本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するための一例を示したに過ぎず、本発明を限定するものではない。
(第1の実施形態)
≪UWB−IR無線通信の受信装置≫
図1は、本発明の第1の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の構成を示すブロック図である。
本実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置が受信するUWB−IR無線通信のインパルス信号Implsの時間幅が略2ナノ秒で、インパルス信号Implsとインパルス信号Implsとの間隔Tiが略30ナノ秒である。また、インパルス信号Implsの周波数スペクトルは、中心周波数が略4GHzで周波数帯域が約500MHzの超高周波帯域信号である。本実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置は、受信アンテナ(ANT)101と、低雑音増幅器(LNA)110と、ミキサ(MIX)120、121と、低域通過フィルタ(LPF)130、131と、可変利得増幅器(VGA)140、141と、アナログデジタル変換器(ADC)150、151と、ベースバンド処理ユニット(BB)160と、位相ロックループ(PLL)170と、クロック生成ユニット(Clk_Gen)180と、動作タイミング制御ユニット190(Opt_Cnt)とを含んでいる。
受信アンテナ101で受信したUWB−IR無線通信のインパルス受信信号Implsは、低雑音増幅器110によって増幅され、ミキサ120、121によりインパルス受信信号と位相ロックループ170から出力されるローカル信号S200、S201とのミキシングによる周波数変換が行われる。その結果、約500MHzの周波数帯域のアナログベースバンド信号が、ミキサ120、121の出力から形成される。尚、位相ロックループ170からのローカル信号S200、S201は、位相が90度互いに異なる信号である。
受信アンテナ101で受信したUWB−IR無線通信のインパルス受信信号Implsは、図1に示すように中心周波数が略4GHzのRF超高周波成分と約500MHzの周波数帯域幅のアナログベースバンド信号成分とを含んでいる。尚、約500MHzの周波数帯域幅のアナログベースバンド信号成分は、インパルス受信信号Implsの包落線信号成分に対応している。後に説明するUWB−IR無線通信の同期捕捉が完了すると、位相ロックループ170からミキサ120、121に供給されるローカル信号S200、S201の位相は、インパルス受信信号Implsの略4GHzのRF超高周波成分の位相と一致するようになる。
ミキサ120、121は受信したインパルス受信信号Implsの略4GHzのRF超高周波信号を約500MHzの周波数帯域幅のアナログベースバンド信号へ周波数ダウンコンバージョンする際に、ローカル信号S200、S201のタイミングでインパルス受信信号Implsの略4GHzのRF超高周波成分をサンプリングする。このサンプリングにより、ミキサ120、121はインパルス受信信号Implsの包落線信号成分(アナログベースバンド信号成分)を形成する。従って、ミキサ120、121は、周波数ダウンコンバータとして動作するとともに、ローカル信号S200、S201のタイミングでインパルス受信信号Implsの信号レベルを同期検波する同期検波復調器としても動作する。図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置でミキサ120、121が同期検波復調器としても動作するので、この受信装置はコヒーレントな受信装置と呼ばれている。
ミキサ120、121の出力はインパルス受信信号Implsの包落線信号成分(アナログベースバンド信号成分)を含むとともに、不必要なインパルス受信信号Implsの略4GHzのRF超高周波成分やローカル信号S200、S201の超高周波成分も含んでいる。これらの不必要な超高周波成分を抑圧するために、ミキサ120、121の出力信号は低域通過フィルタ(LPF)130、131に供給される。もし、ローカル信号S200、S201の位相がインパルス受信信号Implsの略4GHzのRF超高周波成分の位相と一致していなければ、同期検波復調器としてのミキサ120、121の出力からインパルス受信信号Implsの包落線信号成分(アナログベースバンド信号成分)を形成することができず、殆んど略4GHzのRF超高周波成分のみが生成される。このように、周波数変換されたアナログベースバンド信号は、低域通過フィルタ(LPF)130、131によって所望の周波数信号が抽出されて、可変利得増幅器140、141によって所定のレベルまで増幅される。
