JP4784240B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
この明細書において、流延されたドープがエンドレスベルト上で乾燥され、エンドレスベルトから剥離しうるドープ膜の状態となって以後のものを「フィルム」と称するものとする。
近年、表示要素として広く用いられている液晶表示装置は、液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、当該液晶セルの両側に直交状態に配置される一対の偏光板等から構成され、TN(ツイステッドネマチック)、STN(スーパーツイステッドネマチック)、VA(バーティカルアラインメント)のような様々な表示モードが提案されている。なかでも、VA型の液晶セルは液晶分子が電圧オフ時に配向板に垂直で、電圧オン時に配向板に平行に配向させる、いわゆる垂直配向モードの液晶セルである。このため、黒がしっかり黒として表示され、コントラストが高く、TN型やSTN型のものに比べて、視野角が比較的広いという特徴を持っている。しかしながら、液晶画面が大きくなるに従って、更に視野角を広げたいという要望が高まっている。
ところで、偏光子を保護する目的で、偏光子の少なくとも1面に保護フィルムを貼り合わせて偏光板を形成することが行われている。液晶表示装置の視野角を更に広げるためには、この偏光板保護フィルムの厚み方向リターデーションを大きくする必要がある。そこで、特許文献1では、水酸基の含量を多くすることによりリターデーションを大きくする方法を提案している。
特開2001−100027号公報
しかし、特許文献1に記載の保護フィルムでは厚み方向リターデーションの大きさが十分ではない。フィルムを厚くすればリターデーションを更に大きくすることは可能であるが、フィルムを更に薄くしたいという市場の要求に反してしまう。また、特許文献1では水酸基の含量を多くすることにより厚み方向リターデーションを大きくすることを提案している。しかしながら、フィルムに水酸基が多く残留していると、製造時の延伸工程における延伸方向やそれに直交する方向の応力が、水酸基同士の強い化学的相互作用により、強く働く。このため、従来の光学フィルムの製造方法では、残留応力が原因となって、製造後にフィルムの寸法が大きく変化してしまう。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、製造後のフィルムの寸法変化が小さい、光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、セルロースエステルを主成分とする光学フィルムの製造方法であって、ドープを支持体上に流延してフィルムを形成する流延工程と、このフィルムを支持体から剥離する剥離工程と、剥離されたフィルムを搬送方向に直交する幅手方向に延伸する延伸工程と、延伸後のフィルムを幅手方向に緩和する緩和工程とを含み、以下の条件式(A)を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
3.35×10−4≦(Rth/d)×(1/θ)×(1/(273+T))≦1.47×10−3
・・・(A)
但し、
Rth:厚み方向リターデーション(nm)(=((nx+ny)/2−nz)×d)
d:フィルムの厚さ(μm)
nxフィルムの製膜方向に平行な方向でのフィルムの屈折率
ny:フィルムの製膜方向に垂直な方向でのフィルムの屈折率
nz:フィルムの厚み方向での屈折率
θ:緩和工程の時間(秒)
T:緩和工程の温度(℃)
である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、以下の条件式(B)を満たすことを特徴とする。
2.4≦Rth/d≦3.6。 ・・・(B)
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の製造方法において、セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.40以上2.70以下であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法において、セルロースエステルの炭素数3以上のアシル基の置換度が0を超えて1.1以下であることを特徴とする。
請求項1記載の発明のように緩和工程の時間及び温度を設定することにより、フィルムの残留応力を緩和工程で有効に減らすことができる。このため、製造後の寸法変動を小さく抑えることができる。また、請求項2記載の発明によれば、従来と比べてフィルムの厚みを増すことなく、厚み方向リターデーションを大きくすることができる。そのためには、請求項3または4に記載のように置換度を設定するとよい。
以下、本発明について、具体的に説明する。
本実施形態の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルは、アシル基の総置換度が2.40以上2.70以下、炭素数3以上のアシル基の置換度が0を超えて1.1以下であり、従来のセルロースエステルフィルムよりも置換度をやや低く抑えている。これにより、厚み方向リターデーション値を大きくでき、視野角特性に優れた偏光板用保護フィルムが得られる。
アシル基の総置換度が2.40以上2.70以下のセルロースエステルとは、アセチル基やプロピオニル基で、セルロースの水酸基を常法により所定の置換度に置換したものである。具体的にはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、などが挙げられる。中でもセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、特にセルロースアセテートプロピオネートが最も好ましい。セルロースエステルの数平均分子量は、偏光板用保護フィルムとして好ましい機械的強度を得るためには、70000〜300000が好ましく、更に80000〜200000が好ましい。セルロースエステルの合成方法は通常の方法で合成できる。例えば、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96により測定することができる。
