JP2004217487A - 水素ガス包接水和物の製造方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】生成効率を高め、装置をコンパクト化できるようにする。
【解決手段】圧力容器1内に、上部と下部の管板2,3によって仕切られた上部、胴部、下部の各空間5,6,7を形成し、胴部空間6を貫通する多数の垂直な冷却管8により上部空間5と下部空間7を連通させて生成槽1を形成する。上部空間5に水素ガス供給ライン9と、未反応水リサイクルライン11を接続する。胴部空間6に冷却媒体17の供給ライン15と戻りライン16を介し冷却媒体供給部を接続する。冷却管8の内面に水膜として流下させる水12を、胴部空間6内の冷却媒体17により約−25℃に冷却させながら、約200MPaに加圧して供給する水素ガス10と接触させて水素ガス包接水和物14を生成させる。下部空間7より取り出される水素ガス包接水和物14に混入している未反応の水素ガス10と水12は生成物分離槽18で分離した後、原料として再利用する。
【選択図】 図1
【解決手段】圧力容器1内に、上部と下部の管板2,3によって仕切られた上部、胴部、下部の各空間5,6,7を形成し、胴部空間6を貫通する多数の垂直な冷却管8により上部空間5と下部空間7を連通させて生成槽1を形成する。上部空間5に水素ガス供給ライン9と、未反応水リサイクルライン11を接続する。胴部空間6に冷却媒体17の供給ライン15と戻りライン16を介し冷却媒体供給部を接続する。冷却管8の内面に水膜として流下させる水12を、胴部空間6内の冷却媒体17により約−25℃に冷却させながら、約200MPaに加圧して供給する水素ガス10と接触させて水素ガス包接水和物14を生成させる。下部空間7より取り出される水素ガス包接水和物14に混入している未反応の水素ガス10と水12は生成物分離槽18で分離した後、原料として再利用する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素ガスを低温度の水と接触させ、更に冷却しながら包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、エネルギー資源としては、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料が大量に使用されているが、これらはいずれも燃焼に伴い二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスを発生し、地球温暖化の原因となっている。
【0003】
水素は、燃焼しても水蒸気しか発生しないクリーンな燃料であり、化石燃料に代わって次世代を担うエネルギー源の1つであるといわれている。水素は、石油と異なり常温常圧では気体であるため、その輸送や貯蔵を行う場合には、極低温に冷却液化させて液体水素(大気圧下では−252.7℃)として所要の容器内に保持する方法、水素ガスを高圧にして高圧ガスとしてボンベ中に保持する方法、水素吸蔵合金やカーボンナノチューブに吸着させる方法が従来開発されている。しかし、液体水素として取扱うためには、水素ガスの液化冷却に多大なエネルギーを必要とすると共に、その貯蔵は、極低温を維持できるようにするための高価な容器を必要とするという問題がある。又、水素の高圧ガスをボンベ中に保持させる方法では、耐圧性を確保するため肉厚と強度を大きくとったボンベを必要とすることから、該ボンベ自体の重量が大きくなるという問題がある。更に、水素吸蔵合金は、質量あたりの水素含有率が小さく、又、カーボンナノチューブは、容積あたりの水素含有率が小さいという問題がある。
【0004】
そのため、上述の代替手段として考えられてきているのが、低温度で生成する水素ガスと水との化合物の一形態である包接水和物(Clathrate Hydrate)の形で貯蔵、輸送する手段である。
【0005】
上記水素の包接水和物は、低温度(−125℃程度)、大気圧下で平衡であり、固体の状態が保持されることが判ってきている。又、水素を包接水和物にすると、同温度同圧力の気体状態の水素ガスに比して、およそ200〜300分の1の容積に収めることが可能であり、更に、平衡状態よりも比較的低圧・高温な条件下でも固体の状態を保つことができることも判ってきている。したがって、上記水素の包接水和物を用いれば、水素の運搬・貯蔵において、効率が大幅に改善されると考えられる。
【0006】
ところで、常温常圧では気体となるガスの包接水和物として従来実施されているものとしては、天然ガスやメタンの包接水和物がある。これら天然ガスやメタンの包接水和物を製造する場合は、高圧容器に冷媒のジャケットを取り付けて全体を冷却し、これに上記天然ガスやメタンを所定の圧力で注入し、上記高圧容器内で天然ガス又はメタンと、水とを反応させて飽和水和物を生成させるようにしていた。
【0007】
又、最近では、冷却したガスを供給して一定圧力に保持した容器内に冷却した水を噴霧し、この水と水素ガスとの接触により包接水和物を生成させる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−348583号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の包接水和物の製造方法では、いずれの場合も、天然ガスやメタンガス等のガスの包接水和物を生成させるときの現象は次のようになっている。
【0010】
▲1▼ガスを低温の水に溶解させる。▲2▼上記低温の水へのガスの溶解により包接水和物が一部生成する。▲3▼包接水和物の生成反応は狭い温度範囲で行われるが、上記包接水和物の生成熱によって温度が上昇すると、上記包接水和物生成時に要求される温度範囲から外れてしまい、包接水和物の生成が停止する。▲4▼上記ガスと反応させるための低温の水は、凝固点以上の温度で且つ上記包接水和物の生成平衡温度以下、という狭い温度領域でしか冷却を行うことができず、大量の水が冷却循環されていても包接水和物になるのはそのごく一部のみである。▲5▼生成した包接水和物の固体膜によって2つの原料であるガスと水とが隔てられ、このことによっても包接水和物の生成が停止する。
【0011】
以上のような状況と、この包接水和物の生成に伴う現象が示す制約から、包接水和物の一定の生成量に対して大型の設備を必要とするという問題がある。
【0012】
更に、特許文献1に示されたものでは、包接水和物の生成に伴い発生する生成熱を除去するための冷却部位が、生成部位と離れたところにあるため、熱の搬送に余分な量の流体の循環を要し、このため効率の低下と装置の巨大化を招くという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、水素ガスの包接水和物を効率よく生成できると共に、装置のコンパクト化を図ることができるようにする水素ガス包接水和物の製造方法及び装置を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、一面を冷却媒体により所要の低温条件に冷却できるようにしてある伝熱体の他面に水膜を形成させ、該水膜に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを接触させて、上記水膜表面にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法とし、具体的には、垂直方向に配置された多数の冷却管の内面に沿って水を水膜として流下させると同時に、上記冷却管の外側を、冷却媒体により所要の低温条件に冷却し、且つ上記水膜に接する各冷却管の内側空間に、所要の高圧条件に加圧した水素ガスを供給して、上記所要の低温条件及び高圧条件下にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法、及び、圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続して、上記胴部空間に循環流通させる冷却媒体により、上部空間に供給された後、各冷却管の内面に沿って流下する水の膜を、冷却管壁を介し上記所要の低温条件に間接冷却しながら上記所要の高圧条件下の水素ガスと接触させることができるようにした構成を有する水素ガス包接水和物の製造装置とする。
