JP4774773B2 - トリアルキルガリウムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法等を用いたエピタキシャル結晶成長によりGaNのような化合物半導体薄膜を形成するための材料として有用なトリアルキルガリウムの製造方法に関する。
近年の携帯電話や光通信技術の進展により、化合物半導体の需要は、携帯電話に使用される高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)、ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT: Heterojunction Bipolar Transistor)などの高速電子デバイス、光通信やDVDなどに使用される半導体レーザー、ディスプレーに使用される白色・青色の超高輝度LEDなどの光デバイス等の用途で急速に伸びている。
一般に化合物半導体の原料となる有機金属化合物(MO: Metal Organics)としては、周期律表第II族元素やIII族元素のアルキル金属化合物、特にメチル化合物やエチル化合物が多用されている。中でも周期律表第III族のアルキルガリウムは、窒素、砒素のような周期律表第V族の元素とともに化合物半導体をMOCVDで製造するための材料としての需要が大きい。
アルキルガリウムの代表的な合成方法として、ガリウム−マグネシウム混合物またはガリウム−マグネシウム合金とハロゲン化アルキルとを反応させる方法が知られている。この方法は、出発原料として、入手し易い市販品である高純度の金属ガリウム及び金属マグネシウムをそのまま使用することができ、また取扱いに手間を要する試薬を必要としない点で有用である。
これらの方法の報告例を以下に示す。従来の方法では、ガリウムーマグネシウム混合物を原料とする方法に比べて、ガリウムーマグネシウム合金を原料とする方法の方が高収率でトリアルキルガリウムが得られることから、ガリウムーマグネシウム合金を用いた報告例の方が多い。
特許文献1(米国特許第5248800号公報)には、ガリウム−マグネシウム合金とヨウ化アルキルとの反応によりトリアルキルガリウムを合成する方法において、Mg/Gaモル比=1.6〜2.4となる範囲にすることにより、80〜90%という高収率でトリアルキルガリウムが得られることが記載されている。また、特許文献1には、ガリウムーマグネシウム混合物を用いた反応によるトリアルキルガリウムの収率は15%である旨が記載されている。即ち、特許文献1は、ガリウムーマグネシウム合金を原料とする方法の方がガリウムーマグネシウム混合物を原料とする方法に比べて、高収率でトリアルキルガリウムが得られることを明示している。
また、特許文献2(英国特許第2123423号公報)にも、ガリウムーマグネシウム合金とヨウ化アルキルとを、エーテル化合物存在下で反応させることによりトリアルキルガリウム化合物を合成する方法が記載されている。
しかし、ガリウムーマグネシウム合金を用いる方法では、加熱により合金を調製する工程が余分に必要であるとともに、均一なガリウムーマグネシウム合金を調製するのが困難である。また、これに起因してトリアルキルガリウムの収率の再現性が得られないという報告もある(非特許文献1、2) ) (A.C.Jones,D.J.Cole-Hamilton,A.K.Holliday,M.J.Mahmad,J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,1047(1983),K.B.Starowieski,K.J.Klabunde,Appl.Organomet.Chem.,,219(1989))。
従って、製造工程の単純化及び安定した生産性の観点から、より単純な原料であるガリウムーマグネシウム混合物を用いることが望まれる。
この点、特許文献3(ソビエト連邦国特許第388563号公報)には、ガリウムーマグネシウム混合物又はガリウム-マグネシウム合金とハロゲン化アルキルとを、ブチル-、イソアミル、又はエチル-エーテルのようなエーテル化合物に代表されるルイス塩基の存在下で反応させることによりトリアルキルガリウム化合物を合成することが記載されている。
また、非特許文献3(V.I.Bregadze,L.M.Golubinskaya,B.I.Kozyrkin,J.Clust.Sci.,13,631(2002))には、ガリウム−マグネシウム混合物とヨウ化メチルとを、イソアミルエーテルの存在下で反応させることにより、トリメチルガリウムが80〜90%という高収率で得られることが記載されている。非特許文献3では、粉末状マグネシウムを使用している。
これらの文献に記載された方法では、反応溶媒としてエーテル化合物を用いている。溶媒としてエーテル化合物を用いると反応性が向上し、ひいては高収率が得られる。その一方で、エーテル化合物は合成されたアルキルガリウムに配位し付加体を形成する。エーテル付加体はエーテルの種類によっても異なるが、多くの場合、蒸留等の操作によってもアルキルガリウムとの分離が困難なため高純度の有機金属化合物が得られ難い。エーテル化合物が配位した付加体を含む有機金属化合物を原料としてMOCVDにより化合物半導体を製造すると、結晶成長過程で酸素を同伴することになり、製造された化合物半導体の電気特性を低下させる。このように、反応溶媒としてエーテル化合物を用いることには一長一短がある。
この点、非特許文献4(L.I.Zakharkin,V.V.Gavrilenko,N.P.Fatyushina,Russ.Chem.Bull.,46,379(1997))には、ガリウム−マグネシウム−ヨウ化メチル混合物を、加熱下で共粉砕することにより直接トリメチルガリウムを合成する方法が記載されている。また、非特許文献4には、溶媒の非存在下またはヘキサンの存在下で、ガリウム−マグネシウム混合物に少量のヨウ素を共存させ真空加熱した後に、ヨウ化エチルと反応させることによりトリエチルガリウムを合成する方法が記載されている。トリエチルガリウムの収率は、ガリウム−マグネシウムの合金を用いても又は混合物を用いても、またヘキサン存在下で行っても又は無溶媒で行っても殆ど同じである。
