JP4798892B2 - ハイドレートの製造装置および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガス、メタンガス、炭酸ガス等のハイドレート形成物質からハイドレートを製造する装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイドレートは、水分子とハイドレート形成物質分子からなる氷状の固体物質であり、水分子により形成されるかご状構造の内部にハイドレート形成物質分子を取り込んだ構造の水和物である。このハイドレートは、高いガス包蔵性、大きな生成・解離熱や生成・解離差圧、高い反応選択性等の性質を有するため、例えば天然ガス等の輸送・貯蔵手段や、蓄熱システム、アクチュエータ、ガスの分離回収等多様な用途での利用が注目されており、研究が行われている。
【0003】
従来、ハイドレートの製造では、攪拌機付きの圧力容器に水を充填し、圧力容器に設置されたジャケット式、コイル式等の熱交換器で容器内を冷却しながら、圧力容器内の気相部に天然ガス等のハイドレート形成物質を充填して所定圧力まで加圧し、水を攪拌することにより気液接触面でハイドレートを生成させ、生成したハイドレートを別の貯蔵容器に移していた。
【0004】
しかしこの方法は、高価な攪拌機能付の圧力容器を必要とする上、所定濃度で流動性を維持した状態のハイドレートスラリーを製造することは困難であった。すなわち、バッチ方式において気液接触面で生成したハイドレートは、反応を継続するとハイドレートの濃度が増加して流動性が無くなり、その後の移送や貯蔵が不便なものとなる。また、生成したハイドレートを圧力容器から取り出す際に圧力変化が生じる場合は、ハイドレートの一部が解離してしまい、ハイドレートの濃度(通例は水を含む系全体に対するハイドレートの重量もしくは体積のパーセンテージで示される)を所定のレベルに保つことが難しいという問題があった。
【0005】
一方、特開2000−264852号公報では、反応容器から水を抜き出して循環させるパイプラインの一部に反応部を設け、反応容器から抜き出したメタンガスを圧縮してパイプラインに導入し、反応部を冷却して循環パイプライン内でメタンガスハイドレートを生成させる方法が開示されている。しかし、この方法では、大部分のメタンガスハイドレートは反応容器内で生成されており、循環パイプライン内で生成するメタンガスハイドレートは反応容器内の1/30〜1/50程度に過ぎず、パイプラインの反応部は主として反応容器内でのメタンガスハイドレートの成長を促すための微結晶の供給手段として機能しているに過ぎない。また、この公報の装置は連続製造方式ではあるものの、反応容器内でメタンガスハイドレートの濃度が高くなり過ぎて流動性が低下すると、別容器に移し替えることが困難になる可能性は捨てきれない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、ハイドレートを輸送、貯蔵するのに適した濃度で、流動性のあるハイドレートスラリーを効率的に製造する手段が求められており、それを提供することが本発明の課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るパイプライン式ハイドレート製造装置の発明は、水とハイドレート形成物質とを加圧下に冷却しながら混合してハイドレートを生成させるハイドレート製造装置であって、水を加圧して供給する水供給手段から、ハイドレートを貯留する貯蔵部までを接続するパイプラインに、ハイドレート形成物質を加圧して供給するハイドレート形成物質供給手段と、前記水およびハイドレート形成物質の混合物を流送させながら反応させてハイドレートスラリーを生成させる所定長さのスラリー生成部と、該スラリー生成部を冷却する冷却手段とを設けたことを特徴とする。このパイプライン式ハイドレート製造装置の発明によれば、水供給手段から下流に延びるパイプラインに、ハイドレート形成物質供給手段と冷却手段を備えたスラリー生成部とを設けたため、攪拌機能付きの特別な圧力容器を必要とせずに、水とハイドレート形成物質との混合物を流送しながらパイプライン中で連続的にスラリー状ハイドレートを生成させることができる。生成したハイドレートスラリーは流動性を持つとともに、パイプラインからそのまま貯蔵部に貯留できるため、従来の圧力容器内で生成させてから貯蔵容器へ移送する方法のように別容器に移しかえる必要がなく、圧力変化によるハイドレートの濃度変化も生じることがない。また、スラリー生成部の冷却手段としては、パイプラインを冷却すれば済むため、シェル/チューブ熱交換器やプレート熱交換器などの伝熱効率のよい熱交換器を使用できるので、ハイドレートの生成効率が高い。