図1のUWB−IR無線通信の受信装置の低域通過フィルタ(LPF)130、131も、本発明に先立って検討されたUWB−IR無線通信の受信装置のミキサの出力に接続された低域通過フィルタと同様に、5GHz無線LANによる略1GHzのスプリアス妨害信号の妨害信号レベルを十分に低減してUWB−IR無線通信の希望のアナログベースバンド信号を実用的な受信レベルに確保するために、図25に示す5次フィルタによって構成されている。この5次フィルタは、伝送ゼロ点生成正西部TZG、2次低域通過フィルタ2ndLPF、1次低域通過フィルタ1stLPF、2次低域通過フィルタ2ndLPF、1次全域通過フィルタ1stAPFを含む5次フィルタで構成され、多数のオペレーショナルトランスコンダクタンスアンプOTA1・・・OTA8と多数の容量C1・・・C6とを含んでいる。
従って、図26に示すように、低域通過フィルタLPFの−3dBダウンのカットオフ周波数fcは略350MHzであり、500MHzの入力周波数での減衰量は−20dB以上に小さく設定され、1GHzの入力周波数での減衰量は−60dB以下に大きく設定されている。
また、図27に示すように、略350MHzのカットオフ周波数fc以下の入力周波数で図25に示した低域通過フィルタLPFは略2〜3ナノ秒の遅延時間を有している。尚、可変利得増幅器140、141の利得は、ベースバンド処理ユニット160がアナログデジタル変換器150、151の出力信号を基に制御してもよいし、制御回路を追加して可変利得増幅器140、141の出力信号強度を検出し、その結果を基に制御してもよい。その後、増幅されたアナログベースバンド信号はアナログデジタル変換器(ADC)150、151によってデジタルベースバンド信号RX_Dataに変換され、ベースバンド処理ユニット160に供給される。
ベースバンド処理ユニット160はアナログデジタル変換器150、151から出力されるデジタルベースバンド信号RX_Dataを基に、インパルス受信信号の同期捕捉、同期追跡及びデータ復元等を行う。そして、同期捕捉と同期追跡の結果を基に、ベースバンド処理ユニット160はタイミング制御信号S209を出力して、クロック生成ユニット180から出力されるクロック信号S202のタイミングを制御する。例えば、同期追跡の結果、インパルス受信信号の到来タイミングがインパルス受信信号をサンプリングするタイミングより早いことが分かった場合、クロック信号S202のタイミングを早め、インパルス受信信号の到来タイミングにインパルス受信信号をサンプリングするタイミングを近接させる。
クロック生成ユニット180からのクロック信号S202は動作タイミング制御ユニット190に供給され、動作タイミング制御ユニット190はアナログデジタル変換部150、151とベースバンド処理ユニット160にクロック信号S203を出力する。更に、動作タイミング制御ユニット190は、低雑音増幅器110に接続された電源スイッチSW110、ミキサ120、121に接続された電源スイッチSW120、SW121、低域通過フィルタ130、131に接続された電源スイッチSW130、SW131、可変利得増幅器140、141に接続された電源スイッチSW140、SW141、アナログデジタル変換器150、151に接続された電源スイッチSW150、SW151へそれぞれ間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208を供給する。間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208は、各段の回路の電流経路を遮断する電源スイッチSW110、SW120、SW121、SW130、SW131、SW140、SW141、SW150、SW151のオン・オフ制御動作を行うことによって、各段の回路の間欠動作を制御する。例えば、これらの電源スイッチはハイレベルの電源電圧が入力されるとオンとなり、ローレベルのグラウンド電圧が入力されるとオフとなるようなスイッチの場合には、間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208は各段の回路の動作期間のみハイレベルの電源電圧となり、残りの期間はローレベルのグラウンド電圧となるような波形となる。
図2は、図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作例を説明するための波形図である。従来より、例えばGSM方式(Global System for Mobile Communication)の携帯電話では、携帯電話端末の通信動作は、TDMA(Time-Division Multiple Access)方式に従って、基地局からの受信を行う受信スロットと、基地局への送信を行う送信スロットと、受信も送信も行わないアイドルスロットとに分割される。従って、図2の上の3つの波形に示すように、GSM方式のTDMA方式による通信方式での受信スロットでは、携帯電話端末はRF受信信号Rx_RFの受信とベースバンド信号の受信パケットデータRxPCKの受信のためにRF受信間欠動作RX_RF_Imp_OPは活性状態Actとされる。しかし、送信スロットとアイドルスロットとでは、RF受信信号Rx_RFの受信は中止され、ベースバンド信号の受信パケットデータRxPCKの受信も中止され、RF受信間欠動作RX_RF_Imp_OPはディスエーブル状態Disとされる。