【0015】
各冷却管の上部開口端より該各冷却管内に流入させた水を上記各冷却管の内面に沿って水膜として流下させながら、冷却管外側の冷却媒体により水素ガス包接水和物の生成時に必要となる所要の低温条件まで冷却した状態にて、上記各冷却管の内側に、水素ガス包接水和物の生成時に必要となる所要の高圧条件となるように加圧された水素ガスを供給すると、上記流下する水膜の表面部にて、上記水素ガスと水が、水素ガス包接水和物の生成時に要求される低温条件及び高圧条件が満たされた状態にて接触させられ、これにより水素ガスと水が反応して水素ガス包接水和物の固体膜が生成される。この生成した固体膜は、水膜が流下する際、流れに乱れが生じることに伴って粉砕されるため、生成する水素ガス包接水和物の固体膜により水素ガスと水は隔離されることなく連続的に接触させられて、水素ガス包接水和物の生成が連続的に行われる。この際発生する生成熱は、水膜が薄いため、冷却管との接触面まで速やかに移されることにより、冷却管表面にて冷却が行われて速やかに除去される。
【0016】
又、圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続してなる生成槽を形成し、該生成槽の底部に、上記生成槽の下部空間より取り出される水素ガス包接水和物に混入する未反応の水素ガスと未反応水をそれぞれ気液分離、比重分離するための生成物分離槽を接続し、該生成物分離槽の頂部を、上記水素ガス供給ラインに、未反応水素ガスリサイクルラインを介し接続すると共に、上記生成物分離槽の底部を、上記水供給ラインの上流側に接続した構成とすることにより、水素ガス包接水和物の生成後に残存する未反応の水素ガスと未反応水を、上記水素ガス包接水和物の製造用原料として再利用することができるため、水素ガスや水の消費量を削減できると共に、冷却すべき水の量を削減して水を冷却するときの熱効率を高めることが可能になり、装置のコンパクト化を図ることが可能になる。
【0017】
更に、各冷却管の上部開口端を、同じ高さ位置となるよう上部管板の上方へ所要寸法突出させた構成とすることにより、各冷却管の内側に均一な水膜を形成させることができて、水素ガス包接水和物の生成効率を高めることが可能になる。
【0018】
更に又、各冷却管に、該各冷却管内に流入して流下する水の流れに回転方向の運動性を与えるための回転力付与機構を設けた構成とすることにより、各冷却管内を流下する水膜の流れに更に乱れを生じさせることができて、水膜表面部にて生成される水素ガス包接水和物の固体膜を更に効率よく粉砕して水素ガスと水の接触効率を高めることができると共に、水膜内における温度勾配を小さくできるため、上記水素ガス包接水和物の生成に伴って発生する生成熱を効率よく冷却管との接触面に伝えて除去することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2(イ)(ロ)は本発明の水素ガス包接水和物の製造装置の実施の一形態を示すもので、上下方向に延びるタンク状の圧力容器(高圧容器)2内における上部位置と下部位置に、一対の水平方向の管板3と4をそれぞれ気密に設けて、上記各管板3と4により上記圧力容器2の内部に上下方向に仕切られた上部空間5と胴部空間6と下部空間7を形成させ、更に、上記胴部空間6内に、伝熱体となる垂直方向に延びる多数の冷却管8を配置すると共に、該各冷却管8の上部開口端8aが上部空間5内の所要高さ位置まで突出するように各冷却管8の上端部を上部管板3に貫通させた状態として、各冷却管8の上端部外周面を上部管板3に気密に取り付け、且つ上記各冷却管8の下部開口端8bが下部空間7に露出するように各冷却管8の下端部を下部管板4に貫通させて下端部外周面を下部管板4に気密に取り付けて、上記各冷却管7により上部空間5と下部空間7とを連通させてなる生成槽1を形成する。
【0021】
上記生成槽1における圧力容器2の頂部には、水素ガス供給ライン9を接続して、図示しない水素ガス供給部より該水素ガス供給ライン9を通して導いた所定の加圧状態の水素ガス10を上記生成槽1の上部空間5内へ供給できるようにすると共に、圧力容器2の上端部位置に、未反応水リサイクルライン(水供給ライン)11を上記圧力容器2の上部空間5に連通するよう接続して、該未反応水リサイクルライン11を通して上記上部空間5内へ水12を供給できるようにする。又、上記圧力容器2の底部には、吐出管13を接続して、上記生成槽1内で生成される水素ガスの包接水和物14を、未反応の水素ガス10や未反応の水12が混入した混合物の状態で下部空間7より上記吐出管13を通して取り出すことができるようにする。更に、上記圧力容器2の胴部の側壁には、胴部空間6内へ、図示しない冷却装置より導いた所要の冷却媒体17を供給するための冷却媒体供給ライン15と、胴部空間6を流通させた後の冷却媒体17を回収して上記冷却装置へ戻すための冷却媒体戻りライン16を接続して、上記胴部空間6内へ、上記冷却装置より所要温度に冷却してなる冷却媒体17を、循環供給できるようにする。
【0022】
更に、上記吐出管13の下流側に、生成物分離槽18の入口側を接続して、上記生成槽1の下部空間7より、未反応の水素ガス10や未反応の水12との混合状態で取り出される水素ガス包接水和物14を、上記吐出管13を通して生成物分離槽18内へ導いて気液分離及び比重分離させることにより、該生成物分離槽18内にて上方より順に未反応の水素ガス10、水素ガス包接水和物14、未反応の水12の層をそれぞれ形成させることができるようにする。
【0023】
上記生成物分離槽18の胴部における上下方向所要高さ位置の側壁には、包接水和物回収ライン19を接続して、上記生成物分離槽18内にて未反応の水12に浮遊することにより中間層を形成する水素ガス包接水和物14を、一部の未反応水と共に、上記生成物回収ライン19を通して回収できるようにしてある。
【0024】
又、上記生成物分離槽18の頂部には、図示しない圧力調整機構を備えた未反応水素ガスリサイクルライン(均圧管)20の一端部(基端部)を接続すると共に、該未反応水素ガスリサイクルライン20の他端部(先端部)を、水素ガス供給ライン9の途中位置に接続して、上記生成物分離槽18内にて上層に分離される未反応の水素ガス10は、上記未反応水素ガスリサイクルライン20を通して圧力を調整した後、水素ガス供給ライン9を流通する加圧状態の水素ガス10に混入させて、生成槽1の上部空間5へ、水素ガス包接水和物14の製造用原料として再び供給できるようにしてある。
【0025】
更に、上記生成物分離槽18の底部には、水循環ポンプ21を介在させて、上記生成槽1の上部空間5へ水12を供給する未反応水リサイクルライン11の上流側端部を接続して、生成物分離槽18内にて水素ガス包接水和物14と比重分離されて下層を形成する未反応の水12を、上記未反応水リサイクルライン11を通して生成槽1の上部空間5へ、水素ガスの包接水和物14の製造用原料として循環供給できるようにしてある。なお、上記生成槽1における水素ガス包接水和物14の生成に伴って水12は消費されるため、この消費された分の水12を適宜補給できるようにするために、上記吐出管13の途中位置に、図示しない水供給部より水12を導くための水供給ライン22を接続した構成としてある。
