JP4786837B2 - NOxガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、燃焼器、ボイラー等から排出される排ガス等の被測定ガス中に含まれる特定成分の検出等に用いられるガスセンサであり、特にNOxの検出に用いるNOxガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ガスセンサの一つとして、図6に示すように、酸素イオン伝導性のある固体電解質層に多孔質電極を形成することにより形成された第1酸素ポンプセル111,酸素濃度測定セル112,第2酸素ポンプセル113を絶縁層114,115を介して積層した構造を有するセンサ本体110aと、センサ本体110aを加熱するヒータ110bとからなるガスセンサ110が知られている。
【0003】
即ち、センサ本体110aは、第1拡散抵抗体116を介して被測定ガス空間(例えば、排気管内)に連通する第1測定室S1、および第2拡散抵抗体117を介して第1測定室S1に連通する第2測定室S2を有し、第1酸素ポンプセル111および第2酸素ポンプセル113により、第1測定室S1および第2測定室S2の内部に存在する酸素のポンピング(汲み出し,汲み入れ)をそれぞれ可能とし、酸素濃度測定セル112により、酸素濃度を一定に制御された酸素基準室118と第1測定室S1との酸素濃度差、つまり第1測定室S1内の酸素濃度の測定を可能とするように構成されている。
【0004】
そして、このガスセンサ110を駆動する駆動回路120は、ヒータ110bにてセンサ本体110aを活性温度(例えば750℃)まで加熱し、この状態で、酸素濃度測定セル112の両端電圧Vsが予め設定された一定電圧(例えば425mV)となるように第1ポンプ電流Ip1を制御すると共に、第2酸素ポンプセル113に、第2測定室S2から酸素を汲み出す方向に一定の第2ポンプ電圧Vp2(例えば450mV)を印加し、この時、第2酸素ポンプセル113に流れる第2ポンプ電流Ip2の検出を行う。
【0005】
なお、検出すべき特定成分が酸化物(例えば、窒素酸化物,亜硫酸ガス,二酸化炭素,水など)である場合には、第1測定室S1内の酸素濃度を低酸素濃度(≒0%)に保持し、且つ第2ポンプ電圧Vp2を所定の電圧に保持すると、第2測定室S2では、第2酸素ポンプセル113を構成する多孔質電極の触媒作用によって、酸化物が分解し、その分解により得られた酸素が第2測定室S2から抜き取られることにより第2ポンプ電流Ip2が流れる。従って、第2ポンプ電流Ip2は、特定成分の濃度に対応した大きさとなる。
【0006】
一方、特定成分が還元性物質(例えば、一酸化炭素,炭化水素,アルコールなど)である場合には、第2測定室S2内にて特定成分と酸素とが反応し、その反応後の残存酸素が第2測定室S2から抜き取られることにより第2ポンプ電流Ip2が流れる。この時、第2測定室S2内を、特定成分が検出される最大量と同程度(通常は、ppmオーダ)の一定酸素濃度に制御することにより、特定成分の濃度が高いほど残存酸素の濃度が低くなることから、この残存酸素の濃度に応じた大きさとなる第2ポンプ電流Ip2に基づいて、特定成分の濃度を求めることが可能となる。
【0007】
つまり、いずれの場合でも、特定成分の濃度を正確に検出するには、第2測定室S2の雰囲気を、一定の低酸素濃度となるように制御する必要がある。
なお、特定成分としてNOxを検出するためのガスセンサは、NOxが還元反応することで発生する酸素の濃度を検出することで、間接的にNOx濃度を検出するよう構成されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、このようなガスセンサ110を用いて、例えば、内燃機関の排ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度を検出する場合を考えると、ガスセンサ110の起動時に第2測定室S2を満たしているガスは、前回の運転を停止してから、即ち排ガスの供給が途絶えてから今回の起動までの時間が長くなるほど、大気雰囲気に近くなり酸素濃度が高くなる。
【0009】
つまり、起動直後の第2酸素ポンプセル113は、起動前に第2測定室S2を満たしているガスに含まれた残留酸素等をポンピングすることになるため、本来測定すべき排ガス中の特定成分(NOx等)濃度に関わらず、残留酸素による過大な第2ポンプ電流Ip2が流れることになる。そして、この過大な第2ポンプ電流Ip2は、第2酸素ポンプセル113による酸素の汲出しにより、第2測定室S2内の雰囲気が所定の低酸素濃度状態となるまで継続する。
【0010】
このため、ガスセンサ110は、起動した後、被測定ガス中の特定成分濃度を正確に測定可能な状態(正常検出状態)となるまでの一定時間(ライトオフ時間)の経過が必要となり、このライトオフ時間が経過するまで待機する必要があるため、使い勝手が悪いという問題があった。
【0011】
こうした問題に対して、ライトオフ時間を短縮するためには、第2測定室に存在する残留酸素の量を減少させることが効果的であり、例えば、第2測定室の容積を縮小することで、残留酸素の量を減少させることができる。
