JP4787007B2 - 尿素製造プラント用二相ステンレス鋼、溶接材料及び尿素製造プラント - Google Patents

尿素製造プラント用二相ステンレス鋼、溶接材料及び尿素製造プラント Download PDF

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Description

本発明は、尿素製造プラント用の二相ステンレス鋼、およびその溶接構造物製造のための溶接材料に関する。本発明の二相ステンレス鋼は、尿素製造プラントの環境においてきわめて優れた耐食性を有する。本発明はまた、ストリッパー管、コンデンサー管等の少なくとも一つが上記の二相ステンレス鋼からなる尿素製造プラントに関する。
尿素製造プラントでは、アンモニア−カーバメイトという腐食性の強い中間物質が生成するので、プラント構成材料には高度の耐食性が必要である。従来、このような部材用の鋼材として、JISのSUS316系等のオーステナイト系ステンレス鋼が使用されてきたが、近年、SUS329系の二相ステンレス鋼がこの用途に使用されるようになっている。
フェライト相およびオーステナイト相からなる二相ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比較して安価でありながら耐食性も優れている。二相ステンレス鋼として代表的なものはSUS329J3LまたはSUS329J4Lに規定されるNi−Cr−Mo−N系の鋼である。そして、尿素製造プラントの材料として用いるために、このような成分系の鋼を基本として、耐食性その他の性質を改良した二相ステンレス鋼が下記のようにいくつか提案されている。
特許文献1(特表平8-511829号公報)では、尿素製造プラントでの使用を意図した二相ステンレス鋼が提案されている。その鋼は、Ni:3〜10%、Cr:28〜35%、Mo:1.0〜4.0%およびN:0.2〜0.6%を主な合金成分とする二相ステンレス鋼でヒューイ試験(Huey test) での優れた耐食性を有している。同公報に記載の発明は、W含有量を最大2.0%まで許容するとされているが、実際にWを含む鋼は開示されていない。そればかりか、Wは、金属間化合物の析出を促進する元素であるので、添加を回避すべきである旨、記載されている。更に、耐食性の観点からCrを28%以上させることとしており、また、Cuは1.0%まで含有されていてもよいとされている。
二相ステンレス鋼の問題点の一つは、シグマ相(σ相)の生成である。シグマ相は、600〜850℃程度の温度で加熱されたときに生成する金属間化合物であり、これが生成すると鋼の硬さが増加して脆化するだけでなく耐食性も劣化する。尿素製造プラント等では、構成材料の溶接や熱間曲げ加工において、特定の熱影響をうける部分(以下「熱影響部」と記し、特に溶接の熱影響部をHAZと記す。)があり、そこにシグマ相が生成すると、局部的に耐食性の劣る部位ができてしまう。熱影響部の耐食性は、鋼中のシグマ相の析出量によって変動し、シグマ相の析出量が多くなるほど劣化する。従って、熱影響部の存在が避けられない部材として使用される二相ステンレス鋼においては、シグマ相が生成し難い合金設計が求められる。
尿素製造プラントの構成部材としては、一般に鋼管や鋼板が使用される。これらの鋼管および鋼板は、鍛造、押出、圧延等の熱間加工により、あるいは更に冷間加工を施して製造される。二相ステンレス鋼の熱間加工においては、素材の加熱温度の上昇に伴い鋼中のフェライト量が増加し、その後の加工においてフェライト粒の不均一変形に起因するリジングが発生する。このため製品の表面にしわ疵が残る。
特に、上記の特許文献1に提案されているような、Crを多量に含有する二相ステンレス鋼は、加熱によってフェライト量の増加が促進される。リジングを防ぐには、このフェライト量を抑える合金設計もあわせて考える必要がある。
特許文献2(米国特許第6,312,532号公報)では、優れた熱間加工性とともに塩化物環境や酸液中での優れた耐食性、さらに優れた組織安定性を有する二相ステンレス鋼が開示されている。その鋼の主な合金成分は、Ni:3.0〜10.0%、Cr:27.0〜35.0%、Mo:0〜3.0%、W:2.0〜5.0%、Cu:0.5〜3.0%およびN:0.30〜0.55%である。この二相ステンレス鋼は、耐食性と機械的性質を兼ね備えさせるためにCuおよびWをともに含有させている。しかし、後に詳述するとおり、Cuを含有させると、尿素液中に存在するアンモニアと錯イオンを形成して腐食を進行させるので、尿素製造プラント環境で使用する場合には十分な耐食性が得られない。
上記の特許文献に開示される合金は、溶接性(溶接部の耐食性)に配慮して成分設計がなされたものではない。また、上記の特許文献には優れた耐食性を持つ溶接金属、およびその溶接金属を得るための溶接材料に関する記載がまったくない。実用材料としては、母材の性能のみならず、溶接部の性能においても優れていなければならず、特に尿素製造プラント用機器では溶接部の耐食性について充分な配慮が必要である。
