ところで、上記従来の燃料電池の停止保管方法においては、以下のような改善すべき問題が内在している。
すなわち、燃料電池を外部雰囲気から遮断するよう封止しても、燃料電池を一定期間(例えば15時間〜3日程度)保管した場合、この封止部から空気(酸素ガス)が燃料電池の内部にもれて混入する可能性がある。特に、上記従来の加湿不活性ガス導入法(停止直後の導入)の場合、燃料電池の内部の温度低下によって加湿不活性ガスに含有する水蒸気が凝結して負圧化が促進されて、酸素ガス混入の懸念は一層高まる。
こうした状況において、燃料電池の再起動時に水素リッチな燃料ガスを供給すれば、燃料電池のアノードにおいて酸素ガスと燃料ガスによる局所燃焼を起こして燃料電池の破損や燃料電池の性能劣化に至りかねない。
また、燃料電池の発電および停止を長期間(例えば2〜3年程度)亘って頻繁に反復した場合、停止期間中に継続的に燃料電池の電極を水に浸すことになって、この恒常的な水の雰囲気に起因して電極の撥水性が劣化することで燃料電池の運転時の排水能力が損なわれ、燃料電池の性能劣化を招きかねない。よって、上記従来例の停止保管方法のように、燃料電池の内部を長時間、加湿ガスの雰囲気に曝すことは極力避ける必要がある。
上記課題を解決するために、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、燃料電池システムの停止の際に、燃料電池の内部の負圧化およびその内部を加湿ガスに曝すことに起因する性能劣化を防止可能な燃料電池システムを提供することを目的としている。
本件発明者は、まず、図7を参照して加湿不活性ガスによりもたらされる燃料電池の内部の減圧量の影響を見積もった。
図7は、外気温度と燃料電池の内部の減圧量との関係を示した図であり、その横軸に外気温度をとり、その縦軸に減圧量をとって、両者の関係を、加湿不活性ガス露点差をパラメータにして(5℃(短い点線)、10℃(一点鎖線)、15℃(長い点線)および25℃(実線))図示している。
例えば、図中に矢印を付して示すように、横軸の外気温度20℃に対応する一点鎖線(露点差:10℃)の減圧量は約0.05kpaであり、この値は、露点30℃のガスを充満した燃料電池の温度を10℃冷やして(露点差(10℃):30℃→20℃にして)、外気温度(20℃)に等しくし、これによって水蒸気が凝結することに起因して生じる減圧量(負圧相当分)を指し示すものである。
図7によれば、燃料電池の内部に充満するガスの露点と外気温度との温度差がプラス10℃(一点鎖線)であれば、燃料電池の通常の使用温度範囲内(例えば、0℃〜40℃)において、燃料電池の減圧量を概ね0.1kpa以下に抑えることが可能である。そして、この程度の負圧化であれば、酸素ガスの燃料電池内部への混入は微量であり局所燃焼の問題もなく燃料電池の性能を長期に亘り維持できると期待される。
このような検討から理解できるとおり、想定される外気温度を見越して、燃料電池の停止の際、運転時に加湿(運転時に露点70℃程度に加湿)した燃料ガスおよび加湿した酸化剤ガスにより満たされていた燃料電池の内部(ガス流路)を、燃料電池の温度を低下させる前に、迅速に乾燥状態の不活性ガスにより置換することが肝要であり、例えば、露点20℃以下、より望ましくは露点10℃以下に維持した不活性ガスを使用して燃料電池の内部を置換すれば、その後、仮に外気温度が0℃であってこの温度付近まで燃料電池が冷えても、燃料電池内部の減圧量は、図7から分かるとおり、僅か約0.04kpa(露点差10℃を示す一点鎖線と縦軸との交点)であり好適である。
もっとも、このように燃料電池の内部を乾燥した不活性ガスで置き換えると、その電解質膜の乾燥化が懸念されるが、燃料電池のガス流路のみを乾燥不活性ガスで置換するのであれば、燃料電池の電極内に元々存在する水分によって電解質膜の保湿効果をある程度維持可能であることも分かった。
ここで、加湿した燃料ガスおよび加湿した酸化剤ガスにより満たされていた燃料電池の内部(ガス流路)を、燃料電池の温度を低下させる前に、迅速に乾燥状態の不活性ガスにより置換する際に、不活性ガスの燃料電池の内部への置換を適切な手順で行うことを要することが判明した。
具体的には、アノードの燃料ガス流路は、水素ガスを含む燃料ガスにより満たされ、カソードの酸化剤ガス流路は、酸素ガスを含む酸化剤ガスにより満たされており、こうした状態で、カソードの酸化剤ガスを不活性ガスにより置換した後、アノードの燃料ガスを不活性ガスにより置換するという順番で、不活性ガスの燃料電池内部への置換を行うことが必須であり、そうしなければ、アノードのルテニウム触媒が電位上昇して、これによりルテニウムの溶出が生じる可能性があることを本願発明者等は見出した。また、併せてカソードの白金触媒が電位上昇して、これにより白金酸化が生じる可能性があることも分かった。
以下にアノードのルテニウム触媒の溶出現象およびカソードの白金触媒の酸化現象につき、図8を参照しつつ詳しく説明する。
図8(a)は、点線を付して示した燃料電池の停止時(燃料電池の不活性ガス置換処理時点)の前後における燃料電池発電電圧の経時変化を模式的に示した図であり、図8(b)は、そのアノードの単電極電位(水素基準)の経時変化を模式的に示した図であり、図8(c)は、そのカソードの単電極電位(水素基準)の経時変化を模式的に示した図である。なお、図8(b)と図8(c)において、第一のアノード電位102および第一のカソード電位104(いずれも二点鎖線で図示)は、燃料電池の停止後に、その内部をアノード→カソードの順番に不活性ガスにより置換動作する際の電位変化を示し、第二のアノード電位103および第二のカソード電位105(いずれも一点鎖線で図示)は、燃料電池の停止後に、その内部をカソード→アノードの順番に不活性ガスにより置換動作する際の電圧変化を示している。
ここで、燃料電池の運転中における燃料電池の発電電圧およびアノード電位並びにカソード電位の遷移を説明する。
図8(a)の実線から理解できるとおり、燃料電池の発電電圧101は、その運転中(図8の点線より左部分)には約0.75Vの出力値を示している。
