力を低減し、かつ、当該部分の内外面の直径比をb/aが、2.2<b/a<6を満足するように制限したので、タービンロータの当該部分の外表面の軸方向の熱応力の大きさと当該部分の中心孔の円周方向の熱応力の大きさとを同等のレベルに抑えることができる。このように、突出した熱応力が発生しないようにしたので、熱応力による低サイクル疲労損傷が発生しない安全な蒸気タービンロータを提供でき、発電設備の経済的な運転に貢献できる。
「第7の実施の形態」
図15は、請求項8に記載の発明の一実施の形態として示す、溶接接合による高中低圧一体接合ロータを有する蒸気タービンの縦断面図である。図16は請求項9に記載の発明の一実施の形態として示す、溶接接合による中低圧一体接合ロータを有する蒸気タービンの縦断面図である。
図15においては、定格運転状態において蒸気タービンの高圧部に供給される主蒸気の圧力及び温度が10MPa以上かつ500℃以上であって、一台の蒸気タービンとしての最大出力が100MW以上である蒸気タービン1300において、左端近傍および右端近傍がそれぞれ一個のジャーナル軸受152H,152Lで支持されその内側の部分が一体のタービンケーシング1329に格納される形式の蒸気タービンロータとして請求項10に記載の高中低圧一体接合ロータを適用した蒸気タービンとしている。
図16においては、定格運転状態において蒸気タービンの高圧部に供給される主蒸気の圧力及び温度が10MPa以上かつ500℃以上であって、一台の蒸気タービンとしての最大出力が100MW以上である蒸気タービン1400において、左端近傍および右端近傍がそれぞれ一個のジャーナル軸受152で支持されその内側の部分が一体のタービンケーシング1429に格納される形式の蒸気タービンロータとして請求項11に記載の中低圧一体接合ロータを適用した蒸気タービンとしている。
本実施の形態は、以上の第1乃至第6の実施の形態で説明したいずれかの接合ロータをタービンロータとして適用した蒸気タービンであるので、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請に応え、社会に貢献することができる。
「第8の実施の形態」
図17は本発明の実施例の一例として示す蒸気タービンロータの縦断面図を示す摸式図である。図18はこれらの蒸気タービンロータを適用した蒸気タービンを示す摸式図である。図中、タービンロータの中心線上に記載している「*」なる印はジャナル軸受に支承されるロータジャーナル位置であることを示す記号である。
図17、図18において、接合ロータ1501は、二種類の異なる材料を溶接によって接合して一本のタービンロータに形成されている。この接合ロータ1501は、その両端近傍を一個ずつ合計二個のジャーナル軸受152、153によって支持されるとともにロータの中間部分をもう一個のジャーナル軸受154によって支持される形式の蒸気タービン用の接合ロータである。この接合ロータ1501は、少なくともどちらか一方の軸端例えば、ジャーナル軸受153で支持される側の軸端にカップリングフランジ102を有するタービンロータであって、当該接合ロータ1501の一方の隣り合う二個のジャーナル軸受152、154位置の間に図18で示す一体の高圧タービンケーシング1581を配置してその内部に蒸気タービンの高圧部分を格納し、当該接合ロータ1501の他方の隣り合う二個のジャーナル軸受154、153位置の間に図18で示す一体の中低圧タービンケーシング1582を配置してその内部に蒸気タービンの中圧部分と低圧部分を格納している。この接合ロータ1501の高圧部103のホイールと中圧部104のホイールとが隣り合っている間の範囲内にボルト締結によるカップリングフランジを設けることなく、この接合ロータ1501の両端のジャーナル軸受152、153位置の内側の範囲内において、溶接351による接合は一個所のみであって、この接合ロータ1501の溶接351による接合位置は中圧第一段落107近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール128の間の位置にある。
