JP4778381B2 - 冷陰極素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素系微細繊維を備えた冷陰極素子及びその製造方法に関する。
近年、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバ、カーボンナノコイル等のような炭素系の微細な繊維状物質(以下「炭素系微細繊維」という。)は、優れた電子放出特性を持つため、冷陰極材料として注目されている。また、炭素系微細繊維を用いた冷陰極素子を、ディスプレイや照明装置、撮像装置等のデバイスに適用することが検討されている。
特に、冷陰極素子を平面上に並べることによりディスプレイに適用した冷陰極ディスプレイは、高い発光効率、速い応答速度、広い色再現性、低真空環境で動作可能といった特徴を有するディスプレイであり、次世代の大型ディスプレイとして期待されている。
従来、炭素系微細繊維を冷陰極素子内に成膜する方法としては、例えば特許文献1に開示された成膜方法が知られている。この成膜方法は、炭素材料を含むガス中で触媒材料を成膜した基板を加熱することによってグラファイトナノファイバを成長させる方法であり、熱CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法と呼ばれる。
熱CVD法における触媒材料としては、一般的に、遷移金属や貴金属、希土類元素といったものが用いられる。これらの金属を単独で、又は各金属の粉末を複数混合して合金化したり焼結したりすることによりターゲット材料を作製し、このターゲット材料を用いて蒸着やスパッタ等の方法で触媒材料の成膜が行われており、成膜直後の触媒材料は、薄膜状となる。
その後、熱CVD法により加熱すると薄膜が微細化を起こし、その微粒子を核としてカーボンナノチューブやグラファイトナノファイバ等のような炭素系微細繊維が成長する。したがって、例えば非特許文献1に記載されているように、炭素系微細繊維の太さは、微細化された触媒材料の粒径に依存することとなる。具体的には、従来の触媒材料を用いた方法で炭素系微細繊維を成長させた場合、例えばグラファイトナノファイバの太さは、加熱温度が580℃では図14に示すように5〜30nm程度となる(例えば、非特許文献2参照)。
特開2002−115057号公報 K.B.K. Teo, et al.,"Catalytic Synthesis of Carbon Nanotubes and Nanofibers", Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology, Vol.X, pp.1−22(2004) Kei Hagiwara, et al.,"Full Color Graphite Nanofiber FED with 0.15mm Pixel Pitch", Proceedings of IDW'05, pp.1663−1666(2005)
しかしながら、従来の冷陰極素子では、炭素系微細繊維の太さが図14に示すように5〜30nm程度の範囲でばらついて不均一になるので、例えば従来の冷陰極素子を複数並べて構成したディスプレイにおいて、電子放出特性が冷陰極素子毎にばらついてしまい、画質が劣化するという課題があった。
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる冷陰極素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者は、検討を重ねた結果、(1)触媒材料の薄膜が微粒化した後に微粒子同士がランダムに凝集を起こすことによって触媒材料の微粒子の粒径がばらついて炭素系微細繊維の太さが不均一となること、(2)触媒材料に酸化物を混合することにより触媒材料の微粒子の凝集を抑制することができること、(3)触媒材料を成膜する陰極母線の上にあらかじめ特定の下地金属を成膜することにより、触媒材料の成膜時に、下地金属を成膜しない場合よりも触媒粒径を小さくすることができること、を見出し、一般に冷陰極素子の電子放出特性は、炭素系微細繊維の長さが一定であれば炭素系微細繊維の先端の曲率半径に依存することを考慮して、前述の従来の課題を解決した。
すなわち、本発明の冷陰極素子は、触媒層上に炭素系微細繊維が形成された冷陰極を有する冷陰極素子であって、前記炭素系微細繊維は、遷移金属、貴金属及び希土類元素の少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかに酸化物が混合された材料により形成された触媒層上に成長したものであり、前記酸化物は、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含む構成を有している。
