JP4791609B2 - 光反射板及び光反射板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光反射体及びその製造方法に関するもので、特に、液晶表示装置における照明装置のリフレクターとして使用される光反射体及びその製造方法に関する。
液晶表示装置に用いる照明装置は、光源からの光を直接液晶表示パネルに照明させる直下方式、及び光源からの光をアクリル樹脂等からなる導光板を介して液晶表示パネルに照明させるサイドライト方式(エッヂライト方式とも言う)が存在している。
液晶表示装置において、モニター、小型液晶テレビ、ノート型パソコン等、薄型であることを要求される用途では、上記照明装置のうち、サイドライト方式が採用されており、光源からの光を効率よく導光板に伝えるために、金属と反射フィルムが積層された光反射体を成形加工してなる、リフレクターと呼ばれる部材が使用されている。
光反射体に用いる反射フィルムとしては、銀を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、銀蒸着PETフィルム)や、反射性能を有する白色ポリエステルフィルム等が用いられており、コストや光反射体に要求される厚さ等を考慮して使い分けられている。
例えば、特許文献1には、芳香族ポリエステル系樹脂に酸化チタンを添加して形成された白色シートである反射フィルムが開示されている。また、リフレクターのように光反射体を成形加工する場合は、金属板に反射フィルムを接着した光反射体が使用される。光反射体を成形加工する際、折り曲げた時の形状を保持する形状保持性が求められるため、例えば、特許文献2には、金属に接着剤層を設け、その上にさらにポリエステル反射フィルムを積層する反射体が開示されている。
しかし、フィルムを形成する芳香族ポリエステル系樹脂の分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によってフィルムが劣化、黄変して、反射フィルムの光反射性が低下するという欠点があった。また、従来の反射体では、金属板と反射フィルムとの間の密着力が十分ではなく、成型加工する際、反射フィルムが金属板から剥離することもあった。
特開2002−138150号公報 特開平10−177805号公報
本発明の目的は、高度な反射性能を備えつつ、紫外線照射による反射率の低下を防ぎ、成型加工に反射フィルムの剥離を生じない密着力を有する光反射体を提案するものである。
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を含有してなるA層を、ポリエステル樹脂を含有してなるポリエステル樹脂接着層(B層)を介して、金属板の片面若しくは両面に積層してなる構成を備えた光反射体を提案する。
本発明の光反射体は、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱によって、優れた光反射性を得ることができる。しかも、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂は紫外線を吸収する芳香環を有さないので、紫外線照射による反射率の低下がほとんど起こらないという特徴を有する。また、金属板との密着力に優れたB層をA層と金属板との間に介在させることにより、成型加工時の凝集破壊による剥離を引き起こさない機械的強度を付与することができる特徴を有する。
従って、本発明の光反射体は、パソコンやテレビなどのディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板等として好適であるばかりか、光反射体を成形加工してなるリフレクターと呼ばれる部材を含む液晶表示装置用バックライト装置としても好適に用いることができる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る光反射体は、脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を主成分とするA層を、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂接着層(B層)を介して、金属板の片面若しくは両面に積層してなる構成を備えた光反射体である。
ここで、主成分と言うのは、当該成分の機能を妨げない限りにおいて、それ以外の成分を含むことを許容する意であり、主成分の含有割合は特に制限されないが、各層において主成分が50質量%以上、中でも70質量%以上、特に80質量%以上、殊更90質量%以上を占めるのが好ましい。
(A層)
本実施形態に係る反射フィルムを構成するA層は、主に反射フィルムの光反射性を付与する層であって、例えば、フィルムを積層したり、薄膜状の層を製膜したりして形成することができる。
(脂肪族ポリエステル系樹脂)
以下、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂について説明する。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、化学合成されたもの、微生物により発酵合成されたもの、及び、これらの混合物を用いることができる。
化学合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリε−カプロラクタム等、ラクトンを開環重合して得られる脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリテトラメチレンサクシネート、シクロヘキサンジカルボン酸/シクロヘキサンジメタノール縮合体等、二塩基酸とジオールとを重合して得られる脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール等ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる脂肪族ポリエステル系樹脂、前記脂肪族ポリエステルのエステル結合の一部、例えば全エステル結合の50%以下がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等に置き換えられた脂肪族ポリエステルを挙げることができる。
また、微生物により発酵合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリレートとの共重合体等を挙げることができる。
