JP4789053B2 - インダクタンス素子の取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランスやチョークコイルなどのインダクタンス素子のコアを保持するためのコアホルダを基板に取付け固定すると共に、この基板と一定の間隔を置いてヒートシンクやケースなどの板状部材を設けたインダクタンス素子の取付構造に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、電源装置においてトランスなどのインダクタンス素子を基板に取付ける構造は、例えば同一出願人による特許第3063084号公報などに開示されている。図6は、これを具体的に図示したものであるが、101は電源装置の入力側から出力側への電力伝送を行なうトランスで、これは磁性部材からなるコア102と、このコア102に電磁気的に結合する複数の一次巻線103および二次巻線104を備えて構成される。
【0003】
前記コア102は、断面がI型のコア上部材105と、断面がE型のコア下部材106とにより構成される。また、107はコア102を収容保持する合成樹脂製のコアホルダで、その底部にはプリント基板108の孔109に嵌合する弾性片110が一体的に設けられる。コア102は、中心部の円筒形状をなす主脚111と、この主脚111の両側にある一対の側脚112とを有し、コア上部材105とコア下部材106とをつき合わせることで、閉ざされた磁気回路が形成される。一方、一次巻線103は、合成樹脂からなる円板状のボビン114と、このボビン114に巻回される線材115とにより構成され、線材115は一対のフランジ116間に放射方向に広がって螺旋状に巻装される。また二次巻線104は、導電部材118をフィルム状の絶縁層119で覆うことで構成され、各二次巻線104の基端部は独立した出力側モジュール(図示せず)にそれぞれ接続固定される。
【0004】
そして製造に際しては、予めボビン114に線材115を巻装した一次巻線104を用意し、この一次巻線104の線材115の両端をプリント基板108の所定位置に半田付けして双方の電気的接続を図る。また、このプリント基板108の孔109にコアホルダ107の弾性片110を嵌合させ、プリント基板108上にコアホルダ107を取付け固定する。次いで、この一次巻線104およびコアホルダ107付きのプリント基板108を、プリント基板108と対向して配置される金属製の板状部材121にスペース(図示せず)を介在させた状態でねじ止めする。これらの各作業により、板状部材121に対するプリント基板108とトランス101のコアホルダ107との位置決め固定がそれぞれなされる。
【0005】
次に、実質的なトランスの製造工程に移行する。先ず、主脚111を上に向けた状態で、コア下部材106をコアホルダ107に収容し、機構的に各々独立した一次巻線103と二次巻線104をコア102の主脚111に順次装着する。そして、コア上部材105をコア下部材106につき合わせて、弾性ストッパー122の両端部をコアホルダ107の両側上部に係止することで、トランス101の全ての構成部品(コア102,一次巻線103および二次巻線104)がコアホルダ107に収容保持される。
【0006】
ところで上記構成では、板状部材121にプリント基板108を取付ける作業と、コアホルダ107をプリント基板108に取付ける作業が別々の工程で行なわれており、作業効率が悪い。特に板状部材121とプリント基板108は、両部材の接触を避けるためにスペーサを介在させたねじ止め作業を行なう必要があり、スペーサやねじなどの部材を多く必要とする問題を有していた。
【0007】
また、一次巻線104から引出された線材115の両端をプリント基板108に直接半田付け固定しなければ、一次巻線104とプリント基板108との電気的な接続を図ることができないので、プリント基板108を単独で修理交換する場合などに、いちいち半田を融かして一次巻線104をプリント基板108から取外さなければならない問題も生じていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に着目して成されたものであって、ねじやスペーサなどの部材を用いることなく、基板を板状部材に間隔を有して取付けることができるだけなく、作業時間の大幅な短縮を図ることが可能になるインダクタンス素子の取付構造をその第1の目的とする。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、巻線の端部と基板との着脱が容易なインダクタンス素子の取付構造を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1におけるインダクタンス素子の取付構造は、インダクタンス素子のコアを保持するコアホルダと、前記コアホルダに設けた基板保持部に係合保持される基板と、前記基板に対向して配置される板状部材とを備え、前記コアホルダは、前記板状部材に係合する係合部と、前記基板保持部と前記係合部との間に設けられるスペーサ部とを備え、前記コアホルダを前記基板と前記板状部材の一側端部から差し込むと、前記スペーサ部により前記基板と前記板状部材が間隔を有した状態で、前記基板保持部に前記基板が係合保持されると共に、前記係合部に前記板状部材が係合される構成となっている。
