JP4784018B2 - 半導体スイッチのゲート駆動回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体スイッチのゲートを電圧駆動する半導体スイッチのゲート駆動回路(以下、単にゲート駆動回路という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、従来のゲート駆動回路の回路図である。
このゲート駆動回路は、三相インバータ等に半導体スイッチとして組込まれたNチャネル型MOSトランジスタ(以下、NMOSという)1のゲートGを電圧駆動するものであり、フォトカプラ10と、抵抗20と、ツェナーダイオード21と、コンデンサ22と、を備えている。
【0003】
フォトカプラ10は、対をなす信号入力端子a1,a2間に接続された発光素子11と、受光素子12と、受光素子12の出力側に接続された増幅器13と、増幅器13の出力端子にベースがそれぞれ接続されたNPN型トランジスタ14及びPNP型トランジスタ15とから形成されている。
トランジスタ14のコレクタは、電源端子A1に接続され、トランジスタ14のエミッタがトランジスタ15のエミッタ及びNMOS1のゲートGに接続されている。トランジスタ15のコレクタが電源端子A2に接続されている。
【0004】
電源端子A1に、抵抗20の一端が接続されている。抵抗20の他端には、ツェナーダイオード21のカソードと、コンデンサ22の一方の電極とが接続されている。ツェナーダイオード21のアノード及びコンデンサ22の他方の電極は、電源端子A2に接続されている。抵抗20の他端とツェナーダイオード21のカソードとコンデンサ22の一方の電極との接続点が、NMOS1のソースSに接続されている。電源端子A1,A2は、図示しない直流電源に接続される。信号入力端子a1,a2は、図示しない制御回路に接続される。また、NMOS1のドレイン及びソースSは、図示しない主回路に接続される。
【0005】
このゲート駆動回路では、電源端子A1の電位を15[V]、電源端子A2の電位を0[V]とする。また、ツェナーダイオード21の電圧を5[V]とする。ツェナーダイオード21及び抵抗20に電流が流れ、ツェナーダイオード21のカソードの電位は、5[V]になる。よって、コンデンサ22は、5[V]に充電され、NMOS1のソースSの電位が5[V]に設定される。
【0006】
発光素子11に与える制御信号をオンにすると、発光素子11が発光し、受光素子12が、それを受光して光電変換して高レベル(以下、“H”という)の出力信号を出力する。受光素子12の出力信号が増幅器13で増幅されてトランジスタ14,15のベースに与えられる。ベースの電位が閾値以上に上昇すると、トランジスタ14がオンし、NMOS1のゲートGの電位を電源端子A1の電位(15[V])にする。これにより、NMOS1のゲート・ソース間電圧が10[V]になり、NMOS1がオンする。
【0007】
発光素子11に与える制御信号をオフにすると、発光素子11での発光が停止し、受光素子12の出力信号は低レベル(以下、“L”という)になる。受光素子12の出力信号が“L”になると、トランジスタ14は、ベース電位が降下してオフし、それまでオフしていたトランジスタ15がオンする。これにより、NMOS1のゲートGの電位が電源端子A2の電位に設定され、NMOS1のゲート・ソース間電圧が−5[V]になってNMOS1がオフする。
【0008】
図8は、三相インバータの構成図である。
通常の三相インバータには、図8のように、図7中のNMOS1に対応する6個のNMOS1ua,1ub,1va,1vb,1wa,1wbが、組込まれている。3個のNMOS1ua,1va,1waのドレインは、電源電圧+Vに並列に接続されている。各NMOS1ub,1vb,1wbは、NMOS1ua,1va,1waとそれぞれ対をなすトランジスタであり、各NMOS1ua,1va,1waのソースが、各NMOS1ub,1vb,1wbのドレインにそれぞれ接続されている。NMOS1ub,1vb,1wbのソースが電源電圧−Vに並列に接続されている。各NMOS1ua,1va,1waのソースと各NMOS1ub,1vb,1wbのドレインとの接続点が、三相インバータの出力ノードとなる。これらの出力ノードから負荷のモータ30に対して、U相、V相及びW相の3本の電圧信号が出力される。