これに対して、図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置では、図2の下の2つの波形に示すように、パケット受信中のUWB−IR通信のインパルス受信信号UWB_IRが存在する期間とインパルス受信信号UWB_IRが存在しない期間とでUWB−IR受信間欠動作UWB_IR_Imp_OPはそれぞれ活性状態Actとディスエーブル状態Disとに制御される。
従って、図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置では、ベースバンド処理ユニット160に供給されるクロック信号S203と各段の回路の電源スイッチに供給される間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208とのタイミングは、各段の回路を信号が伝達する際の伝達遅延時間と各段の回路の電流経路を制御するスイッチがオンとされてから各段の回路が動作を開始するまでの起動時間とを考慮して、設定さていれる。そのため、伝達遅延時間が他の回路と比較して長い回路は、他の回路よりも長い起動時間が必要である。
図3は、図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作を説明するための波形図である。特に、UWB−IR無線通信のインパルス信号の略2ナノ秒の時間幅Tpよりも、低域通過フィルタ(LPF)130、131での略2〜3ナノ秒の遅延時間Tdが長いことが考慮されている。従って、低域通過フィルタ130、131を活性状態Actに制御するための間欠動作制御信号S206がハイレベルである期間が、低域通過フィルタ130、131の略2〜3ナノ秒の遅延時間TdとUWB−IR無線通信のインパルス信号の略2ナノ秒の時間幅TPとの合計時間より長く設定されている。また図3に示すように、各段の回路の電源スイッチに供給される間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のハイレベル期間に各段の回路は活性状態Actに制御され、間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のローレベル期間に各段の回路はディスエーブル状態Disに制御される。すなわち、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ130、131、可変利得増幅器140、141、アナログデジタル変換器150、151は、それぞれの入力信号を正常に処理できるように、それぞれの回路の伝達遅延時間と起動時間を基に、全ての回路の動作期間とタイミングとが等しく設定されている。その結果、低雑音増幅器110の出力信号S211、ミキサ120の出力信号S212、低域通過フィルタ130の出力信号S213、可変利得増幅器140の出力信号S214に示すように各段の回路で信号が喪失されることなく伝達されて、アナログデジタル変換器150によってクロック信号S203のタイミングSPLでサンプリングされ、デジタルベースバンド信号に変換される。
図4は、図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の他の間欠動作を説明するための波形図である。図3に示すように、各段の回路の電源スイッチに供給される間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のハイレベル期間に各段の回路は活性状態Actに制御され、間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のローレベル期間に各段の回路はディスエーブル状態Disに制御される。また図4の波形図が図3の波形図と相違するのは、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ130、131、可変利得増幅器140、141、アナログデジタル変換器150、151が、それぞれの入力信号を正常に処理できるように、それぞれの回路の伝達遅延時間と起動時間を基に、それぞれの回路の動作期間とタイミングを個別に設定していることである。すなわち、低域通過フィルタ130が活性状態Actに制御される動作期間が、他の回路が活性状態Actに制御される動作期間よりも長く設定されている。従って、図3の波形図の場合と比較して、図4の波形図の場合には各段の回路における無駄な動作期間を削減できるため、さらに消費電力を低減できる。
また、図3の波形図と図4の波形図の間の波形図を採用することも可能である。すなわち、一部の回路の動作期間とタイミングとを等しく設定して、残りの回路の動作期間とタイミングとを個別に設定することも可能である。例えば、低雑音増幅器110とミキサ120、121の動作期間とタイミングとを等しく設定して、低域通過フィルタ130、131と可変利得増幅器140、141の動作期間とタイミングとを個別に設定してもよい。
尚、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の構成は、一例に過ぎない。例えば、低雑音増幅器110の前段あるいは後段に帯域通過フィルタまたは高域通過フィルタを挿入でき、低域通過フィルタや可変利得増幅器を複数個使用でき、増幅器を追加できる。その場合には、これらの追加された回路に、同様に間欠動作制御信号を供給して間欠動作制御を行うものである。