この構成により、触媒材料に混合された酸化物が触媒材料の微粒子の凝集を抑制するので、太さが均一化された炭素系微細繊維が得られる。その結果、本発明の冷陰極素子は、太さが均一化された炭素系微細繊維を備えることとなるので、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
また、この構成により、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含む酸化物が触媒材料の微粒子の凝集を抑制するので、太さが均一化された炭素系微細繊維が得られる。その結果、本発明の冷陰極素子は、太さが均一化された炭素系微細繊維を備えることとなるので、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記遷移金属が、クロム、鉄及びニッケルの少なくとも1つを含む構成を有している。
この構成により、従来の製造設備を用いて触媒材料を成膜することができるので、本発明の冷陰極素子は、製造コストを上昇させることなく、太さが均一化された炭素系微細繊維を備えることとなり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記貴金属が、金、銀、白金、パラジウム及びイリジウムの少なくとも1つを含む構成を有している。
この構成により、従来の製造設備を用いて触媒材料を成膜することができるので、本発明の冷陰極素子は、製造コストを上昇させることなく、太さが均一化された炭素系微細繊維を備えることとなり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記希土類元素が、イットリウム、セリウム及びユーロピウムの少なくとも1つを含む構成を有している。
この構成により、従来の製造設備を用いて触媒材料を成膜することができるので、本発明の冷陰極素子は、製造コストを上昇させることなく、太さが均一化された炭素系微細繊維を備えることとなり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記触媒層の下地となる下地金属層を備え、前記下地金属層は、触媒粒径を所定の粒径よりも小さくする機能を有する構成を有している。
この構成により、本発明の冷陰極素子は、下地金属層を備えないものよりも触媒粒径を小さくすることができるので、太さがより細く均一化された炭素系微細繊維を備えることとなり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
さらに、本発明の冷陰極素子は、前記下地金属層は、ルテニウム、レニウム及びこれらの酸化物のうちの少なくとも1つを含む構成を有している。
この構成により、本発明の冷陰極素子は、下地金属層を備えないものよりも触媒粒径を小さくすることができるので、太さがより細く均一化された炭素系微細繊維を備えることとなり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
本発明の冷陰極素子の製造方法は、炭素系微細繊維が形成された冷陰極を有する冷陰極素子の製造方法であって、基板上の陰極母線に触媒層を成膜する工程と、前記触媒層上に炭素系微細繊維を成長させる工程とを含み、前記触媒層は、遷移金属、貴金属及び希土類元素の少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかと酸化物とを混合した材料を焼結してターゲットに加工し、このターゲットを用いてスパッタリング法、蒸着法及びCVD法のいずれかを用いて成膜したものであり、前記酸化物は、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含む構成を有している。
この構成により、本発明の冷陰極素子の製造方法は、触媒材料に混合された酸化物が触媒材料の微粒子の凝集を抑制するので、太さが均一化された炭素系微細繊維を得ることができる。特に、本発明の冷陰極素子の製造方法は、スパッタリング法を用いることにより、酸化物を合金に混合してターゲットを形成した場合でも、合金に含まれる各金属の融点等の影響を受けることなく、ターゲットの組成に近い構成で触媒層を形成できるので、太さが均一化された炭素系微細繊維を得ることができる。
また、この構成により、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含む酸化物が触媒材料の微粒子の凝集を抑制するので、太さが均一化された炭素系微細繊維が得られる。その結果、本発明の冷陰極素子の製造方法によれば、冷陰極素子が、太さが均一化された炭素系微細繊維を備えることとなるので、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