【0008】
本発明の第2の態様に係るパイプライン式ハイドレート製造装置の発明は、第1の態様において、前記スラリー生成部の内部に、水とハイドレート形成物質との接触機会を増やすための混合促進手段を設けたことを特徴とする。この特徴によれば、スラリー生成部のパイプ内部に混合促進手段を設けたため、水とハイドレート形成物質との接触機会が増加し、ハイドレートの生成効率を向上させることができる。一般にハイドレート形成物質が気体(ガス)である場合に、水とガスの気泡がパイプライン中を併送される間に気泡が集合してしまうことにより、パイプライン中を水が充満して流れる部分と、水とガスが2層で流れる部分とを交互に繰り返す、いわゆるスラグ流を形成しやすい。このスラグ流が生じると、水と気体のハイドレート形成物質の接触面積が減少するため、ハイドレートの生成効率が低下する。従って、本発明のように混合促進手段を配備することによりスラグ流の大きな気泡を分散させて接触面積の増加を図ることが有効である。
【0009】
本発明の第3の態様に係るパイプライン式ハイドレート製造装置の発明は、第2の態様において、前記混合促進手段が、前記スラリー生成部を形成するパイプの内部に配備された、パイプの長手方向にねじれた形状の長板であることを特徴とする。この特徴によれば、混合促進手段として長板を用いることにより、例えばハイドレート形成物質が気体である場合にその気泡が分散される結果、水と気体との接触面積を増加させることが可能となる。また、長板はパイプの長手方向にねじれた形状をしているため、パイプライン中の流体(水とハイドレート形成物質の混合物)に螺旋状の流れが形成されて攪拌効果が得られ、ハイドレートの生成効率を一層向上させることが可能となる。
【0010】
本発明の第4の態様に係るパイプライン式ハイドレート製造装置の発明は、第2の態様において、前記混合促進手段が、前記スラリー生成部を形成するパイプの内壁から中心へ向けて突出して配備された複数の突起であることを特徴とする。この特徴によれば、混合促進手段としてパイプ内に複数の突起を設けることにより、ハイドレート形成物質が気体である場合でも気泡が分散され、水と気体との接触面積が増加するとともに、突起直後に渦状の流れが形成されるので攪拌効果も得られ、ハイドレートの生成効率を一層向上させることが可能となる。
【0011】
本発明の第5の態様に係るパイプライン式ハイドレート製造装置の発明は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、前記ハイドレート形成物質供給手段をスラリー生成部の複数箇所に設けたことを特徴とする。この特徴によれば、ハイドレート形成物質供給手段をスラリー生成部の複数箇所に設け、パイプライン中を流れるハイドレート形成物質の量や導入のタイミングを変化させることにより、パイプライン中のハイドレートの濃度(水を含む系全体に対するハイドレートの重量もしくは体積のパーセンテージで示される)を制御することが可能となる。例えば、複数の導入箇所から少しずつハイドレート形成物質を導入することにより、スラリー生成部で生成するハイドレートの濃度を所定のレベルに制御することが可能である。
【0012】
本発明の第6の態様に係るパイプライン式ハイドレート製造装置の発明は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つにおいて、前記冷却手段は、スラリー生成部の異なる場所をそれぞれ異なる温度で冷却可能な機構を備えたものであることを特徴とする。この特徴によれば、スラリー生成部の部位に応じて異なる温度で冷却可能な機構を備えた冷却手段を採用することにより、例えば、パイプラインの下流に向うに従い冷却温度を段階的に変更することにより、パイプライン中のハイドレートの生成速度を部位ごとに制御することが可能となる。また、混合ガスを原料とする場合には、ガスの種類によりそれぞれハイドレート生成温度が異なるため、スラリー生成部の部位により温度を変化させることにより、ガスの種類に応じて最適な生成温度を設定できる。