【0009】
対をなすNMOS1ua,1ubをオン、オフすることにより、U相の電圧信号の電圧が設定される。同様に、対をなすNMOS1va,1vbをオン、オフにより、V相の電圧信号の電圧が設定され、対をなすNMOS1wa,1wbをオン、オフすることにより、W相の電圧信号の電圧が設定される。各NMOS1ua,1ub,1va,1vb,1wa,1wbのオン、オフをそれぞれ設定するために、各NMOS1ua,1ub,1va,1vb,1wa,1wbごとに、図7の半導体スイッチのゲート駆動回路が配置される。
【0010】
これに対して、変成器(以下、トランスという)を用いたゲート駆動回路がある。
図9は、トランスを用いた従来のゲート駆動回路の回路図である。
このゲート駆動回路は、センタタップ付きトランス25と、トランス25の一次巻線25aのホット側(黒点印側)に一端が接続された別巻線25cと、別巻線25cの他端にカソードが接続されたダイオード27とを、備えている。トランス25の二次巻線25bのホット側が、駆動対象のNMOS1のゲートGに接続され、二次巻線25bのコールド側が、NMOS1のソースSに接続されている。
【0011】
一次巻線25aのホット側が、直流電源28の正極に接続され、一次巻線25aのコールド側がNMOS29を介して直流電源28の負極に接続されている。即ち、このゲート駆動回路では、一次巻線25aに、直流電源28からの直流電圧がNMOS29でオンオフされて印加される。ダイオード27のアノードも、直流電源28の負極に接続されている。NMOS29のゲート・ソース間には、図示しない制御回路が接続される。NMOS1のドレイン及びソースSは、図示しない主回路に接続される。
【0012】
このゲート駆動回路では、NMOS29をオンさせて、直流電源28で発生した例えば10[V]の電圧を一次巻線25aに印加すると、一次巻線25aと二次巻線25bの巻数比を1対1とすると、二次巻線25bのホット側とコールド側との間の電圧は、10[V]になる。この10[V]の電圧が、NMOS1のゲート・ソース間に印加され、NMOS1がオンする。
【0013】
続いて、NMOS29をオフさせると、図示しないトランス25の励磁インダクタンスの作用により、ダイオード27に電流が流れる。この電流が別巻線25cを経由して直流電源28の正極に流れ、トランス25の一次巻線25aの磁束をリセットする。このとき、二次巻線25bは、−10[V]の電圧を発生し、NMOS1のゲート・ソース間に印加する。これにより、NMOS1がオフする。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来の図7のゲート駆動回路の課題を、図8を参照しつつ、説明する。
ソースがNMOS1ubのドレインに接続されたNMOS1uaと、ソースが電源電圧−Vに接続されたNMOS1wbとをオンさせるためには、ゲート駆動回路で設定するゲートの電位はそれぞれ異なる。また、ソースが電源電圧−Vに接続されたNMOS1ubと、NMOS1wbのドレインに接続されたNMOSwaとをオフさせるためには、ゲート駆動回路で設定するゲートの電位はそれぞれ異なる。このように、6個のNMOS1ua〜1wbを適切なタイミングでオン、オフさせるためには、ゲート駆動回路で設定する電位をNMOS1ua〜1wbごとに異ならせる必要があり、複数の直流電源が必要になる。また、図7のゲート駆動回路を用いると、各ゲート駆動回路ごとに、電源端子A1,A2に電位を供給する電源線、及び信号入力端子a1,a2に制御信号を与える信号線の配線材が必要になり、配線材のコストと配線のためのコストとが三相インバータの低コスト化を阻んでいた。
【0015】
次に、トランスを用いた図9のゲート駆動回路の課題を説明する。
トランス25を用いたゲート駆動回路では、直流電源28で発生する電圧をオン、オフしてトランス25の一次巻線25aに印加するだけで、NMOS1のゲートGを電圧駆動できる。つまり、制御信号と電源電圧を分離してゲート駆動回路に与える必要がない。よって、配線材が削減可能である。
ところが、NMOS1をオンさせる期間が定常的に短い場合には、トランス25の励磁電流が不足し、トランス25の二次側巻線25bで発生する電圧が不定になることがあった。また、NMOS1をオンさせる期間が定常的に長い場合には、トランス25の励磁電流の増加で、トランス25が飽和状態になることもあった。
