次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
[本発明の第1実施形態]
(第1実施形態に係る移動体通信システムの全体概略構成)
図1は、本実施形態に係る無線通信装置を含む移動体通信システムの全体概略構成図である。移動体通信システムは、無線基地局100(無線通信装置)と無線通信端末200(対向無線通信装置)とを具備する。なお、移動体通信システムを構成する無線基地局及び無線通信端末の数は、図1に示した数に限定されるものではない。
移動体通信システムでは、無線基地局100と無線通信端末200との間で、無線通信が行われる。移動体通信システムでは、時分割多元接続/時分割複信(TDMA/TDD)を用いている。
無線通信端末200は、携帯電話端末であり、音声通話や電子メールの送受信機能を備える。また、無線通信端末200は、携帯電話機や、PDA(Personal Degital Assistant)や、ノート型コンピュータなどのモバイル機器を想定している。
また、図1では、無線通信端末200が、時点t1において位置イにおいて上り方向信号RSupを送信し、時点t2において位置ロへ移動した際、下り方向信号RSdownを受信するイメージが示されている。
無線基地局100は、複数の素子アンテナを用いて、アダプティブアレイ制御を実行する。具体的に、無線基地局100は、通信先の無線通信装置である無線通信端末200から受信した上り方向信号RSup(受信無線信号)に基づいて、無線通信端末200に送信する下り方向信号RSdown(送信無線信号)の指向性を適応制御する。
無線通信端末200では、自装置の移動又は周辺の物体の移動等の周辺環境の変化により伝播路が変動する。そして、当該無線通信端末200の周辺には、無線基地局100から送信された無線信号によって、例えば、図2に示すように、定在波等の周期的に電力値のピークを有する周期的信号が現れる。
このような周期的信号において、ピーク(ビーム)の受信電力P1からヌルの受信電力P2までの間隔は、例えば、無線信号の周波数が2GHz帯である場合、周期的信号の波長が約半分であると仮定すると、周期的信号の波長は約7.5cmである。
(第1実施形態に係る無線基地局の構成)
次に、本実施形態に係る無線基地局100の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る無線基地局100の機能ブロック構成図である。また、以下、本発明との関連がある部分について主に説明する。したがって、無線基地局100は、無線基地局100としての機能を実現する上で必須な、図示しない或いは説明を省略した論理ブロック(電源部など)を備える場合があることに留意されたい。
図3に示すように、無線基地局100は、素子アンテナ101_1乃至101_nと、受信部102_1乃至102_nと、第1のウエイト算出部103と、第2のウエイト算出部104と、伝播路状態検出部105と、判断部106と、アダプティブ処理制御部107と、送信部108_1乃至108_nとを備える。
素子アンテナ101_1乃至101_nは、受信部102_1乃至102_nと、送信部108_1乃至108_nと接続し、無線通信端末200との間で、TDMA/TDDに従った無線信号を送受信する。
受信部102_1乃至102_nは、素子アンテナ101_1乃至101_nを介して、無線通信端末200から上り方向信号RSupを受信する。
第1のウエイト算出部103は、受信部102_1乃至102_nと、アダプティブ処理制御部107と接続する。第1のウエイト算出部103は、受信部102_1乃至102_nで受信された上り方向信号RSupに基づいて、受信した時点t1の位置イにピークを向けるように、無線通信端末200へ送信する下り方向信号RSdownのアダプティブアレイ制御で用いられる第1のアレーウエイトを算出する(第1のアレーウエイト算出方法{基準の信号処理方法}に基づいて算出する)。この第1のウエイト算出部103で算出される第1のアレーウエイトは、受信した時点t1の位置イにピークを向けるように、無線通信端末200へ送信する下り方向信号RSdownのアダプティブアレイ制御で用いられるが、この場合、当該第1のアレーウエイトに基づいて実行されるアダプティブアレイ制御が、通常(基準)のアダプティブアレイ制御(第1の制御方法)である。
第2のウエイト算出部104は、受信部102_1乃至102_nと、アダプティブ処理制御部107と接続する。第2のウエイト算出部104は、受信部102_1乃至102_nで受信された上り方向信号RSupに基づいて、受信した時点t1の位置イにヌルを向けるように、無線通信端末200へ送信する下り方向信号RSdownのアダプティブアレイ制御で用いられる第2のアレーウエイトを算出する(第2のアレーウエイト算出方法{基準の信号処理方法とは異なる別の信号処理方法}に基づいて算出する)。この第2のウエイト算出部104で算出される第2のアレーウエイトは、受信した時点t1の位置イにヌルを向けるように、無線通信端末200へ送信する下り方向信号RSdownのアダプティブアレイ制御で用いられるが、この場合、当該第2のアレーウエイトに基づいたアダプティブアレイ制御は、上記した第1のアレーウエイトに基づいて実行される通常(基準)のアダプティブアレイ制御とは異なるアダプティブアレイ制御(第2の制御方法)である。
伝播路状態検出部105は、受信部102_1乃至102_nと、判断部106と接続する。伝播路状態検出部105は、伝播路の変動状態を検出し、検出した伝播路の変動状態に基づいて、無線通信端末200との伝播路の状態が変動する変動周期を把握する。伝播路状態検出部105は、受信部102_1乃至102_nで受信された上り方向信号RSupの電力値の変動を変動周期faとして把握する。具体的に、伝播路状態検出部105は、例えば、無線通信端末200の移動によるドップラ変動で変化する受信電力値を定期的に取得すると共に、当該受信電力値の変動の変動周期faを把握する。また、伝播路状態検出部105は、把握した変動周期faを判断部106に通知する。
判断部106は、伝播路状態検出部105と、アダプティブ処理制御部107と接続する。また、判断部106は、無線通信端末200から上り方向信号RSupを受信した時点t1から、下り方向信号RSdownを送信する時点t2までの処理時間Δtと、伝播路状態検出部105によって把握された変動周期faとを比較する。判断部106は、処理時間Δtが、伝播路状態検出部105から通知された変動周期faの略半分であるか否かを判定する。