しかし、第2測定室の容積を縮小した場合、残留酸素の量が減少すると共に測定対象ガスの量も減少することから、検出対象である特定成分(NOx等)と第2酸素ポンプセルとの反応量が減少してしまい、NOx検出時におけるガスセンサの出力が低下することになる。
【0012】
また、ガスセンサの構造によっては、第2測定室の容積を縮小するにあたり、第2酸素ポンプセルを構成する多孔質電極のうち、第2測定室に面する多孔質電極の面積を縮小する必要が生じる場合がある。そして、多孔質電極の面積を縮小した場合、検出対象であるNOxとの反応量が減少してしまい、NOx検出時におけるガスセンサの出力が低下して、ガスセンサにおける出力のS/N比が悪化することになる。
【0013】
このように、ガスセンサの起動時の特性を向上するためにライトオフ時間を短縮することと、ガスセンサの検出精度を向上するために出力S/N比を改善することを両立することは難しいという問題がある。
そこで、本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、起動後のライトオフ時間を短く設定することができ、また、センサ出力のS/N比の悪化を防ぐことができるNOxガスセンサを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、第1拡散抵抗体を介して被測定ガス空間に連通する第1室と、第2拡散抵抗体を介して第1室に連通する第2室と、第1室内の酸素濃度を測定するために第1室に面して配置される酸素濃度検知セルと、第1室内の酸素をポンピングするために第1室に面して配置される第1ポンプセルと、第2室内の酸素をポンピングするために第2室に面して配置される第2ポンプセルと、を備えたNOxガスセンサであって、第2ポンプセルは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質層と、この固体電解質層の表面に設けられた一対の多孔質電極とを備えており、第2室の容積をVとし、一対の多孔質電極のうち第2室に面している多孔質電極の電極面積をAとした場合に、V/Aの値が0.01[mm]以上かつ0.1[mm]以下であり、第2拡散抵抗体は、気孔率が30[%]以上かつ45[%]以下である多孔質物質からなること、を特徴とする。
【0015】
なお、NOxガスセンサにおいては、第1ポンプセルが、酸素濃度検知セルにて検出した酸素濃度に基づいて、第1室内に導入された被測定ガス中の酸素をポンピングすることで、第2室に導入される被測定ガス中の酸素濃度を所定範囲に設定している。また、第2ポンプセルは、第2室において被測定ガスに含まれるNOxが解離して発生する酸素をポンピングすることで、NOx濃度に応じた電流を発生するよう構成されている。
【0016】
そして、請求項1に記載のNOxガスセンサは、第2室の容積Vと多孔質電極の電極面積Aとからなる変数V/Aの値が一定範囲内に規定されて構成されている点に特徴がある。
ここで、NOxガスセンサは、第2室の容積が小さいほどセンサ起動時における残留酸素の量が少なくなることから、第2室の容積を縮小することによりセンサ起動時のライトオフ時間を短く設定できる。
【0017】
そして、ライトオフ時間については、単に第2室の容積Vを縮小することに限らず、第2ポンプセルを構成する多孔質電極の電極面積Aに対する第2室の容積Vの割合を適切な割合に規定することでも、ライトオフ時間の短縮を図ることができる。つまり、単位時間あたりに第2ポンプセルの多孔質電極で反応する酸素量は、多孔質電極の面積に比例することから、比較的大きい容積の第2室を形成した場合でも、多孔質電極の電極面積を大きく確保することで、残留酸素のポンピング(汲み出し)に要する時間を短縮することができる。
【0018】
ここで、後述する測定結果を示した図3によれば、第2室の容積Vと多孔質電極の電極面積Aとからなる変数V/Aとライトオフ時間との関係については、変数V/Aが小さい値となるほどライトオフ時間が短くなることが判る。また、変数V/A=0.119[mm]の場合のライトオフ時間に比べて、変数V/A=0.098[mm]の場合のライトオフ時間が大幅に短縮されていることから、変数V/Aを双方の値の略中間値である0.1[mm]以下に設定することで、ライトオフ時間を実用上支障の無い値に設定できると考えられる。さらに、変数V/Aが0.098[mm]以下となる場合には、ライトオフ時間はほぼ一定の値を示すとともに最短となることから、変数V/Aの値を少なくとも0.098[mm]以下に設定することで、ライトオフ時間を最短時間に設定することができる。
【0019】
他方、第2室の容積Vを縮小した場合、残留酸素の量を減らすことができると共に、第2室に導入される被測定ガスの量についても減少することになり、ひいては検出対象である特定成分の量も減少することから、特定成分を検出した際のセンサ出力が低下してしまう。
【0020】
しかし、後述する測定結果を示す図4から判るように、変数V/Aとセンサ出力との関係については、変数V/Aが大きくなるほどセンサ出力が大きくなることから、変数V/Aを一定値以上に設定することで、センサ出力の大きさを外部機器が識別可能な最低値以上に設定することができる。
【0021】
