JP4794778B2 - 光ファイバ被覆装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプリフォームから線引きされる裸の光ファイバ、或は、被覆光ファイバの被覆が除去された接続部とか加工部等の再被覆必要な部位(被覆形成部位)を被覆するための光ファイバ被覆装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の光ファイバ被覆装置の一つとして、図8、9に示す方法がある。これは光ファイバの製造時に、プリフォーム2から線引きされた裸光ファイバ1を巻取リール5に巻取る間に、裸光ファイバ1の外周にUV硬化型樹脂を連続的に塗布し(付着させ)、その樹脂にUV光を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて被覆する方法である。
【0003】
図8の光ファイバ被覆装置は、プレート9の上にUV樹脂被覆部3が設置され、プレート9の下に光シールド4が配置されている。UV樹脂被覆部3はプレート9の上に設置されたハウジング8に楕円筒7が設けられ、その内周面が反射構造であり、楕円筒7内に紫外線を射出する放電管6が配置されている。放電管6には、例えば、長尺状の水銀放電アークランプとか、マイクロ波無電力ランプ等の連続点灯のものが使用されている。放電管6は楕円筒7の二つの焦点のうちの一方の焦点上に位置して、他方の焦点を通過する裸光ファイバ1の外周のUV硬化型樹脂に紫外線を照射する。このとき、楕円筒7の内面で反射された反射光もUV硬化型樹脂に照射される。
【0004】
UV樹脂被覆部3のハウジングには三つまたは四つの螺設孔が形成され、水平なプレート9に前記螺設孔よりも大きな差込み孔が形成され、その差込み孔に差込んだボルト10を前記螺設孔へ螺合させることにより、ハウジング8が二つの直交する方向xyの夫々の方向へ並進運動することができ、且つ二つの直交する軸φ及びθの周りを回転できるようにしてある。この構成は放電管6を裸光ファイバ1と適切な整合状態にするための工夫である。
【0005】
図8の線引きされた裸光ファイバ1の外周にUV硬化型樹脂を塗布する(付着させる)には、図9のようにタンク16内のUV硬化型樹脂をポンプ15により汲み上げて供給管17を通してカップ18に送り、カップ18から通路20に送って、通路20内を通過する裸光ファイバ1の外周に付着させる。そのUV硬化型樹脂は放電管6から出力される紫外線と、楕円筒7の内面で反射された反射光(紫外線)とが照射されて硬化する。
【0006】
UV硬化型樹脂で被覆されてUV樹脂被覆部3から出てくる被覆光ファイバ21は、図8、9の光シールド4を通過して巻取リール5に巻取られる。光シールド4には紫外線に応答する光検出器11がセットされており、光検出器11が光シールド4を通過する被覆光ファイバ21の被覆から離脱する紫外線を検知し、被覆ファイバ21を検出する。
【0007】
光シールド4は接合部12に沿って一体化した二つの部材22から構成されている。これら二つの部材22の接合部12には縦向きの凹部があり、その凹部が対向して孔13が形成され、孔13を被覆光ファイバ21が通過できるようにしてある。光検知器11は電気的にメータ14へ接続されており、メータ14は光検知器11によって電気信号に変換された紫外線強度を読み取る。この紫外線強度は被覆光ファイバ21に入射した紫外線強度に比例している。この読みを利用して、放電管6の配向状態及び最良の配置位置を決定して、UV光が裸光ファイバ1の外周に付着したUV硬化型樹脂へ最大強度で照射されるようにする。
【0008】
また従来は、例えば、被覆光ファイバの被覆を剥いで光ファイバ同士を接続したり、分岐等の加工を行った後、加工部を保護するために、加工部(被覆形成部位)をUV硬化型樹脂で再被覆(リコート)して補強することが行われている。再被覆部は収納や取扱いの便宜等の面から、なるべく小さくすることが要求される。そのため近年は被覆剥離部だけをUV硬化型樹脂で再被覆している。
【0009】
UV硬化型樹脂で再被覆する光ファイバ被覆装置として図10に示すものがある。この光ファイバ被覆装置は固定された下型37と該下型37に回動可能に設けられた上型36から構成されるモールド型35が搭載された装置本体30と、装置本体30に回動可能に取り付けられた遮蔽蓋34とを備えている。図10の32は被覆光ファイバを把持するクランプ、31は制御回路、33は操作盤の操作釦、44はUVセンサである。