具体的に、判断部106は、処理時間Δtとなる変動周期faの略半分の範囲を示す下限値fL及び上限値fHを予め記憶しており、伝播路状態検出部105によって把握された変動周期faが、下限値fL≦fa<上限値fHであるか否かを判定する。また、判断部106は、判断結果をアダプティブ処理制御部107に通知する。このとき、判断部106によって、変動周期faが下限値fL≦fa<上限値fHであると判断された場合、後述するアダプティブ処理制御部107によって、第2のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御(第2の制御方法)が実行され、変動周期faが下限値fL≦fa<上限値fHでないと判断された場合、後述するアダプティブ処理制御部107によって第1のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御(第1の制御方法)が実行される。
このようにして、判断部106は、変動周期faに基づいて、下り方向信号RSdownの指向性を変更するか否かを判断する。本実施形態おいて、判断部106は、伝播路状態検出部105によって検出された伝播路の変動状態に基づいて、下り方向信号RSdownの指向性を変更するか否かを判断する判断部を構成する。
アダプティブ処理制御部107は、第1のウエイト算出部103と、第2のウエイト算出部104と、判断部106と、送信部108_1乃至108_nと接続する。アダプティブ処理制御部107は、伝播路状態検出部105によって把握された変動周期faに基づいて、素子アンテナ101_1乃至101_nを介して送信される下り方向信号RSdownの指向性を制御する。アダプティブ処理制御部107は、判断部106によって下り方向信号RSdownの指向性を変更すると判断された場合、第1の制御方法とは異なる第2の制御方法に制御方法を変更し、第2の制御方法にしたがって下り方向信号RSdownを処理する。
ここで、アダプティブ処理制御部107は、伝播路状態検出部105によって把握された変動周期faに基づき判断部106によって比較された処理時間Δtと変動周期faとの比較結果(判定結果)に基づいて、上り方向信号RSupを受信した時点における無線通信端末200の位置にヌルが向く下り方向信号RSdownを送信する。
具体的に、アダプティブ処理制御部107は、処理時間Δtが変動周期faの略半分であると判断部106によって判定された場合、上り方向信号RSupを受信した時点における無線通信端末200の位置にヌルが向くように、第2のアレーウエイトを用いて、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信するように制御する。
また、アダプティブ処理制御部107は、処理時間Δtが変動周期faの略半分でないと判断部106によって判定された場合、上り方向信号RSupを受信した時点における無線通信端末200の位置にピーク(ビーム)が向くように、第1のアレーウエイトを用いて、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信するように制御する。
本実施形態に係るアダプティブ処理制御部107は、下り方向信号RSdownの指向性を適応制御する第1の制御方法又は第2の制御方法にしたがって、下り方向信号RSdownを処理する送信制御部を構成する。
送信部108_1乃至108_nは、アダプティブ処理制御部107の制御に従ってアダプティブアレイ処理を実行し、素子アンテナ101_1乃至101_nを介して、無線通信端末200へ下り方向信号RSdownを送信する。
(第1実施形態に係る無線基地局の動作)
次に、図4を参照し、上述した無線基地局100の動作について説明する。具体的には、無線基地局100が、アダプティブアレイ制御を用いて、上り方向信号RSup(受信無線信号)に基づいて、下り方向信号RSdown(送信無線信号)を送信する際の制御動作について説明する。
ステップS11において、無線基地局100は、無線通信端末200から送信された上り方向信号RSupの無線信号を受信する。
ステップS13において、伝播路状態検出部105は、受信した上り方向信号RSupの変動周期faを把握する。また、伝播路状態検出部105は、把握した変動周期faを判断部106に通知する。
ここで、図5には、伝播路状態検出部105で取得された受信電力値の時間軸上の関係が示されている。図5に示すように、伝播路状態検出部105では、無線通信端末200の移動による伝播路の変化により、受信電力値が時間の経過と共に周期的に変動する。伝播路状態検出部105は、この変動を変動周期faとして把握する。
ステップS15において、 判断部106は、通知された変動周期faが、fL≦fa<fHであるか否かを判定する。
ステップS17aにおいて、判断部106によって変動周期faが、fL≦fa<fHであると判定された場合(fL≦fa<fHがYESの場合)、アダプティブ処理制御部107は、第2のウエイト算出部104に第2のアレーウエイトを算出するように指示する。第2のウエイト算出部104は、第2のアレーウエイトを算出して、アダプティブ処理制御部107に通知する。
ステップS17bにおいて、判断部106によって変動周期faが、fL≦fa<fHでないと判定された場合(fL≦fa<fHがNoの場合)、アダプティブ処理制御部107は、第1のウエイト算出部103に第1のアレーウエイトを算出するように指示する。第1のウエイト算出部103は、第1のアレーウエイトを算出して、アダプティブ処理制御部107に通知する。
ステップS19において、アダプティブ処理制御部107は、第1のアレーウエイト又は第2のアレーウエイトを用いて、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信する。
(第1実施形態に係る無線基地局の作用・効果)
本発明に係る無線基地局100によれば、処理時間Δtが、無線通信端末200から送信された上り方向信号RSupの受信電力値の変動周期faの略半分であると判定された場合、無線通信端末200へ送信する下り方向信号RSdownのアダプティブアレイ制御を、位置イにヌルを向けるように、第2のアレーウエイトを用いて行われる。
例えば、無線通信端末200が時点t1から時点t2までの処理期間Δtの間に、変動周期faの略半分の位置ロに移動する場合、図6に示すように、従来技術に係る無線基地局100では、時点t1における位置イでの上り方向信号RSupに基づいてアダプティブアレイ制御が実行され、時点t2で位置イにおいてピークの受信電力P1となるように、下り方向信号RSdownを送信する。よって、時点t2において位置ロに移動する無線通信端末200では、受信する受信電力がヌルの受信電力P2まで急激に低下していた。
本発明に係る無線基地局100によれば、無線通信端末200が時点t1から時点t2までの処理期間Δtの間に波長λの略半分の距離を移動する場合、例えば、図7に示すように、時点t2において位置イでヌルの受信電力P2となるように、第2のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御が実行されて下り方向信号RSdownを送信する。よって、無線通信端末200では、時点t2の位置ロにおいて受信される受信電力は、少なくともヌルの受信電力P2ではなく、例えば、ピークの受信電力P1で受信される。