しかし、この方法では、原料混合物を粉砕してトリアルキルガリウムを合成する場合は粉砕機や粉砕用ボールなどの材料磨耗により、またヨウ素を添加する場合にはヨウ素の混入により、それぞれトリアルキルガリウムを高純度に精製し難くなる恐れがある。
また、特許文献4(特開平1−301684号公報(特願昭63−130180号公報))には、ガリウムーマグネシウム合金を用いてトリアルキルガリウム化合物を合成する方法において、反応溶媒であるエーテル化合物の使用量をマグネシウムに対して等量以下としてもトリアルキルガリウムを合成可能であることが記載されている。
また、特許文献5(特開平3−127795号公報(特願平1−263268号公報))には、ガリウムーマグネシウム合金を用いてトリアルキルガリウム化合物を合成する方法において、反応溶媒として炭化水素を用い、さらにマグネシウムに対して等量以下のエーテル化合物を使用して、トリアルキルガリウムを合成可能であることが記載されている。
このように、反応溶媒として炭化水素化合物を用いる方法も従来知られている。炭化水素化合物にはエーテル化合物のような難点はない。
しかし、炭化水素を用いる場合には以下のような難点がある。即ち、ガリウムーマグネシウム混合物またはガリウムーマグネシウム合金とハロゲン化アルキルとの反応により、トリアルキルガリウムを生成する反応は、下記式(1)に従うと考えられる。
2Ga+aMg+(a+3)RX
→2GaR+3MgX+(a−3)RMgX (1)
(式中、Rはアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。aは正の整数を示す。)
このように、トリアルキルガリウムの生成にはハロゲン化アルキルマグネシウム(RMgX)すなわちグリニャール試薬が関与しているものと考えられる。
ここで、“Comprehensive Organometallic Chemistry,The Synthesis,Reactions and Structures of Organometallic Compounds Vol.1”,ed.S.G.Wilkinson,F.G.A.Stones,E.W.Abel,Pergamon Press Ltd.,(1982),Chapter 4には、反応溶媒としては一般にエーテル化合物やアミン化合物に代表されるルイス塩基を用いるが、これらの溶媒はトリアルキルガリウムと付加体を形成し易いこと、さらにトリアルキルガリウムと付加体を形成しにくい炭化水素化合物を反応溶媒として用いると、グリニャール試薬の生成性が著しく低下することが記載されている。
このように、溶媒として炭化水素化合物を使用することにも一長一短がある。
さらに、これら従来の方法は、その殆どがハロゲン化アルキルとして最も反応性の高いヨウ化アルキルを用いているのが特徴である。ヨウ化アルキルは反応性が高いという長所はあるが、副反応として下記式(2)に示すようなウルツ型カップリング反応が起き易い。
2RI+Mg→R−R+MgI (2)
(式中、Rはアルキル基を示す。)
また、ヨウ化アルキルは、臭化アルキルや塩化アルキルに比較して、高価である。さらに、生成するトリメチルガリウムの沸点とヨウ化メチルの沸点とが近接しているため、トリメチルガリウムの分離精製が難しいという難点がある。
ヨウ化アルキルが抱えるこのような問題点を解決する試みとして、特許文献6(特開平3−123784号公報(特願平1−263267号公報))は、ガリウムーマグネシウム合金とハロゲン化メチルとの反応によりトリメチルガリウムを合成する方法において、ハロゲン化アルキルとして、ヨウ化メチルに臭化メチルを混合することにより、反応必要当量よりヨウ化メチル使用量を少なくすることを開示している。
しかし、臭化ガリウムは塩化ガリウムに比べて反応性が高いが、オゾン層破壊物質として指定されており、1999年以降段階的に使用が削減されている。このように、ヨウ化アルキル及び臭化アルキルには一長一短がある。
そこで、塩化アルキルについて述べれば、塩化アルキルには、ヨウ化アルキル及び臭化アルキルの有する難点はないが、塩化アルキルはマグネシウムに対する反応性が非常に低い。
このことは、前述した “Comprehensive Organometallic Chemistry,The Synthesis,Reactions and Structures of Organometallic Compounds Vol.1”,ed.S.G.Wilkinson,F.G.A.Stones,E.W.Abel,Pergamon Press Ltd.,(1982),Chapter 4に、グリニャール試薬の生成は用いるハロゲン化アルキルのハロゲン種及び反応溶媒種により大きく依存し、ハロゲン種については一般にヨウ素>臭素>塩素>フッ素の順でその反応性が低くなると記載されていることからも明らかである。
さらに、M.J.S.Gynane,I.J.Worral,J.Organomet.Chem.,40,C59(1972)に記載されているように、ガリウムに対するハロゲン化アルキルの反応性は、マグネシウムに対するハロゲン化アルキルの反応性に比較して著しく低い。また、同文献には、ガリウムとハロゲン化アルキルとの反応性は、マグネシウムの場合と同様に、ヨウ化アルキル>臭化アルキルの順で低くなることが記載されているが、塩素についての反応例は記載されていない。このことから、塩化アルキルの反応性はさらに低いと考えられる。
このように、ガリウム及びマグネシウムに対する塩化アルキルの反応性が非常に乏しいため、ガリウムーマグネシウム混合物またはガリウムーマグネシウム合金と塩化アルキルの反応によりトリアルキルガリウムを合成する報告例は非常に少ない。
前述した特許文献3(ソビエト連邦国特許第388563号公報)には、ガリウムーマグネシウム合金又はガリウム−マグネシウム混合物とハロゲン化アルキルとの反応によりトリアルキルガリウム化合物を合成する方法が記載されているが、塩化アルキルを用いた反応ではトリアルキルガリウムの収率が十分でない。また、ガリウムーマグネシウム混合物と塩化アルキルとの反応例は記載されていない。
このように、塩化アルキルにも一長一短がある。