【0026】
上記各冷却管8の上部開口端8aには、対応する冷却管8内に流入する水12に対して回転方向の運動性を付与できるようにするための回転力付与機構として、たとえば、図2(イ)(ロ)に詳細を示す如く、冷却管8の口径に対応した筒型とすると共に、周壁部の周方向所要間隔個所(図では4個所)に、内周面の接線方向に延びるスリット状の案内孔24を穿設して形成してなる案内孔リング23を、上記各冷却管8の上端部に嵌合させて設けてなる構成として、上記案内孔リング23の案内孔24を外側から内側へ通過させて、冷却管8内に水12を接線方向から流入させることにより、該流入する水12が、冷却管8の内面に薄い水膜を形成すると同時に、該冷却管8内を回転しながら流下できるようにしてある。なお、各冷却管8に取り付けてある案内孔リング23の案内孔24は、すべて同じ高さレベルとなるようにしてある。
【0027】
上記構成としてある本発明の水素ガス包接水和物の製造装置を用いて水素ガス包接水和物14の製造を行う場合は、冷却媒体供給ライン15と冷却媒体戻りライン16を通して冷却装置より胴部空間6内に所要の冷却媒体17を循環流通させ、この際、たとえば、上記胴部空間6内にて上記冷却媒体17を−25℃付近で蒸発させながら除熱を行わせることができるようにすることにより、上記胴部空間6内に貫通配置してある各冷却管8を、水素ガス包接水和物14の生成時に要求される約−25℃という低温条件に冷却できるようにしておく。
【0028】
この状態において、水素ガス供給部より水素ガス供給ライン9を通して導いた水素ガス10を、生成槽1の上部空間5内へ、水素ガス包接水和物14の生成時に要求される約200MPaという高圧条件となるように供給すると共に、最初は未反応の水12がないため、水供給部より水供給ライン22、吐出管13を通して生成物分離槽18へ導いた水12を、水循環ポンプ21の駆動により未反応水リサイクルライン11を通して上記上部空間5内へ供給する。上部空間5内に供給された水12は、各冷却管8の上部開口端8aが上部管板3の上方に所要寸法突出させられているため、上部管板3の上側に一旦溜められた後、水位が案内孔リング23の案内孔24達した時点で該案内孔24を通して各冷却管8内に流入させられ、これにより、各冷却管8の内面には、回転方向に運動性を付与された状態で流下する薄い水膜が形成される。この各冷却管8の内面に形成された水膜は、胴部空間6内の冷却媒体17により各冷却管8の管壁を介して間接冷却されることにより、各冷却管8との接触面で常に約−25℃まで冷却される。この際、該水膜における反冷却管側となる内側の表面部は、上記上部空間5に供給された後、各冷却管8の内側を通して下部空間7へ達する加圧状態の水素ガス10の相に対して常に接触させられるようになり、この流下する水膜の内側表面部にて、水素ガス10と水12が、約200MPaという高圧条件及び約−25℃という低温条件が満たされた状態で激しく乱れた状態で接触させられ、これにより、上記水膜の内側表面部にて、水素ガス10と水12とが反応させられて水素ガスの包接水和物14の固体膜が生成される。
【0029】
この水素ガス包接水和物14の固体膜の生成に伴い、該固体膜は、原料である水素ガス10と水12とを隔離して両者の接触を妨げるようになるが、上記水素ガス包接水和物14の固体膜が成長し、面積が広がるようになると、流下する水膜の乱れた流れによって粉砕されるようになるため、水膜が冷却管8の内面を流下する間、水膜の内側表面部における水素ガス10と水12との接触は継続されて、水素ガス包接水和物14の生成が連続的に行われるようになる。上記水膜の内側表面部における水素ガス包接水和物14の生成に伴って生成熱が発生するが、この際、水膜が薄く、且つ該水膜は冷却管8との接触面において胴部空間6内の冷媒により常時約−25℃に冷却されていることから、上記水素ガス包接水和物14の生成熱は、流下水膜と冷却管8との接触面から速やかに取り除かれ、したがって、上記生成熱により水膜の温度が上昇させられて水素ガス包接水和物14の生成が阻害される虞は未然に防止される。
【0030】
上記各冷却管8の内側で生成した水素ガス包接水和物14は、未反応の水12と混合された状態にて自重により下部空間7内へ落下させられて集積された後、吐出管13を通して生成物分離槽18へ送られる。該生成物分離槽18内では、未反応の水12が底部に集められ、その上に生成した水素ガス包接水和物14が浮遊した状態とされ、頂部に上記水素ガス包接水和物14と未反応水12との混合物に同伴された未反応の水素ガス10が気液分離されて集められる。
【0031】
しかる後、上記生成物分離槽18の中間部に浮遊した状態とされる水素ガス包接水和物14は、一部の未反応水12と共に包接水和物回収ライン19を通して回収される。該回収された水素ガス包接水和物14は、必要に応じて水12の分離等の操作を経て、搬送出荷させるようにする。上記生成物分離槽18の底部に分離された水12は、水循環ポンプ21の運転により未反応水リサイクルライン11を通して生成槽1の上部空間5へ水素ガス包接水和物14の製造用原料として再供給され、又、生成物分離槽18の頂部へ集められた未反応の水素ガス10は、未反応水素ガスリサイクルライン20、水素ガス供給ライン9を通して生成槽1の上部空間5へ水素ガス包接水和物14の製造用原料として再供給される。
【0032】
このように、冷却管8の内面に薄い水膜を形成させ、該水膜を冷却管8との接触面で水素ガス包接水和物14の生成に必要な約−25℃という低温条件に常に冷却させながら、水膜の内側表面部にて約200MPaという高圧条件下におかれた水素ガス10と反応させて水素ガス包接水和物14を生成させる際、各冷却管8の上部開口端8aに、案内孔リング23を設けて冷却管8内に流入して流下する水12の流れに回転方向の運動性を付与して、流下する水膜の表面に乱れを導入させることができるようにしてあるため、水素ガス10と水12との接触を効率よく行わせて水素ガス包接水和物14を生成させることができる。
【0033】
又、薄い水膜の表面部で水素ガス包接水和物14を生成させるようにしてあるため、発生する生成熱の水膜表面から冷却管8接触面までの移行を速やかに行わせることができると共に、流下する水膜に回転方向の運動性を与えて流れを乱すようにしてあるため、水膜内の温度勾配が小さくされ、水膜表面部にて生成する水素ガス包接水和物14の生成熱を、該薄い水膜の冷却管8接触面側、すなわち、生成熱発生部位の至近位置で連続的に冷却できるため、上記生成熱を効率よく除去することができる。このために、上記生成熱の発生に伴って水膜の温度が上昇し、水素ガス包接水和物14の生成に要求される温度範囲から外れることによって該水素ガス包接水和物14の生成反応が止まる虞を未然に防止することができる。
【0034】
更に、水膜自体を流下させて水膜表面の物質移動を促進し、該水膜表面にて形成される水素ガス包接水和物14の固体膜を効率よく粉砕できることから、水素ガス包接水和物14の製造原料である水素ガス10と水12との接触が阻害される虞を未然に防止できる。
【0035】
したがって、本発明を採用することにより、水素ガス包接水和物14の生成を連続的且つ速やかに行わせることができて、多くの水素ガス包接水和物14を効率よく製造することができる。
【0036】