脂肪族ポリエステル系樹脂は、分子鎖中に芳香環を含まないので紫外線吸収を起こさない。従って、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によって光反射体を構成するA層が劣化、黄変することがなく、光反射性が経時的に低下することが少ない。
脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率は、1.52未満であることが好ましい。本実施形態に係る光反射体の反射性能は、主に光反射体を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との界面における屈折散乱によって発揮されるものである。すなわち、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差が大きいほうが、高い反射性能を得ることができる。従って、脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が1.52未満であると、微粉状充填剤との屈折率の差が大きくなり好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差は、0.15以上であることが好ましく、0.20以上であれば更に好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が1.52未満であれば、微粉状充填剤の屈折率との差が0.15以上の条件を確保することが容易であり、組み合わせられる微粉状充填剤の種類も豊富になる。
本実施形態で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂として、乳酸系重合体は特に好ましい脂肪族ポリエステル系樹脂である。乳酸系重合体は、植物由来の原料から製造され、かつ生分解性の性質を有する樹脂であるから環境への負荷が小さい点で優れているばかりか、屈折率が1.46程度と非常に低く、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差が大きくなり、0.15以上の条件を容易に達成することから高い反射性能を容易に得ることができる。
ここで、本実施形態で用いる乳酸系重合体としては、D−乳酸又はL−乳酸の単独重合体又はそれらの共重合体であればよい。具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合体も含まれる。
乳酸系重合体は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法で製造することができる。例えば、縮合重合法では、D−乳酸、L−乳酸、又は、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85:15であるか又はD−乳酸:L−乳酸=0:100〜15:85であることが好ましく、さらに好ましくはD−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5又はD−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95である。D−乳酸とL−乳酸との構成比が100:0もしくは0:100である乳酸系重合体は非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性及び機械的物性に優れる傾向がある。すなわち、光反射体を構成するA層を延伸したり熱処理したりする際に、樹脂が結晶化して耐熱性及び機械的物性が向上する点で好ましい。一方、D−乳酸とL−乳酸とで構成された乳酸系重合体は、柔軟性が付与され、光反射体の成形安定性及び延伸安定性が向上する点で好ましい。得られる反射フィルムの耐熱性と、成形安定性及び延伸安定性とのバランスを勘案すると、本実施形態に用いる乳酸系重合体としては、D−乳酸とL−乳酸との構成比がD−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5又はD−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95であることがより好ましい。
また、乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。この場合、複数の乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸との共重合比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。D−乳酸とL−乳酸のホモポリマーと、共重合体とをブレンドすることにより、耐熱性を調節することができる。
乳酸系重合体の分子量は、重量平均分子量が5万以上であることが好ましく、6万以上40万以下であることがさらに好ましく、10万以上30万以下であることが特に好ましい。乳酸系重合体の重量平均分子量が5万以上であれば、機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば、溶融粘度が高過ぎて成形加工性が劣るようなことを防ぐことができる。
(微粉状充填剤)
次に、A層に含有される微粉状充填剤について説明する。
本実施形態で用いる微粉状充填剤としては、有機質微粉体、無機質微粉体等を挙げることができる。
有機質微粉体としては、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末や、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等から選ばれた少なくとも一種が好ましい。得られる光反射体の光反射性を勘案すれば、脂肪族ポリエステル系樹脂との屈折率差が大きいものが好ましく、すなわち、無機質微粉体としては屈折率が大きいもの、基準としては1.6以上が好ましい。具体的には、屈折率が1.6以上である炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、又は酸化亜鉛を用いることがさらに好ましく、これらの中でも酸化チタンが特に好ましい。酸化チタンを用いることにより、より少ない充填量で光反射体に高い反射性能を付与することができ、また、薄肉でも高い反射性能の光反射体を得ることができる。