【0013】
本発明の第7の態様に係るハイドレート製造方法の発明は、水とハイドレート形成物質とを所定圧力に加圧してパイプライン中で混合し、所定温度に冷却しながらパイプライン中を流送させることにより反応させて流動性のあるスラリー状のハイドレートを生成させ、パイプライン出口で回収することを特徴とする。このハイドレート製造方法の発明によれば、水とハイドレート形成物質との混合物を流送しながらパイプライン中で連続的にスラリー状ハイドレートを生成させることが可能であり、生成したハイドレートスラリーは流動性を持つとともに、パイプライン出口からそのまま回収して貯蔵等できる。従って、従来のバッチ方式の反応容器を使用する製造方法のように別容器に移しかえる手間がなく、移しかえの際の圧力変化によるハイドレートの濃度変化も起こらない。また、パイプラインの冷却には、伝熱効率のよい熱交換器を使用できるので、高い生成効率でハイドレートを製造することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、本発明におけるハイドレート形成物質としては、所定の圧力、温度条件でハイドレートを形成するものであれば特に限定されず、例えば、メタンガス、天然ガス(メタンを主成分とし、エタン、プロパン、ブタン等を含む混合ガス)、炭酸ガス(二酸化炭素)等の常温・常圧で気体である物質(ガス)のほか、テトラヒドロフラン、フラン、シクロペンタノール、シクロペンタノン、エチレンオキサイド等の液体も含まれる。また、例えば液化ガスやフロンなどを液体状態でハイドレート形成物質として使用することもできる。以下の実施形態では、メタンガス等の気体をハイドレート形成物質とする場合に適した製造装置を例に挙げているが、必要な修正を加えることによって液体のハイドレート形成物質にも適用可能である。
【0015】
図1は、本発明のパイプライン式ハイドレート製造装置(GH製造装置)100の一実施形態の概要を説明するための図面である。このGH製造装置100は、水貯槽11からの水53を加圧して供給する手段としての水供給ポンプ13、ハイドレート形成物質としてのガス55を、ガス貯槽15から加圧して供給する手段としてのガス供給ポンプ17、生成したハイドレート51を貯留するハイドレート貯槽(GH貯槽)19と、水供給ポンプ13からGH貯槽19までを接続する連続したパイプライン21とを備えている。そして、ガス55を導入する部位より下流のパイプライン21は、所定の長さで冷却手段としての熱交換器25を備えたスラリー生成部23を形成している。水53とガス55との混合物は、パイプライン21内を移動しながらスラリー生成部23において加圧状態で冷却され、スラリー状のハイドレート51が生成していく。スラリー生成部23の長さは、ガス55の種類やパイプライン21内の流速に応じて適宜選択することができるが、例えば水53の見掛流速を0.5〜5m/s、ガス55の見掛流速を0.5〜10m/sとした場合には、50〜300m程度の長さとすることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、スラリー生成部23のパイプは、外壁を熱交換媒体であるブライン(不凍液など)が直接冷却するような形式の熱交換器25の一部を構成している。このように構成することによって、熱交換器25として、例えばシェル/チューブ熱交換器、プレート式熱交換器などの伝熱効率の高い熱交換器を使用することが可能になり、効率的な冷却によるハイドレート51の生成効率の向上が図られる。なお、ここではブラインは、ブライン導入口31から導入され、ブライン排出口33から排出される。
【0017】
スラリー生成部23を形成するパイプの一部または全部には、内部に水53とガス55との接触面積を増加させるための混合促進手段を設けることが好ましい。通常、液体と気体が混合状態でパイプライン中を流れる場合には、パイプライン中を液体が充満して流れる部分と、液体と気体が2層で流れる部分とを交互に繰り返す、いわゆるスラグ流を形成する。このスラグ流ができると、液体と気体の接触面積が減少する。このため、混合促進手段を配備してスラグ流の大きな気泡を分散させて気液接触面積の増加を図ることが、ハイドレート51の生成効率を高める上で有利である。