【0010】
図10に示す光ファイバ被覆装置によって被覆光ファイバの被覆形成部位を再被覆するには次のようにする。
(1)前記遮蔽蓋34を開いてから、モールド型35の上型36を同方向へ回動させ、下型37の上面に形成されているリコート溝38内に被覆光ファイバ21の被覆形成部位39をセットする。
(2)上型36を閉じて、上型36の下面に設けられているリコート溝40を前記下型37のリコート溝38に合せて、両リコート溝38、40の間に被覆形成部位39を収容する。
(3)前記(2)のように遮蔽蓋34を閉じて、モールド型35を外光から遮蔽してから、タンク45内のUV硬化型樹脂をポンプ41で汲上げて、供給パイプ42から被覆光ファイバ21の被覆形成部位39がセットされている前記リコート溝38内にUV硬化型樹脂を注入する。このとき必要に応じて遮蔽蓋34を開けてモールド型35内へのUV硬化型樹脂の注入状況を確認する。
(4)リコート溝38、40内に所定量のUV硬化型樹脂が注入されたら、遮蔽蓋34の内側に取り付けられているUV光源のランプ43を点灯させて、UV硬化型樹脂にUV光を照射して同樹脂を硬化させる。このときも必要に応じて遮蔽蓋34を開けてUV硬化型樹脂の硬化状況を確認する。
(5)UV硬化型樹脂が十分に硬化したら、遮蔽蓋34及びモールド型35を開いて光ファイバを取り出す。
【0011】
図10の被覆装置を使用して樹脂を被覆する場合、次のことが要望されている。
1.光多重通信(WDM)技術の発達に伴って、大量の光ファイバアンプや光部品の製造が要求されているため、光ファイバの切断、被覆の剥離、光ファイバの接続、被覆形成部位の被覆等の作業の処理時間を短縮化すること。
2.再被覆装置は光部品の製造現場で使用されることが増えているため、取扱の便宜上、小型、軽量であり、消費電力が少ないこと。小型、軽量化のためにUV光の利用効率を上げること。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図10の光ファイバ被覆装置には次のような課題があった。
1.UV硬化型樹脂の注入状況や硬化状況を確認する度に大きな遮蔽蓋34を開閉しなければならず、被覆作業が面倒である。
2.遮蔽蓋34を開けると、リコート溝38、40内に注入されているUV硬化型樹脂以外のUV硬化型樹脂(例えば、リコート溝に樹脂を注入するための樹脂注入路内や供給パイプ42内に残っている樹脂)が外光に曝されるため、これら樹脂が硬化して詰まりの原因になり、作業性が悪い。
3.ランプ43は放電管の発光波長のごく一部を利用しているに過ぎない。例えば、タングステンランプは可視光域より、長めの赤外光領域に多くの放射を行っていることから、UV光の放射効率は悪い。従って、ランプに供給する電源装置も大型化する。
4.UV光の利用効率を上げるために、本件出願人は先に、図10の被覆装置の上型36の上方に凹状の反射面を備えた反射板を配置しておき、下型37の下方からUV光を照射し、下型37と上型36を透過したUV光が前記反射板により反射されて、上型36と下型37のリコート溝38、40内のUV硬化型樹脂に集光されるようにした再被覆装置を開した。この被覆装置では下型37を透過して上型36まで届く光はUV光の一部だけであるため反射光量が少なく、UV光の利用効率の大幅な向上は期待できない。また、上型36の上方に配置された反射板により上型36の上面が遮蔽されてしまい、上型36の外から被覆装置の内部を見る視野が閉ざされてしまい、被覆装置内の被覆光ファイバ21のセット状況やUV硬化型樹脂の充填具合を確認することができない。更に、反射板の反射面が凹状であるため、反射面が平面である反射板に比して厚くなり、反射板が大型化し、再被覆装置の小型化の障害となる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本件発明者は、被覆作業の短縮化、再被覆装置の小型、軽量化を実現するために鋭意研究した結果、UV光利用の光ファイバ被覆装置では、線引きされた裸光ファイバへの被覆でも、被覆を剥離した被覆形成部位を被覆する場合でも、被覆部分が小さく、硬化に必要とする総光量も少ないため、総光量を確保することができれば、硬化時間は短くても良いことに着目し、強いUV光を短時間照射できるようにすれば良いことを知得した。本件発明はこの知得に基づいて開発されたものである。
