従来、広帯域移動通信においては、利用できる周波数帯域が制限されていること、マルチメディア通信の需要があること等により、高品質かつ固定通信並みの高い周波数利用効率の達成が求められるようになっている。これに対処する技術として注目を集めているものがMIMO通信技術である。
〔MIMO通信システムの構成〕
図1は、MIMO通信システムの構成例を示す図である。このMIMO通信システムは、2本の送信アンテナ101を備えた送信装置100と、4本の受信アンテナ201を備えた受信装置200とにより構成した例であり、送信アンテナ101と受信アンテナ201との間にはMIMO伝搬路が形成されている。送信装置100は、例えば自由に移動することが可能な端末装置であり、2系統の異なるデータ信号を2本の送信アンテナ101の各々に割り当てて、同一の周波数上または周波数帯が重なる状態の電波により、各々該当する送信アンテナ101からOFDM信号を出力する。これにより、それぞれのOFDM信号は4つの伝搬路を経て送信される。受信装置200は、例えば基地局装置であり、受信した4系統の信号から経由した伝搬路毎の伝達関数を頼りに分離し、送信装置100から送信された2系統の異なるデータ信号を復調する(例えば、特許文献1を参照)。
〔送信装置〕
図2は、図1に示したMIMO通信システムにおける送信装置100の構成例を示す図である。この送信装置100は、符号化部110、マッピング部120、フレーム構成部130、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部140、GI(Guard Interval)信号付加部150、直交変調部160、ミキサ170、局部発振器171及び送信アンテナ101を備えている。マッピング部120から後段の送信アンテナ101までは2系統で構成される。
符号化部110は、例えば送信装置100において撮影した映像信号を入力し、エネルギー拡散、誤り訂正符号化及びインタリーブ等の符号化を行い、2つの異なる信号に分離する。マッピング部120は、符号化部110により符号化された信号を入力し、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)等のキャリア変調のコンスタレーション配置上にマッピングする。フレーム構成部130は、マッピング部120によりキャリア変調へのマッピングが施された信号を入力し、この信号をデータ信号として、復調基準となる直交符号化されたパイロット信号等を付加すると共に、予め設定された周波数に配置してフレームを構成し、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)信号として出力する。
IFFT部140は、フレーム構成部130によりフレーム構成されたOFDM信号を入力し、IFFT(逆フーリエ変換)を施し、周波数軸データから時間軸データに変換する。GI信号付加部150は、IFFT部140により時間軸データに変換されたOFDM信号を入力し、このOFDM信号にGI信号を付加する。直交変調部160は、GI信号付加部150によりGI信号が付加されたOFDM信号を入力し、ここまで実数と虚数の2つずつの組合せ信号(複素数)として処理されてきたOFDM信号を同相信号と直交信号に載せて直交化する直交変調を行う。ミキサ170は、直交変調部160により直交化されたOFDM信号を入力し、局部発振器171からの信号を用いてIF(Intermediate Frequency)から所要の周波数帯のRF(Radio Frequency)への周波数変換を行う。2系統のマッピング部120からミキサ170までは、それぞれ同一の処理を行い、ミキサ170により出力されたOFDM信号は、送信信号として送信アンテナ101からそれぞれ送信される。
図3は、図2に示した送信装置100における符号化部110の構成例を示す図である。この符号化部110は、エネルギー拡散部111、外符号化部112、外インタリーブ部113、内符号化部114、及び2系統の内インタリーブ部115を備えている。エネルギー拡散部111は、映像信号を入力し、データフレーム同期が施された映像信号のデータをエネルギー拡散する。外符号化部112は、エネルギー拡散部111によりエネルギー拡散されたデータ信号を入力し、リードソロモン符号の符号化を行う。外インタリーブ部113は、外符号化部112により符号化されたデータ信号を入力し、畳み込みのインタリーブを施す。内符号化部114は、外インタリーブ部113によりインタリーブされたデータ信号を入力し、後述の図4に示すように、符号化率1/2の畳み込み符号化を行う。
内インタリーブ部115は、内符号化部114により符号化された信号を入力し、ビットインタリーブ、周波数インタリーブ、時間インタリーブの処理を施す。ここで、ビットインタリーブとは、送信するデータをビット単位に入れ替え、キャリアの誤りを分散させるものである。後述する受信装置200において、この逆手順で、受信したデータをビット単位に入れ替えることにより復調する。また、周波数インタリーブとは、送信するデータを周波数軸方向にキャリア単位に入れ替え、データを分散させるものである。後述する受信装置200において、この逆手順で、受信したデータをキャリア単位に入れ替えることにより復調する。また、時間インタリーブとは、送信するデータを時間方向にキャリア単位に入れ替え、データを分散させるものである。後述する受信装置200において、この逆手順で、受信したデータをキャリア単位に入れ替えることにより復調する。この周波数インタリーブまたは時間インタリーブによって、伝搬路にて劣化した信号に対し、バースト的な誤りをランダム誤りにすることができ、畳み込み符号に基づく誤り訂正の精度を向上させることができる。内インタリーブ部115は、2系統で構成され、それぞれ同一の処理を行い、2系統の信号は、それぞれ対応する2系統のマッピング部120に出力される。
図4は、図3に示した符号化部110における内符号化部114の構成例を示す図である。この内符号化部114は、符号化率1/2の畳み込み符号化を行う機能を有し、外インタリーブ部113からデータ信号を入力し、原符号の生成多項式(G1=171oct、G2=133oct)に従い、2系統の信号を生成し、それぞれ2系統の内インタリーブ部115に出力する。尚、符号化率を1/2以外の2/3,3/4等に設定するときには、2系統の出力のいくつかを規則に従って間引いて用いるパンクチュアー化によって行う。内符号化部114における畳み込み符号化については既知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
〔受信装置〕
図5は、図1に示したMIMO通信システムにおける受信装置200の構成例を示す図である。この受信装置200は、受信アンテナ201、ミキサ210、局部発振器211、直交復調部220、シンボル同期検出部230、GI信号除去部240、FFT部250、フレーム分離部260、伝搬路推定部270、MIMO復調部280及び復号部290を備えている。受信アンテナ201から後段のフレーム分離部260までは4系統で構成される。