なお、第2拡散抵抗体を第2ポンプセルの多孔質電極の表面全体に当接させて形成した場合には、見かけ上は第2室が存在しない状態(容積V=0[mm3 ]の状態)となるが、実際には、第2拡散抵抗体を形成する多孔質物質の空孔部分が第2室として機能するため、第2ポンプセルによる特定成分の検出が可能である。このとき、第2拡散抵抗体は、特定成分の検出に必要な量の被測定ガスが透過可能な気孔率(例えば、40[%]以上)の多孔質物質で形成することが必要である。そして、特定成分の検出が可能な気孔率に設定された第2拡散抵抗体を用いてNOxガスセンサを形成した場合、第2拡散抵抗体の空孔部分を第2室と見なして算出される変数V/Aの値は、約0.01[mm]である。このことから、変数V/Aが少なくとも0.01[mm]以上となる場合には、外部機器において識別可能な大きさのセンサ出力が得られることが判る。
【0022】
よって、本発明(請求項1)のNOxガスセンサによれば、変数V/Aを0.01[mm]以上かつ0.1[mm]以下とすることで、ライトオフ時間を短縮することができると共に、センサ出力が低下してS/N比が悪化するのを防ぐことができる。
ところで、被測定ガスは、第2拡散抵抗体を介して第2室に導入されるが、第2拡散抵抗体の気孔率によって、第2室に導入される被測定ガスの量が異なることから、第2拡散抵抗体の気孔率がガスセンサの検出精度に影響している。
そこで、本発明のNOxガスセンサは、例えば、第2拡散抵抗体が、気孔率が20[%]以上かつ45[%]以下である多孔質物質からなるとよい。
つまり、図4に示す測定結果から、第2拡散抵抗体の気孔率が20[%]以上であれば、変数V/Aが0.01[mm]以上となる範囲においては、少なくとも外部機器が識別可能な大きさのセンサ出力(図4の測定においては、0.9[μA]以上のセンサ出力)が得られることが判る。
また、第2拡散抵抗体の気孔率が大きすぎると、第1室と第2室との間における被測定ガスの単位時間あたりの移動量が過剰となるために、第1ポンプセルによる酸素の除去が十分ではない被測定ガスが第2室に流入することになる。このように被測定ガス中に酸素が残っている場合、第2室を測定に適した雰囲気に維持できず、ガスセンサとしての測定精度を低下させることになるため、第2拡散抵抗体の気孔率は所定値以下(45[%]以下)にするとよい。
よって、このような構成のNOxガスセンサによれば、第2室を測定に適した雰囲気に維持することができるため、NOx検出を適切に行うことができ、また、センサ出力を一定値以上に維持できるため、S/N比の低下を防ぐことができる。
また、図4に示す測定結果から、第2拡散抵抗体の気孔率が30[%]よりも低い値である場合には、気孔率が低くなるほどセンサ出力の値が低下することから、気孔率が30[%]以下の領域では、第2室への被測定ガス流入量が、第2拡散抵抗体によって制限されていると判断できる。
これに対して、第2拡散抵抗体の気孔率が30[%]以上となる場合には、気孔率の増加に伴いセンサ出力の値が増加することはなく、センサ出力の値が略一定の値を示しており、被測定ガスに含まれている実際のNOx濃度に応じたセンサ出力としての最大値を示していると判断できる。
そこで、本発明(請求項1)のNOxガスセンサは、第2拡散抵抗体が、気孔率が30[%]以上かつ45[%]以下である多孔質物質からなるように構成されている。
このような気孔率の第2拡散抵抗体を備えることで、被測定ガスの流入量が第2拡散抵抗体によって必要以上に制限されてセンサ出力が低下するのを防ぐことができ、また、実際のNOx濃度に応じたセンサ出力としての最大値を得ることができる。
また、後述の図5に示す測定結果から、気孔率が30[%]以上であれば、第2拡散抵抗体の厚み寸法のうち、本測定の全範囲において、外部機器が識別可能な大きさのセンサ出力(図5の測定においては、0.9[μA]以上のセンサ出力)を得られることが判る。このことからも、気孔率が30[%]以上の第2拡散抵抗体を用いることで、センサ出力を一定値以上に維持することができ、S/N比の低下を防止できることが判る。
よって、本発明(請求項1)のNOxガスセンサによれば、実際のNOx濃度に応じたセンサ出力としての最大値が得られるため、さらに好適なS/N比を実現することができる。
なお、第2拡散抵抗体は、一定量以上の被測定ガスの導入を可能とすると共に、第2室を測定に適した雰囲気に安定させるためには、その厚さ寸法が20[μm]から800[μm]までの範囲内となるように形成するとよい。このとき、センサ出力を大きくし最低限のS/N比を確保するには、第2拡散抵抗体の厚さ寸法は200[μm]以下に設定するとよい。また、第2拡散抵抗体の強度を維持するためには、厚さ寸法を20[μm]以上に設定すると良い。
【0023】
次に、本発明(請求項1)のNOxガスセンサは、請求項2に記載のように、第2室の容積をVとし、多孔質電極のうち第2室に面している多孔質電極の体積をBとした場合に、V/Bの値が0.5以上かつ5以下であるように構成しても良い。
【0024】
なお、ここでは、多孔質電極に形成される気孔の部分を含めた多孔質電極全体の体積を体積Bとして数値を規定する。
ここで、多孔質電極は、一定の強度を確保すると共に、形成可能な最薄限界を考慮して、その厚さが10[μm]から40[μm]までの範囲内となるように形成するとよく、特に、20[μm]程度に形成することが望ましい。
【0025】
