JP4774772B2 - トリアルキルガリウムの製造方法 - Google Patents
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→2GaR3+3MgX2+(a−3)RMgX (1)
(式中、Rはアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。aは正の整数を示す。)
このように、トリアルキルガリウムの生成にはハロゲン化アルキルマグネシウム(RMgX)すなわちグリニャール試薬が関与しているものと考えられる。
少なくとも1種の炭化水素化合物中で、真空加熱された上記混合物と、ヨウ化アルキル及び臭化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程と
を含むトリアルキルガリウムの製造方法。
原料
<ガリウム>
ガリウムは、純度99.9%(3N)以上の純度の市販品を用いることができ、純度7Nまでのガリウムが市販されている。
<マグネシウム>
マグネシウムは99%(2N)〜99.9999%(6N)の純度の市販品を用いることができる。但し、5N以上の純度のマグネシウムは非常に高価であるため、2〜4Nの純度のマグネシウムを真空蒸留、真空昇華などにより精製したものを使用すればよい。本発明方法において使用するマグネシウムの純度は、3N以上が好ましい。
<溶媒>
使用される炭化水素化合物は特に限定されない。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、インデン等の芳香族炭化水素などを用いることができる。
炭化水素化合物は生成物であるトリアルキルガリウムとの分離が容易なものが好ましい。一般にはトリアルキルガリウムとの沸点差が大きい炭化水素化合物が好ましい。しかし、沸点差が十分大きくても、トリアルキルガリウムより低沸点の炭化水素化合物を用いると、少量の共沸による収率低下が見られるため、炭化水素化合物としてはトリアルキルガリウムより高沸点のものを選択することが望ましい。但し、常温で固体の炭化水素化合物は取扱いに手間がかかることから、このような炭化水素化合物よりは低沸点のものを選択する方が望ましい。
<ハロゲン化アルキル>
ヨウ化アルキル及び臭化アルキルは、アルキル基の炭素数が、通常1〜10、好ましくは炭素数1〜4のものを用いればよい。上記炭素数のアルキル基を有するヨウ化アルキル及び臭化アルキルは、反応性に富み、かつこれらを使用することによりMOCVD原料として十分な揮発性を有するトリアルキルガリウムが得られる。
使用比率
前述したように、ガリウムとマグネシウムとハロゲン化アルキルとの反応によりトリアルキルガリウムを生成する反応は、下記式(1)に従うと考えられる。
→2GaR3+3MgX2+(a−3)RMgX (1)
(式中、Rはアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。aは正の整数を示す。)
マグネシウムとガリウムとのモル比は、ガリウム1モルに対するマグネシウムのモル比を1〜20モル程度とするのが好ましく、2〜10モル程度とするのがより好ましく、1〜3モル程度とするのがさらにより好ましい。上記範囲であれば、ガリウムと、マグネシウムと、塩化アルキルとの反応を実用上十分効率よく進めることができ、かつ高収率でトリアルキルガリウムが得られる。
第1の工程(予備活性化工程)
一般的に、マグネシウム表面は多かれ少なかれ酸化被膜で覆われていることから、その分反応の誘導期が長くなる。このため、反応性の低いハロゲン化アルキルを用いる場合には、一般に、反応前に、マグネシウムに対して機械的攪拌、粉砕、少量のヨウ素や臭素の添加、希塩酸での洗浄などの活性化が行われている。また、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、1,2−ジブロモエタンなどを少量加えてマグネシウムを活性化する同伴法も行われている(D.E.Peason,D.Cowan,J.D.Beckler,J.Org.Chem.,24,504(1959))。
第2の工程(合成反応工程)
本発明において、合成反応は、前述した不活性ガス雰囲気下で行う。
精製工程
反応終了後に得られるトリアルキルガリウムには、ヨウ化アルキル及び臭化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化アルキルが付加したトリアルキルガリウムなどが含まれている。従って、反応液を蒸留することにより、これらの付加体を分解してトリアルキルガリウムを分留により単離すればよい。加熱温度は、トリアルキルガリウムの分解温度より低く、かつトリアルキルガリウムのハロゲン化アルキル付加体の分解温度より高い温度とすることが好ましい。蒸留は、常圧で行えばよいが、減圧蒸留を行ってもよい。
ガリウム系化合物半導体素子
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムと、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び砒素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のIII族元素含有化合物とを原料として、例えばMOCVDによるエピタキシャル成長により、ガリウム系化合物半導体素子のガリウム系化合物半導体薄膜を形成することができる。ガリウム系化合物半導体薄膜の代表例としては、トリアルキルガリウムと、アンモニアのような窒素含有化合物とを原料として形成される窒化ガリウム系化合物半導体薄膜が挙げられる。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]トリメチルガリウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム10.00g(143mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム5.16g(215mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから30分間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のフラスコの内温は約60℃である。次いで、フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
[実施例2]トリメチルガリウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム10.05g(144mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム5.28g(217mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから1時間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のフラスコの内温は約50℃である。次いで、フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム10.05g(144mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム5.18g(216mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから30分間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のフラスコの内温は約60℃である。次いで、フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。使用するガリウムの純度は6Nであり、マグネシウムの純度は、3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
