JP4797295B2 - 車両用モータの駆動方法及び駆動装置及び車両用モータの駆動制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用モータの駆動方法、及び駆動装置、及び車両用モータの駆動制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、停車率の高い市街地走行時の燃費向上等を目的として、信号待ち時等、車両が停車したときにはエンジンを自動停止し、車両の発進時には同エンジンを再始動させるエンジン自動停止始動装置が知られている。
【0003】
ただし、このエンジン自動停止始動装置の搭載された車両にあっては、エンジンが停止されると、エアーコンディショナやパワーステアリング等の補機にエンジンからの動力は供給されない。このため、エンジンの停止時にもそれら補機の駆動が望まれる場合には、それら補機に対して動力を供給するための何らかの動力源が必要となる。
【0004】
一方、上記エンジン自動停止始動装置の搭載された車両とは異なるものの、例えば特開平11−190222号公報には、エンジンの出力軸と始動用電動機(モータ)の出力軸とを各種補機に対してプーリ及びベルトを用いて一体的に連結する伝動システムが記載されている。したがって、このような伝動システムを上記エンジン自動停止始動装置の搭載された車両に採用することで、エンジンの停止時であっても、上記モータによって各補機に動力を供給することができるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、モータ及びエンジンの各出力軸を各種補機に対して共通に駆動連結させることで、エンジンの停止時にもそれら補機を駆動することができるようにはなる。ただし、上記伝動システムは、そもそもがエンジン稼動に併せた各補機の駆動を狙ったものであり、上記エンジン自動停止始動装置によってエンジンが自動停止されている状態での、あるいはそれからエンジンが再始動される際の補機駆動となると、必ずしもその要求される条件での駆動がなされるとは限らない。
【0006】
なお、上記エンジン自動停止始動装置を搭載した車両に限らず、ハイブリッド車等、補機類を駆動する車両用モータを搭載した車両にあっては、補機の駆動にまつわるこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、補機類の要求に応じてそれに見合った駆動を可能とする車両用モータの駆動方法、及び駆動装置、及び車両用モータの駆動制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、車両用パワーステアリングの動力源であるパワーステアリングポンプを含む複数の補機が装備された車両にあってそれら補機を駆動すべく同車両に搭載されるモータの駆動を制御する車両用モータの駆動方法であって、前記モータの駆動は、同モータの目標回転速度を徐変させることにより制御するものであり、起動要求のあった補機が前記パワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりも前記モータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくすることをその要旨とする。
【0011】
上記駆動方法では、起動要求のあった補機がパワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりもモータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくする。これにより、パワーステアリングの操作性を好適に維持する一方、他の補機の起動に際してはモータ起動に伴うノイズや振動を低減することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、車両用パワーステアリングの動力源であるパワーステアリングポンプを含む複数の補機が装備された車両にあってそれら補機を駆動する同車両に搭載されるモータの駆動を制御する車両用モータの駆動装置であって、前記複数の補機の起動要求を監視する監視手段と、前記モータの駆動を同モータの目標回転速度を徐変させることにより制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、起動要求のあった補機が前記パワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりも前記モータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくすることをその要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、請求項1記載の駆動方法を好適に実施することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記複数の補機は、共通のモータに対して機械的に連結可能とされることをその要旨とする。