また、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の構成は、無線通信を想定した一例である。しかし、本発明は、無線通信に限定されるものではなく、UWB−IR有線通信の受信装置にも適用することができる。無線通信と有線通信との差は、伝播経路の相違でしかない。UWB−IR有線通信の受信装置の場合には、受信アンテナ101を用いず、通信信号線を低雑音増幅器110に直接接続すれば良い。例えば、プリント基板上の配線や、電源線や、その他の物質を介して通信する。尚、低雑音増幅器110の前段もしくは後段にイコライザ(波形等化器)を配置してもよく、その場合にはイコライザを含むUWB−IR有線通信の受信装置を構成する各段の回路に間欠動作を実行させることが可能である。また、伝達遅延時間や起動時間が非常に長くディスエーブル状態Disの動作停止期間が十分に取れない回路がある場合には、その回路以外の回路について、間欠動作を行えばよい。また、1つの回路ブロック内に動作停止できる部分と動作停止できない部分とが混在する場合には、動作停止できる部分の回路について間欠動作を行えばよい。例えば、アナログデジタル変換器(ADC)150、151のアナログ入力信号と基準電圧を比較する比較器は動作停止させ、基準電圧を生成するバンドギャップ電圧発生回路は起動時間が長いため間欠動作や動作停止をさせない等である。
図5は、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の動作タイミング制御ユニット190、クロック生成ユニット180の構成を示すブロック図である。同図に示すように、動作タイミング制御ユニット190は遅延回路列191と論理回路192とで構成され、クロック生成ユニット180は発振器181と遅延ロックループ182とセレクタ183とで構成されている。発振器181の出力からのクロック信号は、遅延ロックループ182に供給される。遅延ロックループ182では、図5の中央の詳細図に示すように、発振器181の出力からのクロック信号の位相と遅延ロックループ182の可変遅延回路VDLの遅延クロック信号との位相が一致するように、遅延ロックループ182の位相比較器PDとチャージポンプCPとループフィルタLFとが負帰還制御動作を行う。この負帰還制御は、ループフィルタLFの出力の遅延時間制御信号S210により行われる。
図5の下の波形図に示すように、UWB−IR無線通信でのペイロードデータDataの転送の前に転送されるプリアンブルデータPreambleの受信データRx_Dataを利用して、UWB−IR無線通信の受信装置の同期捕捉が実行される。ベースバンド処理ユニット160を介してアナログデジタル変換器150、151からのプリアンブルデータPreambleの受信データRx_Dataが、制御回路Cntの入力に供給されている。制御回路Cntの出力の制御信号S209は、セレクタ183に対して初期値として可変遅延回路VDLの1段目の遅延回路D0の出力信号L0を選択して出力信号S202として出力させる。クロック生成部180でこの選択されたクロック出力信号S202のタイミングにより、動作タイミング制御部190から生成される間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のタイミングが決定される。このタイミングでの間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208にUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路が応答する。UWB−IR受信装置のアナログデジタル変換器(ADC)150、151の出力からベースバンド処理ユニット(BB)160へデジタルベースバンド信号が供給され、このデジタルベースバンド信号に基づいて供給されるプリアンブルデータPreambleの受信データRx_Dataから正確な“1”と“0”との2値データが得られたかを制御回路Cntがチェックする。正確な2値データが得られなかった場合には、制御回路Cntの出力の制御信号S209はセレクタ183に対して可変遅延回路VDLの2段目の遅延回路D1の出力信号L1を選択して出力信号S202として出力させ、制御回路Cntは正確な2値データが得られるか否かを再びチェックする。同様な処理の繰り返しにより、クロック生成部180で選択され出力されるクロック出力信号S202のタイミングがプリアンブルデータPreambleの受信データRx_Dataのタイミングと一致して、UWB−IR無線通信の受信装置の同期捕捉が完了する。
同期捕捉が完了した時点で、UWB−IR無線通信でのペイロードデータDataを受信するために、同期捕捉が完了したクロック生成部180のクロック出力信号S202に基づき動作タイミング制御部190は間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208の最終的なタイミングを決定するものである。
