JP4628960B2 - リンカー化合物及びリガンド複合体、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面プラズモン共鳴のセンサチップ等のタンパク質分析用の支持体にオリゴ糖等の糖鎖を固定することが可能なリンカー化合物、及び該リンカー化合物に糖鎖を導入してなるリガンド複合体、リガンド担持体、並びにこれらの製造方法に関するものである。
生体内に存在する種々の糖鎖は、生物の活動や生命を維持するためのメカニズムの中で重要な役割を果たしている。このような糖鎖の機能を精密に解明するためには、糖鎖の複雑な構造に基づいてそれらの機能を解析する必要がある。糖鎖の機能解析には、構造が解明されているオリゴ糖を用いて、糖鎖の構造を一部ずつ再現し、これによって糖鎖全体の構造と機能との関係を明らかにする手法が用いられる。
上記糖鎖の機能解析の手法としては、例えば、表面プラズモン共鳴(以下、SPRと記載する)法が知られている。すなわち、糖鎖の一部を模擬したオリゴ糖を含んでなるリガンド複合体をセンサチップ表面上に固定化し、それによってオリゴ糖が固定化されてなるセンサチップを用いて、オリゴ糖と特異的に相互作用するタンパク質等の物質を特定する。これにより、オリゴ糖の構造に基づく生物活性の正しい評価を行うことができる。
ところが、オリゴ糖は、1分子だけでは活性がそれほど高くないため、オリゴ糖の生物活性を評価する場合には、オリゴ糖鎖をセンサチップ上に集合化させることが必要となる。つまり、集合化したオリゴ糖鎖を用いて、タンパク質との相互作用を解析することにより、オリゴ糖鎖の生物活性の評価を行うことが可能になる。
そこで、本発明者らは、これまでに、センサチップ表面に固定可能な部位及びオリゴ糖鎖を導入可能な部位を分子内に有するリンカー化合物を得、このリンカー化合物に1単位又は2単位のオリゴ糖鎖を導入してなるリガンド複合体を得ている。そして、このリガンド複合体を用いることによって、センサチップ上に、オリゴ糖鎖を集合化して導入することができることを見出している(例えば、特許文献1、非特許文献1等を参照)。
特開2003−836969号公報(2003年3月19日公開)
「日本化学会第79回春季年会−講演予稿集II」、社団法人日本化学会、2001年3月15日、p.1042
しかしながら、上記特許文献1や非特許文献1に記載のリガンド複合体では、オリゴ糖の糖鎖をセンサチップ表面に2次元的に配列させることは可能であるが、その配列を再現性よく得ることが困難であるという技術的課題が残されている。
すなわち、上記のように、センサチップ表面に複数分子のオリゴ糖鎖を集合化させ、オリゴ糖鎖の生物活性を解析する場合には、オリゴ糖の糖鎖の集合化状態を同一にし、オリゴ糖鎖とタンパク質との間の相互作用を再現性よく観測することが求められる。特に、オリゴ糖鎖の生物活性を観測するためには、センサチップ表面に3単位以上のオリゴ糖鎖を集合化し、これらのセンサチップ上にて再現性よく2次元的に配列させることによって、オリゴ糖鎖の生物活性を再現性よく評価することが重要になる。
ところが、上記非特許文献1に記載のリガンド複合体では、1つのリガンド複合体が有するオリゴ糖鎖は1単位又は2単位となっている。言い換えれば、上記のリガンド複合体は、1つのリンカー化合物に対して、1つ又は2つのオリゴ糖鎖が結合してなるものである。そのため、オリゴ糖鎖の生物活性を観測するためには、上記リガンド複合体をセンサチップ表面に配列させる際に、リガンド複合体濃度を高めてリガンドである糖鎖同士を集合化させることによって、センサチップ表面上に3単位以上のオリゴ糖鎖を集合化させる必要がある。
このような手法によってオリゴ糖鎖を集合化させた場合、オリゴ糖の糖鎖間を所定の間隔にて制御してオリゴ糖の配列を再現性よく得ることは困難である。それゆえ、上記従来のリガンド複合体では、オリゴ糖の生物活性を再現性よく観測することができず、糖の構造の解明や、オリゴ糖の生物活性の評価を行う場合に困難を伴う可能性がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、センサチップ表面上の糖鎖間距離を制御し、オリゴ糖を再現性よく2次元的に配列し得る新規なリンカー化合物、及び、該リンカー化合物に糖分子が導入されてなる新規なリガンド複合体、リガンド担持体、並びにこれらの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、3単位以上の糖分子を導入可能な部位を有し、かつ、表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサチップやアフィニティクロマトグラフィの担体等のタンパク質分析用の支持体に結合可能な部位を有する新規なリンカー化合物を用いることによって、上記支持体に3単位以上の糖分子を再現性よく2次元的に配列させることができることを見出した。
なお、本願発明者らは、先出願(出願番号:特願2003−190568、公開番号:特開2004−157108(公開日:2004年6月3日)、本願の優先日(2004年2月5日)の時点で未公開)において、上記の問題点を解決することを目的として見出された他のリンカー化合物を開示している。しかしながら、この他のリンカー化合物は、疎水性が非常に強いタンパク質などを分析する際に、リンカー部のアルキル基と非特異的に結合相互作用してしまうという問題点がある。また、この他のリンカー化合物は、リンカー部を形成しているアルキル基の長さが十分ではなく、固定化するオリゴ糖鎖が大きい場合には、オリゴ糖鎖類の立体障害のために効率よく金属−硫黄結合が形成しないという問題点を有している。
そこで、本願発明者らは、さらに、リンカー部にオリゴエチレンオキシド基を導入し、非特異的な疎水性相互作用を極力抑え、かつ、金属結合に供されるジスルフィド基までの長さを容易に調整可能にして、効率よく金属−硫黄結合を形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるリンカー化合物は、上記の課題を解決するために、一般式(1)
Figure 0004628960
(式中、a,b,d,eは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数)にて表される構造を備え、上記Xが、末端に芳香族アミノ基を有するとともに主鎖に炭素−窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、3鎖以上含んでなる多分岐構造部位である構造を備えていることを特徴としている。
また、本発明にかかるリンカー化合物は、一般式(2)
Figure 0004628960
(式中、nは1以上6以下の整数)にて表される構造を備え、上記Xが、末端に芳香族アミノ基を有するとともに主鎖に炭素−窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、3鎖以上含んでなる多分岐構造部位である構造を備えているものでもよい。
ここで上記炭化水素誘導鎖とは、炭素及び水素からなる炭化水素鎖にて、一部の炭素や水素が、他の原子や置換基に置き換わっていてもよいものを指すものとする。すなわち、上記炭化水素誘導鎖とは、末端に芳香族アミノ基を有し、炭化水素鎖の主鎖構造である炭素−炭素結合(C−C結合)の一部が、炭素−窒素結合(C−N結合)、炭素−酸素結合(C−O結合)、アミド結合(CO−NH結合)に置き換わっていてもよいものを指す。
上記の構成によれば、上記リンカー化合物は、糖分子を簡便に導入できる部位として、芳香族アミノ基を有している。上記芳香族アミノ基は、各炭化水素誘導鎖に含まれているので、上記リンカー化合物には、3単位以上の糖分子を導入することができる。また、上記タンパク質分析用の支持体に固定可能な部位として、S−S結合を有している。
従って、上記リンカー化合物を介して、上記支持体に3単位以上の糖分子を集合化させて導入することができる。また、3単位以上の糖分子が1つのリンカー化合物に導入されているので、上記支持体表面に、3単位以上の糖分子を再現性よく配列させることができる。これにより、上記支持体表面上にて、糖分子とタンパク質との相互作用の観測が可能になるとともに、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になる。
さらに、上記リンカー化合物は、リンカー部にオリゴエチレンジオキシド基を有しているため、リンカー部にアルキル基を有している場合に比べ、疎水性の高い分析対象物と非特異的な相互作用を起こす可能性を大幅に低下させることができる。また、上記リンカー部がオリゴエチレンジオキシドで構成されていることによって、金属結合に供されるジスルフィド基からアミノ末端に結合するオリゴ糖鎖までの長さを容易に調節することができる。これによって、ジスルフィド基がオリゴ糖鎖の影響を受けることなく、効率よく金属−硫黄結合を形成することができる。
上記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を備えているリンカー化合物において、上記Xは、一般式(3)
Figure 0004628960
(式中、m,m,m,m,p,pは、それぞれ独立して、1以上6以下の整数)にて表される構造を備えていることが好ましい。
また、上記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を備えているリンカー化合物において、上記Xは、一般式(4)
Figure 0004628960
(式中、q,q,q,r,r,r,t,t,t,u,u,uは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数)にて表される構造を備えていることが好ましい。
上記リンカー化合物のXは、上記炭化水素誘導鎖を3鎖以上有しているので、このリンカー化合物を介して、上記支持体上に3単位以上の糖分子の導入が可能である。そのため、上記支持体表面にて3単位以上の糖分子間の間隔を制御して、糖分子の配列を再現性よく得ることができるので、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になる。
また、本発明のリガンド複合体は、上記の課題を解決するために、上記したいずれかのリンカー化合物の芳香族アミノ基に、糖分子を導入してなるものであることを特徴としている。
そして、上記リガンド複合体が、具体的には、一般式(5)
Figure 0004628960
(式中、m,m,m,m,n,p,pは、それぞれ独立して、1以上6以下の整数。R’は水素(H)またはR。)にて表される構造を備え、上記Rが式(6−1)ないし式(6−6)
Figure 0004628960
から選択されるオリゴ糖由来化合物であることが好ましい。
また、上記リガンド複合体が、具体的には、一般式(7)
Figure 0004628960
(式中、a,b,d,e,q,q,q,r,r,r,t,t,t,u,u,uは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数。ただし、bが0のときはt,tおよびtは0ではなく、t,tおよびtが0のときはbは0ではない。また、R’は水素(H)またはR。)にて表される構造を備え、上記Rが上記式(6−1)ないし式(6−6)から選択されるオリゴ糖であることが好ましい。
上記リガンド複合体を用いることにより、上記タンパク質分析用の支持体表面に3単位以上または4単位以上(一般式(5)または一般式(7)に示される構造を備えているリガンド複合体を用いた場合)の糖分子を集合化して固定化することができる。このように、一つのリガンド複合体が3単位以上の糖分子を有しているので、上記リガンド複合体同士を上記支持体表面に集合化することなく、一つのリガンド複合体を用いることで、3単位以上の糖分子を集合化させることができる。そのため、糖分子の生物活性を再現性よく測定することが可能になる。また、上記支持体表面に2次元的に複数の糖分子を再現性よく配列することができる。従って、本発明のリガンド複合体が固定されてなるタンパク質分析用の支持体を用いることによって、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になる。
また、本発明のリンカー化合物の製造方法は、上記の課題を解決するために、チオクト酸と、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護された分岐鎖を3鎖以上有するアミン化合物との縮合反応を行うステップと、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護するステップとを含んでいることを特徴としている。
上記の方法によれば、上記タンパク質分析用の支持体に固定可能な部位としてのS−S結合と、糖分子を簡便に導入できる部位としての芳香族アミノ基とを有している、本発明のリンカー化合物を得ることができる。
また、本発明のリガンド複合体の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記のリンカー化合物と、糖分子とを用いて、還元アミノ化反応を行うことを特徴としている。
上記の方法によれば、還元アミノ化反応により、リンカー化合物に簡便に糖分子を導入して、本発明のリガンド複合体を得ることができる。
なお、上記糖分子としては、還元末端を有するあらゆる種類の糖分子を用いることができる。
上記糖分子として、具体的には、一般式(8)
Figure 0004628960
にて表されるヘパリン部分二糖構造を有する硫酸化オリゴ糖を用いることが好ましい。
また、上記糖分子として、具体的には、群(9)
Figure 0004628960
から選択されるオリゴ糖の少なくとも1つを用いることが好ましい。
また、本発明の糖分子の導入方法は、上記の課題を解決するために、上記リガンド複合体を含む溶液と、支持体表面の金属とを接触させることを特徴としている。
上記の方法によれば、上記リガンド複合体に含まれるリンカー化合物のS−S結合を、上記支持体表面の金属との結合に変換し、支持体表面にリガンドである糖鎖を固定することができる。従って、リガンド複合体を含む溶液と支持体とを接触させるという簡便な方法で、リンカー化合物に結合した糖分子を支持体の表面に配列させることができる。
また、本発明のリガンド担持体は、上記の課題を解決するために、上記リガンド複合体を、表面に金属を有する支持体上に、固定化させてなることを特徴としている。
上記の構成によれば、金属−硫黄結合を介して、支持体表面にリガンド複合体を強固に固定することができるので、支持体表面に複数の糖分子を再現性よく配列させてなるリガンド担持体を提供することができる。従って、上記リガンド担持体を用いれば、リガンド複合体に含まれる糖分子と、該糖分子と相互作用するタンパク質等の物質との相互作用を再現性よく観測することができるので、糖分子の生物活性の定量的な評価が可能になる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるだろう。