上記構成によれば、共通のモータを用いて補機に起動力を供給することができ、ひいては、ハード構成を簡素化することができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記複数の補機は更に、前記車両の原動機であるエンジンに対して機械的に連結可能とされることをその要旨とする。
【0018】
上記構成では、複数の補機は、当該車両を駆動するエンジンの出力軸と機械的に連結可能とされるために、エンジンの駆動力によっても補機を駆動することができる。
【0019】
なお、上記請求項4記載の発明は、請求項5記載の発明によるように、前記エンジンは内燃機関であり、同内燃機関の停止時に前記モータにて補機が駆動可能とされるようにしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、適宜エンジンを停止することで内燃機関としてのエンジンの燃料消費率を向上させつつも、内燃機関の停止中も補機を好適に駆動することができる。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記内燃機関の停止制御時に、前記モータを通じて該内燃機関に回転力を付与しつつこの付与する回転力を徐々に低減させていく制御を行う停止制御手段を更に備えることをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、内燃機関の停止制御時に、モータを通じて内燃機関に回転力を付与しつつこの付与する回転力を徐々に低減させていくために、内燃機関の停止制御に際し生じる振動を低減することができる。
【0023】
請求項7記載の発明は、車両用パワーステアリングの動力源であるパワーステアリングポンプを含む複数の補機を駆動制御する車両用モータの駆動制御プログラムを記録した記録媒体であって、前記複数の補機の起動要求を監視する監視手順と、前記モータの目標回転速度を徐変させることにより前記モータの駆動を制御し、起動要求のあった補機が前記パワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりも前記モータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくする制御手順とが記憶されてなることをその要旨とする。
【0024】
上記プログラムを用いることで、請求項2記載の駆動装置を好適に構成することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる車両用モータの駆動方法、及び車両用モータの駆動装置、及び車両用モータの駆動制御プログラムを記録した記録媒体を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1に、本実施形態の車両用モータの駆動装置の全体構成を模式的に示す。ここでは、エンジン自動停止始動装置及び自動変速機の搭載された車両に、上記車両用モータの駆動装置が搭載された例を想定している。
【0028】
同図1において、内燃機関からなるエンジン2の出力は、トルクコンバータ4及び歯車変速機部6によって所定の変更を受けた後、アウトプットシャフト8から出力される。これにより、アウトプットシャフト8の回転速度を所望の回転速度にて制御することができ、適切な回転速度にて車両を走行させることができる。
【0029】
また上記車両は、上記エンジン2と、電動機及び発電機として作用するモータジェネレータ10とによって、駆動力が供給される複数の補機を備えている。詳しくは、この複数の補機として、本実施形態では、パワーステアリングポンプ20と、エアーコンディショナ用のコンプレッサ(エアコン用コンプレッサ)22と、ウォータポンプ24とを備えている。
【0030】
ちなみに、パワーステアリングポンプ20は、パワーステアリング30を制御する作動油を加圧するものである。このパワーステアリング30は、ステアリングホイール31の操作によって、ラック33を変位させる際、同ラック33の変位を油圧にて補助するものである。詳しくは、ステアリングホイール31の回転力はピニオン32に伝達可能とされており、同ピニオン32はラック33と係合されている。また、ラック33は、パワーシリンダ34内のピストン35と連結されている。そして、パワーシリンダ34及びピストン35によって区画される左室34lや右室34rには、上記パワーステアリングポンプ20によって加圧された作動油がバルブ部36を介して適宜供給される。このバルブ部36による上記左室34lや右室34rへの作動油の供給は、ステアリングホイール31の操作に応じて行われるようになっている。
【0031】
一方、エアコン用コンプレッサ22は、エアーコンディショナシステム(全体構成の図示略)において、熱媒体を圧縮するためのものである。更に、ウォータポンプ24は、エンジン2内の冷却液を循環させるためのものである。
【0032】
これらパワーステアリングポンプ20や、エアコン用コンプレッサ22、ウォータポンプ24は、上記エンジン2やモータジェネレータ10とそれぞれ機械的に連結可能とされ、これらによって駆動力を付与される。詳しくは、エンジン2と連結可能なプーリ40、モータジェネレータ10と連結するプーリ42、パワーステアリングポンプ20と連結するプーリ44、エアコン用コンプレッサ22と連結可能なプーリ46は、ベルト48を介して互いに動力が伝達可能となっている。
