以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における筒形状内側測定装置の概略図である。
図1において、本実施の形態の筒内形状測定装置は、投光装置12A、12Bと、撮像装置13A、13Bから構成される。また、被検物である被測定円筒14は、開口15A、15Bの2つの開口部を有している。本実施の形態では、第1の開口15A側に、第1の投光装置12Aと第2の撮像装置13Bとが配置され、第2の開口15B側に、第1の撮像装置13Aと第2の投光装置12Bとが配置されている。
第1の投光装置12Aと第1の撮像装置13Aは、第1の投光装置12Aから出射された第1の測定光16が測定箇所17に照射されて生じる反射光を第1の撮像装置13Aで観察できるように配置されている。また、第2の投光装置12Bと第2の撮像装置13Bは、第2の投光装置12Bから出射された第2の測定光18が測定箇所17に照射されて生じる反射光を第2の撮像装置13Bで観察できるように配置されている。
また、第1の投光装置12A、第1の撮像装置13A、第2の投光装置12B、第2の撮像装置13Bとは、それぞれ機械的干渉をしない位置に配置されている。
なお、測定箇所17に照射されるまでの第1の測定光16と測定箇所17に照射されるまでの第2の測定光18のなす角は、第1の測定光16と第2の測定光18が被測定円筒14に遮られない条件のうち、値が最小になる角度を取ることが望ましい。
これは、第1の測定光16と第2の測定光18のなす角度を小さくすることで、第1の測定光16と第2の測定光18を用いて同一の測定箇所17を観測する場合のそれぞれ異なる観測方向のなす角度を90°に近くすることと等価であり、そのようにすることで溝や凹凸から構成される測定箇所17に対して、第1の測定光16と第2の測定光18の少なくとも一方は溝や凹凸に遮られることなく投光できるようにするためである。
図2は、図1の筒内形状測定装置を矢印Aの方向から見た概略断面図である。
図2において、第1の投光装置12Aと第1の撮像装置13Aとを結ぶ直線と、第2の投光装置12Bと第2の撮像装置13Bとを結ぶ直線とは、被測定円筒14の円筒形状から定まる被測定円筒軸19と同一にならないように配置されている。
第1の投光装置12Aから出射された第1の測定光16は、測定箇所17に集光され、第1のライン状測定光20Aとなる。同様に、第2の投光装置12Bから出射された第2の測定光18は、測定箇所17に集光され、第2のライン状測定光20Bとなる。
第1のライン状測定光20Aと第2のライン状測定光20Bとは測定箇所17において互いに交差するように配置されている。測定箇所17の領域は、第1の撮像装置13A、第2の撮像装置13Bのどちらからも観察可能な位置となるように構成されている。
第1の撮像装置13Aと第2の撮像装置13Bは、それぞれ第1の画像データ合成装置21A、第2の画像データ合成装置21Bとに接続されている。第1の画像データ合成装置21Aと第2の画像データ合成装置21Bは、更に画像データ解析装置22に接続されており、画像データ解析装置22は画像表示装置23に接続されている。
ここで、それぞれの測定光16、18が測定箇所17で反射して生じる反射光の中で、正反射となる反射光を直接それぞれの撮像装置13A、13Bで撮像しないようにすることが望ましい。例えば、第1の測定光16の光軸が測定箇所17で正反射した後の光軸と、第1の撮像装置13Aの光軸とが一致しない位置に第1の撮像装置13Aを配置されること等により実現される。
これは、それぞれの投光装置12A、12Bからの出射光のパワーにも拠るが、測定箇所17の凹凸によってそれぞれのライン状測定光20A、20Bの輝度が大幅に変化するのを防ぐことを目的とするためである。
なお、それぞれの撮像装置13A、13Bの調整によって、測定箇所17で正反射した場合の反射光と正反射しない場合の反射光との輝度の変化分を吸収できる場合は、上記、それぞれの撮像装置13A、13Bと反射光の光軸との相対位置関係について考慮する必要は無い。