燃料電池の運転中には、アノードは水素ガスに満たされるため、水素基準に対する電位差は発生せずに、第一および第二のアノード電位102、103とも、ゼロボルト付近の値を示している。一方、アノード電位に対するカソード電位の電位差が発電電圧101に相当するため、燃料電池の運転中のカソードには、発電電圧101に相当する電位が印加され、第一および第二のカソード電位104、105とも、発電電圧101に等しい約0.75Vの値を示すことになる。
次に、燃料電池の停止後に、その内部をアノード→カソードの順番で不活性ガスにより置換した際のアノード電位およびカソード電位の遷移を説明する。
図8(a)の実線から理解できるとおり、燃料電池の停止後(図8の点線より右部分)には、発電電圧101は、0.75Vの値から速やかにゼロボルトに近づくように遷移する(より正確には0.15V以下)。
ここで、仮にカソードの酸化剤ガス(酸素ガス)よりも先にアノードの燃料ガス(水素ガス)を不活性ガスにより置換すると、燃料電池の内部には、アノードに水素ガスが存在せず、かつカソードに酸素ガスが存在するという状態が形成される。そうすると、カソードの酸素ガスの一部が高分子電界質膜を透過しアノードに至る。これによって、アノードにおいて酸素ガスに基づく電位が発現し、図8(b)に示すように、第一のアノード電位102は、酸素ガスに起因する電位上昇が生じる。そして、第一のアノード電位102に対するカソード電位104の電位差は、発電電圧101に相当するため、発電電池101の電位下降および第一のアノード電位102の電位上昇に対応して、図8(c)に示すように、第一のカソード電位104も上昇傾向を示す。
こうしたアノード電位の上昇は、白金(Pt)とルテニウム(Ru)の合金微粒子からなるアノード触媒に対してルテニウム溶出を発生させる要因となる。より具体的には、アノード電位が0.68Vを超えると(図8(b)の斜線領域)、Ru+2H2O → RuO2+4H++4eというルテニウム溶出反応が進行し、これによって燃料電池の発電反応に必要な触媒反応面積が減少して発電効率の低下を招く。
加えて、カソード電位の上昇は、白金系のカソード触媒の酸化を促進し、これによっても同様に、燃料電池の発電反応に必要な触媒反応面積が減少し発電効率の低下を招く。
次に、燃料電池の停止後に、燃料電池の内部をカソード→アノードの順番に不活性ガスにより置換した際のアノード電位およびカソード電位の遷移を説明する。
アノードの燃料ガス(水素ガス)よりも先にカソードの酸化剤ガス(酸素ガス)を不活性ガスにより置換すると、燃料電池の内部には、カソードに酸素ガスが存在せずに、かつアノードに水素ガスが存在するという状態が形成される。
そうすると、燃料電池の運転中と同様に、アノードは水素ガスに満たされるため、水素基準に対する電位差は発生せずに、図8(b)に示すように第二のアノード電位103は、燃料電池停止後も引き続きゼロボルト付近の値を遷移する。また、アノードの水素ガスの一部が高分子電界質膜を透過しカソードに至ることによって、カソードにおいて水素ガスに基づく電位が発現し、水素基準に対してその電位差を無くすように図8(c)に示すように第二のカソード電位105はゼロボルト付近に漸近し、これによって、第二のアノード電位103と第二のカソード電位105の電位差に相当する発電電圧101も図8(a)に示すようにゼロボルト付近に漸近するように遷移する。
こうして、アノードとカソードの両方ともその電位上昇を回避して、上記のような燃料電池の発電反応に必要な触媒反応面積の減少を未然に防止することが可能になる。
なお、カソード電位をゼロボルトに近づけた後であれば、アノードの水素ガスを不活性ガスにより置換しても、アノード電位は、電位低下したカソード電位を基準にゼロボルト近傍で安定させることが可能である。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、燃料電池システムの停止の際に、所定の乾燥状態に維持した原料ガスにより、燃料電池の内部に溜まった加湿ガスを適切な手順に従って置換処理するというものである。
具体的には、本発明に係る燃料電池発電装置は、燃料ガスを流す燃料ガス流路および酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有する燃料電池と、前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス流路に供給する酸化剤ガス供給手段と、原料ガスおよび水蒸気から前記燃料ガスを生成しこれを前記燃料ガス流路に供給する燃料生成手段と、前記原料ガスを前記燃料生成手段に供給する原料ガス供給手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記燃料電池の発電期間には、前記燃料ガス流路に加湿した燃料ガスを供給して、前記酸化剤ガス流路に加湿した酸化剤ガスを供給することにより前記燃料電池を発電させ、前記燃料電池の停止の際には、前記酸化剤ガス流路に充満する前記加湿した酸化剤ガスを、前記原料ガス供給手段から供給され、外気温度との温度差がプラス10℃以下の露点に保った原料ガスにより置換した後、前記燃料ガス流路に充満する前記加湿した燃料ガスを、前記原料ガスにより置換して、その後、前記燃料ガス流路および酸化剤ガス流路を前記原料ガスの雰囲気に保った状態で封止する運転を行うものである。
ここで、前記燃料電池の冷却水通路に冷却水を供給する冷却水供給手段を備え、前記制御手段は、前記燃料ガス流路および酸化剤ガス流路を前記原料ガスの雰囲気に保った状態で封止した後、前記燃料電池を前記冷却水により所定の温度まで冷却する運転を行うものであっても良い。
このような構成により、酸素ガス混入に起因する燃料電池の局所燃焼および水の雰囲気に起因する電極撥水性能の劣化並びにアノード電位上昇に起因するアノードのルテニウム溶出並びにカソード電位上昇に起因するカソードの白金酸化という従来の不具合を解消しつつ、燃料電池システムを適切に停止することが可能になる。もっともこの場合には、前記原料ガス供給手段はガス清浄部を備え、前記制御手段は、前記燃料電池の停止の際に、前記ガス清浄部によって前記原料ガス中に含有するイオウ成分を除去した後、前記イオウ成分が除去された原料ガスが置換ガスとして使用される運転を行う。
このような原料ガスを用いることによって不活性ガス供給装置を別途設ける必要がなく、燃料電池システムの構成が簡素化できる。