そして、ライトオフ時間の短縮およびセンサ出力の低下防止を実現するべく変数V/Aを上記範囲(0.01[mm]以上かつ0.1[mm]以下)にすると共に、多孔質電極の厚さ寸法を適切な値(20[μm])に設定するためには、多孔質電極の体積をBとした場合、比率V/Bの範囲を、0.5以上かつ5以下に設定するとよい。
【0026】
よって、本発明(請求項2)のNOxガスセンサによれば、比率V/Bを0.5以上かつ5以下とすることで、ライトオフ時間を短縮できると共にセンサ出力が低下するのを防止でき、また、第2ポンプセルの多孔質電極の強度を適切に維持することができる。
【0036】
ところで、第2ポンプセルは、多孔質電極の電極面積の大きさによって出力する電流値の大きさが異なることから、多孔質電極の電極面積が極度に小さくなる場合には、出力電流値が過度に小さくなってしまい、十分なS/N比を実現できない虞がある。
【0037】
そこで、上述(請求項1または請求項2)のNOxガスセンサにおいては、請求項3に記載のように、第2ポンプセルに備えられる多孔質電極のうち第2室に面している多孔質電極の電極面積が、1[mm2 ]以上であるとよい。
つまり、本出願の発明者が実施した測定においては、1[mm2 ]以上の電極面積を有する多孔質電極を有するNOxガスセンサを使用しており、各測定結果から、少なくとも外部機器で識別可能な大きさのセンサ出力が得られることが判る。これにより、1[mm2 ]以上の電極面積を有する多孔質電極を用いて構成したNOxガスセンサは、NOxの還元反応に必要な最低限の領域を確保することができ、センサ出力を少なくとも一定値以上に維持できるため、好適なS/N比を実現することができる。
【0038】
よって、本発明(請求項3)のNOxガスセンサによれば、ライトオフ時間を短縮すると共に、好適なS/N比を実現することができる。なお、第2ポンプセルの多孔質電極のうち第2室に面している多孔質電極の電極面積が0.5[mm2 ]以下となる場合には、そのNOxガスセンサは、センサ出力が大きく減少するものと推定される。
【0039】
また、上述(請求項1から請求項3のいずれか)のNOxガスセンサは、請求項4に記載のように、第2ポンプセルに備えられる多孔質電極のうち第2室に面している多孔質電極の電極厚さが、10[μm]以上であるとよい。
つまり、多孔質電極の厚さをこのように規定することで、一定の強度を確保することができ、振動などによる多孔質電極の破損を防ぐことができる。
【0040】
よって、本発明(請求項4)のNOxガスセンサによれば、振動等による多孔質電極の破損を防ぐことができ、耐衝撃性に優れたNOxガスセンサを実現することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
まず、本発明のNOxガスセンサ1について、図1に示す内部構成図を用いて説明する。なお、このNOxセンサは、自動車の内燃機関やボイラ等の各種燃焼機器の排気ガス中のNOx濃度を検出するためのセンサである。
【0042】
そして、NOxガスセンサ1は、第1ポンプセル11,酸素濃度検知セル12,第2ポンプセル13を、アルミナを主体とする絶縁層14,15を介して積層した構造を有する。
このうち、第1ポンプセル11は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアからなる第1固体電解質層11aと、第1固体電解質層11aを挟み込むように配置された第1内側電極21aと第1外側電極21bとからなる第1多孔質電極21とを備えて形成されている。なお、第1内側電極21aおよび第1外側電極21bは、白金で形成されており、第1内側電極21aの表面には、多孔質体からなる保護層22が形成されている。
【0043】
また、第2ポンプセル13は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアからなる第2固体電解質層13aと、第2固体電解質層13aの表面のうち絶縁層15に面する表面に配置された第2内側電極25aおよび第2外側電極25bからなる第2多孔質電極25とを備えて形成されている。なお、第2内側電極25aおよび第2外側電極25bは、白金で形成されている。また、第2内側電極25aの周囲には、多孔質体からなる第2拡散抵抗体17が形成されており、第2内側電極25aと第2拡散抵抗体17との間には、第2室S2が形成されている。そして、第2内側電極25aは、第2室S2に面する電極面積(表面積)が1[mm2 ]であり、厚さ寸法が20[μm]となるように形成されている。
【0044】
さらに、酸素濃度検知セル12は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアからなる検知用固体電解質層12aと、検知用固体電解質層12aを挟み込むように配置された検知用電極23aと基準用電極23bとからなる検知用多孔質電極23とを備えて形成されている。なお、検知用電極23aおよび基準用電極23bは、白金で形成されている。
【0045】