本実施形態のセルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60重量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60重量%以上が好ましく、より好ましくは85重量%以上、更には、単独で使用することが最も好ましい。
本実施形態のセルロースエステルフィルムの主成分であるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
本実施形態の偏光板保護フィルムには、セルロースエステルと溶剤のほかに、可塑剤を含有する。そして、本実施形態のフィルムが含有する可塑剤の一種は、次の一般式(I)で表される芳香族末端エステル系可塑剤である。
B−(G−A)n−G−B ・・・(I)
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(I)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本実施形態で使用されるエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することが出来る。
本実施形態のエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
また、本実施形態の芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
また、本実施形態の芳香族末端エステルの炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
本実施形態の芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
化合物の一例を(1)〜(13)に示す。
Figure 0004784240
Figure 0004784240
本実施形態で使用されるエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜2000、より好ましくは500〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(分子末端に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価及び水酸基価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
本実施形態のセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。これら紫外線吸収剤の1種以上用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。本発明における紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対する重量%で、0.1重量%〜2.5重量%、好ましくは、0.5重量%〜2.0重量%、より好ましくは0.8重量%〜2.0重量%である。紫外線吸収剤の使用量が2.5重量%より多いと透明性が悪くなる傾向があり好ましくない。
また本発明のセルロースエステルフィルムには、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。微粒子は、2次粒子の平均粒径が0.01〜1.0μm、含有量が、セルロースエステルに対して0.005〜0.3重量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均径が大きいほうがマット効果は大きく、平均径の小さいほうは透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はフィルム中では、通常、凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL200、300、R972、R974、R202、R812,OX50、TT600などがあげられ、好ましくはAEROSILR972、R974、R202、R812などがあげられる。
本実施形態の偏光板用保護フィルムが表面に設けられる偏光子は、従来から公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリビニルアルコールの如きの親水性ポリマーからなるフィルムを、沃素の如き二色性染料で処理して延伸したもの等を用いることが出来る。そして、偏光板は、上記偏光板用保護フィルムを偏光子の少なくとも片面側に積層したものとして構成される。
本発明の偏光板用保護フィルムは、厚み方向リターデーションRth(nm)と厚みd(μm)とが次の条件式(B)を満足する。
2.4≦Rth/d≦3.6 ・・・(B)
ここで、厚み方向リターデーションは、次の式で定義される値である。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、
nxフィルムの製膜方向に平行な方向でのフィルムの屈折率
ny:フィルムの製膜方向に垂直な方向でのフィルムの屈折率
nz:フィルムの厚み方向での屈折率
である。
Rth/dを2.4以上とすることで、フィルムの厚さを増すことなく、大きな厚み方向リターデーションを達成することができ、従来よりも視野角の広いVA型液晶表示装置を得ることができる。しかし、Rth/dが3.6を超えようとすると、厚み方向リターデーション以外の特性について、所望の特性を得られなくなってしまう。
