JP4783958B2 - 有機薄膜太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、有機半導体を用いた固体の有機薄膜太陽電池に関するものである。
有機薄膜太陽電池は、従来のシリコンや化合物半導体太陽電池と比較して、簡便な製法と低い設備コストで製造することができるため、将来の低コスト太陽電池として期待されているが、まだ変換効率、信頼性とも低く、基本的な動作メカニズムの解明とそれに基づく新たなデバイス構造、材料の開発が必要とされている。
この有機薄膜太陽電池としては、最初、p型及びn型有機半導体によるpnヘテロ接合型のものが試作された。このものにおいて、有機半導体は光吸収によって電子・正孔ペアの束縛力が強い励起子(エキシトン)を形成し、これがpn接合の界面に拡散移動して、界面に存在する強い電界によって、電子と正孔に電荷分離し、電子と正孔がそれぞれ異なる電極に輸送されて、起電力を発生するものである。しかし、このときのエキシトンの拡散長は数十nm前後と短いため、実際にはpn接合界面から数十nmの距離の範囲内にある領域しか、有効にキャリア生成が行なわれず、変換効率は非常に低いものであった。
その後、p型有機半導体(ドナー)とn型有機半導体(アクセプタ)とをブレンドし、pn接合面をナノオーダで薄膜全体に分散させるようにしたバルクヘテロジャンクション技術の開発が一つの大きなブレークスルーとなり、有機薄膜太陽電池の変換効率がそれまでと比べ大きく向上した。図9にこれまでに開発された代表的なバルクヘテロジャンクション構造の有機薄膜太陽電池を示す(例えば非特許文献1参照)。図9において15はp型有機半導体、16はn型有機半導体であり、3はこのp型有機半導体15とn型有機半導体16がブレンドされた光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)である。光電変換層3においてp型有機半導体15とn型有機半導体16がナノオーダで分散している。また1は透明電極、2は金属電極であり、この二つの電極1,2の間に光電変換層3を配置した層構成で透明基板12の表面に積層することによって、有機薄膜太陽電池を形成するようにしてある。
この構造の有機薄膜太陽電池では、光を吸収して発生したエキシトンEがナノオーダの拡散移動ですぐにpnの界面に到達し、電荷分離を起こして、電子eはn型有機半導体16が偶然につながったキャリアパスを通って電極2へ、正孔hはp型有機半導体15のキャリアパスを通って反対側の電極1へ輸送され、起電力を発生するものである。また光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)3をp型有機半導体層17とn型有機半導体層18の間にサンドイッチすることによって、光電変換層3で発生したキャリアをp型有機半導体層17とn型有機半導体層18の2層で形成される内蔵電界により、さらに効率良く収集することができる。この構造は光電変換層(バルクヘテロジャンクション層)3が中性的な役目をするため、pin型と呼ばれることがある。さらに、正孔輸送層10や電子輸送層11を挿入することにより、キャリアの選択的輸送、再結合の低減を図り、さらなる高効率化が図られている。
上記のような有機薄膜太陽電池において、バルクヘテロジャンクション層として形成される光電変換層3を成膜法で分類した場合、主として低分子系材料を用いる蒸着法と、主として高分子系材料を用いる塗布法がある。蒸着法は、p型有機半導体とn型有機半導体の2種の材料を同時に蒸着(共蒸着)することで、バルクヘテロジャンクション層として光電変換層3を形成することが可能であり、上記の図9のpin構造のように各々異なる機能を備えた薄膜を多層化して形成できることが特徴である。一方、塗布法は、可溶性のあるドナー材料(p型有機半導体)やアクセプタ材料(n型有機半導体)を溶剤に溶かして塗布する方法であるため、蒸着法よりもpn接合界面を均一分散させ易いという特徴がある。しかし、いずれにしてもまだ変換効率が低く、光吸収から電荷分離、キャリア輸送まで発電に寄与するすべてのプロセスを改善していかなければならないのが現状である。
J.Xue,S.Uchida,B.P.Land,S.R.Forrest,Appl.Phys.Lett.,85, p.5757(2004)
上記したように、エキシトンの拡散距離が短いという問題は、p型有機半導体とn型有機半導体のブレンド構造によるpn接合面の光電変換層(バルクヘテロジャンクション膜)中への分散ということで、大きく改善することができる。
次なる課題は、電荷分離したキャリアをいかに失活(再結合)させることなく電極まで輸送するかということである。太陽電池は発生した電子が外部負荷に流れ、また太陽電池に戻って正孔と再結合するサイクルを繰り返して仕事が行なわれる。つまり電子と正孔の収集数にアンバランスがあった場合、実際の仕事量は少ない方のキャリア数に律速されることになる。
例えば低分子系有機太陽電池において最近、n型有機半導体としてフラーレンを用いたタイプが高い変換効率を示すことが知られているが、このものでは、フラーレンの電子輸送能が、p型有機半導体の正孔輸送能を上回るため、電子が過剰に輸送され、正孔輸送量が全体の発生電流を律速していると考えられている。
ここで、輸送性を示すパラメータの一つに移動度:μがある。これはある電界のもとでのドリフト速度を示すもので、キャリア寿命をτ、電界の強さをEとした場合、キャリアが輸送される距離はμτEで表される。従って移動度が高い材料の方が、再結合確率が低く、より長い距離を輸送することができる。