【0014】
本発明の光ファイバ被覆装置は、光ファイバの外周をUV硬化型樹脂で被覆し、そのUV硬化型樹脂にUV光を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、光ファイバの外周を被覆する光ファイバ被覆装置において、UV光の光源に紫外線LDまたは紫外線LEDを1個または複数個使用したものである。
【0015】
本発明の光ファイバ被覆装置は、光ファイバの外周をUV硬化型樹脂で被覆し、そのUV硬化型樹脂にUV光を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、光ファイバの外周を被覆する光ファイバ被覆装置において、光ファイバがプリフォームから線引きされたものであり、UV光の光源に紫外線LDまたは紫外線LEDを1個または複数個使用したものである。
【0016】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、筐体内のモールド型の溝部にセットされた光ファイバの被覆形成部位の外周にUV硬化型樹脂を充填し、UV硬化型樹脂にUV光を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、光ファイバの被覆形成部位を被覆する光ファイバ被覆装置において、UV光の光源に紫外線LDまたは紫外線LEDを1個または複数個使用したものである。
【0017】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、請求項1記載の光ファイバ被覆装置において、UV光の光源、UV硬化型樹脂の注入等の機能動作を制御する制御回路を備えたものである。
【0018】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、請求項1又は請求項2記載の光ファイバ被覆装置において、複数個の紫外線LDまたは紫外線LEDを、1次元または2次元または3次元に並べたものである。
【0019】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、複数個の紫外線LDまたは紫外線LED中は、任意のものを選択し、制御して使用可能なものである。
【0020】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、請求項乃至請求項4のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、モールド型を交換可能としたものである。
【0021】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、請求項乃至請求項5のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、モールド型の種別を符号化し、その種別を示す符号をモールド型に附したものである。
【0022】
本発明の請求項の光ファイバ被覆装置は、請求項乃至請求項6のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、制御回路がモールド型の種別に従った複数の機能動作のプログラムを備え、モールド型に附された符号を読み取って認識し、適切なプログラムを選択して動作するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下に本発明の光ファイバ被覆装置の実施形態の一例を説明する。この実施形態は、被覆光ファイバの被覆を除去した後に融着接続された2本の被覆光ファイバの被覆形成部位を被覆する場合の実施例である。図1の光ファイバ被覆装置はモールド型50が搭載された装置本体51と、装置本体51に開閉可能に取り付けられてモールド型50を外光から遮蔽可能な遮蔽蓋54と、遮蔽蓋54の内側に取り付けられた光源67を備え、被覆光ファイバ21の被覆形成部位55がセットされたモールド型50内にUV硬化型樹脂を充填し、充填されたUV硬化型樹脂に光源67のUV光を照射して硬化させることによって被覆形成部位55をUV硬化型樹脂によって被覆するものである。遮蔽蓋54は下方開口の箱型である。
【0024】