また、被測定円筒14は、円筒状の部材を固定することが可能な移動ステージ24に固定されており、移動ステージ24は、被測定円筒軸19の平行方向(図2の矢印Cの方向)への直進動作と、被測定円筒軸19の周方向(図2の矢印Dの方向)に関する回転動作を行うことが可能な構成となっている。更に、移動ステージ24は、矢印C方向の直線移動量と矢印D方向の回転角度を管理するスケールを備えており、所定の位置からの移動ステージ24の移動量を把握することができる。
移動ステージ24は、ステージ動作装置25に接続されており、ステージ動作装置25は、画像データ解析装置22に接続されている。
図3は、図2の筒内形状測定装置を矢印Bの方向から見た概略断面図である。
なお、図3では説明のために第2の投光装置12B、第2の撮像装置13Bは省略して開示している。
図3において、第1の投光装置12Aは、第1のレーザ光源26(第1の赤色レーザ光源26R、第1の緑色レーザ光源26G、第1の青色レーザ光源26B)と、第1のコリメートレンズ27(第1の赤色用コリメートレンズ27R、第1の緑色用コリメートレンズ27G、第1の青色用コリメートレンズ27B)と、第1のシリンドリカルレンズ28と、第1のプリズムミラー29と、第1の偏光素子30とから構成されている。
ここで、各色用コリメートレンズとして記載しているが、これは、入射した各色の波長域の光を平行光にするためのレンズである。
また、第1のプリズムミラー29は、入射した赤色、青色、緑色の周波数毎の光の光軸を揃えるために、第1のプリズムミラー赤色反射面29R、第1のプリズムミラー青色反射面29Bを有する。
第1の撮像装置13Aは、第1の撮像素子31(第1の赤色用撮像素子31R、第1の緑色用撮像素子31G、第1の青色用撮像素子31B)と、第1の分光プリズム32と、第1の結像レンズ33と、第1の対物レンズ34と、第1の偏光フィルタ35とから構成されている。ここで、第1の分光プリズム32は、入射した光を赤色、青色、緑色の周波数毎の光に分割するために、第1の分光プリズム赤色反射面32R、第1の分光プリズム青色反射面32Bを有する。
第1の投光装置12A内の第1の赤色レーザ光源26R、第1の緑色レーザ光源26G、青色レーザ光源26Bからそれぞれ出射された光は、それぞれ第1の赤色用コリメートレンズ27R、第1の緑色用コリメートレンズ27G、第1の青色用コリメートレンズ27Bで屈折して平行光となり、第1のプリズムミラー29に入射する。第1の赤色レーザ光源26Rからの光は第1のプリズムミラー赤色反射面29Rで反射され、第1の青色レーザ光源26Bからの光は第1のプリズムミラー青色反射面29Bで反射され、第1の緑色レーザ光源26Gからの光は第1のプリズムミラー29を直進する。第1のプリズムミラー29からのそれぞれの光は、光軸を等しくして第1のシリンドリカルレンズ28を通過して、第1の測定光源光軸36方向に平行な方向に集光される。
また、第1のプリズムミラー29に第1のプリズムミラー赤色反射面29R、第1のプリズムミラー青色反射面29Bを設けたが、周波数毎の光の光軸を揃えるという目的を満たすならば、これらの内いずれか一方と置き換えて緑色反射面を設けても良い。
測定箇所17を反射した光は第1のライン状測定光37となる。具体的には、第1の赤色レーザ光源26Rから第1のプリズムミラー29を介して出射された第1の赤色測定光16Rは、測定箇所17においてY方向に平行な細い第1の赤色ライン状測定光37Rとなる。同様に、第1の緑色レーザ光源26Gからの第1の緑色測定光16Gは、第1の緑色ライン状測定光37Gとなり、第1の青色レーザ光源26Bからの第1の青色測定光16Bは、第1の青色ライン状測定光37Bとなる。
第1のシリンドリカルレンズ28は、例えばアッベ数が40以下の光学材料など、波長分散の大きな光学材料を用いる。このような材料を用いることにより、第1の赤色測定光16R、第1の緑色測定光16G、第1の青色測定光16Bのそれぞれの集光位置を第1の測定光源光軸36方向で変化させることができる。
このようにして、測定箇所17に照射されたそれぞれのライン状測定光37が測定箇所17付近にそれぞれ照射された像を、第1の撮像装置13Aで撮像する。
