JP4784874B2 - 改良耐熱性エンドグルカネース及びその遺伝子 - Google Patents
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ース、及びその製造方法に関する。
、自然界に最も多く存在するバイオマスである。セルロースは、結晶状又は非結晶状で、リグニン、ヘミセルロース類、ペクチン類などと複雑に結合して植物組織を構成している。
グルコシダーゼに大別される。
解することから、セルロースの加水分解処理に有効な酵素である。本エンドグルカネースは、セルロースのみならず、通常、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、リグニン、穀物のβ-D-グルカンのような混合β-1,3-グルカン、キシログルカン及びセルロース部分を含有する他の植物材料などのβ-1,4-結
合のエンド型での加水分解を触媒する反応を触媒するとされている。
ることが難しく、また夾雑タンパク質が同時に生産されるという難点がある。
(i) 好熱性古細菌パイロコッカスホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来のエンドグルカネース(アミノ酸数431個)について、そのカルボキシル末端(以下、「C末端」という)側から43個のアミノ酸を削除したポリペプチドは、外来タンパク質として大腸菌およびその他の宿主(枯草菌、バチラスブレビス等)を使用して生産させた場合、改変前のエンドグルカネースに較べて、活性を示す形態での発現量が向上する。
(ii) 上記のC末端から43個のアミノ酸を除去したポリペプチドのシステイン残基をアラ
ニン残基に変換したものは、外来タンパク質として大腸菌およびその他の宿主(枯草菌、バチラスブレビス、酵母等)を使用して生産させた場合、S−S結合の形成が不必要であるために蛋白質の折り畳み効率が向上し、分泌生産し易くなり、その結果分泌生産量が向上する。なお、システイン残基の置換により、酵素の耐熱性及び分子活性は若干低下するが、実用上十分な耐熱性及び分子活性を有している。
(iii) パイロコッカスホリコシ由来の耐熱性エンドグルカネースの遺伝子配列中に存在
するリボソーム結合配列(以下、「SD配列」という)を、それがコードするポリペプチド
のアミノ酸配列を変化させることなく除去して、リボゾームとの結合能を消滅させることにより、この遺伝子の発現に際して異種タンパク質が同時に生産されるのが回避される。
(1) 配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(2) 配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハ
イブリダイズし、配列番号3の塩基番号731〜748に対応する部分にSD配列が含まれず、かつ耐熱性エンドグルカネース活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(I)ジスルフィド(s−s)結合欠失耐熱性エンドグルカネース
本発明のジスルフィド結合を欠失させた耐熱性エンドグルカネースは、天然型耐熱性エンドグルカネースの全領域又は耐熱性エンドグルカネース活性を示す一部の領域のシステイン残基の1又は2以上が他のアミノ酸に置換された酵素である。
には、2個のジスルフィド結合が存在する。この場合、4個のシステイン残基のうち好ましくは2個、より好ましくは4個を置換すればよい。
質的に活性が低下しない。
り好ましい。
天然型耐熱性エンドグルカネースの全部又は一部
天然型耐熱性エンドグルカネースは、セルロースを構成するD-グルコース間のβ-1,4-
結合の加水分解による開裂を触媒できる酵素である。そのようなエンドグルカネースのEC番号は3.2.1.4である。
が、この膜結合領域の全部又は一部を削除することにより、インクルージョンボディになり難くなり、すなわち活性を示す形態での発現量が著しく向上する。
しい。
することにより発現量が効果的に増大する。特にロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、プロリンを削除することによる効果が大きい。
したものを用いることが好ましく、これにより宿主による生産を効率的に行うことができる。
<エンドグルカネース活性測定法>
本発明において、エンドグルカネース活性は、結晶性セルロースを基質としたソモジーネルソン法(Hiromi, K., Takahashi, Y. and Ono, S. Bull. Chem. Soc. Jpn. (1963)