【0016】
本発明は、以上のような現状を鑑みてなされた発明であり、簡単な構成でしかも安定して半導体スイッチのゲートを駆動できるゲート駆動回路を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る半導体スイッチのゲート駆動回路は、半導体スイッチのゲートを電圧駆動する半導体スイッチのゲート駆動回路において、一次巻線及び該一次巻線に電流が流されたときに正の電圧を発生し、該一次巻線の電流が遮断されたときに負の電圧を発生する二次巻線を有する変成器と、前記二次巻線と前記ゲートとの間に接続され、該二次巻線が前記正の電圧を発生しているときにオンして該ゲートに該正の電圧を印加し、該二次巻線が該正の電圧を発生していないときに該二次巻線と該ゲートとの間をオフする第1のスイッチと、充電コンデンサと、前記充電コンデンサと前記二次巻線との間に接続され、該二次巻線が負の電圧を発生しているときにオンして該充電コンデンサを該負の電圧で充電する整流素子と、前記ゲートと前記充電コンデンサとの間に接続され、前記二次巻線が前記正の電圧を発生していないときに該充電コンデンサの充電電圧が供給されてオンし、該充電コンデンサに充電された前記負の電圧を該ゲートに印加する第2のスイッチと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このような構成を採用したことにより、変成器の一次巻線に電流が流れて二次巻線に発生した正の電圧が、第1のスイッチを介して半導体スイッチのゲートの印加される。一次巻線の電流が遮断されて二次巻線に発生した負の電圧は、整流素子を介して充電コンデンサに充電される。この充電コンデンサに充電された負の電圧が、オンした第2のスイッチにより、半導体スイッチのゲートに印加される。二次巻線に発生する負の電圧は、時間が経過すると減衰するが、半導体スイッチのゲートには、負の電圧を充電したコンデンサから与えられるので、安定してゲートを電圧駆動できる。
【0019】
なお、前記二次巻線が前記正の電圧を発生している期間に、前記充電コンデンサに充電されている前記負の電圧を検出し、該充電コンデンサに充電されている該負の電圧が所定電圧を越えているときには、該充電コンデンサに充電された該負の電圧を該所定電圧になるまで放電させる放電制御回路を、さらに、備えてもよい。
【0020】
また、前記放電制御回路は、前記第2のスイッチをオンさせて前記充電コンデンサに充電された前記負の電圧を前記二次巻線を介して放電させてもよい。
また、前記二次巻線が発生する前記半導体スイッチのゲートに印加される前記正の電圧は、該半導体スイッチをオンさせる電圧であり、該二次巻線が発生する前記半導体スイッチのゲートに印加される前記負の電圧は、該半導体スイッチをオフさせる電圧としてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図である。
この半導体スイッチのゲート駆動回路は、駆動対象の半導体スイッチであるNMOS1のゲートGを電圧駆動するものであり、トランス50を備えている。トランス50の一次巻線51と二次巻線52との巻数比は、例えば1対1である。
トランス50の二次巻線52のホット側は、PNP型トランジスタ53のエミッタと、抵抗54の一端と、ダイオード55のカソードと、ダイオード56のカソードとに接続されている。
【0022】
トランジスタ53は、トランス50の二次巻線52のホット側の電圧がコールド側よりも高いときにオンし、二次巻線52のホット側とNMOS1のゲートGとの間を接続する第1のスイッチである。トランジスタ53のコレクタがNMOS1のゲートGに接続され、トランジスタ53のベースが抵抗57を介して二次巻線52のコールド側に接続されている。トランジスタ53のベースに、ダイオード56のアノードが接続され、ダイオード56のカソードがトランジスタ53のエミッタに接続されている。
【0023】
トランス50の二次巻線52のコールド側は、NMOS1のソースSに接続されている。この二次巻線52のコールド側には、さらに、充電コンデンサ58の一方の電極と、抵抗59の一端と、PNP型トランジスタ60のエミッタとが接続されている。トランジスタ60のコレクタに、抵抗59の他端が接続されている。トランジスタ60のベースに抵抗54の他端が接続されている。