特許文献3(特開2003-301241号公報)には、尿素製造プラント用二相ステンレス鋼が開示されている。しかしながら、この特許文献3に開示される合金は、N(窒素)の含有量が高いために、熱影響部で窒化物が生じやすく、溶接条件と使用する腐食環境によっては耐食性の劣化が生じる。
特許文献4(特開2005-036313号公報)には、Nの含有量が上記の合金よりも少なく、Wを含む二相ステンレス鋼が開示されている。この鋼では、Ni:5.0〜9.0%、Cr:23.0〜27.0%、Mo:2.0〜4.0%、W:1.5%超え5.0%以下、N:0.24〜0.35%とされ、かつ、「Mo+1.1Ni≦12.5」、「Mo−0.8Ni≦−1.6」とされており、特に、「Mo−0.8Ni≦−1.6」とすることでHAZでの窒化物の析出が抑制できることが開示されている。しかし、この鋼は尿素製造プラントに用いることを意図したものではない。
さらに特許文献5(WO2005/014872A1号公報)には、Cr:18〜32%、Ni:4〜12%、N:0.05〜0.4%等、Cr、NiおよびNの広い含有量の範囲を前提とする二相ステンレス鋼が開示されている。この鋼は、Mgの必須添加と、介在物の組成と密度を制御することとで耐孔食性が改善されており、耐海水腐食性に優れたものである。しかしながら、尿素プラント用の材料として必要な耐全面腐食性、耐粒界腐食性においては、必ずしも十分ではない。
特表平8−511829号公報 米国特許第6,312,532号公報 特開2003−301241号公報 特開2005−36313号公報 WO2005/014872 A1号公報
本発明の第一の目的は、尿素製造プラントの環境下で著しく耐食性に優れ、尿素製造装置の各種機器の材料として好適な二相ステンレス鋼を提供することにある。
本発明の第二の目的は、尿素製造プラントの機器の溶接に適する溶接材料を提供することにある。
本発明の第三の目的は、ストリッパー管、コンデンサー管、反応器および配管の少なくとも一つが耐食性に著しく優れた二相ステンレス鋼からなる尿素製造プラントを提供することにある。
本発明は、下記(1)および(2)の二相ステンレス鋼、(3)の溶接材料および(4)の尿素製造プラントを要旨とする。
(1)質量%で、C:0.03%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.003%以下、Cr:26.0%以上で28.0%未満、Ni:6.0〜12.0%、Mo:0.2〜1.7%、W:2.0%を超え3.0%まで、およびN:0.07%を超えて0.30%までを含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのCuが0.18%以下、Alが0.05%以下およびO(酸素)が0.01%以下であって、下記(1)式を満たすことを特徴とする尿素製造プラント用二相ステンレス鋼。
Cr2×(N−0.005Ni)−170≦0 ・・・・(1)
ただし、式中のCr、NおよびNiは、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
(2)質量%で、C:0.03%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.003%以下、Cr:26.0%以上で28.0%未満、Ni:6.0〜12.0%、Mo:0.2〜1.7%、W:2.0%を超え3.0%まで、N:0.07%を超えて0.30%まで、ならびにCa:0.0001〜0.01%およびB:0.0001〜0.01%の中から選択される一種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのCuが0.3%以下、Alが0.05%以下およびO(酸素)が0.01%以下であって、下記(1)式を満たすことを特徴とする尿素製造プラント用二相ステンレス鋼。
Cr2×(N−0.005Ni)−170≦0 ・・・・(1)
ただし、式中のCr、NおよびNiは、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
(3)上記(1)または(2)に記載の二相ステンレス鋼からなることを特徴とする溶接材料。
(4)ストリッパー管、コンデンサー管、反応器および配管の少なくとも一つが上記(1)または(2)に記載の二相ステンレス鋼からなることを特徴とする溶接材料。
本発明の二相ステンレス鋼は、HAZをはじめとする熱影響部においても優れた耐食性を有するので、尿素製造装置の各種機器用の材料としてきわめて有用である。また、本発明の溶接材料を使用すれば、優れた耐食性を持つ溶接金属を形成することができる。
尿素製造プラントの環境において、溶接継手のHAZでも優れた耐食性を得るために重要なことは、HAZでの粒界への微細な窒化物の析出を抑制することである。