本発明にかかるリンカー化合物(化合物15)の合成経路の一例を示す模式図である。 本発明にかかるリガンド複合体(化合物17)の合成経路の一例を示す模式図である。 ヘパリン共存下において、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップへのbFGFの結合挙動を示すグラフである。 Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcをそれぞれ固定化したチップへのbFGFの結合相互作用に対するヘパリンの阻害率を示すグラフである。 溶液中の混合比を変えたTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの全反射赤外吸収スペクトルを示すグラフである。 溶液中の混合比を変えたTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの全反射赤外吸収スペクトルを示すグラフである。 溶液中のTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの混合比に対するチップ上の硫酸基の相対強度を示すグラフである。 溶液中のTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの混合比に対するチップ上の硫酸基の相対強度を示すグラフである。 Mono−GlcNS6S−IdoA2S−GlcとMono−Glcとの混合比が100/0の場合のh−vWFの結合相互作用を、SPR法によって観測した結果を示すグラフである。 Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcとMono−Glcとの混合比が100/0の場合のh−vWFの結合相互作用を、SPR法によって観測した結果を示すグラフである。 Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−GlcとMono−Glcとの混合比が100/0の場合のh−vWFの結合相互作用を、SPR法によって観測した結果を示すグラフである。 Mono−GlcNS6S−IdoA2S−GlcとMono−Glcとの混合比が20/80の場合のh−vWFの結合相互作用を、SPR法によって観測した結果を示すグラフである。 Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcとMono−Glcとの混合比が20/80の場合のh−vWFの結合相互作用を、SPR法によって観測した結果を示すグラフである。 Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−GlcとMono−Glcとの混合比が20/80の場合のh−vWFの結合相互作用を、SPR法によって観測した結果を示すグラフである。 図7(a)および図8(a)に示す結果から得られた結合量を、h−vWFの濃度ごとにプロットしたグラフである。 図7(b)および図8(b)に示す結果から得られた結合量を、h−vWFの濃度ごとにプロットしたグラフである。 図7(c)および図8(c)に示す結果から得られた結合量を、h−vWFの濃度ごとにプロットしたグラフである。 Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0の場合において、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップとrhvWF−A1との相互作用を測定した結果を示すグラフである。 Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=50/50の場合において、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップとrhvWF−A1との相互作用を測定した結果を示すグラフである。 Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0の場合において、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップとrhvWF−A1との相互作用を測定した結果を示すグラフである。 Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=50/50の場合において、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップとrhvWF−A1との相互作用を測定した結果を示すグラフである。 Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0の場合において、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップとrhvWF−A1との相互作用を測定した結果を示すグラフである。 Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=50/50の場合において、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップとrhvWF−A1との相互作用を測定した結果を示すグラフである。 本発明にかかるリンカー化合物(化合物26)の合成経路の一例を示す模式図である。 本発明にかかるリガンド複合体(化合物27)の合成経路の一例を示す模式図である。 本発明にかかるリンカー化合物(化合物32)の合成経路の一例を示す模式図である。 N−TEG−NHBoc(化合物30)の合成経路の一例を示す模式図である。 本発明にかかるリガンド複合体(化合物34)の合成経路の一例を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリンカー化合物は、表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサチップやアフィニティクロマトグラフィの担体等のタンパク質分析用の支持体とオリゴ糖等の糖(以下、糖分子と記載する)との間に介在して、上記支持体上に糖分子を固定化するために用いられる。そのため、上記リンカー化合物は、上記支持体に固定可能な部位、及び、糖分子を簡便に導入できる部位を分子内に有している必要がある。
また、上記SPRやアフィニティクロマトグラフィでは、糖分子と特異的に相互作用するタンパク質等の物質を特定することや分離することを目的としている。そのため、上記リンカー化合物は、タンパク質等の物質との非特異的な相互作用を有していないものでなければならない。
そこで、本発明のリンカー化合物は、上記支持体に固定可能な部位として、前記一般式(1)または一般式(2)にて示すように、ジスルフィド結合(S−S結合)を有している。このジスルフィド結合の硫黄(S)は、例えば、タンパク質分析用の支持体表面にコートされた金(Au)などの金属と、金属−硫黄結合を形成し、上記支持体に強固に結合することができる。
また、上記リンカー化合物は、タンパク質分析用の支持体表面に2次元的に複数の糖分子を配列するとともに、個々の糖分子の糖鎖間の距離を制御するために、糖分子を簡便に導入できる部位として、複数のアミノ基を含んでなる多分岐部位を有している。すなわち、本発明のリンカー化合物の多分岐部位は、前記一般式(1)または一般式(2)のXで表される構造を備えている部位であり、該Xは、前記したように、末端に芳香族アミノ基を有するとともに主鎖に炭素−窒素結合やアミド結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を3鎖以上含んでいる構造を備えている。
上記芳香族アミノ基のアミノ基(−NH基)は、オリゴ糖等の糖分子との還元アミノ化反応により、上記リンカー化合物に糖分子を導入するための反応基となる。つまり、糖分子中の平衡によって生じるアルデヒド基(−CHO基)又はケトン基(−CRO基、Rは炭化水素基)と、上記リンカー化合物が有するアミノ基とが反応する。そして、この反応によって形成されたシッフ塩基を引き続き還元することによって、芳香族アミノ基に容易に糖分子を導入することができる。
従って、前記一般式(1)または一般式(2)のXは、上記のような炭化水素誘導鎖を3鎖以上含むことにより、糖分子を導入可能な芳香族アミノ基を複数併せ持った多分岐型部位である構造を備えている。この多分岐型部位に含まれる各芳香族アミノ基に、オリゴ糖等の糖分子が導入されるので、前記一般式(1)または一般式(2)にて表される構造を備えているリンカー化合物を介して、タンパク質分析用の支持体表面に2次元的に複数の糖分子を再現性よく配列することが可能になる。
さらに、本発明のリンカー化合物は、前記一般式(1)または一般式(2)に示すように、ジスルフィド基と、芳香族アミノ基との間にオリゴエチレンオキシドを有している。これにより、非特異的な疎水性相互作用を極力抑え、かつ、金属結合に供されるジスルフィド基までの長さを容易に調整可能にして、効率よく金属−硫黄結合を形成することができる。なお、上記一般式(1)において、a,b,d,eは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数であればよい。ただし、bが0の場合は、Xの内部にオリゴエチレンオキシドを有している必要がある。上記一般式(2)において、nは、1以上6以下の整数であれば限定されない。
具体的には、上記Xは、前記一般式(3)にて示すように、2鎖の炭化水素誘導鎖が、芳香族アミノ基とは反対側の末端にて、1つの窒素(N)に結合した2分岐構造を2つ有している構造を備えていてもよい。この場合、2つの2分岐構造の上記窒素が、例えば−CO−CH−を介して、1つの窒素(N)に結合することによって分岐構造を形成する。これにより、上記Xは、4鎖の炭化水素誘導鎖を備えた多分岐型部位である構造を備えることになる。なお、上記一般式(3)において、m,m,m,mは、1以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。このうち、上記多分岐部位を有する化合物の製造時の簡便さの点から、上記m〜mは、互いに同じ整数であることが好ましく、特に2であることが好ましい。また、p,pは、1以上6以下の整数であれば特に限定されず、互いに異なる整数であってもよく、互いに同じ整数であってもよい。このうち、製造の簡便性の点から、p,pは、互いに同じ整数であることが好ましく、特に1であることが好ましい。
なお、前記一般式(3)に示される4鎖の炭化水素誘導鎖を備えたXにおいて、各炭化水素誘導鎖中にオリゴエチレンオキシドを有する構造とすることもできる。例えば、前記一般式(4)のように、各炭化水素誘導鎖のCHとNHの間にオリゴエチレンオキシドを有する構造とすることができる。
また、上記Xは、前記一般式(4)にて示すように、3鎖の炭化水素誘導鎖が、芳香族アミノ基とは反対側の末端にて、1つの炭素(C)に結合した3分岐構造を有している構造を備えていてもよい。この場合、3分岐構造の上記炭素が、例えば−C−N−を介して、1つの窒素(N)に結合することによって分岐構造を形成する。これにより、上記Xは、3鎖の炭化水素誘導鎖を備えた多分岐型部位である構造を備えることになる。
なお、上記一般式(4)において、q,q,qは、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。このうち、上記多分岐部位を有する化合物の製造時の簡便さの点から、上記q〜qは、互いに同じ整数であることが好ましく、特に2であることが好ましい。また、r,r,rは、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。このうち、製造の簡便性の点から、上記r〜rは、互いに同じ整数であることが好ましく、特に1であることが好ましい。また、u,u,uは、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。このうち、製造の簡便性の点から、上記u〜uは、互いに同じ整数であることが好ましく、特に1であることが好ましい。さらに、t,t,tは、0以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。ただし、前記一般式(1)においてXが当該一般式(4)である場合、前記一般式(1)のbが0のときは、t,t,tは1以上6以下の整数であることが好ましい。製造の簡便性の点から、上記t〜tは、互いに同じ整数であることが好ましく、特に4であることが好ましい。
このように、上記Xは、炭素や窒素等の原子にて、上記炭化水素誘導鎖を複数結合して分岐構造を形成している多分岐型部位である構造を備えている。なお、上記Xに含まれる複数の炭化水素誘導鎖は、すべて同じであることが好ましいが、末端に芳香族アミノ基を有していれば、互いに異なる構造であってもよい。
以上のように、一般式(1)または一般式(2)にて表される構造を備えているリンカー化合物は、タンパク質分析用の支持体に結合可能なS−S結合と、オリゴ糖鎖等の糖分子に結合可能なアミノ基とを有している。従って、例えばAu−S結合などの金属−硫黄結合により上記リンカー化合物が、タンパク質分析用の支持体上に固定されるので、上記リンカー化合物を介して、上記支持体上に糖分子を強固にかつ簡単に結合させることができる。
また、上記リンカー化合物は、多分岐型部位を有し、該多分岐型部位の各末端に芳香族アミノ基を有している。そのため、上記リンカー化合物に糖分子を導入してなるリガンド複合体(後述)を用いることにより、上記支持体表面に効率よく糖分子を集合化させることができる。また、多分岐型部位を有しているので、リンカー化合物を含んでなるリガンド複合体を支持体表面に結合させた場合に、2次元的に複数の糖分子を再現性よく配列させることができる。
さらに、上記リンカー化合物は、タンパク質との非特異的な相互作用の影響をほぼ無視することができる。それゆえ、本発明のリンカー化合物を用いることによって、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になる。
また、上記リンカー化合物は、前記一般式(1)または一般式(2)に示すように、ジスルフィド基と、芳香族アミノ基との間にオリゴエチレンオキシドを有している。これによって、非特異的な疎水性相互作用を極力抑え、かつ、金属結合に供されるジスルフィド基までの長さを容易に調整可能にして、効率よく金属−硫黄結合を形成することができる。
上記リンカー化合物は、以下に示す製造方法によって製造される。すなわち、上記リンカー化合物は、チオクト酸と、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護された分岐鎖を3鎖以上有する多分岐構造を含んでなるアミン化合物との縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造される。
上記チオクト酸は、下記一般式(10)
Figure 0004628960
にて表される構造を備えている。
また、上記アミン化合物は、保護基によって保護された芳香族アミノ基末端を有する分岐鎖を含んでいれば特に限定されるものではなく、上記したリンカー化合物の多分岐部位に相当する構造を含んでいればよい。
従って、上記分岐鎖は、上記した炭化水素誘導鎖に含まれる芳香族アミノ基の代わりに、保護基によって保護された芳香族アミノ基末端を有する以外は、上記炭化水素誘導鎖に含まれる構造を有していればよい。つまり、上記分岐鎖は、炭素及び水素からなる炭化水素鎖にて、一部の炭素や水素が他の原子や置換基に置き換わっていてもよいものである。より具体的には、上記分岐鎖は、保護基によって保護された芳香族アミノ基末端を有するとともに、炭化水素鎖の主鎖構造である炭素−炭素結合(C−C結合)の一部が炭素−窒素結合(C−N結合)、また炭素−酸素結合(C−O結合)に置き換わっていてもよいものである。
また、上記保護基とは、芳香族アミノ基のアミノ基が上記縮合反応によって反応しないように導入される置換基である。このような保護基は、二級アミノ基の保護基を脱保護する際に影響を受けないものであれば、特に限定されるものではない。上記保護基としては、例えば、t−ブトキシカルボニル基(−COOC(CH基;Boc基と記載する)、ベンジル基、アリルカルバメート基(−COOCHCH=CH、Alloc基)等を挙げることができる。
上記アミン化合物としては、例えば、下記一般式(11)
Figure 0004628960
にて表される構造を備えている化合物を挙げることができる。なお、上記一般式(11)中のn,m〜m,p,pは、それぞれ独立して、1以上6以下の整数である。これらのアミン化合物の合成方法については、後の実施例にて詳述する。