このようにして、無線基地局100によれば、通信先の無線通信端末200または通信先の無線通信端末200周辺に存在する物体が高速(100km/h〜)で移動することによって当該無線通信端末200との伝播路の状態が急激に変動する場合でも、通信品質の劣化を抑制することができる。
(変更例1)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第1実施形態では、無線基地局100の伝播路状態検出部105が、受信部102_1乃至102_nで受信された上り方向信号RSupの電力値の変動を変動周期faとして把握していたが、伝播路状態検出部105は、上り方向信号RSupのドップラ変動を検出することにより変動周期faとして把握してもよい。ここで、上述した変動周期として把握されるドップラ変動は、無線通信端末200の移動速度に応じてドップラ変動した上り方向信号RSupの周波数を示す。また、伝播路状態検出部105は、把握した変動周期faを判断部106に通知する。
判断部106は、上述した処理時間Δtの間に、無線通信端末200が無線信号で用いられている周波数fの波長λの略半分の距離を移動するか否かを判定する。
具体的に、判断部106では、処理時間Δtにおいて、無線信号で用いられている周波数fの波長λの略半分の距離を移動する際の移動速度に相当するドップラ変動量の下限値fL乃至上限値fHを予め記憶し、伝播路状態検出部105によって把握された変動周期faが、fL≦fa<fHであるか否かを判定する。判断部106は、判定結果を、アダプティブ処理制御部107に通知する。なお、他の構成は、上述した第1実施形態に係る無線基地局100と同様であるため、説明を省略する。
以上のように、本変更例1に係る無線基地局100によれば、変動周期faが、波長λの略半分の距離を移動する際の移動速度に相当するドップラ変動量の下限値fL乃至上限値fH内であると判定された場合、時点t2において位置イにヌルの受信電力P2となるように、第2のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御が実行されて下り方向信号RSdownを送信する。よって、移動する無線通信端末200では、時点t2の位置ロにおいて受信される受信電力は、少なくともヌルの受信電力P2ではなく、例えば、ピークの受信電力P1で受信される。よって、無線通信端末200では、時点t2の位置ロにおいて受信される受信電力は、少なくともヌルの受信電力P2ではなく、ヌル以外の例えばピークの受信電力P1で受信される。
このようにして、無線基地局100によれば、通信先の無線通信端末200または通信先の無線通信端末200周辺に存在する物体が高速(100km/h〜)で移動することによって当該無線通信端末200との伝播路の状態が急激に変動する場合でも、通信品質の劣化を抑制することができる。
(変更例2)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。第1実施形態に係る無線基地局100が、図3に示すように、アンテナ相関検出部112を更に備えても良い。
アンテナ相関検出部112は、受信部102_1乃至102_nと、アダプティブ処理制御部107と接続する。アンテナ相関検出部112は、複数の素子アンテナ101_1乃至101_nのそれぞれが受信する上り方向信号RSupの相関度を検出する。具体的に、アンテナ相関検出部112は、受信部102_1乃至102_nのそれぞれで受信された上り方向信号RSupの位相及び振幅に基づいて、複数の素子アンテナ101_1乃至101_nの相関度を検出する。ここで、アンテナ相関検出部112によって検出された相関度が高い場合、無線通信端末200では、周辺の周期的信号(例えば、定在波)において、伝播路変動による変動周期faのピークの受信電力値P1とヌルの受信電力値P2との差が小さくなる可能性が高い。また、アンテナ相関検出部112は、検出した相関度をアダプティブ処理制御部107に通知する。
アダプティブ処理制御部107は、アンテナ相関検出部112によって検出された相関度に基づいて、第2の制御方法にしたがって、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにヌルが向く下り方向信号RSdownを送信する。
具体的に、アダプティブ処理制御部107は、検出された相関度が予め記憶する所定の相関度以下である場合で、かつ処理時間Δtが変動周期faの略半分であると判断部106によって判定された場合のみ、上り方向信号RSupを受信した時点における無線通信端末200の位置にヌルが向くように、第2のアレーウエイトを用いる第2の制御方法にしたがって、、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信するように制御する。また、アダプティブ処理制御部107は、かかる場合以外においては、上り方向信号RSupを受信した時点における無線通信端末200の位置にピークが向くように、第1のアレーウエイトを用いる第1の制御方法にしたがって、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信するように処理する。なお、他の構成は、上述した第1実施形態に係る無線基地局100と同様であるため、説明を省略する。
以上のように、本変更例に係る無線基地局100によれば、アダプティブ処理制御部107は、アンテナ相関検出部112によって検出された相関度が所定の相関度以下である場合、つまり無線通信端末200周辺の周期的信号(定在波)におけるピークの受信電力値P1とヌルの受信電力値P2との差が生じている場合のみ、時点t2において位置イでヌルの受信電力P2となるように、第2のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御が実行されて下り方向信号RSdownを送信する。よって、無線基地局100では、無線通信端末200周辺の周期的信号におけるピークの受信電力値P1とヌルの受信電力値P2との差を考慮し、当該差が大きい場合のみ第2のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御が実行されるので、効率よく無線通信端末200でピークの受信電力となる下り方向信号RSdownを送信することができる。
[本発明の第2実施形態]
第1実施形態では、無線基地局100が、無線通信端末200から送信された上り方向信号RSupのドップラ変動量を検出することで、伝播路変動を検出するように構成されていたが、本実施形態では、無線通信端末200が、下り方向信号RSdownのドップラ変動量を検出することで、伝播路変動を検出する。
