以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るリフタのかしめ構造10が適用される燃料供給装置1の構造を模式的に示す図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態に係るリフタのかしめ構造10が適用される燃料ポンプ3の断面図である。
本発明の実施の形態に係るリフタのかしめ構造10は、燃料ポンプ3を構成するとともに、燃料ポンプ3は、車両の燃料供給装置1を構成しており、この車両は、例えば、筒内直噴型4気筒のガソリンエンジンで構成されている。
図1に示すように、燃料供給装置1は、燃料タンク2と、燃料ポンプ3と、複数の燃料噴射バルブ4と、エンジン電子制御ユニット(ECU)5とを含んで構成されている。さらに、燃料供給装置1は、燃料タンク2と燃料ポンプ3とを連結する低圧燃料パイプ6と、低圧燃料パイプ6に設けられ燃料噴射バルブ4の燃料噴射によって燃料経路に発生する圧力脈動を抑制するパルセーションダンパ7と、燃料ポンプ3を駆動するカム8と、各燃料噴射バルブ4に燃料を供給するデリバリパイプ9と、燃料ポンプ3とデリバリパイプ9とを連結する高圧燃料パイプ11と、高圧燃料パイプ11に設けられデリバリパイプ9から燃料ポンプ3に燃料が逆流するのを阻止するチェックバルブ12と、デリバリパイプ9に蓄えられた燃料の一部を燃料タンク2に還流させるリターンパイプ13と、デリバリパイプ9内の燃料の圧力(MPa)を検知する燃圧センサ14と、燃圧センサ14が検知した燃料圧力が所定圧(MPa)を超えたときに開弁するリリーフバルブ15と、燃料ポンプ3内で余剰となった燃料をリターンパイプ13に還流させる余剰燃料還流パイプ16とを含んで構成されている。
燃料タンク2は、ガソリンなどからなる燃料を貯蔵するタンク本体2aと、タンク本体2a内に収容され、低圧燃料パイプ6に設けられているプレッシャレギュレータ2bと、タンク本体2a内の燃料を低圧燃料パイプ6を介して燃料ポンプ3に供給するフィードポンプ2cと、プレッシャレギュレータ2bとフィードポンプ2cとの間に設けられ燃料をろ過するフィルタ2dとを含んで構成されている。
図2に示すように、燃料ポンプ3は、ポンプ本体31と、電磁スピルバルブ32と、電磁スピルバルブ32の一部を収容するバルブケース33と、チェックバルブ34と、チェックバルブ34を収容するバルブケース35とを含んで構成されている。この燃料ポンプ3は、燃料タンク2からポンプ本体31に供給された燃料の圧力(MPa)を、例えば、4MPaないし13Mpaの間で高めた後、チェックバルブ34および高圧燃料パイプ11を介してデリバリパイプ9に高圧の燃料を供給するようになっている。
ポンプ本体31は、シリンダヘッドカバーなどの車両の支持部19に支持された円筒状のリフタガイド41と、リフタガイド41に支持された円環状の支持リング42と、支持リング42の端部に支持され、内部にシリンダ43を有するハウジング44と、シリンダ43内に摺動自在に収容されたプランジャ45と、プランジャ45の先端部に固定されたリテーナ46と、一端が支持リング42の他端部に保持されるとともに、他端がリテーナ46に保持されたコイルスプリング47と、支持リング42に支持され、シリンダ43とプランジャ45との隙間から漏出した燃料を貯留する燃料貯留ケース48と、リテーナ46と連結されリフタガイド41内で摺動自在にリフタガイド41内に収容されたリフタ51とを含んで構成されている。このリフタ51は、排気カムシャフト18に固定されたカム8の回転により駆動され、リフタガイド41内で往復運動するようになっている。
また、このポンプ本体31には、ハウジング44のシリンダ43の軸方向に直交してバルブケース35がハウジング44に連結されており、ハウジング44に形成された高圧燃料通路44aと、バルブケース35に形成された高圧燃料通路35aとが連通している。また、ハウジング44の軸方向の端部には、バルブケース33が連結されており、バルブケース33に形成された低圧燃料通路33aと、電磁スピルバルブ32に形成された後述する燃料供給通路とが連通している。
図3は、本発明の第1の実施の形態のリフタのかしめ構造10におけるリフタ51を示し、図3(a)は、リフタ51の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A矢視断面を示す断面図である。図4は、本発明の第1の実施の形態のリフタ51のかしめ構造10におけるリフタ51の部分拡大断面図である。
図3(a)、(b)に示すように、リフタ51は、リフタ本体52と、ローラ軸53と、ローラ54と、ローラ軸53にローラ54を固定する固定リング55、56とを含んで構成されている。
図3(b)に示すように、リフタ本体52は、例えば、厚みtの金属材料からなり、湾曲部52a、52bと、平坦部52c、52dとを有している。リフタ本体52は、湾曲部52aの外周および湾曲部52bの外周からなる円周が、点Pを中心とする半径rの円周になるよう略円筒状に形成されている。この半径rは、リフタガイド41の内周面41aを形成する半径よりも僅かに小さく形成されており、リフタ本体52の湾曲部52a、52bの各外周面がリフタガイド41の内周面41aに沿って摺動するようになっている。
平坦部52c、52dには、貫通孔52eおよび貫通孔52fがその軸線を同一にし、かつ軸線が点Pを通る位置になるよう形成されており、この貫通孔52e、52fには、ローラ軸53が挿通されるようになっている。
リフタ本体52の縁部52iおよび縁部52jには、面取りが施されており、リフタ本体52がリフタガイド41で滑らかに摺動できるようになっている。
また、リフタ本体52の上下部には切欠部52kおよび切欠部52lがそれぞれ設けられており、軽量化されている。この切欠部52k近傍の内周面52mには、プランジャ45の先端部に固定されたリテーナ46が圧着、溶接、接着などの結合手段により連結されるようになっており、リフタ本体52が移動すると、リフタガイド41に案内されつつプランジャ45がリフタ本体52と一緒に移動するようになっている。