そして従来の低分子系有機太陽電池では、p型有機半導体として主に金属フタロシアニンが用いられてきた。この金属フタロシアニンは光吸収性とフラーレンとの分散性が優れているのが特徴であるが、移動度が低いため、フラーレン中を輸送されて電極へ到達する電子数と比較して、フタロシアニン中を輸送されて電極へ到達する正孔数の方が少ない。このため、フタロシアニンが発生電流を律速するので、変換効率が低下するという問題がある。
ここで最近、有機トランジスタの開発において様々な高移動度材料が開発されている。例えばオリゴチオフェンやペンタセンがp型有機半導体として代表的な材料であり、これらの材料の移動度は1cm/Vs前後が得られている。そしてこれらの材料を有機薄膜太陽電池へ応用しようという試みもなされているが、これまで発表されたものでは、いずれもp型有機半導体層とn型有機半導体層とを面同士でpn接合したタイプのものしか動作が確認されていない。このようなタイプの太陽電池では、キャリアを有効に取り出せる領域が、平面状のpn接合面近辺でしかないので、高変換効率の有機薄膜太陽電池として作動させるためには、p型有機半導体とn型有機半導体を共蒸着してブレンドした、上記の図9のようなバルクヘテロジャンクション構造に光電変換層を形成し、pn接合面を光電変換層の全体にわたって分散させるようにする必要がある。
しかし、オリゴチオフェンやペンタセンは環状化合物が直線状に結合した分子であるため、これらのいわゆる直線性のp型有機半導体分子は蒸着する際に、基板面上で配向して凝集し易く、p型有機半導体分子をn型有機半導体分子とナノオーダで均一に分散させることが困難であり、変換効率を有効に向上させることが難しいという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、キャリア輸送性に優れる高移動度なP型有機半導体材料を用いて、バルクヘテロジャンクション型と同様な動作が可能な光電変換層を形成することができ、高い性能を有する有機薄膜太陽電池を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る有機薄膜太陽電池は、少なくとも一方が光透過性である二つの電極の間に光電変換層を備えて形成される有機薄膜太陽電池において、光電変換層は電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜とを交互に積層した多層膜を含んで形成され、電子供与性の有機半導体薄膜が、環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子よりなることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、光電変換層の交互に積層した各薄膜の膜厚が10nm以下であることを特徴とするものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子が、次の式(1)であらわされるアセン系分子化合物であることを特徴とするものである。
6+4(n−1)6+2(n−1) (1)
(式(1)中nは2以上の整数)
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、電子受容性の薄膜が、フラーレン又はフラーレン化合物よりなることを特徴とするものである。
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、光電変換層の交互に積層した電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜において、電子供与性の有機半導体薄膜の膜厚が電子受容性の薄膜の膜厚より厚いことを特徴とするものである。
また請求項6の発明は、請求項2乃至5のいずれかにおいて、電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜とを交互に積層した多層膜が、膜厚10nm以上の電子供与性の有機半導体薄膜と、膜厚10nm以上の電子受容性の薄膜の間に挟まれていることを特徴とするものである。
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、上記多層膜を形成する電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜との間に、この電子供与性の有機半導体薄膜よりバンドギャップが小さい電子供与性の有機半導体薄膜からなる中間層が挟まれていることを特徴とするものである。
また請求項8の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、上記多層膜を形成する電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜との間に、この電子受容性の薄膜よりバンドギャップが小さい電子受容性の有機半導体薄膜からなる中間層が挟まれていることを特徴とするものである。