4本の受信アンテナ201は、2本の送信アンテナ101との間の伝搬路を経由して同一周波数上で混信したOFDM信号を、受信信号として受信する。ミキサ210は、受信したOFDM信号に対して、局部発振器211からの信号を用いてRFからIFへ周波数変換を行う。直交復調部220は、ミキサ210により周波数変換されたOFDM信号を入力し、直交復調を行って同相信号と直交信号に分離し、実数と虚数の2つずつの組合せ信号(複素数)とする。シンボル同期検出部230は、直交復調部220により直交復調されたOFDM信号を入力し、ガード相関を施し、OFDM信号のシンボルの先頭であるシンボルタイミングを検出する。
GI信号除去部240は、シンボル同期検出部230により検出されたシンボルタイミングに従って、OFDM信号からGI信号を除去する。FFT部250は、GI信号除去部240によりGI信号が除去されたOFDM信号を入力し、FFT(フーリエ変換)を施し、時間軸データから周波数軸データに変換する。フレーム分離部260は、FFT部250により周波数軸データに変換されたOFDM信号を入力し、このOFDM信号からデータ信号、パイロット信号等を分離し(フレーム分離し)、各信号を抽出する。4系統の受信アンテナ201からフレーム分離部260までは、4系統の各系統それぞれで同一の処理を行う。
伝搬路推定部270は、4系統のフレーム分離部260によりそれぞれ分離されたパイロット信号を入力し、各送信系統に割り当てられる直交符号を1ビットずつシンボル単位で乗算し、送信アンテナ101と受信アンテナ201との間の全ての伝搬路特性を推定し、伝搬路推定結果として出力する(例えば、特許文献2を参照)。
MIMO復調部280は、伝搬路推定部270により推定された伝搬路推定結果を入力し、4系統のフレーム分離部260により分離されたデータ信号をそれぞれ入力し、混信したデータ信号の分離及び復調を行う。復号部290は、MIMO復調部280により復調されたデータ信号を入力し、誤り訂正の復号及びデインタリーブ等の復号を行う。このようにして、送信装置100における元の映像信号を求めることができる。
図6は、図5に示した受信装置200における従来のMIMO復調部280の処理を示すフロー図である。このフロー図には、空間分割多重を行うMIMO方式に基づく信号伝送におけるMIMO復調部の代表例が示されている。尚、送信信号Xはm系統により形成され、受信信号はn系統により形成されているものとする。まず、従来のMIMO復調部280における第1の処理は、逆行列方式を用いるものである。MIMO復調部280は、伝搬路推定部270から伝搬路推定結果である伝搬路行列Hを入力し、フレーム分離部260からデータ信号Yを入力し、ステップS611に示す計算を行い、ソフトビタビ復号を行う。この逆行列方式によれば、演算量が少なく、ハードウェアによる実現が容易になる。また、ダイバーシティ利得を得るためには、送信アンテナ数よりも受信アンテナ数を多くする必要がある。また、雑音が強調されてしまう場合がある。
また、従来のMIMO復調部280における第2の処理は、最尤推定方式を用いるものである。MIMO復調部280は、伝搬路推定部270から伝搬路行列Hを入力し、フレーム分離部260からデータ信号Yを入力し、ステップS621において、各送信信号x1〜xmの全変調候補点Sについて、尤度計算として誤差距離Δ1〜Δnを算出し、そして、ステップS622において、最大尤度の判定のため、復調信号Xs及び最小誤差距離Δsを算出して、ソフトビタビ復号を行う。ここで、全変調候補点は、16QAMの変調方式の場合、送信信号x1について候補点が16存在し、送信信号x2について候補点が16存在し、同様に送信信号xmに候補点が16存在するから、合計で16m個存在する。2本の送信アンテナ101及び4本の受信アンテナ201の構成では、全変調候補点は162=256個存在することになる。この最尤推定方式によれば、莫大な演算量が必要になるから、ハードウェアによる実現が困難である。ここで、変調多値数M、送信アンテナ数m、受信アンテナ数nとすると、n×Mm回の誤差距離の演算が必要になる。一方、高い復調精度を実現でき、受信アンテナ数分のダイバーシティ利得を得ることができる。
また、従来のMIMO復調部280における第3の処理は、逆行列による候補絞込み最尤推定方式を用いたものである。MIMO復調部280は、伝搬路推定部270から伝搬路行列Hを入力し、フレーム分離部260からデータ信号Yを入力し、ステップS631に示す計算を行い、ステップS632において、送信信号x1〜xm毎に4つの候補点を抽出し、ステップS633において、各送信信号x1〜xmの4つの候補点の組み合わせSallについて、尤度計算として誤差距離Δ1〜Δnを算出し、ステップS634において、最大尤度の判定を行い、復調信号Xs及び最小誤差距離Δsを算出して、ソフトビタビ復号を行う。この逆行列による候補絞込み最尤推定方式によれば、演算量は、逆行列方式よりも多くなり、最尤推定方式よりも少なくなる。また、復調精度は、逆行列方式と最尤推定方式との中間程度となる。
図7は、図5に示した受信装置200における従来のMIMO復調部280の構成例を示す図である。このMIMO復調部280−Pは、図6に示した第2の処理である最尤推定方式を用いて復調を行うものであり、全変調候補点記録部281、レプリカ信号生成部282、尤度計算部283、尤度判定部284、内デインタリーブ部285及びビタビ復号部286を備えている。
レプリカ信号生成部282は、伝搬路推定部270から伝搬路推定結果Hを入力し、全変調候補点記録部281から全変調候補点S(2本の送信アンテナ101及び4本の受信アンテナ201の構成では、全変調候補点Sは256個存在する。)を入力し、レプリカ信号h1S〜h4Sを生成する。尤度計算部283は、レプリカ信号生成部282からレプリカ信号h1S〜h4Sを入力し、4系統のフレーム分離部260からデータ信号Y(y1,y2,y3,y4)を入力し、尤度計算として、データ信号Yとレプリカ信号h1S〜h4Sとの間の誤差距離Δ1〜Δ4及びこれらの2乗和ΔS=Δ12+Δ22+Δ32+Δ42を算出する(図6のステップS621を参照)。
尤度判定部284は、尤度計算部283から誤差距離ΔS(誤差距離の個数は、256×4=1024である。)を入力し、最大尤度を判定し、データ信号(復調信号)Xs(データ数は2である。)及び対応する最小誤差距離Δsを出力する(図6のステップS622を参照)。内デインタリーブ部285は、データ信号(復調信号)Xs及び最小誤差距離Δsを入力し、データ信号Xsに対して時間インタリーブ、周波数インタリーブ及びビットインタリーブに対するデインタリーブを行い、内デインタリーブの施されたデータ信号(復調信号)及び最小誤差距離を出力する。ビタビ復号部286は、内デインタリーブ部285により内デインタリーブの施されたデータ信号(復調信号)及び誤差距離を入力し、ビタビ復号を行う。
図20は、図7に示した従来のビタビ復号部286の処理を説明する図である。図20には、ビタビ復号部286に入力された時系列のデータ信号(00,10,01,10,01,10,01,01,01,・・・/左側のデータが第1の送信系統に対応し、右側のデータが第2の送信系統に対応する。すなわち、図4に示した内符号化部114における2系統の出力に対応する。ただし、図4ではシフトレジスタが6個ある拘束長7の事例を示したが、ここではシフトレジスタが2個の拘束長3の事例とする。)と、図4に示した内符号化部114におけるシフトレジスタの状態(00,01,10,11)とにより形成されるトレリスマップが示されている。そして、各パスには、当該パスに対応するデータ信号の候補となる組合せが付されており、このパス毎のデータ信号の候補とビタビ復号部286に入力されたデータ信号との間で誤差距離を各々算出している。ここで、矢印のパスのうちの最小パス(黒丸が矢印上に付加されたパス、当該経路について求めた誤差距離の総和が最小となるパス)に対応するデータ信号の判定値(矢印が実線“0”か、破線“1”かにより決まる。0,1,1,1,0,1,1,0,0)がビタビ復号部286により出力される時系列のデータ信号である。このトレリスマップは、内符号化部114の構成により一義的に決定されるマップである。この一義的な拘束条件により、誤りを有したデータ信号をビタビ復号部286に入力しても、その誤りが修正されて正しい結果が判定されているのがわかる。