また、本発明の冷陰極素子の製造方法は、前記触媒層が、30℃以下の成膜温度で形成される構成を有している。
この構成により、本発明の冷陰極素子の製造方法は、触媒材料を室温で成膜することができるので、触媒材料の成膜工程における作業性の向上を図ることができる。また、この構成により、本発明の冷陰極素子の製造方法は、成膜時に触媒材料の粒径が大きくなることを防ぐことができる。
さらに、本発明の冷陰極素子の製造方法は、前記触媒層を成膜する工程の前に、触媒粒径を所定の粒径よりも小さくする機能を有する特定の金属によって前記触媒層の下地となる下地金属層を形成する工程を含む構成を有している。
この構成により、本発明の冷陰極素子の製造方法は、下地金属層が形成されないものよりも触媒粒径を小さくすることができるので、太さがより細く均一化された炭素系微細繊維が得られることとなり、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
本発明は、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる冷陰極素子及びその製造方法を提供することができるという効果を有するものである。
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明に係る冷陰極素子を冷陰極ディスプレイ装置に適用する例を挙げて説明する。
まず、本実施の形態に係る冷陰極ディスプレイ装置の構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る冷陰極ディスプレイ装置100は、冷陰極素子10と、陽極基板50とを有している。なお、冷陰極ディスプレイ装置100の構成をわかりやすくするため、図1には1冷陰極素子分の構成が示されている。
冷陰極素子10は、ガラス基板11上に形成された陰極母線12と、陰極母線12上に形成された絶縁層13と、絶縁層13上に形成されたゲート電極14と、陰極母線12上に設けられ、電子を放出する炭素系冷陰極15とを備えている。
陽極基板50は、ガラス基板51上に形成され、電子を捕捉する陽極電極52と、電子の衝突によって発光する蛍光面53とを備えている。
陰極母線12は、例えばクロムで構成され、例えばスパッタリング法によってガラス基板11上に形成されている。絶縁層13は、例えば二酸化硅素で構成され、例えばスパッタリング法によって陰極母線12上に形成されている。ゲート電極14は、例えばクロムで構成され、例えばスパッタリング法によって絶縁層13上に形成されている。炭素系冷陰極15は、例えばグラファイトナノファイバで構成され、陰極母線12上に形成されている。
陽極電極52は、例えばITO(Indium Tin Oxide:錫ドープ酸化インジウム)のような透明電極によって構成され、蛍光面53は、陽極電極52上に蛍光体が塗布されて形成されている。
図1において、冷陰極ディスプレイ装置100は、陰極母線12とゲート電極14との間にゲート電圧V1が印加され、陰極母線12と陽極電極52との間に陽極電圧V2が印加されるようになっている。そして、ゲート電圧V1による電界によって、炭素系冷陰極15から電子が放出され、放出された電子は、陽極電圧V2による電界によって加速され、蛍光面53を通過して蛍光面53を発光させた後、陽極電極52に達することにより、冷陰極ディスプレイ装置100は、所定の画像を表示することができるようになっている。
次に、本実施の形態に係る冷陰極素子10の製造方法について図2〜4を用いて説明する。図2(a)〜(g)、図3(h)〜(j)及び図4(k)〜(l)は、各製造工程における冷陰極素子10の概略断面図である。なお、以下の製造工程の説明において記載した製造上の手法や寸法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、ガラス基板11上に陰極母線12として例えばクロムを200nm程度の厚さで形成する(図2(a))。陰極母線12の形成工程は、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法、印刷法等を用いることができ、必要であれば、陰極母線12をフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いてライン状にパターンニングしてもよい。また、ガラス基板11に代えてガラス以外の材料からなる基板で構成してもよく、例えばシリコン、セラミクス、石英等の基板を用いることができる。また、陰極母線12の材料としては、クロム以外に金、銀、銅、アルミニウム、シリコン、ニオブ、タンタル等を用いることができる。