環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子は、フラーレンなどの有機半導体分子との分散が困難な直線状有機半導体であるが、交互多層膜に形成することによって、このような分散が困難な材料であってもバルクヘテロジャンクション動作が可能になり、高移動度特性を生かして高い変換効率を持つ有機薄膜太陽電池を得ることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明に係る有機薄膜太陽電池の層構成の一例を示すものであり、透明基板12の片面に、電極1、正孔輸送層10、光電変換層3、電子輸送層11、電極2の順に積層してある。電極1,2のうち透明基板12の側に積層される電極1は光透過性の透明電極として形成してあり、他方の電極2は金属電極として形成してある。光電変換層3は電子供与性の有機半導体薄膜4と電子受容性の薄膜5とを交互に積層した多層膜として形成してある。
本発明では、この電子供与性の有機半導体薄膜4、すなわちp型有機半導体薄膜4を、環状化合物を直線状に結合したp型有機半導体分子によって形成するようにしてある。この環状化合物とは、例えばベンゼン環、チオフェン環等を有する化合物をいうものである。
そしてベンゼン環を直線状に結合したp型有機半導体分子としては、上記の式(1)であらわされるアセン系分子化合物を用いることができる。上記の式(1)においてnは2以上の整数であり、nの上限は特に限定されるものではないが、実用上、nが6以下のものであることが望ましい。このアセン系分子化合物としては、例えばベンゼン環を1軸方向に4個連結させたテトラセン(式(2))、5個連結させたペンタセン(式(3))等を例示することができる。
またチオフェン環を直線状に結合したp型有機半導体分子としては、チオフェン環を1軸方向に4〜12個の範囲で連結させたオリゴチオフェンを用いることができるものであり、例えばチオフェン環の連結数が6個のsexitiophen(式(4))と呼ばれているものを用いることができる。
これらの直線性分子は、分子凝集エネルギーが大きいので、室温であっても蒸着によって、基板上に高結晶性の薄膜を形成することができるという特徴を有する。
Figure 0004783958
また、電子受容性の薄膜5、すなわちn型の薄膜5は、n型有機半導体分子によって形成することができるものであり、このn型有機半導体分子としてはフラーレンやフラーレン化合物を用いることができる。フラーレンは構成する炭素の数によって、C60、C70、C82などがあり、またフラーレン化合物はC60、C70等のフラーレンの炭素原子に置換基が結合した化合物であり、いずれのものも使用することができる(以下、フラーレンとフラーレン化合物をあわせてフラーレンという)。
ここで、有機トランジスタの開発においてFETを用いた有機半導体材料の移動度が調べられており、フタロシアニンの移動度は0.02〜0.03cm/Vsであるのに対して、オリゴチオフェンの移動度は0.1〜1cm/Vs、ペンタセンでは1cm/Vsと大きな値が示されている。
そして有機薄膜太陽電池としてこれまで、p型有機半導体のペンタセンとn型有機半導体のフラーレンとのpn接合型の太陽電池の発表例がある(例えばS. Yoo, B. Domercq, B. Kippelem, Applied Physics Letters. Vol 85,No.22 , 29November P.5427(2004))。このものにおいてペンタセンとフラーレンのヘテロ接合は良好なダイオード特性を示すが、これはバルクヘテロジャンクション型ではない。また本発明者においても、図7に示すようにペンタセン層とフラーレン(C60)層とをヘテロ接合して光電変換層3を形成した有機薄膜太陽電池を作製したところ、良好なダイオード特性を示すことを確認している。さらにこのペンタセン/フラーレンのヘテロ接合ダイオードにソーラシミュレータ「AM1.5」で100MW/cmの光を照射して、変換効率を調べたところ、最大で0.9%の効率を示した。
従って、光電変換層の膜全体に亘って、既述の図9に示すようなpn接合界面を分散させるブレンド構造をこのペンタセンとフラーレンの系においても実現することができれば、光電変換層の全体に亘って発生したエキシトンの電荷分離効率を高めることができるものであり、またホール輸送の移動度に優れるペンタセンを用いることができるので、高い変換効率が期待できる。
従来の成膜方法である蒸着法をこの材料系に適用してペンタセンとフラーレンをブレンドした光電変換層を作製する場合、両材料を分散させることは非常に困難である。例えば、従来から知られているフタロシアニン/フラーレンのブレンド層として図9の光電変換層を形成する場合、フタロシアニンとフラーレンを同時に蒸着(共蒸着)することによって、フタロシアニンとフラーレンはナノオーダで分散した光電変換層を形成することができ、正孔・電子のキャリアパスが形成されて高い特性を得ることができる。一方、ペンタセンとフラーレンを同時に蒸着して薄膜を形成する場合、ペンタセンは直線性の分子であるため、ペンタセンは配向して凝集し易く(面方向に百nmオーダで凝集する)、非常に不均一な薄膜が形成され、ペンタセンをフラーレンとナノオーダで分散させることは困難である。その結果、ペンタセンとフラーレンをブレンドした光電変換層を備える図9のような構成の有機薄膜太陽電池は、変換効率が0.03%程度の非常に低い太陽電池特性しか示すに至らない。
上記ではp型有機半導体分子としてペンタセンを用いて説明したが、他のアセン系化合物やオリゴチオフェンも環状化合物を直線状に結合した直線性の分子であるので、同様に配向して凝集し易く、フラーレンなどのn型有機半導体分子とナノオーダで分散させることは難しい。このように、環状化合物を直線状に結合したp型有機半導体分子を用いて、従来の共蒸着法でバルクヘテロジャンクション構造の光電変換層を形成することは困難であると判断される。