上記チオクト酸とアミン化合物との縮合反応により、チオクト酸のカルボキシル基(−COOH基)と、アミン化合物のアミノ基(−NH基)とが縮合して、アミド結合が形成される。その後、芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護して、保護基を取り外し、芳香族アミノ基にすることによって、上記したリンカー化合物を得ることができる。
なお、上記リンカー化合物は、上述のようにリンカー部分にオリゴエチレンオキシドを備えた構造となっているため、その製造方法においてはオリゴエチレンオキシド構造を含んでなる物質を原料として用いることが好ましい。この原料としては、例えば、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル(実施例の化合物1)、分子量の異なる市販のポリエチレングリコール(Mw:200、300、400、600、1000)(Sigma社製)などを挙げることができ、この中でも特に、重合度が完全に制御された、すなわち、長さが制御された構造を有するという理由で、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル(実施例の化合物1)を用いることが好ましい。
次に、本発明のリガンド複合体について説明する。ここで、「リガンド複合体」とは、上記リンカー化合物の芳香族アミノ基に、糖分子が導入されてなるものを意味するものとする。本発明のリガンド複合体においては、リンカー化合物のアミノ基が、糖分子中の平衡によって生じるアルデヒド基又はケトン基と反応し、この反応によって形成されたシッフ塩基を引き続き還元することによって、芳香族アミノ基に糖分子を導入することができる。すなわち、この還元アミノ化反応により、上記リンカー化合物と糖分子とが結合する。
本発明のリガンド複合体に含まれる糖分子としては、還元末端を有する還元糖であれば、特に限定されることなくあらゆる種類のものを用いることができる。上記糖分子として具体的には、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、結合している糖の数が2糖〜10糖であるマルトース、ラクトース、後述する硫酸化オリゴ糖等のオリゴ糖類、単糖類やオリゴ糖類が組み合わされて糖数が11以上であるヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸等の多糖類を挙げることができる。
また、上記オリゴ糖類として、抗血液凝固活性を有することで知られている硫酸化多糖ヘパリン中の下記一般式(8)
Figure 0004628960
にて表される特定の部分二糖構造(「GlcNS6S−IdoA2S」と呼ぶ)を有する硫酸化オリゴ糖、該硫酸化オリゴ糖の還元末端である水酸基にグルコースを導入してなる下記一般式(12)
Figure 0004628960
にて表される構造を備えているオリゴ糖を挙げることができる。
なお、上記オリゴ糖類や多糖類は、同一の単糖分子からなる単一オリゴ糖や単一多糖であってもよく、種々の単糖分子やその誘導体からなる複合糖質や、種々の単糖分子やその誘導体、オリゴ糖類を含んでなる複合多糖類であってもよい。また、上記糖分子は、いずれも、自然界から単離・精製して得られる種々の天然の糖であってもよく、人工的に合成された糖であってもよい。
具体的には、本発明のリガンド複合体は、前記一般式(5)にて表される構造を備えているものである。この一般式(5)にて表される構造を備えているリガンド複合体は、前記一般式(2)にて表され、Xが前記一般式(3)にて表される構造を備えているリンカー化合物に、糖分子を導入してなるものである。糖分子は、還元末端を有する還元糖であれば限定されないが、一般式群(9)や一般式(12)から選択されるものであることが好ましい。一般式(3)にて表されるXは、4鎖の炭化水素誘導鎖を有している構造を備えているので、一般式(5)にて表される構造を備えているリガンド複合体は、上記リンカー化合物に4単位以上の糖分子が結合したものである。なお、上記一般式(5)において、m〜mは、一般式(3)中のm〜mと同様に、1以上6以下の整数であれば限定されず、互いに異なる整数であってもよく、一部あるいは全てが同じ整数であってもよい。また、nは1以上6以下の整数であれば特に限定されない。また、R’は水素(H)またはオリゴ糖由来化合物であればよい。
また、本発明のリガンド複合体は、前記一般式(7)にて表される構造を備えているものである。この一般式(7)にて表される構造を備えているリガンド複合体は、前記一般式(1)にて表され、Xが前記一般式(4)にて表される構造を備えているリンカー化合物に、糖分子を導入してなるものである。糖分子は、還元末端を有する還元糖であれば限定されないが、一般式群(9)や一般式(12)から選択されるものであることが好ましい。一般式(7)にて表されるXは、3鎖の炭化水素誘導鎖を有している構造を備えているので、一般式(7)にて表される構造を備えているリガンド複合体は、上記リンカー化合物に3単位以上の糖分子が結合したものである。
上記のリガンド複合体は、いずれもリンカー化合物と糖分子とを含んでなっているので、リンカー化合物内のS−S結合にて、タンパク質分析用の支持体表面の金属と、金属−硫黄(S)結合、例えば金−硫黄(Au−S)結合により結合することができる。これにより、このAu−S結合を介して、上記支持体表面に3単位以上の糖分子を集合化して固定化されてなるリガンド担持体を提供することができる。それゆえ、上記リガンド複合体を用いることによって、例えばタンパク質分析用の支持体表面に2次元的に複数の糖分子を再現性よく配列してリガンド担持体を得、該リガンド担持体を用いることによって、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になる。なお、上記支持体表面の金属としては、上記Auの他、Cu、Ag、Pt等の金属を用いることができるが、特にAuを用いることが好ましい。
さらに、上記のリガンド複合体は、リンカー部にオリゴエチレンオキシドを有している。これにより、非特異的な疎水性相互作用を極力抑え、かつ、金属結合に供されるジスルフィド基までの長さを容易に調整可能にして、効率よく金属−硫黄結合を形成することができる。
このように、本発明のリガンド複合体を、金属−硫黄結合を介して支持体の表面に固定化させてなるリガンド担持体も本発明に含まれる。このリガンド担持体はタンパク質分析の用途に限定されず、糖分子との相互作用を調べるために、タンパク質以外の物質の分析用として用いることもできる。
上記リガンド担持体は、該リガンド複合体を含む溶液と表面に金属膜を有する支持体とを接触させることにより、リガンド複合体のS−S結合の各S原子が、支持体表面の金属と金属−硫黄結合によって結合して、支持体表面に上記リガンド複合体が導入される。具体的には、上記リガンド複合体溶液に、タンパク質分析用の支持体を所定時間浸漬する、あるいは、上記支持体にリガンド複合体溶液を注入する(支持体表面にリガンド複合体溶液を流す)ことによって、上記リガンド複合体に含まれるリンカー化合物のS−S結合を、上記支持体表面の金等とのAu−S結合に変換して、支持体表面に上記リガンド複合体を固定することができる。
リガンド複合体溶液に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、水、ジメチルアセトアミド(DMAc)や、これらの混合溶媒等を挙げることができる。また、浸漬時間は、0.5時間〜12時間程度であればよく、注入濃度は、1μM〜1mM程度であればよい。
このように、本発明のリガンド複合体は、S−S結合を有しているので、タンパク質分析用の支持体表面に簡単に固定化することができ、上記支持体上に糖分子を簡単に導入することができる。
なお、上記のように支持体に糖分子を導入する方法も本発明に含まれる。
本発明のリガンド担持体は、糖分子と、例えばタンパク質等の他の物質との相互作用の分析に、利用可能である。具体的には、上記リガンド担持体は、SPR測定、アフィニティクロマトグラフィ等に適用することができる。
例えば、タンパク質分析として、SPR測定を行うには、以下のようにすればよい。すなわち、金薄膜等の金属薄膜を蒸着した支持体に、本発明のリガンド複合体を固定化してなるリガンド担持体を用い、該リガンド担持体とタンパク質とを接触させ、常法に従って、表面プラズモン共鳴装置を用いて共鳴角度を測定すれば、該リガンド担持体とタンパク質との結合挙動を観測することができる。なお、SPR測定に用いる上記支持体(センサチップ)としては、例えば、ガラス、プラスチック等を用いることができ、特にガラスが好適に用いられる。また、リガンド担持体とタンパク質の接触は、例えば、タンパク質をランニングバッファーに溶解した溶液を、該リガンド担持体の表面に流入することにより行えばよい。このランニングバッファーとしては、例えば、リン酸緩衝溶液等を挙げることができる。
本発明のリガンド担持体は、上記リガンド複合体を有しているので、支持体表面に2次元的に複数の糖分子が再現性よく配列されている。それゆえ、糖分子の生物活性を再現性よく観測でき、糖分子の構造の解明や、糖分子の生物活性について定量的な評価を行うことができる。
また、本発明のリガンド担持体として、糖鎖を固定化したセンサチップは、例えば、以下のようなSPR測定に使用することができる。すなわち、第1の糖分子が支持体表面に固定化されてなる第1のセンサチップと、上記第1の糖分子とは末端構造が異なる第2の糖分子が支持体表面に固定化されてなる第2のセンサチップとを用いて、第1のセンサチップを用いて得られたSPR測定の検出結果と、第2のセンサチップを用いて得られたSPR測定の検出結果との差を検出し、糖分子の相互作用を観測することができる。これらのセンサチップは、固定化される糖分子が異なっているリガンド複合体を用いればよい。比較する糖分子には、例えば、ラクトースとグルコース、マルトースとグルコース、コージビオースとグルコース等が挙げられる。ここでは、2つのセンサチップを用いたが、これ以上の数の、導入される糖分子の種類が異なるセンサチップを用いてもよい。なお、糖分子の末端とは、センサチップに固定されていない側のことである。
上記SPR測定では、第1の糖分子に特異的に作用するタンパク質等を用いて、測定条件を一定にして、上記2つのセンサチップに作用させ、両者の共鳴角度を観測する。この両者の共鳴角度の差を検出することで、糖分子とタンパク質等との特異的な相互作用として測定することができる。
また、糖分子との相互作用を観測する物質は、タンパク質に限定はされない。
上記では、2つの種類のセンサチップを同時に測定したが、これに限定されることはなく、2種類以上のセンサチップを測定してもかまわないし、同時に測定しなくてもかまわない。また、少なくとも1つのセンサチップに糖分子を導入していないものを用いてもよい。例えば、リンカー化合物のみを固定化したものを用いてもよい。
上記のようなSPR測定を行うと、糖分子以外は同じ構造のリガンド複合体を固定化した少なくとも2つのセンサチップを用いて、測定をすることができるため、少なくとも2つのセンサチップで測定された相互作用の大きさの差は、糖分子に起因したものとして観測される。従って、上記測定方法を用いれば、糖分子以外の部分と、他の物質との非特異的な相互作用を低減させ、糖分子と他の物質との特異的な相互作用を観測することができる。
以下、本発明のリンカー化合物およびリガンド複合体の合成について、より詳細に説明する。また、本実施例では、合成した当該リガンド複合体と他のリガンド複合体とを用いて、その特性を比較検討するという実験も行った。それについても併せて説明する。
〔実施例1:リンカー化合物(化合物15)の合成〕
本発明にかかるリンカー化合物の一つ、すなわち、前記一般式(2)にて、nが4であり、Xが前記一般式(3)にて表され、p,pが1であり、m,m,m,mが2である構造を有するリンカー化合物(化合物15)は以下の手順で合成した。図1には、このリンカー化合物(化合物15)を合成する過程を示す。なお、本実施例1の説明において、各化合物に付記している番号は図1に記載の番号に相当する。
図1に示すように、先ず、原料として、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル(化合物1)を用いて、ジクロロメタン中でBF・EtO存在下ジアゾ酢酸エチル(化合物2)を反応させて、エステル体(化合物3)を収率40%で合成した。次に、化合物3をジクロロメタン中でDMAP、ピリジン存在下p−トルエンスルホニルクロリドと反応させ、トシル体(化合物4)を78%の収率で得た。化合物4にN,N−ジメチルホルムアミド中アジ化ナトリウムを作用させ、収率90%でアジド体(化合物5)を得た。
これをメタノール中1N NaOHで加水分解し、カルボン酸誘導体(化合物6)を収率98%で得た。ジクロロメタン中で上記化合物6と化合物7を、HOBtとEDC・HClを用いて縮合し、ジエステル誘導体(化合物8)を80%の収率で得た。この化合物8をメタノール中0.6N NaOHで加水分解することにより、ジカルボン酸誘導体(化合物9)を収率93%で得た。上記化合物9とジアミン誘導体(化合物10)をFDPPとDIPEAを用いて縮合し、化合物11を収率40%で得た。この化合物11のアジド基を接触水素還元して、収率80%でアミン体(化合物12)へと導いた。
その後、チオクト酸(化合物13)と縮合させ、化合物14を収率59%で得た。最後に、この化合物14にTFAを作用させることによって、Boc基を脱保護し、目的の芳香族アミノ基を4単位有するリンカー化合物(化合物15)を収率91%で得た。
以下、上述の合成過程で得られる各化合物の合成方法についてより具体的に示すとともに、合成された各化合物についてH−NMRスペクトルの測定と質量分析の測定を行った結果を示す。また、リガンドである糖鎖のチップ上での相対濃度は全反射FT−IR(ATR−FT−IR)を測定して求めた。それぞれ、以下のような手順で行った。
H−NMRスペクトル、質量分析、ATR−FT−IRの測定、および試薬等〕
H−NMRスペクトルの測定には、JEOL−JNM−Lambda−500 NMR spectrometerとJEOL JNM−GSX400 NMR spectrometerとJEOL EX−270 NMR spectrometerを用いた。化学シフトは、CDClの場合テトラメチルシランを基準物質としてδ値で表した。CDODおよびDMSO−dは残存する溶媒のプロトンの化学シフトを基準にδ値で表した。質量分析はAppliedBiosystems,MarinerTMを用いて測定した。ATR−FT−IR測定には、Shimadzu,IRPrestige−21に1回反射ATR付属装置(MIRacle Geプリズム)を搭載したものを用いた。ATR−FT−IR測定のためのセンサチップはSPR測定の時と同じものを使用した。中圧カラムシリカゲルクロマトグラフィはSilica gel 60 No.9385(Merck)を使用し、薄層シリカゲルクロマトグラフィはSilica gel 60 F254(Merck)を使用した。無水ジクロロメタンは水素化カルシウムを乾燥剤に用いて窒素気流下蒸留したものを使用した。その他の脱水溶媒は、関東化学株式会社製のものを購入して使用した。それ以外の試薬及び溶媒は、基本的に特級のものを使用した。
(1)化合物3の合成
ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル(化合物1)(14.57ml,80mmol)とBF・EtO(252ml,2mmol)を無水ジクロロメタン50mlに溶解し、0℃でジアゾ酢酸エチル(化合物2)(1.8ml,17.35mmol)を滴下した後、室温で70分間攪拌した。反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液20mlを加え、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣を中圧分取クロマトグラフィー(600g、ヘキサン:酢酸エチル=1:3)で精製して化合物3(2.26g,収率:47%)を無色液体として得た。