具体的には、第1の赤色ライン状測定光37Rが測定箇所17付近に照射された像は、測定箇所17付近にて反射し、第1の偏光フィルタ35、第1の対物レンズ34、第1の結像レンズ33を介して第1の分光プリズム32に入射する。第1の赤色ライン状測定光37Rが測定箇所17付近で反射した光は、第1の分光プリズム赤色反射面32Rで反射され、第1の赤色用撮像素子31R上に結像する。同様に、第1の緑色ライン状測定光37Rが測定箇所17付近で反射した光は、第1の分光プリズム32を直進して第1の緑色撮像素子31G上に結像し、第1の青色ライン状測定光37Bが測定箇所17付近で反射した光は、第1の分光プリズム青色反射面32Bで反射され、第1の青色用撮像素子31B上に結像する。
また、第1の分光プリズム32に第1の分光プリズム赤色反射面32Rと第1の分光プリズム青色反射面32Bを設けたが、周波数毎の光に分割するという目的を満たすならば、これらの内いずれか一方と置き換えて緑色反射面を設けても良い。
第1の赤色用撮像素子31Rは、第1の結像レンズ33と第1の対物レンズ34を通して測定箇所17を観察する場合に、第1の赤色用撮像素子31Rの中央に第1の赤色ライン状測定光37Rが結像するように配置されている。同様に、第1の緑色用撮像素子31Gは第1の緑色用撮像素子31Gの中央に第1の緑色ライン状測定光37Rが結像するように配置され、第1の青色用撮像素子31Bは、第1の青色用撮像素子31Bの中央に第1の青色ライン状測定光37Bが結像するように配置される。3つの撮像素子は個別に光軸合わせがされている。これにより、1つの撮像素子に対して1つの波長光のライン状測定光だけを捉えることが可能になる。
このような構成とすることにより、1つの撮像装置に対して1種類の波長光のライン状測定光だけを捕らえることが可能になる。
第1の偏光素子30の偏光軸と、第1の偏光フィルタ35の偏光軸の向きは一致させておく。
第1の赤色用撮像素子31R、第1の緑色用撮像素子31G、第1の青色用撮像素子31Bは、それぞれ第1の画像データ合成装置21Aに接続されている。第1の画像データ合成装置21Aにて、第1の赤色用撮像素子31R、第1の緑色用撮像素子31G、第1の青色用撮像素子31Bから送られた画像データを1つのデータにまとめる。
第1の画像データ合成装置21Aは、更に第1の画像表示装置23に接続されており、図3の第1の画像表示装置23内に示したように、第1のライン状測定光37が測定箇所17に照射されている像を表示する。
ここで、第1の投光装置12Aと第1の撮像装置13Aとは、被測定円筒軸19を挟んでY軸方向にずれた位置に存在する。
図4に、図3の筒内形状測定装置の斜視図を示す。
図4は、第1の投光装置12Aと第1の撮像装置13Aとの位置関係を明確にするために示したものであり、図3とは異なる方向から測定箇所17付近及び、第1の投光装置12Aと第1の撮像装置13Aとの位置関係の概略を示す図である。
図5は、図2の筒内形状測定装置を矢印Bの方向から見た概略断面図である。ただし、図5では説明のために第1の投光装置12A、第1の撮像装置13Aは省略して開示している。また、図5において、図3と同じ符号に関しては、説明を省略する。
図5において、第2の投光装置12Bは、第2の赤色レーザ光源38R、第2の緑色レーザ光源38G、第2の青色レーザ光源38Bと、第2の赤色用コリメートレンズ39R、第2の緑色用コリメートレンズ39G、第2の青色用コリメートレンズ39Bと、第2のシリンドリカルレンズ40と、第2のプリズムミラー41と、第2の偏光素子42とから構成されている。また、第2のプリズムミラー41は、入射した赤色、青色、緑色の周波数毎の光の光軸を揃えるために、第2のプリズムミラー赤色反射面41R、第2のプリズムミラー青色反射面41Bを有する。
第2の撮像装置13Bは、第2の赤色用撮像素子43R、第2の緑色用撮像素子43G、第2の青色用撮像素子43Bと、第2の分光プリズム44と、第2の結像レンズ45と、第2の対物レンズ46と、第2の偏光フィルタ47とから構成されている。ここで、第2の分光プリズム44は、入射した光を赤色、青色、緑色の周波数毎の光に分割するために、第2の分光プリズム赤色反射面44R、第2の分光プリズム青色反射面44Bを有する。
第2の赤色レーザ光源38Rから第2のプリズムミラー41を介して出射された第2の赤色測定光18Rは、測定箇所17においてY方向に平行な細い第2の赤色ライン状測定光48Rとなる。同様に、第2の緑色レーザ光源38Gからの第2の緑色測定光18Gは、第2の緑色ライン状測定光48Gとなり、第2の青色レーザ光源38Bからの第2の青色測定光18Bは、第2の青色ライン状測定光48Bとなる。
