JP4787731B2 - プラスチック光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
加熱延伸処理を施すと、POFを構成する樹脂の分子鎖が延伸方向に分子配向するため、POFの機械的強度を向上させることができる。しかし、加熱延伸処理後のPOF内部には、この分子配向とは異なる残留歪み、すなわち残留応力もそのまま凍結されてしまう。そのため、このような状態のPOFが芯材のガラス転移温度(Tgc)近傍に再度加熱されると、凍結されていた残留応力が開放されるために、POFが大きく収縮を起こし、それにともない機械的強度と光学特性が低下してしまう。
POFの走行速度の高速化に対応したPOFの残留応力緩和処理方法には、従来、加熱炉内の高温化、加熱炉内の加熱気体の風速アップによる加熱効率の向上(特許文献1)、加熱炉長の延長、あるいは加熱気体の流動状態の工夫等が試みられてきた。
加熱炉長の延長は、加熱炉内の通過時間が長いので、POFの残留応力緩和処理を充分に施すことができる。しかしながら、この方法によると、加熱炉前後でPOFを支持するガイド間の距離が長くなり、加熱炉内でのPOFの揺動、垂下が増大し、POFが加熱炉内で垂れ落ち易かった。特に、POFの残留応力緩和処理では、POFには加熱延伸処理のような高い張力を作用させられないため、POFの揺動や垂下が延伸処理時に比べて増大し易かった。また、加熱炉長の延長は、設備の設置空間や設備費の増大を生じてしまう。
図1に示すように、本実施形態の残留応力緩和用熱処理装置3は主に、POF1を加熱するための加熱炉2と、POF1を加熱炉2に送るための供給機6と、POF1を加熱炉2から引き出すための引き出し機7から構成される。
加熱炉2には、加熱炉2内に加熱気体を送り込むためのエアーノズルマニホールド4と、POF1に赤外線を照射するための赤外線放射体5が配置されている。
熱処理を施すPOF1としては、芯−鞘構造、あるいは鞘の外周に保護層を被覆した芯−鞘−保護層構造が挙げられる。
POFの残留応力緩和処理には、POF1にできるだけ張力を加えない事が好ましいため、図2に示す残留応力緩和用熱処理装置10が好ましく用いられる。残留応力緩和用熱処理装置10であれば、搬送部材8がPOF1を支持するので、POF1を無張力の状態で熱処理することができる。なお、搬送部材8としては、コンベアベルト等が挙げられる。
赤外線放射体5の構造は特に限定しないが、例えば、内部に電熱線を有する構造や、内部に気体や液体の熱媒体を循環させる経路を有する構造が挙げられる。赤外線放射体5の表面温度を所望する温度に設定できるものであれば特に好ましい。これらの構造を有していれば、赤外線をより広範囲の面積に、より均一に照射できるため好ましい。
赤外線放射体5の形状は特に限定はしないが、例えば、プレート状や、パイプ状が挙げられる。中でもプレート状は、パイプ状に比べて放射面積が広いので、広範囲にわたって均一に赤外線を照射できるため好ましい。
エアーノズルマニホールド4および赤外線放射体5の配置数は特に制限せず、加熱炉長等の諸条件により適宜変更される。また、エアーノズルマニホールド4と赤外線放射体5の配置順序は特に制限しないが、図3に示すように、交互に配置されていることが好ましい。なお、エアーノズルマニホールド4に配置されている温調気体供給ノズル11の配置数は1個、あるいは図3に示すように複数個設けられていてもよい。なお、温調気体供給ノズル11のノズル形状は、図3に示すように丸穴でもよく、その他の形状でもよい。
加熱気体の種類は特に限定しないが、例えば、空気等の酸素含有の活性気体や、窒素やアルゴン等の不活性気体が挙げられる。なお、加熱気体は、POF1表面への異物の付着防止や、加熱炉2内を清浄に保つため、エアーフィルターでろ過した後に、加熱炉2内へ供給されるのが好ましい。
加熱炉2内の雰囲気の風速は、加熱炉2内の雰囲気が均一な温度になるようであれば特に限定しない。雰囲気の風速が速いほど、加熱炉2内の雰囲気が均一な温度になり易いが、POF1の近傍においては25m/s以下であることが、POF1の揺動が抑えられるので好ましい。
雰囲気の温度は、POF1の芯材のTgc未満が好ましい。雰囲気の温度がPOF1の芯材のTgc未満であれば、加熱延伸処理でPOFに付与された分子配向が、雰囲気の温度によって解除されることを防ぐことができる。
雰囲気の温度をより均一にする方法としては、例えば、加熱炉2の外壁に保温材を配置する、攪拌ペラを加熱炉2内へ配置して雰囲気を攪拌する、加熱炉2の出入口に配置したエアーカーテンから出入口の鉛直方向に向けて温調したエアーを吹き付ける方法が挙げられる。これらの方法は、単独で実施してもよく、併用してもよい。
