JP4776902B2 - 力学量センサ素子 - Google Patents

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Description

本発明は、力、圧力、トルク、速度、加速度、位置、変位、衝撃力、重量質量、真空度、回転力、振動、騒音等の力学的な変化量を測定する力学量センサ素子に関する。
従来より、力、圧力、トルク、速度、加速度、位置、変位、衝撃力、重量質量、真空度、回転力、振動、騒音等の力学的な変化量を計測する手段として、力学的な変化量を歪み(応力)を介して計測する力学量センサ素子が広く利用されている。この力学量センサ素子としては、一般に圧力抵抗効果材料を利用して構成されたものが用いられてきた。
圧力抵抗効果とは、材料に圧縮応力、引っ張り応力、剪断応力、静水圧応力等が加わった際に、材料の電気抵抗が変化する現象のことである。
力学量センサ素子は、このような材料よりなる抵抗ペーストを金属やジルコニア等の起歪体に焼き付けることによって得られる。このような力学量センサ素子においては、起歪体に外部から力学量を加えることにより、感圧体の電気抵抗を変動させ、この電気抵抗の変動を検出することにより力学量を測定する(特許文献1及び2参照)。
しかしながら、上記の従来の力学量センサ素子においては、起歪体の歪を測定して、これを応力に換算していたため、力学量の計測値が起歪体の形状に依存してしまうという問題があった。
また、力学量が小さい場合はともかく、力学量として大きな応力の測定に供した場合には、感圧体に対する荷重の加わり具合のバランスが悪く、高感度な力学量の測定が難しいという問題があった。
さらに、上記の従来の力学量センサ素子においては、金属やジルコニア等からなる起歪体が温度変化によって若干歪むおそれがあり、そのため、外部からの力学量を精密に測定することが困難であった。
特開平8−304200号公報 特開平10−253313号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、高感度かつ高精度に力学量を測定できる力学量センサ素子を提供しようとするものである。
本発明は、応力の印加によって電気的特性が変化する感圧体と、該感圧体の対向する2つの表面に、それぞれ一体的に形成された電気絶縁性の絶縁体とを有する積層体よりなり、積層方向に上記絶縁体に加えられた応力を上記感圧体が直接受けることができるよう構成されており、
上記感圧体は、ガラスよりなるマトリックスの中に導電性を有する導電性粒子を分散してなり、
上記導電性粒子は、酸化ルテニウム、又はルテニウム酸鉛、あるいはこれらの組み合わせよりなり、該導電性粒子は、上記マトリックス100重量部に対して、10〜50重量部の割合で分散されており、
上記感圧体の厚みは、1μm〜200μmであり、
上記絶縁体は、ZrO 2 、Al 2 3 、MgAl 2 4 、SiO 2 、3Al 2 3 ・2SiO 2 、Y 2 3 、CeO 2 、La 2 3 又はSi 3 4 よりなることを特徴とする力学量センサ素子にある(請求項1)。
本発明の力学量センサ素子において、上記絶縁体は、上記感圧体の対向する2つの表面に、上記感圧体を挟み込むように形成されている。そのため、上記感圧体は、外部から上記絶縁体に加えられた応力を直接受けることができる。それ故、上記感圧体に対する力学量のかかり具合を平均化することができ、正確な力学量の測定ができる。また、力学量として大きな応力の測定に供した場合でも、力学量を精密に測定できる。
したがって、本発明の力学量センサ素子においては、従来の起歪体を用いる素子に比べて、その感度を格段に向上させることができる。
また、上記感圧体は、ガラスよりなるマトリックスに、導電性を有する導電性粒子を分散してなる。このような感圧体は、従来の圧力抵抗材料を利用した場合よりも、応力に対する抵抗変化率が大きい。即ち、上記感圧体においては、該感圧体に力学量が加えられると、その電気抵抗が感度良く変化する。そのため、上記力学量センサ素子においては、この電気抵抗の変化を検出することにより、上記絶縁体から上記感圧体に伝えられた力学量を感度良く測定することができる。
このように、上記感圧体において、その電気抵抗が感度良く変化する理由としては、例えば以下のように理由が考えられる。