ただし、第2の偏光素子42の偏光軸と第2の偏光フィルタ47の偏光軸の向きは、第1の偏光素子30と第1の偏光フィルタ35の向きと直交するように調整しておく。
これにより、第1の測定光16は第2の撮像装置13Bに入射する前に第1の偏光フィルタ35に遮られるので、第1の測定光16が第2の撮像装置13Bに入射する、又は逆に第2の測定光18が第1の撮像装置13Aに入射することにより、それぞれの撮像装置に計測に用いない光が検出されることで生じる形状測定データの精度低下を防止できる。
まず、互いに異なる3波長を用いた測定系に用いて、筒内面形状の深さ方向に測定範囲を広げる方法について、図6〜図9を用いて説明する。
図6は、図3の測定箇所17付近を拡大した模式図である。
図6において、測定箇所17付近にある溝構造54の形状データを取得する場合、第1の赤色ライン状測定光37R、第1の緑色ライン状測定光37G、第1の青色ライン状測定光37Bのそれぞれの筒内面への投影像を撮像光学系で観察するが、図4で示したように波長の異なる測定光の像は、それぞれ集光位置が異なるため、撮像素子はライン状測定光の種類に応じて使用する必要がある。
図6において、第1の撮像装置13Aは、第1の赤色用撮像素子31Rの中央付近に第1の赤色ライン状測定光37Rが結像するように調整されており、同様に第1の緑色用撮像素子31Gの中央付近に第1の緑色ライン状測定光37Gが、第1の青色用撮像素子31Bの中央付近に第1の青色ライン状測定光37Bが結像するように調整されている。
そのため、被測定円筒14の内面形状を第1の撮像装置13Aで観察する場合、図6において、第1の赤色用撮像素子31Rで観察している筒内面形状高さ範囲は第1の赤色観察領域56Rとなり、同様に第1の緑色用撮像素子31Gで観察している筒内面形状高さ範囲は第1の緑色観察領域56G、第1の青色用撮像素子31Bで観察している筒内面形状高さ第1の範囲は青色観察領域56Bとなる。
ここで第1の赤色観察領域56R、第1の緑色観察領域56G、第1の青色観察領域56Bは、高さ方向(図12のh方向)に10〜15%程度に重なるように第1の撮像装置13Aを調整しておく。
図7は、実施の形態1における3つの筒内面形状データの結合状況を示す図である。図7(a)は、実施の形態1における3つの波長のそれぞれの測定データを示す図であり、図7(b)は、図7(a)で得られた3つのデータの結合状況を示す図であり、図7(c)は、図7(b)で得られた結合データを1つのデータに集約した図である。
図7(a)において、3つの撮像素子画像データから算出された筒内形状データを、それぞれ赤色形状データ57R、緑色形状データ57G、青色形状データ57Bとすると、赤色形状データ57R(WR、hR)、緑色形状データ57G(WG、hG)、青色形状データ57B(WB、hB)が得られる。
第1の撮像装置13Aの調整やそれぞれの撮像素子の設置誤差により、各波長の撮像素子で観察している領域が異なるため、赤色形状データ57R(WR、hR)、緑色形状データ57G(WG、hG)、青色形状データ57B(WB、hB)の間にはh(高さ)座標にもW(位置)座標にもオフセットが含まれている。赤色形状データ57R(WR、hR)に対する緑色形状データ57G(WG、hG)のオフセット量を(WP、hP)とし、赤色形状データ57R(WR、hR)に対する青色形状データ57B(WB、hB)のオフセット量を(WQ、hQ)とする。赤色形状データ57R、緑色形状データ57G、青色形状データ57Bの相対的な関係を図7(b)に示す。緑色形状データ57G(WG、hG)、青色形状データ57B(WB、hB)にオフセット量(WP、hP)、(WQ、hQ)を加えて(WG+WP、hG+hP)、(WB+WQ、hB+hQ)とすることで赤色形状データ57R、緑色形状データ57G、青色形状データ57Bをまとめて、図7(c)に示すように観察領域の筒内面形状データ(W、h)とすることができる。ここで、赤色形状データ57Rと、緑色形状データ57G、青色形状データ57Bとを測定箇所17の被検面の高さ方向(被検面の深さ方向)に相対的にずらして重ね合わせる。そして、そのずらす量は色毎の光の焦点距離に応じて決定し、焦点距離が深いほど、深さ方向に深くなるようにずらす。