36: 563-569)により加水分解後に生じる還元末端を定量することにより求めた値であ
る。
する。この基質溶液の1mlにエンドグルカネースを10〜100μl添加し、85℃で加水分解反応を行い、加水分解により得られる糖鎖の還元性末端を定量することによりエンドグルカネース活性の初速度を求める。酵素活性は、1分子の酵素が、何回基質分子に作用したかを示す分子活性として表す。
アミノ酸配列
本発明のジスルフィド結合を消去した改良耐熱性エンドグルカネースの1例としては、以下の(3)又は(4)のポリペプチドが挙げられる。
(3) 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(4) 配列番号2において1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミ
ノ酸配列からなり、かつ、エンドグルカネース活性を有するポリペプチド。
度のアミノ酸が欠失、付加又は置換されたものであることが好ましい。
ンドグルカネースをコードするポリヌクレオチド(配列番号4)の5'末端からシグナル配列(塩基番号1〜84)を削除し、これに代えて開始コドンATGを付加し、システイン残基
をコードする4個のコドンをアラニン残基をコードするコドンに置換し、さらにC末端か
ら43塩基を削除することにより得たものである。
コードするタンパク質を大腸菌の発現系を使用することにより得られる。遺伝子配列
本発明のジスルフィド結合を消去したエンドグルカネース遺伝子の1例としては、以下の(1)又は(2)のポリヌクレオチドが挙げられる。
(1) 配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(2) 配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハ
イブリダイズし、かつ耐熱性エンドグルカネース活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
DNA及びRNAの双方が含まれる。また1本鎖及び2本鎖の双方が含まれ、2本鎖ポリヌク
レオチドにはDNA・RNAハイブリッドも含まれる。さらに、本発明の目的を達成できる範囲であれば、修飾されたDNA(例えばホスホロチオエートDNA、H-ホスホネートDNA)及び修
飾されたRNAも含まれる。
中65℃一夜の条件下、又はホルムアミドを含む4×SSC中37℃一夜の条件下においてハイ
ブリダイズし、2×SSC中55℃での30分間の洗浄によりそのDNAから脱離しない条件が挙げられる。
(II)SD配列消去耐熱性エンドグルカネース遺伝子
本発明のSD配列を消去した耐熱性エンドグルカナーゼをコードするポリヌクレオチドは、耐熱性エンドグルカネースの全領域又は耐熱性エンドグルカネース活性を示す一部の活性領域をコードするポリヌクレオチドにおいて、このポリヌクレオチドがコードするアミノ酸を変化させることなくポリヌクレオチドに含まれるSD配列を消去したポリヌクレオチドである。
、パイロコッカスホリコシ由来の天然型耐熱性エンドグルカネース遺伝子を改変したものである。
(5) 配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(6) 配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条
件下でハイブリダイズし、配列番号3の塩基番号731〜748に対応する部分にSD配列が含まれず、かつエンドグルカネース活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
5%以内の範囲で、ヌクレオチドの欠失、付加又は置換を行ったものであることが好まし
い。
本発明のベクターは、上記(3)若しくは(4)のポリヌクレオチド(ここではDNA)、又は
上記(5)若しくは(6)のポリヌクレオチド(ここではDNA)が挿入された組み換えベクター
である。ベクターとしては公知の細菌用、酵母用、動物細胞用等のものを広く使用できる。公知のベクターとしては、大腸菌ベクターのpBR322、pUC19、pKK233-2など、バチルス
用ベクターとしてはpUB110、pC197、pE194、pTHT15、pBD16など、酵母用ベクターとして
はYip5、Yrp17、Yep24など、動物細胞用としてはpUC18、pUC19、M13mp18などが挙げられ
る。