即ち、本発明において、上記感圧体は、ガラスよりなるマトリックスに上記導電性粒子を分散させてなっている。そして、このような構成の上記感圧体には、トンネル電流が生じやすいと考えられる。したがって、上記力学量センサ素子においては、上記感圧体に力学量が加わるとトンネル効果が起こると推察される。このように上記感圧体はトンネル効果を利用できるため、上記感圧体に加えられた力学量の大きさに応じて、感度良くその電気抵抗を変化できるものと推察される。
また、上記感圧体は、マトリックスとしてガラスを有している。そして、ガラスは、従来起歪体として用いられていた金属やジルコニア等に比べてヤング率が1/3程度と小さい。そのため、上記感圧体は、上記絶縁体に印加された応力を上記感圧体全体に精密に反映させることができる。
また、本発明の力学量センサ素子は、上記のごとく、ガラスのマトリックスに導電性を有する導電性粒子を分散させてなる上記感圧体を有しているため、温度による影響を受けにくい。したがって、上記力学量センサ素子は、高温及び低温環境下でも常温環境下と変わらず、力学量を精密に測定することができる。
また、本発明において、上記絶縁体は、上記感圧体を挟み込むように該感圧体と一体的に形成されている。そのため、上記力学量センサ素子においては、上記感圧体に対する絶縁性を確実に確保することができる。
以上のごとく、本発明によれば、高感度かつ高精度に力学量を測定できる力学量センサ素子を提供することができる。
本発明の力学量センサ素子(請求項1)において、上記導電性粒子は、上記ガラスよりなるマトリックス中に、ほぼ均一に分散されていることが好ましい。導電性粒子の分散にバラツキが大きい場合には、上記感圧体内の電気抵抗の変化にバラツキが生じ、上記力学量センサ素子の精密性が低下するおそれがある。
上記ガラスとしては、例えばホウケイ酸鉛ガラス等を用いることができる。
また、上記導電性粒子としては、例えば酸化ルテニウム(RuO2)やルテニウム酸鉛等よりなるものを用いるこれらは1種類を用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
好ましくは、上記導電性粒子は、RuO2よりなる。この場合には、上記力学量センサ素子の感度をより一層向上させることができる。
また、上記感圧体において、上記導電性粒子は、上記マトリックス100重量部に対して、10〜50重量部の割合で分散されている
上記導電性粒子が10重量部未満の場合には、粒子同士の接触が少なくなり、上記感圧体の抵抗値が非常に大きくなり、上記力学量センサ素子の感度が低下するおそれがある。一方、50重量部を越える場合には、上記マトリックス中に分散された上記導電性粒子の多くが互いに接触し、その結果、上記感圧体の抵抗値が非常に小さくなり、印加された荷重に対する抵抗変化率が小さくなるおそれがある。そのため、上記力学量センサ素子における精密な力学量の測定が困難になるおそれがある。
また、上記絶縁体としては、例えばZrO2(ジルコニア)、Al23(アルミナ)、MgAl24、SiO2、3Al23・2SiO2、Y23、CeO2、La23、Si34等よりなるものを用いることができ、また、これらによって表面が被覆され、電気的に絶縁状態となった金属等を用いることもできる。
また、上記力学量センサ素子において、上記感圧体は、ドクターブレード、押出成形、印刷(スクリーン印刷、転写等)等の各プロセスを利用して作製することができる。
具体的には、上記感圧体は、例えば、ガラスよりなるマトリックスに、RuO2粒子、及び必要に応じて添加される発泡剤若しくは補強材等を分散してなる複合材料に、適当な有機バインダーや溶剤を加えて、ペースト状にして、これを成形し、焼結して作製することができる。上記有機バインダーとしては、例えばセルロース系樹脂やアクリル系樹脂等を用いることができ、また、上記溶剤としては、例えば、テルピネオールや、ブチルカルビトールアセテート等を用いることができる。
また、上記有機バインダーや溶剤は、加熱昇温により乾燥・脱脂される際に、上記感圧体中に後述の気孔を生成することができる。即ち、上記有機バインダーや溶剤は、気孔形成剤としての役割を果たすことができる。また、上記発泡剤としては、例えばアボジカルボンアミド等の有機発泡剤や、無機発泡剤を添加することができる。
また、上記絶縁体は、ドクターブレード、押出成形等の各プロセスを利用して作製することができる。
上記感圧体と上記絶縁体を同じプロセスで作製することもできるし、異なるプロセスで作製することもできる。
また、上記感圧体と上記絶縁体は一体的に形成されており、これらは焼結により一体化されていることが好ましい。
