JP4804642B2 - ステータコアへの巻線装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ステータコアの内歯に導線を直接巻付けてコイルを形成するステータコアへの巻線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステータコアへのコイル形成装置としては、ステータコアの内歯に直接巻付けてコイルを形成する直巻方式と、導線を予め型枠に巻付けてコイルを形成し、このコイルを治具によってステータコアの内溝に挿入するコイル挿入装置を用いた方式とが知られている。直巻方式は、コイル挿入装置を用いた方式に比べて作業性が悪いという欠点がある反面、ステータコアの端面より突出するループの長さが短くなるので、良好な性能が得られるという利点がある。
【0003】
直巻方式を採用するステータコアへの巻線装置として、本出願人は、特許第2813556号公報で、ステータコアの内歯に巻付ける導線を供出する導線ガイド筒を、クランク機構を介して軸方向へ往復動作させると共に、この導線ガイド筒をカム機構により軸周方向へ揺動させることで、導線ガイド筒に設けたノズルから供出する導線をステータコアの内歯に巻付ける技術を提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、導線ガイド筒の導線を取り入れる導線導入口、及びノズルへの導入経路では導線経路がほぼ直角方向へ変更される。上述した公報に開示されている技術では、導線の経路が変更される部位は、滑り摩擦により繰り出されるため、そのときの摩擦抵抗により、特に太い導線の場合には絶縁被膜が傷つき易いという問題がある。
【0005】
更に、導線経路を強制的に変更させる際には、その変更位置での摩擦抵抗により、バックテンションが0でも、最終テンションが大きくなってしまうため、太線の巻線が困難であった。これに対処するに、導線ガイド筒の導線導入口に固定ニードルを取り付け、テンションを軽くする技術も提案されているが、導線ガイド筒の軸方向への往復動作の際の、上昇と下降とでテンションが異なり、テンションが緩くなると、導線の巻き上がりが太鼓状になってしまい、ステータコアへの密着度、及び占有率の低下を招いていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、導線経路変更部での摩擦抵抗を低減して、導線の絶縁被膜の損傷を防止すると共に、太線の巻線を可能にし、更にテンションのばらつきを少なくしてステータコアに対する密着性を良好にすることで、巻線の占有率の向上とモータの放熱性の向上とを図ることの可能なステータコアへの巻線装置にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるステータコアへの巻線装置は、ステータコアの中心に同軸的に配設され、所定角度で揺動すると共に、軸方向に往復動作する導線ガイド筒と、該導線ガイド筒の先端に装着され、導線を前記導線ガイド筒に対してほぼ直交する方向へ繰り出すノズルとを備えたステータコアへの巻線装置において、
前記導線ガイド筒の導線導入口側の導線経路変更部に、導線ガイドリールを配設すると共に、この導線ガイドリールを、前記導線ガイド筒の往復動作に同期して往復動作させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、導線ガイド筒の先端に装着したノズルをステータコアの内歯に臨ませ、この導線ガイド筒を揺動させると共に往復動作させてノズルから繰り出される導線をステータコアの内歯に巻き付けてコイルを形成する。この場合、導線ガイド筒に導入される導線は、導線導入口側の導線経路変更部に配設した導線ガイドリールに支持されて方向が変更されて導線ガイド筒に導入されるので、摩擦抵抗を小さくして、導線の絶縁被膜の損傷を防止できる。
【0009】
また、この導線ガイドリールは、導線ガイド筒の往復動作に同期して往復動作するので、導線ガイド筒の上昇時と下降時のテンションが大きく変化することがなく、導線の巻き上がりが太鼓状になってしまうことを防止できる。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記導線ガイド筒の先端から前記ノズルに至る導線経路変更部にも、導線ガイドリールを配設する。これによれば、導線の摩擦抵抗を更に低減することができ、導線の絶縁被膜の損傷をより確実に防止することができる。
【0011】
