JP4800512B2 - 譜面台傾斜機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不使用時には略水平にでき、使用時には傾斜させることができる譜面台傾斜機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような譜面台傾斜機構としては、グランドピアノに用いられるものがある。代表的なものとしては、譜面台の背面に、板状部材(支え部材という)を蝶番により揺動可能に吊設し、一方、グランドピアノ側には前後方向に配設される本持元木に、左右方向に溝を複数本形成しておく。譜面台を引き起こすと、支え部材の先端が、複数本の溝の内のどれかに係止し、その姿勢で譜面台が静止される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術によれば、傾斜させた台を水平に戻す際に手を譜面台の背面に回し、支え部材と溝との係止を解かねばならない。
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、手を譜面台の背面に回さなくとも容易に譜面台を水平にできる譜面台傾斜機構を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
かかる課題を解決するためになされた請求項1の本発明は、譜面台を略水平な状態から傾斜させると共に、予め定められた第1の角度で傾斜保持する譜面台傾斜機構において、
前記譜面台が設置される箇所であって該譜面台の傾斜動作の軸位置に立設される略円盤状の部材であって、該円盤の軸が前記譜面台の傾斜動作の軸と一致している支持円盤と、
該支持円盤と同軸に且つ回転可能に重合される略円盤状の部材であって、前記譜面台に固定される可動円盤と、を備え、前記支持円盤および前記可動円盤の一方の重合面には、
他方の重合面に向かって板バネにより付勢された突部が形成され、
該他方の重合面には、前記譜面台が略水平にされた際に前記突部が入り込む位置を起点として、前記譜面台が前記第1の角度傾斜された際に前記突部が入り込む位置を終点とする第1溝と、該第1溝の起点を終点とし、該第1溝の内周側を通って、前記譜面台が前記第1の角度よりも傾斜の大きな角度として予め設定された第2の角度傾斜された際に前記突部が入り込むことが可能な位置を起点とする第2溝と、該第2溝の起点と、前記第1溝の終点とを連絡する第3溝と、が形成され、
更に前記第1溝は、当該第1溝が形成された円盤と同心の略円弧状にされており、その終点には前記突部が入り込むための穴が形成されており、
前記穴は、前記第1溝側の壁面が前記重合面に対して略垂直に形成され、また前記第3溝側の壁面が前記第2溝の起点方向に向けて徐々に浅くなるように形成されており、
前記譜面台を、前記第1の角度よりも小さな傾斜角度から該第1の角度まで傾斜させると、該第1の角度よりも傾斜角度を小さくすることが一旦不能となり、
更に前記譜面台を、前記第2の角度まで傾斜させると、前記第1の角度よりも小さな傾斜角度にすることが可能にされることを特徴とする。
【0005】
つまりこの譜面台傾斜機構によれば、傾斜させる際には、譜面台を、例えば略水平の姿勢から第1の角度まで引き起こせばよい。こうすると第1の角度よりも譜面台を傾斜角度を小さくすることが一旦不能となる。なお、楽器の、譜面台が設置される箇所は多くの場合水平であり、また楽器自体も通常水平に設置されるので、以下、略水平を単に水平という。この譜面台を水平に戻すには、更に譜面台を引き起こし、第2の角度まで傾斜させると、第1の角度よりも小さな傾斜角度にすることができる。従って、手を譜面台の背面に回さなくとも、譜面台を第2の角度まで傾斜させるだけで容易に譜面台を水平に戻すことができる。
【0007】
この譜面台傾斜機構によれば、譜面台が水平の状態では突部が第1溝の起点(第2溝の終点に同じ)にある。そこから譜面台を引き起こすと、突部が第1溝に沿って移動していく。譜面台を第1の角度まで傾斜させると突部が第1溝の終点に達する。突部は、この突部が形成されなかった方の円盤に向かって板バネにより付勢されているので、第1溝の終点に達すると、そこに形成されている穴に入り込む。この結果、突部が第1溝を移動できなくなり、譜面台がその傾斜角度で静止する。なおも譜面台を傾斜させると、突部が穴から離脱して第3溝に沿って移動し、第2溝の起点に達する。この移動は、板バネの弾性により可能にされている。すると突部は第2溝に沿って移動可能となり、この結果、譜面台はその傾斜角度を小さくすることが可能となり、水平に戻る。