図1に示すように、モールド型50は装置本体51の上面に固定された石英ガラス製の下型57と、下型57に回動可能に取り付けられた石英ガラス製の上型56とから構成されている。図1に示すように上型56及び下型57の接合面(上型56の下面61及び57の上面62)の夫々の中央には、前記被覆光ファイバ21の被覆形成部位55を嵌合可能な断面半円弧状の細長溝(以下「リコート溝」)58、59が形成されており、下型57のリコート溝59内に前記被覆形成部位55を嵌合させてから、上型56を下型57の上に重ねて互いの接合面同士を接合させると、夫々の接合面に形成されている前記リコート溝58、59が突き合わされて、両リコート溝58、59の間に被覆形成部位55が収容されるようにしてある。上型56及び下型57のリコート溝58、59の長手方向両外側には、リコート溝58、59の間にセットされた被覆光ファイバ21の被覆形成部位55に連なる被覆部分の一部を嵌合可能な嵌合溝63、64が形成されている。モールド型50は交換可能とすることができる。
【0025】
図1に示すように上型56の下面61と下型57の上面62の夫々には、前記リコート溝58、59と直交する方向に供給溝65、66が形成されており、前記のように互いのリコート溝58、59同士を突き合せると(下型57の上に上型56を重ねると)、夫々の供給溝65、66同士も突き合わされて、被覆光ファイバ21の被覆形成部位55がセットされた互いのリコート溝58、59間にUV硬化型樹脂を注入するための流路が形成されるようにしてある。モールド型50は交換可能にしてある。モールド型50を交換することによって様々な形の樹脂モールドに対応可能にしてある。
【0026】
遮蔽蓋54の天井板32の内側には光源67が取り付けられている。本発明ではこの光源67に紫外線LD(UVLD)または紫外線LED(UVLED)を使用してある。使用する個数は1個または複数個とすることができる。複数個の紫外線LDまたは紫外線LEDを使用した場合は、任意のものを選択制御して使用することができる。複数個のUVLDまたはUVLEDは1次元または2次元または3次元に並べることができる。図1ではUVLDを前後と左右の2次元に配置してある。
【0027】
図1の光ファイバ被覆装置は、機能動作を統轄する制御回路60を備えている。モールド型50は種々あるものを符号化し、その符号を夫々のモールド型50に表示してある。制御回路60はモールド型50毎の種別に従った複数の機能動作のプログラムを備え、モールド型50に表示してある符号を読み取ってモールド型50を認識し、そのモールド型50に合った適切なプログラムを選択して動作するようにしてある。
【0028】
図1の光ファイバ被覆装置は、遮蔽蓋54を閉じて光源67を点灯させると、光源67から出射された光がモールド型50に照射され、モールド型50のリコート溝58、59間に充填されているUV硬化型樹脂が硬化する。また、遮蔽蓋54の天井には遮蔽蓋54を開けなくても内部のUV硬化型樹脂の注入状況や硬化状況を確認可能な長方形の確認窓68が開設され、その確認窓68にそれを開閉口可能なスライド式の開閉蓋69が取り付けられている。開閉蓋69はスライドさせて確認窓68を開くと、UV硬化型樹脂の注入状況や硬化状況を確認することができ、スライドさせて確認窓68を閉じると外光の侵入を防止することができるようにしてある。
【0029】
図1に示すように前記装置本体51には、操作盤70、UV硬化型樹脂を溜めておく樹脂タンク71、樹脂タンク71内のUV硬化型樹脂を汲み上げるポンプ72が内蔵されている。操作盤70の上の所定の操作釦73を押して前記ポンプ72を作動させると、樹脂タンク71内に収容されているUV硬化型樹脂が汲み出されて供給パイプ74へ送られ、供給パイプ74に送られたUV硬化型樹脂が供給溝65、66を介して被覆形成部位55がセットされているリコート溝58、59の間の空間に充填されるようにしてある。
【0030】
図1に示す光ファイバ被覆装置によって、光ファイバの被覆形成部位55を被覆するには次のようにする。
(1)遮蔽蓋54を開けてから、上型56を同方向へ回動させる。
(2)下型57の上面62に形成されているリコート溝59内に、その上方から被覆光ファイバ21の被覆形成部位55をセットし、被覆ファイバ21のうち被覆形成部位55の外側の被覆部分を下型57の嵌合溝64内にセットする。
(3)上型56を閉じて下型57の上に重ね、上型56と下型57のリコート溝58、59同士及び嵌合溝63、64同士を突き合せ、突き合わされたリコート溝58、59間に被覆形成部位55を収容し、互いの嵌合溝63、64の間に前記被覆形成部位55の外側の被覆部分を収容する。