この化合物3についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ4.22(2H,q,J=7.0,14.2Hz,CO ),4.14(2H,s,OC CO),3.75−3.62(14H,m,C O×3,HOCH ),3.61(2H,t,J=4.4Hz,HOC ),1.84(1H,bs,O),1.28(3H,t,J=7.3Hz,CH )であった。また、上記化合物3のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 303.27[(M+Na)]であった。これによって化合物3の構造を確認することができた。なお、この化合物3の分子質量はC1224:280.15である。
(2)化合物4の合成
上記のエチル体化合物3(2.15g,7.66mmol)とDMAP(41.7mg,337mmol)を無水ピリジン8mlに溶解した。この溶液に0℃でp−トルエンスルホン酸クロリド(1.75g,9.19mmol)を無水ジクロロメタン8mlに溶解した溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応溶液にジクロロメタンと氷水を加えてジクロロメタンに抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で1回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣を中圧分取クロマトグラフィー(100g、クロロホルム:アセトン=4:1)で精製して化合物4(2.59g,収率:78%)を黄色液体として得た。
この化合物4についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ7.80(2H,d,J=8.4Hz,aromatic),7.35(2H,d,J=8.4Hz,aromatic),4.21(2H,q,CO ),4.16(2H,t,J=4.8Hz,TsOC ),4.14(2H,s,OC CO),3.76−3.59(14H,m,C O×3,TsOCH ),2.45(3H,s,C Ar),1.28(3H,t,J=7.0Hz,CH )であった。また、上記化合物4のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 457.16[(M+Na)]であった。これによって化合物4の構造を確認することができた。なお、この化合物4の分子質量はC1930S:434.16である。
(3)化合物5の合成
上記のトシル体化合物4(1.01g,2.31mmol)とアジ化ナトリウム(1.53g,2.31mmol)を無水ジメチルホルムアミド50mlに溶解し、遮光して120℃で窒素雰囲気下10時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで抽出し、水、飽和食塩水で有機層を1回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、濃縮残渣を中圧分取クロマトグラフィー(10g、クロロホルム:アセトン=2:1)で精製して化合物5(638mg,収率:90%)を黄色液体として得た。
この化合物5についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ4.22(2H,q,J=7.3Hz,CO ),4.15(2H,s,OC COEt),3.75−3.63(12H,m,OC O),3.69(2H,m,NCH ),3.39(2H,t,J=5.1Hz,N ),1.29(3H,t,J=7.3Hz,COCH )であった。また、上記化合物5のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 328.14[(M+Na)]であった。これによって化合物5の構造を確認することができた。なお、この化合物5の分子質量はC1223:305.16である。
(4)化合物6の合成
上記のアジド体化合物5(614mg,2.01mmol)をメタノール24mlに溶解し、遮光下0℃で1N NaOH 4.3mlを加えた後、室温で21時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、濃縮残渣にクロロホルムを加えた後、1N HClをpH=2になるまで加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、化合物6(549mg,収率:90%)を無色液体として得た。
この化合物6についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ6.19(1H,bs,CO ),4.16(2H,s,OC COH),3.75−3.64(12H,m,OC O),3.68(2H,m,NCH ),3.41(2H,t,J=5.1Hz,N )であった。また、上記化合物6のESI−MS(negative)測定を行ったところ、m/z 328.14[(M+Na)]であった。これによって化合物6の構造を確認することができた。なお、この化合物6の分子質量はC1019:277.13である。
(5)化合物7の合成
イミノ二酢酸(10.0g,75.1mmol)とBF・OEt(22ml,173mmol)を無水メタノール(50ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下にて5時間還流した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和し、クロロホルムで抽出した。pHが9になるまで水層にトリエチルアミンを加え、さらにクロロホルムで抽出し、乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮し、化合物7(9.61g,収率:79%)を黄色油状物として得た。
この化合物7についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ3.74(6H,s,OMe),3.48(4H,s,CHN),2.00(1H,s,NH)であった。また、上記化合物7のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 162.1[(M+H)]であった。これによって、化合物7の構造を確認することができた。なお、この化合物7の分子質量はC11NO:161.07である。
(6)化合物8の合成
上記化合物6(0.35g,1.26mmol)とEDC・HCl(0.27g,1.39mmol)とHOBt(0.19g,1.39mmol)を無水ジクロロメタン2mlに溶解し、アルゴン雰囲気下、遮光して0℃で80分間攪拌した後、上記化合物7(1.42g,6.83mmol)を無水ジクロロメタン1mlに溶解した溶液を加えて、室温で17時間攪拌した。反応容液をクロロホルムで抽出し、有機層を10%クエン酸と、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とで1回ずつ洗浄した。乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。濃縮残渣を分取シリカゲルクロマトグラフィ(50g、クロロホルム:アセトン=10:1)で精製して、化合物8(0.42g,収率:80%)を白色固体として得た。
この化合物8についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ4.23,4.11(4H,s,s,CONC ),4.18(2H,s,OC CON),3.69,3.66(4H,s,s,CO ),3.69−3.56(12H,m,OC O),3.61(2H,t,J=5.1Hz,NCH ),3.32(3H,t,J=5.0Hz,N )であった。また、上記化合物8のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 443.17[(M+Na)]であった。これによって化合物8の構造を確認することができた。なお、この化合物8の分子質量はC1628:420.19である。
(7)化合物9の合成
上記化合物8(398mg,947μmol)をメタノール(5ml)に溶解し、2NのNaOH(2.1ml)を加えて、0℃で2.5時間攪拌した後、Dowex 50WX−8(Hform)をpH=2になるまで加えて中和し、Dowex 50WX−8を濾別して減圧濃縮を行った。減圧濃縮によって得られた濃縮残渣に水を加えて不溶物を濾別した後、減圧濃縮及び凍結乾燥を行って、化合物9(346mg,収率:93%)を白色固体として得た。
この化合物9についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ5.66(2H,bs,CO x2),4.26(2H,s,OC CON),4.24,4.18(4H,s,s,CONC ),3.71−3.63(12H,m,OC O),3.67(2H,m,J=5.1Hz,NCH ),3.40(3H,t,J=4.9Hz,N )であった。また、上記化合物9のESI−MS(negative)測定を行ったところ、m/z 391.15[(M−H)]であった。これによって化合物9の構造を確認することができた。なお、この化合物9の分子質量はC1424:392.15である。
(8)化合物10の合成
N−Bocアミノ安息香酸誘導体(3.33g,14.0mmol)と、HOBt(1.93g,14.3mmol)とを無水ジクロロメタン(60ml)に懸濁させ、アルゴン雰囲気下、0℃で15分撹拌し、EDC・HCl(2.87g,15.0mmol)を無水ジクロロメタン(30ml)に溶解させた溶液を加えて、50分撹拌した。この溶液にジエチレントリアミン(0.79ml,7.00mmol)を加え、遮光下、室温で終夜撹拌し、白色結晶を得た。この白色結晶を濾取した後、メタノールから再結晶して、化合物10(3.53g,収率:92.9%)を白色結晶として得た。
この化合物10についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ7.77−7.74(4H,d,J=8.67Hz,aromatic),7.50−7.48(4H,d,J=8.57Hz,aromatic),3.70−3.66(4H,m,J=5.19Hz CONHC ),3.34−3.28(4H,m,J=5.61Hz C CHONH),1.53(18H,s,C )であった。また、上記化合物10のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 542.4[(M+H)]であった。これによって化合物10の構造を確認することができた。なお、この化合物10の分子質量はC2839:541.29である。
(9)化合物11の合成
上記化合物9(333mg,847μmol)とジイソプロピルエチルアミン(435ml,2.54mmol)、とFDPP(1.00g,2.60mmol)とを無水ジメチルホルムアミド(5ml)に溶解して遮光してアルゴン雰囲気下0℃で30分間攪拌した後、上記化合物10(1.15g,2.11mmol)を無水ジメチルホルムアミド(11ml)に溶解して加え、室温で20時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して得られた濃縮残渣をクロロホルムで抽出し、水、有機層を10%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回ずつ洗浄して、乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。減圧濃縮によって得られた濃縮残渣を分取シリカゲルクロマトグラフィ(80g,クロロホルム:メタノール=10:1)で精製して、化合物11(125mg,収率:59%)を白色固体として得た。
この化合物11についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ8.18(1H,bs,NCOPh),7.86(2H,d,J=8.4Hz,aromatic),7.80(1H,bs,PhNCO),7.75−7.68(8H,m,NCOPh,aromatic,PhNCO),7.54(1H,bs,PhNCO),7.48(2H,d,J=8.4Hz,NCOPh,aromatic),7.42(5H,m,aromatic,NCOPh),7.34(2H,d,J=8.8Hz,aromatic),7.28(1H,bs,PhNCO),3.84(4H,bs,CONC ),3.62−3.48(20H,m,OC O,NCH NH),3.56(2H,t,J=5.1Hz,NCH ),3.43(2H,bs,OC CON),3.35−3.30(4H,m,NC CHNH),3.26(2H,t,J=5.1Hz,N ),3.13,2.98(4H,bs,bs,NC CHNH),1.52,1.50,1.49(36H,s,s,s,t−butyl)であった。また、上記化合物11のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 1461.72[(M+Na)]であった。これによって化合物11の構造を確認することができた。なお、この化合物11の分子質量はC70981419:1438.71である。
(10)化合物12の合成
上記化合物11(165mg,114μmol)をメタノール(12ml)に溶解し、5%Pd/C(55mg)を加え、水素雰囲気下、室温で5時間攪拌した後、上記Pd/Cを濾去して減圧濃縮し、得られた濃縮残渣を分取シリカゲルクロマトグラフィ(10g,クロロホルム:メタノール=7:1)で精製して、化合物12(128mg,収率:79%)を白色固体として得た。
この化合物12について、H−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ7.78−7.68(8H,m,aromatic),7.48(8H,m,aromatic),4.21,4.10(4H,bs,bs,CONC ),3.85(2H,bs,OC CON),3.62−3.44(26H,m,OC O,NCH NH,NC CHNH),3.50(2H,t,J=5.1Hz,HNCH ),2.76(2H,t,J=5.1Hz,HNC CH),1.50(36H,s,t−butyl)であった。また、上記化合物12のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 1413.74[(M+H)]であった。なお、この化合物12の分子質量はC701001219:1412.72である。
この化合物12は、前記一般式(11)にてnが4であり、p,pが1であり、m,m,m,mが2である構造を有するアミン化合物である。
(11)化合物14の合成
上記化合物13(チオクト酸)(3.4mg,16.6imol)とHOBt(1.6mg,16.6μmol)EDC・HCl(3.2mg,1.66μmol)とを無水ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、0℃で遮光して攪拌した。次いで、上記化合物12(23.5mg,16.6μmol)を無水ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解して加え、室温で22時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して得られた濃縮残渣をジクロロメタンで抽出し、有機層を10%クエン酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回ずつ洗浄した。乾燥剤として無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。濃縮残渣を分取シリカゲルクロマトグラフィ(7g、クロロホルム:メタノール=10:1)で精製して、化合物14(15.7mg,収率:59%)を白色固体として得た。