以上より、生成物であるトリアルキルガリウムを高純度に精製できる点で、溶媒として炭化水素化合物を用い、かつハロゲン化アルキルとして塩化アルキルを用いることが望ましいが、これらの材料を用いると反応性及び収率が低くなってしまう。
本発明は、ガリウムとマグネシウムとハロゲン化アルキルとの反応によりトリアルキルガリウムを製造する方法であって、ガリウム−マグネシウム合金を用いることなく、溶媒として炭化水素化合物を用い、かつハロゲン化アルキルとして塩化アルキルを用いても、収率良くトリアルキルガリウムを得ることができる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、少なくとも1種の炭化水素化合物中で、ガリウムとマグネシウムと少なくとも1種の塩化アルキルとを反応させてトリアルキルガリウムを合成し、合成反応に先立ち、マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物を真空加熱する予備活性化を行うことにより、トリアルキルガリウムを収率よく製造できることを見出した。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のトリアルキルガリウムの製造方法を提供する。
項1. マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物を真空下で加熱する第1の工程と、
少なくとも1種の炭化水素化合物中で、真空加熱された上記混合物と少なくとも1種の塩化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程と
を含むトリアルキルガリウムの製造方法。
項2. 第1の工程において、真空下での加熱を、1000Pa以下の真空度で、60℃以上の温度で行う項1に記載の方法。
項3. 第1の工程の前に、マグネシウムと溶融状態のガリウムとを混合状態に保つ工程を含む項1又は2に記載の方法。
項4. 上記混合状態で保つ工程において、マグネシウムと溶融状態のガリウムとを40〜60℃の温度で混合状態に保つ項3に記載の方法。
項5. ガリウム1モルに対してマグネシウム1〜10モルを使用する項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6. 少なくとも1種の塩化アルキルが、炭素数1〜10のアルキル基を有するものである項1〜5のいずれかに記載の方法。
本発明方法によれば、ガリウム及びマグネシウムの予備活性化を行うため、一般に反応性が非常に乏しくなる材料である、炭化水素溶媒及び塩化アルキルを用いても、高収率でトリアルキルガリウムを製造することができる。
また、塩化アルキルを用いて合成したトリアルキルガリウムは、ヨウ化アルキル又は臭化アルキルを用いて合成したものより、高純度に精製できる。さらに、塩化アルキルは汎用されているために入手が容易である。
また本発明方法においては、反応溶媒として炭化水素溶媒を用いるため、トリアルキルガリウムの付加体や溶媒由来の酸素原子が得られるトリアルキルガリウムに混入することがなく、精製により高純度のトリアルキルガリウムが得られる。このため、本発明方法は、電気的特性の高い化合物半導体製造のためのMOCVD原料としてのトリアルキルガリウムの製造に好適な方法である。
また、従来の活性化方法として、ガリウム−マグネシウム合金をヨウ素の存在下で真空加熱する方法が知られているが(非特許文献4(L.I.Zakharkin,V.V.Gavrilenko,N.P.Fatyushina,Russ.Chem.Bull.,46,379(1997)))、ヨウ素などの反応促進剤を添加すると、反応促進剤の混入により生成物であるトリアルキルガリウムを高純度に精製し難い。これに対して本発明方法では、このような反応促進剤を使用せずにガリウム及びマグネシウムを活性化するため、高純度のトリアルキルガリウムを得易い。
また、一般にガリウム−マグネシウム混合物を使用すると、ガリウム−マグネシウム合金を原料とする場合に比べて、収率が低くなるが、本発明方法によれば、合金を調製する手間をかけずに高収率でトリアルキルガリウムが得られる。また、上記合金を使用すると、収率の再現性が得られ難いが、本発明方法によれば、再現性よく高収率が得られる。
以上より本発明は、トリアルキルガリウムの製造工程単純化と安定した生産性に大きな効果をもたらす。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトリアルキルガリウムの製造方法は、マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物を真空下で加熱する第1の工程と、少なくとも1種の炭化水素化合物中で、真空加熱された上記混合物と少なくとも1種の塩化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程とを含む方法である。
原料
<ガリウム>
ガリウムは、純度99.9%(3N)以上の純度の市販品を用いることができ、純度7Nまでのガリウムが市販されている。
MOCVDにより製造される化合物半導体の電気的特性及び光学的特性は、原料である有機金属化合物の純度に大きく左右される。従って、本発明方法においても高純度なトリアルキルガリウムを合成することが求められる。生成するトリアルキルガリウムの純度は原料であるガリウムの純度にも依存することから、ガリウムは高純度であることが望ましい。
本発明においては、ガリウムの純度は99.999%(5N)以上が好ましく、99.9999%(6N)以上がより好ましい。5N以上の高純度のガリウムは、上記のように市販品もあるが、3Nまたは4N純度の市販品を再結晶、減圧精製、電解精錬などにより精製することにより得ることができる。
<マグネシウム>
マグネシウムは99%(2N)〜99.9999%(6N)の純度の市販品を用いることができる。但し、5N以上の純度のマグネシウムは非常に高価であるため、2〜4Nの純度のマグネシウムを真空蒸留、真空昇華などにより精製したものを使用すればよい。本発明方法において使用するマグネシウムの純度は、3N以上が好ましい。