厚み方向リターデーション値(Rth値)の測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めることにより得られる。
本実施形態においては、セルロースエステルを溶解して得られるドープを支持体上に流延(流延工程)した後、支持体から剥離し(剥離工程)、剥離したフィルムを延伸(延伸工程)し、緩和(緩和工程)した後、乾燥(後乾燥工程)して、ロールに巻取り(巻取工程)、セルロースエステルフィルムを得る。
これを、図面を参照して説明すると、まず図1に示すように、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープが、流延ダイ2によって回転金属製エンドレスベルトからなる支持体1上に流延される(流延工程)。流延工程における支持体1は、図1に示すようなベルト状、もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。流延によって支持体1上に形成されたウェブWは、支持体1上を約一周したところで、剥離ロール3によって剥離される(剥離工程)。支持体1から剥離されたフィルムFは、テンター4での延伸工程及び緩和工程を経る。テンター4の通過後、フィルムFは乾燥装置5内に送り込まれる。乾燥装置5では、一般にロール懸垂方式によりハウジング内に千鳥状に配置されたすべての搬送ロール6を経由して搬送され、その搬送中に乾燥風吹き込み口7から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられる。乾燥により得られたセルロースエステルフィルムFは、巻取ロール8に巻き取られる。
フィルムの製造に際しては、次の方法を用いることが高い厚み方向リターデーション値を得る上で有用であり好ましい。
(1)フィルムFを支持体1から剥離する時の残留溶媒量を少なくするとリターデーション(Rth値)は増加し、多くすると減少する。好ましい剥離時の残留溶媒量は5%〜100%、より好ましくは5%〜80%、更に好ましくは10%〜45%である。
フィルム中の残留溶媒量は次式で表される。
残留溶媒量=残存揮発分重量/加熱処理後フィルム重量×100%
なお残存揮発分重量はフィルムを115℃で1時間加熱処理したとき、加熱処理前のフィルム重量から加熱処理後のフィルム重量を引いた値である。
(2)支持体1からフィルムFを剥離する際の張力(剥離張力)ならびに、フィルムFが乾燥装置5内を搬送する際の張力(搬送張力)は、大きくするとリターデーション(Rth値)は減少し、小さくすると増加する。好ましい剥離張力は5〜40kg/m、より好ましくは10〜30kg/m、更に好ましくは10〜25kg/mである。また、搬送張力として、好ましくは5〜20kg/m、より好ましくは8〜15kg/m、更に好ましくは8〜12kg/mである。
(3)テンター4でフィルムを延伸しながら乾燥する場合、延伸倍率(延伸前後の寸法の比)が大きくなると、リターデーション(Rth値)は増加し、小さくすると減少する。好ましい延伸倍率は2〜50%、より好ましくは5〜40%、更に好ましくは10〜30%である。
図2は、テンター4の機構の例を示している。図2に示すように、テンター4は、ハウジング10の左右両側部において、多数のクリップ11がチェン状態につながれており、これらのクリップ11が1つの輪になってレール12上を走行することで、フィルムFが把持搬送されるようになっている。各クリップ11は、図示は省略したが、揺動自在な押えアームを備えていて、テンター4 の左右両側において、受け台上のフィルムFの幅手方向両端部が、テンター4の押えアームの曲面形先端部と受け台とで挟まれ(クリップされ)て、延伸させられながら一緒に搬送されると同時に、乾燥される。なお、幅手方向とは、フィルムFの面内において、フィルムFの搬送方向に直交する方向のことである。
テンター4内では、セルロースエステルフィルムFは、これの幅手方向両端部を把持された状態で、フィルムFの幅保持ゾーンA、フィルム幅手方向延伸ゾーンB 、延伸状態でのフィルム幅保持ゾーンC 、及び緩和ゾーンDを順次通過して、フィルム幅手方向延伸処理が行なわれるものである。
ここで、テンター4におけるフィルムの幅保持ゾーンAとは、テンター4の入口から延伸開始点aまでのフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が一定のゾーンをいう。また延伸ゾーンBとは、テンター4の延伸開始点aから延伸終了点bまでのフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が進行方向(搬送方向)に広がるゾーンをいう。延伸状態でのフィルム幅保持ゾーンCとは、テンター4の延伸終了点bから緩和開始点cまでの延伸後のフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が一定のゾーンをいう。
さらに、緩和ゾーンDとは、テンター4の緩和開始点cから緩和終了点dまでのフィルム幅(ベース両端)の把持クリップ間距離が進行方向(搬送方向)に狭まるゾーンをいう。この場合、緩和処理とは、上述のように、フィルム幅を進行方向(搬送方向)に狭めるような把持のパターンを指し、フィルムFが幅手方向にピンと張らない、すなわちフィルム幅手方向に応力を与えないようなプロセスを緩和処理といい、この緩和処理は、フィルム端部の把持中に行なわれるものである。
テンター4におけるレール12は、通常、屈曲可能なレールとなっており、このレール12が曲がることで、左右両端クリップ間距離が変わり、幅保持ゾーンA、延伸ゾーンB 、幅保持ゾーンC、及び緩和ゾーンDを構成することができる。延伸ゾーンBが本発明の延伸工程に相当し、緩和ゾーンDが緩和工程に相当する。なお、これらのゾーンの組み合わせは、図示のものにかぎらず、どのような順序に組み合わせられていても良い。