【0018】
混合促進手段としては、ガス55の気泡を分散させる機能があれば特に限定されないが、図2または図3に例示するものが好適に用いられる。図2は、混合促進手段として、パイプの長手方向にねじれた形状の長板61をパイプの内部に配備したものであり、図2(a)はスラリー生成部23のパイプ内部の構造を長手方向の側面からみて説明する模式図であり、同図(b)は断面からみて説明する模式図である。このように、混合促進手段としてパイプの長手方向にねじれた長板61を用いることにより、気泡が分散されて水53とガス55の接触面積が増加するとともに、パイプライン21中の流体(水53とガス55の混合物)に螺旋状の流れが生成して水53とガス55を攪拌するため、ハイドレート51の生成効率が一層向上する。
【0019】
図3は、混合促進手段として、パイプの内壁から中心へ向けて突出して配備された複数の突起63を設けたものであり、図3(a)はスラリー生成部23のパイプの内部構造を長手方向の側面からみて説明する模式図であり、同図(b)は断面からみて説明する模式図である。混合促進手段としてパイプ内に設けた複数の突起63により、気泡を分散して水53とガス55の接触面積を増加させ得るとともに、突起63の下流に渦状の流れを作ることにより攪拌効果も生じ、ハイドレート51の生成効率を一層向上させ得る。
【0020】
スラリー生成部23において、全体的に、または局所的にハイドレート51の生成が過剰になると、生成したハイドレート51によるパイプライン21の閉塞などの問題が発生する場合があるので、適宜ハイドレート51の生成量を調整することが好ましい。その手段としては、例えば圧力を指標として監視する場合には、パイプライン21の元圧をモニターし、元圧が徐々に増加していく場合にはガス55の流量を減らしたり、熱交換器25の冷却温度を上昇させたりすることによって制御を行うことができる。
【0021】
また、ハイドレート製造促進用の添加剤を利用したり、閉塞制御用トレーサー物質を使用してハイドレート51の生成量を調整することも可能である。例えば、パイプライン21の任意の位置で水53の電気伝導度や粘度を測定して添加剤やトレーサー物質の濃度を計算し、流動限界に近づいた場合にはガス55の流量を減らす等の制御を行うことによって閉塞を防止できる。さらに、後述するようにガス供給手段を複数設けてパイプライン21中の複数箇所からガス55を導入したり、熱交換器25による冷却温度をスラリー生成部23の領域によって変化させること(図4参照)によっても、ハイドレート55の生成速度を調整できるので、閉塞を回避できる。
【0022】
スラリー生成部23において生成したハイドレート51は、パイプライン21を流送されて、直接GH貯槽19に導入され貯留される。製造されたスラリー状のハイドレート51は流動性を持ち、所望の濃度を保った状態のまま保存することができる。
【0023】
GH貯槽19は、製造したハイドレート51をそのままの状態に維持できるようにするため、ハイドレート51の分解防止手段として冷却および/または加圧機能を備えたものとすることができる。
【0024】
GH貯槽19に貯留したハイドレートを槽内でガス化して、ガスとして他の場所に移送して利用することも可能である。この場合、GH貯槽19は、貯蔵中のハイドレート51の温度上昇を抑制するための冷却設備と、ガス化のための加熱装置と、ガス抜出し装置を備えたものとすることが好ましい。例えば、冷却設備については、図5(a)、(b)に示すようにGH貯槽19の内部にコイル式熱交換器71を設置したり、外部にジャケット式熱交換器72を設置したりする等、既知の方法により行うことが可能である。この場合、GH貯槽19の全体は保温することが必要である。
【0025】
貯蔵ハイドレートをガス化する場合には、図5(a)、(b)において、コイル式熱交換器71やジャケット式熱交換器72の冷却用ブラインを加熱用液体に切り換え、ハイドレート51を加熱することによりガス化できる。また、より熱交換効率を高めるため、図5(c)に示すように、ガス化して残った水53の一部をポンプ75で抜出して、外部に設けた熱交換器73で加熱して再び貯槽上部の散水機構76より全体にスプレーしてハイドレート51を直接加熱する方法も採用できる。