(熱収縮率の測定)
POF1に実施例と比較例による残留応力緩和処理を施した後、これらのPOF1に1m(L0)間隔で目印を付け、90℃に設定した乾熱乾燥機内に、乾燥機内壁に触れないように静置した。24時間後、POF1を取り出し、室温(約20℃)まで放冷した後、再度目印の間隔(L1)を測定し、L0およびL1から下式(1)にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=〔(L0−L1)/L0〕×100 (1)
実施例および比較例のPOF1には、三菱レイヨン株式会社製プラスチック光ファイバGK40B(帯域40MHz、伝送損失150dB以下/km)をそれぞれ30m用いた。なお、該プラスチック光ファイバには、144℃、延伸倍率200%にて加熱延伸処理が施されている。
POF1の残留応力緩和処理に用いた図2の残留応力緩和用熱処理装置10は、加熱炉長1mの加熱炉2と、搬送部材8に該当するコンベアベルト(メッシュ状コンベアベルト 開孔率20%、基材:ガラス繊維、表面コーティング:PTFE)を主な構成物とした。
加熱炉2の外壁には保温材を配置し、熱炉2内には、複数個のエアーノズルマニホールド4と、複数個の赤外線放射体5を配置した。なお、赤外線放射体5にはプレート状のセラミックスヒーター(遠赤外線セラミックプレートヒーター 型式:PLC−322 200W電熱線内蔵 株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を使用した。
エアーノズルマニホールド4と赤外線放射体5は、図3に示すように交互に配置した。エアーノズルマニホールド4には、複数個の加熱気体供給ノズル11(φ1)を設けた。また、エアーノズルマニホールド4の長手方向が、搬送部材8の走行方向に対して直角になるよう配置した。
加熱気体の製造および加熱炉2への加熱気体の供給には、熱風発生機(電気式熱風発生機 型式:TSK−61 株式会社竹綱製作所製)を用いた。なお、該熱風発生機から加熱炉内への加熱気体の供給量は約15m3/minであった。加熱気体供給ノズル11付近の風速は、4m/s(測定器:風速計 型式:6511 日本カノマックス株式会社製)とした。なお、図示していないが、加熱炉内の雰囲気温度を均一化させるために、雰囲気撹拌用ノズル(φ4.5)を加熱炉2内の適所に複数個配置した。なお、該雰囲気撹拌用ノズル付近の風速は、18m/sであった。
<実施例>
実施例は、加熱炉2内の雰囲気温度を107±2℃、赤外線放射体5の表面温度を155℃に設定し、POF1を走行させながら残留応力緩和処理を施した後、熱収縮率を測定した。熱処理条件および結果を表1に示す。
<比較例>
比較例は、赤外線放射体5を配置しないことを除き、実施例と同様の条件で残留応力緩和処理を施した後、熱収縮率を測定した。熱処理条件および結果を表1に示す。
表1に示すとおり、実施例は、同じ熱処理時間においての熱収縮率が、比較例より低い値を示した。熱収縮率が低いほど、POF1の残留応力がより緩和されていることを示している。よって、実施例は、機械的強度と光学特性の低下が比較例より少ないことが確認できた。
例として、POFの熱収縮率が0.25%に達するのに必要な加熱炉長を、POFの走行速度を20m/minとした場合で求めたところ、実施例で17m(L2)、比較例で22.7m(L3)となった。したがって、加熱炉長の短縮長さは5.7m(L3−L2)と算出され、加熱炉の短縮効果は約25%〔(L3−L2)/L3×100)〕であると求められた。よって、伝送損失は未処理品とほぼ同程度で設備の占有面積を大幅に縮小することが可能となった。
2 加熱炉
3 残留応力緩和用熱処理装置(POF非接触式)
4 エアーノズルマニホールド
5 赤外線放射体
6 供給機
7 引き出し機
8 搬送部材
9 支持部材
10 残留応力緩和用熱処理装置(POF接触式)
11 加熱気体供給ノズル
Claims (2)
- 加熱延伸処理後のプラスチック光ファイバを加熱炉内を走行する搬送部材で支持しつつ、該プラスチック光ファイバに赤外線波長領域の電磁波を照射する熱処理を施すことを特徴とするプラスチック光ファイバの製造方法。
- 前記赤外線波長領域の電磁波の照射を、温調された雰囲気内で行うことを特徴とする請求項1に記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
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