本実施形態で用いる酸化チタンとしては、例えば、アナタース型酸化チタン及びルチル型酸化チタンのような結晶型の酸化チタンを挙げることができる。ベース樹脂との屈折率差を大きくするという観点からは、屈折率が2.7以上の酸化チタンであることが好ましく、例えば、ルチル型酸化チタンを用いることが好ましい。
さらに、酸化チタンの中でも純度の高い高純度酸化チタンを用いるのが特に好ましい。
ここで、高純度酸化チタンとは、可視光に対する光吸収能が小さい酸化チタン、すなわち、バナジウム、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素の含有量が少ないものの意である。本発明では、酸化チタンに含まれるバナジウムの含有量が5ppm以下である酸化チタンを高純度酸化チタンと称すことにする。
高純度酸化チタンとしては、例えば塩素法プロセスにより製造されるものを挙げることができる。塩素法プロセスでは、酸化チタンを主成分とするルチル鉱を1,000℃程度の高温炉で塩素ガスと反応させて、まず、四塩化チタンを生成させる。次いで、この四塩化チタンを酸素で燃焼することにより、高純度酸化チタンを得ることができる。なお、酸化チタンの工業的な製造方法としては硫酸法プロセスもあるが、この方法によって得られる酸化チタンには、バナジウム、鉄、銅、マンガン、ニオブ等の着色元素が多く含まれるので、可視光に対する光吸収能が大きくなる。従って、硫酸法プロセスでは高純度酸化チタンは得られ難い。
また、本実施形態で用いる酸化チタン(高純度酸化チタン)は、表面をシリカ、アルミナ、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも一種類の不活性無機酸化物で被覆処理されていると、光反射体の耐光性が高まり、酸化チタンの光触媒活性が抑制され、酸化チタンの高い光反射性を損なうことがないので好ましい。さらに二種類或いは三種類の不活性無機酸化物を併用して被覆処理されたものがより好ましく、中でもシリカを必須とする複数の不活性無機酸化物の組み合わせが特に好ましい。
なお、微粉状充填剤として、前記の如く例示した無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて使用してもよい。また、異なる微粉状充填剤同士を併用することができ、例えば、酸化チタンと他の微粉状充填剤、高純度酸化チタンと他の微粉状充填剤とを併用してもよい。
また、微粉状充填剤の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用するのもよい。
表面処理剤としては、例えば、酸化チタンの表面をシロキサン化合物、シランカップリング剤等から選ばれた少なくとも一種類の無機化合物を用いることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。さらに、シロキサン化合物、シランカップリング剤、ポリオール及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物等を用いることができる。また、これらの無機化合物と有機化合物とを組み合わせて用いてもよい。
微粉状充填剤は、粒径が0.05μm以上、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは粒径が0.1μm以上、10μm以下である。微粉状充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂への分散性が低下することがないので、均質なA層が得られる。また粒径が15μm以下であれば、形成される空隙が粗くなることはなく、高い反射率の光反射体が得られる。
さらに、微粉状充填剤として酸化チタンを用いる場合、粒径が0.1μm以上、1μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、0.5μm以下であることがさらに好ましい。酸化チタンの粒径が0.1μm以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂への分散性が良好であり、均質な光反射体を得ることができる。また、酸化チタンの粒径が1μm以下であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンとの界面が緻密に形成されるので、光反射体に高い反射性能を付与することができる。
A層に含まれる微粉状充填剤の含有量は、光反射体の光反射性、機械的物性、生産性等を考慮すると、A層全体の質量に対して、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上、55質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上、50質量%以下であることが特に好ましい。微粉状充填剤の含有量が10質量%以上であれば、樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができて、光反射体に高い光反射性を付与することができる。また、微粉状充填剤の含有量が60質量%以下であれば、光反射体に必要な機械的性質を確保することができる。
(空隙)
A層は、内部に空隙を有していてもよい。空隙を有していれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱のほか、脂肪族ポリエステル系樹脂と空隙(空気)、微粉状充填剤と空隙(空気)との屈折率差による屈折散乱からも反射性能を得ることができる。
例えば、微粉状充填剤を含有する光反射体を構成するA層を延伸することにより、A層中に空隙を形成することができる。これは、延伸時に樹脂と微粉状充填剤との延伸挙動が異なるからであり、樹脂に適した延伸温度で延伸を行えば、マトリックスとなる樹脂は延伸されるが、微粉状充填剤はそのままの状態でとどまろうとするため、樹脂と微粉状充填剤との界面が剥離して、空隙が形成される。従って、微粉状充填剤を効果的に分散状態で含ませることによって、A層中に空隙を形成し、さらに優れた反射性能を光反射体に付与することができる。