(4)モールド型50より外側に突出した夫々の被覆光ファイバ21の被覆部分を装置本体1の長手方向両側面から外側に突設されたクランプ75によって夫々挟着保持する。
(5)遮蔽蓋54を閉じてモールド型50を覆う。図1のように遮蔽蓋54の長手方向両側面には、細長の切り欠き76が形成された側板78が交換可能に取付けられ、被覆光ファイバ21が遮蔽蓋54を閉じたときに遮蔽蓋54に挟まれないようにしてある。尚、この側板78は、モールド型50の交換に合わせて交換される。
(6)次に、操作盤70の上の所定の操作釦73を押してポンプ72を作動させ、樹脂タンク71内のUV硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化エポキシ系アクリレート樹脂)90を先に突き合わされたリコート溝58、59の間に注入して、被覆形成部位55の周囲に充填する。このとき、必要に応じて遮蔽蓋54の開閉蓋69を操作して確認窓68を開口し、UV硬化型樹脂の注入状況を確認する。 (7)操作盤70の操作釦73を押して光源67を点灯させて、被覆光ファイバ21の被覆形成部位55の周囲に充填されたUV硬化型樹脂に紫外線を照射し、同樹脂を硬化させる。このときも必要に応じて遮蔽蓋54の開閉蓋69を操作して確認窓68を開口し、UV硬化型樹脂90の硬化状況を確認する。図1の光ファイバ被覆装置はモールド型50に照射される紫外線量を検出可能な受光センサ(例えば紫外線センサ)77を備えており、同センサ77の検出結果を予め設定されているテーブル値と比較して、その差分を算出し、差分が可及的に少なくなるように光源67の光量が自動調整されるようにしてある。
(8)UV硬化型樹脂が十分に硬化したら、遮蔽蓋54を開けてから、上型56を同方向へ回動させて被覆済の被覆光ファイバ21を取り出す。
【0031】
前記作業中の一部の作業は図2に示す制御系により制御して行う。モールド型50へのUV硬化型樹脂の注入は作業者が図1の操作盤70の操作釦73を押すことにより制御回路60に指示をして行う。指示を受けた制御回路60は図2のポンプ72を動作させてUV硬化型樹脂をタンク71から供給パイプ74へ適量送出する。制御回路60は予め入力されているデータテーブルの値に従って、低電圧電源80からUVLD(またはUVLED)67に電源を供給してUVLD(またはUVLED)67を点灯させ、UVLD(またはUVLED)67からのUV光を光学フィルタ85を透過させて、被覆形成部位55の周囲に照射する。受光センサ77が受けた光強度をテーブル値と比較し、その比較結果に基づいて光量調整をドライバIC81に指示する。制御回路60はマイクロコンピュータを用いた電子回路で構成され、プログラムを内蔵して、前述の光量調整の他にポンプ72の制御や操作盤70からの指令の授受といった、光ファイバ被覆装置の制御全般を統轄する。制御回路60はON/OFF制御部と、調光制御部とを備えている。
【0032】
図3のように横一列(1次元)に並べた複数のUVLD(またはUVLED)67の個々の点灯を制御回路60の操作で行うこともできる。この場合は、操作盤70の操作釦73の操作により、各UVLD(またはUVLED)67に個別に接続されているドライバIC81に指令を出して、発光させるUVLDまたはUVLEDを選択することにより、任意の光量(輝度)分布を与えるようにしたものである。図4(b)は図4(a)の複数のUVLD(またはUVLED)67中の右側のUVLD(またはUVLED)を点灯させない場合の光量分布、図4(c)は左側のUVLD(またはUVLED)を点灯させない場合の光量分布、図4(d)は中間のUVLD(またはUVLED)を点灯させない場合の光量分布である。この場合、図4の個々のUVLD(またはUVLED)に流れる電流を制御回路60で変えることにより、個々のUVLD(またはUVLED)を消灯させるのではなく、それらから発光される光の強度を弱めることもできる。制御回路60はON/OFF制御部と、調光制御部とを備えている。
【0033】
(実施例2)
本発明の第2の実施例を図5に示す。これは光源67に複数個のUVLDまたはUVLEDを使用し、それらを横一列に複数個並べ、その列を前後に数列並べて2次元に配列してある。各列の個々のUVLDまたはUVLEDは個々のドライバIC81と接続して、発光または光量を弱めるUVLDまたはUVLEDを選択することにより、任意の輝度分布を与えることができるようにしてある。