【0033】
そして、エンジン2の出力軸は、電磁クラッチ50を介してプーリ40と機械的に連結可能とされている。すなわち、電磁クラッチ50の作動制御によって、プーリ40とエンジン2の出力軸とが機械的に連結されまた非連結とされる。また、エアコン用コンプレッサ22は、電磁クラッチ52を介してプーリ46と連結可能とされている。すなわち、電磁クラッチ52の作動制御によって、プーリ46とエアコン用コンプレッサ22とが機械的に連結されまた非連結とされる。更に、ウォータポンプ24は、電磁クラッチ54を介して、モータジェネレータ10と連結可能とされている。すなわち、電磁クラッチ54の作動制御によって、モータジェネレータ10とウォータポンプ24とが機械的に連結されまた非連結とされる。
【0034】
上記構成によれば、電磁クラッチ50、52、54を制御するなどすることで、パワーステアリングポンプ20や、エアコン用コンプレッサ22、ウォータポンプ24にエンジン2やモータジェネレータ10の駆動力を適宜供給することができる。
【0035】
上記モータジェネレータ10は、プーリ42へと回転力を供給する電動機(モータ)としての機能と、プーリ42から回転力の供給によって発電を行う発電機(ジェネレータ)としての機能とを併せ持っている。そして、モータジェネレータ10が電動機として機能する場合、バッテリ14に蓄電された電力がインバータ12を介してモータジェネレータ10に供給される。このときのモータジェネレータ10の駆動制御は、インバータ12の位相制御によって行われている。一方、モータジェネレータ10が発電機として機能する場合、発電した電力はインバータ12を介してバッテリ14へと送られる。このとき、インバータ12の位相制御を通じてバッテリ14へと送られる電力量を調整することで、モータジェネレータ10の発電量が調整されている。
【0036】
上記エンジン2や、インバータ12、電磁クラッチ50、52、54等は、電子制御装置(以下、ECUという)60によって制御される。更に、ECU60は、燃費の向上を図るべく、エンジン2の搭載される車両の停止状態を検知してエンジン2の自動停止制御を行い、且つ運転者の発進の意志に基づいてエンジン2の再始動制御を行うようにしている。以下、これについて説明する。
【0037】
本実施形態のおいては、下記の条件、すなわち、
(イ)イグニッションスイッチがオンされている。
(ロ)車速が「0」であることが検出されている。
(ハ)アクセルペダルが踏み込まれていないことが検出されている。
(ニ)ブレーキが所定以上踏み込まれていることが検出されている。
などの条件がすべて所定時間以上満たされたときにエンジンの自動停止制御がなされる。
【0038】
すなわち、インジェクタ(図示略)からの燃料噴射と点火プラグ(図示略)の火花放電とが停止されるとともに、電磁クラッチ50をつないで上記モータジェネレータ10によってエンジン2へ回転力を付与する。これにより、エンジン2の回転速度を一旦アイドル時の回転速度に維持する。そして、モータジェネレータ10によるエンジン2の回転速度を徐々に「0」へと近づけエンジン2を停止させる。これにより、エンジン2の停止制御に際し生じる振動を低減することができる。なお、エンジン2が停止されると、電磁クラッチ50を切り離すことで、エンジン2の出力軸とプーリ40とが非連結とされる。
【0039】
一方、本実施形態においては、上記(ロ)〜(ニ)の条件のいずれか一つでも満たされなくなることを条件に、エンジン2の自動始動制御がなされる。
この自動始動制御に際しては、電磁クラッチ50によってエンジン2の出力軸とプーリ40とを連結することで、上記モータジェネレータ10によってエンジン2の出力軸に駆動力を付与する。そして、エンジン2の回転速度がアイドリング時の回転速度で安定したときに、エンジン2のファイアリングを開始する。すなわち、上記インジェクタからの燃料噴射と上記点火プラグの火花放電とを開始する。
【0040】
なお、こうした制御を行うべく、本実施形態では、イグニッションスイッチ70や、車速を検出する車速センサ71、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ72、ブレーキの踏み込みの量を検出するブレーキセンサ73、エンジン2の出力軸の回転速度を検出するクランク角センサ74を備えている。そして、こうした各種センサの検出結果に基づいて、上記ECU60では、上記エンジン自動停止制御や自動始動制御を行う。
【0041】
こうしたエンジン自動停止再始動制御機能に伴い、本実施形態では、パワーステアリングポンプ20や、エアコン用コンプレッサ22、ウォータポンプ24から起動要求があったときには、エンジンの可動時とエンジンの自動停止時とで以下のように各別の対応をする。すなわち、エンジン2の稼動時には、適宜電磁クラッチ50をつないでエンジン2及びプーリ40を連結させることで、エンジン2の駆動力を各種補機やモータジェネレータ10に供給する。ちなみに、このとき、インバータ12を制御することで、適宜エンジン2の駆動力がモータジェネレータ10によって電気的エネルギとして取り出され、バッテリ14に蓄電される。
【0042】