この化合物14についてH−NMR(400MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ8.20,8.00(4H,bs,bs,NCOPh),7.86(2H,d,J=8.8Hz,aromatic),7.77−7.72(7H,m,COPhN,aromatic),7.53(1H,bs,NCOPh),7.50−7.36(10H,m,aromatic,J=8.8Hz,COPhN),7.27(2H,bs,COPhN,CONCH),3.89(4H,bs,CONC CO),3.64−3.37(26H,m,NCH NH,NC CHNH,OC O,CONHC ,CONHCH ),3.53(1H,m,SSC),3.48(2H,m,NC CHNH),3.32(4H,m,OC CON,NC CHNH),3.18,2.85(4H,bs,bs,NC CHNH),3.17−3.04(2H,m,C SSCH),2.44−2.36(1H,m,C CHSS),2.16(2H,m,CHCH CONH),1.89−1.81(1H,m,C CHSS),1.69−1.56(4H,m,CH CHCONH,C CHCHCHCONH),1.51,1.50(36H,s,s,t−butyl),1.42−1.34(2H,m,C CHCHCONH)であった。また、上記化合物14のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z1601.81[(M+H)]であった。これによって化合物14の構造を確認することができた。なお、この化合物14の分子質量はC781121220:1600.76である。
(12)リンカー化合物(化合物15)の合成
上記化合物14(60.3mg,31.2μmol)をジクロロメタン(1ml)に溶解し、TFA(3ml)を加えて遮光下0℃で1時間攪拌した後、減圧濃縮を行い、得られた残渣をメタノールに溶解してDowex Marathon A(OHform)を充填したカラム(1.0cm Φ×3.0cm)に注入してイオン交換を行った。溶出液を減圧濃縮し、化合物15(41.2mg,収率:91%)を白色固体として得た。
この化合物15について、H−NMR(400MHz,DMSO−d)測定を行ったところ、δ8.19,8.05(4H,m,m,NCOPh),7.82(1H,bt,CONCH),7.53(8H,m,aromatic),6.51(8H,dd,J=8.4,1.5Hz,aromatic),5.61−5.55(8H,m,N ),4.24,4.11(4H,s,s,CONC CO),3.93(2H,bs,OC CON),3.60−3.37(31H,m,NCH NH,NC CHNH,OC O,CONHC ,CONHCH ,SSC),3.19−3.06(4H,m,CONHC CH,C SSCH),2.42−2.32(1H,m,C CHSS),2.04(2H,m,CHCH CONH),1.87−1.78(1H,m,C CHSS),1.64−1.45(4H,m,CH CHCONH,C CHCHCHCONH),1.34−1.28(2H,m,C CHCHCONH)であった。また、上記化合物15のESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 623.27[(M+2Na)2+]であった。なお、この化合物15の分子質量はC58801212:1200.55である。
この化合物15は、前記一般式(2)にてnが4であり、Xが前記一般式(3)にて表され、p,pが1であり、m,m,m,mが2である構造を有するリンカー化合物である。
〔実施例2:リガンド複合体(化合物17)の合成〕
実施例1で得られたリンカー化合物15を用いて、前記一般式(5)にて、nが4であり、p,pが1であり、m,m,m,mが2であり、R’が水素(H)であり、Rが前記一般式(12)で表されるオリゴ糖由来の構造を有するリガンド複合体を以下の手順で合成した。図2には、この合成の化学反応式を示す。
図2に示すように、実施例1にて得られたリンカー化合物15と、前記一般式(12)にて表される糖分子である化合物16(7当量)とを用いて還元アミノ化反応を行った。これによって、本発明のリガンド複合体の一例である化合物17を収率22%で得た。
具体的には、上記リンカー化合物15(2.0mg,1.67μmol)と化合物16(10mg,11.7mmol)とを、水100mlとジメチルアセトアミド400mlと酢酸10mlとの混合溶媒に溶解し、遮光下、封管中37℃で25時間加熱した。NaBHCN(3.51mg,50.2mmol)を酢酸15mlに溶解して反応溶液に加え、37℃で6日間加熱した後、減圧濃縮して、Sephadex G−50(1.6cm Φ×80cm、PBSに0.3MのNaClを加えた溶液)を用いて精製した。精製によって得られた目的画分を減圧濃縮し、濃縮残渣をSephadex G−25(1.6cm Φ×40cm、水)を用いて脱塩した。脱塩により得られた目的画分を減圧濃縮し、水に溶かして凍結乾燥を行い、化合物17(1.7mg,収率:22%)を白色粉体として得た。
この化合物17について、実施例1に記載の方法でH−NMR(400MHz,DO)測定を行ったところ、δ7.65−7.58(8H,m,aromatic),6.78−6.67(8H,m,aromatic),5.37(4H,bs,H−1”),5.13(4H,bs,J=2.5Hz),4.52(4H,bs,H−5’),4.29(10H,m,H−6a”,H−3’,CONC CO),4.19(10H,m,H−6b”,H−2’,CONC CO),4.05(3H,m,H−4’),3.99−3.92(14H,m,H−2,H−6a,H−5”,OC CON),3.87(8H,m,H−5,NCH NH),3.83(8H,m,H−3,NCH NH),3.77−3.70(8H,m,H−4,NCH NH),3.71(4H,t,J=9.9Hz,H−3”),3.64−3.50(25H,m,H−6b,NC CHNH,OC O,CONHC ,CONHCH ,SSC),3.54(3H,s,OC ),3.45−3.19(14H,m,H−1a,H−1b,NC CHNH,C SS),3.34(4H,t,J=9.6Hz,H−4”),3.24(4H,dd,J=3.4,10.5Hz,H−2”),2.35−2.28(1H,m,C CHSS),2.27(2H,bt,CH CONHCH),1.89−1.84(1H,m,C CHSS),1.56−1.46(2H,m,C CHCONH),1.35−1.14(2H,m,C CH(CHCONH)であった。また、上記化合物17のESI−MS(negative)測定を行ったところ、m/z 1449.93[(M−10Na+7H)3−]であった。これによって化合物17の構造を確認することができた。なお、この化合物17の分子質量はC13419616Na1610814:4572.48である。
この化合物17が、前記一般式(5)にて、nが4であり、p,pが1であり、m,m,m,mが2であり、R’が水素(H)であり、Rが一般式(6−3)で表されるオリゴ糖由来化合物である構造を有するリガンド複合体である。
〔実施例3:リガンドである糖鎖とタンパク質との相互作用の検証〕
本実施例では、実施例2において得られた、前記一般式(5)にて、nが4であり、p,pが1であり、m,m,m,mが2であり、R’が水素(H)であり、Rが一般式(6−3)で表されるオリゴ糖由来化合物である構造を有するリガンド複合体(以下、このリガンド複合体については、「Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc」と記載する)を用いて、タンパク質との分子間相互作用について検証した。
本実施例においては、比較のために本願発明者らが以前に見出した他の2種類のリガンド複合体についても同様の実験を行い、その相互作用について比較検討した。上記他の2種類のリガンド複合体とは、具体的には、上記特許文献1に記載のリガンド複合体であって、以下の一般式(13)で表されるリガンド複合体である。以下、このリガンド複合体については、「Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc」と記載する。
Figure 0004628960
また、他のリガンド複合体のもう一つは、特開2004−157108に記載のリガンド複合体であって、以下の一般式(14)で表されるリガンド複合体である。以下、このリガンド複合体については、「Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc」と記載する。なお、上記特開2004−157108は、本願の優先日の時点で未公開である。
Figure 0004628960
〔実施例3−1:特異的相互作用の確認〕
先ず、実施例3−1として、前記一般式(8)にて表される二糖構造(GlcNS6S−IdoA2S)を固定化したチップと、ヘパリン結合性タンパク質との特異的相互作用を確認するため、阻害実験を行った。すなわち、ヘパリン結合性タンパク質とGlcNS6S−IdoA2S構造との結合を阻害するインヒビターを共存させて、ヘパリン結合性タンパク質のチップへの結合が阻害されるかどうかについて検討した。
本実験では、インヒビターとしてヘパリン(豚小腸由来、Mw=17600)を、ヘパリン結合性タンパク質としてbFGFを用いた。bFGFは、FGF−2とも呼ばれ、血管内皮細胞や線維芽細胞に働いて、血管新生作用、肉芽形成促進作用を発揮することにより創傷治癒を促進することが知られている。生体内では、細胞表面上にあるヘパリン類似物質であるヘパラン硫酸と相互作用し、生物活性を発現させている。bFGFとの結合に必要な最小結合単位は、以下の一般式(15)にて表される5糖であるということが報告されている(参考文献:M.Maccarana,B.Casu & U.Lindahl,J.Biol.Chem.268巻、8857頁、1993年)。
Figure 0004628960
上記の構造には、グルコサミンの6位が硫酸化されている構造が含まれていない。しかし、ヘパラン硫酸中のIdoA2S−GlcNS構造とbFGFとの会合において、不特定多数の6位硫酸化は必要ないもの、活性部位の形成には必要であることが確認されている。そのため、bFGFを、GlcNS6S−IdoA2S構造との相互作用を観測するためのタンパク質として選択した。
次に、上述のMono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcをそれぞれ固定化したチップを用いて、ヘパリン共存下bFGFとの結合阻害実験を行った。すなわち、200nMのbFGF溶液にヘパリンを、3,10,100,300,1000nMと濃度を変えて混合し、チップへ注入した。
図3には、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップへのbFGFの結合挙動を示す。この図から、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップへのbFGFの結合は、ヘパリンの濃度依存的に低下することが確認された。すなわち、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップへのbFGFの結合は、ヘパリンによって阻害されることが確認された。
上記実験によって得られた3種類のチップそれぞれのデータから、各チップにおけるbFGFの結合の阻害率を算出した。その結果を図4に示す。なお、上記阻害率は、異なった濃度のヘパリン共存下での最大角度変化量を、ヘパリンを共存させない場合の最大角度変化量で割った値の百分率で示したものである。
図4に示すグラフから、bFGFのチップへの結合阻害率が50%の所をIC50として定義した。その結果、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップではIC50=2.5nM、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップではIC50=94nM、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップではIC50=71nMとなり、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップのIC50値は、他の2種類のチップの値と比較して、1オーダー低く、ヘパリンによる阻害効果を強く受けていることが確認された。何れのチップにおいても阻害率がヘパリンの濃度依存的に変化していることから、これらのチップはヘパリン結合性タンパク質であるbFGFを特異的に認識していると結論できる。
〔実施例3−2:チップ表面の糖鎖の相対密度の検討〕
先ず、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcあるいはTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcと、糖鎖を有していない分子が結合したリンカー化合物(非糖鎖−リンカー結合化合物、以下、Mono−Glcと呼ぶ)とを溶液中で混合してチップへの固定化を行い、その混合比(仕込み比)によるチップ上のリガンドである硫酸化二糖の密度変化について、ATR−FT−IR法を用いて検討した。溶液中のTri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcあるいはTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの割合は、0,25,50,75,100%と変化させた。その結果を図5(a)、(b)に示す。図5(a)が、溶液中の混合比を変えたTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの全反射スペクトルであり、図5(b)が、溶液中の混合比を変えたTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの全反射スペクトルである。
波数(wavenumber)1200−1303cm−1の範囲に硫酸基由来のS=0伸縮振動が観測されたため、この領域の吸光度曲線を用いて多変量解析法により硫酸基の定量を行い、溶液中のリガンド複合体の混合比に対するチップ上の硫酸基の相対強度をプロットした。その結果を図6(a)、(b)に示す。図6(a)が、溶液中のTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの混合比に対するチップ上の硫酸基の相対強度を示すグラフであり、図6(b)が、溶液中のTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの混合比に対するチップ上の硫酸基の相対強度を示すグラフである。図6(a)、(b)に示す一次曲線の相関係数は、それぞれ0.9993、0.9610であることから、リガンドである硫酸化二糖のチップへの固定化率(チップ表面の糖鎖の密度)は何れも溶液中のリガンド複合体の存在比に比例することが示された。
〔実施例3−3:糖鎖の相対密度が、h−vWFとの相互作用に与える影響の検討〕
続いて、チップ表面のリガンドである硫酸化二糖の相対密度が、タンパク質との相互作用に与える影響について検討した。ここでは、ヒト血漿由来vWF(以下、h−vWFと呼ぶ)との相互作用について解析を行った。