感圧体と絶縁体とを一体で焼結した素子は、絶縁体を別途加工する工程、及び感圧体と絶縁体とを接着する工程を省くことができるため、素子の製造コストを安価にすることができる。また、上記力学量センサ素子の強度を向上させることができる。
また、上記感圧体と上記絶縁体とは、接着剤により接合することもできる。
これにより、上記感圧体と上記絶縁体とが焼結によりうまく一体化できない場合等にも、容易に両者の一体化を実現することができる。
上記接着剤としては、例えば有機系及び無機系の接着剤、又は低融点ガラスよりなるもの等を用いることができる。
また、上記感圧体の厚みは、1μm〜200μmである
感圧体の厚みが1μm未満の場合には、上記感圧体の抵抗値が非常に大きくなり、その応力に対する抵抗変化が小さくなるおそれがある。一方、200μmを越える場合には、上記感圧体の抵抗が非常に小さくなり、この場合にも感圧体の応力に対する抵抗変化が小さくなるおそれがある。
また、上記感圧体には、一対の電極が配設されていることが好ましい(請求項)。
この場合には、上記感圧体に外部から電極を接続する必要がなくなり、上記力学量センサ素子をそのまま計測システム等に組み込むことができる。
また、上記感圧体には、略球状の気孔が形成されていることが好ましい(請求項)。
この場合には、上記感圧体の見掛けのヤング率が低下するため、応力の印加による歪量が増加し、上記力学量センサ素子の感度をより向上させることができる。
上記気孔(ポア)は、上述のごとく上記感圧体を焼成により作製する際において、該焼成(加熱処理)により自ずと形成させることができる。また、上記感圧体の原料に有機物あるいは無機物の発泡剤を添加し、焼結時に発泡させることにより、気孔を形成させることもできる。
また、上記感圧体を焼結により作製する際には、加熱昇温時に上記感圧体の原料に含まれるガラスが溶融してガラスからなるマトリックスを形成する。この溶融したガラス中では気孔の形状は、略球状になり易い。上記気孔の形状は、より球状に近いことが好ましい。球状に近いほど感圧体における部分的な応力集中を低減することができ、その結果力学量センサ素子の破壊や破損を防止することができるからである。
また、上記感圧体に含まれる上記気孔の直径は、上記感圧体の厚みの90%以下であることが好ましく、また、上記気孔の含有量(vol%)は、上記感圧体の50vol%以下であることが好ましい。
気孔の直径が感圧体の厚みの90%を超える場合には、上記気孔の球形状が保たれ難くなり、応力集中が起こりやすくなる。そのためこの場合には、上記力学量センサ素子が破壊されやすくなるおそれがある。
また、気孔の含有量が感圧体の50体積%を超える場合には、上記力学量センサ素子の強度が低下して破壊されやすくなるおそれがある。
また、上記感圧体において、ガラスよりなる上記マトリックスには、略球状、塊状、鱗片状、板状あるいは繊維状等の補強材を添加することもできる。
この場合には、上記力学量センサ素子の印加応力に対する耐久性をより向上させることができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図1〜図7を用いて説明する。本例においては、本発明にかかる力学量センサ素子を作製し、その特性を評価する。
図1に示すごとく、本例の力学量センサは、応力Fの印加によって電気的特性が変化する感圧体2と、該感圧体2の対向する2つの表面に、それぞれ一体的に形成された電気絶縁性の絶縁体3とを有してなる。感圧体2は、ガラスよりなるマトリックスにRuO2よりなる導電性粒子を分散してなる。
本例において、絶縁体3はジルコニアよりなり、この絶縁体3は、感圧体2を挟み込むように形成されている。また、感圧体2と絶縁体3とは、焼成により一体的に形成されている。また、感圧体2には一対の電極4が配設されている。
次に、本例の力学量センサ素子1の作製方法につき、説明する。
まず、絶縁体3として、15mm×15mm×1.5mmのジルコニア板(東ソー株式会社製)を2枚準備し、また、感圧体2の材料として、粒径0.2〜5μmのRuO2の粒子とガラスとを含有する抵抗ペースト(ESL社製の3414A)を準備した。
この抵抗ペーストをジルコニア板の片面にスクリーン印刷し、温度850℃にて20分間保持して焼き付けた。同様に、もう一枚のジルコニア板の片面にも、抵抗ペーストを焼き付けた。この焼き付けにより、抵抗ペーストからバインダーや有機溶剤を蒸発させ、ジルコニア板の表面に、電気絶縁性材料(ガラス)のマトリックスに導電性材料(RuO2)よりなる導電性粒子が分散された感圧体を形成させた。なお、感圧体の厚みは20μmであった。