図4に示すように、平坦部52cの貫通孔52eの周縁部には、外径D3、深さL3の傾斜部52gが円環状に形成されている。貫通孔52eの外方には、幅W4、深さL4の凹部としての溝57が円環状に形成されており、この溝57は、貫通孔52eの周囲を取り囲むようになっている。
また、平坦部52dの貫通孔52fの周縁部にも、外径D3、深さL3の傾斜部52hが円環状に形成されている。貫通孔52fの外方には、幅W4、深さL4の凹部としての溝58が円環状に形成されており、この溝58は、貫通孔52fの周囲を取り囲むようになっている。
ローラ軸53は、金属材料からなり、外径D1およびリフタ本体52の平坦部52cと平坦部52dとの間の距離と略同一の長さを有する円柱体で形成されており、その両端部が貫通孔52eおよび貫通孔52fに挿通されるようになっている。ローラ軸53の端部53a側には、ローラ軸53の軸線を同一にし、内径D2、幅W2、深さL2の溝53cが円環状に形成されている。ローラ軸53の端部53b側にも、ローラ軸53の軸線を同一にし、内径D2、幅W2、深さL2の溝53dが円環状に形成されている。
また、ローラ軸53の端部53aの円周部には溝が形成されており固定リング55が係合するようになっている。ローラ軸53の端部53bの円周部にも、溝が形成されており固定リング56が係合するようになっている。
ローラ54は、外周部が高い耐摩耗性を有する金属の回転部材からなり、ローラ軸53の外周部53eに回転自在に取り付けられている。また、その両端部が固定リング55、56により軸方向に移動しないよう固定されている。このローラ54は、ローラ軸53の回りを回転するものであればよく、例えば、高い剛性を有し高いラジアル荷重容量を有する針状ころ軸受で構成してもよい。
リフタ本体52およびローラ軸53における外径D1、D3、内径D2、深さL2、L3、L4、幅W2、W4などの各寸法については、燃料ポンプ3の大きさ、形状および構造やポンプ特性などの設計条件に基づいて適宜選択される。
図2に示すように、電磁スピルバルブ32は、電磁ソレノイド61、ボビン62、コア63、アーマチュア64、ポペットバルブ65、シート体66、コイルスプリング67、端子部68、支持リング69とを含んで構成されている。このシート体66の下部と、ハウジング44のシリンダ43内に収容されているプランジャ45の端部と、ハウジング44の内壁部とにより、燃料を加圧する加圧室36が画成されている。
電磁ソレノイド61は、ボビン62にリング状に巻回されたコイルからなり、コア63は、ボビン62に形成された貫通孔に挿通され嵌合固定されている。
アーマチュア64は、ポペットバルブ65の一端に固定された状態で支持リング69に支持されており、その一部がコア63と同軸上でボビン62内に移動できるようになっている。
コア63およびアーマチュア64の各対向面には、凹部がそれぞれ形成されており、それらの凹部間にはコイルスプリング67が圧縮状態で収容されている。そして、このコイルスプリング37により、アーマチュア64が加圧室36側に向かって付勢されている。
ポペットバルブ65は、シート体66内の貫通孔に摺動自在に収容されており、その下端部には円板状の弁体65aが形成されている。そして、電磁ソレノイド61が通電されていない時には、コイルスプリング67の付勢力により、弁体65aがシート体66のシート部66aから離間されて、電磁スピルバルブ32は、開弁状態となっている。一方、図示しないエンジン電子制御ユニット5から端子部68を介して電磁ソレノイド61に通電される時には、コア63、アーマチュア64および電磁スピルバルブ32全体を支持する支持リング69により磁気回路が形成され、コイルスプリング67の付勢力に抗して、アーマチュア64がコア63側に移動するようになっている。これにより、ポペットバルブ65が加圧室36と反対側に移動し、その弁体65aがシート体66のシート部66aに当接して、電磁スピルバルブ32は閉弁状態となるよう構成されている。
シート体66には、複数の燃料供給通路66bが形成されており、電磁スピルバルブ32が開弁状態にある時に、各燃料供給通路66bと加圧室36との間で燃料が流通できるようになっている。
他方、電磁スピルバルブ32の開弁状態で、プランジャ45が下降するとき、燃料タンク2内のフィードポンプ2cの作動により、燃料タンク2から汲み上げられた低圧燃料が、フィルタ2d、プレッシャレギュレータ2b、低圧燃料通路33aおよび燃料供給通路66bを経て加圧室36に吸入されるようになっている。
プランジャ45は、電磁スピルバルブ32の閉タイミング前に加圧室36に進入し、電磁スピルバルブ32が閉弁した後にプランジャ45が上死点に到達するようになっている。そして、プランジャ45の先端部が加圧室36内に進入した状態で、加圧室36の内周面とプランジャ45の外周面との間に隙間が形成されるようになっている。
チェックバルブ34は、バルブケース35と、バルブケース35内に配置されたシート体71およびスプリングベース体72と、シート体71に接離可能に対向する弁体73と、この弁体73をシート体71に対する当接位置に向かって付勢するコイルスプリング74とを含んで構成されている。このバルブケース35は高圧燃料パイプ11に連結されており、チェックバルブ34を通過した燃料を高圧燃料パイプ11に流通させるようになっている。そして、加圧室36内から高圧燃料通路44aを介して圧送される燃料の圧力が所定値を超えたとき、弁体73がコイルスプリング74の付勢力に抗してシート体71から離間する位置に移動されるようになっている。チェックバルブ34が開弁状態のとき、高圧燃料通路44aから圧送される高圧燃料が高圧燃料パイプ11を経てデリバリパイプ9に供給されるようになっている。