ビタビ復号部286は、時系列のデータ信号を入力すると、硬判定ビタビ復号の場合、ビタビ復号部286に入力されるデータ信号は既に数値化された硬判定結果であり、このデータ信号とトレリスマップ上の各パスのつながりで示される送信信号の候補との間のハミング距離を算出する。また、軟判定ビタビ復号の場合、ビタビ復号部286に入力されるデータ信号は誤差を含む数値化前の復調結果であり、このデータ信号とトレリスマップ上の各パスのつながりで示される送信信号の候補との間のユークリッド距離を算出する。そして、ビタビ復号部286は、各パスに付されるハミング距離またはユークリッド距離をパス単位で合算してブランチメトリックを算出する。図20には、このようにして算出したブランチメトリックを記入したトレリスマップが示されている。そして、ビタビ復号部286は、このトレリスマップ上に存在する全通りのパスの組み合わせについて検索して、ハミング距離またはユークリッド距離の総和が最小となるパス(最小パス)を特定し、この最小パスに対応するデータ信号(最小パスが示すデータ信号またはトレリス遷移する状態の変化が示すデータ信号)を、ビタビ復号により誤り訂正したデータ信号として出力する。これは、一種の最尤推定の処理であるといえる。尚、ビタビ復号部286の処理については既知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
特開2006−345500号公報
特開2005−124125号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、図2に示した送信装置100と図5に示した受信装置200とにより構成されるMIMO通信システム(図1)の例において、受信装置200におけるMIMO復調部280の復調処理に特徴がある。また、図4に示した内符号化部114のように、送信装置100において畳み込み符号化を行い、受信装置200では、最尤推定方式を用いたMIMO復調処理を行ってビタビ復号を行うシステムに適用がある。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。図8は、本発明の実施の形態による受信装置におけるMIMO復調部の構成例(実施例1)を示す図である。また、図9は、図8に示すMIMO復調部(実施例1)の処理を示すフロー図である。このMIMO復調部280−1は、図1に示した2本の送信アンテナ101及び4本の受信アンテナ201を備えたMIMO通信システムにおいて、図5に示した受信装置200におけるMIMO復調部280に相当し、QR分解部2801、全変調候補点記録部2802、x1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1、候補点x1’誤差距離演算部2804、誤差距離合成部2805、メモリ部2806、内デインタリーブ部2807、ビタビブランチメトリック算出部2808及びビタビ復号部2809を備えている。
QR分解部2801は、伝搬路推定部270により推定された伝搬路推定結果(送信アンテナ101と受信アンテナ201との間の各伝搬路における推定結果)を入力し、QR分解を行い、行列Q及び行列Rを算出する(ステップS901)。伝搬路推定結果である伝搬路行列Hを以下に示す。
ここで、伝搬路行列Hの要素h
ijは、送信アンテナjから受信アンテナiへの伝搬路の周波数応答特性を示す。以下の式によりQR分解を行い、直交行列Q及び上三角行列Rを算出する。
H=Q・R (Q:直交行列,R:上三角行列) ・・・(2)
x1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1は、QR分解部2801により算出された行列Q及び行列Rを入力し、送信信号x2を全候補点Sとみなしてして送信信号x1の全候補点x’1を演算し、また、送信信号x2の復調信号と全候補点Sとの間の誤差距離Δ2を演算する(ステップS902〜ステップS904)。ここで、第1の送信アンテナ#1から送信される信号を送信信号x1とし、第2の送信アンテナ#2から送信される信号を送信信号x2とする。以下、送信信号x1の全候補点x’1及び送信信号x2の誤差距離Δ2の演算手法について説明する。
行列Qは直交行列であるから、送信信号Xと受信信号Yとの間の関係は以下の通りとなる。
Y=HX=(Q・R)X
QHY={(QH・Q)・R}X=RX ・・・(3)
ここで、受信アンテナ#1〜#4で受信する受信信号をY=[y1,y2,y3,y4]T(Tは転置を表す。)とし、送信アンテナ#1,#2から送信される送信信号をX=[x1,x2]Tとする。
行列Rは上三角行列であるから、式(3)を以下の式で表すことができる。
ここで、行列Rの要素は複素数である。x1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1は、式(4)及び全変調候補点記録部2802に記録された全変調候補点Sを用いて、送信信号x1の全候補点x’1及び送信信号x2の誤差距離Δ2を、以下の式により算出する。
ここで、全変調候補点Sは、例えば16QAMの変調方式におけるコンスタレーションで示される全ての点のことをいう。図10は、電波産業会(Association of Radio Industries and Businesses)で定められるテレビ番組素材伝送用の無線素材伝送システムの規格(ARIB STD−B33)に準拠した場合の、16QAMで表される送信信号の配置を示す図である。このコンスタレーション配置は、図1に示したMIMO通信システムにおける16QAMの変調方式における送信信号x1,x2のとり得る配置を示している。
式(5)において、送信信号x1の全候補点x’1は、式(4)の送信信号x2に全変調候補点Sを代入して得られた16点の値である。また、送信信号x2の誤差距離Δ2は、式(4)により求められるx2(=y’2/R22)と、送信信号x2の全変調候補点Sとの間における16点の距離の値となる。
候補点x1’誤差距離演算部2804は、x1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1により算出された送信信号x1の全候補点x’1を入力し、この送信信号x1の全候補点x’1と、この候補点x’1の表す4ビット信号の順序に従って各ビットで定められた基準点との間の誤差距離(送信信号x1の誤差距離Δ1)を算出する(ステップS905)。具体的には、候補点x1’誤差距離演算部2804は、送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号の各ビットの信号点と、“0”の値をとる場合及び“1”の値をとる場合のそれぞれに定めた基準点との誤差距離を、以下の式により算出する。但し、以下の式では、ARIB STD−B33において定義される受信信号の振幅Z(=√10)による除算は省略してある。