上記3種の各リガンド複合体(Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc)とMono−Glcとの混合比を、それぞれ100/0、および、20/80に変えて、6種のチップを作成し、h−vWFとの相互作用をSPR法で観測した。ここで、SPR法による測定の手順について説明する。
測定には、SPR670(日本レーザー電子株式会社製)を用いた。また、センサチップには、13×20×0.7mmのガラス基盤に接着層として2nmのクロムを蒸着し、さらにその上に50nmの金薄膜を蒸着したもの(日本レーザー電子株式会社製)を用い、UVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製NL−UV253)に入れて紫外線を30分間照射し、オゾンでチップ表面を洗浄した。
次に、センサチップを専用のPTFEセル(日本レーザー電子株式会社製)に装着した後、上記6種の各チップをメタノール/水=1/1の混合溶液(但し、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc混合の場合はメタノール溶液)に溶解し(0.1mM)、この溶液を50μl取ってPTFEセルに入れ、パラフィルムで密封した。このチップを装着したPTFEセルを、室温でBio Dancer(New Brunswick Scientific社製)上で終夜緩やかに振とうした。
このチップをメタノールで6回洗浄し、水で1回洗浄した後、もう一度メタノール、水の順で1回ずつ洗浄した。風乾後、SPR670のセンサーチップカートリッジに取り付けた。ランニングバッファーでチップ表面を十分平衡化した後、レーザー光を金膜に照射し、その時観測される表面プラズモン共鳴角度変化を観察した。ランニングバッファーは、pH7.4の等張リン酸緩衝溶液(PBS)を用いた。また、SPR測定はすべて25℃の温度で行った。bFGFは、STRATHMANN BIOTEC AG社製(Recombiant Human FGF−basic,MW;17000,Lot No.;471120)のものを用い、h−vWFは、CALBIOCHEM社製(von Willebrand Factor,Human Plasma,MW;270000(Monomer Unit換算),Lot No.;B41632)を使用した。
このSPR測定を行う際に、h−vWFの濃度を10,20,40,80,160nMと変えながら、各チップ上に注入すると、結合相互作用が観測され、h−vWFがチップ上に固定化されている様子が観察された。この際、リガンドである硫酸化二糖を変性させずにh−vWFをチップから完全に解離させる解離剤が見つからなかったため、解離定数(K)の算出はチップ上のh−vWFの結合量から求めた。h−vWFの結合量は、リガンド複合体が固定化された状態をベースとし、濃度を変えて注入したh−vWFのセンサーグラムのカーブがほぼ一定になったところの差を用いた。
図7(a)〜(c)には、上記3種の各リガンド複合体(Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc)とMono−Glcとの混合比が100/0の場合の結合相互作用を示す。(a)はMono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合、(b)はTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合、(c)はTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合である。また、図8(a)〜(c)には、上記3種の各リガンド複合体(Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc)とMono−Glcとの混合比が20/80の場合の結合相互作用を示す。(a)はMono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合、(b)はTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合、(c)はTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合である。
この結果から得られた結合量を、h−vWFの濃度ごとにプロットしたものを図9(a)〜(c)に示す。(a)はMono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合、(b)はTri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合、(c)はTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcの場合である。この図9には、各グラフのカーブから解離定数(K)を算出した結果も示している。
図9(a)に示すように、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0、および、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=20/80としてリガンドである硫酸化二糖を固定化したチップを用いた場合には、解離定数はそれぞれK=35nMおよび41nMとなった。図9(b)に示すように、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0、および、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=20/80としてリガンドである硫酸化二糖を固定化したチップを用いた場合には、解離定数はそれぞれK=27nMおよび24nMとなった。さらに、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcto/Mono−Glc=100/0、および、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcto/Mono−Glc=20/80としてリガンドである硫酸化二糖を固定化したチップを用いた場合には、解離定数はそれぞれK=32nMおよび35nMとなった。
これらの結果から、アナライトとしてh−vWFを用いた場合、リガンドである糖鎖のチップ上の存在比を変化させても親和性に与える影響は殆ど無いことがわかった。また、糖鎖間距離が異なるリガンド複合体を固定化したチップを用いても、h−vWFとの相互作用において糖鎖間距離の差が解離定数の値に影響を与えなかった。これはh−vWFが多量体構造をとっているために複数のヘパリン結合性ドメインが存在し、その影響により解離速度が著しく遅くなり、糖鎖間距離の差が解離定数に反映されなかったものと考えられた。
〔実施例3−4:糖鎖の相対密度が、タンパク質との相互作用に与える影響の検討〕
そこで、1つのヘパリン結合性ドメインを有するAlループ部分のみを有する大腸菌由来のリコンビナントヒトvWF部分タンパク質(以下、rhvWF−A1と呼ぶ)を用いれば、チップ上にクラスター化した糖鎖とタンパク質間の相互作用において、糖鎖間距離の差が糖鎖−糖鎖結合性タンパク質間の相互作用に与える影響を検討できると考えて、以下のような実験を行った。rhvWF−A1は文献(M.A.Cruz,R.I.Handin & R.J.Wise,J.Biol.Chem.268巻,21238頁,1993年)に従って調製した。
ここでは、リガンド複合体として上述の上記3種の各リガンド複合体(Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc)、および、Mono−Glcを用いて、上記3種の各リガンド複合体/Mono−Glcの存在比を、それぞれ100/0,50/50と変えて作成したチップを用いた。rhvWF−A1濃度を変化させてチップとの結合相互作用を測定した結果を図10〜図12に示す。なお、図10(a)は、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0でチップを作成した場合であり、図10(b)は、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=50/50の場合である。また、図11(a)は、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0でチップを作成した場合であり、図11(b)は、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=50/50の場合である。また、図12(a)は、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=100/0でチップを作成した場合であり、図12(b)は、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glc/Mono−Glc=50/50の場合である。
これらの結果から算出した解離定数、結合定数、結合速度定数、解離速度定数を表1にまとめて示す。なお、表1において、解離定数:K(k/k)、結合定数:K(k/k)、結合速度定数:k、解離速度定数:kである。
Figure 0004628960
表1に示すように、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップの場合は、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcやTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップと比べて、解離定数の値は大きくなった(K=2.60μM)。また、チップ上の糖鎖の固定化密度を相対的に小さくすると解離定数の値はさらに大きくなった(K=3.79μM)。一方、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップでは、チップ上の固定化密度を相対的に小さくした場合、若干の解離定数の値の増加が見られた(K=1.20μM→1.50μM)。また、Tetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップでは、チップ上の固定化密度を変化させても、解離定数はほとんど変わらなかった(K=0.99μM→1.00μM)。
また、表1に示すように、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップの場合は、他の2つのリガンド複合体と固定したチップと比べて、1オーダー高い解離速度定数(k)を有することが確認された。このことから、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcおよびTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcは、分子内で硫酸化オリゴ糖鎖間距離が制御された糖鎖クラスター構造を有しているため、チップ上の糖鎖の固定化密度を相対的に低下させてもその影響を受けにくいもとの考えられる。
つまり、rhvWF−A1との相互作用においては、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップでは、チップ上の相対的な糖鎖固定化密度を低下させると、結合力が低下してしまうことが確認された。これに対し、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcやTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップでは、チップ上の相対的な糖鎖固定化密度を低下させても、その結合力はあまり変化しないことがわかった。
以上の結果から、硫酸化オリゴ糖鎖−糖鎖結合タンパク質間の相互作用において、結合力を増大させるには、Mono−GlcNS6S−IdoA2S−Glcを固定化したチップのように、同じリガンド複合体構造を有する硫酸化オリゴ糖鎖をチップ上に2次元的にクラスター化させるだけでは不十分であり、Tri−GlcNS6S−IdoA2S−GlcやTetra−GlcNS6S−IdoA2S−Glcのように、分子レベルで糖鎖間距離が制御されたクラスター構造が必要であることが裏付けられた。
〔実施例4:リンカー化合物(化合物26)およびリガンド複合体(化合物27)の合成〕
本発明にかかるリンカー化合物の一つ、すなわち、前記一般式(1)にて、aが1、bが4、dが1、eが4であり、Xが前記一般式(4)にて表され、q,q,qが2であり、r,r,r,t,t,t,u,u,uが0である構造を有するリンカー化合物(化合物26)、および前記一般式(7)にて表され、aが1、bが4、dが1、eが4であり、q,q,qが2であり、r,r,r,t,t,t,u,u,uが0であり、Rが水素(H)であり、Rが一般式(6−2)である構造を有するリガンド複合体(化合物27)は以下の手順で合成した。図13には、このリンカー化合物(化合物26)を合成する過程を示す。また、図14にはこのリンカー化合物(化合物26)からリガンド複合体(化合物27)を合成する過程を示す。なお、本実施例4の説明において、各化合物に付記している番号は図13および図14に記載の番号に相当する。
〔測定方法、試薬等〕
H−NMRスペクトルの測定には、JOEL−Delta600 Spectrometerを用いた。化学シフトは、CDClの場合はテトラメチルシラン(0.00ppm)を基準物質にしてδ値で表した。DOの場合はDHO(4.65ppm)を基準物質にしてδ値で表した。質量分析はPerSeptive Biosystem MarinerTM Biospectrometry Workstationを用いて測定した。中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィは、Silicagel 60(Merck、0.040−0.063mm)を用いて行った。薄層クロマトグラフィーはPrecoated Silicagel 60 F254(Merck,0.5mm)を使用した。全ての試薬、脱水溶媒は関東化学株式会社製のものを購入して使用した。
(1)N−TEG−Trivalent−(OBU)(化合物20)の合成(図13参照)
N−Trivalent−(OBu)(化合物18)(757mg,1.70mmol)と塩化ニッケル6水物(NiCl・6HO)(80.8mg,0.340mmol)をメタノール(20ml)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(322mg,8.50mmol)を5回に分けて当量分ずつ加え、室温で30分間攪拌した。メタノールを濃縮除去した後、水とクロロホルムとを加えた。セライト濾過後、濾液をクロロホルムで3回抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮した。得られた濃縮残渣(化合物19)とN−TEG−COOH(化合物6)(441mg,1.70mmol)を無水ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、室温、アルゴン雰囲気下でDIEA(592μl,3.40mmol)、HOAt(463mg,3.40mmol)、EDC・HCl(652mg,3.40mmol)を順に加え、16時間攪拌した反応液に水を加えた後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50g、クロロホルム:アセトン=50:1)で精製し、N−TEG−Trivalent−(OBu)(化合物20)を無色の油状物として得た。収量は839mg(73%)であった。
