JP4796235B2 - ビナフトール誘導体金属塩およびその製法 - Google Patents

ビナフトール誘導体金属塩およびその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なビナフトール誘導体金属塩およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の二量体である2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸は、既に知られており、アゾ顔料を製造する際の調色剤としての用途が提案されている(特開昭63−152670号公報)。
【0003】
しかしながら、この2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸の金属塩は、ほとんど知られておらず、わずかにナトリウム塩がポリテトラヒドロフランとのイオンカップリング反応に有用であることが提案されているに過ぎない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電子写真用トナー等の電荷制御剤やインクジェット用記録紙の受像性改質剤を始め、種々の用途への適用が期待される新規なビナフトール誘導体金属塩を提供するものである。
また、本発明はこの新規なビナフトール誘導体の製法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸の二量体について、鋭意検討を重ねた結果、二量体を一定量のアルカリ金属化合物と反応させた後、2価または3価の金属と交換反応させることにより、新規な金属塩が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式[1]または[2]
【化4】
Figure 0004796235
[式中、nは2または3の整数、Mは2価または3価の金属元素を示す。]
で表されるビナフトール誘導体金属塩に関する。
【0007】
一般式[1]で表されるビナフトール誘導体金属塩は、金属元素が二つのナフタレン環上のそれぞれのカルボン酸の塩として存在している。
【0008】
また、一般式[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩は、金属元素が二つのナフタレン環上のそれぞれのカルボン酸および水酸基の塩として存在している。
【0009】
式中、Mは、2価または3価である金属元素であり、例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、イットリウム等が挙げられる。この中でも優れた帯電性能を有するなどの点において、アルミニウム、亜鉛が特に好ましい。
【0010】
また、本発明は、一般式[1]または[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩の製法に関する。
一般式[1]で表されるビナフトール誘導体金属塩は、下記一般式[3]で表されるビナフトール誘導体と、
【化5】
Figure 0004796235
[3]
[式中、YおよびY'は、エステル化されてもよいカルボキシル基を示す。]
このビナフトール誘導体に対し、1.0〜2.5倍モルのアルカリ金属化合物と反応させて、ビナフトール誘導体のアルカリ金属塩を形成し、これを2価または3価の金属塩と金属交換させることにより製造することができる。
【0011】
また、一般式[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩は、一般式[3]で表されるビナフトール誘導体と、このビナフトール誘導体に対し、3.0倍モル以上のアルカリ金属化合物と反応させて、ビナフトール誘導体のアルカリ金属塩を形成し、これを2価または3価の金属塩と金属交換させることにより製造することができる。
【0012】
本発明においては、一般式[1]および[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩を製造するに際して、出発原料である一般式[3]で表されるビナフトール誘導体と反応させるアルカリ金属化合物のモル量を調整することによって、選択的に製造することができる。
【0013】
一般式[1]で表されるビナフトール誘導体金属塩を製造する場合は、出発原料である一般式[3]で表されるビナフトール誘導体に対し、1.0〜2.5倍モル、好ましくは2.0〜2.2倍モル、より好ましくは2.0倍モルのアルカリ金属化合物と反応させて、一般式[4]で表されるビナフトール誘導体のアルカリ金属塩を得る。
【0014】
【化6】
Figure 0004796235
[式中、Rはアルカリ金属を示す。]
【0015】
次いで、得られたアルカリ金属塩に2価または3価の金属塩を滴下等の方法で添加し、金属交換反応させることにより、一般式[1]で表されるビナフトール誘導体金属塩を製造することができる。
【0016】
金属交換反応に際して添加する金属塩の量は、金属が2価の金属元素の場合、一般式[4]で表されるビナフトール誘導体のアルカリ金属塩に対して0.5〜1.4倍モル、金属が3価の金属元素の場合、一般式[4]で表されるビナフトール誘導体のアルカリ金属塩に対して0.4〜1.0倍モルがよい。
【0017】
一般式[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩を製造する場合は、出発原料である一般式[3]で表されるビナフトール誘導体に対し、3.0倍モル以上、好ましくは4.0〜5.0倍モル、より好ましくは4.0〜4.2倍モルのアルカリ金属化合物を反応させて、下記一般式[5]で表されるビナフトール誘導体のアルカリ金属塩を得る。
【0018】
【化7】
Figure 0004796235
[式中、Rはアルカリ金属を示す。]
【0019】
次いで、得られたアルカリ金属塩を、2価または3価の金属塩を含む水溶液に滴下等の方法で添加し、金属交換反応させることにより、一般式[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩を製造することができる。
【0020】
金属交換反応に用いる2価または3価の金属塩の量は、金属が2価の金属元素の場合、一般式[5]で表されるビナフトール誘導体のアルカリ金属塩に対して2.0〜2.5倍モル、金属が3価の金属元素の場合、一般式[5]で表されるビナフトール誘導体のアルカリ金属塩に対して1.5〜1.9倍モルがよい。