(A)送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの1ビット目の信号点と基準点との間の誤差距離
dist_x1_10=abs(abs(Re(x’1)-2)-1) (1ヒ゛ット目”0”を基準)・・・(6)
dist_x1_11=abs(abs(Re(x’1)+2)-1) (1ヒ゛ット目”1”を基準)・・・(7)
(B)送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの2ビット目の信号点と基準点との間の誤差距離
dist_x1_20=abs(abs(Im(x’1)-2)-1) (2ヒ゛ット目”0”を基準)・・・(8)
dist_x1_21=abs(abs(Im(x’1)+2)-1) (2ヒ゛ット目”1”を基準)・・・(9)
(C)送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの3ビット目の信号点と基準点との間の誤差距離
dist_x1_30=abs(abs(Re(x’1))-3) (3ヒ゛ット目”0”を基準)・・・(10)
dist_x1_31=abs(abs(Re(x’1))-1) (3ヒ゛ット目”1”を基準)・・・(11)
(D)送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの4ビット目の信号点と基準点との間の誤差距離
dist_x1_40=abs(abs(Im(x’1))-3) (4ヒ゛ット目”0”を基準)・・・(12)
dist_x1_41=abs(abs(Im(x’1))-1) (4ヒ゛ット目”1”を基準)・・・(13)
ここで、Reは実数部、Imは虚数部、absは絶対値をそれぞれ示し、各式において、それぞれ16個の誤差距離が算出される。
図11は、コンスタレーション配置において、16QAMで表される4ビット信号の分布を示す図である。ここで、横軸は実数(real)または同相成分を表し、縦軸は虚数(imag)または直交成分を表す。図11に示すように、x1_10は1ビット目が“0”のときの領域、x1_11は1ビット目が“1”のときの領域、x1_20は2ビット目が“0”のときの領域、x1_21は2ビット目が“1”のときの領域、x1_30は3ビット目が“0”のときの領域、x1_31は3ビット目が“1”のときの領域、x1_40は4ビット目が“0”のときの領域、x1_41は4ビット目が“1”のときの領域である。
送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの1ビット目について、それが“0”であるか“1”であるかは、送信信号x1の全候補点x’1における実数部の値が正であるか負であるかにより決定される。式(6)の誤差距離は、1ビット目“0”を基準にしたものであり、その実数部が1または3であるから、基準点を(2+0j)として算出される。一方、式(7)の誤差距離は、1ビット目“1”を基準にしたものであり、その実数部が−1または−3であるから、基準点を(−2+0j)として算出される。
また、送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの2ビット目について、それが“0”であるか“1”であるかは、送信信号x1の全候補点x’1における虚数部の値が正であるか負であるかにより決定される。式(8)の誤差距離は、2ビット目“0”を基準にしたものであり、基準点を(0+2j)として算出される。一方、式(9)の誤差距離は、2ビット目“1”を基準にしたものであり、基準点を(0−2j)として算出される。
また、送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの3ビット目について、式(10)の誤差距離は、3ビット目“0”を基準にしたものであり、基準点を(3+0j)または(−3+0j)として算出される。一方、式(11)の誤差距離は、3ビット目“1”を基準にしたものであり、基準点を(1+0j)または(−1+0j)として算出される。
また、送信信号x1の全候補点x’1を表す4ビット信号のうちの4ビット目について、式(10)の誤差距離は、4ビット目“0”を基準にしたものであり、基準点を(0+3j)または(0−3j)として算出される。一方、式(11)の誤差距離は、4ビット目“1”を基準にしたものであり、基準点を(0+1j)または(0−1j)として算出される誤差距離である。
誤差距離合成部2805は、x1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1により算出された送信信号x2の誤差距離Δ2(16個)を入力し、候補点x1’誤差距離演算部2804により算出された送信信号x1の誤差距離Δ1(16×8=128個)を入力し、送信信号x2の誤差距離Δ2と、それに対応する(その誤差の16個の信号点に対応する)送信信号x1の誤差距離Δ1とを足し合わせ、送信信号x1及び送信信号x2の合成誤差距離Δ12を、ビットの状態毎に以下のように算出する(ステップS906)。
(A)1ビット目の合成誤差距離
Δ12_x1_10=dist_x1_10+Δ2 ・・・(14)
Δ12_x1_11=dist_x1_11+Δ2 ・・・(15)
(B)2ビット目の合成誤差距離
Δ12_x1_20=dist_x1_20+Δ2 ・・・(16)
Δ12_x1_21=dist_x1_21+Δ2 ・・・(17)
(C)3ビット目の合成誤差距離
Δ12_x1_30=dist_x1_30+Δ2 ・・・(18)
Δ12_x1_31=dist_x1_31+Δ2 ・・・(19)
(D)4ビット目の合成誤差距離
Δ12_x1_40=dist_x1_40+Δ2 ・・・(20)
Δ12_x1_41=dist_x1_41+Δ2 ・・・(21)
メモリ部2806は、誤差距離合成部2805により合成された送信信号x1及び送信信号x2の合成誤差距離Δ12を、後述する内デインタリーブ部2807において必要となる時間分のデータ量を一時的に記録する(図9の処理フローではこのステップは省略してある。)。
内デインタリーブ部2807は、メモリ部2806に記録された合成誤差距離Δ12を読み出し、送信装置100における符号化部110の内インタリーブ部115により送信信号に付加された時間インタリーブ、周波数インタリーブ及びビットインタリーブに対してデインタリーブを行い、このデインタリーブに従って合成誤差距離を並び替える。そして、内インタリーブを行う前の信号に戻す(図9の処理フローではこのステップは省略してある。)。
ビタビブランチメトリック算出部2808は、内デインタリーブ部2807により内デインタリーブされた、ビットの状態毎の合成誤差距離(16×8=128個)を入力し、各ビットにおいて、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2がとり得る4つのパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)について、該当する合成誤差距離群を選択し、その中から最小値をとる合成誤差距離を選択し、それを各パターンのブランチメトリックとして出力する(ステップS907)。以下、ブランチメトリックを生成する手法について説明する。