HAZでの窒化物の生成抑制については、前記の特許文献4に述べられているが、その文献に開示される鋼は、27%以下の低Crで、かつ2%以上の高Moを前提とするものである。さらに、その鋼は、海水等の塩化物環境での耐孔食性に優れたものである。しかし、Nと結合して窒化物を形成する根本であるCrの含有量が多く、加えて全面腐食と粒界腐食が主に発生する尿素プラント環境では、粒界への微細な窒化物析出が影響するため、HAZは必ずしも優れた耐食性を持ち得ない。
また、尿素製造プラント用二相ステンレス鋼としては、前記の特許文献3に開示されているものがある。しかしながら、この特許文献3に示される合金は、Nの含有量が高いためHAZで窒化物が生じやすく、溶接条件と使用する腐食環境によっては耐食性の劣化が生じる。
そこで、本発明者らは、Crが26%以上で、かつMoが2%以下の二相ステンレス鋼のHAZでの窒化物形成抑制による粒界腐食防止に有効な対策を探求した。その結果、Nの含有量を0.3%以下に抑えることが必要であることが明らかになった。併せて、前記の(1)式、即ち、Cr2×(N−0.005Ni)−170≦0を満たすことが必要であることを見出した。
この(1)式の物理的意味およびその導出過程は下記のとおりである。
窒化物の析出駆動力は、短時間で拡散しうる500℃以上の温度域でのNの固溶度と拡散速度とに左右される。Niの添加は、フェライト相のみとなる融点直下に加熱された状態から冷却される過程で、析出するオーステナイト相の析出開始温度を高める。高温でオーステナイト相が析出するということは、過飽和に存在するフェライト相中のNが、より短時間でNの固溶度の高いオーステナイト相側に移動することを意味する。このことは、さらに、オーステナイト相の成長を促し、冷却の進行とともに高まるフェライト相中でのNの過飽和度の緩和に有効に寄与する。
上記の作用効果の結果として、窒化物の析出が抑制されるのである。また粒界腐食の防止には、特にフェライト相中よりもフェライト/オーステナイト粒界での窒化物析出を選択的に抑制することが有効であることも明らかになった。
26%以上のCrを含有する高Cr鋼では、Cr含有量がオーステナイト相の析出開始温度を高めることに大きく寄与する。また、Crの存在そのものがNのフェライト相中の溶解度に大きく影響する。その結果としてNの含有量そのものの影響が大きくなるのである。加えて、Cr含有量の2乗とN含有量の積が大きいほど、窒化物は粒界に析出しやすくなるため、窒化物析出の抑制には、この積の値を小さくすることが有効であることも新たに判明した。
それらの影響度を定量的に評価した結果、HAZでの窒素の過飽和度は、「N−k/Cr2」で評価でき、この過飽和度が、過飽和度緩和ポテンシャルから決まる限界値fを下回るようにすること、すなわち、下記の(2)式を満たすことが窒化物抑制に有効であること、また、この限界値fはNiの関数であることが明らかになった。
N−(k/Cr2)<f(Ni) ・・・・(2)
この式のN、CrおよびNiは、それぞれN(窒素)、CrおよびNiの含有量(質量%)である。また、kは、物理的には溶接熱サイクル過程での平均的な溶解度積を意味する定数であり、実験によりf(Ni)と合わせて決定することによって(1)式が得られる。種々の試験により、kの値およびf(Ni)の関数形を決定し、式変形することで前記の(1)式が得られた。
以下、本発明の二相ステンレス鋼における各成分の作用効果と、それらの含有量の限定理由を説明する。以下の記載において、成分含有量の%は、質量%を意味する。
C:0.03%以下
Cは、オーステナイト生成元素であり、強度を向上させるのに有効な元素であるが、その含有量が多すぎると、熱影響部に炭化物が析出し、耐食性を低下させる。従って、本発明では、Cを不純物として、その許容上限を0.03%とした。これ以下でできるだけ少なくするのが望ましい。
Si:0.5%以下
Siは、溶鋼の脱酸に有効な元素であるが、その含有量が多すぎると、耐食性を低下させる。従って、製鋼時に脱酸剤として添加するのは差し支えないが、含有量(鋼中残留量)は0.5%以下に抑えるべきである。含有量は不純物レベルでもよい。
Mn:2.0%以下
Mnも溶鋼の脱酸に有効な元素であるが、その含有量が2.0%を超えると耐食性の劣化を招く。従って、Mnの含有量は2.0%以下とすべきである。下限は不純物レベルでもよい。
P:0.04%以下
Pは、鋼の熱間加工性や機械的性質に悪影響を及ぼす不純物である。さらにステンレス鋼では粒界偏析によって耐食性を低下させる。0.04%は不純物としての許容上限であり、これ以下で、できるだけ少ない方がよい。
S:0.003%以下
Sも鋼の加工性その他に悪影響を及ぼす不純物である。また、Pと同じく粒界偏析によってステンレス鋼の耐食性を損なう。従って、Sの含有量は0.003%以下で可能なかぎり少ない方がよい。