【0034】
モールド型50は種別に符号化され、それを示す符号(コードラベル)91(図5)がモールド型5に表示され(附され)ている。制御回路60はモールド型50の種別に則った複数の機能動作のプログラムを備えており、モールド型50に附されているコードラベル91の符号をコードリーダ92(図5)で読み取ってモールド型50の種別を判定、認識し、適切なプログラムを選択して、使用するUVLDまたはUVLEDを選択し、調光を行うことができるようにしてある。
【0035】
(実施例3)
本発明の第3の実施例を図6に示す。これはプリフォーム2から線引きする裸光ファイバ1の外周にUV硬化型樹脂を被覆する場合の例である。図6は光源67に複数個のUVLDまたはUVLEDを使用し、それらをプレート9の上に横一列に複数個並べると共にその列を前後にも並べ、更に、縦方向にも並べて3次元に配置してある。この3次元のUVLDまたはUVLEDの選択、点灯、調光は操作盤の操作釦の操作により行って光量分布を調節することができる。また、点灯させるUVLDまたはUVLEDを選択することにより光の照射方向を制御することもできる。図6の光ファイバ被覆装置は、図8の光ファイバ被覆装置と同様に、光シールド4、巻取リール5、メータ14を備えており、それらの構造、機能等は、図8の光ファイバ被覆装置のそれらと同じである。
【0036】
図6の、線引きされた裸光ファイバ1の外周へのUV硬化型樹脂の付着は図7の様にして行う。これは樹脂タンク71内のUV硬化型樹脂をポンプ72により汲み上げて供給管74を通してカップ83に送り、カップ83から通路84に送る。これにより、線引きされて通路84内を通過する裸光ファイバ1の外周に自動的にUV硬化型樹脂90が付着する。そのUV硬化型樹脂90は複数個のUVLDまたはUVLED67から出力される紫外線が照射されて硬化する。
【0037】
UV硬化型樹脂で被覆されてUV樹脂被覆部3から出てくる被覆光ファイバ21は光シールド4を通過して巻取リール5に巻取られる。光シールド4には紫外線に応答する光検出器がセットされており、光検出器が光シールド4を通過する被覆光ファイバ21の被覆から離脱する紫外線を検知し、被覆ファイバ21を検出する。
【0038】
【発明の効果】
本件出願の請求項1〜請求項9記載の光ファイバ被覆装置は、UV光の光源に紫外線LDまたは紫外線LEDを1個または複数個使用したので、次のような効果がある。
1.電力のUV光への変換効率が良いことから、電源を放電管の場合に比して低圧電源にすることができる。電源の一例として、放電管が100〜300Vであるのに対し、UVLD/UVLEDは5〜12Vとなり、電源装置が小型、軽量になる。
2.光ファイバ被覆装置が低消費電力になり、従来の高電圧電源の出力電力の1/3になる。このため、光ファイバ被覆装置の体積が小さくなり、重量が軽くなる。
3.調整が楽になる。
4.光源であるUVLD/UVLEDが小さいので、それらを任意に並べて使用することができ、UV光を、照射する対象物に応じて配列したり、対象物に応じた細かい調光制御が可能となった。
【0039】
本件出願の請求項2記載の光ファイバ被覆装置は、プリフォームから線引きされた裸光ファイバの外周に付着させたUV硬化型樹脂に、紫外線LDまたは紫外線LEDからの紫外線を照射するので、光ファイバ製造時に、プリフォームから線引きしながら、UV硬化型樹脂を硬化させるのに適する。
【0040】
本件出願の請求項3記載の光ファイバ被覆装置は、筐体内のモールド型の溝部にセットされた光ファイバの被覆形成部位の外周に充填したUV硬化型樹脂に、紫外線LDまたは紫外線LEDからの紫外線を照射するので、被覆を剥離して加工した後に、被覆形成部位を補強のために被覆するのに適する。
【0041】
本件出願の請求項4記載の光ファイバ被覆装置は、UV光の光源、UV硬化型樹脂の注入等の機能動作を制御する制御回路を備えているので、UV光の強度制御、UV硬化型樹脂の注入量、タイミングといった各種機能を制御して、UV硬化型樹脂を最適な状態で硬化させることができる。
【0042】
本件出願の請求項5記載の光ファイバ被覆装置は、複数個の紫外線LDまたは紫外線LEDを、1次元または2次元または3次元に並べたので、UV光を照射する対象物に応じた配列や細かい調光制御が可能となった。