図12は、16QAMで表される送信信号の全候補点と対応番号とを示す図である。図12において、図10に示した送信信号の信号点に対応した番号が示されている。
図13は、16QAMで表される4ビット信号における候補点の選択手法について説明する図である。例として、1ビット目の合成誤差距離を選択する手法について説明する。まず、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2がとり得るパターンが(x1,x2)=(0,0)の場合について説明する。ビタビブランチメトリック算出部2808は、送信信号x1の候補点x’1における(14)式に示す1ビット目が“0”のときの合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)を選択する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)の中から、送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が“0”をとる場合の最も確からしい8個の合成誤差距離を選択する。この8個の合成誤差距離は、送信信号x2の候補点x’2の実数が正となる範囲における距離であり、図13において、1ビット目の座標上で1番から8番までの信号点に対応する合成誤差距離が該当する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この8個の合成誤差距離の中から、最小となるものを選択し、この合成誤差距離を、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が(0,0)の場合のブランチメトリックとする。
また、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2がとり得るパターン(x1,x2)=(0,1)の場合について説明する。ビタビブランチメトリック算出部2808は、送信信号x1の候補点x’1における(14)式に示す1ビット目が“0”のときの合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)を選択する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)の中から、送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が“1”をとる場合の最も確からしい8個の合成誤差距離を選択する。この8個の合成誤差距離は、送信信号x2の候補点x’2の実数が負となる範囲における距離であり、図13において、1ビット目の座標上で9番から16番までの信号点に対応する合成誤差距離が該当する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この8個の合成誤差距離の中から、最小となるものを選択し、この合成誤差距離を、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が(0,1)の場合のブランチメトリックとする。
また、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2がとり得るパターン(x1,x2)=(1,0)の場合について説明する。ビタビブランチメトリック算出部2808は、送信信号x1の候補点x’1における(15)式に示す1ビット目が“1”のときの合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)を選択する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)の中から、送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が“0”をとる場合の最も確からしい8個の合成誤差距離を選択する。この8個の合成誤差距離は、送信信号x2の候補点x’2の実数が正となる範囲における距離であり、図13において、1ビット目の座標上で1番から8番までの信号点に対応する合成誤差距離が該当する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この8個の合成誤差距離の中から、最小となるものを選択し、この合成誤差距離を、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が(1,0)の場合のブランチメトリックとする。
また、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2がとり得るパターン(x1,x2)=(1,1)の場合について説明する。ビタビブランチメトリック算出部2808は、送信信号x1の候補点x’1における(15)式に示す1ビット目が“1”のときの合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)を選択する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この合成誤差距離群(16個の合成誤差距離)の中から、送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が“1”をとる場合の最も確からしい8個の合成誤差距離を選択する。この8個の合成誤差距離は、送信信号x2の候補点x’2の実数が負となる範囲における距離であり、図13において、1ビット目の座標上で9番から16番までの信号点に対応する合成誤差距離が該当する。そして、ビタビブランチメトリック算出部2808は、この8個の合成誤差距離の中から、最小となるものを選択し、この合成誤差距離を、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の1ビット目が(1,1)の場合のブランチメトリックとする。
同様に、ビタビブランチメトリック算出部2808は、2〜4ビット目のそれぞれにおいて、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2がとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)について、該当する合成誤差距離群を選択し、その中から最小値をとる合成誤差距離を選択し、それを各パターンのブランチメトリックとして出力する。このようにして、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの1ビット目、2ビット目、3ビット目及び4ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)について、ブランチメトリック(誤差距離)が算出される。
ビタビ復号部2809は、ビタビブランチメトリック算出部2808により算出された、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの1ビット目、2ビット目、3ビット目及び4ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)のブランチメトリックを入力し、トレリスマップに代入してビタビ復号を行う。