【実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1は巻線装置の縦断面図、図2は図1のII-II断面図、図3は巻線装置に設けたノズルの拡大断面図、図4は巻線装置の基台部分の拡大図、図5は図4のV-V断面図、図6は図3のVI-VI断面図である。
【0012】
巻線装置1の基台2上にフレームタワー3が立設され、このフレームタワー3内に、導線ガイド筒4が上下方向を貫通した状態で配設されていると共に、この導線ガイド筒4の下部と上部とが、フレームタワー3の底面と上面とに固設された軸受け5,6に軸方向及び回転方向への移動を許容された状態で支持されている。
【0013】
この導線ガイド筒4の、基台2に臨まされている下端に、導線7を取入れる導線導入口4aが開口されている。一方、フレームタワー3の上面から突出されている導線ガイド筒4の上端に、ヘッダ8が装着され、このヘッダ8がステータコア9の中心に同軸的に臨まされる。尚、このステータコア9はDCブラシレスモータ等に採用されるものである。
【0014】
又、フレームタワー3内には、導線ガイド筒4を、軸方向へ往復動作させる往復動作部10を内装する往復動作室3aと、この往復動作室3aの上部に設けられて導線ガイド筒4を軸周方向へ揺動させる揺動部11を内装する揺動室3bとが形成されている。
【0015】
往復動作部10の回転軸12が、図1の紙面の奥の方へ延出されて、図示しない駆動装置に、同じく図示しないタイミングベルトを介して連設されており、又、この回転軸12の先端にクランク13が軸着されている。一方、往復動作室3aには、導線ガイド筒4を挟む両側にガイドレール14が併設され、この両ガイドレール14に、両側をスライド自在に支持するスライダ15の中央に導線ガイド筒4が貫通固定され、更に、このスライダ15とクランク13とがクランクアーム16を介して連設されている。
【0016】
又、揺動室3bには、ブラケット17が立設され、このブラケット17に、揺動部11を構成する揺動スリーブ18が回転自在に支持されていると共に、この揺動スリーブ18に導線ガイド筒4がスプライン係合されている。更に、揺動室3bには、導線ガイド筒4に直交する方向(図1では、紙面の手前から奥の方向)へカム軸19が延出され、このカム軸19が図示しないタイミングベルトを介して回転軸12に連設されて、この回転軸12とカム軸19とが同期回転される。
【0017】
図2に示すように、カム軸19にはカムスリーブ20が軸着され、このカムスリーブ20にカム21が形成されている。このカム21は、カムスリーブ20の外周に周回状に形成されており、カム曲線部21aとカム直線部21bとが交互に連続されている。このカム21に、揺動スリーブ18に二股に取付けられている一対のカムフォロワ22が摺接されている。
【0018】
この一対のカムフォロワ22はカム21のテーパリブ21cを常に当接した状態、すなわちバックラッシが0の状態で挟持しており、カム21に対して常に拘束された状態にある。この場合、カム軸19を、図2中の矢印A方向に移動させることにより、カム21とカムフォロワ22とのバックラッシを0にすることができる。尚、バックラッシが0であっても、カム21とカムフォロワ22との回転方向が常に一方向なので、支障無く回転させることが出来る。カム軸19が回転すると、カム21を挟持するカムフォロワ22を介して導線ガイド筒4の先端に装着されているヘッダ8が、カム21に沿って、図6の矢印Bで示すように、所定角度範囲で揺動(往復回動)する。すなわち、カムフォロワ22がカム曲線部21a上にあるとき導線ガイド筒4が揺動し、カム直線部21b上にあるとき停止して、このサイクルを繰り返す。
【0019】
又、図3に示すように、ヘッダ8は、導線ガイド筒4の先端に固設された円筒部材23と、この円筒部材23に回動自在に装着されているカムプレート24と、このカムプレート24の上面に当接されている押えプレート25と、この押えプレート25にボルト26を介して固設されているヘッダ本体27とを有し、更に、このヘッダ本体27と押えプレート25とが円筒部材23にボルト28を介して固設されている。
【0020】
ヘッダ本体27の下面に、中心から等角度で半径方向へ放射状に延出する3本のガイド溝29が形成されており、この各ガイド溝29に、ノズル30の基部が進退自在に挿入されている。
【0021】