そして、NOxガスセンサ1の内部には、被測定ガスが導入される第1室S1が形成されており、第1室S1には、第1ポンプセル11と酸素濃度検知セル12との間に配置された第1拡散抵抗体16を介して、被測定ガスが導入される。なお、第1拡散抵抗体16は、被測定ガスが通過する方向に積層された2種類の多孔質体で構成されている。また、第1室S1は、酸素濃度検知セル12を貫通すると共に、第2拡散抵抗体17に至るように形成されており、第1室S1に面するように、第1ポンプセル11の第1内側電極21a、および酸素濃度検知セル12の検知用電極23aが配置されている。
【0046】
さらに、NOxガスセンサ1の内部のうち、酸素濃度検知セル12と第2ポンプセル13との間には、基準酸素室18が形成されており、この基準酸素室18に面するように、酸素濃度検知セル12の基準用電極23bと、第2ポンプセル13の第2外側電極25bとが配置されている。
【0047】
このように構成されたNOxガスセンサ1は、第1ポンプセル11により第1室S1の内部に存在する酸素のポンピング(汲み出し)が可能であり、酸素濃度検知セル12により、酸素濃度を一定に制御された基準酸素室18と第1室S1との酸素濃度差、つまり第1室S1の内部の酸素濃度を測定可能である。
【0048】
なお、このNOxガスセンサ1は、図6に示す駆動回路120と同様の構成の駆動回路により駆動されるものであり、また、ヒータを一体に備える構成ではなく、別個独立に備えられるヒータにより活性化温度まで加熱される。
そして、このNOxガスセンサ1を駆動する駆動回路(図示省略)は、ヒータ(図示省略)を駆動制御してNOxガスセンサ1を活性温度(例えば750℃)まで加熱し、この状態で、酸素濃度検知セル12の両端電圧Vsが予め設定された一定電圧(例えば425mV)となるように、第1ポンプセル11に流れる第1ポンプ電流Ip1を制御する。また、駆動回路は、第1ポンプ電流Ip1を制御すると共に、第2ポンプセル13に、第2室S2から酸素を汲み出す方向に一定の第2ポンプ電圧Vp2(例えば450mV)を印加し、この時、第2ポンプセル13に流れる第2ポンプ電流Ip2の検出を行う。
【0049】
なお、検出すべき特定成分がNOx(窒素酸化物)であるため、第1室S1内の酸素濃度を低酸素濃度(≒0%)に保持し、且つ第2ポンプ電圧Vp2を所定の電圧に保持すると、第2室S2では、第2ポンプセル13を構成する第2多孔質電極25の触媒作用によって、NOxが分解(還元)され、その分解により得られた酸素が第2室S2から抜き取られることにより第2ポンプ電流Ip2が流れる。
【0050】
つまり、第2ポンプ電流Ip2は、被測定ガスに含まれるNOxの濃度に対応した大きさとなり、本実施例のNOxガスセンサは、NOxが還元反応することで発生する酸素濃度を検出することで、間接的にNOx濃度を検出するよう構成されている。
【0051】
ここで、NOxガスセンサ1において、第2室S2の容積Vと、第2多孔質電極25の第2内側電極25aの表面のうち第2室S2に面する電極面積Aとからなる変数V/Aの値を変化させたときの、第2拡散抵抗体の気孔率とライトオフ時間との関係を測定した第1実験の測定結果について説明する。
【0052】
なお、ライトオフ時間とは、ガスセンサを起動した後、被測定ガス中の特定成分濃度を正確に測定可能な状態(正常検出状態)となるまでの時間である。そこで、本実験では、ガスセンサの起動から600[sec] 経過した後のセンサ出力値を安定値とみなし、起動した後、センサ出力値がこの安定値に対して30[ppm] 以内に収束するまでの時間をライトオフ時間と定義して測定を実施した。
【0053】
まず、第1実験では、第2室S2の容積Vと、第2多孔質電極25の第2内側電極25aの電極面積Aとからなる変数V/Aの値が、それぞれ異なる4種類(V/A=0.01,0.098,0.119,0.137[mm] )のNOxガスセンサを用いた。そして、4種類のNOxガスセンサのそれぞれについて、第2拡散抵抗体17の気孔率を変化させて、ライトオフ時間を測定した。
【0054】
縦軸をライトオフ時間とし、横軸を第2拡散抵抗体の気孔率とする座標平面に示した第1実験の測定結果を、図3に示す。
図3に示す測定結果から、第2拡散抵抗体の気孔率を変化させた場合、気孔率が小さくなるほどライトオフ時間が短縮されるが、気孔率の変化量に対するライトオフ時間の短縮割合はあまり大きくないことが判る。
【0055】
そして、測定結果を示した図3によれば、第2室の容積Vと多孔質電極の電極面積Aとからなる変数V/Aとライトオフ時間との関係については、変数V/Aが小さい値となるほどライトオフ時間が短縮されており、また、変数V/Aの変化量に対するライトオフ時間の短縮割合が大きいことが判る。なお、変数V/A=0.119[mm]の場合のライトオフ時間に比べて、変数V/A=0.098[mm]の場合のライトオフ時間が大幅に短縮されていることから、変数V/Aを双方の値の略中間値である0.1[mm]以下に設定することで、ライトオフ時間を実用上支障の無い値に設定できると考えられる。さらに、変数V/Aが0.098[mm]以下となる場合には、ライトオフ時間はほぼ一定の値を示すとともに最短となることから、変数V/Aを0.098[mm]以下に設定することで、ライトオフ時間を最短時間に設定することができる。
【0056】
なお、変数V/Aを小さく設定することでライトオフ時間が短縮できるのは、第2内側電極25aの電極面積Aに対する第2室S2の容積Vが小さくなり、残留酸素の量が減少するためである。