【0024】
コンデンサ58の他方の電極には、ダイオード55のアノードが接続されている。コンデンサ58の他方の電極及びダイオード55のアノードとの接続点には、抵抗61の一端と、抵抗62の一端と、第2のスイッチであるNPN型トランジスタ63のエミッタとが接続されている。
抵抗61の他端は、トランジスタ60のベースに接続されている。トランジスタ63のコレクタは、NMOS1のゲートGに接続され、トランジスタ63のベースが、トランジスタ60のコレクタに抵抗64を介して接続されている。トランジスタ60のコレクタと抵抗64との接続点に、抵抗62の他端が接続されている。
【0025】
このゲート駆動回路に電源を供給する直流電源Vgは、例えば10[V]の直流電圧を発生するものであり、その正極がトランス50の一次巻線51のホット側に接続されている。直流電源Vgの負極が、NMOS50sを介して一次巻線51のコールド側に接続され、一次巻線51に流れる電流が、NMOS50sでオンオフされる構成である。NMOS50sのゲート・ソース間には、図示しない制御回路が接続される。NMOS1のドレイン及びソースSは、図示しない主回路に接続される。
【0026】
次に、図1のゲート駆動回路の動作を、図2(a)〜(h)を参照しつつ説明する。
コンデンサ58には、既に5[V]が充電されているものとする。また、NMOS50sがオフ、トランジスタ53がオフ、トランジスタ60がオン、トランジスタ63がオンしているものとする。この状態で、NMOS50sのゲートに与える制御信号をオンさせて図2(a)のように、NMOS50sのゲート・ソース間電圧(VGS)を“H”にすると、NMOS50sがオンする。NMOS50sがオンすると、トランス50の一次巻線51には、直流電源Vgが発生する10[V]の電圧が印加され、一次巻線51には、図2(b)のように、直線的に増加する励磁電流I51が流れ始める。
【0027】
一次巻線51に電流I51が流れることにより、トランス50の二次巻線52は、図2(c)のように10[V]を発生する。二次巻線52が10[V]を発生すると、トランジスタ60のベース・エミッタ間電圧が、図2(g)のように逆電圧になり、トランジスタ60がオフする。トランジスタ60がオフすると、トランジスタ63のベース電位が、抵抗59,62で設定される電位になり、トランジスタ63のベース・エミッタ間電圧が、図2(h)のように、トランジスタ63の閾値Vthよりも降下する。よって、トランジスタ63がオフする。
このとき、トランジスタ53のベース・エミッタ間電圧(VBE)は、図2(f)のような順方向電圧となり、トランジスタ53がオンする。よって、NMOS1のゲート・ソース間電圧が、図2(e)のように10[V]になり、NMOS1がオンする。
【0028】
NMOS1がオンした後に、NMOS50sのゲートに与える制御信号を、図2(a)のように、オフの“L”にすると、それまでオンしていたNMOS50sがオフし、トランス50の一次巻線51に流れていた電流I51が遮断される。
【0029】
電流I51が遮断されると、トランス50の二次巻線52の両端には負の電圧が発生し、トランス50の励磁インダクタンスのエネルギーが、コンデンサ58の充電電流として、図2(d)のように、ダイオード55を介してコンデンサ58へ流れ始める。
【0030】
これと同時に、トランジスタ53のベース・エミッタ間電圧が、正電圧になり、トランジスタ53がオフする。また、図2(g)のように、トランジスタの60のベース・エミッタ間には順方向電圧が印加され、トランジスタ60がオンする。トランジスタ60がオンすることにより、図2(h)のように、トランジスタ63のベース・エミッタ間電圧が上昇し、さらに、閾値Vthを越えると、それまでオフしていたトランジスタ63がオンする。これにより、コンデンサ58とダイオード55のアノードとの接続点が、NMOS1のゲートGに接続される。よって、コンデンサ58の充電電圧をVc[V]とすると、NMOS1のゲート・ソース間には−Vc[V]が印加され、NMOS1がオフする。
【0031】
トランス50の励磁エネルギーが零になると、トランス50の二次巻線52の両端の電圧が零になるが、そのときでも、トランジスタ60,63がオンしているので、NMOS1のゲート・ソース間には−Vc[V]が印加され続ける。