そこで本発明では、図1に示したように、p型有機半導体分子で形成される電子供与性の有機半導体薄膜4と、n型有機半導体分子で形成される電子受容性の薄膜5とを、交互にそれぞれ2層以上の多層で積層した多層膜で、光電変換層3を形成するようにしたものである。この薄膜4と薄膜5はそれぞれ10nm以下の極薄の膜厚で形成されるものであり、半導体の技術分野では一般に超格子構造と呼ばれているものである。薄膜4と薄膜5は薄い程好ましいが、分子の大きさである1nmが膜厚の下限である。これ以下であると均一な膜ではなくなるので、本発明で必要な動作が得られなくなる。また薄膜4と薄膜5の積層数も特に限定されるものではないが、各薄膜4,5の各積層数は2〜50層の範囲であることが望ましい。
p型有機半導体の薄膜4とn型有機半導体の薄膜5とを交互に多層積層して形成した光電変換層3の発電のメカニズムを図2に示す。まず、光が入射されると、p型有機半導体の薄膜4内又はn型有機半導体の薄膜5内で、電子eと正孔hがペアのエキシトンEが発生する。既述の図9の光電変換層3の構造では、エキシトンEはランダムに形成されたpn接合界面まで拡散移動して、電荷分離を起こすが、図2(a)のようにp型とn型の薄膜4,5が交互に積層されている場合は、規則正しく交互に形成されたpn接合界面まで拡散移動して、電荷分離が起こる。図9の光電変換層3のようにp型有機半導体とn型有機半導体がランダムな構造の場合、ある単位体積内でのpn接合界面の存在確率にばらつきがあり、界面までの移動距離が長くなった場合、到達するまでの再結合確率が大きくなるが、図2(a)のようにp型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5が交互に積層した構造では、pn接合界面をあらかじめ設計した通りのナノオーダのサイクルで存在させることができるので、すべてのエキシトンEは、確実にpn接合界面に到達し、ほぼ100%電荷分離に至らせることが可能である。
次に、このように電荷分離して生成された電子e、正孔hを電極1,2まで輸送しなければならない。光電変換層3が図9の構造の場合、偶然に繋がったキャリアパスを通って電極へ輸送されるが、キャリアパスはランダムに形成されているため、電極1,2まで繋がっている場合は、電子e、正孔hは到達するものの、キャリアパスが途中で切れている場合は、そこで失活して、電極1,2までは輸送されない。これに対して本発明の図2(a)の構造の場合、キャリアパスは無く、キャリアは薄膜4,5の多層膜を垂直方向に走らなければならない。図2(b)に本発明の太陽電池構造のエネルギーバンド図を示すように、各pn接合部にポテンシャル障壁があり、キャリアはこの障壁を乗り越えていかねばならないが、ここで各薄膜4,5の膜厚は10nm以下であるので、電子eはこの障壁をトンネル効果により透過することができる。従って、本発明のように光電変換層3を極薄の薄膜4,5で形成することによって、電荷分離して生成された電子e、正孔hを電極1,2まで確実に輸送することができるものである。
ここで、従来の超格子構造の動作について説明する。化合物半導体のエピタキシャル成長を用いた超格子構造が1970年代に発明され、異種の薄膜を繰り返し交互に積層することによって、バンドギャップ、光学的性質、キャリア移動度等をコントロールできることが見出され様々なデバイスに応用されてきた。化合物半導体太陽電池への応用では、pin型の太陽電池のi層に超格子構造が用いられている(例えばBarnham, Duggan,etc:J.Appl.Phys., 67, 7, P.3490, 1990)。このものでは、p,n層で電圧をコントロールし、i層のバンドギャップを超格子に用いる材料、膜厚でもコントロールしている。これを本発明の超格子構造と比較すると、電荷分離した後のキャリア輸送がトンネル効果を利用している点は同じてあるが、本発明の特徴は前述の電荷分離の効率向上に交互積層構造を活用している点にある。化合物半導体をはじめ、無機系半導体太陽電池の場合は、光エネルギーによって生成した電子、正孔のペアは、束縛力が弱いため熱エネルギー等ですぐに分離し、自由キャリアとなって輸送されるので、電荷分離に関して超格子構造の効果は無い。
次に有機半導体デバイスにおける従来の超格子構造を見てみると、有機EL素子で超格子構造が応用されている(例えば沢、大森、吉野:電子情報通信学会技術研究報告、Vol.7、OME99-52)P.1、1999)。このものはエネルギーバンド構造の異なる2種の有機半導体を交互に積層した構造であり、外部から注入したキャリアの閉じ込め効果により発光効率の向上をもたらせているものであり、本発明のような太陽電池動作とは超格子構造の活用の効果が異なる。
さらに類似の従来例として、有機半導体によるフォトダイオードに超格子構造を活用した例がある(P.Peumans, A.Yakimov, S.R.Forrest : Jour. of Appl. Phys. Vol. 93,No.7, P.3693, 2003)。このものでは、p型有機半導体に銅フタロシアニン、n型有機半導体にPTCBI(3,4,9,10-perylenetetracarboxylic bis-benzimidazole)を用い、これらを交互に積層し、膜厚とダイオード特性の関係を調べている。このデバイスは逆バイアスをかけた時の交互積層膜の膜厚と外部量子効率の関係が示されており、太陽電池動作として必要なゼロバイアス時は、積層数が多いとき量子効率は0.1以下となり、このp型材料とn型材料の組み合わせでは電荷分離ができてもキャリア輸送が行われていないものであり、本発明のような太陽電池動作とは超格子構造の活用の効果が異なる。
