JP4800771B2 - 糖鎖リガンド複合体、およびそのリガンド複合体を用いたタンパク質の分析方法 - Google Patents
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Description
本発明は、リンカー化合物に還元末端を有する糖鎖が導入された新規リガンド複合体、および、このリガンド複合体を金や銀、銅などの金属で表面をコートしたチップ上に集合化させ固定化したリガンド担持体に関するものである。さらに、本発明は上記リガンド複合体を用いたタンパク質の分析方法に関するものである。
【背景技術】
生体内に存在する種々の糖は、生物の活動や生命を維持するためのメカニズムの中で重要な役割を果たしている。このような糖の機能を精密に解明するためには、糖の複雑な構造に基づいてそれらの機能を解析する必要がある。糖の機能解析には、構造が解明されている糖鎖を用いて、糖の構造を一部ずつ再現し、これによって糖全体の構造と機能との関係を明らかにする手法が用いられる。
上記糖の機能解析の手法としては、例えば、表面プラズモン共鳴(以下、SPRと記載する)が知られている。すなわち、糖の一部を模擬したオリゴ糖を含んでなるリガンド複合体をセンサチップ表面上に導入し、このリガンド複合体が導入されてなるセンサチップを用いて、オリゴ糖と特異的に相互作用するタンパク質等の物質を特定する。これにより、オリゴ糖の構造に基づく生物活性の正しい評価を行うことができる。
ところが、オリゴ糖は、1分子だけでは活性がそれほど高くないため、オリゴ糖の生物活性を評価する場合には、オリゴ糖をセンサチップ上に集合化させることが必要となる。つまり、集合化したオリゴ糖を用いて、タンパク質との相互作用を解析することにより、オリゴ糖の生物活性の評価を行うことが可能になる。
そこで、本発明者らは、これまでに、センサチップ表面に固定可能な部位及びオリゴ糖を導入可能な部位を分子内に有するリンカー化合物を得、このリンカー化合物に1単位又は2単位のオリゴ糖を導入してなるリガンド複合体を得ている。そして、このリガンド複合体を用いることによって、センサチップ上に、オリゴ糖を集合化して導入することができることを見出している(例えば、特許文献1、非特許文献1等を参照)。
[特許文献1]特開2003−83969号公報(2003年3月19日公開)
[非特許文献1]「日本化学会第79回春季年会−講演予稿集II」、社団法人日本化学会、2001年3月15日、p.1042
しかしながら、上記の各文献に記載されたリガンド複合体においては、導入される糖鎖(オリゴ糖鎖)は、発明者らによって合成された硫酸化糖に限られており、市販の還元末端を有するマルトース、ラクトースなどのオリゴ糖を導入しチップ化できるかどうかについては明らかにされていない。また、上記の文献に記載のリガンド複合体を固定化して得られたセンサチップをSPRを用いた測定に使用した後に、チップ上の糖鎖と結合したタンパク質の同定に使用するという利用方法は、従来から提唱されてはいたが、データ的に満足できるものは存在しなかった。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであって、市販の還元末端を有する糖を導入してなる新規リガンド複合体、および、タンパク質の同定に使用することのできるリガンド担持体を提供することを目的とするものである。
【発明の開示】
本願発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、先出願(出願番号:特願2003−190568、公開番号:特開2004−157108(公開日:2004年6月3日)、本願の優先日(2004年2月18日)の時点で未公開)に記載のリンカー化合物(何れも本願発明者らによって見出されたもの)に市販のマルトースまたはラクトースを反応させ、それぞれ末端にαグルコピラノースまたはβガラクトピラノースを有するリガンド複合体を合成した。さらに、本願発明者はこれらのリガンド複合体を金コーティングチップに固定化させたシュガーチップ(リガンド担持体)を作製した。そして、これらのシュガーチップを用いてタンパク質との相互作用を検討するために、SPR測定で相互作用を確認後、当該シュガーチップをそのままMALDI−TOF/MSに供したところ、各シュガーチップに結合するタンパク質を同定することができること見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のリガンド複合体は、一般式(1)
(式中、p,qはそれぞれ独立して0以上6以下の整数)にて表される構造を備え、上記Xとして、末端に芳香族アミノ基を有するとともに、主鎖に炭素−窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、1鎖又は2鎖又は3鎖含んでなる構造を備え、上記Yとして、硫黄原子又は硫黄原子を含む炭化水素構造を備え、上記Zとして、炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を持つ直鎖構造を備えているリンカー化合物と、還元末端を有する糖とが、上記芳香族アミノ基を介して結合している構造を有していることを特徴としている。
上記炭化水素誘導鎖とは、炭素及び水素からなる炭化水素鎖にて、一部の炭素や水素が他の原子や置換基に置き換わっていてもよいものを指すものとする。すなわち、上記炭化水素誘導鎖とは、末端に芳香族アミノ基を有し、炭化水素鎖の主鎖構造である炭素−炭素結合(C−C結合)の一部が、炭素−窒素結合(C−N結合)、炭素−酸素結合(C−O結合)、アミド結合(CO−NH結合)に置き換わっていてもよいものを指す。
また、上記硫黄原子を含む炭化水素構造とは、炭素及び水素からなる炭化水素構造にて、一部の炭素が硫黄に置き換わっているものを意味する。また、この硫黄原子を含む炭化水素構造は、鎖状(直鎖、枝分かれ鎖の両方を含む)であっても、環状であってもよく、また、鎖状構造および環状構造の両方の構造を含んでいてもよいものとする。
本発明のリガンド複合体において、上記リンカー化合物は、上記Yとして、S−S結合またはSH基を含む炭化水素構造を備えているものであってもよい。つまり、上記硫黄原子を含む炭化水素構造中に、ジスルフィド結合(S−S結合)またはチオール基(SH基)が含まれていてもよい。
本発明のリガンド複合体において、上記Xは、一般式(2)
(式中、m1,m2,m3はそれぞれ独立して0以上6以下の整数。R’は水素(H)またはR。)にて表される構造を備え、上記Rは糖鎖由来化合物であるものであってもよい。
本発明のリガンド複合体において、上記Xは、一般式(3)
(式中、m4,m5はそれぞれ独立して0以上6以下の整数。R’は水素(H)またはR。)にて表される構造を備え、上記Rは糖鎖由来化合物であるものであってもよい。
本発明のリガンド複合体において、上記Xは、一般式(4)
(式中、R’は水素(H)またはR)にて表される構造を備え、上記Rは糖鎖由来化合物であるものであってもよい。
本発明のリガンド複合体において、上記Zは、式(5)または式(6)
(式中、n1,n2はそれぞれ1以上6以下の整数)にて表される構造を備えているものであってもよい。
また、本発明にかかるリガンド複合体の製造方法は、一般式(7)
(式中、m1,m2,m3はそれぞれ独立して0以上6以下の整数、n1は1以上6以下の整数)にて表される構造を備えているリンカー化合物、または、一般式(8)
(式中、m4,m5はそれぞれ独立して0以上6以下の整数、n1は0以上6以下の整数)にて表される構造を備えているリンカー化合物、または、一般式(9)
(式中、n1,qはそれぞれ独立して0以上6以下の整数)にて表される構造を備えているリンカー化合物、または、一般式(10)
(式中、n2は1以上6以下の整数)にて表される構造を備えているリンカー化合物、または、一般式(11)
(式中、n1は1以上6以下の整数)にて表される構造を備えているリンカー化合物と、還元末端を有する糖とを用いて還元アミノ化反応を行うことを特徴としている。
また、本発明にかかるリガンド担持体は、上記の何れかのリガンド複合体を、表面に金属を有する支持体上に固定化させてなることを特徴とするものである。そして、上記リガンド担持体は、タンパク質の分析に使用してもよい。
また、本発明にかかるタンパク質の分析方法は、上記の何れかのリガンド複合体を、支持体と接触させることによって、当該リガンド複合体を支持体上に固定化させたリガンド担持体を作成する工程と、上記リガンド担持体を、タンパク質溶液と接触させた後、分子間相互作用の測定を行う工程と、上記分子間相互作用の測定の後に質量分析を行って、上記リガンド担持体に結合しているタンパク質を同定する工程と、からなることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のリガンド複合体を用いたタンパク質分析方法の手順を示す模式図である。
図2(a)は、α−グルコピラノースを2分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてConAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図2(b)は、α−グルコピラノースを2分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてPSAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図2(c)は、α−グルコピラノースを2分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてLCAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図3(a)は、α−グルコピラノースを3分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてConAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図3(b)は、α−グルコピラノースを3分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてPSAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図3(c)は、α−グルコピラノースを3分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてLCAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図4(a)は、β−ガラクトピラノースを2分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてRCAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図4(b)は、β−ガラクトピラノースを2分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてPNAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図5(a)は、β−ガラクトピラノースを3分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてRCAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図5(b)は、β−ガラクトピラノースを3分子有するリガンド複合体を固定化したセンサチップを用いてPNAの結合挙動を測定した結果を示すグラフである。
図6(a)は、センサチップに結合したConAを質量分析した結果を示すチャートである。
図6(b)は、センサチップに結合したPNAを質量分析した結果を示すチャートである。
図7は、リガンド複合体(化合物30)の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図8は、リガンド複合体(式(36))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図9は、リガンド複合体(式(37))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図10は、リガンド複合体(式(38))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図11は、リガンド複合体(式(39))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図12は、リガンド複合体(式(40))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図13は、リガンド複合体(式(41))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図14は、リガンド複合体(式(42))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図15は、リガンド複合体(式(43))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図16は、リガンド複合体(式(44))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図17は、リガンド複合体(式(45))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図18は、リガンド複合体(式(46))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図19は、リガンド複合体(式(47))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図20は、リガンド複合体(式(48))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図21は、リガンド複合体(式(49))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図22は、リガンド複合体(式(50))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