【0021】
2価または3価の金属塩を含む水溶液の濃度は、5〜20重量%が好ましく、5〜10重量%が特に好ましい。
【0022】
本発明の方法によれば、出発原料であるビナフトール誘導体に対し、反応させるアルカリ金属化合物のモル量を調整することによって、一般式[1]および[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩を選択的に製造することが可能となる。
【0023】
一般式[3]で表されるビナフトール誘導体のYおよびY'のエステル化されたカルボキシル基としては、炭素原子数が1〜6のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基)、フェノキシカルボニル基またはフェナシルオキシカルボニル基が挙げられ、これらの基に含まれる芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0024】
置換基としては、例えばハロゲン原子、ハロゲン化低級アルキル基、低級アルキル基、低級アルコキシ基(例えばメトキシ基)、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、フリル基、アミノ基、トルイジルアミノ基、トリアジルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、エステル化されたカルボキシル基(例えばアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基)、アミド化されたカルボキシル基(例えばフェニルカルバモイル基)、アルキルアミノスルホニル基、アリール基を有してもよい炭素原子数が2〜6のアルケニル基等が挙げられる。
【0025】
なお、本発明において、「低級」とは、炭素原子数が1〜6のものであるものを表す。
本発明の方法に用いられるアルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、安価に入手しやすいという点において、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる2価または3価の金属塩としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、イットリウム等のハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。これらの中でも水溶性の塩がよく、好ましくは塩化アルミニウム、塩化亜鉛がよい。
【0027】
本発明の製法の出発物質として用いられる、一般式[3]で表されるビナフトール誘導体は、例えば米国特許第3278610号公報に記載の方法に基づき、ナフトール誘導体を、塩化銅、アミンおよび酸素の存在下、ベンゼン等の溶媒中で反応させることによって得ることができる。またその他にも、アルカリ性水溶液中で塩化鉄により酸化して得る方法が一般的に知られている。
【0028】
本発明の一般式[1]または[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩、特にアルミニウム塩および亜鉛塩は、優れた帯電性能を有しており、電子写真用トナー等の電荷制御剤に利用できる。
【0029】
また、インクへの吸収性が良好となるため、インクジェット用記録紙の受像性改質剤としての用途が期待できる。
【0030】
【参考例】
2,2’-ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]3,3'−ジカルボン酸の製造
【化8】
Figure 0004796235
【0031】
2−ヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸25.0gを水600gに懸濁し、これに水酸化ナトリウム5.0gおよび塩化鉄(III)6水和物108gを添加し、還流しながら約48時間反応した。室温まで冷却後、不溶物をろ過により回収し、これを5%−水酸化ナトリウム水溶液300gに溶解させ、活性炭処理を行いながら不溶物を除去した。ろ液をpH2程度に調整し、析出する結晶をろ過により回収した。十分に水洗し、乾燥して、2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸を含む粗結晶26.2gを得た。次いで、粗結晶を80%−酢酸水溶液300gに懸濁し、約30分還流した。室温まで冷却した後、不溶物をろ過により回収し、十分に水洗し、乾燥して、精製された2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸13.4gを得た。
得られた化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図1に示す。
【0032】
【実施例1】
【化9】
Figure 0004796235
【0033】
2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸ジメチルエステル320g(0.85モル)をメタノール1000gに懸濁し、これに水酸化ナトリウム66g(1.65モル)を水1000gに溶解した水溶液を添加して、約70〜80℃で還流下、12時間反応した。
【0034】
次いで、塩化アルミニウム70gを水1000gに溶解した水溶液を、約60℃で滴下しながら加えた。滴下終了後、再び昇温し、還流しながら約2時間放置した。その後、徐々に室温まで冷却し、析出物をろ過により回収した。水およびメタノールで十分洗浄した後、乾燥して、淡黄色粉末である目的物312gを得た[Al含有量 4.61wt%(計算値4.35wt%)]。
得られた化合物の赤外吸収スペクトル(KBr法)スペクトルを図2に示す。
【0035】
【実施例2】
【化10】
Figure 0004796235
【0036】
2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸ジメチルエステル320g(0.85モル)をメタノール1000gに懸濁し、これに水酸化ナトリウム134g(3.4モル)を水1000gに溶解した水溶液を添加して、約70〜80℃で還流下、3時間反応した。反応終了後、反応液を、塩化アルミニウム148gを水1500gに溶解した水溶液に、約60℃で滴下しながら加えた。滴下終了後、再び昇温し、還流しながら約2時間放置した。その後、徐々に室温まで冷却し、析出物をろ過により回収した。水およびメタノールで十分洗浄した後、乾燥して、淡黄色粉末である目的物319gを得た[Al含有量8.85wt%(計算値8.30wt%)]。