本発明の形質転換体は、本発明の組み換えベクターを保持する形質転換体である。宿主は、ベクターに適したものを使用すればよい。目的タンパク質の生産量が多い点で、バチルス属細菌(例えばバチルスズブティリス、バチルスブレビス)、酵母、カビなどが好ましい。形質転換方法は当業者に周知である。
本発明の改良耐熱性エンドグルカネースの製造方法は、上記本発明の形質転換体を培養し、培養物から改良耐熱性エンドグルカネースを回収する方法である。
パイロコッカスホリコシJCM9974及びパイロコッカスフリオーサスJCM8422を、次の方法で培養した。
して嫌気性とした後、JCM9974およびJCM8422をそれぞれ植菌した。培地が嫌気性となったか否かはNa2S溶液を加えて、培養液中でNa2Sによるレザスリン溶液のピンク色が着色しないことにより確認した。この培養液を95℃で2〜4日培養した。
JCM9974及びJCM8422の染色体DNAを以下の方法により調製した。
実施例2で得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIにより部分分解後アガロースゲル電気
泳動により約40kb長の断片を調製した。このDNA断片と制限酵素HindIIによって完全分解
したBACベクターpBAC108L及びpFOS1とをそれぞれT4リガーゼを用いて結合させた。
より導入した。後者のベクターpFOS1を用いた場合には結合終了後のDNAをGIGA Pack Gold
(ストラタジーン社製)により試験管内でλファージ粒子内に詰め込み、この粒子を大腸菌に感染させることによりDNAを大腸菌内に導入した
これらの方法により得られた抗生物質クロラムフェニコール耐性の大腸菌集団をBAC及
びFosmidライブラリーとした。ライブラリーからJCM9974及びJCM8422の染色体をカバーするのに適したクローンをそれぞれ選択して、クローンの整列化を行った。
実施例3で決定されたBACクローン及びFosmidクローンの各塩基配列について、大型計
算機による解析を行い、パイロコッカスホリコシJCM9974の染色体DNAからエンドグルカネースをコードする遺伝子が同定された。
天然型エンドグルカネース構造遺伝子領域の第162番目のシステイン残基をアラニン残
基に変換する目的でDNAプライマー5'-GGAATTCCATATGGAAAATACAACATATCAAACACC-3'(配列
番号5)及び5'-TGGTTTTACAGACTCAGTAGCGAAAGGAAGTCTTATTGC-3'(配列番号6)を合成し、
PCRでその遺伝子のアミノ酸残基の第85〜168番目に相当する領域の断片を第162番目のシステイン残基がアラニン残基に変換した形で増幅した。
AACCA -3'(配列番号7)及び5'-GAGGGGTTCTATGTGAGTGGCTCCTATCCTATGATAGTC -3'(配列番号8)を合成し、PCRでその遺伝子のアミノ酸残基の第156〜221番目に相当する領域の断片を第162番目及び第215番目のシステイン残基がアラニン残基に変換した形で増幅した。
番目に相当する領域の断片を第428番目及び第468番目のシステイン残基がアラニン残基に変換した形で増幅した。
型として、エンドグルカネース構造遺伝子を再構築する為にDNAプライマー5'-GGAATTCCATATGGAAAATACAACATATCAAACACC-3'(配列番号8)及び5'-GTAGGGATCCGTACTTCAAGAACTTTTGGAAGCACTATCCATCAATCTCTTCAG-3'(配列番号12)を用いてPCRを行い、4箇所のシステイン残基がアラニン残基に変換したエンドグルカネース構造遺伝子を得た。その遺伝子の前後
には制限酵素のNdeIサイト及びBamHIサイトが導入してありPCR反応後、制限酵素Nde I及びBamHIで37℃で2時間消化処理することにより、完全分解し、その構造遺伝子を精製した。
れを上記のエンドグルカネース構造遺伝子と、T4リガーゼで16℃、2時間反応させる
ことにより連結した。連結したDNAの一部をE. coli-JM109のコンピテントセルに導入
し形質転換体のコロニーを得た。得られたコロニーから発現プラスミドをアルカリ法で精製し、プラスミドpET-EG(delSS)を得た。
しSD配列を消去する目的で、DNAプライマー5'-CGCTTGGTGGGGTGGTAATCTAATG-3'(配列番号15)及び5'-CATTAGATTACCACCCCACCAAGCG-3'(配列番号16)を合成した。
とにより、0.4kbpのDNA断片を調製した。