図23は、リガンド複合体(式(51))の1H−NMRスペクトル測定チャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリガンド複合体は、表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサチップやアフィニティクロマトグラフィーの担持体等のタンパク質分析用の支持体に固定化されて用いられるものであり、支持体表面と結合することのできるリンカー化合物と、分析対象となるタンパク質などと特異的に相互作用することのできる糖鎖とから構成されている。上記SPRやアフィニティクロマトグラフィーでは、糖分子と特異的に相互作用するタンパク質などの物質を特定することや分離することを目的としている。そのため、上記リガンド複合体は、タンパク質等の物質と非特異的に相互作用を起こさないものであることが必要とされる。
そこで、本発明のリガンド複合体は、上記一般式(1)で表される構造を備えたリンカー部分(リンカー化合物)を有している。この構造中のYで示す構造中には、硫黄原子(S)が含まれており、この硫黄原子(S)は、例えば、タンパク質分析用の支持体表面にコートされた金属(例えばAu)と、金属−硫黄結合(例えばAu−S結合)を形成し、支持体に強固に結合することができる。
また、上記リンカー化合物は、上記一般式(1)のXとして、末端に芳香族アミノ基を有するとともに主鎖に炭素−窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、1鎖又は2鎖又は3鎖含んでなる構造を備えている。これによって、上記リンカー化合物は、タンパク質分析用の支持体表面に糖分子を集合化して配列することができるとともに、末端に芳香族アミノ基を有していることによって、糖分子を簡便に導入することができる。
また、上記リンカー化合物は、上記一般式(1)のZとして、炭素−炭素結合又は炭素−酸素結合を持つ直鎖構造を備えている。より具体的には、化合物の製造が容易であることから、Zは、上記式(5)または式(6)にて表される構造を有することが好ましい。なお、上記一般式(1)において、p,qはそれぞれ独立して0以上6以下の整数であれば限定されない。また、上記式(5)のn1および式(6)のn2はそれぞれ1以上6以下の整数であれば限定されない。
さらに、上記リンカー化合物として、上記一般式(1)において、pが4であり、qが1であり、Yとして、S−S結合を有する環状炭化水素構造を備えており、Zが上記式(5)である構造を有しているものを挙げることができる。上記リンカー化合物としては、例えば一般式(12)
にて表される構造を備えるものであってもよい。このリンカー化合物は、チオクト酸を原料として合成することが可能である。
また、上記リンカー化合物として、上記一般式(1)において、pが4であり、qが1であり、Yとして、S−S結合を有する環状炭化水素構造を備えており、Zが上記式(6)である構造を有しているものを挙げることができる。上記リンカー化合物としては、例えば一般式(13)
にて表される構造を備えるものであってもよい。このリンカー化合物は、チオクト酸を原料として合成することが可能である。
また、上記リンカー化合物として、上記一般式(1)において、pが0であり、qが0であり、Yとして、硫黄原子(S)を有しており、Zが上記式(5)または上記式(6)である構造が2量体を形成しているものを挙げることができる。上記リンカー化合物としては、例えば一般式(14)
にて表される構造を備えるものであってもよい。
上記一般式(12)、一般式(13)および一般式(14)にて表されるリンカー化合物は、ジスルフィド結合(S−S結合)が含まれており、このS−S結合中の硫黄(S)は、例えば、タンパク質分析用の支持体表面にコートされた金属(例えばAu)と、金属−硫黄結合(例えばAu−S結合)を形成し、支持体に強固に結合することができる。なお、上記Yとしては、一般式(12)、一般式(13)または一般式(14)で示されるものに限定されることはないが、金属−硫黄結合(Au−S結合)を容易に形成することができるという点で、S−S結合またはSH基が含まれている炭化水素構造であることが好ましい。
そして、本発明のリガンド複合体は、上記リンカー化合物の芳香族アミノ基に、還元末端を有する糖鎖が導入され調製される。言い換えれば、本発明のリガンド複合体は、上記リンカー化合物と、還元末端を有する糖とが、芳香族アミノ基を介して結合している構造を有している。この糖の導入は、例えば、上記リンカー化合物の芳香族アミノ基のアミノ基(−NH2基)と糖との還元アミノ化反応によって行うことができる。つまり、糖中の平衡によって生じるアルデヒド基(−CHO基)またはケトン基(−CRO基、Rは炭化水素基)と、上記リンカー化合物が有するアミノ基とが反応する。そして、この反応によって形成されたシッフ塩基を引き続き還元することによって、芳香族アミノ基に容易に糖を導入することができる。
本発明では、特に上記還元末端を有する糖として、上記先出願に記載のような発明者らによって合成された硫酸化糖ではなく、市販のもの、あるいは、市販の多糖を分解して調製したものを用いる。なお、上記「還元末端を有する糖」とは、アノマー炭素原子が置換を受けていない単糖またはオリゴ糖である。つまり、上記還元末端を有する糖とは、還元糖である。
上記還元末端を有する糖としてより具体的には、マルトース、ラクトース、パノース、セロビオース、メリビオース、マンノオリゴ糖、キトオリゴ糖、ラミナリオリゴ糖などが挙げられるが、これに限定されることはない。このように、マルトースやラクトースなどのオリゴ糖を有するリガンド複合体は、従来の硫酸化糖を有するリガンド複合体と比較して、タンパク質測定に関して応用範囲が広いと言う利点を有している。
本発明のリガンド複合体として具体的には、一般式(7)
(式中、m1,m2,m3はそれぞれ独立して0以上6以下の整数、n1は1以上6以下の整数)にて表される構造を有するリンカー化合物、または、一般式(8)
(式中、m4,m5はそれぞれ独立して0以上6以下の整数、n1は1以上6以下の整数)にて表される構造を有するリンカー化合物、または、一般式(9)
(式中、n1,qはそれぞれ独立して0以上6以下の整数)にて表される構造を有するリンカー化合物、または、一般式(10)
(式中、n2は1以上6以下の整数)にて表される構造を有するリンカー化合物、または、一般式(11)
(式中、n1は1以上6以下の整数)にて表される構造を有するリンカー化合物の芳香族アミノ基に、還元末端を有する糖が導入された構造を有するものが挙げられる。
上記のリガンド複合体は、例えば、一般式(7)〜(11)にて表される構造を有するリンカー化合物と、還元末端を有する糖とを用いて還元アミノ化反応を行うことによって製造することができる。
上記一般式(7)にて表される構造を有するリンカー化合物とは、つまり、炭化水素誘導鎖を3鎖有するものであり、末端に芳香族アミノ基を有する3鎖の炭化水素誘導鎖が、1つの炭素(C)に結合することによって分岐構造を形成している。なお、上記一般式(7)において、m1,m2,m3は、0以上6以下の整数であれば限定されず、n1は1以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。このうち、上記m1〜m3は、製造時の簡便さの点から互いに同じ整数であることが好ましく、特に2であることが好ましい。
上記一般式(8)にて表される構造を有するリンカー化合物とは、つまり、炭化水素誘導鎖を2鎖有するものであり、末端に芳香族アミノ基を有する2鎖の炭化水素誘導鎖が、1つの窒素(N)に結合することによって分岐構造を形成している。なお、上記一般式(8)において、m4,m5は、0以上6以下の整数であれば限定されず、n1は1以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。このうち、上記m4,m5は、製造時の簡便さの点から互いに同じ整数であることが好ましく、特に2であることが好ましい。
上記一般式(9)にて表される構造を有するリンカー化合物は、炭化水素誘導鎖を1鎖有するものである。なお、上記一般式(9)において、n1,qは、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、同じ整数であってもよい。
上記一般式(10)にて表される構造を有するリンカー化合物は、炭化水素誘導鎖を1鎖有するものである。なお、上記一般式(10)において、n2は、1以上6以下の整数であれば限定されない。
上記一般式(11)にて表される構造を有するリンカー化合物は、炭化水素誘導鎖を1鎖有するものが2量体を形成したものである。なお、上記一般式(11)において、n1は、1以上6以下の整数であれば限定されない。
上記一般式(7)または一般式(8)のように、上記Xは、炭素や窒素等の原子にて、上記炭化水素誘導鎖を複数結合して分岐構造を形成している多分岐型部位である構造を備えているものでもよい。なお、上記Xに複数の炭化水素誘導鎖が含まれる場合は、すべて同じであることが好ましいが、末端に芳香族アミノ基を有していれば、互いに異なる構造であってもよい。
以上のように、本発明のリガンド複合体に含まれるリンカー化合物は、タンパク質分析用の支持体に結合可能な硫黄原子と、オリゴ糖鎖等の糖分子に結合可能なアミノ基とを有している。従って、例えばAu−S結合などの金属−硫黄結合により上記リンカー化合物が、タンパク質分析用の支持体上に固定されるので、上記リンカー化合物を介して、上記支持体上に糖分子を強固にかつ簡単に結合させることができる。
また、上記リンカー化合物は、多分岐型部位を有していてもよく、この場合該多分岐型部位の各末端に芳香族アミノ基を有している。そのため、上記リンカー化合物に還元末端を有する糖が導入された本発明のリガンド複合体を用いることにより、上記支持体表面により効率よく糖分子を集合化させることができる。
さらに、上記リンカー化合物は、タンパク質との非特異的な相互作用の影響をほぼ無視することができる。それゆえ、上記リンカー化合物を有する本発明のリガンド複合体を用いることによって、上記糖とタンパク質との相互作用を再現性よく評価することが可能になる。
上記リンカー化合物は、例えば以下に示す製造方法によって製造される。つまり、上記一般式(7)、(8)、(9)または(10)にて表されるリンカー化合物は、チオクト酸と、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護されたアミン化合物との縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造される。また、上記一般式(11)にて表されるリンカー化合物は、γ−メルカプト酪酸の2量体と、2分子の芳香族アミノ基末端が保護基によって保護されたアミン化合物との縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造される。
上記チオクト酸は、下記一般式(15)
にて表される構造を備えている。
また、上記アミン化合物は、保護基によって保護された芳香族アミノ基末端を有するものであれば特に限定されるものではない。
上記保護基とは、芳香族アミノ基のアミノ基が上記縮合反応によって反応しないように導入される置換基である。このような保護基は、特に限定されるものではないが、例えば、t−ブトキシカルボニル基(−COOC(CH3)3基;Boc基と記載する)、ベンジル基、アリルカルバメート基(−COOCH2CH=CH2、Alloc基)等を挙げることができる。
上記アミン化合物としては、例えば、下記一般式(16)
にて表される構造を備えている第1級アミン化合物を挙げることができる。なお、上記一般式(16)中のm1〜m3は、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、n1は1以上6以下の整数である。この一般式(16)にて表されるアミン化合物と、チオクト酸との縮合反応、および、その後に行われる芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護によって得られるリンカー化合物は、上記一般式(7)にて表されるリンカー化合物である。
また、上記アミン化合物の他の例としては、例えば、下記一般式(17)