【0011】
この場合、共通するコアホルダの基板保持部に基板が係合保持され、且つ係合部に板状部材が係合するため、基板と板状部材との取付けに際し、ねじなどの止着部材を用いる必要がない。しかも、コアホルダの基板保持部と係合部との間にはスペーサ部が設けられているため、基板と板状部材は所定の間隔を有した状態でコアホルダに取付け固定される。したがって、ねじやスペーサなどの部材を用いることなく、プリント基板を板状部材に間隔を有して取付けることができる。さらに、コアホルダを基板と板状部材の一側端部から差し込むだけの簡単な手順で、基板と板状部材は所定の間隔を有した状態で、コアホルダの基板保持部に基板が係合保持されると共に、係合部に板状部材が係合するので、作業時間の大幅な短縮を図ることが可能になる。
【0012】
請求項2におけるインダクタンス素子の取付構造は、請求項1の作用・効果に加えて、前記コアを取り囲む巻線の端部と電気的に接続するコネクタを前記コアホルダに設けると共に、前記基板保持部に前記基板が係合する時に前記コネクタと連結するコネクタ受け部を前記基板に設けて構成される。
【0013】
この場合、コアホルダの基板保持部に基板が係合すると、コアホルダに設けたコネクタが基板に設けたコネクタ受け部と連結される。したがって、巻線の端部と基板との着脱が簡単に行なえる。
【0014】
【発明の実施形態】
以下、本発明における好ましい実施態様について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施例におけるインダクタンス素子は、電源装置の入力側から出力側に電力を伝送するトランスである。
【0015】
本発明の一実施例を示す図1〜図5において、1は前述のトランスで、これは周知のように磁性部材からなるコア2と、このコア2に電磁気的に結合する複数の一次巻線3および二次巻線4を備えて構成される。またコア2は、断面がI型のコア上部材5と、断面がE型のコア下部材6とにより構成され、中心部の円筒形状をなす主脚7と、この主脚7の両側にある一対の側脚8とを有する。そして、コア上部材5とコア下部材6とをつき合わせることで、閉ざされた磁気回路が形成される。
【0016】
一次巻線3は、合成樹脂からなる円板状のボビン9に図示しない線材を巻回して構成され、この線材の両端部にはボビン9に支持された導電性の接続片10が接続固定される。また、二次巻線4は図示しない導電部材をフィルム状の絶縁層11で覆うことで構成され、各二次巻線4の基端部12は独立した出力側モジュール(図示せず)にそれぞれ接続固定される。なお本実施例では、同一形状の一次巻線3および二次巻線4を2個ずつ使用しているが、その数や形状については特に限定されない。これらの一次巻線3や二次巻線4は、いずれも前記コア2の主脚7に挿脱可能な孔13を有し、この孔13ひいては主脚7を取り囲むように、一次巻線3の線材や二次巻線4の導電部材が設けられる。
【0017】
21は、トランス1の外郭をなす合成樹脂絶縁材料のコアホルダである。このコアホルダ21の上側には、前記コア2を収容すると共に全ての一次巻線3と二次巻線4を積層状態で収容するコア収容部22が形成される。また、コア収容部22の下側後方には、コネクタすなわちコネクタピン23を備えた中継基板24を収容保持する基板収容部25が形成される。そして、前記一次巻線3の接続片10と中継基板24との間を、図示しないリード線で接続することにより、一次巻線3の線材端部が中継基板24を経由してコネクタピン23と電気的に接続されるようになっている。
【0018】
前記基板収容部25の前方にあって、コア収容部22の下側には、段差状に凹んだ一対の基板保持部28が形成される。この基板保持部28は、プリント基板41の一側端部42よりコアホルダ21の着脱方向に沿って切欠いた一対のガイド溝43に係合して、プリント基板41をコア収容部22の直下に保持固定するものである。またプリント基板41には電源装置を構成する各種電子部品(図示せず)と共に、前記コネクタピン23と係合するソケット44を、コネクタ受け部として実装している。このソケット44は、コアホルダ21の基板保持部28がガイド溝43に完全に係合した時に、コネクタピン23と連結する位置に設けられている。特に本実施例では、コアホルダ21の基板保持部28に係合するガイド溝43が直線スリット状に形成され、ガイド溝43に基板保持部28を案内しながらコアホルダ21が着脱されるため、このコアホルダ21の着脱時において、コアホルダ21の左右方向R(図2参照)の位置決めがなされ、コネクタピン23が左右方向Rにずれることなく確実にソケット44に連結できる。