本実施形態に係る無線通信端末200は、図8に示すように、アンテナ201を介して、無線基地局100との間で無線信号を送受信する送受信部202と、下り方向信号RSdownのドップラ変動量を検出するドップラ検出部203と、ドップラ検出部203で検出されたドップラ変動量を示すドップラ情報を、送受信部202を介して、無線基地局100へ報知するドップラ報知部204とを備える。
また、本実施形態に係る無線基地局100では、伝播路状態検出部105が、受信部102_1乃至102_nを介して、無線通信端末200から報知されたドップラ情報を取得して、当該ドップラ情報に示されるドップラ変動量の周期を、伝播路変動周期として、判断部106へ通知する。他の機能に関しては、第1実施形態に係る無線基地局100と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態に係る無線基地局100は、無線通信端末200で検出された下り方向信号RSdownのドップラ変動に基づいて、伝播路変動を把握するので、無線通信端末200側での伝播路変動の変動周期をより正確に把握して、第1又は第2のアレーウエイトを用いたアダプティブアレイ制御を実行することができる。
[本発明の第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る無線基地局100の構成について、上述した第1実施形態との相違点に着目して説明する。以下、第1実施形態に係る無線基地局100と異なる部分について主に説明し、同様の機能については、その説明を適宜省略する。
(第3実施形態に係る基地局100の構成)
本実施形態では、第1実施形態に係る無線基地局100において、第2のアレーウエイトが算出される機能についてより具体的に説明する。本実施形態に係る無線基地局100は、図9に示すように、トレーニング信号記憶部122と、希望波電力算出部123と、絶対値算出部124と、希望波位相差算出部125と、位相算出部126とを更に備える。
トレーニング信号記憶部122は、希望波電力算出部123と、希望波位相差算出部125と接続する。
トレーニング信号記憶部122は、無線通信端末200との無線通信に用いられているトレーニング信号を記憶する。ここで、かかるトレーニング信号は、振幅及び位相の値が既知である既知信号を示す。
希望波電力算出部123は、受信部102_1乃至102_nと、トレーニング信号記憶部122と、絶対値算出部124と接続する。
希望波電力算出部123は、トレーニング信号記憶部122に予め記憶されているトレーニング信号と受信部102_1乃至102_nで受信されたそれぞれの上り方向信号RSupとに基づいて希望波受信電力を算出する。また、希望波電力算出部123は、算出した希望波受信電力を絶対値算出部124へ通知する。
絶対値算出部124は、希望波電力算出部123と、位相算出部126と、第2のウエイト算出部127と接続する。
絶対値算出部124は、希望波電力算出部123から通知された希望波受信電力に基づいて、アダプティブアレイ制御で用いられるウエイトの絶対値を、希望波受信電力の値を大小逆転させるよう変換することにより算出する。
希望波位相差算出部125は、受信部102_1乃至102_nと、トレーニング信号記憶部122と、位相算出部126と接続する。
希望波位相差算出部125は、無線通信端末200から送信された振幅及び位相の値が既知であるトレーニング信号を含む上り方向信号RSupを受信し、受信したトレーニング信号(伝播路による振幅及び位相の変動の影響が生じているトレーニング信号)とトレーニング信号記憶部122に記憶されているトレーニング信号との位相差を演算する。希望波位相差算出部125は、複数の素子アンテナ101_1乃至101_nのそれぞれが受信する上り方向信号RSupについて、トレーニング信号との位相差を演算する。本実施形態に係る希望波位相差算出部125は、位相差演算部を構成する。
位相算出部126は、絶対値算出部124と、希望波位相差算出部125と、第2のウエイト算出部127と接続する。
位相算出部126は、送信に用いるウエイトの位相を、絶対値算出部124において算出されたウエイトの絶対値を用いて、無線通信端末200の時点t1での位置イにヌルが向くよう希望波位相差算出部125において算出された位相差に補正を加えることにより算出する。
また、本実施形態に係る第2のウエイト算出部127は、絶対値算出部124において算出されたウエイトの絶対値と、位相算出部126において算出された位相とを用いて第2のアレーウエイトを算出する。
また、第2のウエイト算出部127は、算出した第2のアレーウエイトをアダプティブ処理制御部128に通知する。
アダプティブ処理制御部128は、第1のウエイト算出部103と、判断部106と、第2のウエイト算出部127と、送信部108_1乃至108_nと接続する。
アダプティブ処理制御部128は、希望波位相差算出部125によって演算された位相差を用いて、第2の制御方法にしたがって、上り方向信号RSupを受信した時点における無線通信端末200の位置にヌルが向く第2のアレーウエイトを下り方向信号RSdownに適用する。アダプティブ処理制御部128は、第2の制御方法により下り方向信号RSdownを送信する際、希望波位相差算出部125によって演算された複数の位相差と、複数の素子アンテナ101_1乃至101_nのそれぞれが受信する上り方向信号RSupの電力値とに基づいて、複数の素子アンテナを介して送信される下り方向信号RSdownの電力値が、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにおいて小さくなる第2のアレーウエイトを適用する。
具体的に、アダプティブ処理制御部128は、処理時間Δtが変動周期faの略半分であると判断部106によって判定された場合、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにヌルが向くように、第2のアレーウエイトを用いて、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信するように制御する。
また、アダプティブ処理制御部128は、処理時間Δtが変動周期faの略半分でないと判断部106によって判定された場合、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにピークが向くように、第1のアレーウエイトを用いて、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信するように制御する。なお、本実施形態に係るアダプティブ処理制御部は、送信制御部を構成する。
また、本実施形態に係る無線基地局100の他の構成に関しては、第1実施形態に係る無線基地局100と同様であるため、説明を省略する。
(第3実施形態に係る無線基地局の動作)
本実施形態に係る無線基地局100の動作について説明する。なお、本実施形態に係る無線基地局100は、上述した第1実施形態に係る無線基地局100の動作と比べ、図4に示したステップS17aの動作のみが異なるため、主に当該ステップS17aの動作について、図10乃至12を参照して説明する。