【0008】
譜面台が水平に戻ると、突部は第2溝の終点に達する。ここは第1溝の起点と同じであるから、譜面台を傾斜させれば、突部は再び第1溝に沿って移動する。この際、突部が第2溝を逆流する可能性があるが、第1溝が、自らが形成された円盤と同心の略円弧状にされており、突部もこの円盤と同軸に回転されるため、実際には突部が第2溝を逆流することは殆どない。これを確実に防ぐには請求項2のようにすれば良い。すなわち請求項2に記載の譜面台傾斜機構は、請求項1に記載の譜面台傾斜機構において、前記第2溝が、その終点付近は前記第1溝の起点付近よりも浅くされており、且つ該終点付近から該第1溝の起点に掛けて段差状に深くなるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
こうすると、第1溝の起点(第2溝の終点)にある突部が第2溝を逆流するには前記段差を昇る必要がある。このような非現実的な動きは突部はしないため、譜面台を傾斜させる際に突部が第2溝を逆流するのを確実に防止できる。
但しこのように第1溝、第2溝の深さに差を付けると、これらの溝が形成された円盤が厚くなる虞がある。特に第1溝の終点には穴を形成する必要がある。これを防ぐには請求項3のようにすればよい。すなわち請求項3に記載の譜面台傾斜機構は、請求項2に記載の譜面台傾斜機構において、前記第1溝が、その起点からその終点に掛けて徐々に浅くなるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
こうすれば、第1溝は、その起点が第2溝の終点付近よりも深くされているにも拘わらず、その終点に掛けて徐々に浅くされているため、終点に穴を形成するためにその円盤を十分に厚くする必要がない。
また、請求項4のようにしても効果的である。すなわち請求項4に記載の譜面台傾斜機構は、請求項2または3に記載の譜面台傾斜機構において、前記第2溝が、その起点からその終点に掛けて徐々に浅くなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
こうすると、第1溝の起点を第2溝の終点付近よりも極端に深くしなくとも、前記段差を形成することができる。また第1溝の終点の穴と第2溝の起点との深さの差が小さくなるので、第3溝を形成し易くなるという利点もある。
また、請求項1から4のいずれかに記載の譜面台傾斜機構、前記第1の角度よりも大きく前記第2の角度よりも小さな第3の角度が予め設定されており、前記譜面台を、前記第3の角度よりも小さな傾斜角度から該第3の角度まで傾斜させると、該第3の角度よりも傾斜角度を小さくすることが一旦不能となるように構成してもよい
【0012】
こうすると、譜面台を2種類の傾斜角度で静止させることが可能となる。もちろん、更に多くの姿勢にて譜面台を静止可能に構成しても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態を図面と共に説明する。まず、図1は本発明の譜面台傾斜機構を適用した譜面台1とその周辺を示す側面図である。
譜面台1は、位置Pを軸として水平姿勢1’から垂直姿勢1''の範囲で揺動可能に本持元木3に取り付けられている。そして譜面台1は、水平姿勢から角度αだけ傾斜された姿勢にて静止可能にされている(▲1▼)。この状態では、少々の力が加わった程度では譜面台1は時計方向に回動しない。静止された譜面台1は、更に本図の反時計方向に揺動され、垂直になる(▲2▼)と、容易に傾斜角度αを超えて水平姿勢に戻す(▲3▼)ことが可能にされている。なお図中、符号7は可動円盤、符号9は可動円盤7を譜面台1に固定するための耳片、符号11は可動円盤7の背後に隠れている支持円盤(後述)を本持元木3に固定するための耳片、符号13は譜面台1を水平姿勢1’に保つためのストッパーである。
【0014】
本図を右から見た図を図2(a)に示す。ただし譜面台1は水平姿勢とし、支持円盤は内部を透視した。本図に示すように、可動円盤7には支持円盤17が重合されている。両円盤7、17はPを軸として互いに回動可能に固定されている。図2(b)に、可動円盤7を図2(a)の右方から見た図、図2(c)に、更に図2(b)の下方から見た図をそれぞれ示す。可動円盤7の重合面7aには板バネ21が傾斜された状態で設けられており、その先端は支持円盤17に向かって折り曲げられている(この先端を以下、突部23という)。支持円盤17には第1溝19が形成されており、この第1溝19に突部23が入り込んだ状態で両円盤7、17は重合される。