しかも、水素ガス包接水和物14の原料である水素ガス10や水12は、生成した水素ガス包接水和物14に同伴されて生成物分離槽18へ抜き出されたとしても、該生成物分離槽18にて水素ガス包接水和物14と分離した後、それぞれ生成槽1の上部空間3へ原料として戻して再利用するようにしてあるため、水素ガス10や水12の消費量を削減できると共に、冷却すべき水12の量を削減して水12を冷却するために要する熱効率を高めることが可能になって、装置のコンパクト化を図ることが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、案内孔リング23は、周方向の4個所に案内孔24を設けたものとして示したが、該案内孔リング23のサイズに応じて案内孔24の周方向の設置個所は自在に増減してよいこと、案内孔24としては、スリット状のものを示したが、冷却管8内に流入して流下する水12の流れに、回転方向の運動性を付与できれば、案内孔24を、案内孔リング23の内周面側に向けて下傾させてもよく、又、その形状は自在に設定してよいこと、上記実施例では、回転力付与機構としては、案内孔リング23を示したが、冷却管8内に流入して該冷却管8の内面に沿って薄い水膜を形成しながら流下する水12の流れに回転方向の運動性を付与して乱れを生じさせることができれば、各冷却管8の上端部内周面に、螺旋方向に所要寸法延びる案内羽根を突設したり、各冷却管8の内面に螺旋方向に連続する溝を形成する等してもよいこと、更には、上記回転力付与機構は設けることが望ましいが、省略することも可能なこと、生成槽1における冷却管8の本数は、生成槽1のサイズに応じて自在に設定してよいこと、冷却媒体17は、冷却管8を外側から水素ガス包接水和物14の生成時に要求される低温条件まで冷却できれば、胴部空間6内にて蒸発させずに、単に胴部空間6内を流通させるようにしてもよく、又、上記要求される低温条件を満たすことができれば、いかなる素材、組成のものを使用してもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0038】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1) 一面を冷却媒体により所要の低温条件に冷却できるようにしてある伝熱体の他面に水膜を形成させ、該水膜に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを接触させて、上記水膜表面にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法とし、具体的には、垂直方向に配置された多数の冷却管の内面に沿って水を水膜として流下させると同時に、上記冷却管の外側を、冷却媒体により所要の低温条件に冷却し、且つ上記水膜に接する各冷却管の内側空間に、所要の高圧条件に加圧した水素ガスを供給して、上記所要の低温条件及び高圧条件下にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法、及び、圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続して、上記胴部空間に循環流通させる冷却媒体により、上部空間に供給された後、各冷却管の内面に沿って流下する水の膜を、冷却管壁を介し上記所要の低温条件に間接冷却しながら上記所要の高圧条件下の水素ガスと接触させることができるようにした構成を有する水素ガス包接水和物の製造装置としてあるので、水素ガス包接水和物の生成時に要求される所要の低温条件及び高圧条件下にて、水素ガスと水とを反応させて水素ガス包接水和物を生成させることができ、この際、水膜の表面部において形成される水素ガス包接水和物の固体膜は、水膜を流下させて水膜表面の物質移動を促進することにより、粉砕できることから、水素ガスと水が、生成する水素ガス包接水和物の固体膜により隔離される虞を未然に防止でき、このため水素ガスと水を連続的に接触させて、水素ガス包接水和物を連続的に生成させることができる。
(2) 又、水素ガス包接水和物の生成に伴って水膜の表面部で発生する生成熱は、薄い水膜のみを隔てた冷却管接触面という生成部位の至近位置で速やかに冷却して除去できるため、上記生成熱の発生に伴って水膜の温度が上昇し、水素ガス包接水和物の生成に要求される低温条件の温度範囲から外れて生成反応が止まる虞を未然に防止することができる。
(3) したがって、水素ガス包接水和物の生成を連続的且つ速やかに行わせることができて、多くの水素ガス包接水和物を効率よく製造することができることから装置のコンパクト化を図ることができる。
(4) 圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続してなる生成槽を形成し、該生成槽の底部に、上記生成槽の下部空間より取り出される水素ガス包接水和物に混入する未反応の水素ガスと未反応水をそれぞれ気液分離、比重分離するための生成物分離槽を接続し、該生成物分離槽の頂部を、上記水素ガス供給ラインに、未反応水素ガスリサイクルラインを介し接続すると共に、上記生成物分離槽の底部を、上記水供給ラインの上流側に接続した構成とすることにより、水素ガス包接水和物の生成後に残存する未反応の水素ガスと未反応水を、上記水素ガス包接水和物の製造用原料として再利用することができるため、水素ガスや水の消費量を削減できると共に、冷却すべき水の量を削減して水を冷却するときの熱効率を高めることが可能になり、装置のコンパクト化を図ることが可能になる。
(5) 各冷却管の上部開口端を、同じ高さ位置となるよう上部管板の上方へ所要寸法突出させた構成とすることにより、各冷却管の内側に均一な水膜を形成させることができて、水素ガス包接水和物の生成効率を高めることが可能になる。
(6) 各冷却管に、該各冷却管内に流入して流下する水の流れに回転方向の運動性を与えるための回転力付与機構を設けた構成とすることにより、各冷却管内を流下する水膜の流れに更に乱れを生じさせることができて、水膜表面部にて生成される水素ガス包接水和物の固体膜を更に効率よく粉砕して水素ガスと水の接触効率を高めることができると共に、水膜内における温度勾配を小さくできるため、上記水素ガス包接水和物の生成に伴って発生する生成熱を効率よく冷却管との接触面に伝えて除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素ガス包接水和物の製造方法及び装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】図1の装置における冷却管の上端部の詳細を示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【符号の説明】
1 生成槽
2 圧力容器
3 上部管板
4 下部管板
5 上部空間
6 胴部空間
7 下部空間
8 冷却管(伝熱体)
8a 上部開口端
9 水素ガス供給ライン
10 水素ガス
11 未反応水リサイクルライン(水供給ライン)
12 水
14 水素ガス包接水和物
15 冷却媒体供給ライン
16 冷却媒体戻りライン
17 冷却媒体
18 生成物分離槽
20 未反応水素ガスリサイクルライン
23 案内孔リング(回転力付与機構)
24 案内孔
【発明の属する技術分野】
本発明は水素ガスを低温度の水と接触させ、更に冷却しながら包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、エネルギー資源としては、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料が大量に使用されているが、これらはいずれも燃焼に伴い二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスを発生し、地球温暖化の原因となっている。