なお、コンデンサ58の充電電圧であって、NMOS1のゲート・ソース間に印加される−Vc[V]の電圧は、抵抗59及び抵抗62の抵抗値と、トランジスタ63の閾値で設定される。コンデンサ58の両端の電圧を分圧する抵抗59,62の抵抗値を4[KΩ],1[KΩ]として分圧比を5分の1とし、トランジスタ63の閾値Vthを1[V]とすると、コンデンサ58の充電電圧Vc[V]は、上限が5[V]になる。もし、これ以上の電圧になると、トランス50の一次巻線51に電流I51が流れている期間に、トランジスタ63のベース・エミッタ間電圧が1[V]を越え、トランジスタ63がオンし、コンデンサ58の充電電圧が5[V]になるまで、コンデンサ58を放電させる。
【0032】
以上のように、本実施形態のゲート駆動回路では、トランス50を用い、半導体スイッチであるNMOS1のゲート・ソース間電圧を設定するようにしたので、複数の半導体スイッチを三相インバータ等に組込んだ場合でも、実際に配線する電源線の数が、最小限で収まる。また、トランス50の二次巻線52が負の電圧を発生しているときに、その負の電圧をコンデンサ58に充電し、コンデンサ58の出力電圧で、NMOS1のゲートGの電圧を設定するようにしたので、オン期間が短く、励磁エネルギーが不足している場合でも、NMOS1を確実にオフさせることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図である。
前述の第1の実施形態のゲート駆動回路では、駆動対象のNMOS1のゲートを安定して駆動する回路であったが、図3のゲート駆動回路は、半導体スイッチのPチャネル型MOSトランジスタ(以下、PMOSと言う)2のゲートを駆動する回路である。
【0034】
この半導体スイッチのゲート駆動回路は、トランス70を備えている。トランス70の一次巻線71と二次巻線72との巻数比は、例えば1対1である。トランス70の二次巻線72のコールド側は、NPN型トランジスタ73のエミッタと、抵抗74の一端と、ダイオード75のアノードと、ダイオード76のアノードとに接続されている。
【0035】
トランジスタ73は、トランス70の二次巻線72のホット側の電圧がコールド側よりも高いときにオンし、二次巻線72のコールド側とPMOS2のゲートGとの間を接続する第1のスイッチである。トランジスタ73のコレクタがPMOS2のゲートGに接続され、トランジスタ73のベースが抵抗77を介して二次巻線72のホット側に接続されている。トランジスタ73のベースに、ダイオード76のカソードが接続され、ダイオード76のアノードがトランジスタ73のエミッタに接続されている。
【0036】
二次巻線72のホット側には、PMOS2のソースSが接続されると共に、さらに、コンデンサ78の一方の電極と、抵抗79の一端と、NPN型トランジスタ80のエミッタとが、接続されている。このコンデンサ78の他方の電極は、ダイオード75のカソードに接続されている。トランジスタ80のベースは、抵抗74の他端と抵抗81の一端とに接続されている。抵抗81の他端がコンデンサ78の他方の電極とダイオード75のカソードとの接続点に接続されている。
【0037】
トランジスタ80のコレクタは、抵抗79の他端及び抵抗82の一端に接続されされると共に、抵抗84を介して第2のスイッチであるPNP型トランジスタ83のベースに接続されている。抵抗82の他端は、トランジスタ83のエミッタと共にコンデンサ78の他方の電極とダイオード75のカソードとの接続点に接続されている。トランジスタ83のコレクタがPMOS2のゲートGに接続されている。
【0038】
このゲート駆動回路に電源を供給する直流電源Vgは、例えば10[V]の直流電圧を発生するものであり、その正極がトランス70の一次巻線71のホット側に接続されている。直流電源Vgの負極が、NMOS70sを介して一次巻線71のコールド側に接続され、一次巻線71に流れる電流が、NMOS70sでオンオフされる構成である。NMOS70sのゲート・ソース間には、図示しない制御回路が接続される。PMOS2のドレイン及びソースSは、図示しない主回路に接続される。
【0039】
次に、このゲート駆動回路の動作を、図4を参照しつつ説明する。
図4は、図3のゲート駆動回路の動作を示す波形図である。