にて表される構造を備えている第2級アミン化合物を挙げることができる。なお、上記一般式(l7)中のm4,m5は、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であり、n1は1以上6以下の整数である。この一般式(17)にて表されるアミン化合物と、チオクト酸との縮合反応、および、その後に行われる芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護によって得られるリンカー化合物は、上記一般式(8)にて表されるリンカー化合物である。これらのアミン化合物の合成方法については、後の実施例にて詳述する。
上記チオクト酸またはγ−メルカプト酪酸とアミン化合物との縮合反応により、チオクト酸またはγ−メルカプト酪酸のカルボキシル基(−COOH基)と、アミン化合物のアミノ基(−NH2基)とが縮合して、アミド結合が形成される。その後、芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護して、保護基を取り外し、芳香族アミノ基にすることによって、上記したリンカー化合物を得ることができる。
本発明のリガンド複合体は、上述のようにして作製されたリンカー化合物に、還元末端を有するマルトースやラクトースなどのオリゴ糖が導入されたものである。本発明のリガンド複合体として具体的には、以下に示すものを挙げることができる。
1番目のリガンド複合体は、上記一般式(12)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(2)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに下記式(18)
にて表される構造を有するマルトースを導入してなるものである。
2番目のリガンド複合体は、上記一般式(12)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(2)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに下記式(19)
にて表される構造を有するラクトースを導入してなるものである。
この1,2番目のリガンド複合体は、3鎖の炭化水素誘導鎖を有しているリンカー化合物にオリゴ糖がそれぞれ1個導入されているので、末端に3単位のオリゴ糖を有している。言い方を換えれば、上記1番目のリガンド複合体は、末端に3単位のα−グルコピラノースを有しており、上記2番目のリガンド複合体は、末端に3単位のβ−ガラクトピラノースを有している。なお、上記一般式(2)において、m1〜m3は、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。また、上記一般式(12)において、n1は1以上6以下の整数であれば特に限定されない。
また、3番目のリガンド複合体は、上記一般式(12)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(3)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(18)にて表される構造を有するマルトースを導入してなるものである。
4番目のリガンド複合体は、上記一般式(12)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(3)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(19)にて表される構造を有するラクトースを導入してなるものである。
この3,4番目のリガンド複合体は、2鎖の炭化水素誘導鎖を有しているリンカー化合物にオリゴ糖がそれぞれ1個導入されているので、末端に2単位のオリゴ糖を有している。言い方を換えれば、上記3番目のリガンド複合体は、末端に2単位のα−グルコピラノースを有しており、上記4番目のリガンド複合体は、末端に2単位のβ−ガラクトピラノースを有している。なお、上記一般式(3)において、m4,m5は、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。また、上記一般式(12)において、n1は1以上6以下の整数であれば特に限定されない。
5番目のリガンド複合体は、上記一般式(13)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにグルコースを導入してなるものである。なお、上記一般式(13)において、n2は1以上6以下の整数であれば特に限定されない。
6番目のリガンド複合体は、上記一般式(13)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにマルトースを導入してなるものである。なお、上記一般式(13)において、n2は1以上6以下の整数であれば特に限定されない。
7番目のリガンド複合体は、上記一般式(14)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにグルコースを導入してなるものである。なお、上記一般式(14)において、n1は1以上6以下の整数であれば特に限定されない。
8番目のリガンド複合体は、上記一般式(14)にて表される構造において、上記Xとして上記一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにマルトースを導入してなるものである。なお、上記一般式(14)において、n1は1以上6以下の整数であれば特に限定されない。
さらに、上記一般式(9)にて表される構造を備えているリンカー化合物に、下記群(20)
に示される17種類の糖鎖をそれぞれ導入した17種類のリガンド複合体が、本発明のリガンド複合体の具体例に挙げられる。
上記のリガンド複合体は、いずれもリンカー化合物と糖分子とを含んでなっているので、リンカー化合物内のS−S結合にて、タンパク質分析用の支持体表面の金属と、金属−硫黄(S)結合、例えば金−硫黄(Au−S)結合により結合することができる。これにより、このAu−S結合を介して、上記支持体表面に糖分子を集合化して固定化されてなるリガンド担持体を提供することができる。上記支持体表面の金属としては、上記Auの他、Cu、Ag、Pt等の金属を用いることができるが、特にAuを用いることが好ましい。
また、上記各リガンド複合体は、後述の実施例に示されるように、タンパク質と異なる相互作用を示すことが確認された。それゆえ、未知タンパク質の同定に有効に利用することができると考えられる。
なお、本発明のリガンド複合体に導入されている上記オリゴ糖は、同一の単糖分子からなる単一オリゴ糖であってもよいし、種々の単糖分子やその誘導体からなる複合糖質であってもよい。また、上記オリゴ糖は、いずれも、自然界から単離・精製して得られる種々の天然の糖であってもよく、人工的に合成された糖であってもよい。また、上記オリゴ糖は、多糖を分解して得られたものであってもよい。
また、上述のような本発明のリガンド複合体を、表面に金属を有する支持体に金属−硫黄結合を介して固定化させてなるリガンド担持体も本発明に含まれる。このリガンド担持体はタンパク質分析の用途に限定されず、糖分子との相互作用を調べるために、タンパク質以外の物質の分析用として用いることもできる。
上記リガンド担持体は、該リガンド複合体を含むリガンド複合体溶液と表面に金属膜を有する支持体とを接触させることにより、リガンド複合体のS−S結合の各S原子が、支持体表面の金属と金属−硫黄結合によって結合して、支持体表面に上記リガンド複合体が導入される。具体的には、上記リガンド複合体溶液に、タンパク質分析用の支持体を所定時間浸漬する、あるいは、上記支持体にリガンド複合体溶液を注入する(支持体表面にリガンド複合体溶液を流す)ことによって、上記リガンド複合体(リガンド複合体に含まれるリンカー化合物)のS−S結合を、上記支持体表面の金等とのAu−S結合に変換して、支持体表面に上記リガンド複合体を固定することができる。
リガンド複合体溶液に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、水、ジメチルアセトアミド(DMAc)や、これらの混合溶媒等を挙げることができる。また、浸漬時間は、0.5時間〜12時間程度であればよく、注入濃度は、1μM〜1mM程度であればよい。
このように、本発明のリガンド複合体は、S−S結合を有しているので、タンパク質分析用の支持体表面に簡単に固定化することができ、上記支持体上に糖分子を簡単に導入することができる。
本発明のリガンド担持体は、糖分子と、例えばタンパク質等の他の物質との相互作用の分析に、利用可能である。具体的には、上記リガンド担持体は、SPR測定、アフィニティクロマトグラフィー等に適用することができる。
例えば、タンパク質分析として、SPR測定を行うには、以下のようにすればよい。すなわち、金薄膜等の金属薄膜を蒸着した支持体に、本発明のリガンド複合体を固定化してなるリガンド担持体を用い、該リガンド担持体とタンパク質とを接触させ、常法に従って、表面プラズモン共鳴装置を用いて共鳴角度を測定すれば、該リガンド担持体とタンパク質との結合挙動を観測することができる。なお、SPR測定に用いる上記支持体(センサチップ)としては、例えば、ガラス、プラスチック等を用いることができ、特にガラスが好適に用いられる。また、リガンド担持体とタンパク質の接触は、例えば、タンパク質をランニングバッファーに溶解した溶液を、該リガンド担持体の表面に流入することにより行えばよい。このランニングバッファーとしては、例えば、リン酸緩衝溶液等を挙げることができる。
また、本発明のリガンド担持体は、後述の実施例に示されるように、各々のタンパク質と異なる相互作用を示すことが確認されているため、タンパク質の同定に利用することができる。つまり、本発明のリガンド担持体を用いて未知タンパク質の分析を行うことによって、そのタンパク質が糖結合性タンパク質であるか否か、また、そのタンパク質がどの種のタンパク質であるかを容易に判定することができる。なお、上記のリガンド複合体をそれぞれ固定化したリガンド担持体のうち、少なくとも2種類を一組のセットとして含むチップセットを作製すれば、より簡便にタンパク質(特に、糖鎖結合性のタンパク質)の同定を行うことができるため有用である。
ここで、本発明のリガンド担持体の利用方法について説明する。本発明のリガンド担持体は、分子間相互作用の測定(例えば、以下のようなSPR測定)にセンサチップとして使用することができる。すなわち、第1のリガンド複合体が支持体表面に固定化されてなる第1のセンサチップと、上記第1のリガンド複合体とは種類の異なる第2のリガンド複合体が支持体表面に固定化されてなる第2のセンサチップとを用いて、第1のセンサチップを用いて得られたSPR測定の検出結果と、第2のセンサチップを用いて得られたSPR測定の検出結果との差を検出し、糖分子の相互作用を観測することができる。
これらのセンサチップには、固定化される糖分子が異なっているリガンド複合体、あるいは、固定化されている糖分子は同じであるがリンカー化合物の部分が異なっているリガンド複合体を用いればよい。この種類の異なるリガンド複合体としては、例えば上述の各リガンド複合体を挙げることができる。そして、上記のリガンド複合体のうちから、リンカー化合物部分は同じ構造を有しているが、オリゴ糖の部分が異なる構造を有するもの(例えば、上記1番目のリガンド複合体と2番目のリガンド複合体のセット、あるいは、上記3番目のリガンド複合体と4番目のリガンド複合体とのセット)を選択することが好ましい。
上記SPR測定では、第1のセンサチップの糖分子に特異的に作用するタンパク質等を用いて、測定条件を一定にして、上記2つのセンサチップに作用させ、両者の共鳴角度を観測する。この両者の共鳴角度の差を検出することで、糖分子とタンパク質等との特異的な相互作用として測定することができる。
また、糖分子との相互作用を観測する物質は、タンパク質に限定はされない。
上記では、2つの種類のセンサチップを同時に測定したが、これに限定されることはなく、2種類以上のセンサチップを測定してもかまわないし、同時に測定しなくてもかまわない。また、少なくとも1つのセンサチップに糖分子を導入していないものを用いてもよい。例えば、リンカー化合物のみを固定化したものを用いてもよい。
上記のようなSPR測定を行うと、糖分子以外は同じ構造のリガンド複合体を有する少なくとも2つのセンサチップを用いて、測定をすることができるため、少なくとも2つのセンサチップ相互作用の差は、糖分子に起因したものとして観測される。従って、上記測定方法を用いれば、糖分子以外の部分と、他の物質との非特異的な相互作用を低減させ、糖分子と他の物質との特異的な相互作用を観測することができる。
また、糖分子は同じであって、リンカー化合物部分の構造が異なるリガンド複合体が固定化された2種類のセンサチップを用いて上記のようなSPR測定を行ってもよい。この場合は、センサチップ上の糖分子の集合化度の違いによるタンパク質の結合挙動を測定することができる。このようなセンサチップのセットの例としては、上記1番目のリガンド複合体と3番目のリガンド複合体とのセットを挙げることができる。
さらに、上述のSPR測定によって糖分子と他の物質との特異的な相互作用を確認した後に、SPR測定に使用したタンパク質の結合したリガンド担持体をそのまま質量分析にかければ、センサチップと結合したタンパク質を同定することができる。上記質量分析は、マトリックス支援型レーザ脱離/飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/MS)などの従来公知の質量分析計を使用し、従来公知の方法に従って実施すればよい。