一方、エンジン2の自動停止時において、上記各補機からの駆動要求があったときには、モータジェネレータ10によってこれら補機へ駆動力を供給する。すなわち、インバータ12の位相制御によってモータジェネレータ10へ通電される電流量を適宜調整することで、モータジェネレータ10を所望の回転速度にて回転させる。
【0043】
ただし、上述したように、エンジン2の停止制御はモータジェネレータ10によってエンジン2に付与される回転力を徐々に低減させていくことで行われるために、エンジン2の停止時にはモータジェネレータ10の出力軸の回転速度はほぼ「0」となっている。ここにおいて、例えばエンジン2の始動時と同様な態様にてモータジェネレータ10を起動させて補機に駆動力を供給する場合、必ずしも補機の要求に見合った条件で同補機の起動がなされるとは限らない。
【0044】
すなわち、パワーステアリングポンプ20を起動する要求が生じている場合には、起動が遅れるとステアリング操作に支障をきたすこととなる。これに対し、パワーステアリングポンプ20の起動遅れが生じない起動能力にて、エアコン用コンプレッサ22やウォータポンプ24の起動要求が生じたときにモータジェネレータ10を起動すると、乗員に不快感を感じさせることがある。すなわち、モータジェネレータ10の急激な起動によって、ノイズが生じたり振動が生じることがある。
【0045】
そこで、本実施形態では、エンジン2の自動停止後、パワーステアリングポンプ20の起動要求時には、他の補機の起動要求時よりもモータジェネレータ10の起動能力を増大するようにする。これにより、ステアリング操作に支障をきたす問題を回避することができ、また、エアコン用コンプレッサ22やウォータポンプ24の起動に際しては、ノイズの発生により乗員に不快感を感じさせるという上記問題を低減することができる。
【0046】
詳しくは、モータジェネレータ10の目標回転速度を設定してこれに基づいて同モータジェネレータ10を起動制御するとともに、同目標回転速度の上昇量を可変とすることによって起動能力を可変制御する。そして、パワーステアリングポンプ20の起動要求時には、それ以外の補機の起動時と比較して、この目標回転速度の徐変量を増大させる。換言すれば、パワーステアリングポンプ20の起動要求時には、それ以外の補機の起動要求時よりもこの目標回転速度の上昇率を増大させる。
【0047】
このように、目標回転速度に基づいてモータジェネレータ10を制御するようにすることで、モータジェネレータ10や上記各補機の起動をより適切に行うことができる。
【0048】
具体的には、モータジェネレータ10の起動時の目標回転速度を、検出されるモータジェネレータ10の出力軸の回転速度(実回転速度)に基づくなまし処理によって設定する。すなわち、エンジン2の自動停止時、モータジェネレータ10の安定した回転によって各補機を駆動する際の、モータジェネレータ10の定常的な回転速度(定常回転速度)を各補機毎に設定しておく。そして、この定常回転速度から実回転速度を減算した値を所定数で割り、これを目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量として設定し、同徐変量に基づいて目標回転速度を設定する。そして、この目標回転速度に基づいてインバータ12によるモータジェネレータ10の通電制御を行う。この際、上記所定数は、パワーステアリングポンプ20の起動要求時のものを、それ以外の補機の起動要求時のものと比較して小さく設定する。
【0049】
このように、所定数を適宜定めることで、モータジェネレータ10の目標回転速度を徐々に上昇させていく際の徐変量を設定することができる。
なお、パワーステアリングポンプ20やエアコン用コンプレッサ22の起動要求は、上記ステアリングホイール31の操作態様や運転者によるエアコンの作動要求に基づいて生成するものとする。そして、上記態様にて各種補機の制御を行うべく、本実施形態では以下のセンサを備えている。
・回転速度センサ75:上記モータジェネレータ10の出力軸の回転速度を検出する。
・操舵角センサ76:上記ステアリングホイール31の回転角度を検出する。
・エアコン操作部77:車両のインストルメントパネル部(図示略)に設けられ、車両の冷暖気態様についての運転者の指示が入力される。
【0050】
ここで、本実施形態にかかるモータジェネレータ10の起動処理について、図2を用いて更に説明する。
図2に、本実施形態にかかるモータジェネレータ10の起動処理手順を示す。この処理は、複数の補機の起動を監視する監視手順と、特定の補機の起動要求があったときには、他の補機から起動要求があったときよりモータジェネレータの起動能力を増大する制御手順とを有している。そして、これら処理手順は、上記ECU60内の図示しないROM(Read Only Memory)に制御プログラムとして記録されている。また、ECU60内では、パワーステアリングポンプ20を上記特定の補機とすべく、例えばフラグ処理等によって、パワーステアリングポンプ20の起動要求時には、これを特定の補機の起動要求があったとする設定がなされている。なお、この処理は、所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0051】