燃料ガス流路については、より具体的な構成として、前記燃料ガス流路の入口を開閉する燃料ガス入口開閉手段と、前記燃料ガス流路の出口を開閉する燃料ガス出口開閉手段と、前記燃料ガス流路から流出するガスの露点を測定する露点測定手段と、前記制御手段は、前記燃料電池の停止の際に、前記燃料ガス入口開閉手段および前記燃料ガス出口開閉手段を開栓状態にして、前記入口から前記原料ガスを供給することによって前記原料ガスを前記加湿した燃料ガスと共に置換処理済ガスとして前記出口から排出する一方、前記露点測定手段により測定された前記置換処理済ガスの露点に基づいて前記原料ガスによって前記燃料ガスを置換したか否かを判定する運転を行うものである。
そして、前記制御手段は、前記原料ガスによって前記燃料ガスが置換されたと判定した後、前記燃料ガス入口開閉手段と前記燃料ガス出口開閉手段とを閉栓状態にする運転を行う。
また酸化剤ガス流路については、より具体的な構成として、前記酸化剤ガス流路の入口を開閉する酸化剤ガス入口開閉手段と、前記酸化剤ガス流路の出口を開閉する酸化剤ガス出口開閉手段と、前記酸化剤ガス流路から流出するガスの露点を測定する露点測定手段と、前記制御手段は、前記燃料電池の停止の際に、前記酸化剤ガス入口開閉手段および前記酸化剤ガス出口開閉手段を開栓状態にして、前記入口から前記原料ガスを供給することによって前記原料ガスを前記加湿した酸化剤ガスと共に置換処理済ガスとして前記出口から排出する一方、前記露点測定手段により測定された前記置換処理済ガスの露点に基づいて前記原料ガスによって前記酸化剤ガスを置換したか否かを判定する運転を行うものである。
そして、前記制御手段は、前記原料ガスによって前記酸化剤ガスが置換されたと判定した後、前記酸化剤ガス入口開閉手段と前記酸化剤ガス出口開閉手段とを閉栓状態にする運転を行う。
このように原料ガスの流量や置換時間に加え、置換処理済ガスの露点に基づいて原料ガスによる燃料ガスの置換状態の判定(置換したか否かの判定)が制御手段により的確に行われる。
本発明によれば、燃料電池システムの停止の際に、燃料電池の内部の負圧化および内部を加湿ガスに曝すことに起因する性能劣化を防止可能な燃料電池システムが得られる。
最初に、固体高分子電解質型の燃料電池の基本的な発電原理を概説する。
燃料電池は、水素リッチな燃料ガスをアノードに、酸素ガスを含む酸化剤ガスをカソードに供給することによりこれらを電気化学的に反応させて電気と熱を同時に生成するものである。
電解質膜としては水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜が利用され、この電解質膜の両面に配置された多孔質の触媒反応層は、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分としており、アノードの触媒反応層において下記の(1)式の反応が発生し、カソードの触媒反応層において下記の(2)式の反応が発生し、燃料電池全体として下記の(3)式の反応が発生する。
H2 → 2H++ 2e− (1)
1/2O2+ 2H+ + 2e− → H2O (2)
H2 + 1/2O2 → H2O (3)
即ち、(1)式の反応で生成した水素イオンを、電解質膜を介してアノードからカソードに輸送させると共に、外部回路を介してアノードからカソードに電子を移動させ、カソードでは酸素ガスおよび水素イオン並びに電子が(3)式のように反応して水を生成すると共に、触媒反応による反応熱を得ることができる。
このように電解質膜には水素イオンを選択的に輸送する機能が必要であり、電解質膜に保水させることによって、電解質膜に含まれる水を移動経路として、アノードからカソードに水素イオンを輸送できるイオン伝導性が発現すると考えられている。
従って、水素イオン輸送能確保のため、電解質膜を保水させることが必須であり、電解質膜の乾燥化を防止して電解質膜の保水管理を適切に行うことは、電解質膜の基本性能にかかわる重要な技術事項である。
次に、本発明の実施の形態に係る燃料電池の構成につき図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料電池の電解質接合体(Membrane-Electrode Assembly;MEA)を含む部分の断面図である。
水素イオン伝導性を備えたパーフルオロカーボンスルフォン酸からなる高分子電解質膜11の両面に、この電解質膜11を挟むようにアノード14aおよびカソード14cが配置されている。なお、参照番号の添え字aは水素ガス等の燃料ガス関与側のアノード14aに関連するものを示しており、添え字cは空気等の酸化剤ガス関与側のカソード14cに関連するものを示している。
アノード14aおよびカソード14cは共に二層構造を有しており、電解質膜11と接触する第一層(アノード14aの側)は、多孔質カーボンに白金およびルテニウムの合金を担持した触媒と水素イオン伝導性を有する高分子電解質(バインダ)との混合物からなるアノード14aの触媒反応層12a(以下、触媒反応層12aという)であり、第一層(カソード14cの側)は、多孔質カーボンに白金を担持した触媒と水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなるカソード14cの触媒反応層12c(以下、触媒反応層12cという)であって、これらの触媒反応層12a、12cの外面に密着して積層する第二層は、通気性と電気伝導性を兼ね備えたアノード14aのガス拡散層13a(以下、ガス拡散層13aという)およびカソード14cのガス拡散層13c(以下、ガス拡散層13cという)である。
なお、MEA17は、電解質膜11およびアノード14a並びにカソード14cで構成されており、このMEA17は機械的に固定されると共に、互いに隣接するMEA17同士が電気的に直列に接続される。
また、アノード14aの外面に接触してアノード14aに対する導電性セパレータ板16a(以下、導電性セパレータ板16aという)が配置され、カソード14cの外面に接触してカソード14cに対する導電性セパレータ板16c(以下、導電性セパレータ板16cという)が配置されている。