上述したような手順を用いれば、本発明のリガンド複合体を用いてタンパク質の分析を行うことができる。つまり、本発明のタンパク質の分析方法は、上記の本発明のリガンド複合体を、表面に金属を有する支持体と接触させることによって、当該リガンド複合体を支持体上に固定化させたリガンド担持体を作成する工程と、上記リガンド担持体を分析対象となるタンパク質を含む溶液と接触させて相互作用させた後、例えばSPRのような分子間相互作用の測定を行う工程と、上記分子間相互作用測定の後に質量分析を行って、上記リガンド担持体に結合しているタンパク質を同定する工程とからなるものである。
このタンパク質の分析方法においては、上述したように、種類の異なるリガンド複合体が固定化された2種類以上のリガンド担持体を用いてそれぞれタンパク質の分析を行って、それぞれの結果を比較検討し各タンパク質の特性を解析することができる。
【実施例】
以下、本発明のリガンド複合体の合成についてより詳細に説明する。また、本実施例では、合成したリガンド複合体を用いてSPR測定と質量分析を行い、タンパク質の分析を行った。それについても併せて説明する。
[実施例1:リガンド複合体(化合物1〜4)の合成]
本実施例では、実施の形態において説明した1〜4番目のリガンド複合体にそれぞれ分類される4個のリガンド複合体を合成した。
(1)1番目のリガンド複合体(化合物1)の合成
上記1番目のリガンド複合体の一つである、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(2)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(18)で表されるマルトースが導入され、m1,m2,m3が2である構造を有するリガンド複合体(化合物1)を以下の手順で合成した。
上記リガンド複合体(化合物1)の合成の前段階として、まず、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護された分岐鎖を3鎖有するリンカー化合物Aの合成を行った。
先ず、下記式(21)に示すように、65℃−70℃のジメトキシエタン中、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムの存在下にて、ニトロメタン(化合物5)に対し、3単位のt−ブチルアクリレート(化合物6)をマイケル付加させ、91%の収率にて化合物7を得た。次いで、水素雰囲気下(6kg/cm2)、50℃のエタノール中にて、ラネーニッケル(Raney Ni)を用いて、上記化合物7のニトロ基を還元して、98%の収率にて化合物8を得た。
その後、CH2Cl2中、1.1当量の1−ヒドロキシ−7−アザペンゾトリアゾール(式中、HOAt)、1.1当量の水溶性カルボジイミド塩酸塩(式中、EDC・HCl)の存在下にて、上記化合物8に1.1当量のZ−グリシンを縮合させ、85%の収率にてZ−グリシン体(化合物9)を得た。
より具体的に説明すれば、上記化合物8は、文献(G.R.Newkomeら、OPPI BRIEFS,28巻,p.495,1996)の方法に従って、まず、ニトロメタン(12.2g,200mmol)を1,2−ジメトキシエタン50mLに溶解して、65−70℃に加熱し、40%水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム−メタノール溶液(2mL)を加えて、ニトロメタン溶液とした。次いで、このニトロメタン溶液の温度を75℃まで上昇させ、t−ブチルアクリレート(90.8mL,620mmol)をゆっくり滴下した後、溶液温度を70−75℃に保ちながら、40%水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム−メタノール溶液を1mLずつ4回に分けて加えて2.5時間攪拌し、ニトロメタン/t−ブチルアクリレート反応溶液を得た。このニトロメタン/t−ブチルアクリレート反応溶液中の不溶物をデカンテーションにより取り除いて濃縮し、得られた残渣をジエチルエーテルに溶かして、氷冷した10%塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び水で2回ずつ洗浄して残渣溶液を得た。その後、乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて、該残渣溶液を乾燥させ、セライトを用いて該乾燥剤を除去して、減圧濃縮した後、濃縮残渣をエタノールに溶解して再結晶を行い、化合物7(81.8g,91%)を白色針状結晶として得た。
続いて、化合物7の結晶(10g,22.4mmol)とT−1ラネーニッケル(6.0g)とを無水エタノール50mLに加え、6kg/cm2の水素雰囲気下、50℃で23時間攪拌した後、セライトを用いてT−1ラネーニッケルを濾去することによって得られた化合物7反応溶液を減圧濃縮した。この化合物7反応溶液の減圧濃縮によって得られた濃縮残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、化合物8(収量9.2g、収率98%)を白色固体として得た。
より具体的には、Z−グリシン(1.26g,6.62mol)と、HOAt(0.90g,6.62mmol)と、EDC・HCl(1.27g,6.62mmol)とを無水ジクロロメタン(28mL)に溶かしたZ−グリシン溶液に、0℃の温度条件下、化合物8(2.50g,6.02mmol)を無水ジクロロメタン(2mL)に溶かした化合物8溶液を加えて、アルゴン雰囲気下、室温で36時間攪拌して、Z−グリシン/化合物8反応溶液を得た。このZ−グリシン/化合物8反応溶液に、ジクロロメタンと10%クエン酸水溶液とを加えてジクロロメタンで抽出し、有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および水で1回ずつ洗浄し、乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、該乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。この減圧濃縮によって得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、化合物9(収量3.09g、収率85%)を白色固体として得た。
得られた上記化合物9のESI−MS(positive)測定(飛行時間型質量分析計測定)を行ったところ、m/z(質量/電荷比)629.4[(M+Na)+]であった。また、核磁気共鳴(1H−NMR、400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。これにより、化合物9の構造を確認することができた。なお、化合物9の分子質量は606.35である。
次に、下記式(22)にて示すように、CH2Cl2/H2O=10/1の混合溶媒中にて、トリフルオロ酢酸(以下、TFAと記載する)を用いて、上記化合物9のt−ブトキシカルボニル基(−COOC(CH3)3基;式(22)中、tBu)を脱保護して、収率95%にて化合物10を得た。
その後、4.5当量のペンタフルオロフェニルジフェニルホスフェート(式中、FDPP)、11当量のジイソプロピルエチルアミン(式中、DIPEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下にて、上記化合物10とBoc基によってアミノ基が保護されたm−フェニレンジアミン誘導体(化合物11、10当量)とを縮合させ、収率99%にてN−Bocアミン誘導体(化合物12)を得た。続いて、メタノール(式中、MeOH)中、Pd/C(活性炭担持パラジウム)の存在下にて接触水素還元を行い、化合物12に縮合した上記Z−グリシンのベンジルオキシカルボニル基(式中、Z基)を脱保護して、収率79%にて化合物13を得た。
上記化合物1.0〜13を得るために、具体的には、以下の操作を行った。
すなわち、化合物10を得るために、化合物9(2.98g,4.90mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶かし、−10℃でTFA(15mL)と水(1.5mL)とを加えた後、室温で1.5時間攪拌して化合物9反応溶液を得た。該化合物9反応溶液を減圧濃縮した後、氷浴中で濃縮残渣にpHが5になるまで10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、さらにpHが2になるまで濃塩酸を加えて、白色固体を析出させた。得られた白色固体を水で洗浄し、化合物10(収量2.04g、収率95%)を白色固体として得た。
得られた上記化合物10のESI−MS(negative)測定を行ったところ、m/z437.1[(M−H)−]であった。また、核磁気共鳴(1H−NMR、400MHz,d6−DMSO)測定を行ったところ、
であった。これらにより、化合物10の構造を確認することができた。なお、化合物10の分子質量は438.16である。
また、化合物11を得るために、m−フェニレンジアミン(0.50g,4.62mmol)をメタノール(35mL)に溶かし、0℃で(Boc)2O(1.06mL,4.62mmol)とトリエチルアミン(0.65mL,4.65mmol)とを加えた後、室温で24時間攪拌して、減圧濃縮を行った。該減圧濃縮によって得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム/アセトン=10/1)で精製し、化合物11(収量665mg、収率68%)を白色固体として得た。
上記化合物11の、ESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z231.2[(M+Na)+]であった。また、1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。これらにより、化合物11の構造を確認することができた。なお、化合物11の分子質量は208.12である。
また、化合物12を得るために、上記化合物10(100mg,228μmol)、上記化合物11(475mg,2.28mmol)、FDPP(394mg,1.03mmol)、及びジイソプロピルエチルアミン(447μL,2.57mmol)を無水ジメチルホルムアミド(2mL)に溶かし、アルゴン雰囲気下で、室温で29時間攪拌した後、酢酸エチル及び水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を0.5N塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で1回ずつ洗浄して、乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させて、乾燥反応溶液を得た。得られた乾燥反応溶液から、乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム/アセトン=3/1)で精製し、化合物12(収量228mg、収率99%)を白色固体として得た。
上記化合物12のESI−MS(positive)測定を行ったところm/z1009.5[(M+H)+]であった。また、1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。これらにより、化合物12の構造を確認することができた。なお、化合物12の分子質量は1008.50である。
また、化合物13は、具体的には次のようにして得た。すなわち、化合物12(200mg,198μmol)をメタノール(3mL)に溶解し、10%Pd/C(62.3mg)を加え、水素雰囲気下、室温で15時間攪拌した後、上記Pd/Cを濾去して、減圧濃縮を行った。該減圧濃縮によって得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム/メタノール=8/1)で精製して、化合物13(収量136mg、収率78%)を白色固体として得た。
上記化合物13のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z875.5[(M+H)+]であった。また、1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。これらにより、化合物13の構造を確認することができた。なお、化合物13の分子質量は874.46である。
さらに、下記式(23)にて示すように、1.0当量のEDC・HCl、1.0当量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(式(23)中、HOBt)、CH2Cl2中、上記化合物13を、1.0当量のチオクト酸(化合物14)と縮合させ、収率75%にてチオクト酸誘導体(化合物15)を得た。
上記にて得られた化合物15を、CH2Cl2中、トリメチルシリルクロリド(式中、TMSCl)、フェノール(PhOH)の存在する酸性条件下にて、上記Boc基を脱保護し、芳香族アミノ基を有する炭化水素誘導鎖を3鎖含んでなるリンカー化合物として、化合物Aを得た(収率32%)。
具体的に、化合物15および化合物Aを得るために以下の操作を行った。