燃料噴射バルブ4は、例えば、各気筒に設けられた筒内噴射用のフューエルインジェクタなどからなり、スリット形状の複数の噴孔を有し、エンジン電子制御ユニット5の指令によりデリバリパイプ9から供給された高圧の燃料を高微粒化し図示しないエンジンの燃焼室に噴射するようになっている。
エンジン電子制御ユニット5は、CPU(Central Processing Unit)、処理プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、バッテリを電源として作動し書換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、A/D変換器やバッファなどを含む入力インターフェース回路、駆動回路などを含む出力インターフェース回路、および、燃料噴射制御部を含んで構成されている。この燃料噴射制御部は、常時、筒内噴射用の燃料噴射バルブ4の駆動状態を監視しており、必要時に燃料噴射バルブ4および電磁スピルバルブ32を高速に駆動するようになっている。
エンジン電子制御ユニット5の入力インターフェース回路には、燃圧センサ14などのセンサが接続されており、燃圧センサ14などのセンサから出力される情報は、入力インターフェース回路を介して、エンジン電子制御ユニット5に取り込まれるようになっている。
エンジン電子制御ユニット5の出力インターフェース回路には、燃料タンク2内のフィードポンプ2c、燃料噴射バルブ4および燃料ポンプ3内の電磁ソレノイド61などがそれぞれ接続されており、出力インターフェース回路を介して、制御されるようになっている。
次に、本実施の形態のリフタのかしめ構造10における、リフタ本体52とローラ軸53とのかしめ方法およびその作用について説明する。
図5は、本発明の第1の実施の形態のリフタのかしめ構造10におけるリフタ51を示し、図5(a)は、リフタ51にかしめ工具から加えられる荷重を示す部分拡大断面図であり、図5(b)は、リフタ本体52とローラ軸53との係合部の分力を示す部分拡大断面図である。
まず、リフタ本体52内にローラ54を収容し、リフタ本体52の貫通孔52e、52fの軸線とローラ54の軸線が一致するよう配置する。次いで、ローラ軸53を貫通孔52e、ローラ54の貫通孔および貫通孔52fの順に挿通させる。
この状態で、図3(b)に示すように、ローラ軸53の両溝にそれぞれ固定リング55および固定リング56を装着することにより、ローラ軸53にローラ54を固定する。
次いで、リフタ本体52の平坦部52cが上方に向くよう、リフタ51全体を図示しない固定治具に固定し、リフタ51全体がかしめ固定時に移動しないよう固定治具を図示しない基盤上にセットする。
この状態で、図示しないかしめ工具の先端部を、ローラ軸53の溝53cに当接させ、周縁部53fにおける許容応力(MPa)を超える所定の荷重Fk(N)で押圧する。このとき、図5(a)に示すように、溝53cの側面部および底面部に荷重Fkが分散され、水平方向の分力Fh(N)が白抜きの矢印で示す方向で、リフタ本体52に放射状に作用し、ローラ軸53の周縁部53fが、リフタ本体52の傾斜部52g方向に塑性変形し、周縁部53fと傾斜部52gとが全周に渡って係合する。
この傾斜部52gに周縁部53fが係合するとき、リフタ本体52の係合部分には、図5(b)に示すように、水平方向の分力Fh(N)とこれに直交する方向の分力Fv(N)が作用することになる。
リフタ本体52に分力Fhが作用すると、点P1の近傍を支点として、溝57の側面部に曲げモーメントM1(Nm)が作用し、溝57の側面部が変形する。
その結果、分力Fhは、溝57の変形した側面部と対向する側面部には作用しないので、リフタ本体52の湾曲部52aに分力Fhが作用せず、湾曲部52aが変形することはない。溝57は円環状になっているので、湾曲部52aと対向する湾曲部52bも変形することはない。なお、溝57の変形した側面部は、リフタ本体52の許容応力(MPa)を超えたときに塑性変形するが、この場合もリフタ本体52の湾曲部52aに分力Fhが作用せず、湾曲部52aが塑性変形することはない。このような溝57における変形量は、溝57の深さL4が大きいほど大きくなり、その深さL4が小さいほど小さくなるが、リフタ本体52によってローラ軸53を支持しているので、リフタ本体52の剛性を確保するため溝57の変形量は小さいことが好ましい。
他方、リフタ本体52に分力Fvが作用すると、点P2の近傍を支点として、溝57の底面部に曲げモーメントM2(Nm)が作用する。このとき、溝57の底面部には、曲げモーメントM2に抗する応力(MPa)が発生するが、リフタ本体52の貫通孔52eの内壁面部と、ローラ軸53の外周部53eとが、t−L3の幅で当接しているので、ローラ軸53にも曲げモーメントM2に抗する応力が発生する。その結果、溝57の底面部に発生する曲げモーメントM2に抗する応力は、リフタ本体52とローラ軸53とに分散されて小さくなり、リフタ本体52の軸方向の変形量は許容しうる微小な量に留まる。なお、溝57の底面部に発生する曲げモーメントM2に抗する応力が、リフタ本体52の許容応力を超えて、リフタ本体52がその軸方向に塑性変形しても、その塑性変形は、点P2の近傍を支点として曲げられるので、リフタ本体52の湾曲部52aにこの応力は作用せず、湾曲部52aが塑性変形することはない。また、溝57は円環状になっているので、湾曲部52aと対向する湾曲部52bも塑性変形することはない。
この場合、溝57の底面部の厚みt−L4が小さいほど、点P2の近傍を支点として作用する曲げ応力による変形量が大きくなり、その厚みt−L4が大きいほどその変形量が小さくなるが、この場合もリフタ本体52によってローラ軸53を支持しているので、リフタ本体52の剛性を確保するため曲げ応力による変形量は小さいことが好ましい。
また、溝57の側面部の内径が小さいほどリフタ本体52の剛性が高まるので好ましいが、これらの各寸法については、燃料ポンプ3の大きさ、形状および構造やポンプ特性などの設計条件に基づいて適宜選択される。
