JP4785081B2 - 錫めっき処理材の被膜剥離方法 - Google Patents
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Description
また、前述のめっき工程では、基材を支持するめっき用治具の導電部にも、めっきが施されてしまう。導電部にめっきが施されてしまうと基材の支持性が悪化するため、めっき処理の工程を行うたびに、導電部に形成された錫合金からなる表面層と下地層とからなるめっき被膜を除去する処理が必要となる。
一方、第1溶解処理では溶解溶液として高濃度の塩酸を用いて錫めっき処理材を浸漬して加温し、その後の第2溶解処理では溶解溶液として硝酸または塩酸などを用いて錫めっき処理材を浸漬し、めっき被膜を除去する方法が知られている。しかしながら、錫合金からなる表面層は高濃度の塩酸に対して溶解し難く、このような方法を用いても、めっき被膜の除去には多くの時間を要する。
まず、表面層溶解段階では、表面層溶解溶液に錫合金めっき処理材を浸漬して通電し、下地層が少なくとも部分的に露出する程度に錫合金表面層を溶解する。
次に、下地層浸漬段階では、下地層が部分的に露出した錫合金めっき処理材を下地層溶解溶液に浸漬する。
そして、被膜剥離段階では、下地層を下地層溶解溶液に溶解させ、錫合金被処理材に残存する錫合金表面層を下地層から剥離する。
すなわち、錫めっき処理材は、表面層溶解段階では錫合金表面層のみが部分的に表面層溶解溶液に溶解し、下地層が部分的に露出する。この下地層が部分的に露出した錫めっき処理材は、下地層溶解溶液に浸漬されると、露出した部分から下地層が下地層溶解溶液に溶解していく。このとき、錫合金表面層は前述の通り下地層溶解溶液には溶解しない。錫合金表面層はその下に形成されている下地層の溶解が進むと、下地層の一部と共に下地層から剥離する。または、錫合金表面層のみが下地層から剥離する。さらに下地層の溶解を進めると、基材の表面に残った下地層も全て下地層溶解溶液に溶解し、めっき処理前の状態に戻した基材を得ることができる。
請求項2に示すように、下地層溶解溶液は、硝酸であることが例示される。下地層溶解溶液としてその他には、シアン系ニッケル剥離剤、非シアン系ニッケル剥離剤を適用することもできる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による錫めっき処理材の被膜剥離方法を、図1から図11に基づいて説明する。本実施形態では錫めっき処理材としてめっき工程に使用されためっき用冶具を適用し、その被膜を剥離する方法を示す。
処理槽60には、表面層溶解溶液50としてフッ素またはフッ素化合物を含む酸性溶液、またはアルカリ性溶液が満たされている。本実施形態では表面層溶解溶液50として、一水素二弗化アンモニウム((NH4)HF2)を含む硫酸(H2SO4)を用いる。処理槽60には通電用極板61および62が設けられる。通電用極板61および62は通電用極板61と62との間に電圧を印加できるように接続されており、通電用極板61および62は表面層溶解溶液50中に浸漬している。表面層溶解溶液50中には、めっき工程で使用されためっき用冶具30が浸漬している。
図2は、めっき工程に使用されためっき用冶具30の導電部20の拡大断面図である。導電部材10の表面には、下地層11および錫合金表面層12が形成されている。
なお、本段階では、通電用極板61と62との間に過剰な電圧を印加すると、導電部材10に損傷を与える恐れがあるため、印加する電圧は導電部材10に損傷を与えない程度とする。
なお、図2から図8において、下地層11は単層として図示されているが、下地層11は複数の層から形成されていてもよい。
(試験1)
試験片として、下地層として銅(Cu)層5μmとニッケル(Ni)層5μmとをめっきし、錫合金表面層として錫コバルト(Co)合金を0.5μmまたは5μmめっきしたの樹脂片を準備する。以下の実験例1から6と、比較例1および2とにおいて、錫コバルト合金表面層および下地層からなる錫めっき層の除去に要する時間を比較する。
比較例1および2は、高濃度の塩酸(400g/L)にめっき処理材を浸漬して加温することにより錫コバルト合金の表面層を全て溶解して除去した後、硝酸(400g/L)にめっき処理材を浸漬して下地層を溶解して除去する方法を適用した。
試験片錫コバルト合金の膜厚:0.5μm
表面層溶解時 印加電圧:0.3V
(実験例2)
試験片錫コバルト合金の膜厚:0.5μm
表面層溶解時印加電圧:1V
(実験例3)
試験片錫コバルト合金の膜厚:0.5μm
表面層溶解時 印加電圧:3.0V
試験片錫コバルト合金の膜厚:5μm
表面層溶解時 印加電圧:0.3V
(実験例5)
試験片錫コバルト合金の膜厚:5μm
表面層溶解時 印加電圧:1.0V
(実験例6)
試験片錫コバルト合金の膜厚:5μm