ここで、複数の受信部102_1乃至102_nのうちの1つの受信部において、移動する無線通信端末200からの希望波受信電力の変動を図10に示す。
図10に示すように、無線基地局100では、無線通信端末200が移動することにより、受信部において受信される希望波電力はドップラ変動の影響を受けて変動する。伝播路状態検出部105においてこの変動を検出し、下り方向信号RSdownを送信する時点t2において無線通信端末200が周期的信号(定在波)のヌルに移動するような伝播路変動をしていると判断された場合、無線通信端末200の時点t1における位置イにヌルを向ける(位置ロにはピークを向ける)ようアダプティブアレイ制御を行なう。
また、このとき、無線基地局100は、上り方向信号RSupを受信した時点t1において、図10におけるA,B,Cのような希望波電力であった場合、各々A’、B’、C’のような絶対値のウエイトで送信する必要がある。
また、無線通信端末200が、周期的信号のヌルに移動するような伝播路変動である場合には、受信時の希望波電力と送信時のウエイトの絶対値とは大小逆転する可能性が高いと考えられるため、絶対値算出部124において希望波受信電力の値の大小を逆転させるよう補正を行なう。
具体的に、絶対値算出部124では、例えば、基準電力をAとし、希望波電力算出部123から通知された各々の受信部102_1乃至102_nにおける希望波受信電力ARx(i)をA1、A2、A3・・・Anとすると、逆転させた補正後のウエイトの絶対値ATx(i)を、(A−A1)、(A−A2)、(A−A3)・・・(A−An)として算出する(図11に示す、ステップS17a1)。
ここで、無線基地局100において、一例として、受信部102_1乃至102_3の3つを備えるものとして説明する。例えば、基準電力を“1”とし、受信部101_1での希望波受信電力A1を“0.3”とし、受信部102_2での希望波受信電力A2を“0.5”とし、受信部102_3での希望波受信電力A3を“0.9”とすると、絶対値算出部124では、図12に示すように、受信部102_1乃至102_3のウエイトの絶対値を、それぞれ“0.7”、“0.5”、“0.1”として算出する。
また、位相算出部126は、絶対値算出部124で算出された絶対値ATx(i)と、希望波電力算出部123で算出された希望波受信電力値ARx(i)と、希望波位相差算出部125によって演算された受信部102_1乃至102_nの各々の位相差φRx(i)とを用いて無線基地局100の時点t1における無線通信端末200の位置イにヌルを向けるための位相φTx(i)を算出する(ステップS17a2)。
具体的に、まず、位相算出部126は、下記(1)式で算出される値が最小になるような補正符号m(i)を算出する。ここで、補正符号m(i)は、+1、−1のいずれかの値として決定する。
なお、各項は以下のように示される。
A
Tx(i):i番目の受信部における逆転させた補正後のウエイトの絶対値
A
Rx(i):i番目の受信部における希望波受信電力
例えば、図12の例では、位相算出部126は、受信部102_1乃至102_3において、希望波受信電力とウエイトの絶対値との乗算値は、それぞれ“0.21”、“0.25”、“0.09”として算出する。
このとき、(1)式において、乗算値の総和が最小となるように補正した乗算値は、例えば、“−0.21”、“0.25”、“−0.09”であり、補正符号m(i)は、受信部102_1乃至102_3において、それぞれ“−1”、“1”、“−1”となる。
また、位相算出部126は、かかる補正符号m(i)から、(2)式により補正項φ(i)を0、πいずれかの値で算出する。
そして、位相算出部126は、算出した補正項φ(i)から、(3)式により位相φ
Txを算出する。
なお、各項は以下のように示される。
φTX(i):i番目の受信部における補正後の位相
φRX(i):i番目の受信部における受信信号とトレーニング信号との位相差
φ (i) :i番目の受信部における補正項
また、第2のウエイト算出部127は、絶対値算出部124により算出された絶対値A
TX(i)と、位相算出部126により算出された位相φRX(i)とを用いて、(4)式により、第2のアレーウエイトW(i)を算出する(ステップS17a3)。
また、本実施形態に係るアダプティブ処理制御部128は、処理時間Δtが変動周期faの略半分であると判断部106によって判定された場合、第2のアレーウエイトを適用し、略半分でないと判定された場合、第1のアレーウエイトを適用する。
このように、アダプティブ処理制御部128で適用される第2のアレーウエイトは、希望波位相差算出部125によって演算された複数の位相差φRx(i)から算出した位相φTx(i)と、希望波電力算出部123で算出された希望波受信電力値から算出した絶対値ARX(i)とに基づいて算出される。また、アダプティブ処理制御部128は、かかる第2のアレーウエイトを適用し、複数の素子アンテナを介して送信される下り方向信号RSdownの電力値が、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにおいて小さくなる。
(第3実施形態に係る無線基地局の作用・効果)
本実施形態に係る無線基地局100によれば、処理時間Δtが、無線通信端末200から送信された上り方向信号RSupの変動周期faの略半分の下限値fL乃至上限値fH内であると判定された場合、無線通信端末200へ送信する下り方向信号RSdownのアダプティブアレイ制御を、位置イにヌルを向けるように、第2のアレーウエイトを用いて行われる。
かかる第2のアレーウエイトは、複数の位相差から算出した位相φTx(i)と、希望波受信電力値ARx(i)から算出した絶対値ATX(i)とに基づいて、複数の素子アンテナを介して送信される下り方向信号RSdownの電力値が、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにおいて小さくなるように考慮されている。
このように、本実施形態に係る無線基地局100によれば、伝播路変動を考慮し、無線通信端末200へピークを向けるように下り方向信号RSdownを送信することができるので、通信先の無線通信端末200または通信先の無線通信端末200周辺に存在する物体が高速(100km/h〜)で移動することによって当該無線通信端末200との伝播路の状態が急激に変動する場合でも、通信品質の劣化を抑制することができる。
[本発明の第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る無線基地局100の構成について、上述した第1実施形態との相違点に着目して説明する。以下、第1実施形態に係る無線基地局100と異なる部分について主に説明し、同様の機能については、その説明を適宜省略する。
(第4実施形態に係る無線基地局100の構成)