また、A層に発泡剤を添加して、発泡によってA層中に空隙を形成することもできる。発泡によってA層に空隙を形成する方法として、脂肪族ポリエステル系樹脂に有機、無機の熱分解性発泡剤又は揮発性発泡剤を添加して発泡させる方法を挙げることができる。また、脂肪族ポリエステル系樹脂に超臨界状態のCO2やN2を導入して発泡させる方法も挙げることができる。
A層に占める空隙の割合、すなわち空隙率(A層中に占める空隙の体積部分の割合であり、延伸によって空隙を形成する場合は、「空隙率(%)=[(未延伸のA層の密度−延伸後のA層の密度)/未延伸のA層の密度]×100」で求めることができる)は、50%以下であるのが好ましく、5%以上50%以下の範囲内であることがより好ましい。また、空隙率は20%以上であることがさらに好ましく、特に好ましくは30%以上である。空隙率が50%以下であれば、光反射体を構成するA層の機械的強度が確保され、製造中に破断したり、使用時に耐熱性等の耐久性が不足したりすることがない。
なお、微粉状充填剤として酸化チタン(高純度酸化チタン)を用いた場合は、A層内部の空隙の存在如何にかかわらず、高い光反射性を得ることができる。
例えば、A層が空隙を有さない場合(すなわち、空隙率=0%)であっても、微粉状充填剤として酸化チタンを用いれば、高い光反射性を得ることができる。これは、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンとの屈折率差による屈折散乱が大きいことと共に、酸化チタンの隠蔽力が高いことに起因すると推察される。
(他の成分)
本実施形態に係る光反射体を構成するA層は、本発明の効果を損なわない範囲内で上記以外の樹脂を含有していてもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、加水分解防止剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤、及びその他の添加剤を含有していてもよい。
例えば、本実施形態に係る光反射体を自動車用カーナビゲーションシステムや車載用小型テレビ等の液晶ディスプレイ用途で使用する場合、より高温度で高湿度な環境に対する耐久性を付与する目的で、加水分解防止剤であるカルボジイミド化合物等を添加することができる。カルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式の基本構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。

―(N=C=N−R−)n

式中、nは1以上の整数を示し、Rは有機系結合単位を示す。例えば、Rは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。また、nは、通常、1〜50の間で適当な整数が選択される。
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、及び、これらの単量体が、カルボジイミド化合物として挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、あるいは、二種以上組み合わせて使用してもよい。
A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂100質量部に対してカルボジイミド化合物を0.1質量部〜3.0質量部添加することが好ましい。カルボジイミド化合物の添加量が0.1質量部以上であれば、A層に耐加水分解性の改良効果が十分に発現される。また、カルボジイミド化合物の添加量が3.0質量部以下であれば、A層の着色が少なく、高い光反射性が得られる。
(B層)
本実施形態に係る光反射体を構成するB層は、主に、A層と金属板との密着性を付与する層である。
以下、B層を構成するポリエステル樹脂接着層について説明する。
ポリエステル樹脂接着層として、ポリエステル系樹脂からなるフィルムを好適に用いることができる。具体的には、芳香族ポリエステル系樹脂からなるフィルムや脂肪族ポリエステル系樹脂からなるフィルムを好適に用いることができる。A層の有する光反射性等の機能を損なわずに、低温で金属板と積層することができる。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン)テレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂を挙げることができる。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂としては、前記の如く例示した化学合成された脂肪族ポリエステル系樹脂、微生物により発酵合成された脂肪族ポリエステル系樹脂、及び、これらの混合物を用いることができる。
芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂は、上に例示したものに限定されるものではなく、中でも好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、乳酸系重合体である。
ポリエステル樹脂接着層には、共重合ポリエステル系樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体的には、共重合ポリエステル系樹脂は、エステルの繰り返し単位が、一種以上の酸成分と一種以上の多価アルコール成分とからなるものである。また、一種、又は二種以上の酸成分と一種、又は二種以上の多価アルコール成分とからなるものもよい。
共重合ポリエステル系樹脂中のエステルの繰り返し単位として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン酸、シュウ酸、コハク酸、ダルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカジオン酸等の中から選ばれる一種、又は二種以上の酸成分と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサジオール等の中から選ばれる一種、又は二種以上の多価アルコールからなる共重合ポリエステル系樹脂を挙げることができる。中でも好ましいのは、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸であり、多価アルコールではエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有する共重合体からなるフィルムである。