すなわち、化合物15を得るために、化合物14(23.6mg,114mol)とHOBt(15.4mg,114mmol)を無水ジクロロメタン(2.3mL)に溶解し、0℃の温度条件下、化合物13(2.50mg,6.02mmol)を加えて、アルゴン雰囲気下で、遮光して室温で36時間攪拌した後、10%クエン酸水溶液とを加えてからクロロホルムで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。その後、該乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム/メタノール=40/1)で精製して、化合物15(収量91.0mg、収率75%)を白色固体として得た。
上記化合物15のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z1085.5[(M+H)+]であった。また、1H−NMR(400MHz,CD3Cl)測定を行ったところ、
であった。これらにより、化合物15の構造を確認することができた。なお、化合物15の分子質量は1062.49である。
また、化合物Aを得るために、トリメチルシリルクロリド(0.25mL,2.64mmol)をジクロロメタン(0.49mL)に溶解し、フェノール(549mg,5.83mmol)をジクロロメタン(1.46mL)に溶解したフェノール溶液を加えて攪拌した後、さらに、化合物15(34.7mg,32.6μmol)を加え、室温で、遮光下1.5時間攪拌して、化合物15反応溶液を得た。続いて、該化合物15反応溶液にクロロホルムを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄して、黄色固体を析出させた。析出した黄色固体を酢酸に溶解して4℃まで冷却し、凝集した固体を濾別して、化合物A(収量7.9mg、収率32%)を白色固体として得た。
上記化合物AのESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z763.6[(M+H)+]であった。また、1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。これらにより、化合物Aの構造を確認することができた。なお、化合物Aの分子質量は762.33である。
続いて、このように得られたリンカー化合物Aを用いて、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(2)にて表され、m1,m2,m3が2である構造を有するリガンド複合体(化合物1)を下記式(24)の手順にて合成した。
式(24)に示すように、得られたリンカー化合物Aと、上記式(18)にて表されるオリゴ糖である市販のマルトース水和物(4.5当量)とを、H2O/ジメチルアセトアミド(式中、DMAc)/酢酸(AcOH)=1/1/0.1の混合溶媒に溶解し、pH4〜4.5、37℃にて、シッフ塩基を形成させた後、溶媒にAcOHを加え、10当量の95%NaBH3CNを加えて、pH3〜4.5、37℃にて、還元アミノ化反応を行った。その後、得られた化合物をSephadex G−50(アマーシャムバイオシステムズ社製)を用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製し、さらに脱塩処理を行って、末端にα−グルコピラノースを3単位含んでなるリガンド複合体として化合物1を得た。上記化合物1の同定は、MALDI−TOF/MSおよびNMRによって行った。
MALDI−TOF/MSの結果は、m/z;1764.41[(M+Na)+]であった。また1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。これらの結果から化合物1の構造を確認することができた。なお、この化合物1の分子質量は1740.70である。
(2)2番目のリガンド複合体(化合物2)の合成
上記2番目のリガンド複合体の一つである、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(2)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(19)で表されるラクトースが導入され、m1,m2,m3が2である構造を有するリガンド複合体(化合物2)を以下の手順で合成した。
上記リガンド複合体(化合物2)の合成においては、まず、リンカー化合物Aを、上述の1番目のリガンド複合体の合成における手順と同じ手順で合成した。
続いて、得られたリンカー化合物Aを用いて、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(2)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(19)で表されるラクトースが導入され、m1,m2,m3が2である構造を有するリガンド複合体(化合物2)を下記式(25)の手順にて合成した。
式(25)に示すように、上記の方法で得られたリンカー化合物Aと、上記式(19)にて表されるオリゴ糖である市販のラクトース水和物(4.5当量)とを、H2O/ジメチルアセトアミド(式中、DMAc)/酢酸(AcOH)=1/1/0.1の混合溶媒に溶解し、pH4〜4.5、37℃にて、シッフ塩基を形成させた後、溶媒にAcOHを加え、10当量の95%NaBH3CNを加えて、pH3〜4.5、37℃にて、還元アミノ化反応を行った。その後、得られた化合物をSephadex G−50(アマーシャムバイオシステムズ社製)を用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製し、さらに脱塩処理を行って、末端にβ−ガラクトピラノースを3単位含んでなるリガンド複合体として化合物2を得た。上記化合物2の同定は、MALDI−TOF/MSおよびNMRによって行った。
MALDI−TOF/MSの結果は、m/z1766.92[(M+Na)+]であった。また1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。これらの結果から化合物2の構造を確認することができた。なお、この化合物2の分子質量は1740.70である。
(3)3番目のリガンド複合体(化合物3)の合成
上記3番目のリガンド複合体の一つである、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(3)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(18)で表されるマルトースが導入され、m4,m5が2である構造を有するリガンド複合体(化合物3)を以下の手順で合成した。
上記リガンド複合体(化合物3)の合成の前段階として、まず、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護された分岐鎖を2鎖有するリンカー化合物Bの合成を行った。
下記式(26)にて示すように、アミノ安息香酸(B−1)のアミノ基をBoc基で保護したアミノ安息香酸誘導体(B−2)とジエチレントリアミン(B−3)をHOBtとEDC−HClを用いて縮合し、ジアミド体(B−4)を79%の収率で得た。DMF中、縮合剤としてFDPPを用いて、ジアミド体(B−4)とアミノ基をZ基で保護したグリシン(Z−Gly)とを反応させ、(B−5)を75%の収率で得た。Z基を接触水素還元により除去して(B−6)とした後、チオクト酸(B−7)と縮合させ、(B−8)を97%の収率で得た。最後に、TFAによってBoc基を除去し、芳香族アミノ基を2単位有するリンカー化合物Bを95%の収率で得た。
より具体的に説明すれば、上記化合物B−2は、4−アミノ安息香酸(B−1)(2.00g,14.6mmol)をメタノール140mLに溶解させ、(Boc)2O(6.7mL,29.1mmol)とトリエチルアミン(3.06mL、21.9mmol)を加えて室温で16時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣にヘキサンと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、水層を抽出した。この水層に10%クエン酸ナトリウム水溶液をpH=4になるまで加え、白色の固体を析出させた。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、水で洗浄した後、減圧濃縮した。残査を酢酸エチル−ヘキサンで再結晶して化合物B−2(3.25g,収率:91.3%)を無色結晶として得た。
得られた上記化合物B−2の1H−NMR(270MHz,CD3OD)測定を行ったところ、
であった。また、上記化合物B−2のESI−MS(negative)測定を行ったところ、m/z236.20[(M−H)−]であった。これによって化合物B−2の構造を確認することができた。なお、この化合物B−2の分子質量は237.25である。
続いて、上記化合物B−2(1.30g、5.46mmol)、HOBt(0.738g、5.46mmol)およびEDC・HCl(1.05g,5.46mmol)を無水ジクロロメタン(30mL)に溶解させ、アルゴン雰囲気下に0℃で50分間攪拌した。この溶液にジエチレントリアミン(B−3)(0.283mL,2.60mmol)を加え、遮光下に室温で終夜攪拌し、白色結晶を得た。この白色結晶を濾取した後、メタノールから再結晶して、化合物B−4(1.23g,収率:87.4%)を白色結晶として得た。
得られた上記化合物B−4の1H−NMR(400MHz,CD3OD)測定を行ったところ、
であった。また、上記化合物B−4のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z542.64[(M+H)+]であった。これによって化合物B−4の構造を確認することができた。なお、この化合物B−4の分子質量は541.60である。
続いて、上記化合物B−4(1.03g,1.85mmol)、Z−グリシン(0.430g,2.04mmol)およびFDPP(1.07mg,2.78mmol)を無水ジメチルホルムアミド(8mL)に溶解した後、ジイソプロピルエチルアミン(0.36mL,2.78mmol)を加え、アルゴン雰囲気下に室温で20時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して得られた残渣をクロロホルムに溶解し、有機層を10%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で順に洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,クロロホルム:アセトン=1:2)で精製して、化合物B−5(1.02g,収率:75.0%)を白色固体として得た。
得られた上記化合物B−5の1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。また、上記化合物B−5のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z755.36[(M+Na)+]であった。これによって化合物B−5の構造を確認することができた。なお、この化合物B−5の分子質量は732.32である。
続いて、上記化合物B−5(0.193g,0.264mmol)をメタノール(3mL)に溶解し、10%Pd/C(120mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間攪拌した後、Pd/Cを濾去して減圧濃縮し、化合物B−6(0.230g,収率:94.4%)を白色固体として得た。
得られた上記化合物B−6の1H−NMR(400MHz,d6−DMSO)測定を行ったところ、
であった。また、上記化合物B−6のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z599.33[(M+H)+]であった。これによって化合物B−6の構造を確認することができた。なお、この化合物B−6の分子質量は598.39である。
続いて、チオクト酸(B−7)(41.0mg,0.200mmol)、HOBt(35.0mg,0.200mmol)およびEDC・HCl(42.1g,0.200mmol)をジメチルホルムアミド(3mL)に溶解し、窒素雰囲気下に遮光して0℃で1.5時間攪拌した。次いで、上記化合物B−6(0.1g,0.167mmol)をジメチルホルムアミド(2mL)に溶解して、上記のジメチルホルムアミド溶液に滴下した後、室温で19時間攪拌した。反応溶液にクロロホルムを加え、有機層を抽出し、この有機層を10%クエン酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,クロロホルム:メタノール=7:1)で精製して、化合物B−8(0.128g,収率:97.0%)を白色固体として得た。
得られた上記化合物B−8の1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、
であった。また、上記化合物B−8のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z809.33[(M+Na)+]であった。これによって化合物B−8の構造を確認することができた。なお、この化合物B−8の分子質量は787.30である。