図21は、ビタビ復号部2809の処理を説明する図である。図21において、矢印のパスに対応して表された(1)〜(4)は、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの1ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)のブランチメトリックを示す。また、(5)〜(8)は、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの2ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)のブランチメトリックを示す。また、(9)〜(12)は、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの3ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)のブランチメトリック(誤差距離)を示す。また、(13)〜(16)は、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの4ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)のブランチメトリック(誤差距離)を示す。尚、図21は図20に対応している。
つまり、ビタビ復号部2809は、図21に示すように、入力したブランチメトリックをトレリスマップに代入し、このトレリスマップからブランチメトリックで算出される経路毎の誤差距離の総和(パスメトリック)が最小となるパス(最小パス)を特定し、この最小パスに対応するデータ信号(最小パスが示すデータ信号またはトレリス遷移する状態の変化が示すデータ信号)を、ビタビ復号したデータ信号として出力する。
以上、図8のMIMO復調部280−1の構成について説明した。ここで、図7に示した従来のMIMO復調部280−Pと、図8に示したMIMO復調部280−1とを比較する。図14は、実施例1のMIMO復調部280−1を、従来のMIMO復調部280−Pに対応させた場合の構成を示す図である。すなわち、図14のMIMO復調部280−1は、図7の従来のMIMO復調部280−Pにその構成を対応させるために、図8の表現を変えたものである。図14において、このMIMO復調部280−1は、QR分解部2811、全変調候補点記録部2812、レプリカ信号生成部2813、尤度計算部2814、内デインタリーブ部2815、ブランチメトリック生成部2816及びビタビ復号部2817を備えている。
QR分解部2811は図8に示したQR分解部2801に対応し、全変調候補点記録部2812は図8に示した全変調候補点記録部2802に対応する。また、レプリカ信号生成部2813及び尤度計算部2814は、図8に示したx1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1、候補点x1’誤差距離演算部2804及び誤差距離合成部2805に対応する。また、内デインタリーブ部2815は図8に示したメモリ部2806及び内デインタリーブ部2807に対応し、ブランチメトリック生成部2816は図8に示したビタビブランチメトリック算出部2808に対応し、ビタビ復号部2817は図8に示したビタビ復号部2809に対応する。尚、図14の各構成部の機能は、図8及び図9により既に説明済みであるので、ここでは説明を省略する。
図15は、実施例1において、m本の送信アンテナ101及びn本の受信アンテナ201を備えたMIMO通信システムに適用した場合の処理を示すフロー図である。すなわち、このフロー図は、図9に示した、2本の送信アンテナ101及び4本の受信アンテナ201を備えたMIMO通信システムにおける処理を一般化したものである。以下、図15の処理について説明する。
このMIMO通信システムでは、送信装置100が、それぞれ16QAMにマッピングされたOFDM信号の送信信号X=[x1,・・・,xm]を同一周波数上で、m本の送信アンテナ101を介して送信し、受信装置200が、MIMO伝搬路を経てn本の受信アンテナ201を介して受信信号Y=[y1,・・・yn]として受信する。
そして、受信装置200は、パイロットキャリアを用いて送受信アンテナ間の伝搬路行列Hを算出し、この伝搬路行列Hに対してQR分解を行い、行列Q及び行列Rを算出する(ステップS1501)。また、この行列Q及び行列Rを用いて、送信信号xmを全候補点S(多値変数分:16点)とみなして送信信号xmに対する送信信号xm−1,・・・x1の全候補点x’m−1,・・・,x’1を演算し、送信信号xmの復調信号と全候補点Sとの間の誤差距離Δmを演算する(ステップS1502〜ステップS1504)。また、送信信号xm−1,・・・x1の全候補点x’m−1,・・・,x’1と、この候補点の表す4ビット信号の順序に従い、1ビット目〜4ビット目の各ビットが“0”及び“1”の値をとり得る場合に各ビットで定められた基準点との間の誤差距離Δm−1〜Δ1を算出する(ステップS1505)。
そして、受信装置200は、送信信号xmの誤差距離Δmと、それに対応する(その誤差の16個の信号点に対応する)送信信号xm−1,・・・x1の誤差距離Δm−1〜Δ1とを足し合わせ、合成誤差距離dXをビットの状態毎に算出する(ステップS1506)。また、この合成誤差距離dXについて、各ビットにおいてとり得るパターン(x1,・・・,xm)=(0,・・・,0),(0,・・・,1),・・・,(1,・・・,1)に応じて合成誤差距離群を選択し、その中から最小値をとる合成誤差距離を選択し、それを各パターンのブランチメトリックとして出力する(ステップS1507)。
以上、図15の処理について説明したが、これらは図9に示したステップS901〜ステップS907にそれぞれ対応するので、具体的な説明及び数式等についてはそちらを参照されたい。
このように、実施例1のMIMO復調部280−1によれば、x1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1が、行列Q及び行列Rを用いて、送信信号x1の全候補点x’1及び送信信号x2の誤差距離Δ2を演算し、候補点x1’誤差距離演算部2804が、送信信号x1の全候補点x’1と各ビットで定められた基準点との間の誤差距離(送信信号x1の誤差距離Δ1)を算出し、誤差距離合成部2805が、送信信号x2の誤差距離Δ2と送信信号x1の誤差距離Δ1を合成して、1ビット目〜4ビット目の状態毎に合成誤差距離Δ12を算出し、ビタビブランチメトリック算出部2808が、送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の候補点x’2の4ビット信号のうちの1ビット目〜4ビット目がそれぞれとり得るパターン(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)のブランチメトリックを算出し、ビタビ復号部2809が、このブランチメトリックをトレリスマップに代入してビタビ復号を行い、復号信号を生成するようにした。従来のMIMO復調部280−Pでは2回の尤度計算(誤差距離計算)を行っていたのに対し、MIMO復調部280−1は、受信したデータ信号に対して最尤推定方式による処理を行うための尤度計算とビタビ復号を行うための尤度計算とを統一化して、1回の尤度計算で済むようにした。また、復調信号を生成することなくビタビ復号を行うようにした。したがって、MIMO復調における演算量を削減し、復調処理の負荷を低減することができる。また、従来の最尤推定方式とほぼ同等の信号分離性能を実現することができると共に、ハードウェアの実現が容易になる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例1では、送信信号x1の全候補点x’1(16個)及び送信信号x2の誤差距離Δ2(16個)により、ビタビ復号のためのブランチメトリックを算出するようにした。これに対し、実施例2では、16個の全ての候補点について誤差計算を行うのではなく、16個のうちの4個の候補点について誤差距離を行うことにより、演算量をさらに削減する。つまり、実施例2は、復調処理の負荷を一層低減するために、送信信号x1の4個の候補点及び送信信号x2の4個の誤差距離により、ビタビ復号のためのブランチメトリックを算出する。