次いで、絶縁層13として例えば二酸化硅素を3μm程度の厚さで形成する(図2(b))。絶縁層13の形成工程は、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法、印刷法等を用いることができる。また、絶縁層13の材料としては、二酸化硅素以外に酸化アルミニウム、窒化硅素、窒化アルミニウム等を用いることができる。
さらに、ゲート電極14として例えばクロムを200nm程度の厚さで形成する(図2(c))。ゲート電極14の形成工程は、例えばスパッタリング法、蒸着法、CVD法、印刷法等を用いることができ、必要であれば、ゲート電極14をフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いてライン状にパターンニングしてもよい。また、ゲート電極14の材料としては、クロム以外に金、銀、銅、アルミニウム、シリコン、ニオブ、タンタル等を用いることができる。
引き続き、ゲート電極14上にフォトレジストをスピンコートにより1〜3μm程度の厚さで塗布してフォトレジスト層16を形成し、その後、ベーキング処理を行う(図2(d))。
次いで、予め5μm程度の径の孔がパターンニングされたフォトマスクを用いて紫外線露光し、水酸化テトラメチルアンモニウム2.38%水溶液を用いて現像する(図2(e))。
次いで、クロムエッチャントを用いてゲート電極14をエッチングし、孔17をゲート電極14に設けた後、ベーキング処理を行う(図2(f))。
続いて、例えばCHF(トリフルオルメタン)ガスを用いたドライエッチングにより、絶縁層13を垂直方向にエッチングし、陰極母線12を露出させる(図2(g))。このとき、フォトレジスト層16がマスクとなりゲート電極14はエッチングされない。ドライエッチング後は、図2(g)に示すようにフォトレジスト層16の表面は撥水化される。
さらに、水酸化テトラメチルアンモニウム2.38%水溶液に浸して、撥水性を有するフォトレジスト層16の表面を1〜10nm程度溶解することにより親水化する(図3(h))。なお、水酸化テトラメチルアンモニウム2.38%水溶液に代えて、例えば有機アルカリ系の水溶液やエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶媒の水溶液、フォトレジスト層16を溶解する能力がある化学薬品等を使用することができる。
また、図3(h)に示された工程に代えて、図3(h1)に示すように、酸素プラズマによりフォトレジスト層16の表面を酸化又は水酸化し、極めて薄くフォトレジスト層16の表面を所定寸法だけ除去することにより親水化することもできる。なお、酸素の他にも例えばアルゴンのような希ガスを用いることができる。
次いで、界面活性剤が添加されたバッファードフッ酸を用いて、絶縁層13を水平方向に約10分間ウエットエッチングする(図3(i))。
引き続き、例えば鉄−ニッケル−クロムの粉末を50:40:10の重量比で混合したものと、二酸化硅素の粉末とをモル比50:50で混合したものを焼結してターゲットに加工し、このターゲットを用いてスパッタリング法により触媒層18を30nm程度の厚さで形成する(図3(j))。実験によれば、この工程により2nm〜10nm程度の任意の粒径で、粒径の均一な微粒子が酸化物に取り込まれるように配置された触媒層18が得られることがわかった。なお、図3(j)において、陰極母線12上に形成された層を触媒層18aとし、フォトレジスト層16上に形成された層を触媒層18bとしている。また、触媒層18の成膜方法は、スパッタリング法に限定されるものではなく、触媒材料と酸化物との組み合わせに応じて蒸着法やCVD法等を用いることもできる。
触媒層18を形成するための触媒材料としては、前述のもの以外に、金、銀、白金、イリジウム、パラジウム等の貴金属、コバルト、ニッケル等の遷移金属、イットリウム、セリウム、ユーロピウム等のような希土類元素等の金属の単体、又はこれらの合金や混合物等を用いることができる。また、触媒層18を形成するための酸化物としては、前述の二酸化硅素に限定されるものではなく、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含むものであればよい。また、成膜温度が高くなるに従って触媒層18の粒径が大きくなることと、成膜工程は室温で行う方が作業性の面で望ましいこととを考慮すれば、触媒層18の成膜温度は30℃以下が好ましい。
次いで、アミン系の剥離液を用いて、フォトレジスト層16を剥離する(図4(k))。このとき、陰極母線12上に形成された触媒層18aはそのまま残り、フォトレジスト層16上に形成された触媒層18bはフォトレジスト層16と共にゲート電極14から剥離される。