また、アノード14aおよびカソード14cに反応ガスを供給して、反応後の反応生成ガスや反応に寄与しなかった余剰の反応ガスを運び去る溝(深さ:0.5mm)からなるアノード14aに対する燃料ガス流路18aおよびカソード14cに対する酸化剤ガス流路18cが導電性セパレータ板16a、16cのMEA17との接触面に形成されている。
こうしてMEA17とセパレータ板16aと16cからなる燃料電池セル(単セル)20が形成されている。
なお、燃料電池21の内部には、例えば燃料電池セル20が60セル程度積層されており、より具体的には、一方の燃料電池セル20の導電性セパレータ板16aの外面と、他方の燃料電池セル20の導電性セパレータ板16cの外面とが互いに向き合って接触して隣接するように燃料電池セル20は積層される。
また、導電性セパレータ板16aとこれに隣接する導電性セパレータ16cの接触面には、導電性セパレータ板16aに形成された溝(深さ:0.5mm)19aと、導電性セパレータ板16cに形成された溝(深さ:0.5mm)19cとからなる冷却水通路19が設けられている。
こうして冷却水通路19の内部を流れる冷却水によって導電性セパレータ板16a、16cの温度調整を行い、これらの導電性セパレータ16a、16cを介してMEA17の温度調整を可能にしている。
なお、導電性セパレータ板16a、16cとしては、例えば、20cm×32cm×1.3mmの外寸で、フェノール樹脂を含浸させた黒鉛板が用いられる。
また一方、MEA17のアノード側外周部およびカソード側外周部にそれぞれ、環状のゴム製のアノード14aの側のMEAガスケット15a(以下、MEAガスケット15aという)およびカソード14cの側のMEAガスケット15c(以下、MEAガスケット15cという)が設けられ、導電性セパレータ板16a、16cとMEA17の間を、MEAガスケット15a、15cによって封止させる。こうして、MEAガスケット15a、15cによって燃料および酸化剤ガス流路18a、18cを流れるガスのガス混合やガスリークが防止される。更には、MEAガスケット15a、15cの外側には冷却水通流用および燃料ガス通流用並びに酸化剤ガス通流用のマニホールド穴(図示せず)が形成されている。
以上のような燃料電池を使用した燃料電池発電装置の構成について図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る燃料電池発電装置の構成を示すブロック図である。
燃料電池発電装置100は主として、原料ガスを供給するための原料ガス供給手段22と、燃料生成器23に水を供給するための第二の水供給手段75(例えば、水供給ポンプ)と、原料ガス供給手段22から供給された原料ガスおよび第二の水供給手段75から供給された水から改質反応によって水素リッチな燃料ガス(改質ガス)を生成する燃料生成器23(燃料生成手段)と、加湿器24に酸化剤ガス供給配管45を介して酸化剤ガス(酸素ガス含有の空気)を供給する空気供給手段としてのブロア28と、加湿器24に水を供給するための第一の水供給手段74(例えば、水供給ポンプ)と、ブロア28から供給された空気を、燃料電池21から排出されたガスの有する熱および第一の水供給手段74から供給された水によって加湿させる加湿器24と、燃料生成器23からアノード入口21Ainに供給された燃料ガスおよび加湿器24からカソード入口21Cinに供給された加湿酸化剤ガスを使って発電しかつ熱を生成する燃料電池21と、燃料電池21の水入口21Winに冷却水を供給する冷却水供給手段29と、原料ガス供給手段22および第一、第二の水供給手段74、75並びに燃料生成器23並びにブロア28並びに燃料電池21を制御する制御部25(制御手段)と、燃料電池21で生成された電力を取り出す回路部26と、この回路部26の電圧(発電電圧)を測定すると共に冷却水供給手段から供給される冷却水温度の検知信号を受け取る測定部27と、によって構成されている。
なおここで、燃料電池21のアノード入口21Ainは、燃料電池21の燃料ガス流路18a(図1参照)の入口側に、そのアノード出口21Aoutは、その出口側に相当し、燃料電池21のカソード入口21Cinは、燃料電池21の酸化剤ガス流路18c(図1参照)の入口側に、そのカソード出口21Coutは、その出口側に相当し、燃料電池21の水入口21Winは、燃料電池21の冷却水通路19(図1参照)の入口側に、その水出口21Woutは、その冷却水通路19の出口側に相当する。
また、原料ガス供給手段22は、原料ガス中の不純物を除去するガス清浄部(脱硫部)22pと、原料ガスを燃料生成器23に圧送するブースターポンプ22bと、によって構成され、これによってブースターポンプ22bにより原料ガス供給配管42を介して原料ガスを燃料生成器23に向けて圧送する。
また、冷却水供給手段29は、所定量の冷却水を溜めると共にヒータ等(図示せず)を備えてその内部の冷却水の温度を調整可能な冷却水タンク29tと、冷却水を燃料電池21の水入口21Winに圧送する水ポンプ29pと、燃料電池21の水入口21Winの上流側の冷却水温度を測定する冷却水入口側温度センサ40と、燃料電池21の水出口21Woutの下流側の冷却水温度を測定する冷却水出口側温度センサ41と、によって構成され、これによって水ポンプ29pにより冷却水供給配管60を介して燃料電池21に向けて冷却水を圧送すると共に、冷却水排出配管61を介して冷却水を燃料電池21から排出する。なお、冷却水出入口温度センサ40、41から出力される検知信号を、測定部27を介して制御部25が受信して、制御部25は、この検知信号に基づき、燃料電池発電装置100の運転状況に応じて燃料電池21の温度の適切に制御している。
また、燃料生成器23は、メタンガス等の原料ガスを、水蒸気を用いて改質する改質部23eと、改質部23eから流出する燃料ガス含有の一酸化炭素ガス(COガス)の一部を変成反応によって除去するCO変成部23fと、CO変成部23fから流出する燃料ガス含有のCOガスの濃度を10ppm以下に低下させ得るCO除去部23gと、によって構成されている。このような構成によって、COガス濃度を所定濃度レベル以下に低減させて、燃料電池21の動作温度域においてCOガスによってアノード14aに含まれる白金の被毒を防ぎ、その触媒活性の劣化が回避され得る。勿論、アノード14aに白金−ルテニウム合金等、耐COガス性(COガス酸化や無害化)を有する触媒を使用して触媒材料の面でもCOガス被毒の対策を講じている。