B層を構成するポリエステル樹脂接着層は、融点が80℃〜270℃の範囲の樹脂を含有すると好ましく、150℃〜250℃の範囲の樹脂を含有するとより好ましい。融点が80℃〜270℃であれば、接着剤を用いることなく金属板との密着性を十分確保することができるとともに、金属板へ積層する際の熱の影響を抑え、光反射板の反射性能の低下を防ぐことができる。
なお、ここでいう融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した値である。
B層を構成するポリエステル系樹脂は、融解熱量が、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂の融解熱量よりも小さいと好ましい。ポリエステル系樹脂(B層)の融解熱量が低ければ、A層と金属板とを低温で積層することができる。従って、A層と金属板との間にB層を介在させることによって、各層の密着力を向上させ、光反射体の機械的強度を向上させることができる。
なお、ここでいう融解熱量は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した値である。
例えば、B層を構成するポリエステル系樹脂として乳酸系重合体を用いる場合、B層を構成する乳酸系重合体の融解熱量が、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂の融解熱量より小さいと好ましい。この際の乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比によらず融点が80℃〜270℃の範囲となるため、所望のD−乳酸とL−乳酸との構成比の乳酸系重合体を用いることができるが、中でも、共重合体である乳酸系重合体であれば、乳酸系重合体の結晶性は低くなり、すなわち、融解熱量も低くなることから好ましい。
また、B層は、異なる二種以上の多層の構成からなる層とすることができる。B層を多層構成とすることによって、A層とB層との密着性や積層条件等と、B層と金属板との密着性や積層条件等を適切に変えることができ、光反射体全体としての密着性や反射性能、機械的強度等を好ましい範囲に設計することが可能となる。
B層は、A層で説明した微粉状充填剤を含有していてもよい。微粉状充填剤を有していれば、B層を構成するポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱からも反射性能を得ることができ、光反射体の反射性能をさらに向上させることができる。
B層は、内部に空隙を有していてもよい。空隙を有していれば、B層を構成するポリエステル系樹脂と空隙(空気)との屈折率差による屈折散乱からも反射性能を得ることができ、光反射体の反射性能をさらに向上させることができる。
(他の成分)
本実施形態に係る光反射体を構成するB層は、本発明の効果を損なわない範囲内で上記以外の樹脂を含有していてもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、加水分解防止剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤、及びその他の添加剤を含有していてもよい。
例えば、B層を構成するポリエステル樹脂接着層に滑剤を添加すると、理由は定かではないが、A層、B層間、及びB層、金属板間の密着力が向上することが確かめられている。
滑剤としては、いわゆる内部滑剤、外部滑剤を用いることができる。例えば、脂肪酸系滑剤、アルコール系滑剤、脂肪族アマイド系滑剤、エステル系滑剤等の内部滑剤や、アクリル系滑剤、炭化水素系滑剤等の外部滑剤が挙げられ、好ましくはアクリル系滑剤、炭化水素系滑剤を添加するとよい。また、例示した滑剤を任意に組み合わせて用いてもよい。
アクリル系滑剤としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、クロロエチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体,メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体の単独重合体あるいは二種以上を組み合わせた共重合体を挙げることができる。さらに、上記単量体とスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等芳香族ビニル化合物やアクリロニトリル、メタクリロニトリル等ビニルシアン化合物とを組み合わせて共重合させたものも用いることができる。また、上記単量体と、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート等の多官能単量体を共重合させたものも用いることができる。
上記アクリル系滑剤の分子量は、重量平均分子量で5万以上、300万以下が好ましく、10万以上、100万以下がさらに好ましい。
また、炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、天然ワックス、合成ワックス等、およびこれらの混合品を挙げることができる。
これら滑剤の含有量は、微粉含有ポリエステル層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂中、0.05質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。
(金属板)
以下、本実施形態に係る光反射板を構成する金属板について説明する。
本実施形態で用いる金属板としては、リフレクターを使用する液晶表示装置の種類に応じて、厚さ0.05mm〜0.4mmのステンレス鋼板、厚さ0.1〜0.6mmのアルミニウム合金、厚さ0.2〜0.4mmの黄銅板を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
金属板の熱融着させる側の面に、光反射板の接着性・密着性を向上させるために表面処理を施すのが好ましい。