コンデンサ78には、既に5[V]が充電されているものとする。また、NMOS70sがオフ、トランジスタ73がオフ、トランジスタ80がオン、トランジスタ83がオンしているものとする。この状態で、NMOS70sのゲートに与える制御信号をオンさせて図4(a)のように、“H”にすると、NMOS70sがオンする。NMOS70sがオンすると、トランス70の一次巻線71には、直流電源Vgが発生する10[V]の電圧が印加され、一次巻線71には、図4(b)のように、直線的に増加する励磁電流I71が流れ始める。
【0040】
一次巻線71に電流I71が流れることにより、トランス70の二次巻線72の両端には、図4(c)のように、−10[V]の電圧が発生し、トランジスタ80及び83がオフする。このとき、トランジスタ73のベース・エミッタ間には、図4(f)のように順方向電圧が印加され、トランジスタ73がオンする。よって、PMOS2のゲート・ソース間電圧が、−10[V]になり、PMOS2がオンする。
【0041】
NMOS70sのゲートに与える制御信号を、図4(a)のように、オフの“L”にすると、それまでオンしていたNMOS70sがオフし、トランス70の一次巻線71に流れていた電流I71 が遮断される。電流I71が遮断されると、トランス70の二次巻線72の両端には逆電圧が発生し、トランス70の励磁インダクタンスのエネルギーは、図7(d)のように、ダイオード75を介してコンデンサ78に流れ始める。
【0042】
これと同時に、トランジスタ73のベース・エミッタ間電圧が、負電圧になり、トランジスタ73がオフする。また、図4(g)のように、トランジスタ80のベース・エミッタ間には順方向電圧が印加され、トランジスタ80がオンする。トランジスタ80がオンすることにより、図4(h)のように、トランジスタ83のベース・エミッタ間電圧が降下し、さらに、閾値Vthを下回ると、それまでオフしていたトランジスタ83がオンする。これにより、コンデンサ78とダイオード75のカソードとの接続点が、PMOS2のゲートGに接続される。よって、コンデンサ78の充電電圧をVc[V]とすると、PMOS2のゲート・ソース間にはVc[V]が印加され、PMOS2がオフする。
【0043】
トランス70の励磁エネルギーが零になると、トランス70の二次巻線72の両端の電圧が零になるが、そのときでも、トランジスタ80,83がオンするので、PMOS2のゲート・ソース間にはVc[V]が印加され続ける。
なお、コンデンサ78の充電電圧のVc[V]は、抵抗79及び抵抗82の抵抗値と、トランジスタ83の閾値で設定される。コンデンサ78の両端の電圧を分圧する抵抗79,82の抵抗値を4[KΩ],1[KΩ]として分圧比を5分の1とし、トランジスタ83の閾値を1[V]とすると、コンデンサ78の充電電圧Vc[V]は、上限が5[V]になる。もし、これ以上の電圧になると、一次巻線71に励磁電流I71が流れている期間に、トランジスタ83がオンし、コンデンサ78の充電電圧が5[V]になるまで放電させる。
【0044】
以上のように、この第2の実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路は、第1の実施形態と同様に、トランス70を用い、PMOS2のゲート・ソース間電圧を設定するようにしたので、複数の半導体スイッチを三相インバータ等に組込んだ場合でも、実際に配線する電源線の数が、最小限で収まり、低コスト化が可能になる。また、トランス70の二次巻線72が逆電圧を発生しているときに、その電圧をコンデンサ78に充電し、コンデンサ78の出力電圧で、PMOS2のゲートGの電圧を設定するようにしたので、オン期間が短く、励磁エネルギーが不足している場合でも、PMOS2を確実にオフさせることができる。
【0045】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図であり、図3中の要素と共通する要素には、共通の符号が付されている。
この半導体スイッチのゲート駆動回路と第2の実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路と異なる点は、駆動対象となる半導体スイッチがPMOS2からNMOS1に変化した点であり、ゲート駆動回路自体の構成は、図3と同様になっている。
【0046】