更に、燃料電池発電装置100の弁構成としては、三方電磁弁等の第一および第二の切り替え弁33、34と、開閉用電磁弁等の第一、第二、第三、第四および第五の開閉弁35、36、37、38、39と、が設置されている。また、アノード出口21Aoutから流出するガスの露点を測定する第一の露点センサ54(露点測定手段)とカソード出口21Coutから流出するガスの露点を測定する第二の露点センサ55(露点測定手段)とが、設置されている。
より詳しくは、第一の切り替え弁33は、アノード入口21Ainと燃料生成器23の間の燃料ガス供給配管43の途中に配置され、この第一の切り替え弁33の切り替え動作によって、燃料ガス供給配管43とアノード入口21Ainとの接続および燃料ガス供給配管43と第一のバイパス配管49との接続の何れかを選択できる。
また、第二の切り替え弁34は、加湿器24とカソード入口21Cinの間の酸化剤ガス供給配管45の途中に配置され、この第二の切り替え弁34の切り替え動作によって、酸化剤ガス供給配管45とカソード入口Cinとの接続および酸化剤ガス供給配管45と第二のバイパス配管50との接続の何れかを選択できる。
第一の露点センサ54と第一の開閉弁35は、アノード出口21Aoutと水除去部32の間のアノード排気配管44の途中に配置され、これにより第一の開閉弁35の開閉動作によりアノード出口21Aoutから流出するガス流を制御しながらそのガスの露点を測定し、これにより適切な発電が実行されているか否か判断可能である。
また、第二の露点センサ55と第二の開閉弁36は、カソード出口21Coutと加湿器24の間のカソード排気配管46の途中に配置され、第二の開閉弁36の開閉動作によりカソード出口21Coutから流出するガス流を制御しながらそのガスの露点を測定し、これにより適切な発電が実行されているか否かを判断可能である。
第三の開閉弁37は、第五の開閉弁39の上流側の原料ガス供給配管42から分岐する第一の原料ガス分岐配管51と燃料ガス供給配管43とを繋ぐ第二の原料ガス分岐配管52の途中に配置され、この第三の開閉弁37の開閉動作によりブースターポンプ22bから供給する原料ガスのアノード入口21Ainへの供給の有無を制御できる。
第四の開閉弁38は、第五の開閉弁39の上流側の原料ガス供給配管42から分岐する第一の原料ガス分岐配管51と酸化剤ガス供給配管45とを繋ぐ第三の原料ガス分岐配管53の途中に配置され、この第四の開閉弁38の開閉動作によりブースターポンプ22bから供給される原料ガスのカソード入口21Cinへの供給の有無を制御できる。
第五の開閉弁39は、ブースターポンプ22bと燃料生成器23の間の原料ガス供給配管42の途中に配置され、この第五の開閉弁39の開閉動作によりブースターポンプ22bから供給する原料ガスの燃料生成器23への供給の有無を制御できる。
なお、第一および第二の露点センサ54、55から出力される検知信号を制御部25は受け取って、制御部25は、この検知信号に基づいて燃料電池発電装置100の動作を適切に制御している。
また、原料ガス供給手段22およびブロア28並びに第一および第二の水供給手段74、75並びに燃料生成器23並びに燃料電池21の動作並びに第一および第二の切り替え弁33、34の切り替え動作並びに第一、第二、第三、第四および第五の開閉弁35、36、37、38、39の開閉動作は、各種機器の検知信号(例えば、温度信号)に基づいて制御部25によって制御されて、適切なDSS運転が実施されている。
以上に説明した燃料電池発電装置100について、その通常運転時(発電時)のガス供給の動作について説明する。
原料ガス供給手段22のガス清浄部22pにおいて原料ガスに含有する燃料電池21の性能劣化物質を除去して原料ガスを清浄化させたうえで、ブースターポンプ22bによって、開栓状態の第五の開閉弁39を通って原料ガス供給配管42を介して清浄化原料ガスが燃料生成器23に圧送供給される。
なおここで、原料ガスにメタンガス、エタンガス、プロパンガスおよびブタンガスを含有する都市ガス13Aを使用するため、ガス清浄部22pで都市ガス13Aに含まれる付臭剤のターシャリブチルメルカプタン(TBM)およびジメチルサルファイド(DMS)並びにテトラヒドロチオフィン(THT)等の不純物が吸着除去される。同時に、第二の水供給手段75から燃料生成器23の内部に水が供給されてこれが水蒸気に蒸発せしめられる。
こうして原料ガスと水蒸気から燃料生成器23の改質部23eにおいて改質反応によって水素リッチな燃料ガス(改質ガス)が生成される。燃料生成器23から流出する燃料ガスは、第一の切り替え弁33の切り替え動作によって燃料ガス供給配管43とアノード入口21Ainとを連通させたうえで、燃料ガス供給配管43を介して燃料電池21のアノード入口21Ainに供給され、燃料ガスが燃料電池21の燃料ガス流路18a(図1参照)を流れる間に、これがアノード14aにおいて(1)式の反応に利用される。
そして、燃料電池21に供給された燃料ガスのうち、燃料電池21で発電反応に利用されなかったオフガスは、アノード出口21Aoutから流出して、アノード排気配管44を介して第一の露点センサ54と開栓状態の第一の開閉弁35とを通って燃料電池21の外部に導かれる。
外部に導かれたオフガスは、アノード排気配管44に配置された水除去部32によって水を除去された後、燃料生成器23の燃焼部(図示せず)に送られて、そこで燃焼処理されると共に、このような燃焼によって発生する熱は、改質反応のような吸熱反応用の熱として利用される。
一方、酸化剤ガス供給手段としてのブロア28から酸化剤ガス供給配管45を介して加湿器24に供給された酸化剤ガス(空気)は、加湿器24において、第一の水供給手段74から供給する水によって加湿処理された後、第二の切り替え弁34の切り替え動作によって酸化剤ガス供給配管45とカソード入口21Cinとを連通させたうえで、酸化剤ガス供給配管45を介して燃料電池21のカソード入口21Cinに供給され、酸化剤ガスが燃料電池21の酸化剤ガス流路18c(図1参照)を流れる間に、これがカソード14cにおいて(2)式の反応に利用される。