【0003】
水素は、燃焼しても水蒸気しか発生しないクリーンな燃料であり、化石燃料に代わって次世代を担うエネルギー源の1つであるといわれている。水素は、石油と異なり常温常圧では気体であるため、その輸送や貯蔵を行う場合には、極低温に冷却液化させて液体水素(大気圧下では−252.7℃)として所要の容器内に保持する方法、水素ガスを高圧にして高圧ガスとしてボンベ中に保持する方法、水素吸蔵合金やカーボンナノチューブに吸着させる方法が従来開発されている。しかし、液体水素として取扱うためには、水素ガスの液化冷却に多大なエネルギーを必要とすると共に、その貯蔵は、極低温を維持できるようにするための高価な容器を必要とするという問題がある。又、水素の高圧ガスをボンベ中に保持させる方法では、耐圧性を確保するため肉厚と強度を大きくとったボンベを必要とすることから、該ボンベ自体の重量が大きくなるという問題がある。更に、水素吸蔵合金は、質量あたりの水素含有率が小さく、又、カーボンナノチューブは、容積あたりの水素含有率が小さいという問題がある。
【0004】
そのため、上述の代替手段として考えられてきているのが、低温度で生成する水素ガスと水との化合物の一形態である包接水和物(Clathrate Hydrate)の形で貯蔵、輸送する手段である。
【0005】
上記水素の包接水和物は、低温度(−125℃程度)、大気圧下で平衡であり、固体の状態が保持されることが判ってきている。又、水素を包接水和物にすると、同温度同圧力の気体状態の水素ガスに比して、およそ200〜300分の1の容積に収めることが可能であり、更に、平衡状態よりも比較的低圧・高温な条件下でも固体の状態を保つことができることも判ってきている。したがって、上記水素の包接水和物を用いれば、水素の運搬・貯蔵において、効率が大幅に改善されると考えられる。
【0006】
ところで、常温常圧では気体となるガスの包接水和物として従来実施されているものとしては、天然ガスやメタンの包接水和物がある。これら天然ガスやメタンの包接水和物を製造する場合は、高圧容器に冷媒のジャケットを取り付けて全体を冷却し、これに上記天然ガスやメタンを所定の圧力で注入し、上記高圧容器内で天然ガス又はメタンと、水とを反応させて飽和水和物を生成させるようにしていた。
【0007】
又、最近では、冷却したガスを供給して一定圧力に保持した容器内に冷却した水を噴霧し、この水と水素ガスとの接触により包接水和物を生成させる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−348583号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の包接水和物の製造方法では、いずれの場合も、天然ガスやメタンガス等のガスの包接水和物を生成させるときの現象は次のようになっている。
【0010】
▲1▼ガスを低温の水に溶解させる。▲2▼上記低温の水へのガスの溶解により包接水和物が一部生成する。▲3▼包接水和物の生成反応は狭い温度範囲で行われるが、上記包接水和物の生成熱によって温度が上昇すると、上記包接水和物生成時に要求される温度範囲から外れてしまい、包接水和物の生成が停止する。▲4▼上記ガスと反応させるための低温の水は、凝固点以上の温度で且つ上記包接水和物の生成平衡温度以下、という狭い温度領域でしか冷却を行うことができず、大量の水が冷却循環されていても包接水和物になるのはそのごく一部のみである。▲5▼生成した包接水和物の固体膜によって2つの原料であるガスと水とが隔てられ、このことによっても包接水和物の生成が停止する。
【0011】
以上のような状況と、この包接水和物の生成に伴う現象が示す制約から、包接水和物の一定の生成量に対して大型の設備を必要とするという問題がある。
【0012】
更に、特許文献1に示されたものでは、包接水和物の生成に伴い発生する生成熱を除去するための冷却部位が、生成部位と離れたところにあるため、熱の搬送に余分な量の流体の循環を要し、このため効率の低下と装置の巨大化を招くという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、水素ガスの包接水和物を効率よく生成できると共に、装置のコンパクト化を図ることができるようにする水素ガス包接水和物の製造方法及び装置を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、一面を冷却媒体により所要の低温条件に冷却できるようにしてある伝熱体の他面に水膜を形成させ、該水膜に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを接触させて、上記水膜表面にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法とし、具体的には、垂直方向に配置された多数の冷却管の内面に沿って水を水膜として流下させると同時に、上記冷却管の外側を、冷却媒体により所要の低温条件に冷却し、且つ上記水膜に接する各冷却管の内側空間に、所要の高圧条件に加圧した水素ガスを供給して、上記所要の低温条件及び高圧条件下にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法、及び、圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続して、上記胴部空間に循環流通させる冷却媒体により、上部空間に供給された後、各冷却管の内面に沿って流下する水の膜を、冷却管壁を介し上記所要の低温条件に間接冷却しながら上記所要の高圧条件下の水素ガスと接触させることができるようにした構成を有する水素ガス包接水和物の製造装置とする。
【0015】
各冷却管の上部開口端より該各冷却管内に流入させた水を上記各冷却管の内面に沿って水膜として流下させながら、冷却管外側の冷却媒体により水素ガス包接水和物の生成時に必要となる所要の低温条件まで冷却した状態にて、上記各冷却管の内側に、水素ガス包接水和物の生成時に必要となる所要の高圧条件となるように加圧された水素ガスを供給すると、上記流下する水膜の表面部にて、上記水素ガスと水が、水素ガス包接水和物の生成時に要求される低温条件及び高圧条件が満たされた状態にて接触させられ、これにより水素ガスと水が反応して水素ガス包接水和物の固体膜が生成される。この生成した固体膜は、水膜が流下する際、流れに乱れが生じることに伴って粉砕されるため、生成する水素ガス包接水和物の固体膜により水素ガスと水は隔離されることなく連続的に接触させられて、水素ガス包接水和物の生成が連続的に行われる。この際発生する生成熱は、水膜が薄いため、冷却管との接触面まで速やかに移されることにより、冷却管表面にて冷却が行われて速やかに除去される。
【0016】
又、圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続してなる生成槽を形成し、該生成槽の底部に、上記生成槽の下部空間より取り出される水素ガス包接水和物に混入する未反応の水素ガスと未反応水をそれぞれ気液分離、比重分離するための生成物分離槽を接続し、該生成物分離槽の頂部を、上記水素ガス供給ラインに、未反応水素ガスリサイクルラインを介し接続すると共に、上記生成物分離槽の底部を、上記水供給ラインの上流側に接続した構成とすることにより、水素ガス包接水和物の生成後に残存する未反応の水素ガスと未反応水を、上記水素ガス包接水和物の製造用原料として再利用することができるため、水素ガスや水の消費量を削減できると共に、冷却すべき水の量を削減して水を冷却するときの熱効率を高めることが可能になり、装置のコンパクト化を図ることが可能になる。