このゲート駆動回路では、NMOS70sをオンさせることにより、第2の実施形態と同様に動作し、トランス70の一次巻線71に励磁電流が流れ、二次巻線72が10[V]の電圧を発生する。この電圧がオンしたトランジスタ73を介してNMOS1のソース・ゲート間に印加され、NMOS1がオフする。
NMOS70sをオフさせることにより、ゲート駆動回路は、第2の実施形態と同様に動作し、励磁エネルギーが充電コンデンサ78へ流れてコンデンサ78が充電される。このコンデンサ78に充電された電圧が、トランジスタ80,83がオンすることにより、NMOS1のゲートGに印加され、NMOS1がオンする。
【0047】
以上のように、本実施形態のゲート駆動回路では、トランス70の一次巻線71に励磁電流を流してNMOS1をオフし、励磁電流を遮断したとき、NMOS1をオンさせている。即ち、NMOS1を「負論理」でオン、オフさせる。そのため、次のような利点が得られる。
【0048】
一次巻線71の励磁電流を流す期間が長くなると、磁気飽和状態になる。磁気飽和状態になると、二次巻線72で電圧を発生できなくなる。そのため、第1の実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路で、例えばNMOS1を90パーセントの高いオンデューティ比で駆動するときには、磁気飽和状態になる可能性が高く、磁気飽和状態になればNMOS1の安定した駆動ができないおそれがあった。これに対し、本実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路では、NMOS1をオンさせる期間には、一次巻線71に、励磁電流を流さない。よって、磁気飽和状態にならず、NMOS1の駆動が安定する。
【0049】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図であり、図1中の要素と共通する要素には、共通の符号が付されている。
この半導体スイッチのゲート駆動回路と第1の実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路と異なる点は、駆動対象となる半導体スイッチをNMOS1からPMOS2に変化したことだけであり、ゲート駆動回路自体の構成は、図1と同様になっている。
【0050】
このゲート駆動回路では、NMOS50sをオンさせることにより、第1の実施形態と同様に動作し、トランス50の一次巻線51に励磁電流が流れ、二次巻線52が10[V]の電圧を発生する。この電圧がオンしたトランジスタ53を介してPMOS2のゲート・ソース間に印加され、PMOS2がオフする。
【0051】
NMOS50sをオフさせることにより、ゲート駆動回路は第1の実施形態と同様に動作し、励磁エネルギーが充電コンデンサ58へ流れてコンデンサ58に充電される。このコンデンサ58に充電された電圧が、オンしたトランジスタ60,63により、PMOS2のゲートGに印加され、PMOS2がオンする。
以上のように、本実施形態のゲート駆動回路では、トランス50の一次巻線51に励磁電流を流してPMOS2をオフし、励磁電流を遮断したとき、PMOS2をオフさせている。即ち、PMOS2を「負論理」でオン、オフさせる。そのため、次のような利点が得られる。
【0052】
一次巻線51の励磁電流を流す期間が長くなると、磁気飽和状態になる。磁気飽和状態になると、二次巻線52で電圧を発生できなくなる。そのため、第2の実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路で、例えばPMOS2を90パーセントの高いオンデューティ比で駆動するときには、磁気飽和状態になる可能性が高く、磁気飽和状態になればPMOS2の安定した駆動ができないおそれがあった。これに対し、本実施形態の半導体スイッチのゲート駆動回路では、PMOS2をオンさせる期間には、一次巻線51に、励磁電流を流さない。よって、磁気飽和状態にならず、PMOS2の駆動が安定する。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
(1) 第1〜第4の実施形態のゲート駆動回路で駆動対象とする半導体スイッチは、NMOS1,PMOS2に限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)でもよい。
(2) トランジスタ53,60,63,73,80,83は、MOSトランジスタやIGBTで構成してもよい。