好ましくは、溶接351による接合の位置は、定格運転状態または常用運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置であって、最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分321は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分321は、高圧第一段落106と中圧第一段落107を有し、他方、低圧最終段落108を有する低温側ロータ部分322は、重量比で2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。
さらに好ましくは、上述の蒸気タービン用接合ロータ1501は、高圧部103と中圧部104との間に設けられたジャーナル軸受154の位置のロータの直径1590が、この接合ロータ1501の両端近傍に設けられたジャーナル軸受152、153位置のうちの発電機に近い方に設けられたジャーナル軸受位置のロータの直径よりも大きくなるように形成されている。
好ましくは、少なくともこの接合ロータ1501の中圧第一段落107近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール128の間の範囲内における溶接351による接合部分の溶接の種類はタングステンイナートガス溶接であって、溶接作業時における溶接部内周面の監視ならびに溶接施工後の溶接部の内周面の検査を実施することが可能なように高温側ロータ部分321と低温側ロータ部分322の少なくともどちらか一方のロータ部分には貫通する中心孔309を必ず設けている。
好ましくは、高温側ロータ部分321には貫通する中心孔109を形成し、この中心孔109は図19に一例を示すように、低温側ロータ部分522との溶接351による接合端から中圧第一段ホイール127または高圧第一段ホイール126の位置を越えた高温側ロータ部分521の軸端近傍ジャーナル軸受152側にある任意の段落の範囲までの中心孔109の直径159が高温側ロータ部分521の軸端近傍設けられたジャーナル軸受152の位置における中心孔の直径169よりも大きくなるようにする。
好ましくは、低圧最終段落ホイール128が存在する位置には、図20に示すように、中心孔を形成させない。
本実施の形態では、一体の高圧ケーシングと一体の中低圧ケーシングで構成される二車室形式の蒸気タービンで全段落を単流構造としてクロスオーバ管を廃止して低コスト化・コンパクト化を図った蒸気タービンにおいて、従来、高圧部と中圧部との間に必ず形成されていたカップリングフランジを廃止したので、タービンロータ全長を少なくとも当該カップリングフランジ厚さとナット並びに挿入ボルト長さとの合計値に相当する長さ分短縮することができ、軸受スパン(隣り合う軸受の間の距離)が短くなって、軸系安定性を改善することが可能となる。従って、従来よりもコンパクトかつ大容量で高性能な蒸気タービンを提供できる。コンパクト化は発電所建設費用の低減に大きく貢献する。また、フランジの加工やボルト、ナット等の構成部品の製作およびカップリングフランジ締結作業等の費用の発生を回避することができることから、蒸気タービン製造コストを低減することができる。
また、溶接による接合部の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下として材料のクリープ温度域以下の温度としたので、溶接部のクリープの進行による接合ロータの曲りの懸念を払拭できて、接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念がない。また、溶接部またはボルト接合部の蒸気が運転中に湿ることがないので、材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できる。従って、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。
また、中間部のジャーナル軸受位置のロータ直径を要求される強度から決定される直径よりも大きくしたので、当該部分のロータ表面の熱伝達率が高くなって軸受潤滑油によるロータ冷却効果が顕著になって中間部に軸受を設置するために必要な幅を狭くすることができる。このため、タービン軸長を短縮でき、従って軸受スパンを短縮できることから、さらにコンパクト化と軸系安定性の確保に貢献できる。