図16は、本発明の実施の形態による受信装置におけるMIMO復調部の構成例(実施例2)を示す図である。また、図17は、図16に示すMIMO復調部(実施例2)の処理を示すフロー図である。このMIMO復調部280−2は、図1に示した2本の送信アンテナ101及び4本の受信アンテナ201を備えたMIMO通信システムにおいて、図5に示した受信装置200におけるMIMO復調部280に相当し、QR分解部2801、全変調候補点記録部2802、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2、候補点x1’誤差距離演算部2804、誤差距離合成部2805、メモリ部2806、内デインタリーブ部2807、ビタビブランチメトリック算出部2808及びビタビ復号部2809を備えている。
図8に示したMIMO復調部280−1(実施例1)の構成と図16に示すMIMO復調部280−2(実施例2)の構成とを比較すると、両者は、QR分解部2801、全変調候補点記録部2802、候補点x1‘誤差距離演算部2804、誤差距離合成部2805、メモリ部2806、内デインタリーブ部2807、ビタビブランチメトリック算出部2808及びビタビ復号部2809において共通するが、MIMO復調部280−2は、MIMO復調部280−1のx1候補点生成及びx2誤差距離演算部2803−1とは異なる機能を有するx1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2を備えている点で相違する。また、図9に示したMIMO復調部280−1(実施例1)の処理フローと図17に示すMIMO復調部280−2(実施例2)の処理フローとを比較すると、MIMO復調部280−2のステップS1703が、MIMO復調部280−1のステップS903と異なる処理である点において相違する。つまり、MIMO復調部280−2が全候補である16点について演算するのに対し、MIMO復調部280−2は、4個の候補点についてのみ演算する点において相違する。
x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、QR分解部2801により算出された行列Q及び行列Rを入力し、まず、式(4)により求められるx2(=y’2/R22)と、送信信号x2の全変調候補点Sとの間における誤差距離Δ2を演算し、この送信信号x2の誤差距離Δ2(16点の誤差距離)のうちの最も小さい誤差距離における候補点を選択し、これを送信信号x2の復調点とする。また、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2の復調点について、送信信号x2の4ビット信号のうちの各ビットが異なるパターンとなる信号点を抽出し、この4個の信号点を候補点Sとして、前述した式(5)により、送信信号x1の候補点x’1(4個)を算出する。後述するように、例えば、送信信号x2の復調点が[0,0,1,0]の場合、候補点として[1,0,1,0][0,1,1,0][0,0,0,0][0,0,1,1]が抽出される。
図18は、送信信号x2の誤差距離Δ2のうち、最も小さい誤差距離の候補点を示す図である。ここでは、最も小さい誤差距離の候補点を[0,0,1,0]とする。図19は、各ビットにおける候補点の抽出手法について説明する図である。図19において、送信信号x2の復調点が[0,0,1,0]の場合、候補点として[1,0,1,0][0,1,1,0][0,0,0,0][0,0,1,1]が抽出される。
例えば、x2の1ビット目の値が“0”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2を[0,0,1,0]としたときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、1ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離をそれぞれ求める(式(6)及び式(7))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の値[0,0,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と、候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。
また、送信信号x2の1ビット目の値が“1”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2の候補点[1,0,1,0]を抽出し、このときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、1ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離をそれぞれ求める(式(6)及び式(7))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[1,0,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と、候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。ビタビブランチメトリック算出部2808は、この上記の計算処理により求めた合成誤差距離に対して、(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)の値をとるときのブランチメトリックとして振り分け、ビタビ復号部2809は、このブランチメトリックをトレリスマップに代入する。
同様に、送信信号x2の2ビット目の値が“0”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2を[0,0,1,0]としたときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、2ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離を求める(式(8)及び式(9))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[0,0,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と、候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。