この一連の処理では、まずエンジン2の自動停止中であるか否かを判断する(ステップ100)。そして、エンジン2の自動停止中であると判断されると、パワーステアリングポンプ20の起動要求があるか否かを判断する(ステップ110)。ここでは、上記操舵角センサ76の検出値が、所定以上の回転角度であるときにパワーステアリングポンプ20の起動要求ありと判断される。
【0052】
そして、パワーステアリングポンプ20の起動要求があると判断されると、パワーステアリングポンプ20の起動にかかる目標回転速度を設定する(ステップ120)。この目標回転速度は、パワーステアリングポンプ20の駆動のために設定されたモータジェネレータ10の定常回転速度から実回転速度を引いたものを定数「n」で割った値を目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量として設定し、同徐変量に基づいて設定する。なお、この定数「n」は、パワーステアリングポンプ20の起動に際して、モータジェネレータ10の目標回転速度を上昇させる際の徐変量を決定するパラメータである。この定数は、「1」以上に設定する。
【0053】
一方、ステップ110でパワーステアリングポンプ110の起動要求がないと判断されたときには、ステップ130に移行する。ここでは、上記エアコン用コンプレッサ22及び上記ウォータポンプ24の少なくとも一方の起動要求があるか否かを判断する。ここでエアコン用コンプレッサ22の起動要求は、基本的には、上記エアコン操作部77によって、エアコンの作動要求が生じているときに生成される。ただし、自動的に温度調整をするよう、エアコン操作部77にて指示されている場合(オートエアコン)には、例えば車内の温度を検出するなどして、この検出結果に基づいて上記ECU60にてエアコン用コンプレッサ22の起動要求が生成される。また、ウォータポンプ24の起動要求は、上記エアコン操作部77によって車内の暖気の指示がなされており、且つエンジン冷却液の循環による暖気を必要とする所定の条件下において生成される。
【0054】
そして、ステップ130において、エアコン用コンプレッサ22及びウォータポンプ24の少なくとも一方の起動にかかる目標回転速度を設定する(ステップ140)。この目標回転速度は、
・エアコン用コンプレッサ22の駆動のために設定されたモータジェネレータ10の定常回転速度から実回転速度を引いたものを定数「N」で割った値である目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量。又は、・ウォータポンプ24の駆動のために設定されたモータジェネレータ10の定常回転速度から実回転速度を引いたものを定数「N」で割った値である目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量
のいずれかに基づいて設定される。なお、エアコン用コンプレッサ22及びウォータポンプ24のいずれの起動要求も生じている場合には、定常回転速度の大きな方に基づいて目標回転速度を設定する。また、この定数「N」は、エアコン用コンプレッサ22及びウォータポンプ24の少なくとも一方の起動に際して、モータジェネレータ10の目標回転速度を上昇させる際の徐変量を決定するパラメータである。この定数「N」は、上記定数「n」よりも大きな値に設定されている。
【0055】
そして、ステップ120又はステップ140によって、モータジェネレータ10の目標回転速度が設定されると、これに基づいてモータジェネレータ10の通電制御が行われ(ステップ150)、この処理を一旦終了する。なお、エアコン用コンプレッサ22の起動要求が生じている場合には、電磁クラッチ52によってエアコン用コンプレッサ22とプーリ46とを連結させておく。また、ウォータポンプ24の起動要求が生じている場合には、電磁クラッチ54によってウォータポンプ24とモータジェネレータ10とを連結させておく。
【0056】
なお、上記ステップ100において、エンジン2の自動停止中でないと判断されたときや、上記ステップ130において、エアコン用コンプレッサ22及びウォータポンプ24のいずれの起動要求も生じていないと判断されたときには、この処理を一旦終了する。
【0057】
ここで、上記処理によるモータジェネレータ10の起動態様を図3に示す。図3(a)は、パワーステアリングポンプ20の起動要求に応じてモータジェネレータ10を起動した場合の、この回転速度の推移を示す。同図3(a)に示すように、この場合、モータジェネレータ10の出力軸の回転速度は、迅速に上昇する。したがって、パワーステアリングポンプ20も迅速に立ち上がり、ステアリング操作に支障をきたすという問題を回避することができる。
【0058】