次いで、上記のように表面に感圧体を形成した2枚のジルコニア板を、その感圧体を形成した面同士で重ね合わせ、温度650℃にて40分間焼成した。これにより、2枚のジルコニア板は一体化した。焼成後、5mm×5mm×1.5mmの大きさに加工し、図1に示すごとく、感圧体2が絶縁体3(ジルコニア板)に挟まれたサンドイッチ構造の力学量センサ素子1を得た。
次いで、銀ペースト(昭栄化学工業株式会社製)を準備し、この銀ペーストを、力学量センサ素子1における感圧体2が露出した一対の側面に塗布し、温度850℃にて10分間加熱した。これにより、感圧体15に銀ペーストが焼き付けられ、感圧体2を挟む一対の電極4を形成した。
このようにして得られた力学量センサ素子1を試料E1とした。
次に、上記のようにして得られた試料E1の特性を評価する。
具体的には、試料E1ついて、応力を加えたときの抵抗変化率(荷重特性)、及び温度を変えたときの抵抗変化率(温度特性)を以下のようにして調べた。
「荷重特性」
図1に示すごとく、力学量センサ素子1(試料E1)に応力Fを積層方向にかけ、このときの試料E1の電気抵抗を測定した。力学量センサ素子1への応力Fの印加にあたっては、0MPaから217MPaまでその大きさを徐々に大きくしながら印加し、217MPaまで達した後は、0MPaまでその大きさを徐々に小さくしながら印加した。このとき、応力を加えていないときの電気抵抗に対する、応力印加時の電気抵抗の変化の割合(抵抗変化率)を算出し、その結果を図2に示した。なお、図2において、横軸は印加した応力(MPa)を示し、縦軸は抵抗変化率(%)を示す。
「温度特性」
力学量センサ素子(試料E1)を恒温槽に入れ、この恒温槽中で、試料E1の温度を25℃から150℃まで上昇させ、次いで−80℃まで下降させた。この間、各温度における試料E1の電気抵抗を測定し、温度25℃における電気抵抗に対する、各温度における電気抵抗の変化の割合(抵抗変化率)を算出した。その結果を図3に示す。なお、図3において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は抵抗変化率(%)を示す。
次に、本発明の実施例にかかる力学量センサ素子(試料E1)の優れた特性を明らかにするために、比較用の力学量センサとして、試料C1及び試料C2を準備した。
まず、上記試料E1と同様の感圧体を起歪体の側面に形成した力学量センサ素子(試料C1)について説明する。
図4及び図5に示すごとく、試料C1の力学量センサ素子5は、ZrO2よりなる起歪体7と、ガラスマトリックスにRuO2粒子が分散されてなる感圧体6とからなる。感圧体6は、試料E1と同様のものであり、起歪体7の4つの側面にそれぞれ形成されている。また、各感圧体6の端部には、一対の電極59がそれぞれ形成されている。
次に、試料C1の力学量センサ素子5の作製方法につき説明する。
まず、起歪体7として、ZrO2よりなるセラミックスを準備した。この起歪体7は、試料E1の作製に用いたものと同様のジルコニア板を4mm×4mm×5mmの大きさに加工することにより作製した。また、感圧体6の材料として、RuO2の粒子とガラスとを含有する抵抗ペーストを準備した。この抵抗ペーストは、上記試料E1の作製に用いたものと同様のものである。
次いで、スクリーン印刷により、起歪体7の4つの側面に抵抗ペーストを約10μmの厚みでそれぞれ印刷し、100℃で乾燥後、電気炉中で温度850℃にて10分間保持して焼き付けた。これにより、抵抗ペーストからバインダーや有機溶剤が蒸発し、上記試料E1と同様の感圧体6を形成した。
次いで、試料E1の作製に用いたものと同様の銀ペーストを準備し、この銀ペーストを、起歪体7に形成された感圧体6における一対の端部にそれぞれ塗布した。銀ペーストの感圧体6への塗布は、起歪体7の側面に形成された4つの感圧体6に対してそれぞれおこなった。続いて、温度850℃にて10分間加熱することにより、感圧体6に銀ペーストを焼き付け、各感圧体6を挟む一対の電極59を形成した。
このようにして得られた力学量センサ素子5を試料C1とした。
次に、上記のようにして得られた力学量センサ素子(試料C1)の特性を評価する。