本実施形態に係る無線基地局100は、図13に示すように、第1実施形態に係る無線基地局100で具備していた第2のウエイト算出部104を具備せず、新たに、トレーニング信号記憶部122と、希望波電力算出部123と、アンテナ選択部131とを具備する。なお、トレーニング信号記憶部122と、希望波電力算出部123との構成は、上述した第3実施形態と同様であるため、説明を省略する。
アンテナ選択部131は、希望波電力算出部123と、アダプティブ処理制御部132と接続する。アンテナ選択部131は、上り方向信号RSupの状態に基づいて、少なくとも何れかの素子アンテナ101_1乃至101_nを選択する。このとき、アンテナ選択部131は、素子アンテナ101_1乃至101_nの電力値が最も低い何れかの素子アンテナ101_1乃至101_nを選択する。
具体的に、アンテナ選択部131は、希望波電力算出部123で算出された受信部102_1乃至102_nそれぞれの希望波受信電力値に基づいて、最も希望波受信電力値の最も低い何れかの素子アンテナ101_1乃至101_nを選択する。また、アンテナ選択部131は、選択した素子アンテナ101_1乃至101_nをアダプティブ処理制御部132に通知する。
本実施形態に係るアダプティブ処理制御部132は、処理時間Δtが変動周期faの略半分であると判断部106によって判定された場合、第2の適応制御を適用し、略半分でないと判定された場合、第1の適応制御を適用する。
ここで、第1の適応制御において、アダプティブ処理制御部132は、第1のウエイト算出部103で算出された第1のアレーウエイトを適用したアダプティブアレイ制御により、下り方向信号RSdownを送信する。
また、第2の適応制御において、アダプティブ処理制御部132は、アンテナ選択部131によって選択された電力値が最も低い素子アンテナを備える送信部(例えば、素子アンテナ101_1を備える送信部108_1)を介して、下り方向信号RSdownを送信する。なお、本実施形態に係るアダプティブ処理制御部は、送信制御部を構成する。
(第4実施形態に係る無線基地局の動作)
本実施形態に係る無線基地局100の動作について説明する。なお、本実施形態に係る無線基地局100は、上述した第1実施形態に係る無線基地局100の動作と比べ、図4に示したステップS17aの動作が異なるため、主に当該ステップS17aの動作について、図14のステップS117aを参照して説明する。
図14に示すステップS117aにおいて、無線基地局100では、判断部106によって変動周期faが、fL≦fa<fHであると判定された場合(fL≦fa<fHがYESの場合)、アダプティブ処理制御部107は、アンテナ選択部131に、最も希望波受信電力値の低い素子アンテナを通知するように指示すると共に、アンテナ選択部131によって選択された素子アンテナを備える送信部(例えば、素子アンテナ101_1を備える送信部108_1)を介して、下り方向信号RSdownを送信する第2の適応制御を実行する。
また、ステップS117bにおいて、判断部106によって変動周期faが、fL≦fa<fHでないと判定された場合(fL≦fa<fHがNoの場合)、アダプティブ処理制御部107は、第1のウエイト算出部103に第1のアレーウエイトを算出するように指示し、第1の適応制御を実行する。なお、かかるステップS117bの動作は、図4のステップS17bの動作と同様である。
(第4実施形態に係る無線基地局の作用・効果)
本実施形態に係る無線基地局100によれば、処理時間Δtが変動周期faの略半分であると判断部106によって判定された場合、第2の適応制御を適用し、略半分でないと判定された場合、第1の適応制御を適用する。
ここで、図10に示したように、無線基地局100では、無線通信端末200が移動することにより、受信部において受信される希望波電力はドップラ変動の影響を受けて変動する。伝播路状態検出部105においてこの変動を検出し、下り方向信号RSdownを送信する時点t2において無線通信端末200が周期的信号のヌルに移動するような伝播路変動をしていると判断された場合、第2の適応制御による送信を行なう。
このとき、希望波受信電力が大きい素子アンテナほど、その素子アンテナと無線通信端末200との間の伝播路が良好であり、送受信とも効率の良い通信を行なうことが可能である。
一方、無線基地局100が、下り方向信号RSdownを送信する時点t2のタイミングにおいて、無線通信端末200が周期的信号 (定在波)のヌル(谷)に移動するような伝播路変動をしている場合、上り方向信号RSupを受信した時点t1の希望波電力と、下り方向信号RSdownを送信する時点t2のウエイトの絶対値は大小逆転する可能性が高いと考えられるため、無線基地局100は、アンテナ選択部131で選択された希望波電力の小さい素子アンテナを用いて下り方向信号RSdownを送信することにより、無線通信端末200では、下り方向信号RSdownを受信する時点t2の位置ロにおいて、良好な通信品質を得ることが可能となる。
[本発明の第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る無線基地局100の構成について、上述した第1実施形態との相違点に着目して説明する。以下、第1実施形態に係る無線基地局100と異なる部分について主に説明し、同様の機能については、その説明を適宜省略する。
(第5実施形態に係る基地局100の構成)
本実施形態に係る無線基地局100は、図15に示すように、第1実施形態に係る無線基地局100で具備していた第1のウエイト算出部103と、第2のウエイト算出部104と、判断部106とを具備せず、新たに、トレーニング信号記憶部122と、補正係数算出部141と、ウエイト算出部142とを具備する。
伝播路状態検出部105は、受信部102_1乃至102_nと、補正係数算出部141と、アダプティブ処理制御部143と接続する。伝播路状態検出部105は、第1実施形態と同様に、無線通信端末200との間における伝播路の変動状態を検出する。
トレーニング信号記憶部122は、ウエイト算出部142と接続する。また、トレーニング信号記憶部122は、第3実施形態と同様に構成されている。
補正係数算出部141は、伝播路状態検出部105によって検出された伝播路の変動状態に基づいて、下り方向信号RSdownの送信ウエイトを算出する算出式において用いられる補正項ε(t)を演算する。本実施形態に係る補正係数算出部141は、補正項演算部を構成する。
ウエイト算出部142は、補正係数算出部141と、アダプティブ処理制御部143と接続する。
ウエイト算出部142は、受信部102_1乃至102_nと、トレーニング信号記憶部122と、アダプティブアレイ制御で用いる送信ウエイトを算出する。
具体的に、ウエイト算出部142は、受信部102_1乃至102_nで受信された受信信号と、トレーニング信号記憶部122に記憶されているトレーニング信号と、補正係数算出部141で算出された補正項ε(t)とに基づいて、送信ウエイトWを算出する。