そして、例えば熱CVD法によって、一酸化炭素と水素とが混合された雰囲気中で20分間、600℃にて加熱し、炭素系冷陰極15を成長させる(図4(l))。熱CVD法による温度上昇の際、触媒層18に含まれる酸化物が微粒子の凝集を抑制するよう機能するので、触媒層18の微粒子の粒径に依存した炭素系冷陰極15が成長することとなる。
なお、図3(j)において、陰極母線12及びフォトレジスト層16の上面に触媒層18を直接形成する構成を説明したが、触媒層18を形成する前に、触媒層18の下地となる下地金属層を特定の金属で形成する構成とすることもできる。以下、図5(a)〜(c)を用いて説明する。
図5(a)に示すように、陰極母線12及びフォトレジスト層16の上面に下地金属層19を形成し、さらに下地金属層19上に触媒層18を形成する。例えばルテニウムをスパッタリング法により成膜し、下地金属層19を形成することができる。なお、図5(a)において、陰極母線12上に形成された層を下地金属層19aとし、フォトレジスト層16上に形成された層を下地金属層19bとしている。この構成により、触媒層18の成膜時に、下地金属層19aが無い場合よりも触媒層18aの触媒粒径を小さくすることができる。なお、特許請求の範囲に記載の「所定の粒径」とは、下地金属層19を形成しない場合における触媒層18aの触媒粒径のことをいう。
なお、ルテニウムの成膜方法は、スパッタリング法に限定されるものではなく、蒸着法やCVD法等を用いることもできる。また、ルテニウムの代わりに酸化ルテニウムを用いてもよい。また、ルテニウムを形成した後、一度大気中にさらし、1〜24時間程度放置することにより、ルテニウムの表面を酸化してもよい。これにより、粒径を小さくする効果をさらに高めることができる。また、ルテニウムの成膜時に、酸素を1〜10%程度添加することにより、酸化ルテニウムを成膜してもよい。これにより、粒径を小さくする効果をさらに高めることができる。下地金属層19は、ルテニウムの他にも、レニウム又はこの酸化物を用いることができる。
次いで、アミン系の剥離液を用いて、フォトレジスト層16を剥離する(図5(b))。このとき、陰極母線12上に形成された下地金属層19a及び触媒層18aはそのまま残り、フォトレジスト層16上に形成された下地金属層19b及び触媒層18bはフォトレジスト層16と共にゲート電極14から剥離される。
そして、例えば熱CVD法によって、一酸化炭素と水素とが混合された雰囲気中で20分間、600℃にて加熱し、炭素系冷陰極15を成長させる(図5(c))。熱CVD法による温度上昇の際、触媒層18に含まれる酸化物が微粒子の凝集を抑制するよう機能するので、触媒層18の微粒子の粒径に依存した炭素系冷陰極15が成長することとなる。
したがって、従来のものは、5〜30nm程度の範囲でばらついた太さとなっていたが(図14参照)、本発明のものは、2nm〜10nm程度の任意の粒径に依存した太さで形成されるので、従来のものよりも細く、均一な太さのグラファイトナノファイバが得られる。
なお、炭素系冷陰極15を成長させる工程において、一酸化炭素以外にも、メタン、エチレン、アセチレン、エタノール、メタノール、尿素等を用いることができ、水素以外にも、ヘリウム、窒素、アルゴン、ネオン等を用いることができる。また、これらを任意に組み合わせて加熱条件を変え、任意の触媒材料を用いることにより、カーボンナノチューブやカーボンナノコイル等を成長させることができる。
(実験結果)
次に、本発明に係る冷陰極素子10の効果を確認するために行った実験の結果について説明する。
まず、スパッタリング法により、ガラス基板上に200nm厚のクロム薄膜を成膜した。次いで、スパッタリング法により、図6に示す2種類の材料をクロム薄膜上に室温成膜してサンプルを製作した。すなわち、図6左欄に示す従来の典型的な触媒となる金属によるサンプルと、これらの金属の少なくとも1つを含む金属又は合金の粉末に図6右欄に示す酸化物の粉末をモル比50:50で混合したものを焼結してターゲットに加工して製作したサンプルとを準備した。また、後者については、その下地金属層として、ルテニウムを用いたサンプルと、用いないサンプルとを用意した。したがって、サンプルは計3種類である。
引き続き、熱CVD法により、一酸化炭素ガスと水素ガスとを混合比1:1で混合したガスの雰囲気中において上記2種類のサンプルを加熱し、グラファイトナノファイバを成長させた。なお、以下の説明において、図6左欄に示す触媒によって成長したグラファイトナノファイバを「従来のファイバ」、図6右欄に示す酸化物が混合された触媒によって成長したグラファイトナノファイバを「本発明のファイバ1」という。また、図6右欄に