よって、第1実験の測定結果によれば、NOxガスセンサのライトオフ時間を短縮するためには、変数V/Aの値を0.1[mm]以下に設定すると良く、より好ましくは変数V/Aの値を0.098[mm]以下に設定すると良いことが判る。
【0057】
次に、NOxガスセンサ1において、第2室S2の容積Vと、第2多孔質電極25の第2内側電極25aの表面のうち第2室S2に面する電極面積Aとからなる変数V/Aの値を変化させたときの、第2拡散抵抗体の気孔率とセンサ出力値との関係を測定した第2実験の測定結果について説明する。
【0058】
なお、本測定は、NOxガスセンサを起動した後ライトオフ時間が経過させて活性化し、活性化状態のNOxガスセンサ1をNOx濃度が一定に設定された被測定ガス中に配置した際に、第2多孔質電極25から出力される第2ポンプ電流Ip2を測定するという手順で実施した。なお、測定結果を示す図4では、第2多孔質電極25から出力される第2ポンプ電流Ip2を、センサ出力と称して記載している。
【0059】
第2実験では、第1実験と同様に、第2室S2の容積Vと、第2多孔質電極25の第2内側電極25aの電極面積Aとからなる変数V/Aの値が、それぞれ異なる4種類(V/A=0.01,0.098,0.119,0.137[mm] )のNOxガスセンサを用いた。そして、4種類のNOxガスセンサのそれぞれについて、第2拡散抵抗体17の気孔率を変化させて、センサ出力を測定した。また、各NOxガスセンサにおける第2拡散抵抗体の厚さ寸法は、すべて60[μm]に設定されている。
【0060】
縦軸をセンサ出力(第2ポンプ電流Ip2)とし、横軸を第2拡散抵抗体の気孔率とする座標平面に示した第2実験の測定結果を、図4に示す。
そして、図4に示す測定結果から、第2拡散抵抗体の気孔率が20[%]以上であれば、変数V/Aが0.01[mm]以上となる範囲においては、少なくとも外部機器が識別可能な大きさのセンサ出力(図4の測定においては、0.9[μA]以上のセンサ出力)が得られることが判る。
【0061】
また、第2拡散抵抗体の気孔率が大きすぎると、第1室と第2室との間における被測定ガスの単位時間あたりの移動量が過剰となるために、第1ポンプセルによる酸素の除去が十分ではない被測定ガスが第2室に流入することになる。このように被測定ガス中に酸素が残っている場合、第2室を測定に適した雰囲気に維持できず、ガスセンサとしての測定精度を低下させることになるため、第2拡散抵抗体の気孔率は所定値以下(45[%]以下)にするとよい。
【0062】
よって、第2実験の測定結果によれば、センサ出力の低下によるS/N比の悪化を防ぐためには、変数V/Aの値が0.01[mm]以上に設定されたNOxガスセンサを用いると良いことが判る。
したがって、第1実験および第2実験の測定結果から、変数V/Aの値が0.01[mm]以上かつ0.1[mm]以下となるNOxガスセンサを用いることで、ライトオフ時間を短縮し、かつS/N比の悪化を防止することができることが判る。
【0063】
次に、第2実験の測定結果において、第2拡散抵抗体の気孔率に着目すると、第2拡散抵抗体の気孔率が20[%]以上となる場合には、外部機器が識別可能な大きさのセンサ出力(図4の測定においては、0.9[μA]以上のセンサ出力)が得られることが判る。
【0064】
しかしながら、第2拡散抵抗体の気孔率が大きすぎると、第1室と第2室との間における被測定ガスの単位時間あたりの移動量が過剰となるために、第1ポンプセルによる酸素の除去が十分ではない被測定ガスが第2室に流入することになる。このように被測定ガス中に酸素が残っている場合、第2室を測定に適した雰囲気に維持できず、ガスセンサとしての測定精度を低下させることになるため、第2拡散抵抗体の気孔率は45[%]以下にするとよい。
【0065】
よって、第2拡散抵抗体の気孔率が20[%]以上かつ45[%]以下に設定されたNOxガスセンサによれば、第2室を測定に適した雰囲気に維持することができるため、NOx検出を適切に行うことができ、また、センサ出力を一定値以上に維持できるため、S/N比の低下を防ぐことができる。
【0066】
さらに、第2実験の測定結果によれば、第2拡散抵抗体の気孔率が30[%]以上となる場合には、気孔率の増加に伴いセンサ出力の値が増加することはなく、センサ出力の値が略一定の値を示しており、被測定ガスに含まれている実際のNOx濃度に応じたセンサ出力としての最大値を示していると判断できる。
【0067】
このため、気孔率が30[%]以上の第2拡散抵抗体を備えるNOxガスセンサを用いることで、第2拡散抵抗体による不必要な制限を受けて被測定ガスの通過量が減少するのを抑制でき、センサ出力が低下するのを防ぐことができる。また、このような第2拡散抵抗体を用いることで、実際のNOx濃度に応じたセンサ出力としての最大値を得ることができる。
【0068】
次に、NOxガスセンサ1において、変数V/Aの値を一定(V/A=0.098)とし、第2拡散抵抗体17の気孔率を変化させたときの、第2拡散抵抗体の厚さ寸法とセンサ出力値との関係を測定した第3実験の測定結果について説明する。
【0069】