リフタ本体52の平坦部52cにおけるかしめ固定が完了すると、リフタ51を固定治具から離脱させ、平坦部52dが上方に向くよう、リフタ51全体を固定治具に固定し、リフタ51全体がかしめ固定時に移動しないよう固定治具を図示しない基盤上にセットする。この状態で、平坦部52cにおけるかしめ固定と同様に、かしめ工具の先端部を、ローラ軸53の溝53dに当接させ所定の荷重Fk(N)で押圧し、リフタ本体52にローラ軸53をかしめ固定する。この場合、リフタ51を固定治具から離脱させ、リフタ51を反転させて、リフタ51全体を固定治具に再固定する方法に代えて、リフタ51が固定されている固定治具自体を反転させて、残りの平坦部52dにおけるかしめ固定を実施してもよい。また、上下方向から一斉にかしめ固定するようにしてもよい。
次に、本実施の形態のリフタのかしめ構造10が適用される燃料ポンプ3の作用について簡単に説明する。
燃料を高圧にして燃料噴射バルブ4から噴射する必要があるとき、例えば、車両の始動時などの暖機運転時には、まず、エンジン電子制御ユニット5の指令により電磁スピルバルブ32が開弁し、燃料ポンプ3の吸入工程が開始する。このとき、燃料が、図2に示す燃料タンク2のフィードポンプ2cからフィルタ2d、パルセーションダンパ7を介して低圧燃料パイプ6から、図3に示す低圧燃料通路33aに流入する。
そして、図示しないエンジンのクランクシャフトの回転により、図2に示すカムシャフト18が回転するとカム8が回転し、リフタ51がコイルスプリング47の押圧力により加圧室36から離隔する方向に移動するとともにプランジャ45が同方向に移動し、燃料が、低圧燃料通路33aから燃料供給通路66bを経由して加圧室36に吸入される。
燃料の吸入が完了すると、エンジン電子制御ユニット5の指令により電磁スピルバルブ32が閉弁し、加圧室36と燃料供給通路66bとが遮断され、加圧工程が開始する。この加圧工程においては、プランジャ45が移動し加圧室36内の燃料が圧縮されて燃料圧力が、例えば、13MPaまで高められる。加圧室36内の燃料圧力が13MPaに達すると、燃料圧力によりチェックバルブ34が開放されて、加圧室36内の高圧の燃料が、高圧燃料パイプ11を介してデリバリパイプ9に供給される。このとき、エンジン電子制御ユニット5の噴射制御部から燃料噴射バルブ4に噴射指令が伝達され、燃料噴射バルブ4から高圧燃料が噴射される。図示しないエンジンの各気筒ごとに、各気筒の燃焼サイクルに応じてエンジン電子制御ユニット5により噴射量や噴射タイミングなどの燃料噴射が制御される。
このように、本実施の形態に係るリフタのかしめ構造10は、燃料ポンプ3に設けられ、カム8に押圧されてリフタガイド41の内周面41aを往復移動することにより、シリンダ43内に設けられたプランジャ45を往復移動させて高圧燃料を吐出させるリフタ51のかしめ構造であって、リフタ51が、リフタガイド41の内周面41aに沿って摺動自在に設けられ、この摺動方向と略直交する方向に貫通孔52e、52fを有するリフタ本体52と、貫通孔52e、52fに挿通され、軸方向の端部53a、53bが貫通孔52e、52fの傾斜部52g、52hにかしめ固定されるローラ軸53と、ローラ軸53の外周部53eに回転自在に設けられ、カム8に摺接するローラ54とを備え、貫通孔52e、52fの外方のリフタ本体52に溝57、58を形成し、ローラ軸53の端部53a、53bをリフタ本体52にかしめ固定したときに、溝57、58を変形させるよう構成されている。
この場合、ローラ軸53の端部53aが貫通孔52eの傾斜部52gにかしめ固定される際にリフタ本体52に生ずる水平方向の分力Fhは、溝57の側面部が変形する。その結果、分力Fhは、溝57における変形した側面部と対向する側面部に作用しないので、リフタ本体52の湾曲部52aに分力Fhが作用せず、湾曲部52aが変形することが防止される。このように、リフタ本体52に溝57を設けるだけの簡単な構造により、リフタ本体52にローラ軸53をかしめ固定する際に生ずるリフタ本体52への分力を溝57で遮断することができ、リフタ本体52の湾曲部52aおよび湾曲部52aと対向する湾曲部52bが、変形するのを好適に防止できるリフタのかしめ構造を提供することができる。
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態のリフタのかしめ構造20におけるリフタ51を示し、図6(a)は、リフタ91の平面図であり、図6(b)は、図6(a)のB−B矢視断面を示す断面図である。図7は、本発明の第2の実施の形態のリフタのかしめ構造20におけるリフタ91の部分拡大断面図である。
なお、第2の実施の形態に係る燃料ポンプ3においては、第1の実施の形態に係る燃料ポンプ3のリフタ51に代えてリフタ91を形成した点が異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1から図5(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
本発明の実施の形態に係るリフタのかしめ構造20は、第1の実施の形態における燃料ポンプと同様の燃料ポンプ3を構成するとともに、第1の実施の形態と同様に、燃料ポンプ3は、車両の燃料供給装置1を構成しており、この車両は、例えば、筒内直噴型4気筒のガソリンエンジンで構成されている。
図6(a)、(b)に示すように、リフタ91は、リフタ本体92と、ローラ軸53と、ローラ54と、ローラ軸53にローラ54を固定する固定リング55、56とを含んで構成されている
図6(b)に示すように、リフタ本体92は、第1の実施の形態と同様、厚みtの金属材料からなり、湾曲部92a、92bと、平坦部92c、92dとを有している。リフタ本体92は、湾曲部92aの外周および湾曲部92bの外周からなる円周が、点P1を中心とする半径r1の円周になるよう略円筒状に形成されている。この半径r1は、リフタガイド41の内周面41aを形成する半径よりも僅かに小さく形成されており、リフタ本体92の湾曲部92a、92bの各外周面がリフタガイド41の内周面41aに沿って摺動するようになっている。