【0015】
図3に、支持円盤17の説明図を示す。図3(a)は図2(a)の支持円盤17を左方から見た図である。支持円盤17の重合面17aには、第1溝19の他、第2溝25、第3溝27が形成されている。第1溝19は、Pを中心とする円弧状になっており、第2溝25は第1溝19よりも内周側に形成されている。両溝19、25は点Xを共通の端部としており、夫々の他端A、Bを第3溝27が連絡している。図3(b)は、第1溝19に沿って支持円盤17を断面にした図である。本図に示すように第1溝19は、点Xから点A付近に掛けて徐々に浅くなるように形成されおり、点Aは穴が形成されている。
【0016】
図3(c)は、第2溝25に沿って支持円盤17を断面にした図である。但し図が煩雑にならないよう、点Xの付近から描いている。第2溝25は第1溝19とは異なり、点X付近が浅く、そこから遠ざかるに連れて(つまり点Bに掛けて)徐々に深くなるように形成されている。すなわち、点Xにおいて第1溝19と第2溝25との間には段差が形成されている。図3(d)は、第3溝27に沿って支持円盤17を断面にし拡大した図である。本図に示すように第3溝27は、点Aから徐々に浅くなる曲面29を有しており、点Bで急激に深くなるように形成されている。
【0017】
図4に、譜面台1を傾斜させたときに突部23が支持円盤17に形成された溝19、25、27内を移動する様子を示す。図4(a)は譜面台1を水平にした状態、図4(b)は譜面台1が角度αにて静止した状態、図4(c)は譜面台1を垂直にした状態を示しており、何れも図1と同方向から見た図となっている。なお、突部23と溝19、25、27の相対位置を示すために可動円盤7は透視した。
【0018】
図4(a)に示すように、譜面台1を水平にした状態では、突部23は点Xに位置している。ここから譜面台1を起こして行くと、突部23は第1溝19内を移動して行く。なお、前述のように点X付近において第1溝19と第2溝25との間には段差が形成され、第2溝25の方が浅くされているので、譜面台1を水平状態から起こして行く際に、突部23が第2溝25内を進んで行く(以下、逆流という)ことはない。譜面台1を角度αにすると、図4(b)に示すように突部23が点Aに到達し、ここに形成されている穴に嵌まり込む。これにより譜面台1はこの傾斜角度で静止する。
【0019】
この状態から譜面台1を垂直にすると、突部23は曲面29(図3(d)参照)を乗り越え点Bに到達する(図4(c)の状態)。この際、板バネ21が内周方向に撓むことにより突部23は点Bに達することができる。この状態から譜面台1を本図の時計回りに回動すると、突部23は点Bから曲面29に戻ることはできず、第2溝25内を点Xに向かって移動して行く。従って譜面台1は角度αにて静止することはなく、傾斜を小さくして行く。そして譜面台1が水平に戻されると、突部23は、前記段差を落下して点Xに到達し、図4(a)の状態に戻る。
【0020】
このような譜面台傾斜機構によれば、傾斜させる際には、譜面台1を、角度αまで引き起こせばよい。こうすると角度αよりも譜面台を傾斜角度を小さくすることが一旦不能となる。譜面台1を水平に戻すには、更に譜面台1を引き起こして垂直にすると、第1の角度よりも小さな傾斜角度にすることができる。従って、手を譜面台1の背面に回さなくとも、譜面台を垂直にするだけで容易に譜面台1を水平に戻すことができる。従って、グランドピアノのように、水平にされた譜面台を大屋根前により蓋をする構造となっている場合にはこの機構は好適である。もちろん、グランドピアノ以外の楽器に適用しても構わない。
【0021】
また、点X付近で第1溝19と第2溝25との間に段差が形成されているため、水平にされた譜面台1を傾斜させる際に突部が第2溝25を逆流するのを確実に防止できる。そしてこのように第1溝19と第2溝25との間に段差を形成しているにも拘わらず、両溝19、溝25の断面を図3(b)、図3(c)に示したように深さが変化する形状にしているので、支持円盤17の厚さを抑えることができる。
【0022】
ここで、本実施の形態の構成と本発明の構成要件との対応関係を示す。角度αが第1の角度に相当し、垂直すなわち90°が第2の角度に相当し、点Xが本発明の第1溝の起点(第2溝の終点)に相当し、点Aが本発明の第1溝の終点に相当し、点Bが本発明の第2溝の起点に相当する。