得られた目的物の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図3に示す。
【0037】
参考例および実施例1、2の赤外吸収スペクトルのチャートを比較した。本願化合物の原料となる2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸(図1)の1650cm−1付近のピークが、ビナフトール誘導体金属塩(図2および3)になることによって、低波数側にシフトすることがわかる。
【0038】
【実施例3】
【化11】
Figure 0004796235
【0039】
2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸18.7g(0.050モル)をメタノール60gに懸濁し、これに水酸化ナトリウム4.0g(0.100モル)を水60gに溶解した水溶液を添加して、約60℃で、2時間放置した。次いで、塩化亜鉛6.8gを水100gに溶解した水溶液を、約60℃で滴下しながら加えた。滴下終了後、再び昇温し、還流しながら約2時間放置した。その後、徐々に室温まで冷却し、析出物をろ過により回収した。水およびメタノールで十分洗浄した後、乾燥して、灰褐色粉末である目的物20.6gを得た[Zn含有量15.92wt%(計算値14.94wt%)]。
【0040】
【実施例4】
【化12】
Figure 0004796235
【0041】
2,2'−ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]−3,3'−ジカルボン酸18.7g(0.050モル)をメタノール60gに懸濁し、これに水酸化ナトリウム8.0g(0.200モル)を水60gに溶解した水溶液を添加して、約60℃で、2時間放置した。次いで、この溶液を、塩化亜鉛13.6gを水150gに溶解した水溶液に、約60℃で滴下しながら加えた。滴下終了後、再び昇温し、還流しながら約2時間放置した。その後、徐々に室温まで冷却し、析出物をろ過により回収した。水およびメタノールで十分洗浄した後、乾燥して、灰褐色粉末である目的物21.1gを得た[Zn含有量28.48wt%(計算値26.10wt%)]。
【0042】
【実施例5】
実施例3で得た亜鉛塩とフェライトキャリア(φ=150μm)を1:100の重量比でよく混合した後、ブロー・オフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB200型)により摩擦帯電量を測定した。その結果、摩擦帯電量は−64.9μC/gであった。また、実施例4で得た亜鉛塩の摩擦帯電量は−44.0μC/gであった。
【0043】
【実施例6】
【化13】
Figure 0004796235
【0044】
実施例3の塩化亜鉛を、酢酸ニッケル(II)四水和物12.4gに代えることの他は、実施例3と同様にして、灰褐色粉末である目的物19.5gを得た[Ni含有量12.57wt%(計算値13.62wt%)]。
【0045】
【実施例7】
【化14】
Figure 0004796235
【0046】
実施例4の塩化亜鉛を、酢酸ニッケル(II)四水和物24.8gに代えることの他は、実施例4と同様にして、灰緑色粉末である目的物23.0gを得た[Ni含有量23.40wt%(計算値24.07wt%)]。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例で得た2,2’-ジヒドロキシ[1,1'−ビナフタレン]3,3'−ジカルボン酸の赤外吸収スペクトル(KBr法)。
【図2】 実施例1で得たビナフトール誘導体アルミニウム塩の赤外吸収スペクトル(KBr法)。
【図3】 実施例2で得たビナフトール誘導体アルミニウム塩の赤外吸収スペクトル(KBr法)。

Claims (6)

  1. 下記一般式[1]または[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩。
    Figure 0004796235
    [式中、nは2または3の整数、Mは、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)およびイットリウムからなる群から選択される金属元素を示す。]
  2. 属元素が亜鉛である、請求項1記載のビナフトール誘導体金属塩。
  3. 下記一般式[3]で表されるビナフトール誘導体と、
    Figure 0004796235
    [3]
    [式中、YおよびY'は、エステル化されてもよいカルボキシル基を示す。]
    このビナフトール誘導体に対し、1.0〜2.5倍モルのアルカリ金属化合物と反応させてビナフトール誘導体のアルカリ金属塩を形成し、これをアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)およびイットリウムからなる群から選択される金属の金属塩で、金属交換させることを特徴とする、一般式[1]で表されるビナフトール誘導体金属塩の製法。
  4. 下記一般式[3]で表されるビナフトール誘導体と、
    Figure 0004796235
    [3]
    [式中、YおよびY'は、エステル化されてもよいカルボキシル基を示す。]
    このビナフトール誘導体に対し、3倍モル以上のアルカリ金属化合物と反応させてビナフトール誘導体のアルカリ金属塩を形成し、これをアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)およびイットリウムからなる群から選択される金属の金属塩と金属交換させることを特徴とする、一般式[2]で表されるビナフトール誘導体金属塩の製法。
  5. アルカリ金属化合物が水酸化ナトリウムである、請求項3または4に記載のビナフトール誘導体金属塩の製法。
  6. 属塩が塩化アルミニウムまたは塩化亜鉛である、請求項3または4に記載のビナフトール誘導体金属塩の製法。
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