また、既述のようにp型有機半導体分子としてフタロシアニンを用いたバルクヘテロジャンクション型の有機薄膜太陽電池は、共蒸着法で非常に均一にナノオーダで分散した光電変換層を得ることができるが、逆に本発明の光電変換層のような薄膜を交互積層した超格子構造の場合にはバルクヘテロジャンクションの効果が期待できない。これはフタロシアニンは平面状の分子構造であり、またキャリア移動度が低いため、数分子層程度の超薄膜では、膜の密度が面方向で均一性になっていることと、キャリアがポテンシャル障壁を越えるとき再結合し易いこと等がその原因であると考えられる。
一方、本発明のようにペンタセン等の環状化合物が直線状に結合されたp型有機半導体分子とフラーレン等のn型有機半導体分子で超格子構造を形成する場合、環状化合物が直線状に結合された直線分子は蒸着したときに凝集、配向し易いので、どのような下地の上に蒸着しても容易に配向して極薄の膜を形成することができるものである。そして本発明ではこのような材料の組合せで、電荷分離効率の向上と合わせて、明確なpn接合界面の形成と、p型有機半導体材料の高い移動度とにより、超格子構造での高いキャリア輸送性を得ることができるものであり、高変換効率の有機薄膜太陽電池を得ることができるものである。
尚、本発明において光電変換層3をp型有機半導体の薄膜4とn型有機半導体の薄膜5を交互に積層して形成するにあたって、p型有機半導体薄膜4の膜厚とn型有機半導体薄膜5の膜厚は同じ膜厚に形成してもよいが、p型有機半導体薄膜4の膜厚をn型有機半導体薄膜5の膜厚よりも厚く形成することによって、太陽電池特性をより向上することができる。これは、p型有機半導体薄膜4を形成する、ペンタセンやオリゴチオフェンなどの環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子は、n型有機半導体薄膜5を形成するフラーレンなどよりも、光吸収が多く、移動度が高いため、光吸収とキャリア輸送の両面が向上したことによるものと考えられる。このようにp型有機半導体薄膜4の膜厚をn型有機半導体薄膜5の膜厚よりも厚く形成する場合、特に限定されるものではないが、1倍を超え、4倍以下の範囲で厚みを厚く形成するようにするのが好ましい。
図3は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、p型有機半導体の薄膜4とn型有機半導体の薄膜5とを交互に積層した光電変換層3を、膜厚10nm以上の電子供与性の有機半導体薄膜6、すなわち膜厚10nm以上のp型有機半導体薄膜6と、膜厚10nm以上の電子受容性の薄膜7、すなわち膜厚10nm以上のn型有機半導体薄膜7の間に挟んで、pin型に形成するようにしたものである。p型有機半導体薄膜6は光電変換層3と正孔輸送層10の間に、n型有機半導体薄膜7は光電変換層3と電子輸送層11の間に、それぞれ配置されるものであり、その他の構成は図1のものと同じである。p型有機半導体薄膜6やn型有機半導体薄膜7の膜厚の上限は特に限定されないが、実用的には100nm程度が上限である。
このものにあっては、p型有機半導体薄膜6とn型有機半導体薄膜7の間に内蔵電界が発生し、これがキャリア輸送効率を向上させることができるため、変換効率をさらに高めることができるものである。p型有機半導体薄膜6やn型有機半導体薄膜7がなくても、光透過性電極1と金属電極2の間に仕事関数の差があれば、それによって生じる内蔵電界によって同様に動作させることが可能であるが、上記のようなpin型の場合、p型有機半導体薄膜6やn型有機半導体薄膜7で発生したエキシトンも接合界面付近で発生したエキシトンを有効利用することができ、両キャリアの輸送層として働き、電圧、形状因子を向上させる効果があり、変換効率をより高めることが可能になるものである。
有機薄膜太陽電池をさらに高効率化するためには、発生電流、発生電圧ともに向上させることが必要である。そこで図4の実施の形態では、光電変換層3を形成する電子供与性のp型有機半導体の薄膜4と電子受容性のn型有機半導体の薄膜5とを交互に積層した多層膜において、p型有機半導体薄膜4と電子受容性のn型有機半導体薄膜5の間に、このp型有機半導体薄膜4よりバンドギャップが小さいp型の有機半導体薄膜からなる中間層又は、このn型有機半導体薄膜5よりバンドギャップが小さいn型有機半導体薄膜からなる中間層8を挟み、p型有機半導体薄膜4とバンドギャップが小さい有機半導体薄膜の中間層8と電子受容性のn型有機半導体薄膜5の三層を繰り返して積層することによって、さらに効率の向上を行なうようにしている。この低バンドギャップの中間層8の膜厚は特に限定されるものではないが、1〜10nmの範囲が好ましく、より好ましくは2〜4nmである。