【0017】
更に、各冷却管の上部開口端を、同じ高さ位置となるよう上部管板の上方へ所要寸法突出させた構成とすることにより、各冷却管の内側に均一な水膜を形成させることができて、水素ガス包接水和物の生成効率を高めることが可能になる。
【0018】
更に又、各冷却管に、該各冷却管内に流入して流下する水の流れに回転方向の運動性を与えるための回転力付与機構を設けた構成とすることにより、各冷却管内を流下する水膜の流れに更に乱れを生じさせることができて、水膜表面部にて生成される水素ガス包接水和物の固体膜を更に効率よく粉砕して水素ガスと水の接触効率を高めることができると共に、水膜内における温度勾配を小さくできるため、上記水素ガス包接水和物の生成に伴って発生する生成熱を効率よく冷却管との接触面に伝えて除去することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2(イ)(ロ)は本発明の水素ガス包接水和物の製造装置の実施の一形態を示すもので、上下方向に延びるタンク状の圧力容器(高圧容器)2内における上部位置と下部位置に、一対の水平方向の管板3と4をそれぞれ気密に設けて、上記各管板3と4により上記圧力容器2の内部に上下方向に仕切られた上部空間5と胴部空間6と下部空間7を形成させ、更に、上記胴部空間6内に、伝熱体となる垂直方向に延びる多数の冷却管8を配置すると共に、該各冷却管8の上部開口端8aが上部空間5内の所要高さ位置まで突出するように各冷却管8の上端部を上部管板3に貫通させた状態として、各冷却管8の上端部外周面を上部管板3に気密に取り付け、且つ上記各冷却管8の下部開口端8bが下部空間7に露出するように各冷却管8の下端部を下部管板4に貫通させて下端部外周面を下部管板4に気密に取り付けて、上記各冷却管7により上部空間5と下部空間7とを連通させてなる生成槽1を形成する。
【0021】
上記生成槽1における圧力容器2の頂部には、水素ガス供給ライン9を接続して、図示しない水素ガス供給部より該水素ガス供給ライン9を通して導いた所定の加圧状態の水素ガス10を上記生成槽1の上部空間5内へ供給できるようにすると共に、圧力容器2の上端部位置に、未反応水リサイクルライン(水供給ライン)11を上記圧力容器2の上部空間5に連通するよう接続して、該未反応水リサイクルライン11を通して上記上部空間5内へ水12を供給できるようにする。又、上記圧力容器2の底部には、吐出管13を接続して、上記生成槽1内で生成される水素ガスの包接水和物14を、未反応の水素ガス10や未反応の水12が混入した混合物の状態で下部空間7より上記吐出管13を通して取り出すことができるようにする。更に、上記圧力容器2の胴部の側壁には、胴部空間6内へ、図示しない冷却装置より導いた所要の冷却媒体17を供給するための冷却媒体供給ライン15と、胴部空間6を流通させた後の冷却媒体17を回収して上記冷却装置へ戻すための冷却媒体戻りライン16を接続して、上記胴部空間6内へ、上記冷却装置より所要温度に冷却してなる冷却媒体17を、循環供給できるようにする。
【0022】
更に、上記吐出管13の下流側に、生成物分離槽18の入口側を接続して、上記生成槽1の下部空間7より、未反応の水素ガス10や未反応の水12との混合状態で取り出される水素ガス包接水和物14を、上記吐出管13を通して生成物分離槽18内へ導いて気液分離及び比重分離させることにより、該生成物分離槽18内にて上方より順に未反応の水素ガス10、水素ガス包接水和物14、未反応の水12の層をそれぞれ形成させることができるようにする。
【0023】
上記生成物分離槽18の胴部における上下方向所要高さ位置の側壁には、包接水和物回収ライン19を接続して、上記生成物分離槽18内にて未反応の水12に浮遊することにより中間層を形成する水素ガス包接水和物14を、一部の未反応水と共に、上記生成物回収ライン19を通して回収できるようにしてある。
【0024】
又、上記生成物分離槽18の頂部には、図示しない圧力調整機構を備えた未反応水素ガスリサイクルライン(均圧管)20の一端部(基端部)を接続すると共に、該未反応水素ガスリサイクルライン20の他端部(先端部)を、水素ガス供給ライン9の途中位置に接続して、上記生成物分離槽18内にて上層に分離される未反応の水素ガス10は、上記未反応水素ガスリサイクルライン20を通して圧力を調整した後、水素ガス供給ライン9を流通する加圧状態の水素ガス10に混入させて、生成槽1の上部空間5へ、水素ガス包接水和物14の製造用原料として再び供給できるようにしてある。
【0025】
更に、上記生成物分離槽18の底部には、水循環ポンプ21を介在させて、上記生成槽1の上部空間5へ水12を供給する未反応水リサイクルライン11の上流側端部を接続して、生成物分離槽18内にて水素ガス包接水和物14と比重分離されて下層を形成する未反応の水12を、上記未反応水リサイクルライン11を通して生成槽1の上部空間5へ、水素ガスの包接水和物14の製造用原料として循環供給できるようにしてある。なお、上記生成槽1における水素ガス包接水和物14の生成に伴って水12は消費されるため、この消費された分の水12を適宜補給できるようにするために、上記吐出管13の途中位置に、図示しない水供給部より水12を導くための水供給ライン22を接続した構成としてある。
【0026】
上記各冷却管8の上部開口端8aには、対応する冷却管8内に流入する水12に対して回転方向の運動性を付与できるようにするための回転力付与機構として、たとえば、図2(イ)(ロ)に詳細を示す如く、冷却管8の口径に対応した筒型とすると共に、周壁部の周方向所要間隔個所(図では4個所)に、内周面の接線方向に延びるスリット状の案内孔24を穿設して形成してなる案内孔リング23を、上記各冷却管8の上端部に嵌合させて設けてなる構成として、上記案内孔リング23の案内孔24を外側から内側へ通過させて、冷却管8内に水12を接線方向から流入させることにより、該流入する水12が、冷却管8の内面に薄い水膜を形成すると同時に、該冷却管8内を回転しながら流下できるようにしてある。なお、各冷却管8に取り付けてある案内孔リング23の案内孔24は、すべて同じ高さレベルとなるようにしてある。
【0027】
上記構成としてある本発明の水素ガス包接水和物の製造装置を用いて水素ガス包接水和物14の製造を行う場合は、冷却媒体供給ライン15と冷却媒体戻りライン16を通して冷却装置より胴部空間6内に所要の冷却媒体17を循環流通させ、この際、たとえば、上記胴部空間6内にて上記冷却媒体17を−25℃付近で蒸発させながら除熱を行わせることができるようにすることにより、上記胴部空間6内に貫通配置してある各冷却管8を、水素ガス包接水和物14の生成時に要求される約−25℃という低温条件に冷却できるようにしておく。
【0028】