上記化合物B−8(0.128g,0.16mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解し、TFA(2mL)を加えて、遮光下0℃で1.5時間攪拌した後、減圧濃縮を行い、得られた残渣をメタノールに溶解して、Dowex Marathon A(OH− form)のカラムに通して中和し、減圧濃縮し、化合物B(89.3mg,収率:95.2%)を黄色固体として得た。
得られた上記化合物Bの1H−NMR(400MHz,d6−DMSO)測定を行ったところ、
であった。また、上記化合物BのESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z587.24[(M+H)+]であった。これによって化合物Bの構造を確認することができた。なお、この化合物Bの分子質量は586.24である。
続いて、得られたリンカー化合物Bを用いて、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(3)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(18)で表されるマルトースが導入され、m4,m5が2である構造を有するリガンド複合体(化合物3)を下記式(27)の手順にて合成した。
式(27)に示すように、上記の方法で得られたリンカー化合物Bと、上記式(18)にて表されるオリゴ糖である市販のマルトース水和物(4.5当量)とを、H2O/ジメチルアセトアミド(式中、DMAc)/酢酸(AcOH)=1/1/0.1の混合溶媒に溶解し、pH4〜4.5、37℃にて、シッフ塩基を形成させた後、溶媒にAcOHを加え、10当量の95%NaBH3CNを加えて、pH3〜4.5、37℃にて、還元アミノ化反応を行った。その後、得られた化合物をSephadex G−50(アマーシャムバイオシステムズ社製)を用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製し、さらに脱塩処理を行って、末端にα−グルコピラノースを2単位含んでなるリガンド複合体として化合物3を得た。上記化合物3の同定は、MALDI−TOF/MSおよびNMRによって行った。
MALDI−TOF/MSの結果は、m/z1239.36[(M+H)+]であった。また1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。これらから結果から化合物3の構造を確認することができた。なお、この化合物3の分子質量は1238.48である。
(4)4番目のリガンド複合体(化合物4)の合成
上記4番目のリガンド複合体の一つである、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(3)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(19)で表されるラクトースが導入され、m4,m5が2である構造を有するリガンド複合体(化合物4)を以下の手順で合成した。
上記リガンド複合体(化合物4)の合成の前段階として、まず、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護された分岐鎖を2鎖有するリンカー化合物Bの合成を上記のように行った。続いて、得られたリンカー化合物Bを用いて、上記一般式(12)にて表される構造において、n1が1であり、Xが一般式(3)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rに上記式(19)で表されるラクトースが導入され、m4,m5が2である構造を有するリガンド複合体(化合物4)を下記式(28)手順にて合成した。
式(28)に示すように、上記の方法で得られたリンカー化合物Bと、上記式(19)にて表されるオリゴ糖である市販のラクトース水和物(4.5当量)とを、H2O/ジメチルアセトアミド(式中、DMAc)/酢酸(AcOH)=1/1/0.1の混合溶媒に溶解し、pH4〜4.5、37℃にて、シッフ塩基を形成させた後、溶媒にAcOHを加え、10当量の95%NaBH3CNを加えて、pH3〜4.5、37℃にて、還元アミノ化反応を行った。その後、得られた化合物をSephadex G−50(アマーシャムバイオシステムズ社製)を用いて、ゲル濾過クロマトグララィーにより精製し、さらに脱塩処理を行って、末端にβ−ガラクトピラノースを2単位含んでなるリガンド複合体として化合物4を得た。上記化合物4の同定は、MALDI−TOF/MSおよびNMRによって行った。
MALDI−TOF/MSの結果は、m/z1261.15[(M+Na)+]であった。また1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。これらの結果から化合物4の構造を確認することができた。なお、この化合物4の分子質量は1238.48である。
[実施例2:SPR測定と質量分析によるタンパク質の分析]
実施例2では、実施例1にて作製した各リガンド複合体(化合物1〜4)を用いて、タンパク質の糖鎖との結合特性について、SPR測定および質量分析によって解析した。その手順について以下に説明する。
図1には、本実施例におけるタンパク質の分析の手順を工程1〜工程12として示す。図1において、工程1〜工程7は、各リガンド複合体(化合物1〜4)を、金(Au)でコーティングされた支持体表面に固定化させてリガンド担持体(センサチップ)を作製する工程である。そして、上記リガンド担持体を、分析対象となるタンパク質を含む溶液と接触させる工程8の後に実施される工程が、SPR測定を行う工程である。さらに、支持体表面を水で洗う工程10の後に実施される工程が、質量分析(MS)によってタンパク質を同定する工程である。
本実施例において、SPR測定は日本レーザ電子社製のSPR−8Bを用いて行った。また、質量分析はアプライドバイオ社製のマトリックス支援型レーザ脱離/飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/MS)であるVoyager RP−DEを用いて行った。
分析に用いたタンパク質は、グルコピラノース結合性のレクチンタンパク質としてConcanavalin A(ConAと略記する)、PSA、LCA、および、ガラクトピラノース結合性のレクチンタンパク質としてRCA、PNAの5種類であった。そして、ネガティブコントロールとしてウシ血清アルブミン(BSA)を用いた。
まず、図1に示す工程1〜工程7に基づいて、上記化合物1〜4をそれぞれ固定化した4種類のリガンド担持体を作製した。続いて、上記の5種のレクチンタンパク質およびBSAを、それぞれPBSバッファーに溶解してタンパク質溶液を調製した。その後、図1に示す工程8を行い、各リガンド担持体と各タンパク質溶液とをそれぞれ接触させて相互作用させた。続いて、SPR測定を行い、リガンド担持体とタンパク質との結合測定を行った。
α−グルコピラノースを固定化したリガンド担持体(センサチップ)を用いたレクチンタンパク質の結合挙動の結果を図2、図3および表1に示した。図2には化合物3(Di−valent type)のリガンド複合体を固定化したセンサチップの結果を示し、図3には化合物1(Tri−valent type)のリガンド複合体を固定化したセンサチップの結果を示した。図2および図3とも、(a)はConAの結合挙動結果、(b)はPSAの結合挙動結果、(c)はLCAの結合挙動結果を示している。
図2および図3から明らかなように、ConAおよびPSAについては、リガンド複合体のリンカー部分の構造の違いによらず同様の結合挙動を示した。しかし、LCAについては、3単位の糖分子を有するリガンド複合体である化合物1とは結合することが示されたが、2単位の糖分子を有するリガンド複合体化合物3とは結合しないことが示された。図には示していないが、ネガティブコントロールであるBSAは化合物1または3を固定化したチップには結合しないことが分った。
また、表1には、それぞれのタンパク質の結合挙動をまとめた。αグルコース結合性のレクチンタンパク質に、特異的結合が観測され、結合定数の算出も可能であった。Di−valentリガンド結合体を用いた場合よりも、Tri−valentリガンド結合体を用いた場合の方が解離定数(KD)が同等または小さく算出されており、1つのリガンド複合体当たりの糖鎖の数が増えることによって、結合活性が上昇していることが明らかとなった。
β−ガラクトピラノースを固定化したリガンド担持体(センサチップ)を用いたレクチンタンパク質の結合挙動の結果を図4、図5および表2に示した。図4には化合物4(Di−valent type)のリガンド複合体を固定化したセンサチップの結果を示し、図5には化合物2(Tri−valent type)のリガンド複合体を固定化したセンサチップの結果を示した。図4および図5とも、(a)はRCAの結合挙動結果、(b)はPNAの結合挙動結果を示している。
図4および図5から明らかなように、RCAおよびPNAはリガンド複合体のリンカー部分の構造の違いによらず同様の結合挙動を示した。図には示していないが、ネガティブコントロールであるBSAは化合物2または4を固定化したチップには結合しないことが分った。
また、表2には、それぞれのタンパク質の結合挙動をまとめた。βガラクトース結合性のレクチンタンパク質に、特異的結合が観測され、結合定数の算出も可能であった。なお、ConAについては化合物3を用いて作成したチップにおいて、タンパク質の濃度に依存しない非特異的な結合挙動が観測された。Di−valentリガンド結合体を用いた場合よりも、Tri−valentリガンド結合体を用いた場合の方が解離定数(KD)が同等または小さく算出されており、1つのリガンド複合体当たりの糖鎖の数が増えることによって、結合活性が上昇していることが明らかとなった。
以上の結果から、糖鎖の集合化度によってタンパク質の糖鎖に対する結合活性が異なる場合があることが明らかとなり、レクチンタンパク質の糖鎖結合特性もこの系によって測定することが出来ることが示された。
さらに、このSPR測定に供したリガンド担持体のうち、タンパク質との結合が確認されたものについては、工程9および工程10を行った後、質量分析計に供することで、リガンド担持体に結合しているタンパク質の同定を行った。なお、質量分析を行う際には、結合測定を行った部分にマトリックス溶液(飽和αCHCAまたはシナピン酸)を乗せ、乾燥させてから質量分析計に供し、分子質量の測定を行った。
上記の一連の工程で、リガンド担持体とタンパク質との結合挙動を確認した後、工程11においてリガンド担持体とタンパク質との結合を解離させた後、工程12においてPBSバッファーで洗浄を行った。その後、別のタンパク質溶液を用いて、再度工程8〜工程10までを繰り返し、SPR測定および質量分析を行った。この作業を各リガンド担持体および各タンパク質について繰り返し実施した。
質量分析の結果を図6および表3に示した。図6(a)にはConAの分析結果を示し、図6(b)にはPNAの分析結果を示した。
図6(a)および図6(b)から明らかなように、それぞれのタンパク質を構成するサブユニットの分子質量に相当する1価と2価のイオンピークが観測された。
また、表3には他のレクチンタンパク質の結果も合わせてまとめた。各々のレクチンタンパク質のサブユニットの1価または2価の分子質量に近いイオンピークが観測された。ただし、RCAについてはサブユニットの分子質量が3万ダルトン以上と大きいために、用いた質量分析計ではそのイオンピークを検出することは出来なかった。より高性能なMALDI−TOF/MS機器を用いれば検出は可能であろう。
この質量分析の結果、RCAを除いて、結合した各々のレクチンタンパク質に相当する分子量が観測され、レクチンタンパク質の同定に成功した。
以上のように、本実施例の結果から、本発明にかかるリガンド複合体を用いてSPR測定および質量分析を行ってタンパク質の分析を行えば、タンパク質を正確に同定することができることが確認された。また、本実施例の結果から、末端に同じ糖鎖を有しているリガンド担持体であっても、糖鎖の集合化度の差によってタンパク質との結合活性が異なることが確認された。つまり、本発明のタンパク質の分析方法は、糖鎖の集合化度とタンパク質の結合活性との関係の解析にも利用することができると考えられる。このような糖鎖の集合化度とタンパク質の結合活性との関係の解析は、既存の方法では判別不可能であるため、本発明の有用性をより高めるものと言える。
[実施例3:リガンド複合体(化合物21、22)の合成]
本実施例では、実施の形態において説明した5番目および6番目のリガンド複合体に分類されるリガンド複合体を合成した。すなわち、5番目のリガンド複合体である上記一般式(13)にて表される構造においてn2が4であり、上記Xが一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにグルコースが導入された構造を有するリガンド複合体(化合物21)、および、6番目のリガンド複合体である上記一般式(13)にて表される構造においてn2が4であり、上記Xが一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにマルトースが導入された構造を有するリガンド複合体(化合物22)を以下の手順で合成した。
〔測定方法、試薬等〕