また、送信信号x2の2ビット目の値が“1”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2の候補点[0,1,1,0]を抽出し、このときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、2ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離を求める(式(8)及び式(9))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[0,1,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。ビタビブランチメトリック算出部2808は、この上記の計算処理により求めた合成誤差距離に対して、(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)の値をとるときのブランチメトリックとして振り分け、ビタビ復号部2809は、このブランチメトリックをトレリスマップに代入する。
同様に、送信信号x2の3ビット目の値が“0”の値をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2を[0,0,0,0]としたときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、3ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離を求める(式(10)及び式(11))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[0,0,0,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と、候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。
また、送信信号x2の3ビット目の値が“1”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2の候補点[0,0,1,0]を抽出し、このときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、3ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離を求める(式(10)及び式(11))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[0,0,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。ビタビブランチメトリック算出部2808は、この上記の計算処理により求めた合成誤差距離に対して、(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)の値をとるときのブランチメトリックとして振り分け、ビタビ復号部2809は、このブランチメトリックをトレリスマップに代入する。
同様に、送信信号x2の4ビット目の値が“0”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2を[0,0,1,0]としたときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、4ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離を求める(式(12)及び式(13))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[0,0,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と、候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。
また、送信信号x2の4ビット目の値が“1”をとる場合、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2は、送信信号x2の候補点[0,0,1,1]を抽出し、このときに対応する送信信号x1の候補点x’1を式(5)により算出する。候補点x1’誤差距離演算部2804は、この候補点x’1に対して、4ビット目が“0”及び“1”の基準点との誤差距離を求める(式(12)及び式(13))。誤差距離合成部2805は、送信信号x2の候補点[0,0,1,0]に応じた誤差距離Δ2を選択し、この誤差距離Δ2と候補点x’1の誤差距離Δ1とを加算して合成誤差距離を求める。ビタビブランチメトリック算出部2808は、この上記の計算処理により求めた合成誤差距離に対して、(x1,x2)=(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)の値をとるときのブランチメトリックとして振り分け、ビタビ復号部2809は、このブランチメトリックをトレリスマップに代入する。
このように、実施例2のMIMO復調部280−2によれば、x1候補点選択及びx2誤差距離演算部2803−2が、送信信号x2の各ビットの値が“0”及び“1”をとる場合について、それぞれ送信信号x1の候補点x’1を算出し、候補点x1’誤差距離演算部2804が、候補点x’1に対して誤差距離を算出し、誤差距離合成部2805が、合成誤差距離を求めるようにした。すなわち、実施例2では、送信信号x2の復調点に対して、ビット毎に異なるパターンの送信信号x1の候補点x’1を選択し、この選択した候補点x’に対してのみ誤差距離を演算し、ブランチメトリックを算出してビタビ復号を行うようにした。これにより、実施例1に比べて、MIMO復調の演算量を一層削減し、復調処理の負荷を一層低減することができる。
尚、実施例1,2では、受信したデータ信号に対して最尤推定方式による処理を行うための尤度計算とビタビ復号を行うための尤度計算とを統一化して、1回の尤度計算によりMIMO復調を行うようにした。しかし、QR分解を行って送信信号x1の候補点x’1及び送信信号x2の誤差距離Δ2を算出しているため、式(5)で用いる行列Rの成分が0の場合には、式(5)の分母が0となり値が発散してしまう。また、QR分解のアルゴリズムにもよるが、4本の受信アンテナ201である受信アンテナ#1〜#4のうちの第1の受信アンテナ#1や第2の受信アンテナ#2において、十分な電力の送信信号x1、送信信号x2のいずれかまたは両方ともを受信することができない場合には、行列Rそのものの値が発散する。これらに対応するため、例えば、受信信号レベルの大きな順に受信信号を並び替えたり、送信信号x1と送信信号x2を入れ替えたりして行列Q及び行列Rを導出する場合がある。
以上、実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施例1,2では、2本の送信アンテナ101及び4本の受信アンテナ201により構成された送信2系統及び受信4系統のMIMO通信システムについて説明したが、これに限定されるものではない。