[実施例4] トリ−n−プロピルガリウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム10.02g(144mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム5.30g(221mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから30分間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のフラスコの内温は約60℃である。次いで、フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
[実施例5] トリ−n−ブチルガリウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム10.00g(143mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム5.16g(215mmoL)を導入する。加熱を開始しガリウムが完全に溶解してから30分間溶融ガリウムと粉末マグネシウムとの混合物を加熱攪拌する。この時のフラスコの内温は約60℃である。次いで、フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温でガリウム10.01g(144mmoL)、平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム5.23g(216mmoL)を導入する。
以上の結果、炭化水素化合物中でトリアルキルガリウムを合成する場合、合成反応に先立ち、予備活性化としてガリウム溶融状態でマグネシウムと混合し真空加熱を行う本発明実施例1〜5では、66%以上の実用可能な収率が得られる。
[実施例6]窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造
サファイア(C面)よりなる基板をMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)の反応容器内にセットし、水素を流しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行う。
(バッファ層)
続いて、温度を510℃まで下げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアと上記の実施例1で得られ、さらに精製されるトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を約150オングストロームの膜厚で成長させる。この反応は以下の式で表される。
(アンドープGaN層)
バッファ層成長後、トリメチルガリウムのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を1.5μmの膜厚で成長させる。
(n側コンタクト層)
続いて1050℃で、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガス、不純物ガスにシランガスを用い、Siを4.5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるn側コンタクト層を2.25μmの膜厚で成長させる。
(n側第1多層膜層)
次にシランガスのみを止め、1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を75オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同温度にてシランガスを追加しSiを4.5×1018/cm3ドープしたGaN層を25オングストロームの膜厚で成長させる。このようにして、75オングストロームのアンドープGaN層からなるA層と、SiドープGaN層を有する25オングストロームのB層とからなるペアを成長させる。そしてペアを25層積層して2500オングストローム厚として、超格子構造の多層膜よりなるn側第1多層膜層を成長させる。
(n側第2多層膜層)
次に、同様の温度で、アンドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長させ、次に温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用い、アンドープIn0.13Ga0.87Nよりなる第1の窒化物半導体層を20オングストローム成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第2+第1の順で交互に10層づつ積層させ、最後にGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長さた超格子構造の多層膜よりなるn側第2多層膜層を640オングストロームの膜厚で成長させる。
(活性層)
次に、アンドープGaNよりなる障壁層を200オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用いアンドープIn0.4Ga0.6Nよりなる井戸層を30オングストロームの膜厚で成長させる。そして障壁+井戸+障壁+井戸・・・・+障壁の順で障壁層を5層、井戸層を4層、交互に積層して、総膜厚1120オングストロームの多重量子井戸構造よりなる活性層を成長させる。
(p側多層膜クラッド層)
次に、温度1050℃でトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用いMgを1×1020/cm3ドープしたIn0.03Ga0.97Nよりなる第4の窒化物半導体層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第3+第4の順で交互に5層ずつ積層し、最後に第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させた超格子構造の多層膜よりなるp側多層膜クラッド層を365オングストロームの膜厚で成長させる。
(p側GaNコンタクト層)
続いて1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層を700オングストロームの膜厚で成長させる。
Claims (6)
- マグネシウムと溶融状態のガリウムとの混合物を真空下で加熱する第1の工程と、
少なくとも1種の炭化水素化合物中で、真空加熱された上記混合物と、ヨウ化アルキル及び臭化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程と
を含むトリアルキルガリウムの製造方法。 - 第1の工程において、真空下での加熱を、1000Pa以下の真空度で、60℃以上の温度で行う請求項1に記載の方法。
- 第1の工程の前に、マグネシウムと溶融状態のガリウムとを混合状態に保つ工程を含む請求項1又は2に記載の方法。
- 上記混合状態で保つ工程において、マグネシウムと溶融状態のガリウムとを40〜60℃の温度で混合状態に保つ請求項3に記載の方法。
- ガリウム1モルに対してマグネシウム1〜20モルを使用する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- ハロゲン化アルキルが、炭素数1〜10のアルキル基を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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