1H−NMRスペクトルの測定には、JEOL−Delta600 Spectrometerを用いた。化学シフトは、CDCl3の場合はテトラメチルシラン(0.00ppm)を基準物質にしてδ値で表した。D2Oの場合はDHO(4.65ppm)を基準物質にしてδ値で表した。質量分析はPerSeptive Biosystem MarinerTM Biospectrometry Workstationを用いて測定した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、Silicagel 60(Merck、0.040−0.063mm)を用いて行った。薄層クロマトグラフィーはPrecoated Silicagel 60 F254(Merck、0.5mm)を使用した。全ての試薬、脱水溶媒は関東化学株式会社製のものを購入して使用した。
(1)化合物16の合成
以下、式(29)にしたがって説明する。
まず、式(29)の化合物16を以下の手順で合成した。
ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル(14.57ml,80mmol)とBF3・Et2O(252ml,2mmol)を無水ジクロロメタン50mlに溶解し、0℃でジアゾ酢酸エチル(1.8ml,17.35mmol)を滴下した後、室温で70分間攪拌した。反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液20mlを加え、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣をクロマトグラフィー(600g、ヘキサン:酢酸エチル=1:3)で精製してエチル化体化合物(2.26g,収率:47%)を無色液体として得た。
上記のエチル体化合物(2.15g,7.66mmol)とDMAP(41.7mg,337mmol)を無水ピリジン8mlに溶解した。この溶液に0℃でp−トルエンスルホン酸クロリド(1.75g,9.19mmol)を無水ジクロロメタン8mlに溶解した溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応溶液にジクロロメタンと氷水を加えてジクロロメタンに抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で1回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣をクロマトグラフィー(100g、クロロホルム:アセトン=4:1)で精製してトシル体化合物(2.59g,収率:78%)を黄色液体として得た。
上記のトシル体化合物(1.01g,2.31mmol)とアジ化ナトリウム(1.53g,2.31mmol)を無水ジメチルホルムアミド50mlに溶解し、遮光して120℃で窒素雰囲気下10時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで抽出し、水、飽和食塩水で有機層を1回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣をクロマトグラフィー(10g、クロロホルム:アセトン=2:1)で精製してアジド体化合物(638mg,収率:90%)を黄色液体として得た。
上記のアジド体化合物(614mg,2.01mmol)をメタノール24mlに溶解し、遮光下0℃で1N NaOH 4.3mlを加えた後、室温で21時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、濃縮残渣にクロロホルムを加えた後、1N HClをpH=2になるまで加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、化合物16(549mg,収率:90%)を無色液体として得た。
この化合物16について1H−NMR(400MHz,CDCl3)測定を行ったところ、δ6.19(1H,bs,CO2 H),4.16(2H,s,OCH 2CO2H),3.75−3.64(12H,m,OCH 2CH 2O),3.68(2H,m,N3CH2CH 2),3.41(2H,t,J=5.1Hz,N3CH 2)であった。また、上記化合物16のESI−MS(negative)測定を行ったところ、m/z328.14[(M+Na)+]であった。これによって化合物16の構造を確認することができた。なお、この化合物16の分子質量は277.13である。
(2)化合物17の合成
化合物16(228mg,0.823mmol)を無水ジクロロメタン(4ml)に溶解し、室温、HOBt(135mg,0.987mmol)、EDC・HCl(192mg,0.987mmol)、化合物11(205mg,0.987mmol)を0°Cで順に加え、遮光下20時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して得られた濃縮残渣をクロロホルムで抽出し、有機層を10%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回ずつ洗浄して、乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。減圧濃縮によって得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(80g,クロロホルム:メタノール=10:1)で精製して、化合物17(367mg,収率:95%)を黄色オイル状物質として得た。この化合物17のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z490.24[(M+Na)+]であった。これによって化合物17の構造を確認することができた。なお、この化合物17の分子質量は467.24である。
(3)化合物18の合成
化合物17(29mg,0.062mmol)をメタノール(3ml)に溶解し、10%Pd/C(5.0mg)を加え、水素雰囲気下、室温で9時間攪拌した。上記Pd/Cを濾去して濾液を減圧濃縮した。得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1.5g,クロロホルム:メタノール=7:1)で精製して、化合物18(22mg,収率:82%)を黄色オイル状物質として得た。この化合物18のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z442.27[(M+H)+]であった。これによって化合物18の構造を確認することができた。なお、この化合物18の分子質量はC21H35N3O7:441.25である。
(4)化合物19の合成
チオクト酸(12.6mg、0.061mmol)を無水ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、HOBt(8.3mg,0.061mmol)、EDC・HCl(11.8mg,0.061mmol)を順に加え、遮光下室温に戻して2時間攪拌した。化合物18(22.4mg、0.051mmol)を無水ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解して加え、室温で遮光下1日撹拌した。反応液にトルエンを加えて、濃縮し、有機層を10%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3g、クロロホルム:メタノール=10:1)で精製し、化合物19を黄色の油状物として得た。収量は27mg(84%)であった。この化合物19のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z652.28[(M+Na)+]であった。これによって化合物19の構造を確認することができた。なお、この化合物19の分子質量は629.28である。
(5)化合物20の合成
化合物19(31mg,0.050mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解し、0℃でTFA(147μl)を加え、同温で3時間攪拌した。反応溶液を濃縮後、トルエンで共沸した。得られた濃縮残渣をジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミン水溶液を加えて、水相のpHを8とした後、有機相を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10g、クロロホルム:メタノール=5:1)で精製し、化合物20を黄色の油状物として得た。収量は26.1mg(59%)であった。この化合物20について1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl3)測定を行ったところ、
であった。また、化合物20のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z552.31[(M+Na)+]であった。以上から化合物20の構造を確認することができた。なお、この化合物20の分子質量は529.23である。
(6)リガンド複合体(化合物21)の合成
以下、式(30)にしたがって説明する。
化合物20(15.5mg,29.3μmol)とグルコース(5.8mg,32.2μmol)をDMAc/水(1:1,1ml)に溶解し、酢酸(200μl)を加え、37℃で2日放置した。反応液にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.5mg,87.9μmol)を加え、37℃でさらに6日間放置した。反応液を濃縮した。得られた残渣は、ODSカラムクロマトグラフィー(Chromatorex ODS,30g,メタノール/水=50/50)によって精製した。化合物21は白色の固体として得られた。収量は4.54mg(22%)であった。
この化合物21について1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。MALDI−TOF−MS測定を行ったところ、m/z694.66[(M+H)+]であった。これらによって化合物21の構造を確認することができた。なお、この化合物21の分子質量は693.30である。
(7)リガンド複合体(化合物22)の合成
以下、式(31)にしたがって説明する。
化合物20(9.0mg,17.0μmol)とマルトース(5.8mg,17.0μmol)をメタノール/水(1:1,1ml)に溶解し、酢酸(50μl)を加え、37℃で24時間放置した。反応液に酢酸(450μl)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(3.2mg,51.0μmol)を加え、37℃でさらに120時間放置した。反応液を濃縮した。得られた残渣は、ODSカラムクロマトグラフィー(Chromatorex ODS,30g,メタノール/水=50/50)によって精製した。化合物22は白色の固体として得られた。収量は2.36mg(16%)であった。
この化合物22について1H−NMRスペクトル(600MHz,D2O)測定を行ったところ、
−NHCOCH 2CH2−),1.76−1.69(m,1H,−SCH2 CH 2(1H)−),1.52−1.31(m 4H,−COCH2 CH 2CH2 CH 2−),1.18−1.10(m,2H,−COCH2CH2 CH 2CH2−)であった。MALDI−TOF−MS測定を行ったところ、m/z878.39[(M+Na)+]であった。これらによって化合物22の構造を確認することができた。なお、この化合物22の分子質量は855.35である。
〔実施例4:リガンド複合体(化合物26、27)の合成〕
本実施例では、実施の形態において説明した7番目および8番目のリガンド複合体に分類されるリガンド複合体を合成した。すなわち、7番目のリガンド複合体の一つである上記一般式(14)にて表される構造においてn1が3であり、上記Xが一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにグルコースが導入された構造を有するリガンド複合体(化合物26)、および、8番目のリガンド複合体の一つである上記一般式(14)にて表される構造においてn1が3であり、上記Xが一般式(4)にて表される構造を備え、R’が水素(H)であり、Rにマルトースが導入された構造を有するリガンド複合体(化合物26)を以下の手順で合成した。
なお、測定方法、試薬等については、上記実施例3に記載のものと同じである。
(1)化合物24の合成
以下、式(32)にしたがって説明する。
γ−メルカプト酪酸の2量体(化合物23)(344mg,1.44mmol)を無水ジクロロメタン(25ml)に溶解し、室温、アルゴン雰囲気下でHOBt(359mg,2.64mmol)、EDC・HCl(508mg,2.64mmol)、N−Boc−フェニレンジアミン(化合物11)(502mg,2.4mmol)を0°Cで順に加え、遮光下17時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して得られた濃縮残渣をクロロホルムで抽出し、有機層を10%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回ずつ洗浄して、乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。減圧濃縮によって得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(50g,トルエン:酢酸エチル=5:1)で精製して、化合物24(220mg,収率:30%)を黄色の油状物として得た。この化合物24のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z641.25[(M+Na)+]であった。これによって化合物24の構造を確認することができた。なお、この化合物24の分子質量は618.25である。