また、アダプティブ処理制御部143は、補正係数算出部141によって演算された補正項ε(t)を用いて補正された送信ウエイトWを下り方向信号RSdownに適用する。なお、本実施形態に係るアダプティブ処理制御部143は、送信制御部を構成する。
(第5実施形態に係る無線基地局の動作)
本実施形態に係る無線基地局100の動作について説明する。なお、本実施形態に係る無線基地局100は、上述した第1実施形態に係る無線基地局100の動作と比べ、図4に示したステップS15乃至ステップS17a及びS17bの動作のみが異なるため、図16を参照して、異なる動作を主に説明する。
図16に示すステップS215において、補正係数算出部141は、伝播路状態検出部105によって検出された変動周期faと、トレーニング信号とに基づいて下記の(5)式となる(複素補正項)を算出する。ただし、r(t)はトレーニング信号の系列を表す。
ステップS217において、ウエイト算出部142では、下記(6)式のE[|e(t)|
2]が最小となるよう送信ウエイトWを算出する。ここで、E[|e(t)|
2]は期待値演算、Hは複素共役転置、X(t)は受信信号の系列を表す。
ここで、補正項ε(t)が、“0”に近い値となるほど、無線通信端末200が、上り方向信号RSupを送信した時点t1における位置イに、ピークを向けるように送信ウエイトWが算出される。
また、補正項ε(t)が、“r(t)”に近い値となるほど、無線通信端末200が、上り方向信号RSupを送信した時点t1における位置イに、ヌルを向けるように送信ウエイトWが算出される。
なお、ウエイト算出部142は、補正項ε(t)が、所定の閾値以上であるか否かを判定し、所定の閾値以上である場合のみ、補正項ε(t)を用いて(6)式により送信ウエイトWを算出し、それ以外は“0”として送信ウエイトWを算出するように構成されていてもよい。
また、ウエイト算出部142は、算出した送信ウエイトWをアダプティブ処理制御部143に通知する。また、アダプティブ処理制御部143は、通知された送信ウエイトWを用いてアダプティブアレイ制御を行い、無線通信端末200へ下り方向信号RSdownを送信する(ステップS19)。
(第5実施形態に係る無線基地局の作用・効果)
本実施形態に係る無線基地局100によれば、変動周期faに応じた補正項ε(t)を算出して、無線通信端末200が、上り方向信号RSupを送信した時点t1における位置イに、変動周期faに応じて、ヌル(又はピーク)をずらした送信ウエイトWが算出される。
よって、無線基地局100補正項ε(t)を算出することで、無線通信端末200との間における変動周期faに応じた適切な送信ウエイトWを用いて、アダプティブアレイ制御行い、無線通信端末200へ下り方向信号RSdownを送信することが可能になる。
なお、本実施形態においては、補正項ε(t)が“0”であれば、前記第1実施形態における第1のアレーウエイトに相当する送信ウエイトW、すなわち、無線通信端末200が、上り方向信号RSupを送信した時点t1における位置イにピークを向ける送信ウエイトWが算出され、補正項ε(t)が最大値“r(t)”の場合には、前記第1実施形態における第2のアレーウエイトに相当する送信ウエイトW、すなわち、無線通信端末200が、上り方向信号RSupを送信した時点t1における位置イにヌルを向ける送信ウエイトWが算出されることになる。なお、位置イにピークを向ける送信ウエイトWを用いて実行されるアダプティブアレイ制御は、上述した第1実施形態における第1の制御方法に相当し、又、位置イにヌルを向ける送信ウエイトWを用いて実行されるアダプティブアレイ制御は、第2の制御方法に相当する。
このため、本実施形態では、変動周期faとトレーニング信号とに基づいて、補正項ε(t)が“0”であるか、又は“0”よりも大きい値かで、結果として、前記第1実施形態における第1のアレーウエイトに相当する送信ウエイトか、又は当該第1のアレーウエイトとは異なる送信ウエイトが算出されることになる。
したがって、本実施形態では、判断部106を備えていないものの補正項ε(t)に基づいて、前記第1実施形態における第1のアレーウエイトに相当する送信ウエイトWのままでよいのか、もしくは、前記第1のアレーウエイトとは異なる送信ウエイトWを算出するのかが決まるので、これは、伝播路状態検出部105で検出された伝播路の変動状態に基づいて、送信無線信号の指向性を変更するか否かを判断することに相当する。
[本発明の第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る無線基地局100の構成について、上述した第1実施形態との相違点に着目して説明する。以下、第1実施形態に係る無線基地局100と異なる部分について主に説明し、同様の機能については、その説明を適宜省略する。
(第6実施形態に係る基地局100の構成)
本実施形態に係る無線基地局100では、無線通信端末200との間において送受信される上り方向信号RSup及び下り方向信号RSdownは、複数の周波数帯域を用いている。
また、本実施形態に係る無線基地局100は、図17に示すように、素子アンテナ101_1乃至101_nと、受信部102_1乃至102_nと、伝播路状態検出部105と、判断部106と、送信部108_1乃至108_nと、適応制御部151_1乃至151_3と、伝播路変動相関値演算部154と、グループ化部155とを備える。なお、本実施形態に係る無線基地局100では、3つの適応制御部151_1乃至151_3を備える場合を例に挙げて説明するが、かかる数はこれに限定されるものではない。
ここで、素子アンテナ101_1乃至101_nと、受信部102_1乃至102_nと、伝播路状態検出部105と、判断部106と、送信部108_1乃至108_nとの構成は、上述した第1実施形態と同様である。
伝播路変動相関値演算部154は、伝播路状態検出部105と、グループ化部155と接続する。伝播路変動相関値演算部154は、複数の周波数帯域それぞれの伝播路変動を相互に相関演算して、それぞれの相関値を算出する。また、伝播路変動相関値演算部154は、算出した相関値をグループ化部155に通知する。
本実施形態に係る伝播路変動相関値演算部154は、周波数帯域のそれぞれの相関度を検出する周波数帯域相関検出部を構成する。
グループ化部155は、伝播路変動相関値演算部154と、適応制御部151_1乃至151_3と接続する。
グループ化部155は、伝播路変動相関値演算部154で算出された相関値に基づいて適応制御部151_1乃至151_3をグループ化する。
グループ化部155は、伝播路変動相関値演算部154によって演算された相関値が、予め記憶する所定の閾値以上の周波数帯域の適応制御部151_1乃至151_3を同じグループとするようグループ化し、同じグループとされた適応制御部151_1乃至151_3に通知する。
適応制御部151_1乃至151_3は、受信部102_1乃至102_nと、判断部106と、グループ化部155と、送信部108_1乃至108_nと接続する。