上記のような中間層8を有する光電変換層3の発電のメカニズムを図5に示す。図5では、p型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5の間に、p型有機半導体薄膜4よりバンドギャップが小さいp型有機半導体薄膜からなる中間層8を挟み、この三層を繰り返し積層して光電変換層3を形成するようにしてある。このものにあって、光が照射されると、p型有機半導体薄膜4やn型有機半導体薄膜5での光吸収に加え、低バンドキャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8が長波長の光を吸収するため、より広い範囲の波長を吸収することができる。次に、光吸収により励起されたエキシトンEは、拡散移動又は、光電変換層3を挟むp型有機半導体薄膜6とn型有機半導体薄膜7(図6参照)によって生じる内蔵電界によって移動し、p型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5の界面或いは、低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8とn型有機半導体薄膜5の界面に到達すると、電荷分離を起こし、電子、正孔のキャリアが発生する。そしてこれらの各薄膜は10nm以下と十分に薄いため、キャリアはトンネル現象により、障壁層を透過して輸送され、各々の電極1,2に到達する。ここで、p型有機半導体薄膜4はキャリア輸送性に優れる環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子で形成されていないと、上述のような超格子動作をしないが、低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8は、このような直線状の分子に限らず、例えば長波長光吸収に優れる平面型分子である金属フタロシアニン等を用いて形成することができる。
図5の例では、p型有機半導体薄膜4、低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8、n型有機半導体薄膜5の順に繰り返して積層するようにしたが、低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8、p型有機半導体薄膜4、n型有機半導体薄膜5の順に繰り返して積層するようにしてもよく、p型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5の間に低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8が挿入される層構成であればよい。この場合も、p型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5の界面、低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8とn型有機半導体薄膜5の界面で電荷分離を起こし、トンネル現象によりキャリアは輸送される。
また、中間層8として低バンドギャップのn型有機半導体薄膜を用いる場合も、同じ原理で、効率を向上することができる。この場合も、p型有機半導体薄膜4、低バンドギャップのn型有機半導体薄膜からなる中間層8、n型有機半導体薄膜5の順に繰り返して積層するようにしても、低バンドギャップのn型有機半導体薄膜からなる中間層8、p型有機半導体薄膜4、n型有機半導体薄膜5の順に繰り返して積層するようにしてもよく、p型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5の間に低バンドギャップのn型有機半導体薄膜からなる中間層8が挿入される層構成であればよい。この低バンドギャップのn型有機半導体膜は、高次フラーレンであるC70、C84或いはこれ以上の炭素数からなるフラーレン、ペリレン等で形成することができるものであり、n型有機半導体膜5より小さなバンドギャップを持つものであれば、いずれも光吸収範囲の増大、ひいては発生電流の増大の効果が得られる。
本発明によると、発生電圧は主として、電荷分離した後の電子、正孔のポテンシャルエネルギー差であるp型有機半導体薄膜4のHOMO準位(highest occupied molecular orbital)とn型有機半導体薄膜5のLUMO準位(lowest unoccupied molecular orbital)の差が起源となり、発生電流は、p型有機半導体薄膜4、n型有機半導体薄膜5、低バンドギャップの有機半導体薄膜からなる中間層8の光吸収が大きく寄与するため、電圧と電流を独立してコントロールし、向上させていくことが可能である。
これまで開発された超格子応用太陽電池として、既述の化合物半導体太陽電池の場合は、超格子層をp型層とn型層でサンドイッチし、異なるバンドギャップを持つ2種の化合物半導体層の交互積層から成る超格子層で光吸収をさせ、両側のp型層とn型層のフェルミエネルギーの差で電圧を発生させる機能分担型の構成をとっている。そして化合物半導体太陽電池の場合は、超格子層で光吸収をして発生した電子/正孔ペアは、すぐに自由キャリアとなって輸送され始めるので、交互積層される2種の半導体のバンドギャップは極めて近い値をとる。これに対して本発明の有機薄膜太陽電池の場合、電荷分離を起こさせるためにp型層、n型層の界面、具体的にはエキシトンの結合エネルギー約0.4eV以上のバンドオフセットが必要であり、それに高光吸収の層を加え、電荷分離と光吸収の二つの機能を担わせており、この点で化合物半導体太陽電池と異なる。しかも、この動作を行なわせるために、p型層をキャリア輸送性に優れる環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子を形成している点でも異なる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