図8は、実施の形態1における3波長の光源を用いた測定の処理フローを示す図である。図8における具体的な形状データ取得の詳細は後述するため、ここでは省略する。
図8において、まずステップS1〜ステップS3において、第1の測定系を用いて被測定円筒14の筒内面形状データを取得する。この時、第1の赤色ライン状測定光37R、第1の緑色ライン状測定光37G、第1の青色ライン状測定光37Bの筒内面への投影像を第1の撮像装置13Aで撮像することにより、第1の赤色用撮像素子31R、第1の緑色用撮像素子31G、第1の青色用撮像素子31Bから測定箇所17の形状を反映した画像データが得られ、画像データから赤色形状データ57R(WR、hR)、緑色形状データ57G(WG、hG)、青色形状データ57B(WB、hB)が得られる。
次に、ステップS4、ステップS5において、緑色形状データ57G(WG、hG)、青色形状データ57B(WB、hB)に赤色形状データ57R(WR、hR)に対するオフセット量(WP、hP)、(WQ、hQ)を加えてオフセット補正後の緑色形状データ57G’(W’G、h’G)=(WG+WP、hG+hP)、オフセット補正後の青色形状データ57B’(W’B、h’B)=(WB+WQ、hB+hQ)を得る。
このようにして得られた赤色形状データ57R(WR、hR)とオフセット後の緑色形状データ57G’(W’G、h’G)とオフセット後の青色形状データ57B’(W’B、h’B)を、ステップS6において、図7に示すようにそれぞれ重ね合わせることで実際の表面形状を形成し、測定を終了する。
以上のように、3波長の光源を測定系に用いて筒内面形状を測定することにより、単色の光源を用いて同様の測定を行って筒内面形状データを得る場合に比べて、高さ方向の測定範囲が約3倍に広がり、筒内面形状の高さ方向の測定範囲が広くても測定光学系を筒内面形状高さに合わせて再調整したりする必要が無いため、測定時間を増加させることなく、凹凸の大きな筒内面形状の測定を行うことができる。
また、単色の光源を用いて凹凸の大きな筒内面形状を測定する場合に、測定光の焦点深度を広くすることによって高さ方向の測定範囲を広くして測定する手段があるが、そうするとライン状測定光の幅も広くなってしまい筒面内形状の測定分解能が損なわれてしまう。しかし、3波長の光源を測定系に用いて筒内面形状を測定し、それぞれの波長について注目すれば、意図的に焦点深度を深くすること無く焦点深度を保つことが可能であり、筒面内形状の測定分解能を損なうことなく筒内面形状の高さ方向の測定範囲を広げることができる。
次に、測定箇所17へのライン状測定光の投影像から、測定箇所17の形状データを得る方法について説明する。
図9に、測定箇所17付近のライン状測定光の投影像の模式図を示す。
ここで、図9(a)は測定箇所17付近のライン状測定光の投影像の斜視図であり、図9(b)は測定箇所17付近のライン状測定光の投影像の断面図である。
図9(a)において、測定箇所17に存在する高さhのリブ構造49のリブ長手方向に沿って、投光装置から角度θで入射した測定光50が幅Lのライン状測定光51を形成している。ライン状測定光51は、角度ωで反射して撮像装置に入射する。
ここで、投光装置からの測定光50の光軸の存在する平面52aと、撮像装置に入射する光の光軸の存在する平面52bは、角度φを有する。
ここで、図9(b)の形状で示される画像データが、図9(a)のライン状測定光51の投影像として画像表示装置23に表示されているとする。破線で示された画像領域53は、撮像装置に組み込まれている撮像素子の大きさに相当する。
画像領域53内に表示される画像データは、図3に示す第1の青色撮像素子31B、第1の赤色用撮像素子31R、第1の緑色用撮像素子31Gの内のどの素子から得られた画像データに対しても、形状データを得る方法は同様の方法を用いる。
撮像装置の像倍率をMとすると、画像表示装置23から得られた像から、リブ構造49の高さhは、リブ構造49の上段部分と下段部分からの反射像に相当する画像データの高低差をHと仮定すると、(式1)が成り立つ。