具体的には、上記試料E1の場合と同様に、応力を加えたときの抵抗変化率(荷重特性)、及び温度を変えたときの抵抗変化率(温度特性)を以下のようにして調べた。
「荷重特性」
図4及び図5示すごとく、力学量センサ素子5(試料C1)における感圧体6を形成していない上面55に、応力Fを垂直にかけ、このときの試料C1の電気抵抗を測定した。力学量センサ素子5(試料C1)への応力Fの印加にあたっては、0MPaから170MPaまでその大きさを徐々に大きくしながら印加し、170MPaまで達した後は、0MPaまでその大きさを徐々に小さくしながら印加した。このとき、応力を加えていないときの電気抵抗に対する、応力印加時の電気抵抗の変化の割合(抵抗変化率)を算出し、その結果を図6に示した。
また、図4及び図5に示すごとく、試料C1の力学量センサ素子5においては、起歪体7の4つの面に感圧体6が形成されている。そのため、抵抗変化率の算出に当たっては、まず、これら4つの感圧体6の電気抵抗変化率をそれぞれ算出し、さらにこれらの平均値を求めることによって行った。
なお、図6において、横軸は試料C1に印加した応力(MPa)を示し、縦軸は、抵抗変化率(%)を示す。また、図6においては、起歪体の4つの側面に形成した各感圧体の抵抗変化率をそれぞれ4種類の点線で示し、これらの平均を実線で表してある。
「温度特性」
力学量センサ素子(試料C1)を恒温槽に入れ、この恒温槽中で、上記の試料E1の場合と同様に、試料C1の温度を25℃から150℃まで上昇させ、次いで−80℃まで下降させた。この間、各温度における試料C1の電気抵抗を測定し、温度25℃における電気抵抗に対する、各温度における電気抵抗の変化の割合(抵抗変化率)を算出した。その結果を上記試料E1の結果と併せて図3に示す。
次に、比較用の試料C2について説明する。
図7に示すごとく、試料C2の力学量センサ素子8は、試料E1と同様に、応力Fの印加によって電気的特性が変化する感圧体85と、該感圧体85の対向する2つの表面に、それぞれ一体的に形成された電気絶縁性の絶縁体9とを有している。試料C2においては、感圧体85は、セラミックスとLSMO系の圧力抵抗効果材料とからなっている。具体的には、圧力抵抗効果を有するLa0.75Sr0.25MnO3と、セラミックスとしての12wt%のCeO2を添加したZrO2とよりなる。
また、絶縁体9は、12wt%CeO2添加ZrO2セラミックスよりなる。
次に、上記試料C2の力学量センサ素子8の作製方法につき、説明する。
まず、感圧体85の材料として、圧力抵抗効果材料であるLa0.75Sr0.25MnO3とセラミックスである12wt%CeO2添加ZrO2とを分散混合したものを準備した。12wt%CeO2添加ZrO2とLa0.75Sr0.25MnO3との混合割合は7:3である。
上記粉末をボールミルで4時間混合、粉砕し、その後乾燥して、混合粉を得た。この混合粉と樹脂バインダー、水、分散剤とをボールミル又は強制撹拌混合機で混合し、スラリーを調整した。その後、ドクターブレード法により厚さ100μmの感圧体用シートを成形した。
絶縁体用の材料として、12wt%CeO2添加ZrO2を準備した。
上記と同様に12wt%CeO2添加ZrO2と樹脂バインダー、水、分散剤とをボールミル又は強制撹拌混合機で混合した後、ドクターブレード法で厚さ100μmの絶縁体用シートを成形した。
感圧体用シート及び絶縁体用シートを40mm×40mmに切断し、感圧体用シート2枚の両面に絶縁体用シートを片側15枚ずつ重ね合わせ、合計32枚のシート積層体を得た。この積層体をホットプレスにより各シートを熱圧着した。
次いで、圧着体を脱脂炉で樹脂バインダーを分解除去した。そして、CIP(冷間上水圧プレス)した後、焼結炉にて、1400℃、4時間の条件で焼結した。これにより感圧体と絶縁体とが一体的に焼結された。得られた焼結体を素子形状(5mm×5mm×1.5mm)に切断加工した。
さらに、上記感圧体の側面(絶縁体が存在しない面)に対し銀ペーストを焼き付けて電極を形成し、図7に示す力学量センサ素子8(試料C2)を得た。
次に、上記のようにして得られた試料C2について、その荷重特性及び温度特性を調べた。荷重特性及び温度特性は、上記試料E1と同様の方法により測定した。
その結果を上記試料E1の結果と併せて図2及び図3に示す。
次に、上記試料E1、試料C1及び試料C2の力学量センサ素子としての特性について図2、図3及び図6を用いて説明する。