電極1としてITO電極が150nmの膜厚で形成されたガラス基板12の上に、正孔輸送層10として、PEDOT:PSS層(poly[3,4-(ethylenedioxy) thiophene]:poly(styrene sulfonate))を30nmの膜厚で形成した。
次に、p型有機半導体分子としてペンタセンを用い、正孔輸送層10の上にペンタセンを真空蒸着して、膜厚25nmの電子供与性の有機半導体薄膜6を形成した。
次に、n型有機半導体分子としてフラーレン(C60)を用い、薄膜6の上にフラーレンを真空蒸着して、膜厚1nmの電子受容性の有機半導体薄膜5を形成し、さらにこの上にペンタセンを真空蒸着して膜厚1nmの電子供与性の薄膜4を形成した。そしてこのフラーレンの薄膜5とペンタセンの薄膜4をさらに3回ずつ交互に積層し、膜厚1nmのフラーレンの薄膜5と膜厚1nmのペンタセンの薄膜4を4層ずつ交互に積層した多層膜の光電変換層3を形成した。
さらにこの光電変換層3の上にフラーレンを真空蒸着して、膜厚25nmの電子受容性の薄膜7を形成した。
この後、薄膜7の上に電子輸送層11としてBCP(bathocuproine)を5nmの膜厚で形成し、最後にこの上に電極2としてAg:Mg合金薄膜を100nmの膜厚で形成することによって、図3に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
(実施例2)
光電変換層3を、膜厚2nmのフラーレンC60の薄膜5と膜厚2nmのペンタセンの薄膜4を2層ずつ交互に積層した多層膜で形成するようにした他は、実施例1と同様にして図3に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
(実施例3)
光電変換層3を、膜厚1nmのフラーレンC60の薄膜5と膜厚2nmのペンタセンの薄膜4を3層ずつ交互に積層した多層膜で形成するようにした他は、実施例1と同様にして図3に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
(実施例4)
実施例1と同様にして、ガラス基板12のITO電極1の上に正孔輸送層10を形成し、その上にペンタセンを25nmの膜厚で真空蒸着して電子供与性の有機半導体薄膜6を形成した。
次に、この薄膜6の上にフラーレンC60を真空蒸着して膜厚2nmのn型有機半導体薄膜5を形成し、この上にペンタセンを真空蒸着して膜厚2nmのp型有機半導体薄膜4を形成し、さらにこの上にZnフタロシアニンを真空蒸着して膜厚2nmのp型有機半導体薄膜からなる中間層8を形成した。そしてこのn型有機半導体薄膜5と、p型有機半導体薄膜4と、p型有機半導体薄膜からなる中間層8を繰り返して4回積層し、12層構成の多層膜からなる光電変換層3を形成した。
次に実施例1と同様にして、光電変換層3の上にフラーレンC60を25nmの膜厚で真空蒸着して電子受容性の有機半導体薄膜7を形成し、さらにこの上にBCPを膜厚6nmで真空蒸着して電子輸送層11を形成し、最後にこの上に電極2としてAg:Mg合金薄膜を60nmの膜厚で形成することによって、図6に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
(実施例5)
光電変換層3を、膜厚2nmのフラーレンC60の薄膜5と膜厚2nmのペンタセンの薄膜4を6層ずつ交互に積層して12層の多層膜で形成するようにした他は、実施例1と同様にして図3に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
(比較例1)
正孔輸送層10の上にペンタセンを真空蒸着して膜厚25nmのペンタセン層を形成し、さらにこの上にフラーレンを真空蒸着して膜厚25nmのフラーレン層を形成することによって、このペンタセン層とフラーレン層からなるpn接合型の光電変換層3を形成するようにした他は、実施例1と同様にして、図7に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
(比較例2)
ペンタセンとフラーレンを1:1の体積比で共蒸着することによって、ペンタセンとフラーレンをブレンドした光電変換層3を形成するようにした他は、実施例1と同様にして、図8に示す層構成の有機薄膜太陽電池を得た。
上記のようにして得た有機薄膜太陽電池について、ソーラシミュレータでAM1.5G、100mW/cmの擬似太陽光を照射して、太陽電池特性を測定した。
一般に太陽電池の変換効率:PCE(Power conversionefficiency)は次の式で表される。
PCE(%)=Jsc(短絡電流)×Voc(開放電圧)×FF(Fillfactor:形状因子)/入射エネルギー
太陽電池特性の測定結果を表1に示す。
Figure 0004783958
比較例1のように、ペンタセンとフラーレンのヘテロ接合で形成した光電変換層3は良好なダイオード特性を示し、太陽電池としても良好な太陽電池特性を示すが、エキシトンから有効にキャリア収集ができる領域はヘテロ接合界面付近だけであると考えられるため、ペンタセンやフラーレンの光吸収から推定される電流値より低い値を示すものであった。
また比較例2のように、ヘテロ接合界面を増やすための共蒸着法で光電変換層3を形成したものは、ほとんど出力を発生しないものであった。これはペンタセンが凝集しやすく、フラーレンとまったく分散しないためである。
一方、膜厚1nmのフラーレンの薄膜5と膜厚1nmのペンタセンの薄膜4を交互に積層して光電変換層3を形成するようにした実施例1のものは、比較例1のヘテロ接合型のものと比較して電流値が大きく増えている。これは交互積層された領域で生成されたエキシトンが効率良く電荷分離され、しかも、ポテンシャル障壁を乗り越えてキャリア輸送され、外部に取り出せたことを示している。