マグネシウムの形状は特に限定されない。例えば、グリニャール試薬合成で一般的に用いられているリボン状、削り状、チップ状(削り状より小さい削りクズ状)、粉末状、粒状などの形状のものを用いることができる。本発明において、粉末状マグネシウムは、平均粒径が500μm以下のマグネシウムをいう。本発明において、平均粒径はレーザー回折法により測定した値である。
中でも、目開き2mmの網篩(日本工業規格Z8801)を通過する削り状、チップ状、粉末状、及び粒状のものが好ましい。上記の目開き2mmの網篩を通過できないものは、本発明方法に供する前にあらかじめ粉砕、磨り潰し等の手段で上記目開き2mmの網篩を通過できるようにしてから使用すればよい。本発明において、目開き2mmの網篩を通過するマグネシウムとは、その99重量%以上がこの網篩を通過するようなマグネシウムをいう。さらに、平均粒径500μm以下の粉末状マグネシムを用いることがより好ましい。本発明において平均粒径は、レーザー回折法により測定した値である。このような大きさのマグネシウムを使用することにより、反応性が向上し、ひいては収率が向上する。
また、マグネシウムのハロゲン化アルキルに対する反応性はマグネシウムの比表面積に比例するため、比表面積が0.1m/g以上、特に1m/g以上の粉末状マグネシウムを用いることが好ましい。比表面積の下限値は、適度な反応性を有し取り扱いを容易にする上で、通常0.01m/g程度である。本発明において、比表面積は、BETの方法で測定した値である。
<溶媒>
使用される炭化水素化合物は特に限定されない。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、インデン等の芳香族炭化水素などを用いることができる。
炭化水素化合物は生成物であるトリアルキルガリウムとの分離が容易なものが好ましい。一般にはトリアルキルガリウムとの沸点差が大きい炭化水素化合物が好ましい。しかし、沸点差が十分大きくても、トリアルキルガリウムより低沸点の炭化水素化合物を用いると、少量の共沸による収率低下が見られるため、炭化水素化合物としてはトリアルキルガリウムより高沸点のものを選択することが望ましい。但し、常温で固体の炭化水素化合物は取扱いに手間がかかることから、このような炭化水素化合物よりは低沸点のものを選択する方が望ましい。
炭化水素化合物は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。但し、得られるトリアルキルガリウムの精製が容易になる点で、1種の炭化水素化合物を単独で使用することが好ましい。
<塩化アルキル>
塩化アルキルとしては、アルキル基の炭素数が、通常1〜10、好ましくは炭素数1〜4のものを用いればよい。上記炭素数のアルキル基を有するヨウ化アルキル及び臭化アルキルは、反応性に富み、かつこれらを使用することによりMOCVD原料として十分な揮発性を有するトリアルキルガリウムが得られる。
塩化アルキルは、1種を単独で使用することができ、また2種以上を組み合わせて使用できる。
炭素数1〜4のアルキル基を有する具体的な塩化アルキルとしては、塩化メチル、塩化エチル、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、塩化n−ブチル、塩化イソブチル、塩化sec−ブチル、塩化tert−ブチルが挙げられる。中でも、炭素数1又は2のアルキル基を有する塩メチル又は塩化エチルが特に好ましい。
前述した式(1)から、ガリウムとマグネシウムと塩化アルキルとの反応によりトリアルキルガリウムを生成する反応は、下記式(3)に従うと考えられる。
2Ga+aMg+(a+3)RCl
→2GaR+3MgCl+(a−3)RMgCl (3)
(式中、Rはアルキル基を示し、aは正の整数を示す。)
マグネシウムとガリウムとのモル比は、ガリウム1モルに対するマグネシウムのモル比を1〜10モル程度とするのが好ましく、1〜5モル程度とするのがより好ましく、1〜3モル程度とするのがさらにより好ましい。上記範囲であれば、ガリウムと、マグネシウムと、塩化アルキルとの反応を実用上十分効率よく進めることができ、かつ高収率でトリアルキルガリウムが得られる。
塩化アルキルは、化学量論的には式(3)に示すように、ガリウム1モル、マグネシウムa/2モルに対して、(a+3)/2モルに相当する量がトリアルキルガリウムの合成に必要であり、用いるガリウムのモル数及びガリウムとマグネシウムとのモル比により変動する。塩化アルキルの使用量は、式(3)に示す(a+3)/2モルの通常50〜200%程度とすればよく、(a+3)/2モルの70〜150%程度が好ましい。上記範囲であれば、高収率でトリアルキルガリウムが得られる。
第1の工程(予備活性化工程)
一般的に、マグネシウム表面は多かれ少なかれ酸化被膜で覆われていることから、その分反応の誘導期が長くなる。このため、反応性の低いハロゲン化アルキルを用いる場合には、一般に、反応前に、マグネシウムに対しして機械的攪拌、粉砕、少量のヨウ素や臭素の添加、希塩酸での洗浄などの活性化が行われている。また、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、1,2−ジブロモエタンなどを少量加えてマグネシウムを活性化する同伴法も行われている(D.E.Peason,D.Cowan,J.D.Beckler,J.Org.Chem.,24,504(1959))。
しかし、機械的攪拌、粉砕、希塩酸での洗浄による活性化では実用上十分な反応性は得られない。また、ヨウ素や1,2−ジブロモエタン等の反応促進剤を添加する方法は、反応促進には効果があるが、反応促進剤に由来する不純物が得られるトリアルキルガリウムに混入し、トリアルキルガリウムの精製度を低下させる。さらに、同伴法では、活性化を行う分マグネシウムが余計に必要になる。このため、上記の従来の予備活性化方法は、MOCVD法による化合物半導体製造の原料として使用される高純度トリアルキルガリウムを製造するためには行い難い。