図2より知られるごとく、試料E1の力学量センサ素子においては、応力を217MPa印加したときの抵抗変化率は約−8.49%であった。これに対し、同図より知られるごとく、試料C2の抵抗変化率は、試料E1と同様の条件で、−2.1%であった。このことから、試料E1は、試料C2に比べて、4倍以上の感度で応力等の力学量を検出できることがわかる。
また、図6より知られるごとく、試料C1においては、応力を170MPa印加したときの抵抗変化率(但し、4つの感圧体の抵抗変化率の平均)は−0.55%であった。試料E1と試料C1の荷重特性の結果(図2及び図6)において、同じ大きさの応力、例えば150MPaの応力を加えたときの抵抗変化率を比較すると、試料E1においては、抵抗変化率は約−6%であるのに対し、試料C1においては、抵抗変化率(但し、4つの感圧体の抵抗変化率の平均)は−0.46%であった。このことから、試料E1は、試料C1に比べて、20倍以上の感度で応力等の力学量を検出できることがわかる。
また、図4及び図5に示すごとく、試料C1の力学量センサ素子5においては、起歪体7に応力Fを印加し、その側面に形成された感圧体6が起歪体7の歪を検出することにより起歪体7に加えられた応力Fを測定する構成をとっている。
このとき、起歪体7に加えられた応力Fは、起歪体7の各側面に若干のバラツキをもって伝えられ、図6のごとく、起歪体7の各側面にて検出される応力にもバラツキが生じる。そのため、このような構成の力学量センサ素子を用いる際には、試料C1のように起歪体7の各側面に複数の感圧体6を形成し、その平均値を算出する必要がある。
一方、図1に示すごとく、試料E1の力学量センサ素子1においては、絶縁体3に印加された応力Fは、感圧体2に直接加えられる。そのため、試料C1のように複数の感圧体を形成する必要がなく、また、バラツキが発生することもない。そのため、より精密な測定を行うことができる。
また、図6より知られるごとく、試料C1においては、起歪体の側面に形成した各感圧体の応力に対する抵抗変化率の直線性が低い。また、応力を0MPaから170MPaまで徐々に大きくしながら印加したときの抵抗変化率と、応力を170MPaから0MPaまで徐々に小さくしながら印加したときの抵抗変化率との間にはズレが生じていた。
試料C1において、起歪体の側面に形成した各感圧体の抵抗変化率の平均(図6中の実線であらわされるもの)は、比較的直線性を有しているが、その非直線性(N.L)は、2.0%F.Sであり、ヒステリシスは、−0.13%F.Sであった。なお、「F.S」は、フルスケールを表す。
また、図2より知られるごとく、試料C2においても、応力に対する抵抗変化率の直線性は非常に悪く、その非直線性(N.L.)は、7.22%F.Sであり、ヒステリシスは、6.5%F.Sであった。
これに対し、試料E1においては、図2に示すごとく、応力に対する抵抗変化率の直線性に優れ、その非直線性(N.L)は、1.4%F.Sであり、ヒステリシスは、−0.01%F.Sであった。
以上のことから、上記試料E1の力学量センサ素子は、試料C1や試料C2に比べて応力に対する感度が優れ、精密に応力等の力学量を測定できることがわかる。
また、図3より知られるごとく、試料E1は、試料C1や試料C2に比べて、抵抗変化率の温度依存性が非常に小さい。
即ち、同図より知られるごとく、試料C1は、その抵抗変化率の温度依存率が試料E1に比べて約3倍になっていた。また、試料C2においては、高温状態及び低温状態になると、抵抗変化率が著しく低下している。したがって、試料C1及び試料C2においては、その感度が温度変化によって大きく変化してしまうことがわかる。
これに対し、試料E1においては、試料C1や試料C2に比べて、その抵抗変化率の温度による影響が非常に少ない。
このことから、試料E1は、異なる温度環境下においても精密な力学量の測定を行うことができるものであることがわかる。
以上のごとく、本例によれば、高感度かつ高精度に力学量を測定できる力学量センサ素子(試料E1)を提供できることがわかる。
(実施例2)
本例は、上記試料E1と同様の力学量センサ素子を実施例1とは異なる方法で作製した例である。
即ち、まず、絶縁体として実施例1の試料E1と同様の2枚のジルコニア板を準備すると共に、感圧体の材料として試料E1と同様の抵抗ペーストを準備した。
この抵抗ペーストを2枚のジルコニア板の片面に、スクリーン印刷により約10μmの厚みでそれぞれ印刷し、温度100℃にて乾燥させた。