また、高温側ロータ部分または低温側ロータ部分の少なくともどちらか一方のタービンロータ部分に貫通する中心孔を必ず設けるので、中心孔を介して溶接中や溶接後の内表面の状態を監視または検査することが可能となり、信頼性が高く安全な溶接接合ロータを製作することができる。
また、高温側ロータの高温部位の中心孔の直径を拡大するための接合と高温側ロータと低温側ロータとを接合するための接合という目的の異なる接合に関し、接合の個所を工夫してそれらの接合部が一個所で済むように考案したので、低コストで信頼性の高い接合ロータを提供できる。
また、接合ロータとして高温部のロータ中心孔を拡大したので、タービンロータの内外面温度差が小さくなって非定常熱応力が低減する。このため、低サイクル疲労損傷が防止でき、発電設備の経済的運用に貢献することが可能となる。
また、蒸気タービンロータの低圧最終段落ホイール位置には中心孔を形成させないこととしたため、当該位置のタービンロータに作用する遠心効果応力を中心孔がある場合に比べて大幅に低減できる。従って、従来に増して長大な蒸気タービン最終段動翼を適用でき、蒸気タービンの高出力化への貢献や低圧部単流化による低コスト化・コンパクト化に貢献できる。
「第9の実施の形態」
図21は本発明の第9の実施例の一例として示す蒸気タービンロータの縦断面図を示す摸式図である。図22はこれらの蒸気タービンロータを適用した蒸気タービンを示す摸式図である。図中、タービンロータの中心線上に記載している * なる印はジャナル軸受に支承されるロータジャーナル位置であることを示す記号である。
図21、図22において、蒸気タービン用接合ロータ1801は、二種類の異なる材料をボルト151によって締結して一本のロータを形成している。この接合ロータ1801は、その両端近傍が各一個ずつのジャーナル軸受152、153によって支持されるとともにロータの中間部分がもう一個のジャーナル軸受154によって支持される形式の蒸気タービン用の接合ロータであり、少なくともどちらか一方の軸端にカップリングフランジ102を有する。この接合ロータ1801は、当該接合ロータ1801の一方の隣り合う二個のジャーナル軸受152、154位置の間に一体の高圧タービンケーシング1881を配置してその内部に蒸気タービンの高圧段落部分を格納し、当該接合ロータ1801の他方の隣り合う二個のジャーナル軸受154、153位置の間に一体の中低圧タービンケーシング1882を配置してその内部に蒸気タービンの中圧部分と低圧部分を格納している。この接合ロータ1801は、その高圧部103のホイールと中圧部104のホイールとが隣り合っている間の範囲内に、締結されたカップリングフランジを設けることなく、当該接合ロータ1801の両端のジャーナル軸受152、153位置の内側の範囲内においてボルト151締結による接合は一個所のみであって、当該接合ロータのボルト151締結による接合位置は中圧第一段落107近傍の最高温度位置と低圧最終段落ホイール128の間の位置にある。
好ましくは、ボルト151締結部110の位置は、定格運転状態または常用運転状態における蒸気温度が150℃以上400℃以下の位置である。最高温度が作用する部分を有する材料から成る高温側ロータ部分1821は、重量比で1〜3%のCrを含有しMoとVを含有するCrMoV鋼からなり、高温側ロータ部分1821は高圧第一段落106と中圧第一段落107を有し、低圧最終段落108を有する低温側ロータ部分122は、2〜5%のNiを含有しCrとMoとVを含有するNiCrMoV鋼からなる。
好ましくは、高圧部103と中圧部104との間に設けられたジャーナル軸受154位置のロータの直径1590が、当該ロータの両端近傍に設けられたジャーナル軸受152、153位置のうちの発電機に近い方に設けられたジャーナル軸受位置のロータの直径よりも大きいことを特徴とする。
好ましくは、高温側ロータ部分121には貫通する中心孔109を形成し、当該中心孔109は、図23に一例を示すように、低温側ロータ部分122とのボルト151締結部110から中圧第一段ホイール127または高圧第一段ホイール126の位置を越えた高温側ロータ部分121の軸端近傍ジャーナル軸受152側にある任意の段落の範囲までの中心孔の直径159が、高温側ロータ部分121の軸端近傍に設けられたジャーナル軸受152の位置における中心孔の直径169よりも大きいように形成されている。