Cr:26.0%以上で28.0%未満
Crは、フェライト生成元素であるとともに、耐食性を向上させる二相ステンレス鋼の基本成分の一つである。その含有量が26.0%未満では特に尿素製造プラントのような厳しい腐食環境に耐える耐食性が十分でない。一方、その含有量が過剰な場合、溶接響部相当の熱履歴を受けたときにシグマ相の析出が多くなり硬さが増すので、熱影響部における耐食性が低下する。また、Cr含有量が28.0%以上になると、熱間加工においてフェライト粒の不均一変形によるリジングが発生し、その結果、製品表面にしわ疵が発生して歩留りの低下を招く。従って、Cr含有量を26.0%以上、28.0%未満とした。
Ni:6.0〜12.0%
Niは、オーステナイト生成元素であり、二相組織をもたらす主要合金成分であるとともに靱性および耐食性を向上させるのに有効な元素である。その含有量が6.0%未満では上記の効果が十分ではない。他方、過剰なNiはシグマ相の生成を促し、熱影響部の耐食性を低下させるので、本発明ではNi含有量の上限を12.0%とした。
なお、オーステナイト生成元素の含有量が多い方が耐食性の点からより好ましい。ところが、本発明の二相ステンレス鋼では、オーステナイト生成元素の一つであるNの含有量の上限を0.30%に抑えている。したがって、オーステナイト生成元素であるNiの含有量は、8.0%を超える量であることがより望ましい。
Mo:0.2〜1.7%
Moは、フェライト生成元素であり、二相ステンレス鋼では特に耐孔食性を改善する合金成分として積極的に使用される。しかしながら、前記のとおり、Moはシグマ相の生成を促進する成分であり、約2%またはそれ以上の含有量では、熱影響部相当の熱履歴を受けたときにシグマ相析出による耐食性劣化が避けがたい。そこで、本発明では、Moの含有量を必要最小限の1.7%以下に抑えて、代わりにMoと同様に耐食性向上の効果があって、しかもMoよりもシグマ相を生成させる作用の小さいWを比較的多量に添加することとした。Mo含有量の0.2%は必要最少量であり、1.7%はWの添加を考慮した上でシグマ相の析出を抑制できる上限値である。
W:2.0%を超えて3.0%まで
Wは、Moと同じくフェライト生成元素であり、Moとの共存下で二相ステンレス鋼の耐食性を顕著に改善する成分である。Wの積極的利用によってMoの作用効果を補う。この効果は、2.0%以下では得られない。しかし、Wの過剰添加もシグマ相析出を促すので、その上限は3.0%とする。
Cu:0.3%以下
尿素製造プラント環境では、Cuは、尿素液中に存在するアンモニアと錯イオンを形成して腐食を進行させる有害元素であり、その添加は避けなければならない。即ち、Cu含有量は低いほどよいが、経済性の点から、完全に含有させないようにすることは困難であるため0.3%を許容上限とする。好ましいのは0.2%以下、さらに好ましいのは0.1%以下である。
N:0.07%を超えて0.30%まで
Nは、母材のみならずHAZにおいてもオーステナイトを生成させるのに極めて有効な元素である。即ち、Nは、適量のオーステナイト量を確保するのに役立ち、耐食性を向上させるのに有効な元素である。その含有量が0.07%以下では上記の効果が十分ではない。一方、その含有量が0.30%を超えると、HAZの粒界に微細な窒化物が析出し、尿素プラントのような過酷な腐食環境では耐食性が低下する。従って、Nの適正含有量は0.07%を超えて0.30%までである。より好ましいのは、0.15%以上、0.24%未満である。
上記のNならびに先に述べたCrとNiの含有量は、下記の(1)式を満たす必要がある。
Cr2×(N−0.005Ni)−170≦0 ・・・・(1)
この(1)式の技術的な意義およびこの式を満たすことが必要な理由は、先に述べたとおりである。
本発明の二相ステンレス鋼の一つは上記成分の外、残部がFeおよび不純物からなるものである。本発明の二相ステンレス鋼のもう一つは、上記の成分に加えて、Ca:0.0001〜0.01%およびB:0.0001〜0.01%の中の1種以上を含有するものである。これらの元素は、いずれも二相ステンレス鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。
CaおよびBのいずれも、その含有量が0.0001%未満では上記の効果が十分ではない。ただし、Caの場合は0.01%超えると、鋼中介在物が多くなって耐食性を低下させる。また、Bの含有量が0.01%を超えても耐食性が劣化する。従って、Caの含有量は0.0001〜0.01%Bの含有量は0.0001〜0.01%とするのがよい。




本発明鋼の不純物の中で、Alは0.05%以下、O(酸素)は0.01%以下であるのが望ましい。Alは、酸化物を生成し、これが鋼中に残存して耐食性を低下させる。従って、Alの含有量は、0.05%以下でできるだけ少ないのが望ましい。また、酸素は、アルミナ等の酸化物系介在物を生成し、二相ステンレス鋼の加工性および耐食性を低下させるので、0.01%以下とするのが望ましい。