続いて、これら2枚のジルコニア板を、抵抗ペーストを印刷した面同士で重ね合わせ、温度850℃にて20分間焼成した。この焼成により、抵抗ペーストからバインダーや有機溶剤が蒸発し、2枚のジルコニア板(絶縁体)の間に感圧体が形成すると共に、絶縁体と感圧体が一体化し、感圧体が絶縁体に挟まれたサンドイッチ構造の力学量センサ素子を得た。
次いで、実施例1と同様の銀ペーストを準備し、これを力学量センサ素子における感圧体が露出した一対の側面に塗布し、温度850℃にて10分間加熱した。これにより、感圧体に銀ペーストが焼き付けられ、感圧体を挟む一対の電極を形成した。
このようにして得られた力学量センサ素子は、実施例1にて作製した試料E1と同様のものであり、本例では明確に示していないが、試料E1と同様に、温度に対する依存性が小さく、高精度に力学量を測定できるものであった。
本例の力学量センサ素子の作製方法においては、実施例1に比べて、焼成工程を少なくすることができる。そのため、簡単かつ抵抗コストで、試料E1と同様の力学量センサ素子を作製することができる。
(実施例3)
本例は、実施例1及び実施例2とさらに異なる方法で、力学量センサ素子を作製した例である。
即ち、まず実施例1及び実施例2と同様の2枚のジルコニア板及び抵抗ペーストを準備した。
次いで、一方のジルコニア板の片面に、スクリーン印刷により約10μmの厚みで抵抗ペーストを印刷し、温度100℃にて乾燥させた。続いて、このジルコニアの抵抗ペーストを印刷した面に、印刷を施していないもう一方のジルコニア板を重ね合わせ、温度850℃にて20分間焼成した。この焼成により、抵抗ペーストからバインダーや有機溶剤が蒸発し、2枚のジルコニア板(絶縁体)の間に感圧体が形成すると共に、絶縁体と感圧体が一体化し、感圧体が絶縁体に挟まれたサンドイッチ構造の力学量センサ素子を得た。
このようにして得られた力学量センサ素子は、感圧体の厚みが約10μmとなる点を除いては、実施例1の試料E1と同様のものであり、本例では明確に示していないが、試料E1と同様に、温度に対する依存性が小さく、高精度に力学量を測定できるものであった。
本例の力学量センサ素子の作製方法においては、実施例1及び実施例2とは異なり、絶縁体として用いる2枚のジルコニア板のうち、一方のジルコニア板にのみに抵抗ペーストを印刷している。そのため、実施例1や実施例2よりもさらに簡単かつ低コストで力学量センサ素子を作製することができる。
(実施例4)
本例は、有機発泡剤を均一に添加した抵抗ペーストを用いて力学量センサ素子を作製した例である。
即ち、まず、絶縁体として実施例1の試料E1と同様の2枚のジルコニア板を準備すると共に、感圧体の材料として実施例1と同様の抵抗ペーストを準備した。
次いで、この抵抗ペースト100重量部に対して、平均粒径6〜7μmの球状のアゾジカルボンアミド粒子からなる粉末を0.02重量部混合し、その後、この抵抗ペーストを2枚のジルコニア板の片面に、スクリーン印刷により約10μmの厚みでそれぞれ印刷し、温度100℃で乾燥させた。
続いて、これら2枚のジルコニア板を、抵抗ペーストを印刷した面同士で重ね合わせ、温度850℃にて20分間焼成した。この焼成における加熱昇温の課程で、抵抗ペーストからバインダーや有機溶剤が蒸発すると共に有機発泡剤が分解気化する。その結果、2枚のジルコニア板(絶縁体)の間に、多数の気孔を内部に有する感圧体が形成されると共に、絶縁体と感圧体が一体化する。このようにして、気孔を含有する感圧体が絶縁体に挟まれたサンドイッチ構造の力学量センサ素子を得た。
次いで、実施例1と同様の銀ペーストを準備し、実施例1と同様にして、これを力学量センサ素子における感圧体が露出した一対の側面に塗布し、温度850℃にて10分間加熱した。これにより、感圧体に銀ペーストが焼き付けられ、感圧体を挟む一対の電極を形成した。このようにして得られた力学量センサ素子を試料E2とした。
試料E2は、発泡剤を含有させた抵抗ペーストを用いて感圧体を形成した点を除いては、実施例1にて作製した上記試料E1と同様のものである。
この試料E2について、上記試料E1と同様にして、その荷重特性を調べたところ、217MPaの応力を印加したときにおける抵抗変化率は、−9.40%であった。即ち、試料E2の抵抗変化率は、上記試料E1に比べて、さらに約10.7%感度が向上していた。また、試料E2においては、応力に対する抵抗変化率の直線性に優れ、その非直線性(N.L)は1.5%F.Sであり、ヒステリシスは−0.01%F.Sであった。