リブ構造49の幅をWとし、リブ構造49の上段部分からの反射像に相当する画像データの幅をIとすると、(式2)が成り立つ。
図9において、それぞれの画像を第1の画像データ合成装置21A、第2の画像データ合成装置21Bを経て画像データ解析装置22に取り込んだ後、画像データから形状データを得るまでの処理は、画像データ解析装置22によって行われる。得られた画像データや画像データ解析装置22による処理結果は画像表示装置23に表示される。
図10は、実施の形態1における画像データから形状データを得る処理フローを示す図である。
図10において、まず、ステップS7で、被測定円筒14の筒内面へ投影した測定光の反射像を画像表示装置23に表示する。
次に、ステップS8で、画像データの縦方向(画面垂直方向)の画素の中で最大の輝度値を持つ画素座標を、画面端の画素縦方向列から順に各画素縦方向の列について求める。この求めた画素の縦方向における最大値の位置を、座標(I、H)とする。
次に、ステップS9で、抽出した縦方向の最大輝度を持つ画素の輝度と、予め設定しておいた閾値とを比較する。
その後、抽出した輝度最大値と予め設定した閾値との関係によって、異なる処理を行う。
輝度最大値が閾値以上となった場合は、ステップS10において、輝度最大値の画素を縦方向画素列の最大値(I、H)とする。
その後、ステップS11において、前述の(式1)、(式2)の計算式を用いて、画素の最大値の位置(I、H)を、実際に測定光が投影されている点の高さ情報(W、h)に変換する。
逆に、輝度最大値が閾値より小さい場合は、ステップS12において、輝度最大値の画素において測定光の反射像が得られなかったと判断し、筒内形状データが取得できない欠損点と定める。
ステップS10とステップS11、若しくはステップS12を行った後、ステップS13において、得られた画像の縦方向画素列の全てについて処理を行ったかどうかを判断する。画素列の全てについて処理を行っていた場合は、処理を終了し、未だ処理を行っていない画素列が存在する場合は、ステップS14において、次の画素縦方向列へ処理を移し、ステップS8からの一連の動作を繰り返す。
このようにして、取得した画像データの全ての縦方向の画素列について処理を行うと、図9に示す画像データから測定光が投影されている箇所の形状情報を得ることができる。
次に、被測定円筒14内の全面の形状を測定する方法について説明する。
図2で説明したように、被測定円筒14は移動ステージ24に固定されているため、移動ステージ24が有する直進動作機構と回転動作機構を組み合わせて動作させることにより、第1の測定光16と第2の測定光18を筒内面の全面に走査させることができる。
図11は、被測定円筒14内面における座標の取り方を示す図である。
図11(a)は、被測定円筒14内面における座標を示す図であり、図11(b)は、図11(a)の被測定円筒14内面の展開外略図である。
図11(a)において、被測定円筒14内面における座標の取り方を説明するために、切断線C−C’を定義し、切断線C−C’端近傍の角部分をD、D’、E、E’とする。ここで、Dを原点として切断線C−C’に沿った方向をX軸とし、角Dから角D’まで円筒の縁に沿った方向をY軸とすると、図11(b)に示すように、円筒面である筒内面をX軸、Y軸で定義される平面で示すことができる。図11(a)で示しているD、D’、E、E’と図11(b)で示しているD、D’、E、E’は同じ位置を示している。
図11(b)に示す被測定円筒14内面全体の形状データを得る方法について説明する。
事前に画像データ解析装置22で決めておいた座標数値をステージ移動装置25に伝え、画像データ解析装置22からの指示に従い、ステージ動作装置25は、移動ステージ24を直進動作と回転動作させる。画像データ解析装置22はステージ移動装置25を通じて移動ステージ24の直進動作による移動量(図11(a)、図11(b)にあるX軸方向の動作に相当)と、回転動作(図11(a)、図11(b)にあるY軸方向の動作に相当)による回転量を取得することができる。そのため、図10に示した処理フローを経て得られた被測定円筒14内面の形状データ(W、h)と被測定円筒14内面上の位置(X、Y)との関連付けができ、被測定円筒14内面の全体の形状データ(W、h、X、Y)が得られる。