【0026】
ガスの抜取りは、例えば、図5(a)〜(c)に示すようなガス抜取り装置74により行われる。この場合、ガスの利用側の圧力に近くなるようにGH貯槽19内の圧力を上昇させ、GH貯槽19内の圧力が一定に保持された状態でガスの抜取りを行う。
【0027】
貯蔵ハイドレードをハイドレードスラリーとして抜出して利用する場合には、GH貯槽19に攪拌機と抜出し用ポンプを備えたものとすることが好ましい。
【0028】
GH貯槽19の底部からは、余剰(未反応)の水53を循環再使用するための水循環用パイプライン41が水貯槽11へ接続されており、弁45(レットダウン弁)を開くことにより、水を移送して再利用が可能なように構成されている。同様に、GH貯槽19の上部からは、余剰(未反応)のガス55を循環再使用するためのガス循環用パイプライン43がガス貯槽15へ接続されており、ガス55の再利用が可能なように構成されている。
【0029】
図1のGH製造装置100では、冷却温度や圧力を調整することにより、多様なガスを原料としてハイドレートを製造できる。例えば、原料ガス55としてメタンガスを用いる場合には、圧力2.9〜5MPaまたはそれ以上の条件で水53に対して体積換算で1〜10倍量混合し、273K〜279Kまたはそれ以上の温度条件でスラリー生成部23中で5秒〜10分間反応させることにより、流動性を持つメタンガスハイドレートを所望の濃度で製造できる。同様に、例えば原料ガス55として天然ガス(メタンを主成分とし、エタン、プロパンおよびイソブタンを含む混合ガス)を用いる場合には、圧力0.5〜4MPaまたはそれ以上の条件で水53に対して体積換算で1〜10倍量混合され、273K〜288Kまたはそれ以上の温度条件でスラリー生成部23中で5秒〜10分間反応させることにより、流動性を持つ混合ハイドレートを所望の濃度で製造できる。さらに、例えば原料ガス55として炭酸ガス(CO2)を用いる場合には、圧力1.3〜4MPaまたはそれ以上の条件で水53に対して体積換算で1〜10倍量混合され、273K〜282Kまたはそれ以上の温度条件でスラリー生成部23中で5秒〜10分間反応させることにより、流動性を持つ炭酸ハイドレートを所望の濃度で製造できる。
【0030】
図4は、本発明の別の実施形態によるGH製造装置101の概要を説明するための図面である。本実施形態では、ガス55の加圧供給手段として複数のガス供給ポンプ17a、17b、17cが設けられており、パイプライン21の複数の場所でガス55を供給できるように構成されている。この構成によって、スラリー生成部23を流れるガス55の量を領域ごとに調整したり、ガス55の導入タイミングを変化させることが可能となり、ハイドレート51の濃度制御が図られる。例えば、複数の導入箇所から少しずつガス55を導入することにより、スラリー生成部23でのハイドレート51の生成効率を最適化して、ガス55の効率的な利用を図ったり、ハイドレート51の局所的な生成過剰によるパイプの閉塞を防ぐことなどもできる。また、図4ではガス供給槽15は単一であるが、複数種類の原料ガス55から直接的にハイドレート51の混合物を製造したい場合には、ガス供給槽15を複数設置してガス55の特性に応じて最適な導入箇所からパイプライン21中にガス55を導入するような利用方法も可能である。
【0031】
また、図4のGH製造装置101では、冷却手段としての熱交換器25は、スラリー生成部23の異なる場所をそれぞれ異なる温度で冷却可能なように制御されている。具体的には、熱交換器25は、ここでは独立した冷却能力を持つ三つの部分25a、25b、25cに区分されており、それぞれブライン導入口31a、31b、31c、ブライン排出口33a、33b、33cを設けることにより、スラリー生成部23の領域に応じ、それぞれ独立して異なる温度で冷却可能なように構成されている。このような制御機構を備えた冷却手段を採用することにより、例えば、パイプライン21の下流に向うに従い冷却温度を段階的に変化させることにより、パイプライン21中のハイドレート51の生成速度を領域ごとに制御して、ガス55の種類やスラリーの状態に応じて温度条件を選択し、最適な効率でハイドレート51を製造することが可能となる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、水とハイドレート形成物質との混合物を流送しながらパイプライン中で連続的にスラリー状ハイドレートを生成させることができる。生成したハイドレートスラリーは流動性を持つとともに、パイプラインからそのまま貯蔵部に貯留できるため、圧力容器内でハイドレートを生成させて貯蔵容器内に移送する従来の方式のように別容器に移しかえる必要がなく、圧力変化によるハイドレートの濃度変化も生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハイドレート製造装置の一実施態様の説明に供される図面。