この化合物20についてH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl)測定を行ったところ、δ3.90(s,2H,−OCH CONH−),3.70−3.67(m,14H,−OCH CH O−×3,NCH CH O−),3.39(t,2H,J=4.8Hz,N CH CHO−),2.21−2.18(m,6H,−CH CH CO−×3),2.00−1.96(m,6H,−CH CHCO−×3),1.43(s,27H,−CH×9)であった。ESI−MS(positive)測定を行ったところ、m/z 697.45[(M+Na)]であった。これらによって化合物20の構造を確認することができた。なお、この化合物20の分子質量はC325811:676.41である。
(2)TEG−Trivalent−(OBUu)(化合物22)の合成(図13参照)
上記化合物20(N−TEG−Trivalent−(OBU))(837mg,1.24mmol)をメタノール(10ml)に溶解し、10%Pd/C(200mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1.5時間攪拌した。上記Pd/Cを濾去して濾液を減圧濃縮した。得られた濃縮残渣(化合物21)とチオクト酸(385mg、1.87mmol)を無水ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、室温でDIEA(325μl,1.87mmol)、HOAt(254mg,1.87mmol)、EDC・HCl(358mg,1.87mmol)を順に加え、13時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(50g、クロロホルム:メタノール=30:1)で精製し、TEG−Trivalent−(OBu)(化合物22)を無色の油状物として得た。収量は1.05g(99%)であった。
この化合物22についてH−NMRスペクトル(600MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ3.91(s,2H,−OCH CONH−),3.70−3.54(m,13H,−OCH CH O−×3,CH CH(CH−)(S−)),3.55(t,2H,J=5.5Hz,−CONHCH CH O−),3.45(q,2H,J=5.5Hz,−CONHCH CHO−),3.20−3.16(m,1H,−SCH (1H)−),3.14−3.09(m,1H,−SCH (1H)−),2.49−2.43(m,1H,−SCH CH (1H)−),2.22−2.17(m,8H,−CH CH CO−×3,−NHCOCH CH−),2.00−1.96(m,6H,−CH CHCO−×3),1.94−1.88(m,1H,−SCH CH (1H)−),1.74−1.62(m 4H,−COCH CH CH CH −),1.52−1.41(m,2H,−COCHCH CH CH−),1.44(s,27H,−CH×9)であった。これによって化合物22の構造を確認することができた。
(3)TEG−Trivalent−(NHBoc)(化合物25)の合成(図13参照)
上記化合物22(TEG−Trivalent−(OBu))(500mg,0.587mmol)をジクロロメタン/水(2.2ml,10/1)に溶解し、0℃でTFA(2ml)を加え、同温で1時間攪拌した。反応溶液を濃縮後、トルエンで共沸した。得られた濃縮残渣(化合物23)とN−Boc−フェニレンジアミン(化合物24)(612mg,2.94mmol)を無水ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、室温でDIEA(380μl,2.94mmol)、HOAt(400mg,2.94mmol)、EDC・HCl(563mg,2.94mmol)を順に加え、19時間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、水相をAcOEtで3回抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(50g、クロロホルム:アセトン=3:1)で精製し、TEG−Trivalent−(NHBoc)(化合物25)を淡黄色の油状物として得た。収量は230mg(31%)であった。
この化合物25についてH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl)測定を行ったところ、δ8.72(bs,3H,−NHCO−),7.56(bs,3H,aromatic),7.22−7.10(m,6H,aromatic),6.91(bs,3H,−NHCO−),3.85(s,2H,−OCH CONH−),3.67−3.57(m,9H,ethylene glycol chain,CH2CH(CH−)(S−)),3.55−3.47(m,6H,ethylene glycol chain,−CONHCH CH O−),3.38(q,2H,J=5.2Hz,−CONHCH CHO−),3.14(ddd,1H,J=5.5,6.9,12.4Hz,−SCH (1H)−),3.08(ddd,1H,J=6.9,6.9,12.4Hz,−SCH (1H)−),2.43−2.35(m,7H,−CH CH CO−×3,−SCH CH (1H)−),2.08(t,2H,J=6.9Hz,−NHCOCH CH−),2.17−2.12(m,6H,−CH CHCO−×3),1.88−1.83(m,1H,−SCH CH (1H)−),1.65−1.50(m 4H,−COCH CH CH CH −),1.50(s,27H,−CHx9),1.46−1.29(m,2H,−COCHCH CH CH−)であった。これらによって化合物25の構造を確認することができた。
(4)リガンド複合体TEG−Trivalent−(Mal)(化合物27)の合成(図13および図14参照)
上記化合物25(TEG−Trivalent−(OBu))(500mg,0.587mmol)をジクロロメタン/水(4.4ml,10/1)に溶解し、0℃でTFA(2ml)を加え、同温で1.5時間攪拌した。反応溶液を濃縮後、トルエンで共佛した。得られた残渣(化合物26)は精製することなく、次の還元アミノ化反応に用いた。収量は252mgであった。
以下、図14にしたがって説明する。得られた残渣(化合物26)(12.1mg,8.88μmol)とマルトース(9.60mg,26.7μmol)をヂメチルアセトアミド/水(1:1,600μl)に溶解し、37℃で7時間放置した。反応液に酢酸(30μl)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.58mg,88.8μmol)を加え、37℃でさらに70時間放置した。反応液を凍結乾燥した後、得られた残渣は、分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、メタノール/水=50/50)によって精製した。リガンド複合体TEG−Trivalent−(Mal)(化合物27)は白色の固体として得られた。
この化合物27についてH−NMRスペクトル(600MHz,DO)測定を行ったところ、δ7.02(dd,3H,J=7.6,8.2Hz,aromatic),6.72(s,3H,aromatic),6.60(dd,3H,J=1.4,7.6Hz,aromatic),6.44(dd,3H,J=1.4,8.2Hz,aromatic),4.91(d,3H,J=3.4Hz,H−1’×3),3.82−3.73(m,8H,H−2×3,H−5×3,−OCH CONH−),3.73−3.67(m,9H,H−3×3,H−5’×3,H−6a’×3),3.65(dd,3H,J=2.1,12.4Hz,H−6b’×3),3.59(dd,3H,J=4.8,12.4Hz,H−6a×3),3.55(dd,3H,J=5.5,6.2Hz,H−4×3)3.55(dd,3H,J=9.6,9.6Hz,H−3’×3),3.50−3.36(m,12H,−OCH CH O−×3),3.45−3.40(m,3H,H−6b×3),3.42−3.38(m,1H,CH CH(CH−)(S−)),3.38(dd,3H,J=3.4,10.3Hz,H−2’×3),3.40(t,2H,J=5.5Hz,−CONHCH CH O−),3.25(dd,3H,J=9.6,9.6Hz,H−4’×3),3.15−3.10(m,5H,−CONHCH CHO−,H−1a×3),3.02(dd,J=8.2,13.7Hz,H−1b×3),3.01−2.97(m,1H,−SCH (1H)−),2.96−2.91(m,1H,−SCH (1H)−),2.29−2.25(m,6H,CH CH CO−×3),2.26−2.19(m,1H,−SCH CH (1H)−),2.05−1.98(m,6H,−CH CHCO−×3),1.99(t,2H,J=6.9Hz,−NHCOCH CH−),1.74−1.69(m,1H,−SCH CH (1H)−),1.50−1.30(m 4H,−COCH CH CH CH −),1.16−1.10(m,2H,−COCHCH CH CH−)であった。
ESI−MS測定を行ったところ、m/z 981.41[(M+2Na)2+]であった。これらによって化合物27の構造を確認することができた。なお、この化合物27の分子質量はC8213239:1916.80である。
〔実施例5:リンカー化合物(化合物32)およびリガンド複合体(化合物34)の合成〕
本発明にかかるリンカー化合物の一つ、すなわち、前記一般式(1)にて、aが4、bが0、dが0、eが0であり、Xが前記一般式(4)にて表され、q,q,qが2であり、r,r,rが1であり、t,t,tが4であり、u,u,uが1である構造を有するリンカー化合物(化合物32)、および前記一般式(7)にて表され、aが4、bが0、dが0、eが0であり、q,q,qが2であり、r,r,rが1であり、t,t,tが4であり、u,u,uが1であり、R’が水素(H)であり、Rが一般式(6−2)である構造を有するリガンド複合体(化合物34)は以下の手順で合成した。図15には、このリンカー化合物(化合物32)を合成する過程を示す。図16には上記リンカー化合物(化合物32)を合成する過程で用いられる化合物30の合成過程を示す。また、図17にはこのリンカー化合物(化合物32)からリガンド複合体(化合物34)を合成する過程を示す。なお、本実施例5の説明において、各化合物に付記している番号は図15、図16および図17に記載の番号に相当する。
〔測定方法、試薬等〕
H−NMRスペクトルの測定には、JOEL−Delta600 Spectrometerを用いた。化学シフトは、CDClの場合はテトラメチルシラン(0.00ppm)を基準物質にしてδ値で表した。DOの場合はDHO(4.65ppm)を基準物質にしてδ値で表した。質量分析はPerSeptive Biosystem MarinerTM Biospectrometry Workstationを用いて測定した。中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィは、Silicagel 60(Merck、0.040−0.063mm)を用いて行った。薄層クロマトグラフィーはPrecoated Silicagel 60 F254(Merck、0.5mm)を使用した。全ての試薬、脱水溶媒は関東化学株式会社製のものを購入して使用した。
(1)Trivalent−(OBu)(化合物28)の合成(図15参照)
N−Trivalent−(OBu)(化合物18)(757mg,1.70mmol)とNiCl・6HO(80.8mg,0.340mmol)をメタノール(20ml)に溶解し、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(322mg,8.50mmol)を5回に分けて当量分ずつ加え、その後反応液を室温で30分間攪拌した。メタノールを濃縮して除去し、反応溶液に水とクロロホルムを加えた。セライト濾過後、水相をクロロホルムで3回抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮した。得られた濃縮残渣(化合物19)とチオクト酸(351mg,1.70mmol)を無水ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、室温でDIEA(592μl,3.40mmol)、HOAt(463mg,3.40mmol)、EDC−HCl(652mg,3.40mmol)を順に加え、16時間攪拌した。反応溶液に水を加えた後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を飽和食塩水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(50g、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、Trivalent−(OBu)(化合物28)を淡黄色の油状物として得た。収量は750mg(73%)であった。
この化合物28についてH−NMRスペクトル(600MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ5.91(s,1H,−CONH−),3.57(ddd,1H,J=6.2,6.2,12.4Hz,CH CH(CH−)(S−)),3.18(ddd,1H,J=5.5,5.5,12.4Hz,−SCH (1H)−),3.11(ddd,1H,J=6.9,7.6,12.4Hz,−SCH (1H)−),2.46(ddd,1H,J=6.2,6.2,12.4Hz,−SCH CH (1H)−),2.22(t,8H,J=7.6Hz,−CH CH CO−×3),2.11(dd,2H,J=6.9,7.6Hz,−COCH CHCHCH−),1.97(t,6H,J=7.6Hz,−CH CHCO−×3),1.91(ddd,1H,J=6.9,6.9,12.4Hz−SCH CH (1H)−),1.74−1.57(m 4H,−COCH CH CH CH −),1.51−1.38(m,2H,−COCHCH CH CH−),1.43(s,27H,−CH×9)であった。また13C−NMR(150MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ172.9,172.1,80.7,57.3,56.3,40.2,38.5,37.2,34.6,30.0,29.8,28.9,28.1,25.3であった。これらによって化合物28の構造を確認することができた。
(2)N−TEG−NHBoc(化合物33)の合成(図16参照)
−TEG−COEt(化合物5)(500mg,1.64mmol)を1,4−ジオキサン(6ml)に溶解し、0℃で水酸化ナトリウム水溶液(1ml,150mg/ml)を反応液に加え、同温で3時間攪拌した。1,4−ジオキサンを濃縮除去した後、5%硫酸水素カリウム水溶液とクロロホルムを加えた。水相をクロロホルムで3回抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた残渣(化合物6)は精製することなく、次のカップリング反応に用いられた。収量は435mg(96%)であった。得られた濃縮残渣とN−Boc−フェニレンジアミン(化合物24)(327mg,1.57mmol)を無水ジメチルホルムアミドに溶解し、アルゴン雰囲気下、室温でDIEA(410μl,2.35mmol)、HOAt(320mg,2.35mmol)、EDC・HCl(451mg,2.35mmol)を順に加え、14時間攪拌した。反応溶液に水を加えた後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を飽和食塩水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(50g、トルエン:酢酸エチル=1:1)で精製し、N−TEG−NHBoc(化合物33)を淡黄色の油状物として得た。収量は597mg(81%)であった。