本発明では、塩化アルキルと反応させる前に、ガリウム及びマグネシウムを予備活性化する。即ち、マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物を真空加熱する。この予備活性化は、ガリウムやマグネシウムの表面上の水分除去や塩化アルキルマグネシウムの生成に貢献するだけでなく、ガリウムとマグネシウムとを均一に混合する。特に塩化アルキルのガリウムに対する反応性は、マグネシウムに対する反応性より一層低いため、この予備活性化はマグネシウムだけでなくガリウムに対しても有効と考えられる。
マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物は、ガリウムとマグネシウムとを混合した後ガリウムの融点(29.8℃)以上の温度に加熱することにより調製してもよく、ガリウムを溶融させたものとマグネシウムとを混合してもよい。
真空加熱による予備活性化の前に、溶融状態のガリウムとマグネシウムとの混合物をガリウムが十分溶融する温度にしばらく保つことができ、これにより一層効率的に活性化を行える。混合状態に保つ間の温度は40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。上記範囲であれば、ガリウムを溶融状態に保つことができて活性化を十分に行える。また、余りに高温にしてもそれ以上の効果は得られないため、加熱温度の上限は通常60℃程度にすればよい。このときの温度は必ずしも一定に保たなくてよい。
また、混合状態に保つ際の圧力は特に限定されないが、通常は常圧とすればよい。混合状態に保つ時間は、特に限定されないが、通常30分間以上、好ましくは1時間以上とすればよい。この時間であれば、十分に活性化を行える。また、3時間程度も混合状態に保てば十分である。
溶融状態のガリウムとマグネシウムとの混合物を真空加熱する際の真空条件は特に限定されないが、通常1000Pa以下、好ましくは100Pa以下、さらに好ましくは10Pa以下とすればよい。上記真空度の範囲であれば、ガリウムやマグネシウムの表面の水分などの除去が十分に行われ、十分に高い収率でトリアルキルガリウムが得られる。また、余りに真空度が高くてもそれ以上の効果は得られないため、真空度の上限値は、通常10−6Pa程度とすればよい。
真空加熱時の温度は、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上とすればよい。上記温度範囲であれば、マグネシウム表面上の水分を十分に除去し、ガリウムとマグネシウムとを十分に接触させることができる。余り高温でもそれ以上の効果は得られないため、この温度の上限値は、通常200℃程度とすればよい。
真空加熱時間は、特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上である。また、3時間程度も行えば十分である。
また、真空加熱の間、及びガリウムとマグネシウムとを混合状態で保つ場合にはその間は、混合状態のままで静置してもよく、又は攪拌してもよい。活性化を効率良く行う上では攪拌することが好ましい。攪拌は、例えばマグネチックスタラーによる攪拌、誘導攪拌のような公知の方法で行えばよい。攪拌時に、混合物に流動パラフィンやワセリンオイル等を添加することにより、混合を円滑に行うことができる。
また、ガリウムとマグネシウムとの混合操作、行う場合は混合状態での保存、及び真空加熱は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で行う。これら不活性ガスの純度は、好ましく99.99%(4N)以上、特に好ましくは99.9999%(6N)以上である。
特に、雰囲気ガス中の水分や酸素は、トリアルキルガリウムの収率を低下させるばかりでなく、純度低下の原因ともなり得るため、水分や酸素は極力除去した雰囲気ガスを使用することが望まれる。反応雰囲気ガスは好ましくは露点−80℃以下、酸素濃度100ppb以下、特に好ましくは露点−100℃以下、酸素濃度10ppb以下であることが望ましい。このような高純度の不活性ガスは、膜分離法、触媒反応法、液化精留法、PSA(Pressure Swing Adsorption)法などにより得ることができる。
第2の工程(合成反応工程)
本発明において、合成反応は、前述した不活性ガス雰囲気下で行う。雰囲気ガス中の水分や酸素についても前述した通りである。
反応は、不活性ガス雰囲気下にした反応容器内に、活性化されたガリウムとマグネシウムとの混合物、炭化水素化合物、及び塩化アルキルを入れることにより行う。特に、反応器内に導入し易い点で、反応容器内にガリウム−マグネシウム混合物と炭化水素化合物とを入れ、最後に塩化アルキルをこれら混合物中に、ゆっくりと導入していくことが好ましい。
炭化水素化合物の使用量は、特に限定されないが、反応開始時に溶媒中のガリウム濃度及びマグネシウム濃度(それぞれ溶媒1Lに対するモル数を意味する。以下、同様。)のいずれもが0.01〜10moL/L程度となる量が好ましく、0.1〜5moL/L程度となる量がより好ましい。上記濃度範囲であれば、反応性、ひいてはトリアルキルガリウム収率が十分高くなるとともに、容易に反応を制御でき、即ち、突然反応が進みすぎたり、生成するハロゲン化アルキルマグネシウムの析出で反応が途中で終わってしまったり、副生するハロゲン化マグネシウムにより攪拌が困難となったりすることがない。
反応温度は、用いる炭化水素化合物、及び塩化アルキルの種類などを考慮して、効率良く反応が進行する温度とすればよい。ガリウム−マグネシウム混合物と炭化水素化合物と塩化アルキルを混合すると、反応液の温度が上昇する。上記化合物の混合後、中でも全量の塩化アルキルを添加した後、反応液の温度を通常0〜200℃程度、好ましくは40〜160℃程度、より好ましくは60〜120℃程度に設定して反応を行えばよい。通常3〜30時間程度の反応によりトリアルキルガリウムが生成する。
また、合成反応圧力は特に限定されず、大気圧下、減圧下、または加圧下で合成反応を行うことができる。
精製工程
反応終了後に得られるトリアルキルガリウムには、塩化アルキルが付加したトリアルキルガリウムが含まれている。従って、反応液を蒸留することにより、これらの付加体を分解してトリアルキルガリウムを分留により単離すればよい。加熱温度は、トリアルキルガリウムの分解温度より低く、かつトリアルキルガリウムの塩化アルキル付加体の分解温度より高い温度とすることが好ましい。蒸留は、常圧で行えばよいが、減圧蒸留を行ってもよい。