一方、カムプレート24の上面に、各ガイド溝29に対応して、渦巻き状のカム溝31が形成されている。この各カム溝31にカムフォロワ32が挿入され、このカムフォロワ32が、各ノズル30の下面から突出されているピン33に支持されている。カムプレート24は駆動機構(図示せず)に連接されており、この駆動機構によりカムプレート24が回動すると、カムフォロワ32がカム溝31に沿って移動し、ノズル30が、図2に矢印Cで示すように、半径方向へ出没動作される。又、カムプレート24はヘッダ本体27と一緒に回動すると共に、巻線操作の過程で所定角度毎にヘッダ本体27に対して相対回転することで、ノズル30がガイド溝29に沿って出没動作される。
【0022】
又、ノズル30の中心には導線ガイド孔30aが穿設されており、この導線ガイド孔30aの基部に導線7をガイドする曲面部30bが形成されている。
【0023】
導線7は、外部に配設されているボビンパックに収納されており、このボビンバックから、図示しない供出装置を介して繰り出され、ガイド孔34を通り、巻線装置1の基台2内に導かれて、導線経路を略垂直方向へ変更し、導線ガイド筒4の導線導入口4aから導線ガイド筒4内に導入され、導線ガイド筒4の上端に装着されている円筒部材23の上端から導線経路を略水平方向へ変更し、ノズル30に穿設されている導線ガイド孔30aに導かれ、ノズル30の先端から導出される。このノズル30の先端部は、ステータコア9に形成されている内歯の間に臨まされて、図1の上方或いは下方へ移動した後、内歯の上面或いは下面を水平方向へ移動し、次いで内歯の間を下方或いは上方へ移動して、内歯に導線7を巻回する。
【0024】
円筒部材23の上部からノズル30側へ導線経路を変更する部位に、上部導線ガイドリール35が横設されており、導線7の導線経路が上部導線ガイドリール35にガイドされてノズル30の方向へ無理なく変更される。
【0025】
又、導線ガイド筒4に設けられている導線導入口4a側の導線経路変更部に下部導線ガイドリール36が配設されている。この下部導線ガイドリール36を支持する支持軸37の両端が、導線ガイド筒4の導線導入口4aに固設されている支持プレート38の両側から下部導線ガイドリール36を挟んで下方へ突設された支持ブラケット39に支持されている。更に、この両支持ブラケット39から外方へ突設されているフランジ40が、基台2に形成したベースフレーム41に立設されているガイドレール42に摺動自在に挿通されている。更に、この両ガイドレール42の上端がクロスプレート43を介して連結されている。基台2内に導入された導線7は、下部導線ガイドリール36の下側を通って導線ガイド筒4の導線導入口4a側へ無理なく導かれる。
【0026】
次に、上記巻線装置1によるステータコア9への巻線動作について説明する。駆動装置によりタイミングベルト(いずれも図示せず)を介して、往復動作部10の回転軸12を回転させると、この回転軸12に固設されているクランク13が回転し、このクランク13にクランクアーム16を介して連設するスライダ15が、その両側をガイドレール14に支持されて、軸方向(図1の上下方向)へ往復動作する。
【0027】
一方、回転軸12の回転は、図示しないタイミングベルトを介して揺動部11のカム軸19に伝達される。従って、このカム軸19は回転軸12と同期回転する。このカム軸19が回転すると、カム軸19に軸着するカムスリーブ20の外周に形成したカム21が、導線ガイド筒4に軸着されている揺動スリーブ18に取付けられているカムフォロワ22を介して導線ガイド筒4を揺動させる。
【0028】
図2に示すように、導線ガイド筒4にスプライン係合されている揺動スリーブ18に設けたカムフォロワ22がカム21のカム直線部21bにあるとき、この導線ガイド筒4の揺動は停止されており、この状態からカム軸19が回転すると、カムフォロワ22がカム曲線部21aにかかり、このカム曲線部21aにガイドされて導線ガイド筒4が軸周方向の一方へ回動し、カムフォロワ22がカム21の反対側のカム直線部21b上に達すると、導線ガイド筒4の揺動が停止される。そして、カム軸19が更に回転すると、カムフォロワ22が反対側のカム曲線部21a上を転動し、導線ガイド筒4の回動方向が反転し、最初の位置へ戻されて、1サイクルが終了する。
【0029】
カムフォロワ22は、カム21のテーパリブ21cを常に挟持しているためバックラッシがなくなり、揺動方向の回転精度を高めることができる。また、導線ガイド筒4の回動方向が反転してもバックラッシがないので、騒音や振動の発生を抑制することができる。尚、カムフォロワ22がカム21のカム直線部21bの位置にあるとき、導線ガイド筒4は往復動作部10により、軸方向(図1の上下方向)へ往復動作され、又、カム曲線部21aの位置にあるとき、ノズル30は、ステータコア9の上下方向端面の外側に露呈されている。
【0030】