平坦部92c、92dには、貫通孔92eおよび貫通孔92fがその軸線を同一にし、かつ軸線が点P1を通る位置になるよう形成されており、この貫通孔92e、92fには、ローラ軸53が挿通されるようになっている。
リフタ本体92の縁部92iおよび縁部92jには、面取りが施されており、リフタ本体92がリフタガイド41で滑らかに摺動できるようになっている。
また、リフタ本体92の上下部には切欠部92kおよび切欠部92lがそれぞれ設けられており、軽量化されている。この切欠部92k近傍の内周面52mには、プランジャ45の先端部に固定されたリテーナ46が結合手段により連結されるようになっており、リフタ本体92が移動すると、リフタガイド41に案内されつつプランジャ45とリフタ本体92とが一緒に移動するようになっている。
図6(a)および図7に示すように、平坦部92cの貫通孔92eの周縁部には、外径D3、深さL3の傾斜部92gが円環状に形成されている。この傾斜部92gから離隔し、リフタ本体92の軸線方向に延在して形成された幅W5、長さL5の凹部としての貫通孔97が長方形に形成されている。この貫通孔97に距離S5だけ離隔し貫通孔92eを挟んで対向する凹部としての貫通孔96が幅W5、長さL5で長方形に形成されている。
また、平坦部92dの貫通孔92fの周縁部にも、外径D3、深さL3の傾斜部92hが円環状に形成されている。この傾斜部92hから離隔し、リフタ本体92の軸線方向に延在して形成された幅W5、長さL5の凹部としての貫通孔99が長方形に形成されている。この貫通孔99に距離S5だけ離隔し貫通孔92fを挟んで対向する凹部としての貫通孔98が、幅W5、長さL5で長方形に形成されている。
リフタ本体92およびローラ軸53における外径D1、D3、内径D2、距離S5、長さL5、深さL3、幅W2、W5などの各寸法については、燃料ポンプ3の大きさ、形状および構造やポンプ特性などの設計条件に基づいて適宜選択される。
次に、本実施の形態のリフタのかしめ構造20における、リフタ本体92とローラ軸53とのかしめ方法およびその作用について説明する。
図8は、本発明の第2の実施の形態のリフタのかしめ構造20におけるリフタ91を示し、図8(a)は、リフタ91にかしめ工具から加えられる荷重を示す部分拡大断面図であり、図8(b)は、リフタ本体92とローラ軸53との係合部の分力を示す部分拡大断面図である。
まず、第1の実施の形態と同様に、リフタ本体92、ローラ54およびローラ軸53を組み立てて固定治具に固定しその固定治具を基盤上にセットする。
この状態で、図示しないかしめ工具の先端部を、ローラ軸53の溝53cに当接させ周縁部53fにおける許容応力(MPa)を超える所定の荷重Fk(N)で押圧する。
このとき、図8(a)に示すように、溝53cの側面部および底面部に荷重Fkが分散され、水平方向の分力Fh(N)が白抜きの矢印で示す方向で、リフタ本体92に放射状に作用し、ローラ軸53の周縁部53fが、リフタ本体92の傾斜部92g方向に塑性変形し、周縁部53fと傾斜部92gとが全周に渡って係合する。
傾斜部92gに周縁部53fが係合するとき、リフタ本体92の係合部分には、図8(b)に示すように、水平方向の分力Fhとこれに直交する方向の分力Fv(N)が作用することになる。リフタ本体92に分力Fhが作用すると、点P3の近傍を支点として、貫通孔97の側面部に曲げモーメントM1(Nm)が作用し、貫通孔97の側面部が変形する。
その結果、分力Fhは、貫通孔97の変形した側面部と対向する側面部に作用しないので、リフタ本体92の湾曲部92aに分力Fhが作用せず、湾曲部92aが変形することはない。平坦部92cの貫通孔96においても、貫通孔97における作用と同様に貫通孔96により分力Fhが作用しないので、湾曲部92bが変形することはない。
他方、リフタ本体92に分力Fvが作用すると、点P4の近傍を支点として、リフタ本体92に曲げモーメントM2(Nm)が作用する。このとき、リフタ本体92には、曲げモーメントM2に抗する応力(MPa)が発生するが、リフタ本体92の貫通孔92eの内壁面部と、ローラ軸53の外周部53eとが、t−L3の幅で当接しているので、ローラ軸53にも曲げモーメントM2に抗する応力が発生する。その結果、リフタ本体92に発生する曲げモーメントM2に抗する応力は、リフタ本体92とローラ軸53とに分散されて小さくなり、リフタ本体92の軸方向の変形量は許容しうる微小な量に留まる。なお、リフタ本体92に発生する曲げモーメントM2に抗する応力が、リフタ本体92の許容応力を超えて、リフタ本体92がその軸方向に塑性変形しても、その塑性変形は、点P3の近傍を支点として曲げられるので、リフタ本体92の湾曲部92aにこの応力は作用せず、湾曲部92aが塑性変形することはない。また、平坦部92cの貫通孔96も貫通孔97と同様に作用し、湾曲部92aと対向する湾曲部92bも塑性変形することはない。
リフタ本体92の平坦部92cにおけるかしめ固定が完了すると、リフタ91を固定治具から離脱させ、平坦部92dが上方に向くよう、リフタ91全体を固定治具に再固定し、リフタ91全体がかしめ固定時に移動しないよう固定治具を図示しない基盤上にセットする。この状態で、平坦部92cにおけるかしめ固定と同様に、かしめ工具の先端部を、ローラ軸53の溝53dに当接させ所定の荷重Fk(N)で押圧し、リフタ本体92にローラ軸53をかしめ固定する。この場合、リフタ91を固定治具から離脱させ、リフタ91を反転させて、リフタ91全体を固定治具に再固定する方法に代えて、リフタ91が固定されている固定治具自体を反転させて、残りの平坦部92dにおけるかしめ固定を実施してもよい。また、上下方向から一斉にかしめ固定するようにしてもよい。