さらに、精密蒸留や昇華等により精製することにより、MOCVD原料として使用できる純度99.999%(5N)以上のトリアルキルガリウムが得られる。
精製工程も、通常、不活性ガス雰囲気下で行う。
ガリウム系化合物半導体素子
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムと、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び砒素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のIII族元素含有化合物とを原料として、例えばMOCVDによるエピタキシャル成長により、ガリウム系化合物半導体素子のガリウム系化合物半導体薄膜を形成することができる。ガリウム系化合物半導体薄膜の代表例としては、トリアルキルガリウムと、アンモニアのような窒素含有化合物とを原料として形成される窒化ガリウム系化合物半導体薄膜が挙げられる。
半導体の構造としては、MIS(Metal Insulator Semiconductor)接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
窒化ガリウム系化合物半導体薄膜を例に挙げて説明すれば、窒化ガリウム系化合物半導体の基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化ガリウム系化合物半導体を形成することができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファー層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成する。
窒化ガリウム系化合物半導体を使用したpn接合を有する発光素子例として、バッファー層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
窒化ガリウム系化合物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化ガリウム系化合物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。電極形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子が得られる。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]トリメチルガリウムの合成
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム4.97g(71mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000で測定した値)の粉末マグネシウム2.71g(112mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから30分間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のオートクレーブの内温は約60℃である。次いで、オートクレーブ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
使用するガリウムの純度は6Nであり、マグネシウムの純度は、3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
オートクレーブ内の温度を室温に戻し、モレキュラーシーブスで十分脱水したトルエン50mLを加える。塩化メチル12.97g(257mmoL)をゆっくりとオートクレーブ内に導入し、90℃までオートクレーブ内温度を上げ、20時間加熱攪拌を行う。反応開始時はガリウムはトルエン中に溶解していないが、反応進行に伴い溶解する。反応開始時のトルエン中のガリウム濃度は1.42moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.24moL/Lである(それぞれ、溶媒1Lに対するモル数。以下、同様。)。
反応終了後、トルエンが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometerによるガリウム定量により、1.99g(ガリウム換算で24.4%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[実施例2]トリメチルガリウムの合成
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム5.05g(72mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000で測定した値)の粉末マグネシウム2.70g(111mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから1時間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のオートクレーブの内温は約50℃である。次いで、オートクレーブ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
使用するガリウムの純度は6Nであり、マグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
オートクレーブ内の温度を室温に戻し、モレキュラーシーブスで十分脱水したトルエン50mLを加える。塩化メチル12.90g(255mmoL)をゆっくりとオートクレーブ内に導入し、90℃までオートクレーブ内温度を上げ、20時間加熱攪拌を行う。反応開始時はガリウムはトルエン中に溶解していないが、反応進行に伴い溶解する。反応開始時のトルエン中のガリウム濃度は1.44moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.22moL/Lである。