次に、2組の測定系を用いて被測定円筒14内面の形状データを、被測定円筒14全面にわたり欠損なく取得する方法について、図12(a)、図12(b)を用いて説明する。
図12は、実施の形態1における測定系と被測定物構造の位置関係を示す図である。
図12(a)は、実施の形態1における光切断法で測定光が見えなくなる場合を示す図であり、図12(b)は、実施の形態1における光切断法のデータ補完を示す図である。
被測定円筒14内の形状測定を前述の方法で測定する場合に、1つの測定系から得られた結果だけを用いると、測定光の入射角度と被測定円筒14の内面上の構造(リブ、溝など)との位置や角度関係が原因となって、撮像光学系から見たときにライン状測定光が構造物の陰になり見えない場合が想定される。例えば図12(a)のように、溝構造54上に第1のライン状測定光37が投影された場合、第1のライン状測定光37の破線になっている部分は溝構造54の影になってしまい撮像光学系から観察できない。このような場合、観察できない部分の形状データは前述の欠損点となり、形状データが測定できない。
そのような場合には、1つの測定系を用いているのみでは、影になっている部分の形状データは得られない。しかし、図2のように配置された2組の測定系を、それぞれ逆方向から測定光を入射する構造とすると、第1の測定系から測定したときに構造物に隠れる箇所を、第2の測定系から測定すれば、第1の測定系から測定したときに構造物に隠れてしまう箇所の測定が可能である。
図12(b)に、2つの測定系を用いて被測定円筒14の内面の形状データを測定する場合の流れを示す。すでに述べた形状データ取得の詳細は省略してある。
以上のような形状データに対する処理を、筒内面で形状データを取得した位置(X、Y)全てについて行うことにより、筒内面上にリブ・溝などの形状があっても形状データを被測定円筒14の内面全面に渡って取得することが可能である。
例えば、図12(b)のように、測定したい筒内面形状データ55に対して第1の測定系からでは筒内面形状データ55a(粗い破線)しか得られないが、第2の測定系から測定すれば筒内面形状データ55b(細かい破線)が得られる。2つの測定系を用いて被測定円筒14の筒内面の形状データを測定する処理を行うと、筒内面形状データ55aと筒内面形状データ55bのお互いのデータで足りない部分を補うことになるので、測定データ漏れのない筒内面形状データ55が得られる。
図13に、実施の形態1における光切断法のデータ補完の処理フロー図を示す。
図13において、ステップS15、ステップS16に示すように、移動ステージ24を動作させ、被測定円筒14の内面の形状データを取得する。その際、図2のように配置された2組の測定系を用いて被測定円筒14の内面の形状データを取得するので、第1の測定系で形状データを取得すると同時に、同位置の形状データを第2の測定系によって取得することができる。このように形状データ取得の操作を行うと、第1の測定系から得られた筒内形状データ(W、h1、X、Y)と、第2の測定系から得られた筒内形状データ(W、h2、X、Y)が同時に得られる。先に説明したように、筒内面形状によっては、第1の測定系では形状データが取得できず、h1が欠損点となる場合や、第2の測定系では形状データが取得できず、h2が欠損点となる場合が存在する。
次に、ステップS17で、被測定円筒14の内面で形状データを取得した位置(X、Y)全てについて、第1の測定系から得られた筒内形状データ(W、h1、X、Y)と、第2の測定系から得られた筒内形状データ(W、h2、X、Y)を評価する。
第1の測定系から得られたh1が欠損点となる場合は、ステップS18に進み、第2の測定系から得られた筒内形状データ(W、h2、X、Y)を筒内面位置における形状データ(W、h、X、Y)として採用する。
第2の測定系から得られたh2が欠損点となる場合は、ステップS19に進み、第1の測定系から得られた筒内形状データ(W、h1、X、Y)を筒内面位置における形状データ(W、h、X、Y)として採用する。
第1の測定系から得られたh1と第2の測定系から得られたh2とが共に欠損点でない場合は、ステップS20に進み、その筒内面位置における形状データ(W、h、X、Y)の高さデータhを、第1の測定系での測定結果と第2の測定系での測定結果との平均値、h=(h1+h2)/2として平均化したものを採用する。