及び配列番号14のDNAプライマーを用いて再度PCR反応を行い、構造遺伝子内のSD配列を欠失させた改良エンドグルカネース遺伝子を作成した。得られた約1.2kbpのDNA断片を制限
酵素NdeI及びBamHIで完全消化し、同じく制限酵素NdeI及びBamHIで切断したプラスミドpET11aと、T4DNAリガーゼを用いて16℃、3時間処理することにより連結した。この溶液の
一部をE.coliJM109に導入し、形質転換体のコロニーを得た。得られたコロニーから発現
プラスミドをアルカリ法で精製した、プラスミドpET-EG(delDS)を得た。
大腸菌(E. coli Rosetta(DE3),Novagen社製)のコンピテントセルを融解して、ファルコンチューブに0.1mL移した。その中に実施例5で得られた発現プラスミド溶液0.005mLを加え氷中に30分間放置した後、42℃で30秒間処理することによりヒートショックを与え、さらにSOC medium 0.9mLを加え、37℃で1時間振とう培養した。このようにして得た
菌液をアンピシリン及びクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートに適量塗布し、37℃で一晩培養し、形質転換体を得た。
が0.6に達するまで培養した後、IPTG(Isopropyl-b-D-thiogalactopyranoside)を加えさらに6時間培養した。培養後、7,000rpmで5分間遠心分離することにより集菌した。
公知の耐熱性エンドグルカネース精製方法と同様の手法で行なった。すなわち、集菌した菌体の10倍量の50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え、超音波ホモモジナイザーで菌体を
破砕した後、75℃で30分間加熱した後、28000 ×gで20分間遠心分離し、その上清に2.5重量%になるようにストレプトマイシン硫酸塩を加え、1時間緩やかに撹拌した。これを28000×gで20分間遠心分離した後、上清に50重量%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加し、1時間緩やかに撹拌した。
ンパク質を得た。
(1)改良耐熱性エンドグルカネースの至適pHの検討
100mM酢酸ナトリウム緩衝液、100mMリン酸緩衝液及び100mMホウ酸を含む緩衝液
(pH4〜9)を用いて基質として結晶性セルロース(アビセル;旭化成社製)の2mM溶液
を調整した。この基質溶液の1mlに、実施例7において得られた改良エンドグルカネース
を10〜100μl添加し、85℃で加水分解反応を行い、ソモジーネルソン法で加水分解された糖鎖の還元性末端を定量することによりエンドグルカネース活性の初速度を測定して求めた。酵素活性は、1分子の酵素が、何回基質分子に作用したかを示す分子活性で表した。
適pHは5.6である。
スとの活性の比較
100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)を用いて基質として結晶性セルロース(アビセル;旭化成社製)の0.5重量%溶液を調整した。この基質溶液の1mlに、実施例7において得られた改良エンドグルカネース及び別途精製したパイロコッカスホリコシJCM9974由来
の天然型エンドグルカネースをそれぞれ10〜100μl添加し、85℃で加水分解反応を行い、ソモジーネルソン法で加水分解された糖鎖の還元性末端を定量してエンドグルカネース活性の初速度を測定することにより酵素活性を求めた。
(3)耐熱性の検討
0.5% カルボキシメチルセルロースの0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)溶液にジスルフィド結合消去耐熱性エンドグルカネース(実施例7で得られた酵素)を加え、それぞれ50℃、60℃
、85℃及び95℃で10分間反応させ、(2)と同様の方法で活性を測定した。
度を示した。
ートしたところ、熱処理前の分子活性の92%が維持された。測定誤差を考慮すると、85℃で0.5時間の熱処理により実質的に活性が低下していないことが分かる。
天然型エンドグルカネース、ジスルフィド結合欠失エンドグルカネース、及びSD配列欠失エンドグルカネースを、それぞれ公知の手法で発現生産し精製した。
Claims (1)
- 配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチドを用いて、エンドグルカネースを製造する方法。
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