反応終了後、トルエンが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、1.99g(ガリウム換算で24.1%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[実施例3]トリエチルガリウムの合成
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム5.00g(72mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000で測定した値)の粉末マグネシウム2.62g(109mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから30分間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のオートクレーブの内温は約60℃である。次いで、オートクレーブ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
使用するガリウムの純度は6Nであり、マグネシウムの純度は、3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
オートクレーブ内の温度を室温に戻し、モレキュラーシーブスで十分脱水したヘキサン50mLを加える。塩化エチル13.99g(217mmoL)をゆっくりとオートクレーブ内に導入し、90℃までオートクレーブ内温度を上げ、20時間加熱攪拌を行う。反応開始時はガリウムはヘキサン中に溶解していないが、反応進行に伴い溶解する。反応開始時のヘキサン中のガリウム濃度は1.44moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.18moL/Lである。
反応終了後、反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いてまず常圧でヘキサンを分留する。次いで、100Torrの減圧下で粗トリエチルガリウムを分留する(79〜81℃)。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、2.10g(ガリウム換算で18.6%収率)の粗トリエチルガリウムが得られる。
[比較例1]真空加熱による予備活性化を行わない場合
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム4.99g(72mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000で測定した値)の粉末マグネシウム2.68g(110mmoL)を導入する。
モレキュラーシーブスで十分脱水したトルエン50mLを加える。塩化メチル12.82g(254mmoL)をゆっくりとオートクレーブ内に導入し、90℃までオートクレーブ内温度を上げ、20時間加熱攪拌を行う。反応開始時はガリウムはトルエン中に溶解していないが、反応進行に伴い溶解する。反応開始時のトルエン中のガリウム濃度は1.44moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.20moL/Lである。
使用するガリウムの純度は6Nであり、マグネシウムの純度は、3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
反応終了後、トルエンが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、0.091g(ガリウム換算で1.1%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。

以上の結果、炭化水素溶媒中で塩化アルキルを用いてトリアルキルガリウムを合成する場合、合成反応に先立ち、予備活性化としてガリウム溶融状態でマグネシウムと混合し真空加熱を行う本発明実施例1〜3では、18%以上の収率が得られる。
これに対して、単にマグネシウムを室温で攪拌する予備活性化を行う比較例1では、収率は非常に低く1.1%であり、トリアルキルガリウムを殆ど得ることができない。

[実施例4]窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造
サファイア(C面)よりなる基板をMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)の反応容器内にセットし、水素を流しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行う。
(バッファ層)
続いて、温度を510℃まで下げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアと上記の実施例1で得られ、さらに精製されるトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を約150オングストロームの膜厚で成長させる。この反応は以下の式で表される。
Ga(CH+NH→GaN+3CH
(アンドープGaN層)
バッファ層成長後、トリメチルガリウムのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を1.5μmの膜厚で成長させる。
(n側コンタクト層)
続いて1050℃で、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガス、不純物ガスにシランガスを用い、Siを4.5×1018/cmドープしたGaNよりなるn側コンタクト層を2.25μmの膜厚で成長させる。
(n側第1多層膜層)
次にシランガスのみを止め、1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を75オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同温度にてシランガスを追加しSiを4.5×1018/cmドープしたGaN層を25オングストロームの膜厚で成長させる。このようにして、75オングストロームのアンドープGaN層からなるA層と、SiドープGaN層を有する25オングストロームのB層とからなるペアを成長させる。そしてペアを25層積層して2500オングストローム厚として、超格子構造の多層膜よりなるn側第1多層膜層を成長させる。