表面処理としては、化学処理、放電処理、電磁波照射処理を挙げることができる。化学処理としては、シランカップリング剤処理、酸処理、アルカリ処理、オゾン処理、イオン処理等の処理法を挙げることができる。放電処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、アーク放電処理、低温プラズマ処理等の処理法を挙げることができる。電磁波照射処理としては、紫外線処理、X線処理、ガンマ線処理、レーザー処理等の処理法を挙げることができる。中でも、シランカップリング剤処理は、特に無機物(金属板)と有機物(微粉含有ポリエステル層)との接着性を向上させる効果が高く、また、コロナ放電処理は、大気圧下で効果的に接着性を向上させることができるため好ましい。
また、B層と金属板との間に、エポキシ樹脂、脂肪酸又はヒドロキシ置換フェノールからなる薄膜を300℃〜500℃の範囲で熱処理した熱変性被膜層(以下、被膜層という)を介在させることもできる。該被膜層を介在させると、B層全体と金属板との密着力を大幅に向上させることができ、光反射体の成型加工時の凝集破壊による剥離を引き起こさない。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、より具体的には、ビスフェノールAモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。この他には、ビスフェノールF型、レゾシル型エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂を挙げることができる。
エポキシ樹脂の分子量は、300〜3000程度、エポキシ等量は150〜3200のものが好適である。
脂肪酸としては、一般に、RCOOH(Rは、飽和または不飽和の炭化水素)で示される化合物であり、低級脂肪酸及び高級脂肪酸を含んでいてもよい。低級のものは化学的合成法により、Rの炭素数が6以上のものは天然油脂類が加水分解することにより得られる。具体的には、パルチミン酸、ステアリン酸、オレグ酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸を挙げることができるが、これら例示したものに限定されるものでない。
ヒドロキシメチル置換フェノールとしては、例えば、サリチル酸アルコール、o−ヒドロキシメチル−p−クレゾール等のヒドロキシメチル置換フェノールを挙げることができる。
被膜層の塗布量は、金属板の種類などによって異なるが、乾燥固化後の被膜層の厚さが0.01μm〜10μmの範囲で選ぶことができ、好ましくは0.02μm〜7μmの範囲である。厚さが0.01μm〜10μmの範囲であれば、十分な密着力を得ることができ、光反射体を成形加工性する際に剥離を生ずることはない。
被膜層は、予め金属板に形成するとよい。具体的には、エポキシ樹脂、脂肪酸又はヒドロキシメチル置換フェノールを金属板の表面に塗布し、次いで、熱処理し熱変性すればよい。金属板の表面に塗布する方法としては、金属板表面の形態などにより異なるが、例えば、エポキシ樹脂、脂肪酸又はヒドロキシメチル置換フェノールを単独で、または、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、トリクレンなどの有機溶剤で希釈した後、グラビアロール法、リバースロール法、キスロール法、エアーナイフコ−ト法、ディップコート法等の通常の塗布方法を挙げることができる。
(A層、B層、金属板の積層)
本実施形態に係る反射フィルムは、高い反射性能を有するA層と金属板との間に、密着力の高いB層を介在させる(積層構成:A層/B層/金属板)ことで、夫々の層の特徴を併せ持つこととなり、例えば、加熱環境下での寸法安定性や成型加工可能な機械的強度を確保することができる。積層方法を例示すると、予め、A層及びB層をフィルムに形成し、それを金属板に積層し熱融着するようにしてもよい。
(厚さ)
A層の厚さは、50μm〜250μmであることが好ましい。B層の厚さは、5μm〜100μmであることが好ましい。
本実施形態に係る光反射体の厚さは、所望の用途や使用する金属板によって異なり特に限定されないが、小型、薄型の反射板用途の光反射体としての用途を鑑みて、0.05mm〜1mmであると好ましく、中でも0.1〜0.7mmであると好ましい。
(光反射板の特性)
本実施形態に係る光反射板は、波長550nmの光に対する反射使用面側から測定した反射率が95%以上であることが好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。反射率が95%以上であれば、良好な反射特性を示し、液晶ディスプレイ等の画面に充分な明るさを与えることができる。
本実施形態に係る光反射板を構成するA層及びB層の熱的特性は、120℃で5分間放置されたときの熱収縮率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
例えば、自動車用カーナビゲーションシステム、車載用小型テレビ等の反射板として組み込まれる場合には、夏場の炎天下の車内温度を鑑みて、高温環境下でも波打やシワの発生を抑える必要がある。すなわち、耐熱性、加熱環境下での寸法安定性が要求される。従って、前記の如く、120℃で5分間放置されたときの熱収縮率が10%以下であれば、A層及びB層の平面性を維持し得る寸法安定性を確保し、金属板と剥離することもないため好ましい。
(用途)
本実施形態に係る光反射体は、以上のように高度な反射性能と高い耐熱性を兼ね備えていることから、パソコンやテレビなどのディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板として好適であるばかりか、光反射体を成形加工してなるリフレクターと呼ばれる部材としても好適に用いることができる。
(製造方法)
本実施形態に係る光反射板は、予め、A層及びB層を夫々フィルム状に形成しておき、これを金属板上に積層するようにして製造することができる。
以下、本実施形態に係る光反射体の製造方法について説明するが、下記製造法に何等限定されるものではない。
A層に関しては、脂肪族ポリエステル系樹脂、微粉状充填剤を混合してポリエステル系樹脂組成物を得、それを溶融し製膜し、必要に応じて延伸してフィルムAを得るようにすればよい。以下、詳細に説明する。