【0019】
コアホルダ21の底部には平板状をなす一対の挿入片30が形成されると共に、この挿入片30の下面には、下方向に突出した凸部31が形成される。また、挿入片30,30の間には弾性爪32が形成される。これらの凸部31および弾性爪32は、プリント基板41と対向して設けられる金属製の板状部材51に係合する係合部に相当するもので、基板保持部28と凸部31および弾性爪32との間には、プリント基板41と板状部材51が上下方向に所定の間隔を有して配置されるように、スペーサ部33が形成される。なお、挿入片30,凸部31,弾性爪32およびスペーサ部33の形状は,実施例中のものに限定されない。また、これらの各部をコアホルダ21と別部材として設けることも可能である。なお板状部材51としては、電源装置の外ケースや発熱部品を冷却するヒートシンクなどがこれに相当する。
【0020】
板状部材51には、前記コアホルダ21の凸部31に嵌合するスリット状の長孔52と、前記挿入片30を上下に挟持する折曲片53と、前記弾性爪32に嵌合する孔54がそれぞれ対応した位置に形成される。そして、コアホルダ28の各挿入片30が板状部材51の折曲片53により挟持されるように、コアホルダ28を板状部材51の一側端部より差し込んで行くと、長孔52に凸部31が嵌合すると同時に、孔54に弾性爪32が嵌合して、コアホルダ21と板状部材51との取付け固定が図られるようになっている。
【0021】
そして製造に際しては、ボビン9に線材を巻装すると共に、この線材の両端を接続片10に接続した一次巻線3と、コネクタピン23を装着した中継基板24とを用意し、一次巻線3の接続片10と中継基板24との間をリード線で接続したトランス1の一次側サブユニットを予め組立てておく。そして、コネクタピン23の先端部がプリント基板41の挿入方向を向くように、一次側サブユニットの中継基板24をコアホルダ21の基板収容部25に取付ける。またこれとは別の工程で、各二次巻線4の基端部を、同一または異なる独立した出力側モジュールにそれぞれ半田付けなどで接続固定しておく。
【0022】
プリント基板41は、コアホルダ21の装着部周辺以外の箇所で、予め図示しないスペーサを介在した状態で、板状部材51に対し所定の間隔でねじ止め固定される。その後、プリント基板41の上面をコア収容部22の下面に当接させながら、コネクタピン23とソケット44とを向かい合わせて、コアホルダ21をプリント基板41および板状部材51の一側端部から差し込む。すると、コアホルダ21の各挿入片30と弾性爪32が板状部材51の上面に乗り上げて、これらの挿入片30および弾性片32が弾性変形する。この変形力に抗してさらにコアホルダ21を差し込んで行くと、コアホルダ21の基板保持部28がプリント基板41のガイド溝43に挿入され、コアホルダ21の左右方向Rの動きが規制されると共に、各挿入片30が板状部材51の上面と折曲片53との間に挟持され、折曲片53も若干弾性変形する。やがて、各挿入片30が折曲片53に突き当たるか、それよりも少し手前の位置にまでコアホルダ21を差し込むと、板状部材51に形成した長孔52に凸部31が嵌合すると共に、孔54に弾性爪32が嵌合して、挿入片30および弾性片32の弾性変形が解除される。また、コアホルダ21側にあるコネクタピン23も、左右方向Rにずれることなくソケット44に差し込まれる。
【0023】
コアホルダ21の基板保持部28と挿入片30および弾性片32との間には、スペーサ部33が形成されているため、コアホルダ21を一方向に差し込むだけで、プリント基板41と板状部材51は所定の間隔を有した状態で、共通するコアホルダ21に取付け固定される。したがって、特にコアホルダ21を装着する部位には、プリント基板41と板状部材51とを取付ける際に、ねじや専用のスペーサを用いる必要がない。また、基板保持部28にプリント基板41が係合すると同時に、コネクタピン23がソケット44と連結するので、一次巻線3から引出された線材の両端を、半田付けに依らずプリント基板41に簡単に接続することが可能になる。したがって、プリント基板41を単独で修理交換する場合には、プリント基板41からコアホルダ21を取外すだけで、一次巻線3とプリント基板41との電気的接続が解除され、修理性が著しく向上する。
【0024】
その後は、実質的なトランスの製造工程に移行する。先ず、主脚7を上に向けた状態で、コア下部材6をコアホルダ21のコア収容部22に収容し、機構的に各々独立した一次巻線3と二次巻線4をコア2の主脚7に順次装着する。そして、コア上部材5をコア下部材6につき合わせて、図示しない弾性ストッパーによりトランス1の全ての構成部品(コア2,一次巻線3および二次巻線4)をコアホルダ21に収容保持する。
【0025】
以上のように本実施例によれば、インダクタンス素子であるトランス1のコア2を保持するコアホルダ21と、このコアホルダ21に設けた基板保持部28に係合保持される基板としてのプリント基板41と、プリント基板41に対向して配置される板状部材51とを備え、コアホルダ21は、板状部材51に係合する係合部(凸部31および弾性爪32)と、基板保持部28と係合部との間に設けられるスペーサ部33とを備えて構成される。