【0023】
以上、本発明を適用した一実施形態について説明してきたが、本発明はこの実施形態に何等限定されるものではなく様々な態様で実施しうる。
例えば、前記実施形態とは逆に、板バネ21を支持円盤17に設け、溝19、25、27を可動円盤7に形成しても良い。また、前記実施形態に示した構成とは異なる構成により、同様の操作で譜面台1を傾斜させたり水平に戻せたりできるように構成しても良い。
【0024】
また、角度α以外の角度で譜面台1が静止するようにしてももちろん良い。これには、溝19、25の長さや形状を変更すれば良い。また、複数の角度で譜面台1が静止するように構成しても良い。これには、第1溝19の途中にも突部23が嵌まり込む穴を形成すればよい。なお、その穴から見て点A側の第1溝19の断面形状は、第3溝27の曲面29のように緩やかに深さが変化するものにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した譜面台1とその周辺を示す側面図である。
【図2】 可動円盤7、支持円盤17が重合された様子および可動円盤7の説明図である。
【図3】 支持円盤17の説明図である。
【図4】 譜面台1を傾斜させたときに突部23が支持円盤17に形成された溝19、25、27内を移動する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
1…譜面台 3…本持元木
7…可動円盤 7a…可動円盤の重合面
17…支持円盤 17a…支持円盤の重合面
19…第1溝 21…板バネ 23…突部
25…第2溝 27…第3溝

Claims (4)

  1. 譜面台を略水平な状態から傾斜させると共に、予め定められた第1の角度で傾斜保持する譜面台傾斜機構において、
    前記譜面台が設置される箇所であって該譜面台の傾斜動作の軸位置に立設される略円盤状の部材であって、該円盤の軸が前記譜面台の傾斜動作の軸と一致している支持円盤と、
    該支持円盤と同軸に且つ回転可能に重合される略円盤状の部材であって、前記譜面台に固定される可動円盤と、
    を備え、前記支持円盤および前記可動円盤の一方の重合面には、
    他方の重合面に向かって板バネにより付勢された突部が形成され、
    該他方の重合面には、
    前記譜面台が略水平にされた際に前記突部が入り込む位置を起点として、前記譜面台が前記第1の角度傾斜された際に前記突部が入り込む位置を終点とする第1溝と、
    該第1溝の起点を終点とし、該第1溝の内周側を通って、前記譜面台が前記第1の角度よりも傾斜の大きな角度として予め設定された第2の角度傾斜された際に前記突部が入り込むことが可能な位置を起点とする第2溝と、
    該第2溝の起点と、前記第1溝の終点とを連絡する第3溝と、が形成され、
    更に前記第1溝は、当該第1溝が形成された円盤と同心の略円弧状にされており、その終点には前記突部が入り込むための穴が形成されており、
    前記穴は、前記第1溝側の壁面が前記重合面に対して略垂直に形成され、また前記第3溝側の壁面が前記第2溝の起点方向に向けて徐々に浅くなるように形成されており、
    前記譜面台を、前記第1の角度よりも小さな傾斜角度から該第1の角度まで傾斜させると、該第1の角度よりも傾斜角度を小さくすることが一旦不能となり、
    更に前記譜面台を、前記第2の角度まで傾斜させると、前記第1の角度よりも小さな傾斜角度にすることが可能にされることを特徴とする譜面台傾斜機構。
  2. 前記第2溝が、その終点付近は前記第1溝の起点付近よりも浅くされており、且つ該終点付近から該第1溝の起点に掛けて段差状に深くなるように形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の譜面台傾斜機構。
  3. 前記第1溝が、その起点からその終点に掛けて徐々に浅くなるように形成されている
    ことを特徴とする請求項2に記載の譜面台傾斜機構。
  4. 前記第2溝が、その起点からその終点に掛けて徐々に浅くなるように形成されている
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の譜面台傾斜機構。
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