示す酸化物が混合された触媒と下地金属層にルテニウムを用いることによって成長したグ
ラファイトナノファイバを「本発明のファイバ2」という。
成長後のグラファイトナノファイバを走査型電子顕微鏡により撮影した画像を図7〜9に示す。図7は、従来のファイバを示し、図8は、二酸化硅素を混合した本発明のファイバ1の形状を示している。図9は、二酸化硅素を混合し、下地金属層にルテニウムを用いた本発明のファイバ2の形状を示している。
図7に示すように、従来のファイバは、10nm〜30nm程度の範囲でばらついた太さとなっている。一方、図8に示すように、本発明のファイバ1は、5nm〜10nm程度であり、ほぼ均一な太さとなっている。また、図9に示すように、本発明のファイバ2は、3nm〜8nm程度であり、ほぼ均一な太さとなっている。したがって、二酸化硅素を混合した本発明のファイバ1の方が、従来のファイバよりも、より細く、均一な太さとなることがわかった。また、下地金属層にルテニウムを用いた本発明のファイバ2は、さらに、より細く、均一な太さとなることがわかった。
次に、ガラス基板上にITOを成膜後、ITO上に蛍光体を塗布して陽極板を形成し、従来のファイバによる冷陰極素子と陽極板と対向させ、また、本発明のファイバ1及び2による冷陰極素子と陽極板とを対向させた状態で、それぞれ、真空チャンバ内に設置した。ここで、各冷陰極素子と陽極板とのギャップは0.5mmとした。そして、従来のファイバ、本発明のファイバ1及び2のそれぞれと陽極板との間に電圧を印加して電子放出特性を測定した。その結果を図10に示す。
図10に示すように、本発明のファイバ1及び2の方が、従来のファイバよりも低い電圧で電子放出が起こることがわかった。この理由としては、本発明のファイバ1及び2の方が従来のファイバよりも太さを細くできるからであると考えられる。具体的には、例えば1μAの電流が得られる電圧に注目すると、従来のものは約2450Vであるのに対し、本発明のファイバ1及び2は、それぞれ、約1550V及び約1450Vである。したがって、これら本発明のものは、従来のものに対し約4割も低電圧化を図ることができる。
次に、蛍光体の発光状態について観察した。図11、図12及び図13は、それぞれ、従来のファイバ、本発明のファイバ1及び2による冷陰極素子の発光状態を示している。図11〜13に示すように、本発明のファイバ1及び2による冷陰極素子の方が、従来のファイバによる冷陰極素子よりも均一性の高い発光が得られている。
以上のように、本実施の形態に係る冷陰極素子10によれば、触媒層18に混合された酸化物が触媒層18の微粒子の凝集を抑制するので、太さが均一化された炭素系冷陰極15が得られ、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができる。
また、本実施の形態に係る冷陰極素子10によれば、太さが均一化された炭素系冷陰極15を備える構成としたので、従来のものよりも低電圧で高電流密度の特性を得ることができる。
また、本実施の形態に係る冷陰極ディスプレイ装置100によれば、太さが均一化された炭素系冷陰極15を備えた冷陰極素子10で構成され、個々の冷陰極素子10による電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができるので、高画質化及び低消費電力化を図ることができる。特に、本実施の形態に係る冷陰極素子10を次世代の大型ディスプレイに適用すれば、高画質化及び低消費電力化に関し著しい効果が得られる。
なお、前述の実施の形態において、本発明に係る冷陰極素子10を冷陰極ディスプレイ装置100に適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば撮像素子や照明装置等のデバイスに適用しても同様の効果が得られる。
以上のように、本発明に係る冷陰極素子及びその製造方法は、電子放出特性のばらつきを従来のものよりも小さくすることができるという効果を有し、ディスプレイ、照明装置及び撮像装置等として有用である。