(2)化合物25の合成
化合物24(103mg,11.67mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解し、0℃でTFA(247μl)を加え、同温で1時間攪拌した。反応溶液を濃縮後、トルエンで共沸した。得られた濃縮残渣を酢酸エチルに溶解し、トリエチルアミン水溶液を加えて、水相のpHを8とした後、有機相を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5mg、クロロホルム:アセトン=5:1)で精製し、化合物25を黄色の油状物として得た。収量は46.8mg(67%)であった。この化合物25について1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl3)測定を行ったところ、
であった。また、化合物25のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z419.06[(M+H)+]であった。以上から化合物25の構造を確認することができた。なお、この化合物25の分子質量は418.15である。
(3)リガンド複合体(化合物26)の合成
以下、式(33)にしたがって説明する。
化合物25(5.04mg,12μmol)とグルコース(4.79mg,26μmol)をメタノール/水(1:1,1ml)に溶解し、酢酸(50μl)を加え、37℃で4時間放置した。反応液に酢酸(950μl),メタノール/水(1:1,1ml),シアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.14mg,72μmol)を加え、37℃でさらに72時間放置した。反応液を濃縮した。得られた残渣は、LH−20を用いたカラムクロマトグラフィー(50g,メタノール/水=50/50)によって精製した。化合物26は白色の固体として得られた。収量は2.58mg(29%)であった。
この化合物26について1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。MALDI−TOF−MS測定を行ったところ、m/z747.21[(M+H)+]であった。これらによって化合物26の構造を確認することができた。なお、この化合物26の分子質量は746.29である。
(4)リガンド複合体(化合物27)の合成
以下、式(34)にしたがって説明する。
化合物25(5.1mg,12μmol)とマルトース(9.2mg,26μmol)をメタノール/水(1:1,1ml)に溶解し、酢酸(50μl)を加え、37℃で4時間放置した。反応液に酢酸(950μl),メタノール/水(1:1,1ml),シアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.22mg,72μmol)を加え、37℃でさらに120時間放置した。反応液を濃縮した。得られた残渣は、LH−20を用いたカラムクロマトグラフィー(50g,メタノール/水=50/50)によって精製した。化合物27は白色の固体として得られた。収量は2.74mg(21%)であった。
この化合物27について1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行ったところ、
であった。MALDI−TOF−MS測定を行ったところ、m/z1093.27[(M+Na)+]であった。これらによって化合物27の構造を確認することができた。なお、この化合物27の分子質量は1070.39である。
[実施例5]
上記一般式(9)にて表される構造においてn1およびqが0であり、上記群(20)に示される糖鎖が導入されたリガンド複合体を合成した。なお、測定方法、試薬等は、上記実施例4と同じである。
(1)リガンド複合体(化合物30)の合成
リガンド複合体(化合物30)の合成の手順を、式(35)にしたがって説明する。
化合物28(2.47mg,8.24μmol)とシアル酸含有三糖(化合物29、5.11mg,7.57μmol)をジメチルアセトアミド/水(1:1,1.0ml)に溶解し、酢酸(100μl)を加え、37℃で10時間放置した。反応液にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(1.55mg,24.7・mol)を加え、37℃でさらに72時間放置した。反応液にアセトン3mlを加え、未反応のジアノ化ホウ素ナトリウムをクエンチした後、濃縮した。得られた残渣は、Chromatorex ODSを用いたカラムクロマトグラフィー、HPLC(カラム:DAISO SP−120−5−ODS−BP)、Sephadex G−25を用いたクロマトグラフィーを順に行って精製した。化合物30は白色の固体として得られた。収量は2.31mg(32%)であった。
この化合物30の1H−NMRスペクトル(600MHz、D2O)測定を行った。図7に示すチャートが得られた。またMALDI−TOF−MS測定を行ったところ、m/z977.5[(M+Na)+]であった。これらによって化合物30の構造を確認することができた。なお、この化合物30の分子質量は954.34である。
(2)リガンド複合体(式(36))の合成
式(36)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図8に示した。これによって、式(36)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(3)リガンド複合体(式(37))の合成
式(37)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図9に示した。これによって、式(37)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(4)リガンド複合体(式(38))の合成
式(38)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図10に示した。これによって、式(38)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(5)リガンド複合体(式(39))の合成
式(39)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図11に示した。これによって、式(39)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(6)リガンド複合体(式(40))の合成
式(40)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図12に示した。これによって、式(40)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(7)リガンド複合体(式(41))の合成
式(41)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図13に示した。これによって、式(41)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(8)リガンド複合体(式(42))の合成
式(42)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図14に示した。これによって、式(42)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(9)リガンド複合体(式(43))の合成
式(43)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図15に示した。これによって、式(43)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(10)リガンド複合体(式(44))の合成
式(44)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図16に示した。これによって、式(44)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(11)リガンド複合体(式(45))の合成
式(45)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図17に示した。これによって、式(45)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(12)リガンド複合体(式(46))の合成
式(46)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図18に示した。これによって、式(46)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(13)リガンド複合体(式(47))の合成
式(47)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図19に示した。これによって、式(47)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(14)リガンド複合体(式(48))の合成
式(48)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図20に示した。これによって、式(48)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(15)リガンド複合体(式(49))の合成
式(49)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図21に示した。これによって、式(49)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(16)リガンド複合体(式(50))の合成
式(50)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図22に示した。これによって、式(50)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
(17)リガンド複合体(式(51))の合成
式(51)にて表されるリガンド複合体を上記(1)と同様の手順で合成した。
このリガンド複合体の1H−NMRスペクトルを測定し、得られたチャートを図23に示した。これによって、式(51)にて表されるリガンド複合体の構造を確認することができた。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明にかかるリガンド複合体は、一つのリガンド複合体内に複数の糖分子を導入することができるので、上記リガンド複合体同士が支持体表面に集合化することを避けつつ、糖分子については集合化させることができる。本発明のリンカー化合物を用いることによって、上記糖分子とタンパク質との相互作用を再現性よく評価することが可能になる。
また、本発明にかかるリガンド担持体は、未知タンパク質の同定に利用することができるという効果を奏する。さらに、本発明にかかるタンパク質の分析方法によれば、未知タンパク質の同定を行うことができる。
本発明は、タンパク質の機能解析に有効利用することのできる新規なリガンド複合体やリガンド担持体などを提供するものである。オリゴ糖鎖を固定化したリガンド担持体(チップ)が糖鎖やタンパク質の機能解析のツールとして発展すれば、オリゴ糖鎖が関与する生命現象の解明に貢献するだけでなく、医薬品開発における重要な技術となることが期待される。それゆえ、本発明の有用性は高いと考えられる。
Claims (5)
- 一般式(1)
上記Xは、
一般式(2)、(3)または(4)
上記Yは、S−S結合またはSH基を含む炭化水素構造であり、
上記Zは、式(5)または式(6)
上記Rは、下記群(101)
- 一般式(107)
一般式(108)
一般式(109)
一般式(110)
- 請求項1または2に記載のリガンド複合体を、表面に金属を有する支持体上に固定化させてなることを特徴とするリガンド担持体。
- タンパク質の分析に使用されることを特徴とする請求項3に記載のリガンド担持体。
- 請求項1または2に記載のリガンド複合体を、支持体と接触させることによって、当該リガンド複合体を支持体上に固定化させたリガンド担持体を作成する工程と、
上記リガンド担持体を、タンパク質溶液と接触させた後、分子間相互作用の測定を行う工程と、
上記分子間相互作用の測定の後に質量分析を行って、上記リガンド担持体に結合しているタンパク質を同定する工程と、
からなることを特徴とするタンパク質の分析方法。
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