表面層溶解時 印加電圧:3.0V
試験片錫コバルト合金の膜厚:0.5μm
表面層を溶解するときの加温温度:30℃
(比較例2)
試験片錫コバルト合金の膜厚:5μm
表面層を溶解するときの加温温度:30℃
本発明の第2実施形態においては、前述の第1実施形態と同様に下地層浸漬段階において前述のように下地層が部分的に露出しためっき用冶具を下地層溶解溶液に浸漬するが、このときに通電を行う。本実施形態においては、通電を行うことにより、第1実施形態よりも短い時間で下地層を剥離することができる。
(試験2)
試験片として、下地層としてCu層5μmおよびNi層5μmをめっきした樹脂片と、Cu層25μmとNi層25μmをめっきした樹脂片とを準備する。以下の実験例7から12および比較例3において、下地層が溶解する時間を比較する。
実験例7から12では、下地層溶解溶液として硝酸(400g/L)を用い、通電を行った。比較例3および4では、下地層溶解溶液として硝酸(400g/L)を用い、通電を行わなかった。
試験片の下地層の膜厚:10μm
印加電圧:0.3 V
電圧印加時間:5 分間
(実験例8)
試験片の下地層の膜厚: 10μm
印加電圧:1.0 V
電圧印加時間:2 分間
(実験例9)
試験片の下地層の膜厚:10μm
印加電圧:3.0 V
電圧印加時間:1 分間
(実験例10)
試験片の下地層の膜厚:50μm
印加電圧:0.3 V
電圧印加時間:10 分間
(実験例11)
試験片の下地層の膜厚:50μm
印加電圧:1.0 V
電圧印加時間:4 分間
(実験例12)
試験片の下地層の膜厚:50μm
印加電圧:3.0 V
電圧印加時間:2 分間
試験片の下地層の膜厚:10μm
印加電圧:無し
(比較例4)
試験片の下地層の膜厚:50μm
印加電圧:無し
上述の実施形態においては、めっき用冶具の導電部に形成される下地層および錫合金表面層の剥離に本発明を適用する形態を示したが、本発明は、めっき不良の錫めっき処理材の下地層および錫合金表面層の剥離に適用してもよい。めっき不良のめっき処理材に対しても、上述と同様の手順を行うことにより、下地層および錫合金表面層を短時間に容易に剥離することができ、めっき処理前の基材の状態に戻すことができる。ここで、下地層は複数の層で形成されていてもよく、基材は金属であっても樹脂であってもよい。また、表面層溶解段階で印加する電圧は、本実施形態の基材に損傷を与えない程度とする。
本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
Claims (3)
- 基材の表面に形成される下地層と、その下地層の表面に形成される錫合金表面層とを有する錫めっき処理材の被膜剥離方法であって、
表面層溶解溶液に前記錫めっき処理材を浸漬して通電し、前記下地層が少なくとも部分的に露出する程度に前記錫合金表面層を溶解する、表面層溶解段階と、
前記下地層が部分的に露出した前記錫めっき処理材を下地層溶解溶液に浸漬する、下地層浸漬段階と、
前記下地層を前記下地層溶解溶液に溶解し、前記錫めっき処理材に残存する前記錫合金表面層を前記下地層から剥離する、被膜剥離段階と、
を含み、
前記表面層溶解溶液は、フッ素またはフッ素化合物を含む酸性溶液またはアルカリ性溶液のいずれか一つであることを特徴とする錫めっき処理材の被膜剥離方法。 - 基材の表面に形成される下地層と、その下地層の表面に形成される錫合金表面層とを有する錫めっき処理材の被膜剥離方法であって、
表面層溶解溶液に前記錫めっき処理材を浸漬して通電し、前記下地層が少なくとも部分的に露出する程度に前記錫合金表面層を溶解する、表面層溶解段階と、
前記下地層が部分的に露出した前記錫めっき処理材を下地層溶解溶液に浸漬する、下地層浸漬段階と、
前記下地層を前記下地層溶解溶液に溶解し、前記錫めっき処理材に残存する前記錫合金表面層を前記下地層から剥離する、被膜剥離段階と、
を含み、
前記下地層溶解溶液は、硝酸であることを特徴とする錫めっき処理材の被膜剥離方法。 - 基材の表面に形成される下地層と、その下地層の表面に形成される錫合金表面層とを有する錫めっき処理材の被膜剥離方法であって、
表面層溶解溶液に前記錫めっき処理材を浸漬して通電し、前記下地層が少なくとも部分的に露出する程度に前記錫合金表面層を溶解する、表面層溶解段階と、
前記下地層が部分的に露出した前記錫めっき処理材を下地層溶解溶液に浸漬する、下地層浸漬段階と、
前記下地層を前記下地層溶解溶液に溶解し、前記錫めっき処理材に残存する前記錫合金表面層を前記下地層から剥離する、被膜剥離段階と、
を含み、
前記下地層浸漬段階において、前記錫めっき処理材を下地層溶解溶液に浸漬するときに通電を行うことを特徴とする錫めっき処理材の被膜剥離方法。
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