【図2】混合促進手段の一実施態様の説明に供される図面であり、(a)はパイプ内部を長手方向側面からみて説明する模式図であり、(b)は断面からみて説明する模式図である。
【図3】混合促進手段の一実施態様の説明に供される図面であり、(a)はパイプ内部を長手方向側面からみて説明する模式図であり、(b)は断面からみて説明する模式図である。
【図4】本発明のハイドレート製造装置の他の実施態様の説明に供される図面。
【図5】ハイドレート貯槽の説明に供する図面であり、(a)はコイル式熱交換器を備えた態様、(b)はジャケット式熱交換器を備えた態様、(c)は外部熱交換器を備えた態様を示す。
【符号の説明】
11 水供給槽
13 水供給ポンプ
15 ガス供給槽
17、17a、17b、17c ガス供給ポンプ
19 ハイドレート貯蔵槽
21 パイプライン
23 スラリー生成部
25 熱交換器
31、31a、31b、31c ブライン導入口
33、33a、33b、33c ブライン排出口
41 水循環ライン
43 ガス循環ライン
45 弁
51 ハイドレート
53 水
55 ガス
61 ねじれ形状の長板
63 突起
71 コイル式熱交換器
72 ジャケット式熱交換器
73 熱交換器
74 ガス抜取り装置
75 ポンプ
76 散水機構
100、101 ハイドレート製造装置
Claims (6)
- 水とハイドレート形成物質とを加圧下に冷却しながら混合してハイドレートを生成させるハイドレート製造装置であって、
水を加圧して供給する水供給手段から、ハイドレートを貯留する貯蔵部までを接続するパイプラインに、ハイドレート形成物質を加圧して供給するハイドレート形成物質供給手段と、前記水およびハイドレート形成物質の混合物を流送させながら反応させてハイドレートスラリーを生成させる所定長さのスラリー生成部と、該スラリー生成部を冷却する冷却手段とを設け、
前記ハイドレート形成物質供給手段をスラリー生成部の複数箇所に設けたことを特徴とする、
パイプライン式ハイドレート製造装置。 - 請求項1において、前記冷却手段は、スラリー生成部の異なる場所をそれぞれ異なる温度で冷却可能な機構を備えたものであることを特徴とする、パイプライン式ハイドレート製造装置。
- 水とハイドレート形成物質とを加圧下に冷却しながら混合してハイドレートを生成させるハイドレート製造装置であって、
水を加圧して供給する水供給手段から、ハイドレートを貯留する貯蔵部までを接続するパイプラインに、ハイドレート形成物質を加圧して供給するハイドレート形成物質供給手段と、前記水およびハイドレート形成物質の混合物を流送させながら反応させてハイドレートスラリーを生成させる所定長さのスラリー生成部と、該スラリー生成部を冷却する冷却手段とを設け、
前記冷却手段は、スラリー生成部の異なる場所をそれぞれ異なる温度で冷却可能な機構を備えたものであることを特徴とする、
パイプライン式ハイドレート製造装置。 - 請求項1から3のいずれか1項において、前記スラリー生成部の内部に、水とハイドレート形成物質との接触機会を増やすための混合促進手段を設けたことを特徴とする、パイプライン式ハイドレート製造装置。
- 請求項4において、前記混合促進手段が、前記スラリー生成部を形成するパイプの内部に配備された、パイプの長手方向にねじれた形状の長板であることを特徴とする、パイプライン式ハイドレート製造装置。
- 請求項4において、前記混合促進手段が、前記スラリー生成部を形成するパイプの内壁から中心へ向けて突出して配備された複数の突起であることを特徴とする、パイプライン式ハイドレート製造装置。
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