そして、燃料電池21に供給された加湿酸化剤ガスのうち、燃料電池21で発電反応に利用されなかったものはカソード出口21Coutから流出して、カソード排気配管46を介して第二の露点センサ55と開栓状態の第二の開閉弁36とを通って燃料電池21の外部に導かれる。
外部に導かれた残余の酸化剤ガスは、カソード排気配管46を介して再び加湿器24へ還流されて、還流酸化剤ガス中に含まれる水および熱を加湿器24の内部においてブロア28から送られる新気の酸化剤ガスに与える。また加湿部24として、イオン交換膜を用いた全熱交換加湿器(図示せず)と温水加湿器(図示せず)とが併用されている。
また、冷却水供給手段29の冷却水タンク29tに溜まった冷却水は、水ポンプ29pによって、冷却水供給配管60を介して冷却水入口側温度センサ40を通って燃料電池21の水入口21Winに圧送供給され、これにより冷却水は、燃料電池21の冷却水通路19(図1参照)に導かれる。ここで、冷却水通路19を冷却水が流れる間に、冷却水は燃料電池21と熱交換して燃料電池21から熱を奪い、燃料電池21の温度が適切な温度に維持される。
そして、燃料電池21との熱交換を終えた冷却水は、冷却水排出配管61を介して冷却水出口側温度センサ41を通って冷却水タンク29tに戻される。
こうして、アノード14aの出力端子48およびカソード14cの出力端子47に回路部26が接続されて、回路部26に燃料電池21の内部で生成された電力が取り出される。回路部26の発電電圧は測定部27にてモニタされる。
次に、燃料電池発電装置100の起動開始時の動作について説明する。
燃料生成器23(改質部23e)の温度が700℃以下においては、改質部23eの水蒸気改質反応が適切に進行できない。よって起動開始時には、燃料生成器23から流出する燃料ガスは、アノード入口21Ainに導かれることなく、第一の切り替え弁33の切り替え動作によって、燃料ガス供給配管43をアノード排気配管44に、第一のバイパス配管49を介して連通させて、アノード排気配管44に導かれる。その後、アノード排気配管44に導かれた燃料ガスは、水除去部32において水除去された後、燃料生成器23の燃焼器に供給されて燃焼器の内部で燃焼させられる。これによって、燃料生成器23(改質部23e)の昇温を速やかに行えて、起動開始から発電までの時間を短縮できる。
ここで、本発明の実施の形態に係る燃料電池発電装置100の停止動作の一例(実施の形態の停止動作)について図3を参照しつつ説明する。併せて、これと比較する比較停止動作例を図4および図5を参照しつつ説明する。
〔実施の形態の停止動作〕
図3は、本発明の実施の形態に係る燃料電池発電装置の停止動作の一例を示すフローチャートである。
図3のフローチャートに示すような燃料電池21の内部の不活性ガス置換を伴う停止動作を採用することによって、酸素ガス混入に起因する燃料電池21の局所燃焼および水の雰囲気に起因する電極撥水性能の劣化並びにアノード電位上昇に起因するアノード14aのルテニウム溶出並びにカソード電位上昇に起因するカソード14cの白金酸化という不具合を解消することができる。
なおここでは、不活性ガスとして原料ガスが使用される。このように、不活性ガスに原料ガスを用いることによって不活性ガス供給装置を別途設ける必要がなく、燃料電池発電装置の構成が簡素化できる。
もっとも燃料電池21の内部をガス置換処理する際に、燃料電池21の触媒に悪影響を及ぼさないような原料ガスの選定および原料ガスの清浄化処置を行うことが必要である。具体的には、燃料電池21の白金触媒の表面に不純物が吸着して、水素過電圧を上昇させることを防止する目的で、ガス清浄部22pにより原料ガス中の不純物の除去、特にイオウ成分の除去は必要不可欠な清浄化処理である。また原料ガス自体の選択として、燃料電池21の白金触媒の活性阻害等をもたらさないガスを選定することが必要であり、この観点からメタンガス、プロパンガス、ブタンガスおよびエタンガス(またはこれらの混合ガス)の何れかのガスを使用することが望ましい。
最初に、燃料電池発電装置100の停止動作として、制御部25から回路部26への発電停止信号の送信を行い、これにより燃料電池21は発電動作を停止する(ステップS301)。
次いで、燃料電池発電装置100の停止に伴って、制御部25は、第一および第二の切り替え弁33、34を次のように動作させる(ステップS302)。
第一の切り替え弁33の切り替え動作により、燃料ガス供給配管43と第一のバイパス配管49とを連通して、燃料生成器23から流出する燃料ガスをアノード入口21Ainに導くことを停止する。同様に、第二の切り替え弁34の切り替え動作により、酸化剤ガス供給配管45と第二のバイパス配管50とを連通して、加湿器24から流出する酸化剤ガスをカソード入口21Cinに導くことを停止する。
その後、燃料電池21のカソード14cに充満した加湿酸化剤ガス(酸素ガス)を乾燥した不活性ガス(原料ガス)によって置換するため、制御部25は、第三および第五の開閉弁37、39を閉栓する一方、第四の開閉弁38を開栓する。こうして、原料ガス供給手段22のブースターポンプ22bから圧送された原料ガスは、燃料生成器23をバイパスして、ここで加湿処理されることなく、その露点温度10℃以下という乾燥状態に維持されたまま、第一の原料ガス分岐配管51および第三の原料ガス分岐配管53を通って酸化剤ガス供給配管45に流れ、燃料電池21のカソード入口21Cinに供給される。そして、この原料ガスがカソード14cに送り込まれることにより、原料ガスによってカソード14c(より具体的には酸化剤ガス流路18c)に充満する加湿した酸化剤ガス(酸素ガス)が置換され、かつこの原料ガスが酸化剤ガスと共に置換処理済ガスとしてカソード出口21Coutからカソード排気配管46に流出して、カソード排気配管46の途中に配置された第二の露点センサ55および開栓状態の第二の開閉弁36を通って外部に排出される(ステップS303)。
ここで、制御部25は、第二の露点センサ55の出力信号に基づきカソード出口21Coutから流出する置換処理済ガスの露点を監視している。そして、カソード出口21Coutから流出した置換処理済ガスの露点が所定温度(例えば、10℃)以下か否かを判定して(ステップS304)、露点が10℃より高ければ(ステップS304においてNo)、ステップS303における原料ガス供給動作が反復される。