したがって、試料E2は、より高精度に力学量を測定できるものであることがわかる。また、本例では明確に示していないが、上記試料E1と同様にして温度特性を調べたところ、試料E2は、試料E1と同様に、温度に対する依存性が小さいものであった。
また、荷重特性及び温度特性を測定した後に、上記試料E2を中央部分で切断し、その断面を走査電子顕微鏡で観察した。
その結果、厚み約18μmの感圧体の内部に、直径8〜16μmの大きさのほぼ球形の気孔が多数観察された。また、幅5mmの素子の感圧体において、そのうちの任意の幅約1mmの部分に存在する気孔の数を数えたところ、約30個の気孔が存在していた。また、切断面あるいは素子の外観に亀裂等の欠陥は観察されなかった。
このように、本例においては、有機発泡剤を用いて感圧体に球状の気孔を積極的に導入させた力学量センサ素子(試料E2)を作製した。本例によれば、この力学量センサ素子は、感度に優れ、また強度にも優れたものであることがわかる。
また、本例においては、上述のごとく、有機発泡剤を用いて、感圧体に積極的に気孔を導入させたが、例えば実施例1にて作製した上記試料E1のように発泡剤を用いずに作製した力学量センサ素子においても、抵抗ペーストに含まれる有機バインダーや溶剤が加熱昇温(焼結)時に消失すること等により球状の気孔が形成される場合がある。
実施例1にかかる、力学量センサ素子の構成を示す説明図。 実施例1にかかる、力学量センサ素子(試料E1及び試料C2)に加えられた応力と感圧体における抵抗変化率との関係を示す線図。 実施例1にかかる、力学量センサ素子(試料E1、試料C1、試料C2)の温度と感圧体における抵抗変化率との関係を示す線図。 実施例1にかかる、力学量センサ素子(試料C1)の構成を示す側面図。 実施例1にかかる、力学量センサ素子(試料C1)の構成を示す上面図。 実施例1にかかる、力学量センサ素子(試料C1)に加えられた応力と感圧体における抵抗変化率との関係を示す線図。 実施例1にかかる、力学量センサ素子(試料C2)の構成を示す説明図。
符号の説明
1 力学量センサ素子
2 感圧体
3 絶縁体
4 電極

Claims (6)

  1. 応力の印加によって電気的特性が変化する感圧体と、該感圧体の対向する2つの表面に、それぞれ一体的に形成された電気絶縁性の絶縁体とを有する積層体よりなり、積層方向に上記絶縁体に加えられた応力を上記感圧体が直接受けることができるよう構成されており、
    上記感圧体は、ガラスよりなるマトリックスの中に導電性を有する導電性粒子を分散してなり、
    上記導電性粒子は、酸化ルテニウム、又はルテニウム酸鉛、あるいはこれらの組み合わせよりなり、該導電性粒子は、上記マトリックス100重量部に対して、10〜50重量部の割合で分散されており、
    上記感圧体の厚みは、1μm〜200μmであり、
    上記絶縁体は、ZrO 2 、Al 2 3 、MgAl 2 4 、SiO 2 、3Al 2 3 ・2SiO 2 、Y 2 3 、CeO 2 、La 2 3 又はSi 3 4 よりなることを特徴とする力学量センサ素子。
  2. 請求項1において、上記力学量センサ素子は、少なくとも、0MPa〜217MPaの荷重測定が可能であることを特徴とする力学量センサ素子。
  3. 請求項1又は2において、上記感圧体には、一対の電極が配設されていることを特徴とする力学量センサ素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記感圧体には、略球状の気孔が形成されていることを特徴とする力学量センサ素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、上記力学量センサ素子は、2枚の上記絶縁体の片面にそれぞれ上記感圧体を形成した後、上記各絶縁体の上記感圧体形成面同士を重ね合わせて焼成することにより作製されていることを特徴とする力学量センサ素子。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の力学量センサ素子を製造する方法であって、
    2枚の上記絶縁体の片面にそれぞれ上記感圧体を形成した後、
    上記各絶縁体の上記感圧体形成面同士を重ね合わせて焼成することを特徴とする力学量センサ素子の製造方法。
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