このようにして得られたデータを、ステップS21に示すように、筒内面の全ての位置について行い、測定を終了する。
なお、第1の測定系から得られたh1と第2の測定系から得られたh2とが共に欠損点の場合はそのままでは測定不能であるとし、ステップS22において、投光装置又は撮像装置のうち少なくとも一方の位置を変更した後に、再度測定を行うことで、測定可能になる場合もある。
なお、図13の流れの中で、第1の測定系から得られた筒内形状データ、第2の測定系から得られた筒内形状データのどちらも欠損点になっていない場合は、加重平均のような単純平均以外の平均化手段を取っても良いし、h1、h2のどちらかの高さデータを代表として採用させても良い。
次に、今までの方法をまとめて行う場合の処理フローについて説明する。
図14は、実施の形態1における測定の処理フローを示す図である。
図14において、ステップS23〜ステップS27は、図8のステップS1〜ステップS5と同様であるので、説明を省略する。
ステップS23〜ステップS27を行った後、ステップS28において、赤色形状データ57R(WR、hR)、オフセット補正後の緑色形状データ57G’(W’G、h’G)、オフセット補正後の青色形状データ57B’(W’B、h’B)の全ての形状データについて、位置Wの最大値(Wmax)とWの最小値(Wmin)を探す。
次に、ステップS29において、Wmin≦W≦Wmaxである位置データを取得した全てのWについて、欠損点でない高さデータ(hR、h’G、h’Bのいずれか)が存在するか調べる。
ここで、位置Wに対応する高さデータhR、h’G、h’Bの全てが欠損点の場合は、ステップS30にて、位置Wは欠損点と定義する。
また、位置Wに対応する高さデータhR、h’G、h’Bのうち、1つ以上欠損点でない高さデータが存在する場合は、ステップS31にて、それら欠損点でない高さデータの平均値hを位置Wの高さデータとする。
ステップS32にて、この操作を、取得した全ての形状データの取りうる位置W(Wmin≦W≦Wmax)について行う。
以上より、ステップS33にて、データ取得時には別々に取得した、赤色形状データ57R、緑色形状データ57G、青色形状データ57Bにオフセットを加えた状態で重ね合わせることで、測定箇所17の筒内面形状データ(W、h)として得ることができる。
次に、筒内回転方向の形状データの補正方法について説明する。
先に、図2において、筒内面の形状データを取得する際には被測定円筒14を移動ステージ24に固定することを説明したが、被測定円筒軸19と移動ステージ24の回転軸は取り付け時の誤差により一致しない可能性がある。
被測定円筒軸19と移動ステージ24の回転軸が一致していない(偏芯が生じている)ときには、移動ステージ24で被測定円筒14を被測定円筒軸19の周りに回転させると、被測定円筒14は偏芯を伴う回転をする。
そうすると第1の測定系、第2の測定系で取得した筒内面の被測定円筒軸19周りの回転方向の形状データには偏芯の影響が加わる。被測定円筒軸19の周方向回転角をΘ、被測定円筒軸19と移動ステージ24の回転軸が一致しているときの角度Θの位置における円筒内面の高さをH(Θ)、被測定円筒軸19と移動ステージ24の回転軸の偏芯量をA、偏芯の角度方向をδ、偏芯の影響を含んだ円筒内面の高さをH’(Θ)とする。偏芯が高さ計測データにあたえる影響は、偏芯量Aが被測定円筒14の直径の10%以下程度である量であれば、(式3)で表すことができる。
従って、被測定円筒軸19の回転方向に対する高さデータから、(式3)の第2項を引くことで、被測定円筒軸19と移動ステージ24の回転軸の偏芯の影響を取り除くことが可能である。ここで、A、δは数学的処理(例えばフーリエ変換)を用いて算出することができる。
以上のような方法と手順により、筒形状部品の内面形状を、高さ(厚み)方向に幅広い測定範囲でかつ高い測定精度を保ち、筒内面全面に渡り漏れなく測定することを可能にする。
なお、本実施の形態では色毎に分光することで表面形状を測定したが、ここで分光する基準としては、色に限らず波長を基準とすることもできる。
なお、本発明は、その被検物を管形状に限定せず、一般的な3次元形状測定用途にも適用できる。