一方、図3(b)は、エアコン用コンプレッサ22及びウォータポンプ24の少なくとも一方の起動要求に応じてモータジェネレータ10を起動した場合の、この回転速度の推移を示す。同図3(b)に示すように、この場合、モータジェネレータ10の出力軸の回転速度は、緩やかに上昇する。したがって、モータジェネレータ10の回転速度の急変によるノイズや振動を低減することができる。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)パワーステアリングポンプ20の起動要求時には、他の補機の起動要求時よりもモータジェネレータ10の起動能力を増大させた。これにより、パワーステアリングポンプ20の起動要求に対しては、モータジェネレータ10の出力軸の回転速度を迅速に上昇させることができ、ひいては、ステアリング操作を好適に行うことができる。また、エアコン用コンプレッサ22及びウォータポンプ24の少なくとも一方の起動要求に対しては、モータジェネレータ10の出力軸の回転速度を緩やかに上昇させることができ、ひいては、同回転速度の急変によるノイズや振動を低減することができる。
【0060】
(2)モータジェネレータ10の起動に際し、目標回転速度を設定してこれに基づいて同モータジェネレータ10の起動制御を行うとともに、起動される補機に応じて目標回転速度の徐変量を可変設定した。これにより、モータジェネレータ10の起動に際し、各補機に応じたより適切な制御を行うことができる。
【0061】
(3)各補機毎に設定された定常回転速度と、実回転速度とに基づくなまし処理によって目標回転速度を算出した。これにより、目標回転速度の徐変量の可変設定を簡易に行うことができる。
【0062】
(4)エンジン2の自動停止制御に際し、燃料噴射や点火プラグの火花放電の停止後、モータジェネレータ10によってエンジン2の回転速度を制御して徐々に同回転速度を低減させるようにした。これにより、エンジン2の停止制御に際し、振動を低減することができる。
【0063】
(5)モータジェネレータ10の出力軸を、プーリ40、42、44、46、ベルト48、及び電磁クラッチ50、52、54によって、適宜各補機と機械的に連結可能とした。これにより、簡易な構成にてモータジェネレータ10から各補機へ駆動力の供給を行うことができる。
【0064】
(6)エンジン2の出力軸を、プーリ40、42、44、46、ベルト48、及び電磁クラッチ50、52、54によって、適宜各補機やモータジェネレータ10と機械的に連結可能とした。これにより、簡易な構成にてエンジン2から各補機やモータジェネレータ10へ駆動力の供給を行うことができる。
【0065】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・パワーステアリングポンプ20の起動要求の生成態様は、ステアリングホイール31の回転角度が所定以上であるときに生成するものに限らない。例えば駆動輪からラック32等に加わる力を検出し、これが所定以上であるときに起動要求を生成してもよい。また、パワーステアリングポンプ20の油圧が所定値以上であるときに起動要求ありとしてもよい。
【0066】
・パワーステアリング30の構成については、先の図1に模式的に示したものに限らない。
・エアコン用コンプレッサ22やウォータポンプ24の起動要求の生成態様は、上記実施形態で例示したものに限らない。
【0067】
・エアコン用コンプレッサ22とウォータポンプ24との目標回転速度の徐変態様は同じでなくてもよい。
・目標回転速度の徐変態様は、上記実施形態で例示したものに限らず、例えば上昇幅一定で、換言すれば傾き一定で目標回転速度を上昇させていってもよい。また、予め時系列的に目標回転速度を設定してもよい。この際、エアコン用コンプレッサ22やウォータポンプ24の起動要求時には、パワーステアリングポンプ20の起動要求時よりも目標回転速度が緩やかに上昇するようにする。
【0068】
・パワーステアリングポンプ20やその他の補機の起動要求に応じたモータジェネレータ10の起動制御は、目標回転速度を設定しつつそれに基づいて実回転速度を制御するものに限らない。例えば、フィードバック制御を行うことなくモータジェネレータ10に供給する電流を起動要求の生じている補機に応じて変更してもよい。
【0069】
・モータジェネレータ10の起動処理にかかるプログラムを記録する記録媒体は、ROMに限らず、例えば電気的消去可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)等、任意の記録媒体でよい。
【0070】
・補機としては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば、先の図1に示す歯車変速機部6の作動油の油圧をエンジン2の停止時に確保するポンプを補機としてもよい。更に、エンジンの吸気負圧を利用してフットブレーキのアシスト力を発生するバキュームサーボ式のブレーキアシスト機構を備えた車両において、エンジンの一時停止制御中にブレーキブースタの負圧を生成する手段を補機としてもよい。こうした場合であっても、起動される補機に応じてモータジェネレータの起動能力を可設定する本発明の適用は有効である。なお、この際、例えばブレーキブースタの負圧を生成する手段に対し負圧の不足度合いに応じてモータジェネレータの起動能力を変更する等、補機の動力要求度合い応じてモータジェネレータの起動能力を変更することが望ましい。すなわち、上記手段に対しては、例えば負圧の不足度合いが大きいときには起動能力を大きくする一方、負圧の不足度合いが小さいときには起動能力を小さくすることでノイズや振動を低減することが望ましい。
【0071】