(n側第2多層膜層)
次に、同様の温度で、アンドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長させ、次に温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用い、アンドープIn0.13Ga0.87Nよりなる第1の窒化物半導体層を20オングストローム成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第2+第1の順で交互に10層づつ積層させ、最後にGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長さた超格子構造の多層膜よりなるn側第2多層膜層を640オングストロームの膜厚で成長させる。
(活性層)
次に、アンドープGaNよりなる障壁層を200オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用いアンドープIn0.4Ga0.6Nよりなる井戸層を30オングストロームの膜厚で成長させる。そして障壁+井戸+障壁+井戸・・・・+障壁の順で障壁層を5層、井戸層を4層、交互に積層して、総膜厚1120オングストロームの多重量子井戸構造よりなる活性層を成長させる。
(p側多層膜クラッド層)
次に、温度1050℃でトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cmドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用いMgを1×1020/cmドープしたIn0.03Ga0.97Nよりなる第4の窒化物半導体層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第3+第4の順で交互に5層ずつ積層し、最後に第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させた超格子構造の多層膜よりなるp側多層膜クラッド層を365オングストロームの膜厚で成長させる。
(p側GaNコンタクト層)
続いて1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cmドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層を700オングストロームの膜厚で成長させる。
反応終了後、温度を室温まで下げ、さらに窒素雰囲気中、ウエハーを反応容器内において、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハーを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面に所定の形状のマスクを形成し、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置でp側コンタクト層側からエッチングを行い、n側コンタクト層の表面を露出させる。
エッチング後、最上層にあるp側コンタクト層のほぼ全面に膜厚200オングストロームのNiとAuを含む透光性のp電極10と、そのp電極の上にボンディング用のAuよりなるpパッド電極を0.5μmの膜厚で形成する。一方、エッチングにより露出させたn側コンタクト層の表面にはWとAlを含むn電極を形成して窒化ガリウム系化合物半導体素子とする。
この窒化ガリウム系化合物半導体素子は順方向電流20mAにおいて、520nmの純緑色発光を示す。
なお、別の構成を有する窒化ガリウム系化合物半導体素子にもトリメチルガリウムを使用することができる。例えば、原料ガスにアンモニアとトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を成長させる。このGaNよりなる第1のバッファ層の上に、アンドープGaNよりなる第2のバッファ層、SiドープGaNよりなるn側コンタクト層、多重量子井戸構造よりなる活性層、単一のMgドープAl0.1Ga0.9N層、MgドープGaNからなるp側コンタクト層を順に積層したものなどがある。
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムは、エピタキシャル結晶成長によりガリウム系化合物半導体薄膜を形成するための原料として好適に使用できる。

Claims (6)

  1. マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物を真空下で加熱する第1の工程と、
    少なくとも1種の炭化水素化合物中で、真空加熱された上記混合物と少なくとも1種の塩化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程と
    を含むトリアルキルガリウムの製造方法。
  2. 第1の工程において、真空下での加熱を、1000Pa以下の真空度で、60℃以上の温度で行う請求項1に記載の方法。
  3. 第1の工程の前に、マグネシウムと溶融状態のガリウムとを混合状態に保つ工程を含む請求項1又は2に記載の方法。
  4. 上記混合状態で保つ工程において、マグネシウムと溶融状態のガリウムとを40〜60℃の温度で混合状態に保つ請求項3に記載の方法。
  5. ガリウム1モルに対してマグネシウム1〜10モルを使用する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 少なくとも1種の塩化アルキルが、炭素数1〜10のアルキル基を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の方法
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