先ず、脂肪族ポリエステル系樹脂に、微粉状充填剤、必要に応じて加水分解防止剤等その他の添加剤を配合して樹脂組成物Aを作製する。具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂に微粉状充填剤、加水分解防止剤等を加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、一軸又は二軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば、乳酸系重合体の場合には170℃〜230℃)で混練することにより樹脂組成物Aを得る。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂と、微粉状充填剤、加水分解防止剤等とを別々のフィーダー等により所定量を添加することによって樹脂組成物Aを得ることもできる。また、予め、脂肪族ポリエステル系樹脂に微粉状充填剤、加水分解防止剤等を高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチと脂肪族ポリエステル系樹脂を混合して所望の濃度の樹脂組成物Aとすることもできる。
次に、このようにして得られた樹脂組成物Aを溶融し、フィルムAに形成する。例えば、樹脂組成物Aを乾燥させ、押出機に供給し、樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融する。この際、樹脂組成物Aを乾燥させずに押出機に供給してもよいが、乾燥させない場合には溶融押出する際に真空ベントを用いることが好ましい。
押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要であり、例えば、押出温度は、脂肪族ポリエステル系樹脂に乳酸系重合体を用いた場合であれば、170℃〜230℃の範囲が好ましい。
溶融した樹脂組成物AをTダイのスリット状の吐出口から押し出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシート(未延伸状態)を形成し、フィルムAを得る。
得られたフィルムA(キャストシート)は、少なくとも一軸方向に1.1倍以上延伸することができる。延伸することにより、フィルム内部に微粉状充填剤を核とした空隙が形成されて、樹脂と空隙の界面、及び空隙と微粉状充填剤との界面が形成され、界面で生じる屈折散乱の効果が増えることから、A層の光反射性をさらに高めることができる。
延伸する際の延伸温度は、樹脂のガラス転移温度(Tg)程度から(Tg+50℃)の範囲内の温度であることが好ましく、例えば、乳酸系重合体の場合には50℃以上、90℃以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲であれば、延伸時に破断することなく安定して延伸を行うことができ、また延伸配向が高くなり、その結果、空隙率が大きくなるので、高い反射率を有するA層が得られやすい。
フィルムAは、二軸延伸するのがより好ましい。二軸延伸することによって、空隙率がさらに高くなり、A層の光反射性を更に高めることができる。
二軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時二軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMDに延伸した後、テンター延伸によってTDに延伸してもよいし、チューブラー延伸等によって二軸延伸を行ってもよい。
一軸延伸又は二軸延伸する場合の延伸倍率は、A層の組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて適宜決定されるが、面積倍率として5倍以上に延伸されていることが好ましく、7倍以上に延伸されていることが更に好ましい。面積倍率が5倍以上になるようにキャストシートを延伸すれば、A層中に5%以上の空隙率を実現することができ、7倍以上に延伸することにより20%以上の空隙率を実現することができ、7.5倍以上に延伸することにより、30%以上の空隙率も実現することができる。
さらに、得られたフィルムAに耐熱性及び寸法安定性を付与するために、熱処理するのが好ましい。
フィルム状のA層の熱処理温度は90〜160℃であることが好ましく、110〜140℃であることがさらに好ましい。熱処理に要する処理時間は、好ましくは1秒〜5分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
(A層/B層/金属板の積層方法)
次に、前記の如く作製したフィルムAを、B層を構成するポリエステル系樹脂からなるフィルムBを介して、金属板上に積層して光反射体を製造する。
積層する方法としては、金属板上にフィルムB、フィルムAの順に重ね、この状況で加熱加圧ロールに供給し熱融着する方法を挙げることができる。この際、熱融着する温度は、密着力の点から、140℃〜280℃の温度範囲で行うことが好ましく、150℃〜210℃の温度範囲がさらに好ましい。
なお、金属板の表面温度が、A層及びB層を構成する樹脂の融点程度となるように加熱し、ゴムロールにより熱融着することもできる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値及び評価は以下に示すようにして行った。
(測定及び評価方法)
(1)密着性:JIS Z2247に準拠した描画エリクセン試験機により、4mm押出した際に金属薄板からフィルムの剥離が認められるか否かを目視観察する方法で、フィルムの剥離が認められないものを○、実用上問題が無い程度のものを△、フィルムの剥離が認められるものを×と判定した。
(2)反射率:分光光度計(「U―4000」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、波長550nmの光に対する反射率を測定し、反射率の低下が認められないものを○、実用上問題が無い程度(−0.5%未満)のものを△、反射率の低下が認められる(−0.5%超)ものを×と判定した。なお、測定前に、アルミナ白板の反射率が100%になるように光度計を設定した。
[試験1]