この状態において、水素ガス供給部より水素ガス供給ライン9を通して導いた水素ガス10を、生成槽1の上部空間5内へ、水素ガス包接水和物14の生成時に要求される約200MPaという高圧条件となるように供給すると共に、最初は未反応の水12がないため、水供給部より水供給ライン22、吐出管13を通して生成物分離槽18へ導いた水12を、水循環ポンプ21の駆動により未反応水リサイクルライン11を通して上記上部空間5内へ供給する。上部空間5内に供給された水12は、各冷却管8の上部開口端8aが上部管板3の上方に所要寸法突出させられているため、上部管板3の上側に一旦溜められた後、水位が案内孔リング23の案内孔24達した時点で該案内孔24を通して各冷却管8内に流入させられ、これにより、各冷却管8の内面には、回転方向に運動性を付与された状態で流下する薄い水膜が形成される。この各冷却管8の内面に形成された水膜は、胴部空間6内の冷却媒体17により各冷却管8の管壁を介して間接冷却されることにより、各冷却管8との接触面で常に約−25℃まで冷却される。この際、該水膜における反冷却管側となる内側の表面部は、上記上部空間5に供給された後、各冷却管8の内側を通して下部空間7へ達する加圧状態の水素ガス10の相に対して常に接触させられるようになり、この流下する水膜の内側表面部にて、水素ガス10と水12が、約200MPaという高圧条件及び約−25℃という低温条件が満たされた状態で激しく乱れた状態で接触させられ、これにより、上記水膜の内側表面部にて、水素ガス10と水12とが反応させられて水素ガスの包接水和物14の固体膜が生成される。
【0029】
この水素ガス包接水和物14の固体膜の生成に伴い、該固体膜は、原料である水素ガス10と水12とを隔離して両者の接触を妨げるようになるが、上記水素ガス包接水和物14の固体膜が成長し、面積が広がるようになると、流下する水膜の乱れた流れによって粉砕されるようになるため、水膜が冷却管8の内面を流下する間、水膜の内側表面部における水素ガス10と水12との接触は継続されて、水素ガス包接水和物14の生成が連続的に行われるようになる。上記水膜の内側表面部における水素ガス包接水和物14の生成に伴って生成熱が発生するが、この際、水膜が薄く、且つ該水膜は冷却管8との接触面において胴部空間6内の冷媒により常時約−25℃に冷却されていることから、上記水素ガス包接水和物14の生成熱は、流下水膜と冷却管8との接触面から速やかに取り除かれ、したがって、上記生成熱により水膜の温度が上昇させられて水素ガス包接水和物14の生成が阻害される虞は未然に防止される。
【0030】
上記各冷却管8の内側で生成した水素ガス包接水和物14は、未反応の水12と混合された状態にて自重により下部空間7内へ落下させられて集積された後、吐出管13を通して生成物分離槽18へ送られる。該生成物分離槽18内では、未反応の水12が底部に集められ、その上に生成した水素ガス包接水和物14が浮遊した状態とされ、頂部に上記水素ガス包接水和物14と未反応水12との混合物に同伴された未反応の水素ガス10が気液分離されて集められる。
【0031】
しかる後、上記生成物分離槽18の中間部に浮遊した状態とされる水素ガス包接水和物14は、一部の未反応水12と共に包接水和物回収ライン19を通して回収される。該回収された水素ガス包接水和物14は、必要に応じて水12の分離等の操作を経て、搬送出荷させるようにする。上記生成物分離槽18の底部に分離された水12は、水循環ポンプ21の運転により未反応水リサイクルライン11を通して生成槽1の上部空間5へ水素ガス包接水和物14の製造用原料として再供給され、又、生成物分離槽18の頂部へ集められた未反応の水素ガス10は、未反応水素ガスリサイクルライン20、水素ガス供給ライン9を通して生成槽1の上部空間5へ水素ガス包接水和物14の製造用原料として再供給される。
【0032】
このように、冷却管8の内面に薄い水膜を形成させ、該水膜を冷却管8との接触面で水素ガス包接水和物14の生成に必要な約−25℃という低温条件に常に冷却させながら、水膜の内側表面部にて約200MPaという高圧条件下におかれた水素ガス10と反応させて水素ガス包接水和物14を生成させる際、各冷却管8の上部開口端8aに、案内孔リング23を設けて冷却管8内に流入して流下する水12の流れに回転方向の運動性を付与して、流下する水膜の表面に乱れを導入させることができるようにしてあるため、水素ガス10と水12との接触を効率よく行わせて水素ガス包接水和物14を生成させることができる。
【0033】
又、薄い水膜の表面部で水素ガス包接水和物14を生成させるようにしてあるため、発生する生成熱の水膜表面から冷却管8接触面までの移行を速やかに行わせることができると共に、流下する水膜に回転方向の運動性を与えて流れを乱すようにしてあるため、水膜内の温度勾配が小さくされ、水膜表面部にて生成する水素ガス包接水和物14の生成熱を、該薄い水膜の冷却管8接触面側、すなわち、生成熱発生部位の至近位置で連続的に冷却できるため、上記生成熱を効率よく除去することができる。このために、上記生成熱の発生に伴って水膜の温度が上昇し、水素ガス包接水和物14の生成に要求される温度範囲から外れることによって該水素ガス包接水和物14の生成反応が止まる虞を未然に防止することができる。
【0034】
更に、水膜自体を流下させて水膜表面の物質移動を促進し、該水膜表面にて形成される水素ガス包接水和物14の固体膜を効率よく粉砕できることから、水素ガス包接水和物14の製造原料である水素ガス10と水12との接触が阻害される虞を未然に防止できる。
【0035】
したがって、本発明を採用することにより、水素ガス包接水和物14の生成を連続的且つ速やかに行わせることができて、多くの水素ガス包接水和物14を効率よく製造することができる。
【0036】
しかも、水素ガス包接水和物14の原料である水素ガス10や水12は、生成した水素ガス包接水和物14に同伴されて生成物分離槽18へ抜き出されたとしても、該生成物分離槽18にて水素ガス包接水和物14と分離した後、それぞれ生成槽1の上部空間3へ原料として戻して再利用するようにしてあるため、水素ガス10や水12の消費量を削減できると共に、冷却すべき水12の量を削減して水12を冷却するために要する熱効率を高めることが可能になって、装置のコンパクト化を図ることが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、案内孔リング23は、周方向の4個所に案内孔24を設けたものとして示したが、該案内孔リング23のサイズに応じて案内孔24の周方向の設置個所は自在に増減してよいこと、案内孔24としては、スリット状のものを示したが、冷却管8内に流入して流下する水12の流れに、回転方向の運動性を付与できれば、案内孔24を、案内孔リング23の内周面側に向けて下傾させてもよく、又、その形状は自在に設定してよいこと、上記実施例では、回転力付与機構としては、案内孔リング23を示したが、冷却管8内に流入して該冷却管8の内面に沿って薄い水膜を形成しながら流下する水12の流れに回転方向の運動性を付与して乱れを生じさせることができれば、各冷却管8の上端部内周面に、螺旋方向に所要寸法延びる案内羽根を突設したり、各冷却管8の内面に螺旋方向に連続する溝を形成する等してもよいこと、更には、上記回転力付与機構は設けることが望ましいが、省略することも可能なこと、生成槽1における冷却管8の本数は、生成槽1のサイズに応じて自在に設定してよいこと、冷却媒体17は、冷却管8を外側から水素ガス包接水和物14の生成時に要求される低温条件まで冷却できれば、胴部空間6内にて蒸発させずに、単に胴部空間6内を流通させるようにしてもよく、又、上記要求される低温条件を満たすことができれば、いかなる素材、組成のものを使用してもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0038】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1) 