【0026】
この場合、共通するコアホルダ21の基板保持部28にプリント基板41が係合保持され、且つ凸部31および弾性爪32に板状部材51が係合するため、プリント基板41と板状部材51との取付けに際し、ねじなどの止着部材を用いる必要がない。しかも、コアホルダ21の基板保持部28と凸部31および弾性爪32との間にはスペーサ部33が設けられているため、プリント基板41と板状部材51は所定の間隔を有した状態でコアホルダ21に取付け固定される。したがって、ねじやスペーサなどの部材を用いることなく、プリント基板41を板状部材51に間隔を有して取付けることができる。
【0027】
また本実施例では、コアホルダ21をプリント基板41と板状部材51の一側端部から差し込むだけの簡単な手順で、プリント基板41と板状部材51は所定の間隔を有した状態で、コアホルダ21の基板保持部28にプリント基板41が係合保持されると共に、凸部31および弾性爪32に板状部材51が係合するので、作業時間の大幅な短縮を図ることが可能になる。さらに、コアホルダ21自体が合成樹脂などの絶縁部材で形成されるので、プリント基板41と金属製の板状部材51との絶縁性も確保される。
【0028】
さらに本実施例では、コア2を取り囲む巻線すなわち一次巻線3の端部と電気的に接続するコネクタ(コネクタピン23)をコアホルダ21に設けると共に、基板保持部28にプリント基板41が係合する時にコネクタピン23と連結するコネクタ受け部(ソケット44)をプリント基板41に設けている。
【0029】
この場合、コアホルダ21の基板保持部28にプリント基板41が係合すると、コアホルダに設けたコネクタが基板に設けたコネクタ受け部と連結される。したがって、巻線の端部と基板との着脱が簡単に行なえる。特に本実施例では、プリント基板41と板状部材51を所定の間隔で取付け固定する作業と、一次巻線3とプリント基板41との接続作業が、コアホルダ21の差し込みだけで完了するので、作業性が著しく向上する。
【0030】
以上、前記実施例に基づき、電源装置に適用されるインダクタンス素子の取付構造について説明してきたが、本発明は電源装置以外のインダクタンス素子の取付構造にも適用できる。また、本実施例では一次巻線3の端部にコネクタピン23を接続したが、二次巻線4や他の巻線とプリント基板41とを接続する必要のある場合は、該当する巻線をコネクタピン23に接続すればよい。
【0031】
【発明の効果】
請求項1のインダクタンス素子の取付構造によれば、ねじやスペーサなどの部材を用いることなく、基板を板状部材に間隔を有して取付けることができる。
【0032】
請求項2のインダクタンス素子の取付構造によれば、巻線の端部と基板との着脱が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例におけるトランスをプリント基板および板状部材に取付けた状態の側面図である。
【図2】 同上トランスをプリント基板および板状部材に取付ける直前の各部の平面図である。
【図3】 同上プリント基板の一部を切欠いた取付け前の各部の斜視図である。
【図4】 同上別な方向から見たトランス単体の斜視図である。
【図5】 同上さらに別な方向から見たトランス単体の斜視図である。
【図6】 従来例を示す各部の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 トランス
2 コア
3 一次巻線(巻線)
21 コアホルダ
23 コネクタピン(コネクタ)
28 基板保持部
31 凸部(係合部)
32 弾性爪(係合部)
33 スペーサ部
41 プリント基板
44 ソケット(コネクタ受け部)
51 板状部材

Claims (2)

  1. インダクタンス素子のコアを保持するコアホルダと、前記コアホルダに設けた基板保持部に係合保持される基板と、前記基板に対向して配置される板状部材とを備え、前記コアホルダは、前記板状部材に係合する係合部と、前記基板保持部と前記係合部との間に設けられるスペーサ部とを備え、
    前記コアホルダを前記基板と前記板状部材の一側端部から差し込むと、前記スペーサ部により前記基板と前記板状部材が間隔を有した状態で、前記基板保持部に前記基板が係合保持されると共に、前記係合部に前記板状部材が係合される構成としたことを特徴とするインダクタンス素子の取付構造。
  2. 前記コアを取り囲む巻線の端部と電気的に接続するコネクタを前記コアホルダに設けると共に、前記基板保持部に前記基板が係合する時に前記コネクタと連結するコネクタ受け部を前記基板に設けたことを特徴とする請求項1記載のインダクタンス素子の取付構造。
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