本発明の一実施の形態に係る冷陰極ディスプレイ装置の概略断面図 本発明の一実施の形態に係る冷陰極素子の各製造工程における冷陰極素子の概略断面図 (a)ガラス基板上に陰極母線を形成した状態を示す図 (b)陰極母線上に絶縁層を形成した状態を示す図 (c)絶縁層上にゲート電極を形成した状態を示す図 (d)ゲート電極上にフォトレジスト層を形成した状態を示す図 (e)現像後のフォトレジスト層の状態を示す図 (f)穴をゲート電極に設けた状態を示す図 (g)陰極母線を露出させた状態を示す図 本発明の一実施の形態に係る冷陰極素子の各製造工程における冷陰極素子の概略断面図 (h)水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に浸した状態を示す図 (h1)酸素プラズマによりフォトレジスト層の表面を酸化又は水酸化する際の状態を示す図 (i)ウエットエッチング工程を示す図 (j)触媒層を形成した状態を示す図 本発明の一実施の形態に係る冷陰極素子の各製造工程における冷陰極素子の概略断面図 (k)フォトレジスト層が剥離された状態を示す図 (l)炭素系冷陰極が成長した状態を示す図 本発明の一実施の形態に係る冷陰極素子の製造工程において、下地金属層を特定の金属で形成する際の冷陰極素子の概略断面図 (a)下地金属層上に触媒層が形成された状態を示す図 (b)フォトレジスト層が剥離された状態を示す図 (c)炭素系冷陰極が成長した状態を示す図 本発明の一実施の形態に係る触媒金属及び酸化物の一例を示す図 従来のグラファイトナノファイバの画像 本発明のファイバ1の形状を示す画像 下地金属層にルテニウムを用いた本発明のファイバ2の形状を示す画像 本発明のファイバ1及び2、従来のファイバによる冷陰極素子の電子放出特性を示す図 従来のグラファイトナノファイバによる冷陰極素子の発光状態を示す画像 本発明のファイバ1による冷陰極素子の発光状態を示す画像 本発明のファイバ2による冷陰極素子の発光状態を示す画像 従来のグラファイトナノファイバの画像
符号の説明
10 冷陰極素子
11 ガラス基板
12 陰極母線
13 絶縁層
14 ゲート電極
15 炭素系冷陰極
16 フォトレジスト層
17 孔
18(18a、18b) 触媒層
19(19a、19b) 下地金属層
50 陽極基板
51 ガラス基板
52 陽極電極
53 蛍光面
100 冷陰極ディスプレイ装置

Claims (9)

  1. 触媒層上に炭素系微細繊維が形成された冷陰極を有する冷陰極素子であって、
    前記炭素系微細繊維は、遷移金属、貴金属及び希土類元素の少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかに酸化物が混合された材料により形成された触媒層上に成長したものであり、
    前記酸化物は、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする冷陰極素子。
  2. 前記遷移金属は、クロム、鉄及びニッケルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極素子。
  3. 前記貴金属は、金、銀、白金、パラジウム及びイリジウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極素子。
  4. 前記希土類元素は、イットリウム、セリウム及びユーロピウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の冷陰極素子。
  5. 前記触媒層の下地となる下地金属層を備え、前記下地金属層は、触媒粒径を所定の粒径よりも小さくする機能を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の冷陰極素子。
  6. 前記下地金属層は、ルテニウム、レニウム及びこれらの酸化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の冷陰極素子。
  7. 炭素系微細繊維が形成された冷陰極を有する冷陰極素子の製造方法であって、
    基板上の陰極母線に触媒層を成膜する工程と、前記触媒層上に炭素系微細繊維を成長させる工程とを含み、
    前記触媒層は、遷移金属、貴金属及び希土類元素の少なくとも1つを含む金属、合金及び混合物のいずれかと酸化物とを混合した材料を焼結してターゲットに加工し、このターゲットを用いてスパッタリング法、蒸着法及びCVD法のいずれかを用いて成膜したものであり、
    前記酸化物は、二酸化硅素、酸化硅素及び酸化アルミニウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする冷陰極素子の製造方法。
  8. 前記触媒層は、30℃以下の成膜温度で形成されることを特徴とする請求項7に記載の冷陰極素子の製造方法。
  9. 前記触媒層を成膜する工程の前に、触媒粒径を所定の粒径よりも小さくする機能を有する特定の金属によって前記触媒層の下地となる下地金属層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の冷陰極素子の製造方法。
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