また、このようにフラーレンの薄膜5とペンタセンの薄膜4を交互積層して光電変換層3を形成するにあたって、実施例2のように各薄膜4,5の膜厚を2nmに増やしても、特性はほとんど変わらない。これは、このオーダで膜厚を増やしても障壁を乗り越える阻害要因にはならないことを示している。
また実施例3のように、ペンタセンの薄膜4の膜厚をフラーレンの薄膜5の膜厚よりも厚くすることによって、特性が向上するものであった。これは、ペンタセンのほうが光吸収が多く、またペンタセンのほうが移動度が高いため、光吸収とキャリア輸送が向上したためであると考えられる。
さらに、実施例4のように、低バンドギャップのp型有機半導体薄膜からなる中間層8をp型有機半導体薄膜4とn型有機半導体薄膜5の間に挿入した層構成に光電変換層3を形成することによって、特性がさらに向上するものであった。実施例5はこのような中間層8を用いないで実施例4と同様に12層構成に光電変換層3を形成したものであるが、実施例4と実施例5の比較から、低バンドギャップの有機半導体薄膜からなる中間層8を光電変換層3に挿入することによって、さらなる発生電流の増大を、電圧を低下させることなく達成できることが確認される。
本発明の実施の形態の一例を示す有機薄膜太陽電池の概略断面図である。 同上の光電変換層の発電のメカニズムを示すものであり、(a)は光電変換部の拡大断面図、(b)はエネルギーバンド構造を示す図である。 本発明の他の実施の形態の一例を示す有機薄膜太陽電池の概略断面図である。 本発明のさらに他の実施の形態の一例を示す有機薄膜太陽電池の概略断面図である。 同上の光電変換層の発電のメカニズムを示すものであり、(a)は光電変換部の拡大断面図、(b)はエネルギーバンド構造を示す図である。 実施例4で得た有機薄膜太陽電池の概略断面図である。 ペンタセンとフラーレンのヘテロ接合からなる光電変換層を備えた有機薄膜太陽電池の概略断面図である。 ペンタセンとフラーレンの共蒸着層からなる光電変換層を備えた比較例1の有機薄膜太陽電池の概略断面図である。 従来のバルクヘテロジャンクション型有機薄膜太陽電池の概略断面図である。
符号の説明
1 電極
2 電極
3 光電変換層
4 電子供与性の有機半導体薄膜
5 電子受容性の薄膜
6 電子供与性の有機半導体薄膜
7 電子受容性の薄膜
8 低バンドキャップの中間層

Claims (8)

  1. 少なくとも一方が光透過性である二つの電極の間に光電変換層を備えて形成される有機薄膜太陽電池において、光電変換層は電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜とを交互に積層した多層膜を含んで形成され、電子供与性の有機半導体薄膜が、環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子よりなることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  2. 光電変換層の交互に積層した各薄膜の膜厚が10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  3. 環状化合物を直線状に結合した有機半導体分子が、次の式(1)であらわされるアセン系分子化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜太陽電池。
    6+4(n−1)6+2(n−1) (1)
    (式(1)中nは2以上の整数)
  4. 電子受容性の薄膜が、フラーレン又はフラーレン化合物よりなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
  5. 光電変換層の交互に積層した電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜において、電子供与性の有機半導体薄膜の膜厚が電子受容性の薄膜の膜厚より厚いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
  6. 電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜とを交互に積層した多層膜が、膜厚10nm以上の電子供与性の有機半導体薄膜と、膜厚10nm以上の電子受容性の薄膜の間に挟まれていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
  7. 上記多層膜を形成する電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜との間に、この電子供与性の有機半導体薄膜よりバンドギャップが小さい電子供与性の有機半導体薄膜からなる中間層が挟まれていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
  8. 上記多層膜を形成する電子供与性の有機半導体薄膜と電子受容性の薄膜との間に、この電子受容性の薄膜よりバンドギャップが小さい電子受容性の有機半導体薄膜からなる中間層が挟まれていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
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