その結果、往復動作部10と揺動部11との同期回転により、回転軸12及びカム軸19が1回転すると、導線ガイド筒4の先端に円筒部材23を介して装着されていると共に、導線ガイド筒4と一体回動するヘッダ8のヘッダ本体27に設けられているノズル30から供出されている導線7がステータコア9の内歯に1巻される。
【0031】
又、往復動作部10と揺動部11との同期回転により、ステータコア9の内歯に導線7を巻回する際に、図示しない駆動機構によりカムプレート24を回転させ、このカムプレート24に形成されているカム溝31に挿入されているカムフォロワ32にピン33を介して連接するノズル30を、図6の矢印Cで示すように、半径方向へ出没動作させることで、内歯にコイルを形成させる。
【0032】
ノズル30から供出されて、ステータコア9の内歯に巻回される導線7は、巻線装置1の外部に配設されているボビンパックに収納されており、このボビンパックに収納されている導線7が、ガイド孔34を通り、基台2の側方から内部に導かれ、この基台2の内部に配設されている下部導線ガイドリール36にガイドされて、導線経路が略垂直方向へ無理なく変更され、導線ガイド筒4の下端に開口する導線導入口4aから導線ガイド筒4の内部に導かれる。
【0033】
この導線ガイド筒4内に導かれた導線7は、導線ガイド筒4内に沿って上昇し、導線ガイド筒4の上端に装着されている円筒部材23の上部に配設されている上部導線ガイドリール35にガイドされて、導線経路を略水平方向へ変更され、ノズル30に穿設されている導線ガイド孔30aを通り、ステータコア9の内歯へ供出される。
【0034】
下部導線ガイドリール36は、支持軸37、支持ブラケット39、支持プレート38を介して導線ガイド筒4の導線導入口4aに連接されており、導線ガイド筒4が軸方向へ往復動作すると、支持ブラケット39の両端から突出するフランジ40がガイドレール42に支持されて往復動作し、下部導線ガイドリール36は導線ガイド筒4に同期して往復動作するため、常にほぼ一定のテンションが印加されるようになり、安定した品質を得ることができる。
【0035】
このように、導線経路が変更される部位に導線ガイドリール35,36を配設したので、導線7の導線経路を無理なく変更させることができ、その結果、摩擦抵抗が減少すると共に、導線7の絶縁被膜の損傷が防止され、相対的に線径の太い導線7の巻線が可能となる。
【0036】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、導線ガイド筒の導線導入口側導線経路変更部と、導線ガイド筒の先端からノズルに至る導線経路変更部とに導線ガイドリールを配設すると共に、導線導入口側の導線経路変更部に導線ガイドリールを配設すると共に、この導線ガイドリールを導線ガイド筒の往復動作に同期して往復動作させるようにしたので、導線経路変更部での摩擦抵抗が低減されて導線の絶縁被膜の損傷が防止され、相対的に太線の巻線が可能となる。
【0037】
更に、テンションのばらつきが少なくなり、ステータコアに対する密着性が良好となり、巻線の占有率が向上するばかりでなく巻線の品質を安定化させることが出来る。又、巻線の占有率を向上させたことによりモータの放熱性を向上させることが出来ると云う副次的な効果も奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】巻線装置の縦断面図
【図2】図1のII-II断面図
【図3】巻線装置に設けたノズルの拡大断面図
【図4】巻線装置の基台部分の拡大図
【図5】図4のV-V断面図
【図6】図3のVI-VI断面図
【符号の説明】
1 巻線装置
4 導線ガイド筒
4a 導線導入口
7 導線
9 ステータコア
30 ノズル
35 上部導線ガイドリール
36 下部導線ガイドリール
Claims (2)
- ステータコアの中心に同軸的に配設され、所定角度で揺動すると共に、軸方向に往復動作する導線ガイド筒と、該導線ガイド筒の先端に装着され、導線を前記導線ガイド筒に対してほぼ直交する方向へ繰り出すノズルとを備えたステータコアへの巻線装置において、
前記導線ガイド筒の導線導入口側の導線経路変更部に、導線ガイドリールを配設すると共に、この導線ガイドリールを、前記導線ガイド筒の往復動作に同期して往復動作させることを特徴とするステータコアへの巻線装置。 - 前記導線ガイド筒の先端から前記ノズルに至る導線経路変更部にも、導線ガイドリールを配設する請求項1記載のステータコアへの巻線装置。
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