このように、本実施の形態に係るリフタのかしめ構造20は、燃料ポンプ3に設けられ、カム8に押圧されてリフタガイド41の内周面41aを往復移動することにより、シリンダ43内に設けられたプランジャ45を往復移動させて高圧燃料を吐出させるリフタ91のかしめ構造であって、リフタ91が、リフタガイド41の内周面41aに沿って摺動自在に設けられ、この摺動方向と略直交する方向に貫通孔92e、92fを有するリフタ本体92と、貫通孔92e、92fに挿通され、軸方向の端部53a、53bが貫通孔92e、92fの傾斜部92g、92hにかしめ固定されるローラ軸53と、ローラ軸53の外周部53eに回転自在に設けられ、カム8に摺接するローラ54とを備え、貫通孔92e、92fの外方のリフタ本体92に貫通孔96、97、98、99を形成し、ローラ軸53の端部53a、53bをリフタ本体92にかしめ固定したときに、貫通孔96、97、98、99を変形させるよう構成されている。
この場合、ローラ軸53の端部53aが貫通孔92eの傾斜部92gにかしめ固定される際にリフタ本体92に生ずる水平方向の分力Fhは、貫通孔96、97の側面部が変形するので、貫通孔96、97で遮断される。すなわち、水平方向の分力Fhの遮断によりリフタ本体92には分力Fhが作用しない。その結果、分力Fhは、貫通孔96、97における変形した側面部と対向する側面部に作用しないので、リフタ本体92の貫通孔97側の湾曲部92aおよび貫通孔96側の湾曲部92bに分力Fhが作用せず、湾曲部92aおよび湾曲部92bが変形することが防止される。このように、リフタ本体92に貫通孔96、97を設けるだけの簡単な構造により、リフタ本体92にローラ軸53をかしめ固定する際に生ずるリフタ本体92の応力を貫通孔96、97で充分に吸収することができ、リフタ本体92が変形するのを好適に防止できるリフタのかしめ構造を提供することができる。本実施の形態に係るリフタのかしめ構造20においては、本発明に係るリフタのかしめ構造の凹部が長方形の貫通孔で形成されているので、加工が簡単であるという効果が得られる。
本実施の形態に係るリフタのかしめ構造20においては、凹部を貫通孔96、97、98、99で形成した場合について説明したが、凹部を貫通孔に代えて所定の深さを有する有底の溝で形成してもよい。
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態のリフタのかしめ構造30におけるリフタ101を示し、図9(a)は、リフタ101の平面図であり、図9(b)は、図9(a)のC−C矢視断面を示す断面図である。
なお、第3の実施の形態に係る燃料ポンプ3においては、第2の実施の形態に係る燃料ポンプ3のリフタ91に代えてリフタ101を形成した点が異なっているが、他の構成は同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1から図5(a)、(b)に示した第1の実施の形態および図6(a)、(b)から図8(a)、(b)に示した第2の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
本発明の実施の形態に係るリフタのかしめ構造30は、第2の実施の形態における燃料ポンプと同様の燃料ポンプ3を構成するとともに、第2の実施の形態と同様に、燃料ポンプ3は、車両の燃料供給装置1を構成しており、この車両は、例えば、筒内直噴型4気筒のガソリンエンジンで構成されている。
図9(a)、(b)に示すように、リフタ101は、リフタ本体92と、ローラ軸103と、ローラ54と、ローラ軸103にローラ54を固定する固定リング55、56とを含んで構成されている。
ローラ軸103は、第1の実施の形態と同様、金属材料からなり、外径D1およびリフタ本体92の平坦部92cと平坦部92dとの間の距離と略同一の長さを有する円柱体で形成されており、その両端部が貫通孔92eおよび貫通孔92fに挿通されるようになっている。ローラ軸103の端部103a側には、ローラ軸103の軸線を中心とする半径r2、幅W6、深さL1の溝103cが円弧状に形成されるとともに、溝103cと距離L6だけ離隔して、半径r2、幅W6、深さL1の溝103dが円弧状に形成されている。ローラ軸103の端部103b側にも、同様にローラ軸103の軸線を中心とする半径r2、幅W6、深さL1の溝103eが円弧状に形成されるとともに、溝103eと距離L6だけ離隔して、半径r2、幅W6、深さL1の溝103fが円弧状に形成されている。
また、ローラ軸103の端部103aの円周部には溝が形成されており固定リング55が係合するようになっている。ローラ軸103の端部103bの円周部にも、溝が形成されており固定リング56が係合するようになっている。
ローラ軸103における半径r2、深さL1、距離L6、幅W6などの各寸法については、燃料ポンプ3の大きさ、形状および構造やポンプ特性などの設計条件に基づいて適宜選択される。
次に、本実施の形態のリフタのかしめ構造30における、リフタ本体92とローラ軸103とのかしめ方法およびその作用について説明する。
まず、第1の実施の形態と同様に、リフタ本体92、ローラ54およびローラ軸103を組み立てて固定治具に固定しその固定治具を基盤上にセットする。
この状態で、図示しないかしめ工具の先端部を、ローラ軸103の溝103c、103dに当接させ溝103c、103dの各縁部における許容応力(MPa)を超える所定の荷重Fk(N)で押圧する。このとき、溝103c、103dの側面部および底面部に荷重Fkが分散され、水平方向の分力Fh(N)がリフタ本体92に放射状に作用し、ローラ軸103の溝103c側の縁部と、溝103d側の縁部とが、リフタ本体92の傾斜部92g方向にそれぞれ塑性変形し、溝103c側の縁部および溝103d側の縁部と傾斜部92gとが係合する。各縁部と傾斜部92gとが係合するとき、リフタ本体92の係合部分には、水平方向の分力Fhとこれに直交する方向の分力Fv(N)が作用する。リフタ本体92に分力Fhが作用すると、第2の実施の形態と同様に、点P3の近傍を支点として、貫通孔97の側面部に曲げモーメントM1(Nm)が作用し、貫通孔97の側面部が変形する。