・上記実施形態で例示した態様にてエンジン2の自動停止制御時にモータジェネレータ10によるエンジン2への回転力の付与がなされるものに限らない。こうした場合であっても、エンジン2の停止時にモータジェネレータ10の回転速度が小さい状況下では、起動される補機に応じてその起動能力を可変設定する本発明の適用は有効である。
【0072】
・モータジェネレータ10から補機への動力を供給するための構成は、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば、パワーステアリングポンプ20とプーリ44との間に電磁クラッチを備えてもよい。
【0073】
・補機に動力を供給するモータは、必ずしも発電機の機能を有しなくてもよく、また、複数のモータの動力の合力を各補機に供給するようにしてもよい。
・エンジンの自動停止始動装置の搭載される車両に限らず、例えばハイブリッド車等においても、補機を起動するモータを備える場合には、起動される補機に応じてその起動能力を可変設定する本発明の適用は有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる車両用モータの駆動装置の第1の実施形態の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態のモータジェネレータの起動処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態のモータジェネレータの起動態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、4…トルクコンバータ、6…歯車変速機部、8…アウトプットシャフト、10…モータジェネレータ、12…インバータ、14…バッテリ、20…パワーステアリング、22…エアコン用コンプレッサ、24…ウォータポンプ、30…パワーステアリング、31…ステアリングホイール、32…ピニオン、33…ラック、34…パワーシリンダ、34l…左室、34r…右室、35…ピストン、36…シリンダ、40、42、44、46…プーリ、48…ベルト、50、52、54、電磁クラッチ、60…電子制御装置。
Claims (7)
- 車両用パワーステアリングの動力源であるパワーステアリングポンプを含む複数の補機が装備された車両にあってそれら補機を駆動すべく同車両に搭載されるモータの駆動を制御する車両用モータの駆動方法であって、
前記モータの駆動は、同モータの目標回転速度を徐変させることにより制御するものであり、
起動要求のあった補機が前記パワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりも前記モータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくする
ことを特徴とする車両用モータの駆動方法。 - 車両用パワーステアリングの動力源であるパワーステアリングポンプを含む複数の補機が装備された車両にあってそれら補機を駆動する同車両に搭載されるモータの駆動を制御する車両用モータの駆動装置であって、
前記複数の補機の起動要求を監視する監視手段と、
前記モータの駆動を同モータの目標回転速度を徐変させることにより制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、起動要求のあった補機が前記パワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりも前記モータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくする
ことを特徴とする車両用モータの駆動装置。 - 前記複数の補機は、共通のモータに対して機械的に連結可能とされる
請求項2記載の車両用モータの駆動装置。 - 前記複数の補機は更に、前記車両の原動機であるエンジンに対して機械的に連結可能とされる
請求項3記載の車両用モータの駆動装置。 - 前記エンジンは内燃機関であり、同内燃機関の停止時に前記モータにて補機が駆動可能とされる
請求項4記載の車両用モータの駆動装置。 - 請求項5記載の車両用モータの駆動装置において、
前記内燃機関の停止制御時に、前記モータを通じて該内燃機関に回転力を付与しつつこの付与する回転力を徐々に低減させていく制御を行う停止制御手段を更に備える
ことを特徴とする車両用モータの駆動装置。 - 車両用パワーステアリングの動力源であるパワーステアリングポンプを含む複数の補機を駆動制御する車両用モータの駆動制御プログラムを記録した記録媒体であって、
前記複数の補機の起動要求を監視する監視手順と、
前記モータの目標回転速度を徐変させることにより前記モータの駆動を制御し、起動要求のあった補機が前記パワーステアリングポンプであるときは、他の補機から起動要求があったときよりも前記モータの目標回転速度を徐々に上昇させる際の徐変量を大きくする制御手順とが記憶されてなる
ことを特徴とする車両用モータの駆動制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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