なお、本測定は、起動開始時点からライトオフ時間を経過させてNOxガスセンサを活性化し、活性化状態のNOxガスセンサ1をNOx濃度が一定に設定された被測定ガス中に配置して、このNOxガスセンサ1の第2多孔質電極25から出力される第2ポンプ電流Ip2(センサ出力)を測定するという手順で実施した。そして、第3実験では、第2拡散抵抗体17の気孔率がそれぞれ異なる3種類(15,30,45[%])のNOxガスセンサを用い、3種類のNOxガスセンサのそれぞれについて、第2拡散抵抗体17の厚さ寸法を変化させて、センサ出力を測定した。
【0070】
縦軸をセンサ出力(第2ポンプ電流Ip2)とし、横軸を第2拡散抵抗体の厚さ寸法とする座標平面に示した第3実験の測定結果を、図5に示す。
図5に示す測定結果から、第2拡散抵抗体の厚さ寸法を変化させた場合には、厚さ寸法が小さくなるほどセンサ出力が増大することが判り、また、第2拡散抵抗体の気孔率を変化させた場合には、気孔率が大きくなるほどセンサ出力が増大することが判る。
【0071】
さらに、図5に示す測定結果によれば、気孔率が30[%]以上である場合には、第2拡散抵抗体の厚み寸法に拘わらず、外部機器が識別可能な大きさのセンサ出力(図5の測定においては、0.9[μA]以上のセンサ出力)を得られることが判る。
【0072】
よって、第2実験の測定結果のみならず、第3実験の測定結果からも、気孔率が30[%]以上の第2拡散抵抗体を用いることで、NOxガスセンサの出力におけるS/N比の低下を防止でき、さらに好適なS/N比を実現できることが判る。
【0073】
なお、より確実に外部機器に識別可能とするには、センサ出力を1.0[μA]以上に設定することが望ましく、そのためには、第2拡散抵抗体の気孔率が30[%]以上であり、かつ第2拡散抵抗体の厚さ寸法が0.5[mm]以下であるNOxガスセンサを用いると良い。また、第2拡散抵抗体は、一定量以上の被測定ガスの導入を可能とすると共に、第2室を測定に適した雰囲気に安定させるためには、その厚さ寸法が20[μm]から800[μm]までの範囲内となるように形成するとよい。このとき、センサ出力を大きくし最低限のS/N比を確保するには、第2拡散抵抗体の厚さ寸法は200[μm]以下に設定するとよい。また、第2拡散抵抗体の強度を維持するためには、厚さ寸法を20[μm]以上に設定すると良い。
【0074】
ところで、本実施例のNOxガスセンサは、第2ポンプセル13の第2多孔質電極25の第2内側電極25aが、1[mm2 ]の電極面積を有するように形成されていることから、NOxの還元反応に必要な領域を確保でき、センサ出力を一定値以上に維持することができる。このため、本実施例のNOxガスセンサは、好適なS/N比を実現することができる。
【0075】
さらに、本実施例のNOxガスセンサに備えられる第2内側電極25aは、厚さ寸法が20[μm]に形成されていることから、一定の強度を有しており、振動などによる破損が発生し難くなるため、振動などによる破損を防ぐことができ、本実施例のNOxガスセンサは耐衝撃性に優れている。
【0076】
次に、本発明を適用した第2NOxガスセンサのライトオフ時間と、従来の第3NOxガスセンサのライトオフ時間とを比較した第4実験について説明する。
そして、本発明を適用した第2NOxガスセンサ4は、第2拡散抵抗体の厚みが0.751[mm]、第2拡散抵抗体の気孔率が45[%]、第2室の容積Vが0.267[mm3 ]、第2ポンプセルのうち第2室に面する多孔質電極の電極面積Aが3[mm2 ]となるように形成されている。なお、第2NOxガスセンサ4においては、第2室の容積Vおよび第2ポンプセルの多孔質電極の電極面積Aからなる変数V/Aの値は0.089である。
【0077】
また、従来の第3NOxガスセンサ5は、第2拡散抵抗体の厚みが0.550[mm]、第2拡散抵抗体の気孔率が45[%]、第2室の容積Vが0.384[mm3 ]、第2ポンプセルのうち第2室に面する多孔質電極の電極面積Aが3[mm2 ]となるように形成されている。なお、第2NOxガスセンサ4においては、第2室の容積Vおよび第2ポンプセルの多孔質電極の電極面積Aからなる変数V/Aの値は0.128である。
【0078】
なお、NOxガスセンサの実使用環境下においては、起動後40秒間は、第2ポンプセルに対して高電圧を印加して、第2室の内部に存在する残留酸素を強制的に排気する処理を実施しており、本実験においても、起動後40秒間は、残留酸素の強制廃棄処理を実施した上でライトオフ時間を測定した。
【0079】
そして、第4実験の測定結果を図7に示す。図7では、(a)に本発明を適用した第2NOxガスセンサ4の測定結果を示し、(b)に従来の第3NOxガスセンサ5の測定結果を示している。なお、図7では、ガスセンサの起動後600[sec] 後のセンサ出力値を基準 として、この基準に対する差分の大きさの変化を縦軸とし、起動後の時間経過を横軸として測定結果を示している。
【0080】
図7に示す測定結果によれば、本発明を適用した第2NOxガスセンサ4は、強制排気時間を含むライトオフ時間が61[sec] であり、強制排気時間を除くライトオフ時間が21[sec] である。また、従来の第3NOxガスセンサ5は、強制排気時間を含むライトオフ時間が176[sec] であり、強制排気時間を除くライトオフ時間が136[sec] である。
【0081】