この化合物33についてH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl)測定を行ったところ、δ8.81(bs,1H,−NHCO−),7.61(s,1H,aromatic),7.35(d,1H,J=6.9Hz,aromatic),7.26−7.20(m,2H,aromatic),6.71(bs,1H,−NHCO−),4.10(s,2H,−OCH CONH−),3.78−3.70(m,8H,ethyleneglycol chain),3.67−3.62(m,6H,ethylene glycol chain,−CONHCH CH O−),3.35(t,2H,J=5.5Hz,−CONHCH CHO−)であった。また、13C−NMR(150MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ168.3,152.6,139.0,138.0,129.5,114.5,114.3,109.8,80.5,71.2,70.6,70.6,70.6,70.5,70.4,70.2,70.0,50.6,28.3であった。これらによって化合物33の構造を確認することができた。
(3)HN−TEG−NHBoc(化合物30)の合成(図16参照)
上記化合物33(N−TEG−NHBoc)(200mg,0.425mmol)をメタノール(4ml)に溶解し、10%Pd/C(200mg)を加え、水素雰囲気下、室温で1.5時間攪拌した。上記Pd/Cを濾去した後、減圧濃縮した。得られた残渣(化合物30)は精製することなく、次の反応に用いた。収量は174mg(93%)であった。
(4)Trivalent−(TEG−NHBoc)(化合物31)の合成(図15参照)
上記化合物28(Trivalent−(OBu))(64.2mg,0.106mmol)をジクロロメタン/水(2.2ml,10/1)に溶解し、0℃でTFA(2ml)を加え、同温で1時間攪拌した。反応液を濃縮後、トルエンで共佛した。得られた濃縮残渣(化合物29)とHN−TEG−NHBoc(化合物30)(174mg,0.425mmol)を無水ジメチルホルムアミド(3ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、室温でDIEA(92.6μl,0.532mmol)、HOAt(72.3mg,0.532mmol)、EDC・HCl(102mg,0.532mmol)を順に加え、14時間攪拌した。反応溶液に水を加えた後、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、乾燥剤を濾去して減圧濃縮を行った。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(50g、クロロホルム:メタノール=30:1)で精製し、Trivalent−(TEG−NHBoc)(化合物31)を淡黄色の油状物として得た。収量は64.7mg(36%)であった。
この化合物31についてH−NMRスペクトル(600MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ8.88(bs,3H,−NHCO−×3),7.67(bs,3H,aromatic),7.42(bs,3H,−NHCO−×3),7.31(d,3H,J=7.7Hz,aromatic),7.27(d,3H,J=8.2Hz,aromatic),7.22(dd,3H,J=7.7,8.2Hz,aromatic),6.63(bt,3H,J=4.8Hz,−NHCO−×3),4.11(s,6H,−OCH CONH−×3),3.78−3.58(m,36H,ethylene glycol chain),3.57−3.49(m,1H,CH CH(CH−)(S−)),3.50(t,6H,J=5.5Hz,−CONHCH CH O−×3),3.36(q,6H,J=5.2Hz,−CONHCH CHO−×3),3.15(ddd,1H,J=5.5,6.9,11.0Hz,−SCH (1H)−),3.09(ddd,1H,J=6.9,6.9,11.0Hz,−SCH (1H)−),2.42(ddd,1H,J=6.9,6.9,12.4Hz,−SCH CH (1H)−),2.12−2.06(m,8H,−CH CH CO−×3,−NHCOCH CHCH−),1.95−1.88(m,6H,−CH CHCO−×3),1.87(ddd,1H,J=6.9,6.9,12.4Hz,−SCH CH (1H)−),1.70−1.50(m 4H,−COCH CH CH CH −),1.50(s,27H,−CH×9),1.48−1.33(m,2H,−COCHCH CH CH−)であった。また、13C−NMR(150MHz,CDCl)測定を行ったところ、δ173.3,172.8.168.4,152.8,139.3,137.8,129.3,114.5,114.4,110.1,80.2,71.1,70.5,70.4,70.4,70.3,70.1,70.1,69.7,57.3,56.4,40.1,39.2,38.3,37.0,34.5,31.1,30.5,28.8,28.3,25.4であった。また、ESI−MS測定を行ったところ、m/z 875.41[(M+2Na)2+]であった。これらによって化合物31の構造を確認することができた。なお、この化合物31の分子質量はC811281025:1704.85である。
(5)リガンド複合体Trivalent−(TEG−Mal)(化合物34)の合成(図16および図17参照)
上記化合物31(Trivalent−(TEG−NHBoc))(64.7mg,37.9μmol)をジクロロメタン/水(2.2ml,10/1)に溶解し、0℃でTFA(2ml)を加え、同温で2.5時間攪拌した。反応液を濃縮後、トルエンで共沸した。得られた残渣(化合物32)は精製することなく、次の還元アミノ化反応に用いた。収量は70mgであった。
以下、図17にしたがって説明する。得られた濃縮残渣(化合物32)(6.95mg、3.77μmol含有)とマルトース(4.07mg,11.3μmol)をジメチルアセトアミド/水(1:1,400μl)に溶解し、37℃で13時間放置した。その後、酢酸(20μl)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(2.24mg,35.6μmol)を反応液に加え、37℃で59時間放置した。反応液を凍結乾燥した後、得られた残渣を分取高速液体クロマトグラフィ(ODSカラム、メタノール/水=50/50))によって精製し、Trivalent−(TEG−Mal)(化合物34)を白色固体として得た。収量は4.46mg(50%)であった。
化合物34についてH−NMRスペクトル(600MHz,DO)測定を行ったところ、δ7.05(dd,3H,J=7.6,8.2Hz,aromatic),6.77(s,3H,aromatic),6.63(dd,3H,J=1.4,7.6Hz,aromatic),6.47(dd,3H,J=1.4,8.2Hz,aromatic),4.92(d,3H,J=3.4Hz,H−1’×3),4.01(s,6H,−OCH CONH−×3),3.81(ddd,3H,J=2.1,4.8,7.6Hz,H−2×3),3.71(ddd,3H,J=4.1,7.6Hz,H−5×3),3.74−3.68(m,9H,H−3×3,H−5’×3,H−6a’×3),3.65(dd,3H,J=2.1,12.4Hz,H−6b’×3),3.64−3.60(m,3H,H−6a×3),3.64−3.42(m,36H,−OCH CH O−×9),3.56−3.52(m,6H,H−4×3,H−3’×3),3.47−3.43(m,3H,H−6b×3),3.42−3.39(m,1H,CH CH(CH−)(S−)),3.38(dd,3H,J=3.4,9.6Hz,H−2’×3),3.37(t,6H,J=4.8Hz,−CONHCH CH O−×3),3.26(dd,3H,J=9.6,9.6Hz,H−4’×3),3.15(dd,3H,J=4.8,13.7Hz,H−1a×3),3.14(t,6H,−CONHCH CHO−×3),3.06(dd,J=7.6,13.7Hz,H−1b×3),3.01(ddd,1H,J=6.2,6.2,11.0Hz,−SCH (1H)−),2.95(ddd,1H,J=6.9,6.9,11.0Hz,−SCH (1H)−),2.24(ddd,1H,J=6.2,6.2,12.4Hz,−SCH CH (1H)−),2.00(t,2H,J=6.9Hz,−NHCOCH CH−),1.96−1.92(m,6H,CH CH CO−×3),1.77−1.69(m,7H,−CH CHCO−×3,−SCH CH (1H)−),1.52−1.32(m 4H,−COCH CH CH CH −),1.20−1.14(m,2H,−COCHCH CH CH−)であった。またESI−MS測定を行ったところ、m/z 1214.57[(M+2Na)2+]であった。これらによって化合物34の構造を確認することができた。なお、この化合物34の分子質量はC1021701049:2283.06である。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
本発明のリンカー化合物は、以上のように、3単位以上の糖分子を導入可能な部位として、芳香族アミノ基末端を有している。また、表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサチップやアフィニティクロマトグラフィの担体等のタンパク質分析用の支持体に結合可能な部位として、S−S結合を有している。さらに、非特異的な疎水性相互作用を極力抑えることができ、かつ、金属結合に供されるジスルフィド基までの長さを容易に調整することができるように、ジスルフィド基と芳香族アミノ基との間にオリゴエチレンオキシドを有している。
それゆえ、上記リンカー化合物を用いることによって、上記支持体表面上に、3単位以上の糖分子を再現性よく2次元的に配列させることができるという効果を奏する。また、上記リンカー化合物は、タンパク質との非特異的な相互作用の影響はほぼ無視することができるので、糖分子とタンパク質との相互作用を観測する際に、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になる。さらに、効率よく金属−硫黄結合を形成することができる。
また、本発明のリガンド複合体は、上記リンカー化合物に糖分子を導入してなるものである。
それゆえ、上記リガンド複合体をタンパク質分析用の支持体表面に導入することにより、2次元的に複数の糖分子を再現性よく配列することができるので、糖分子の生物活性を再現性よく評価することが可能になるという効果を奏する。さらに、効率よく金属−硫黄結合を形成することができるという効果を奏する。
本発明によれば、センサチップ表面上の糖鎖間距離を制御し、オリゴ糖を再現性よく2次元的に配列し得るリンカー化合物、及び、該リンカー化合物に糖分子が導入されてなるリガンド複合体を得ることができる。このリンカー化合物およびリガンド複合体は、オリゴ糖鎖チップの実用化と一般化のために非常に有用である。
オリゴ糖鎖を固定化したチップが糖鎖やタンパク質の機能解析のツールとして発展すれば、オリゴ糖鎖が関与する生命現象の解明に貢献するだけでなく、医薬品開発における重要な技術となることが期待される。それゆえ、本発明の有用性は高いと考えられる。

Claims (12)

  1. 糖分子を支持体の表面に配列させるために用いられるリンカー化合物であって、
    一般式(1)
    Figure 0004628960
    (式中、a,b,d,eは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数)にて表される構造を備え、
    上記X一般式(3)
    Figure 0004628960
    (式中、m ,m ,m ,m ,p ,p は、それぞれ独立して、1以上6以下の整数)にて表される構造、あるいは一般式(4)
    Figure 0004628960
    (式中、q ,q ,q ,r ,r ,r ,t ,t ,t ,u ,u ,u は、それぞれ独立して、0以上6以下の整数)にて表される構造を備えており、bが0の場合は、Xの内部にオリゴエチレンオキシドを有していることを特徴とするリンカー化合物。
  2. 一般式(2)
    Figure 0004628960
    (式中、nは1以上6以下の整数)にて表される構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載のリンカー化合物。
  3. 請求項1または2に記載のリンカー化合物の芳香族アミノ基に、糖分子を導入してなることを特徴とするリガンド複合体。
  4. 糖分子を支持体の表面に配列させるために用いられるリガンド複合体であって、
    一般式(5)
    Figure 0004628960
    (式中、m,m,m,m,n,p,pは、それぞれ独立して、1以上6以下の整数。R’は水素(H)またはR。)にて表される構造を備え、
    上記Rが式式(6−1)ないし式(6−6)
    Figure 0004628960
    から選択されるオリゴ糖由来化合物であることを特徴とするリガンド複合体。
  5. 糖分子を支持体の表面に配列させるために用いられるリガンド複合体であって、
    一般式(7)
    Figure 0004628960
    (式中、a,b,d,e,q,q,q,r,r,r,t,t,t,u,u,uは、それぞれ独立して、0以上6以下の整数。ただし、bが0のときはt,tおよびtは0ではなく、t,tおよびtが0のときはbは0ではない。また、R’は水素(H)またはR。)にて表される構造を備え、
    上記Rが式(6−1)ないし式(6−6)
    Figure 0004628960
    から選択されるオリゴ糖由来化合物であることを特徴とするリガンド複合体。
  6. 請求項1または2に記載のリンカー化合物の製造方法であって、
    チオクト酸と、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護された分岐鎖を3鎖以上有するアミン化合物との縮合反応を行うステップと、
    上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護するステップとを含んでいることを特徴とするリンカー化合物の製造方法。
  7. 請求項1または2に記載のリンカー化合物と、糖分子とを用いて、還元アミノ化反応を行うことを特徴とするリガンド複合体の製造方法。
  8. 上記糖分子として、一般式(8)
    Figure 0004628960
    にて表されるヘパリン部分二糖構造を有する硫酸化オリゴ糖を用いることを特徴とする請求項に記載のリガンド複合体の製造方法。
  9. 上記糖分子として、群(9)
    Figure 0004628960
    から選択されるオリゴ糖の少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項に記載のリガンド複合体の製造方法。
  10. 糖分子を支持体の表面に配列させる糖分子の導入方法であって、
    請求項ないしのいずれか1項に記載のリガンド複合体を含む溶液と表面に金属を有する支持体とを接触させることを特徴とする糖分子の導入方法。
  11. 請求項ないしのいずれか1項に記載のリガンド複合体を、表面に金属を有する支持体上に固定化させてなることを特徴とするリガンド担持体。
  12. 請求項ないしのいずれか1項に記載のリガンド複合体を表面に固定化させてなることを特徴とする表面プラズモン共鳴用センサチップ。
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