その結果、分力Fhは、貫通孔97における変形した側面部と対向する側面部に作用しないので、リフタ本体92の湾曲部92aに分力Fhが作用せず、湾曲部92aが変形することはない。平坦部92cの貫通孔96においても、貫通孔97における作用と同様に貫通孔96により分力Fhがリフタ本体92に作用しないので、湾曲部92bが変形することはない。
他方、リフタ本体92に分力Fvが作用すると、第2の実施の形態と同様に、点P4の近傍を支点として、リフタ本体92に曲げモーメントM2(Nm)が作用する。このとき、リフタ本体92には、曲げモーメントM2に抗する応力(MPa)が発生するが、リフタ本体92の貫通孔92eの内壁面部と、ローラ軸103の外周面103eとが、t−L3の幅で当接しているので、ローラ軸103にも曲げモーメントM2に抗する応力が発生する。その結果、リフタ本体92に発生する曲げモーメントM2に抗する応力は、リフタ本体92とローラ軸103とに分散されて小さくなり、リフタ本体92の軸方向の変形量は許容しうる微小な量に留まる。なお、リフタ本体92に発生する曲げモーメントM2に抗する応力が、リフタ本体92の許容応力を超えて、リフタ本体92がその軸方向に塑性変形しても、その塑性変形は、点P3の近傍を支点として曲げられるので、リフタ本体92の湾曲部92aにこの応力は作用せず、湾曲部92aが塑性変形することはない。また、平坦部92cの貫通孔96も貫通孔97と同様に作用し、湾曲部92aと対向する湾曲部92bも塑性変形することはない。
第2の実施の形態と同様に、リフタ本体92の平坦部92cにおけるかしめ固定が完了すると、リフタ91を固定治具から離脱させ、平坦部92dが上方に向くよう、リフタ91全体を固定治具に再固定し、リフタ91全体がかしめ固定時に移動しないよう固定治具を図示しない基盤上にセットする。この状態で、平坦部92cにおけるかしめ固定と同様に、かしめ工具の先端部を、ローラ軸103の溝103e、103fに当接させ所定の荷重Fk(N)で押圧し、リフタ本体92にローラ軸103をかしめ固定する。この場合、リフタ91を固定治具から離脱させ、リフタ91を反転させて、リフタ91全体を固定治具に再固定する方法に代えて、リフタ91が固定されている固定治具自体を反転させて、残りの平坦部92dにおけるかしめ固定を実施してもよい。また、上下方向から一斉にかしめ固定するようにしてもよい。
このように、本実施の形態に係るリフタのかしめ構造30は、燃料ポンプ3に設けられ、カム8に押圧されてリフタガイド41の内周面41aを往復移動することにより、シリンダ43内に設けられたプランジャ45を往復移動させて高圧燃料を吐出させるリフタ91のかしめ構造であって、リフタ91が、リフタガイド41の内周面41aに沿って摺動自在に設けられ、この摺動方向と略直交する方向に貫通孔92e、92fを有するリフタ本体92と、貫通孔92e、92fに挿通され、軸方向の端部103a、103bが貫通孔92e、92fの傾斜部92g、92hにかしめ固定されるローラ軸103と、ローラ軸103の外周部103gに回転自在に設けられ、カム8に摺接するローラ54とを備え、貫通孔92e、92fの外方のリフタ本体92に貫通孔96、97、98、99を形成し、ローラ軸103の端部103a、103bをリフタ本体92にかしめ固定したときに、貫通孔96、97、98、99を変形させるよう構成されている。
この場合、ローラ軸103の端部103aが貫通孔92eの傾斜部92gにかしめ固定される際にリフタ本体92に生ずる水平方向の分力Fhは、貫通孔96、97の側面部が変形するので、貫通孔96、97で遮断される。すなわち、水平方向の分力Fhの遮断によりリフタ本体92には分力Fhが作用しない。その結果、分力Fhは、貫通孔96、97における変形した側面部と対向する側面部に作用しないので、リフタ本体92の湾曲部92aに分力Fhが作用せず、湾曲部92aが変形することが防止される。このように、リフタ本体92に貫通孔96、97を設けるだけの簡単な構造により、リフタ本体92にローラ軸103をかしめ固定する際に生ずるリフタ本体92の応力を貫通孔96、97で充分に吸収することができ、リフタ本体92が変形するのを好適に防止できるリフタのかしめ構造を提供することができる。
本実施の形態に係るリフタのかしめ構造30においては、本発明に係るリフタのかしめ構造の凹部が長方形の貫通孔で形成されているので、加工が簡単であり、また、ローラ軸の溝がリフタ本体の軸方向で対向する2箇所に形成され、円環状に形成されていないので、かしめ工具による溝への押圧力が少なくても、ローラ軸をリフタ本体にかしめ固定することができるという効果が得られる。
本実施の形態に係るリフタのかしめ構造30においては、凹部を貫通孔96、97、98、99で形成した場合について説明したが、貫通孔に代えて所定の深さを有する有底の溝で形成してもよい。
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の第4実施の形態のリフタのかしめ構造40におけるリフタ51を示し、図10(a)は、リフタ51にかしめ治具151を装着した状態の平面図であり、図10(b)は、図10(a)のC−C矢視断面を示す断面図である。
図11は、本発明の第4の実施の形態のリフタのかしめ構造40に使用するかしめ治具151を示し、図11(a)は、かしめ治具151の平面図を示し、図11(b)は、図11(a)E−E矢視断面を示す断面図である。
図12は、本発明の第4の実施の形態のリフタのかしめ構造40におけるリフタ51を示し、図12(a)は、リフタ51にかしめ治具151が装着された状態を示す部分拡大断面図であり、図12(b)は、リフタ本体52とローラ軸53との係合部の分力を示す部分拡大断面図であり、図13は、本発明の第4の実施の形態のリフタのかしめ構造40におけるかしめ固定が完了した状態を示す部分拡大断面図である。