(3) 上記実施形態では、コンデンサ58,78に充電された電圧が所定電圧を越えているときに、トランジスタ63,83をオンさせて二次巻線52,72を介してその電圧を放電させるようにしたが、トランジスタ63,83の他にトランジスタを設けて、そのトランジスタをオンさせて放電させてもよい。また、放電させる位置の変更も可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、半導体スイッチのゲートを電圧駆動して半導体スイッチをオン、オフさせるための電源線及び信号線の本数を、最小限にすることが可能である。その上、半導体スイッチのゲートの電圧駆動を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図である。
【図2】図1のゲート駆動回路の動作を示す波形図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図である。
【図4】図3のゲート駆動回路の動作を示す波形図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図である。
【図6】本発明の第4の実施形態を示すゲート駆動回路の回路図である。
【図7】従来のゲート駆動回路の回路図である。
【図8】三相インバータの構成図である。
【図9】トランスを用いた従来のゲート駆動回路の回路図である。
【符号の説明】
1 駆動対象のNMOS
2 駆動対象のPMOS
50,70 トランス
51,71 一次巻線
52,72 二次巻線
53 第1のスイッチとしてのPNP型トランジスタ
55,75 整流素子としてのダイオード
58,78 充電コンデンサ
63 第2のスイッチとしてのNPN型トランジスタ
73 第1のスイッチとしてのNPN型トランジスタ
83 第2のスイッチとしてのPNP型トランジスタ
Vg 直流電源

Claims (4)

  1. 半導体スイッチのゲートを電圧駆動する半導体スイッチのゲート駆動回路において、
    一次巻線及び該一次巻線に電流が流されたときに正の電圧を発生し、該一次巻線の電流が遮断されたときに負の電圧を発生する二次巻線を有する変成器と、
    前記二次巻線と前記ゲートとの間に接続され、該二次巻線が前記正の電圧を発生しているときにオンして該ゲートに該正の電圧を印加し、該二次巻線が該正の電圧を発生していないときに該二次巻線と該ゲートとの間をオフする第1のスイッチと、
    充電コンデンサと、
    前記充電コンデンサと前記二次巻線との間に接続され、該二次巻線が負の電圧を発生しているときにオンして該充電コンデンサを該負の電圧で充電する整流素子と、
    前記ゲートと前記充電コンデンサとの間に接続され、前記二次巻線が前記正の電圧を発生していないときに該充電コンデンサの充電電圧が供給されてオンし、該充電コンデンサに充電された前記負の電圧を該ゲートに印加する第2のスイッチと、
    を備えたことを特徴とする半導体スイッチのゲート駆動回路。
  2. 前記二次巻線が前記正の電圧を発生している期間に、前記充電コンデンサに充電されている前記負の電圧を検出し、該充電コンデンサに充電されている該負の電圧が所定電圧を越えているときには、該充電コンデンサに充電された該負の電圧を該所定電圧になるまで放電させる放電制御回路を、
    さらに、備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体スイッチのゲート駆動回路。
  3. 前記放電制御回路は、前記第2のスイッチをオンさせて前記充電コンデンサに充電された前記負の電圧を前記二次巻線を介して放電させることを特徴とする請求項2に記載の半導体スイッチのゲート駆動回路。
  4. 前記二次巻線が発生する前記半導体スイッチのゲートに印加される前記正の電圧は、該半導体スイッチをオンさせる電圧であり、該二次巻線が発生する前記半導体スイッチのゲートに印加される前記負の電圧は、該半導体スイッチをオフさせる電圧であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体スイッチのゲート駆動回路。
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