適応制御部151_1乃至151_3は、下り方向信号RSdownにおいて、それぞれ異なる周波数帯域毎に、アダプティブアレイ制御を行うように構成されている。
また、同じグループと通知された適応制御部151_1乃至151_3では、そのうちの1つのみを用いて第1のアレーウエイト算出、又は、第2のアレーウエイト算出を行い、その結果をグループ内で共有して、それぞれのアダプティブ処理制御部156にてアダプティブアレイ制御を行なう。
なお、適応制御部151_1乃至151_3は、それぞれ同様に構成されているので、適応制御部151_1の構成について説明する。
適応制御部151_1は、第1のウエイト算出部103と、第2のウエイト算出部104と、アダプティブ処理制御部156とを備える。
第1のウエイト算出部103と、第2のウエイト算出部104との構成は、上述した第1実施形態と同様である。
アダプティブ処理制御部156は、グループ化部155から、他の適応制御部151_2乃至151_3と同じグループである旨の通知を受けると、当該同じグループとなる適応制御部151_2乃至151_3のアダプティブ処理制御部との間で、算出した第1又は第2のアレーウエイトを共有して、アダプティブアレイ制御を行なう。
(第6実施形態に係る無線基地局の動作)
本実施形態に係る無線基地局100の動作について、上述した実施形態との相違点に着目し、図18を参照して説明する。
ステップS311において、無線基地局100は、無線通信端末200からの上り方向信号RSupを受信する。
ステップS312aにおいて、伝播路変動相関値演算部154が、複数の周波数帯域それぞれの伝播路変動を相互に相関演算して、それぞれの相関値を算出し、グループ化部155に通知する。
ステップS312bにおいて、グループ化部155は、相関値が所定の閾値以上の周波数帯域に対応する適応制御部151_1乃至151_3をグループ化する。グループ化部155は、同じグループとなる適応制御部151_1乃至151_3に同一のグループであることを通知する。このとき、グループ化部155は、第1又は第2のアレーウエイトを算出するように一の適応制御部(例えば、適応制御部151_1)を特定し、特定した適応制御部に指示する。
グループ化部155から第1又は第2のアレーウエイトを算出するように指示を受けた、例えば、適応制御部151_1では、ステップS313、ステップS315、ステップS317a乃至ステップS317bの動作を行う。なお、ステップS313、ステップS315、ステップS317a乃至ステップS317bの動作は、第1実施形態に係るステップS13、ステップS15、ステップS17a乃至ステップS17bの動作と同様である。
ステップS318において、グループ化部155から通知を受けた、例えば、適応制御部151_1では、アダプティブ処理制御部156が、同じグループ内の適応制御部151_2乃至151_3へ第1又は第2のアレーウエイトを通知する。
ステップS319において、適応制御部151_1乃至151_3のそれぞれのアダプティブ処理制御部は、通知された第1のアレーウエイト又は第2のアレーウエイトを用いて、送信部108_1乃至108_nから、下り方向信号RSdownを送信する。
このようにして、本実施形態に係る適応制御部151_1乃至151_3のそれぞれに備えられているアダプティブ処理制御部156では、伝播路変動相関値演算部154によって検出された相関度が所定の閾値以上である複数の周波数帯域を対象として、グループ化され、上り方向信号RSupを受信した時点t1における無線通信端末200の位置イにヌルが向く同一の第2のアレーウエイト、又は位置イにピークが向く同一の第1のアレーウエイトが用いられた下り方向信号RSdownを送信する。
なお、本実施形態に係るアダプティブ処理制御部は、送信制御部を構成する。
(第6実施形態に係る無線基地局の作用・効果)
本実施形態に係る無線基地局100によれば、複数の周波数帯域の相関値が、所定の閾値以上の高い周波数帯域に対応する適応制御部151_1乃至151_3が、グループ化されて、同じグループ内で一の第1又は第2のアレーウエイトを共有して、無線通信端末200へ下り方向信号RSdownを送信するので、複数の周波数帯域毎の適応制御部151_1乃至151_3で第1又は第2のアレーウエイトを算出する場合に比べ、演算処理負荷の増加を抑制できる。
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
例えば、上述した実施形態では、無線基地局100が、無線通信装置として機能するように構成されていたが、例えば、無線通信端末200が、無線通信装置として機能するように構成されていてもよい。また、無線基地局100が、対向無線通信装置として機能するように構成されていてもよい。
また、無線通信端末200にGPS等の位置検出機能及び移動速度検出機能等を備えている場合、無線基地局100は、無線通信端末200で検出された位置や移動速度に応じて、ピーク(ビーム)を向ける第1のアレーウエイト、又はヌルを向ける第2のアレーウエイトを選択するように構成されていてもよい。
また、各実施形態の構成及び各変更例の構成もそれぞれ組み合わせることが可能である。また、各実施形態及び各変更例の作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、各実施形態及び各変更例に記載されたものに限定されるものではない。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
100…無線基地局、101…受信部、101_1乃至101_n…素子アンテナ、102_1乃至102_n…受信部、103…第1のウエイト算出部、104…第2のウエイト算出部、105…伝播路状態検出部、106…判断部、107…アダプティブ処理制御部、108_1乃至108_n…送信部、112…アンテナ相関検出部、122…トレーニング信号記憶部、123…希望波電力算出部、124…絶対値算出部、125…希望波位相差算出部、126…位相算出部、127…第2のウエイト算出部、128…アダプティブ処理制御部、131…アンテナ選択部、132…アダプティブ処理制御部、141…補正係数算出部、142…ウエイト算出部、143…アダプティブ処理制御部、151_1乃至151_3…適応制御部、154…伝播路変動相関値演算部、155…グループ化部、156…アダプティブ処理制御部、200…無線通信端末、201…アンテナ、202…送受信部、203…ドップラ検出部、204…ドップラ報知部、A1…希望波受信電力、A2…希望波受信電力、A3…希望波受信電力、P1…受信電力値、P2…受信電力値、RSdown…下り方向信号、RSup…上り方向信号、S11〜S19…ステップ、S215〜S217…ステップ、S311〜S319…ステップ、fH…上限値、fL…下限値、fa…変動周期、t1…時点、t2…時点、イ…位置、ロ…位置