一面を冷却媒体により所要の低温条件に冷却できるようにしてある伝熱体の他面に水膜を形成させ、該水膜に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを接触させて、上記水膜表面にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法とし、具体的には、垂直方向に配置された多数の冷却管の内面に沿って水を水膜として流下させると同時に、上記冷却管の外側を、冷却媒体により所要の低温条件に冷却し、且つ上記水膜に接する各冷却管の内側空間に、所要の高圧条件に加圧した水素ガスを供給して、上記所要の低温条件及び高圧条件下にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させる水素ガス包接水和物の製造方法、及び、圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続して、上記胴部空間に循環流通させる冷却媒体により、上部空間に供給された後、各冷却管の内面に沿って流下する水の膜を、冷却管壁を介し上記所要の低温条件に間接冷却しながら上記所要の高圧条件下の水素ガスと接触させることができるようにした構成を有する水素ガス包接水和物の製造装置としてあるので、水素ガス包接水和物の生成時に要求される所要の低温条件及び高圧条件下にて、水素ガスと水とを反応させて水素ガス包接水和物を生成させることができ、この際、水膜の表面部において形成される水素ガス包接水和物の固体膜は、水膜を流下させて水膜表面の物質移動を促進することにより、粉砕できることから、水素ガスと水が、生成する水素ガス包接水和物の固体膜により隔離される虞を未然に防止でき、このため水素ガスと水を連続的に接触させて、水素ガス包接水和物を連続的に生成させることができる。
(2) 又、水素ガス包接水和物の生成に伴って水膜の表面部で発生する生成熱は、薄い水膜のみを隔てた冷却管接触面という生成部位の至近位置で速やかに冷却して除去できるため、上記生成熱の発生に伴って水膜の温度が上昇し、水素ガス包接水和物の生成に要求される低温条件の温度範囲から外れて生成反応が止まる虞を未然に防止することができる。
(3) したがって、水素ガス包接水和物の生成を連続的且つ速やかに行わせることができて、多くの水素ガス包接水和物を効率よく製造することができることから装置のコンパクト化を図ることができる。
(4) 圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続してなる生成槽を形成し、該生成槽の底部に、上記生成槽の下部空間より取り出される水素ガス包接水和物に混入する未反応の水素ガスと未反応水をそれぞれ気液分離、比重分離するための生成物分離槽を接続し、該生成物分離槽の頂部を、上記水素ガス供給ラインに、未反応水素ガスリサイクルラインを介し接続すると共に、上記生成物分離槽の底部を、上記水供給ラインの上流側に接続した構成とすることにより、水素ガス包接水和物の生成後に残存する未反応の水素ガスと未反応水を、上記水素ガス包接水和物の製造用原料として再利用することができるため、水素ガスや水の消費量を削減できると共に、冷却すべき水の量を削減して水を冷却するときの熱効率を高めることが可能になり、装置のコンパクト化を図ることが可能になる。
(5) 各冷却管の上部開口端を、同じ高さ位置となるよう上部管板の上方へ所要寸法突出させた構成とすることにより、各冷却管の内側に均一な水膜を形成させることができて、水素ガス包接水和物の生成効率を高めることが可能になる。
(6) 各冷却管に、該各冷却管内に流入して流下する水の流れに回転方向の運動性を与えるための回転力付与機構を設けた構成とすることにより、各冷却管内を流下する水膜の流れに更に乱れを生じさせることができて、水膜表面部にて生成される水素ガス包接水和物の固体膜を更に効率よく粉砕して水素ガスと水の接触効率を高めることができると共に、水膜内における温度勾配を小さくできるため、上記水素ガス包接水和物の生成に伴って発生する生成熱を効率よく冷却管との接触面に伝えて除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素ガス包接水和物の製造方法及び装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】図1の装置における冷却管の上端部の詳細を示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視図である。
【符号の説明】
1 生成槽
2 圧力容器
3 上部管板
4 下部管板
5 上部空間
6 胴部空間
7 下部空間
8 冷却管(伝熱体)
8a 上部開口端
9 水素ガス供給ライン
10 水素ガス
11 未反応水リサイクルライン(水供給ライン)
12 水
14 水素ガス包接水和物
15 冷却媒体供給ライン
16 冷却媒体戻りライン
17 冷却媒体
18 生成物分離槽
20 未反応水素ガスリサイクルライン
23 案内孔リング(回転力付与機構)
24 案内孔
Claims (7)
- 一面を冷却媒体により所要の低温条件に冷却できるようにしてある伝熱体の他面に水膜を形成させ、該水膜に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを接触させて、上記水膜表面にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させることを特徴とする水素ガス包接水和物の製造方法。
- 垂直方向に配置された多数の冷却管の内面に沿って水を水膜として流下させると同時に、上記冷却管の外側を、冷却媒体により所要の低温条件に冷却し、且つ上記水膜に接する各冷却管の内側空間に、所要の高圧条件に加圧した水素ガスを供給して、上記所要の低温条件及び高圧条件下にて水素ガスと水とを反応させて包接水和物を生成させることを特徴とする水素ガス包接水和物の製造方法。
- 各冷却管の内面に沿って水を水膜として流下させるときに、該流下する水膜に回転方向の運動性を付与するようにする請求項2記載の水素ガス包接水和物の製造方法。
- 圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続して、上記胴部空間に循環流通させる冷却媒体により、上部空間に供給された後、各冷却管の内面に沿って流下する水の膜を、冷却管壁を介し上記所要の低温条件に間接冷却しながら上記所要の高圧条件下の水素ガスと接触させることができるようにした構成を有することを特徴とする水素ガス包接水和物の製造装置。
- 圧力容器の上部と下部に一対の管板を設けると共に、垂直方向に延びて上記上部管板上方の上部空間と下部管板下方の下部空間とを連通させる多数の冷却管を設け、上記圧力容器の上部空間に、所要の高圧条件となるよう加圧した水素ガスを供給するための水素ガス供給ラインと、水供給ラインを接続し、且つ上記各冷却管の外側となる上下の各管板の間の胴部空間に、所要の低温条件の冷却媒体を供給するための冷却媒体供給ラインと冷却媒体戻りラインを接続してなる生成槽を形成し、該生成槽の底部に、上記生成槽の下部空間より取り出される水素ガス包接水和物に混入する未反応の水素ガスと未反応水をそれぞれ気液分離、比重分離するための生成物分離槽を接続し、該生成物分離槽の頂部を、上記水素ガス供給ラインに、未反応水素ガスリサイクルラインを介し接続すると共に、上記生成物分離槽の底部を、上記水供給ラインの上流側に接続した構成を有することを特徴とする水素ガス包接水和物の製造装置。
- 各冷却管の上部開口端を、同じ高さ位置となるよう上部管板の上方へ所要寸法突出させた請求項4又は5記載の水素ガス包接水和物の製造装置。
- 各冷却管に、該各冷却管内に流入して流下する水の流れに回転方向の運動性を与えるための回転力付与機構を設けた請求項4、5又は6記載の水素ガス包接水和物の製造装置。
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