一方、露点が10℃以下であれば(ステップS304においてYes)、制御部25は、カソード14cに充満された酸化剤ガスを充分に原料ガスにより置換できたと判断して、次のステップに進み、原料ガスを充満したカソード14cの内部を封止するため、制御部25は、第二および第四の開閉弁36、38を閉める(ステップS305)。こうして、制御部25は、原料ガスの流量や置換時間に加え、置換処理済ガスの露点に基づいて原料ガスによる酸化剤ガスの置換状態の判定(置換したか否かの判定)を的確に行い得る。
以上のようにして、燃料電池21のカソード14cの内部(酸化剤ガス流路18c)に充満する加湿した酸化剤ガスを、乾燥した原料ガスに置き換えるというガス置換処理が実行される。なお、酸化剤ガス流路18cにのみ充満する酸化剤ガスを原料ガスにより置換するため、短時間に置換動作を終えることが可能であり、かつ原料ガスの消費量を極力抑えることができる。
続いて、燃料電池21のアノード14aに充満した加湿燃料ガス(水素ガス)を乾燥した不活性ガス(原料ガス)によって置換するため、制御部25は、第三の開閉弁37を開栓する。なお、第四および第五の開閉弁38、39は、既に閉栓されている。こうして、原料ガス供給手段22のブースターポンプ22bから圧送された原料ガスは、燃料生成器23をバイパスして、ここで加湿処理されることなく、その露点温度10℃以下という乾燥状態に維持されたまま、第一の原料ガス分岐配管51および第二の原料ガス分岐配管52を通って燃料ガス供給配管43に流れ、燃料電池21のアノード入口21Ainに供給される。そして、この原料ガスがアノード14aに送り込まれることにより、原料ガスによってアノード14a(より具体的には燃料ガス流路18a)に充満する加湿した燃料ガス(水素ガス)が置換され、かつこの原料ガスが燃料ガスと共に置換処理済ガスとしてアノード出口21Aoutからアノード排気配管44に流出して、アノード排気配管44の途中に配置された第一の露点センサ54および開栓状態の第一の開閉弁35を通って水除去部32に排出される(ステップS306)。
ここで、制御部25は、第一の露点センサ54の出力信号に基づきアノード出口21Aoutから流出する置換処理済ガスの露点を監視している。そして、アノード出口21Aoutから流出した置換処理済ガスの露点が所定温度(例えば、10℃)以下か否かを判定して(ステップS307)、露点が10℃より高ければ(ステップS307においてNo)、ステップS306における原料ガス供給動作が反復される。
一方、露点が10℃以下であれば(ステップS307においてYes)、制御部25は、アノード14aに充満した燃料ガスを充分に原料ガスにより置換できたと判断して、次のステップに進み、原料ガスを充満したアノード14aの内部を封止するため、制御部25は、第一および第三の開閉弁35、37を閉める(ステップS308)。
こうして、制御部25は、原料ガスの流量や置換時間に加え、置換処理済ガスの露点に基づいて原料ガスによる燃料ガスの置換状態の判定(置換したか否かの判定)を的確に行い得る。
以上のようにして、燃料電池21のアノード14aの内部(燃料ガス流路18a)に充満する加湿した燃料ガスを、乾燥した原料ガスに置き換えるというガス置換処理が実行される。なお、燃料ガス流路18aにのみ充満する燃料ガスを原料ガスにより置換するため、短時間に置換動作を終えることが可能であり、かつ原料ガスの消費量を極力抑えることができる。
またこの際、第五の開閉弁39を一時的に開いて、燃料生成器23の内部を原料ガスによりパージ処理しても良いが、後ほど説明する冷却水の供給停止と同時に、この原料ガス供給が止まるように第五の開閉弁39も併せて閉栓する。
次いで、燃料電池21の温度を外気温度近傍にまで冷却するため、制御部25は、冷却水タンク29tに溜まった冷却水の温度を適切に調整しながら、それを、冷却水供給配管60を介して水ポンプ29pにより燃料電池21の水入口21Winに圧送供給すると共に、その水出口21Woutから冷却水排出配管61に流出する。こうして、制御部25は、冷却水通路19(図1参照)に冷却水を通流させることにより燃料電池21の温度を下げる(ステップS309)。
ここで、制御部25は、冷却水排出配管61に配置した冷却水出口側温度センサ41の出力信号に基づき水出口21Woutから流出する冷却水の温度を監視している。そして、水出口21Woutから流出する冷却水の温度が所定温度(例えば、30℃)以下か否かを判定して(ステップS310)、温度が30℃より高ければ(ステップS310においてNo)、ステップS309における冷却水供給動作が反復される。
一方、温度が30℃以下であれば(ステップS310においてYes)、制御部25は、燃料電池21を外気温度近傍にまで冷却できたと判断して、水ポンプ29pの冷却水供給出力を停止し(ステップS311)、一連の燃料電池発電装置100の停止動作を終え、燃料電池発電装置100の再起動時までこの状態で燃料電池発電装置100は保管される。
なおここまで、露点として10℃を例示し、冷却水温度として30℃を例示しているが、これらの数値条件は、外部環境の状況変化に応じて適宜修正可能なものである。
〔第一の比較例の停止動作〕
図4は、上記の実施の形態に係る停止動作と比較した比較停止動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示す停止動作においては、アノード14aに充満した加湿燃料ガス(水素ガス)が、乾燥した不活性ガス(原料ガス)により置換された後、カソード14cに充満した加湿酸化剤ガス(酸素ガス)が、乾燥した不活性ガス(原料ガス)により置換される点で、図3に示す停止動作と相違している。よって既に説明したように、このような比較例の停止動作を行うと、アノード14aのルテニウム溶出やカソード14cの白金酸化という不具合が生じる可能性がある。
なおここでは、燃料電池発電装置100の停止動作(ステップS401)および燃料電池発電装置100の停止に伴う弁動作(ステップS402)並びに燃料電池21の冷却動作(ステップS409〜ステップS411)は、図3に示した動作(ステップS301、ステップS302、ステップS309〜ステップS311)と同じため、これらの動作の説明は省略する。