好ましくは、図24に示すように、低圧最終段落ホイール128が存在する位置には中心孔を形成させない。
好ましくは、図25に一例を示すように、縦弾性係数が高温側ロータ材料及び低温側ロータ材料よりも小さく常温において150GPa以下である金属を概略円筒形状に形成して作成した円筒状金属部品2131の端面2132が高温側ロータ部分121と低温側ロータ部分122との接合面2134、2135にそれぞれ接触するように配して、高温側ロータと低温側ロータをボルト締結により接合する。
本実施例では、一体の高圧ケーシングと一体の中低圧ケーシングで構成される二車室形式の蒸気タービンであって、全段落を単流構造としてクロスオーバ管を廃止して低コスト化・コンパクト化を図った蒸気タービンにおいて、従来、高圧部と中圧部との間に必ず形成されていたカップリングフランジを廃止したので、タービンロータ全長を少なくとも当該カップリングフランジ厚さとナット並びに挿入ボルト長さとの合計値に相当する長さ分短縮することができる。従って、軸受スパン(隣り合う軸受の間の距離)が短くなって、軸系安定性を改善することが可能となり、従来よりもコンパクトかつ大容量で高性能な蒸気タービンを提供できる。コンパクト化は発電所建設費用の低減に大きく貢献する。また、フランジの加工やボルト、ナット等の構成部品の製作およびカップリングフランジ締結作業等の費用の発生を回避することができることから、蒸気タービン製造コストを低減することができる。
また、高温側ロータ部分と低温側ロータ部分の接合を溶接に代えてボルト締結による接合としたことにより、製造が容易になるとともに、溶接接合ロータでは付加的な応力発生の原因となっていた高温側ロータ材と低温側ロータ材の若干の線膨張率の違いによる熱膨張量の差異もボルト締結による接合の場合は安全に吸収にできる。
また、ボルト締結部の位置を定格運転状態で蒸気温度150℃以上400℃以下として材料のクリープ温度域以下の温度としたので、締結ボルトのクリープの進行による接合ロータの曲りの懸念を払拭できる。このため、接合部のクリープ曲りによる振動の増大の懸念もなく、また溶接部またはボルト接合部の蒸気が運転中に湿ることがないので、材料の応力腐食割れの発生や腐食の発生の懸念も払拭できる。従って、発電設備の効率向上と高出力化と発電所建設費用の抑制と発電設備の経済的な運用改善の要請を、同時に十分なレベルで満足することができる蒸気タービンの実現が可能になる。
また、中間部のジャーナル軸受位置のロータ直径を、要求される強度から決定される直径よりも大きくしたので、当該部分のロータ表面の熱伝達率が高くなって軸受潤滑油によるロータ冷却効果が顕著になって中間部に軸受を設置するために必要な幅を狭くすることができる。このため、タービン軸長を短縮でき、従って軸受スパンを短縮できることから、さらにコンパクト化と軸系安定性の確保に貢献できる。
また、高温側ロータの高温部位の中心孔の直径を拡大するための接合と高温側ロータと低温側ロータとを接合するための接合という目的の異なる接合に関し、接合の個所を工夫してそれらの接合部が一個所で済むように考案したので低コストで信頼性の高い接合ロータを提供できる。
また、接合ロータとして高温部のロータ中心孔を拡大したので、タービンロータの内外面温度差が小さくなって非定常熱応力が低減する。従って、低サイクル疲労損傷が防止でき、発電設備の経済的運用に貢献することが可能となる。
また、蒸気タービンロータの低圧最終段落ホイール位置には中心孔を形成させないこととしたため、当該位置のタービンロータに作用する遠心効果応力を中心孔がある場合に比べて大幅に低減できることになり、従来に増して長大な蒸気タービン最終段動翼を適用でき、蒸気タービンの高出力化への貢献や低圧部単流化による低コスト化・コンパクト化に貢献できる。
また、円筒状金属部品をその端面が高温側ロータ部分と低温側ロータ部分の接合側の端面にそれぞれ接触するように面圧を持たせて配し、かつ、この円筒状金属部品は縦弾性係数が常温において150GPa以下であって高温側ロータ部分や低温側ロータ部分に比べておおよそ70%以下の値を有する金属によって形成されているので、常に復元力を確保できる。従って、タービンロータの接合部分を完全にシールすることが可能となって、中心孔への蒸気の流入を阻止することができ運転に支障をきたすような軸振動やラビングの発生を防止している。