本発明の溶接材料の化学組成は、上記1で述べた二相ステンレス鋼と同じである。また、Cr、NiおよびNの含有量が前記の(1)式を満たす必要があることも同じである。この溶接材料を溶加材として用いることによって、溶接金属は母材と同等の機械的性質と耐食性を持つに到る。
本発明の二相ステンレス鋼は、優れた耐食性を有するので、特に尿素製造プラントにおけるストリッパー管、コンデンサー管、反応器および配管の少なくとも一つに使用するのに好適である。
表1の符号1〜9の化学組成の鋼を溶製し、厚さ10mmの鋼板および外径2mmの線材とした。上記の鋼板を突き合わせて開先角度30度のV開先を設け、その中に各々鋼板と同一符号の鋼の線材を溶接材料として、入熱15kJ/cmの条件で片側からTIG溶接で多層溶接して溶接継手を作製した。
得られた溶接継手から、溶接線と平行な方向が40mmの辺となる厚さ3mm、幅6mm、長さ40mmの腐食試験片を採取し、JISG 0573に基づいて腐食試験を実施した。ただし、腐食試験は、尿素プラントでのより過酷な腐食環境を想定して、「65%硝酸+0.05g/リットルCr6+」の溶液で行った。耐食性の評価は、溶接線と直交方向の断面での溶接継手において、500倍の視野で断面検鏡し、母材、溶接金属およびHAZでの粒界腐食の有無にて行った。
結果を表2に示す。本発明で定める化学組成を有し、かつ前記の(1)式を満たす符号1〜5は、溶接継手のすべての部位で優れた耐食性を有していた。これに対して、Nの含有量が過剰で、かつ前記の(1)式を満たさない符号6、Nの含有量が過少な符号7、Cr含有量が過少な符号8、およびN含有量は適正であるが、前記の(1)式を満たさない符号9では、HAZに粒界腐食を生じた。
Figure 0004787007
Figure 0004787007
本発明の二相ステンレス鋼は、きわめて優れた耐食性を有する。その耐食性は、HAZをはじめ熱間加工の際に熱の影響を受けた部分においても維持される。したがって、本発明の二相ステンレス鋼は、尿素製造プラントの各種機器用の材料として好適である。また、本発明の溶接材料を使用すれば、溶接構造物全体が優れた耐食性を有するに到る。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.03%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.003%以下、Cr:26.0%以上で28.0%未満、Ni:6.0〜12.0%、Mo:0.2〜1.7%、W:2.0%を超え3.0%まで、およびN:0.07%を超えて0.30%までを含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのCuが0.18%以下、Alが0.05%以下およびO(酸素)が0.01%以下であって、下記(1)式を満たすことを特徴とする尿素製造プラント用二相ステンレス鋼。
    Cr×(N−0.005Ni)−170≦0 ・・・・(1)
    ただし、式中のCr、NおよびNiは、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
  2. 質量%で、C:0.03%以下、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.003%以下、Cr:26.0%以上で28.0%未満、Ni:6.0〜12.0%、Mo:0.2〜1.7%、W:2.0%を超え3.0%まで、N:0.07%を超えて0.30%まで、ならびにCa:0.0001〜0.01%およびB:0.0001〜0.01%の中から選択される一種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物としてのCuが0.3%以下、Alが0.05%以下およびO(酸素)が0.01%以下であって、下記(1)式を満たすことを特徴とする尿素製造プラント用二相ステンレス鋼。
    Cr×(N−0.005Ni)−170≦0 ・・・・(1)
    ただし、式中のCr、NおよびNiは、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
  3. 請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼からなることを特徴とする溶接材料。
  4. ストリッパー管、コンデンサー管、反応器および配管の少なくとも一つが請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼からなることを特徴とする尿素製造プラント。
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