重量平均分子量20万の乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製、L体:D体=98.5:1.5、屈折率n=1.46)70質量部に、平均粒径0.25μmの酸化チタン(タイペークPF740:石原産業社製、バナジウム含有量1ppm、アルミナ、シリカ、ジルコニアによる表面処理済)22.5質量部、及び硫酸バリウム7.5質量部の割合で混合した樹脂組成物を、220℃に設定された押出機で溶融し、押出し、キャストロールで冷却し、厚さ188μmのキャストシートを得た。次いで、該キャストシートとステンレス鋼板(厚さ100μm、SUS304)との間に、テレフタル酸−イソフタル酸ポリエステル共重合体(共重合PET)からなる厚さ15μmのフィルムを介在させ、表1に示すような種々の表面温度で熱融着し、厚さ約0.3mmの光反射体を得た。この光反射体について、上記の密着性、反射率評価を行った。試験1の熱融着温度、及び評価結果を表1に示す。
Figure 0004791609
この結果から、熱融着温度が上がると、実用的には問題がないが、密着力と反射率が低下する傾向にあることがわかった。
[試験2]
試験1のテレフタル酸−イソフタル酸ポリエステル共重合体に換えて、種々のポリエステル系樹脂、又は種々のポリオレフィン系樹脂を接着層に用いた以外は実施例1と同様に、光反射体を得、この光反射体について密着性評価を行った。なお、熱融着温度は、接着層に使用した樹脂に適した温度とした。試験2の熱融着温度、及び評価結果を表2に示す。
接着層として用いたポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂は以下の通りである。略称をアルファベットで併記する。
(ポリエステル系樹脂)
試験番号7.テレフタル酸−イソフタル酸共重合ポリエステル(共重合PET)
試験番号8.乳酸系重合体(PLA)
試験番号9.低結晶性乳酸系重合体(A−PLA)
試験番号10.ポリブチレンテレフタレート(PBT)
(ポリオレフィン系樹脂)
試験番号11.エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
試験番号12.ポリプロピレン(PP)
試験番号13.ポリエーテルスルホン(PES)
Figure 0004791609
この結果から、A層の接着層に使用する樹脂としてポリオレフィンは不適切であり、ポリエステルが好ましいことがわかった。
以上の実施例及び比較例の結果をまとめると、B層のポリエステル樹脂接着層として好ましいのは、乳酸系重合体や融点80℃〜270℃の範囲にあるポリエステル系樹脂や共重合ポリエステル系樹脂であることが分かった。

Claims (16)

  1. 脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を含有し、且つ少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸したフィルムAからなるA層を、ポリエステル樹脂を含有してなるポリエステル樹脂接着層(B層)を介して、金属板の片面若しくは両面に積層してなる構成を備え、反射使用面側にA層が配設されることを特徴とする光反射体。
  2. A層の脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が、1.52未満であることを特徴とする請求項1に記載の光反射体。
  3. A層の脂肪族ポリエステル系樹脂が、乳酸系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光反射体。
  4. 微粉状充填剤は、A層全体の質量に対して10質量%〜60質量%の割合で含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光反射体。
  5. 微粉状充填剤は、酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光反射体。
  6. 微粉状充填剤は、バナジウム含有量が5ppm以下の酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光反射体。
  7. 微粉状充填剤は、酸化チタンであり、その表面がシリカ、アルミナ、及びジルコニアの群から選ばれる少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の光反射体。
  8. B層を構成するポリエステル樹脂接着層は、融点80℃〜270℃のポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光反射体。
  9. B層を構成するポリエステル樹脂接着層は、乳酸系重合体を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光反射体。
  10. B層を構成するポリエステル樹脂接着層は、乳酸系重合体を含有する層であって、B層を構成する乳酸系重合体の融解熱量が、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂の融解熱量より小さいことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光反射体。
  11. B層を構成するポリエステル樹脂接着層は、エステルの繰り返し単位が一種以上の酸成分と一種以上の多価アルコール成分とからなる共重合ポリエステル系樹脂からなる層を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光反射体。
  12. B層と金属板との間に、エポキシ樹脂、脂肪酸又はヒドロキシ置換フェノールからなる薄膜を300℃〜500℃の範囲で熱処理した熱変性被膜層を介在してなる構成を備えた請求項1〜11のいずれかに記載の光反射体。
  13. B層は、微粉状充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜12のいれかに記載の光反射体。
  14. 脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を含有してなるフィルムAを、ポリエステル樹脂を含有してなるフィルムBを介して、金属板の片面若しくは両面に熱融着して積層することを特徴とする光反射体の製造方法。
  15. 上記の熱融着の温度が140℃〜280℃であることを特徴とする請求項14に記載の光反射体の製造方法。
  16. 請求項1〜13のいずれかに記載の光反射体を用いた液晶表示装置用バックライト装置。
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