また、図示のテンター4は、クリップテンター方式であるが、これはその他、ピンテンター方式であってもよく、いずれにしても、テンター方式でフィルムFの幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
本実施形態においては、緩和ゾーンDをフィルムFが通過するのに要する時間θ(秒)、緩和ゾーンDの温度T(℃)が、次の条件式(A)を満たすように設定されている。
3.35×10−4≦(Rth/d)×(1/θ)×(1/(273+T))≦1.47×10−3
・・・(A)
この条件式(A)を満足させることにより、フィルムFの残留応力を適度に緩和することができる。これにより、製造後の残留応力による寸法変動を小さく抑えることができる。
条件式(A)の上限を超える、即ち緩和時間が短すぎたり、緩和温度が低すぎたりすると、フィルムの残留応力を緩和しきれなくなる。このため、製造後の寸法変動を抑えることができなくなる。
一方、条件式(A)の下限を超える場合として、緩和時間を長くする場合には、緩和工程の距離を長くしなければならないので好ましくない。また、緩和温度が高すぎる場合には、可塑剤が蒸発して減少してしまう。
以下、本発明の実施例1〜9を比較例1〜3とともに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜9及び比較例1〜3は互いに製造条件が異なるが、ドープ液は共通である。まず、アセチル置換度2.55のセルロースアセテートプロピオネート(数平均分子量170000)100重量部、芳香族末端エステル系可塑剤(化合物一例(13))5重量部、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール1重量部、エチルフタリルエチルグリコレート4重量部をジクロロメタン450重量部とエチルアルコール50重量部の混合溶媒に混合して、ドープを得た。
このドープを実施例1〜9及び比較例1〜3の各条件で製膜し、セルロースエステルフィルムを得た。その結果を表1に示す。なお、表1には製膜条件以外も記載している。これらを順次説明する。
Figure 0004784240
表1に示すように、実施例1〜9及び比較例1〜3は、緩和時間θ及び緩和温度Tを互いに異ならせている。その結果得られたフィルムにおいて、厚みd、厚み方向リターデーションRthは互いに異なっている。しかし、Rth/dの値は実施例1〜9及び比較例1〜3全てが条件式(B)を満たすように、緩和条件以外の製造条件が調整されている。その結果、条件式(A)の対応値((Rth/d)×(1/θ)×(1/(273+T)))については、実施例1〜9は条件式(A)を満足するが、比較例1〜3は条件式(A)を満足しない結果となっている。
表1の右端の2列(MDとTD)は寸法変動率を測定した結果である。この寸法変動率は製造後のフィルムを温度80℃、湿度90%の環境に100時間放置したときの寸法の変動量を、放置前の寸法で除したものであり、MDはフィルムの搬送方向における寸法変動率、TDはフィルムの幅手方向における寸法変動率を示している。条件式(A)を満たさない比較例1〜3については、いずれも0.6%以上縮んだのに対し、条件式(A)を満たす実施例1〜9については、寸法変動率がプラスマイナス0.25%以下という良好な結果を得ることができた。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する製造装置の概略側面図である。 図1の製造装置の中の延伸装置(テンター)の概略平面図である。
符号の説明
F :セルロースエステルフィルム
1 :ステンレス鋼製エンドレスベルト(支持体)
3 :剥離ロール
4 :テンター
5 :乾燥装置
6 :搬送ロール
8 :巻取ロール

Claims (4)

  1. セルロースエステルを主成分とする光学フィルムの製造方法であって、
    ドープを支持体上に流延してフィルムを形成する流延工程と、
    このフィルムを支持体から剥離する剥離工程と、
    剥離されたフィルムを搬送方向に直交する幅手方向に延伸する延伸工程と、延伸後のフィルムを幅手方向に緩和する緩和工程とを含み、
    以下の条件式を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法
    3.35×10−4≦(Rth/d)×(1/θ)×(1/(273+T))≦1.47×10−3
    但し、
    Rth:厚み方向リターデーション(nm)(=((nx+ny)/2−nz)×d)
    d:フィルムの厚さ(μm)
    nxフィルムの製膜方向に平行な方向でのフィルムの屈折率
    ny:フィルムの製膜方向に垂直な方向でのフィルムの屈折率
    nz:フィルムの厚み方向での屈折率
    θ:緩和工程の時間(秒)
    T:緩和工程の温度(℃)
    である。
  2. 以下の条件式を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法
    2.4≦Rth/d≦3.6。
  3. セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.40以上2.70以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. セルロースエステルの炭素数3以上のアシル基の置換度が0を超えて1.1以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
JP2005289395A 2005-09-30 2005-09-30 光学フィルムの製造方法 Active JP4784240B2 (ja)

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