よって、第4実験の測定結果から、本発明を適用したNOxガスセンサは、従来のNOxガスセンサに比べて、ライトオフ時間を短縮できることが判る。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、こうした実施例に限定されることなく、種々の態様をとることができる。
【0082】
例えば、NOxガスセンサの構造は、第1実施例に示すNOxガスセンサのような構造に限ることはなく、例えば、図2に示すような構造のNOxガスセンサとして構成しても良い。
つまり、図2に示す第4NOxガスセンサ3は、第1ポンプセル11,酸素濃度検知セル12,第2ポンプセル13を絶縁層14,15を介して積層した構造である点では、図1に示すNOxガスセンサ1と同様であるが、第2室S2および第2拡散抵抗体17の形状が異なっている。すなわち、NOxガスセンサ1の第2室S2は、第2拡散抵抗体17に周囲を囲まれて形成されるのに対し、第4NOxガスセンサ3の第2室S2は、酸素濃度検知セル12、第2ポンプセル13、絶縁層15、第2拡散抵抗体17に囲まれて形成されている。
【0083】
このような構造の第4NOxガスセンサ3においても、第2室S2の容積Vと第2ポンプセル13の第2内側電極25aの電極面積Aとからなる変数V/Aの値を適切に設定することで、ライトオフ時間を短縮すると共に、センサ出力のS/N比の悪化を防ぐことができる。
【0084】
また、上記実施例では、ライトオフ時間の短縮およびセンサ出力の低下防止を実現するためのNOxガスセンサとして、変数V/Aの値の範囲を規定しているが、さらに、NOxガスセンサの強度を維持するために、第2多孔質電極25の厚さ寸法を適切な値(例えば、20[μm])に設定することが望ましい。そのため、ライトオフ時間の短縮およびセンサ出力の低下防止を実現するべく変数V/Aを上記範囲にすると共に、第2多孔質電極25の厚さ寸法を適切に設定するためには、第2多孔質電極25の第2内側電極25aの体積をBとした場合に、比率V/Bの範囲を0.5以上かつ5以下に設定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のNOxガスセンサの内部構成図である。
【図2】 本発明の第4NOxガスセンサの内部構成図である。
【図3】 NOxガスセンサにおいて、変数V/Aの値を変化させたときの、第2拡散抵抗体の気孔率とライトオフ時間との関係を測定した第1実験の測定結果である。
【図4】 NOxガスセンサにおいて、変数V/Aの値を変化させたときの、第2拡散抵抗体の気孔率とセンサ出力値との関係を測定した第2実験の測定結果である。
【図5】 NOxガスセンサにおいて、変数V/Aの値を一定とし、第2拡散抵抗体の気孔率を変化させたときの、第2拡散抵抗体の厚さ寸法とセンサ出力値との関係を測定した第3実験の測定結果である。
【図6】 従来のNOxガスセンサの内部構成および駆動回路との接続状態を表す説明図である。
【図7】 本発明を適用した第2NOxガスセンサのライトオフ時間と、従来の第3NOxガスセンサのライトオフ時間とを比較した第4実験の測定結果である。
【符号の説明】
1,3,4,5…NOxガスセンサ、11…第1ポンプセル、12…酸素濃度検知セル、13…第2ポンプセル、14…絶縁層、15…絶縁層、16…第1拡散抵抗体、17…第2拡散抵抗体、18…基準酸素室、21…第1多孔質電極、23…検知用多孔質電極、25…第2多孔質電極、S1…第1室、S2…第2室。
Claims (4)
- 第1拡散抵抗体を介して被測定ガス空間に連通する第1室と、
第2拡散抵抗体を介して前記第1室に連通する第2室と、
前記第1室内の酸素濃度を測定するために前記第1室に面して配置される酸素濃度検知セルと、
前記第1室内の酸素をポンピングするために前記第1室に面して配置される第1ポンプセルと、
前記第2室内の酸素をポンピングするために前記第2室に面して配置される第2ポンプセルと、を備えたNOxガスセンサであって、
前記第2ポンプセルは、酸素イオン伝導性を有する固体電解質層と、該固体電解質層の表面に設けられた一対の多孔質電極とを備えており、
前記第2室の容積をVとし、前記一対の多孔質電極のうち前記第2室に面している多孔質電極の電極面積をAとした場合に、V/Aの値が0.01[mm]以上かつ0.1[mm]以下であり、
前記第2拡散抵抗体は、気孔率が30[%]以上かつ45[%]以下である多孔質物質からなること、
を特徴とするNOxガスセンサ。 - 請求項1に記載のNOxガスセンサであって、
前記第2室の容積をVとし、前記多孔質電極のうち前記第2室に面している多孔質電極の体積をBとした場合に、V/Bの値が0.5以上かつ5以下であること、
を特徴とするNOxガスセンサ。 - 前記第2ポンプセルに備えられる前記多孔質電極のうち前記第2室に面している多孔質電極の電極面積は、1[mm2 ]以上であること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOxガスセンサ。 - 前記第2ポンプセルに備えられる前記多孔質電極のうち前記第2室に面している多孔質電極の電極厚さは、10[μm]以上であること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のNOxガスセンサ。
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