なお、第4の実施の形態に係るリフタのかしめ構造40においては、かしめ方法が第1の実施の形態に係るリフタのかしめ構造10のかしめ方法と異なっているが、他の構成自体は第1の実施の形態と同様に構成されている。したがって、同一の構成については、図1から図5(a)、(b)に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
図10に示すように、本発明の実施の形態に係るリフタのかしめ構造40は、構成自体は、第1の実施の形態のリフタのかしめ構造10と同様に構成されている。
本実施の形態のリフタのかしめ構造40におけるかしめ治具151を使用したリフタ本体52とローラ軸53とのかしめ方法およびその作用について説明する。
図11に示すように、かしめ治具151は、高い剛性を有する金属材料などからなり、厚みL7を有する本体部151aと、リフタ本体52を保持する突起部151bとを有し円盤状に形成されている。この突起部151bは、リフタ本体52およびローラ軸53の許容応力(MPa)よりも大きい許容応力を有しており、リフタ本体52とローラ軸53とをかしめ固定する際に、変形しないようになっている。
本体部151aには、貫通孔151cが形成されており、かしめ工具が挿通されるようになっている。突起部151bは、内径D8、幅W8、高さL8の環状の突起を有している。この内径D8は、図10(b)に示すリフタ本体52に形成された溝57の内壁面の内径よりも僅かに大きく形成されており、突起部151bが、リフタ本体52の溝57に挿通されたとき、溝57の内壁面に当接してその内壁面が変形しないよう保持するようになっている。
まず、第1の実施の形態と同様に、リフタ本体52、ローラ54およびローラ軸53を組み立てて固定治具に固定しその固定治具を基盤上にセットする。
この状態で、図12(a)に示すように、かしめ治具151の突起部151bを、リフタ本体52の溝57に挿入してかしめ治具151をリフタ本体52に装着する。
次いで、図示しないかしめ工具の先端部をかしめ治具151の貫通孔151cに挿通させ、ローラ軸53の溝53cに当接させて周縁部53fの許容応力を超える所定の荷重Fk(N)で押圧する。このとき、図12(b)に示すように、溝53cの内壁面部に荷重Fkが分散され、水平方向の分力Fh(N)が白抜きの矢印で示す方向で、リフタ本体52に作用し、ローラ軸53の周縁部53fが、リフタ本体52の傾斜部52g方向に塑性変形し、周縁部53fと傾斜部52gとが係合する。リフタ本体52に作用する水平方向の分力Fhは、かしめ治具151の突起部151bに作用し、突起部151bの内部に生ずる応力と均衡する。
その結果、分力Fhは、傾斜部52gと溝57における突起部151bとの間で作用し、傾斜部52gと溝57における突起部151bとの間で変形が生ずることがあるが、突起部151bで保持された側面部と対向する側面部側に作用しないので、リフタ本体52の湾曲部52aに分力Fhが作用せず、湾曲部52aが変形することはない。溝57は円環状になっているので、湾曲部52aと対向する湾曲部52bも変形することはない。
他方、リフタ本体52に分力Fhと直交する分力が作用しても、リフタ本体52が、かしめ治具151およびローラ軸53により固定されているので、直交する分力に抗する応力がリフタ本体52に発生しても、直交する分力と、この分力に抗する応力が均衡し、リフタ本体52は全く変形しない。
リフタ本体52の平坦部52cにおけるかしめ固定が完了すると、かしめ治具151を離脱させるとともに、リフタ51を固定治具から離脱させ、平坦部52dが上方に向くよう、リフタ51全体を固定治具に固定し、リフタ51全体がかしめ固定時に移動しないよう固定治具を図示しない基盤上にセットする。この状態で、平坦部52cにおけるかしめ固定と同様に、かしめ工具の先端部を、ローラ軸53の溝53dに当接させ所定の荷重Fk(N)で押圧し、リフタ本体52にローラ軸53をかしめ固定する。この場合、リフタ51を固定治具から離脱させ、リフタ51を反転させて、リフタ51全体を固定治具に再固定する方法に代えて、リフタ51が固定されている固定治具自体を反転させて、残りの平坦部52dにおけるかしめ固定を実施してもよい。また、上下方向から一斉にかしめ固定するようにしてもよい。
このように、本実施の形態に係るリフタのかしめ構造40においては、リフタ本体52とローラ軸53とを固定する際にかしめ治具151を使用しているので、かしめ固定する際に、リフタ本体52が全く変形しない。また、リフタ本体52に形成された凹部にかしめ治具151を装着するだけで簡単にかしめ固定ができ、リフタ本体52の変形を確実に防止することができる。
第1ないし第4の実施の形態に係るリフタのかしめ構造10、20、30、40においては、これらの構造が燃料ポンプ3を構成する場合について説明したが、燃料ポンプ以外のものでもよい。例えば、かしめ固定により生ずる変形を防止することが必要な電子制御弁、ウインドレギュレータなどのかしめ構造であってもよい。
また、リフタ51、91、101におけるローラを針状ころ軸受で構成する場合について説明したが、他のもので構成してもよい。例えば、玉軸受、円筒軸受などのころ軸受でもよく、円柱を玉軸受などの軸受を介して回転させるようにしたものでもよい。
また、リフタ51、91、101を排気カムシャフト18に固定したカム8により往復移動させる場合について説明したが、他のシャフトであってもよい。例えば、吸気カムシャフトであってもよい。
以上説明したように、本発明によれば、リフタにローラ軸をかしめ固定する際に生ずる分力を、凹部により遮断することができ、リフタが変形するのを防止できるリフタのかしめ構造を提供することができるという効果を奏し、燃料ポンプなどのリフタのかしめ構造全般に有用である。