【0043】
本件出願の請求項6記載の光ファイバ被覆装置は、複数個の紫外線LDまたは紫外線LEDは、任意のものを選択し、制御して使用可能であるため、その選択、制御により、UV硬化型樹脂を最適な状態で硬化させることができる。
【0044】
本件出願の請求項7記載の光ファイバ被覆装置は、モールド型を交換可能としたので、モールド型の外形、長さ等に合わせて交換することができ、被覆形成部位のUV硬化型樹脂を最適な状態で硬化させることができる。
【0045】
本件出願の請求項8記載の光ファイバ被覆装置は、モールド型の種別を符号化し、その種別を示す符号をモールド型に附したので、その符号に基づいてモールド型を選別することができ、モールド型の交換、管理が容易になる。
【0046】
本件出願の請求項9記載の光ファイバ被覆装置は、制御回路がモールド型の種別毎に機能動作するプログラムを備え、モールド型に附された符号を読み取って適切なプログラムを選択して動作するので、モールド型を交換するだけで、モールド型に合った、UV硬化型樹脂の注入、UV光の照射等を自動的に制御して、UV硬化型樹脂を最適な状態で硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光ファイバ被覆装置の実施形態の一例を示す斜視図。
【図2】 本発明の光ファイバ被覆装置の制御系の原理を示す説明図。
【図3】 本発明の光ファイバ被覆装置の制御系の一例を示す説明図。
【図4】 (a)〜(d)は本発明の光ファイバ被覆装置の光源を一次元に配列して、それらの点灯を制御した場合の光量説明図。
【図5】 本発明の光ファイバ被覆装置の光源を二次元に配列した一例を示す説明図。
【図6】 本発明の光ファイバ被覆装置により線引きされた裸光ファイバの被覆する場合の一例を示す説明図。
【図7】 図6の光ファイバ被覆装置の制御系の説明図。
【図8】 従来の光ファイバ被覆装置により線引きされた裸光ファイバの被覆する場合の説明図。
【図9】 図8の光ファイバ被覆装置の制御系の説明図。
【図10】 本件出願人が先に開発した光ファイバ被覆装置の蓋を開いた状態の斜視図。
【符号の説明】
1 裸光ファイバ
2 プリフォーム
3 UV樹脂被覆部
50 モールド型
51 装置本体
60 制御回路
91 符号

Claims (7)

  1. 筐体内のモールド型の溝部にセットされた光ファイバの被覆形成部位の外周にUV硬化型樹脂を充填し、UV硬化型樹脂にUV光を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、光ファイバの被覆形成部位を被覆する光ファイバ被覆装置において、UV光の光源に紫外線LDまたは紫外線LEDを1個または複数個使用したことを特徴とする光ファイバ被覆装置。
  2. 請求項1記載の光ファイバ被覆装置において、UV光の光源、UV硬化型樹脂の注入等の機能動作を制御する制御回路を備えたことを特徴とする光ファイバ被覆装置。
  3. 請求項1又は請求項2記載の光ファイバ被覆装置において、複数個の紫外線LDまたは紫外線LEDを、1次元または2次元または3次元に並べたことを特徴とする光ファイバ被覆装置。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、複数個の紫外線LDまたは紫外線LEDは、任意のものを選択し、制御して使用可能であることを特徴とする光ファイバ被覆装置。
  5. 請求項乃至請求項のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、モールド型を交換可能としたことを特徴とする光ファイバ被覆装置。
  6. 請求項乃至請求項のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、モールド型の種別を符号化し、その種別を示す符号をモールド型に附したことを特徴とする光ファイバ被覆装置。
  7. 請求項乃至請求項のいずれかに記載の光ファイバ被覆装置において、制御回路がモールド型の種別に従った複数の機能動作のプログラムを備え、モールド型に附された符号を読み取って認識し、適切なプログラムを選択して動作することを特徴とする光ファイバ被覆装置。
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