燃料電池21のアノード14aに充満した加湿燃料ガス(水素ガス)を乾燥した不活性ガス(原料ガス)によって置換するため、制御部25は、第四および第五の開閉弁38、39を閉栓する一方、第三の開閉弁37を開栓する。こうして、原料ガス供給手段22のブースターポンプ22bから圧送された原料ガスは、燃料生成器23をバイパスして、ここで加湿処理されることなく、その露点温度10℃以下という乾燥状態に維持されたまま、第一の原料ガス分岐配管51および第二の原料ガス分岐配管52を通って燃料ガス供給配管43に流れ、燃料電池21のアノード入口21Ainに供給される。そして、この原料ガスがアノード14aに送り込まれることにより、原料ガスによってアノード14a(より具体的には燃料ガス流路18a)に充満する加湿した燃料ガス(水素ガス)が置換され、かつこの原料ガスが燃料ガスと共に置換処理済ガスとしてアノード出口21Aoutからアノード排気配管44に流出して、アノード排気配管44の途中に配置された第一の露点センサ54および開栓状態の第一の開閉弁35を通って水除去部32に排出される(ステップS403)。
ここで、制御部25は、第一の露点センサ54の出力信号に基づきアノード出口21Aoutから流出する置換処理済ガスの露点を監視している。そして、アノード出口21Aoutから流出した置換処理済ガスの露点が所定温度(例えば、10℃)以下か否かを判定して(ステップS404)、露点が10℃より高ければ(ステップS404においてNo)、ステップS403における原料ガス供給動作が反復される。
一方、露点が10℃以下であれば(ステップS404においてYes)、制御部25は、アノード14aに充満された燃料ガスを充分に原料ガスにより置換できたと判断して、次のステップに進み、原料ガスを充満したアノード14aの内部を封止するため、制御部25は、第一および第三の開閉弁35、37を閉める(ステップS405)。
このようにして、燃料電池21のアノード14a(燃料ガス流路18a)の内部に充満する加湿した燃料ガスを、乾燥した原料ガスに置き換えるというガス置換処理が実行される。
続いて、燃料電池21のカソード14cに充満した加湿酸化剤ガス(酸素ガス)を乾燥した不活性ガス(原料ガス)によって置換するため、制御部25は、第四の開閉弁38を開栓する。なお、第三および第五の開閉弁37、39は、既に閉栓されている。こうして、原料ガス供給手段22のブースターポンプ22bから圧送された原料ガスは、燃料生成器23をバイパスして、ここで加湿処理されることなく、その露点温度10℃以下という乾燥状態に維持されたまま、第一の原料ガス分岐配管51および第三の原料ガス分岐配管53を通って酸化剤ガス供給配管45に流れ、燃料電池21のカソード入口21Cinに供給される。そして、この原料ガスがカソード14cに送り込まれることにより、原料ガスによってカソード14c(より具体的に酸化剤ガス流路18c)に充満する加湿した酸化剤ガス(酸素ガス)が置換され、かつこの原料ガスが酸化剤ガスと共に置換処理済ガスとしてカソード出口21Coutからカソード排気配管46に流出して、カソード排気配管46の途中に配置された第二の露点センサ55および開栓状態の第二の開閉弁36を通って外部に排出される(ステップS406)。
ここで、制御部25は、第二の露点センサ55の出力信号に基づきカソード出口21Coutから流出する置換処理済ガスの露点を監視している。そして、カソード出口21Coutから流出した置換処理済ガスの露点が所定温度(例えば、10℃)以下か否かを判定して(ステップS407)、露点が10℃より高ければ(ステップS407においてNo)、ステップS406における原料ガス供給動作が反復される。
一方、露点が10℃以下であれば(ステップS407においてYes)、制御部25は、カソード14cに充満された酸化剤ガスを充分に原料ガスにより置換できたと判断して、次のステップに進み、原料ガスを充満したカソード14cの内部を封止するため、制御部25は、第二および第四の開閉弁36、38を閉める(ステップS408)。
このようにして、燃料電池21のカソード14c(酸化剤ガス流路18c)の内部に充満する加湿した酸化剤ガスを、乾燥した原料ガスに置き換えるというガス置換処理が実行される。
なおここまで、露点として10℃を例示し、この数値条件は、外部環境の状況変化に応じて適宜修正可能なものである。
〔第二の比較例の停止動作〕
図5は、上記の実施の形態に係る停止動作と比較した比較停止動作の他の例を示すフローチャートである。
図5に示す停止動作においては、アノード14aに充満した加湿燃料ガス(水素ガス)およびカソード14cに充満した加湿酸化剤ガス(酸素ガス)が、乾燥した原料ガスにより置換されることなく、制御部25は、この状態で燃料電池21を冷却している。よって既に説明したように、このような比較例の停止動作を行うと、酸素ガス混入に起因する燃料電池21の局所燃焼や水の雰囲気に起因する電極撥水性能という不具合が生じる可能性がある。
最初に、燃料電池発電装置100の停止動作として、制御部25の回路部26への発電停止信号の送信が行われ、これにより燃料電池21は発電動作を停止する(ステップS501)。
次いで、燃料電池発電装置100の停止に伴って、制御部25は、第一および第二の切り替え弁33、34を次のように動作する(ステップS502)。
第一の切り替え弁33の切り替え動作により、燃料ガス供給配管43と第一のバイパス配管49とを連通して、燃料生成器23から流出する燃料ガスをアノード入口21Ainに導くことを停止する。同様に、第二の切り替え弁34の切り替え動作により、酸化剤ガス供給配管45と第二のバイパス配管50とを連通して、加湿器24から流出する酸化剤ガスをカソード入口21Cinに導くことを停止する。
その後、加湿した燃料ガスを充満したアノード14aの内部を封止するため、制御部25は、第一および第三の開閉弁35、37を閉栓状態にして(ステップS503)、加湿した酸化剤ガスを充満したカソード14cの内部を封止するため、制御部25は、第二および第四の開閉弁36、38を閉栓状態にする(ステップS504)。
なお、燃料電池21の冷却動作(ステップS505〜ステップS507)は、図3に示したもの(ステップS309〜ステップS311)と同じであるため、これらの動作の説明は省略する。