動作タイミング制御部190の遅延回路列191の直列接続された各遅延回路は、クロック生成部180からのクロック出力信号S202に応答して遅延信号を出力する。遅延回路列191から最初に出力される遅延パルスが論理回路192の3個目のAND回路の非反転入力端子に供給されて、3個目のAND回路の出力から低域通過フィルタ130、131を活性状態Actに制御する間欠動作制御信号S206が生成される。遅延回路列191から2番目に出力される遅延パルスが論理回路192の5個目のAND回路の非反転入力端子に供給されて、低雑音増幅器110を活性状態Actに制御する間欠動作制御信号S204が生成される。遅延回路列191から3番目に出力される遅延パルスが論理回路192の4個目のAND回路の非反転入力端子に供給されて、ミキサ120、121を活性状態Actに制御する間欠動作制御信号S205が生成される。遅延回路列191から4番目に出力される遅延パルスが論理回路192の2個目のAND回路の非反転入力端子に供給されて、可変利得増幅器140、141を活性状態Actに制御する間欠動作制御信号S207が生成される。遅延回路列191から5番目に出力される遅延パルスが論理回路192の5個目のAND回路の反転入力端子に供給されて、低雑音増幅器110をディスエーブル状態Disに制御する間欠動作制御信号S204が生成される。遅延回路列191から6番目に出力される遅延パルスが論理回路192の4個目のAND回路の反転入力端子に供給されて、ミキサ120、121をディスエーブル状態Disに制御する間欠動作制御信号S205が生成される。遅延回路列191から7番目に出力される遅延パルスが論理回路192の1個目のAND回路の非反転入力端子に供給されて、アナログデジタル変換器150、151を活性状態Actに制御する間欠動作制御信号S208が生成される。遅延回路列191から8番目に出力される遅延パルスが論理回路192の3個目のAND回路の反転入力端子に供給されて、3個目のAND回路の出力から低域通過フィルタ130、131をディスエーブル状態Disに制御する間欠動作制御信号S206が生成される。遅延回路列191から9番目に出力される遅延パルスが論理回路192の2個目のAND回路の反転入力端子に供給されて、可変利得増幅器140、141をディスエーブル状態Disに制御する間欠動作制御信号S207が生成される。遅延回路列191から10番目に出力される遅延パルスが論理回路192の1個目のAND回路の反転入力端子に供給されて、アナログデジタル変換器150、151をディスエーブル状態Disに制御する間欠動作制御信号S208が生成される。このようにして、図5に示した動作タイミング制御ユニット190、クロック生成ユニット180を使用することによって、図4の波形図に示した間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208の波形を生成することが可能となる。
尚、動作タイミング制御ユニット190の遅延回路列191の各遅延回路は、クロック生成ユニット180内の遅延ロックループ182の可変遅延回路VDLを構成する各遅延回路D0…Dnと同一とすることが推奨される。また、図5に示すように、遅延ロックループ182のループフィルタLFの遅延時間制御信号S210を遅延回路列191の各遅延回路にも供給して遅延時間を制御することが推奨される。また、遅延回路列191の遅延回路の直列接続数で各間欠動作制御信号のタイミングを設定するだけではなく、各遅延回路の遅延時間を個々に設定することにより、各間欠動作制御信号のタイミングを設定してもよい。また、伝達遅延時間が短く、起動時間があまり変わらない回路がある場合には、共通の間欠動作制御信号を使用することができる。例えば、低雑音増幅器110の伝達遅延時間が短く、低雑音増幅器110とミキサ120、121の起動時間の差が小さければ、間欠動作制御信号S204を低雑音増幅器110だけではなく、ミキサ120、121にも供給することができる。この場合、間欠動作制御信号S205を使用しないため、間欠動作制御信号S205を生成する論理回路は不必要となる。さらに、可変利得増幅器140の動作期間が低雑音増幅器110の動作期間と略等しく、タイミングのみが異なる場合は、間欠動作制御信号S204を遅延させ、可変利得増幅器140に供給することができる。この場合、間欠動作制御信号S207を使用しないため、間欠動作制御信号S207を生成する論理回路は不必要となる。以上のように同期捕捉と同期追跡の結果に基づいて制御されたクロック出力信号S202を使用することにより、アナログデジタル変換器150、151のサンプリングタイミングに合わせて間欠動作することができるため、同期捕捉後のみならず、待ち受け時にも間欠動作が可能となる。
図6は、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の動作タイミング制御ユニット190、クロック生成ユニット180の他の構成を示すブロック図である。同図に示すように、動作タイミング制御ユニット190とクロック生成ユニット180とは、発振器181と、遅延ロックループ182と、セレクタ184と、論理回路192とで構成されている。発振器181のクロック出力信号は、遅延ロックループ182に供給される。遅延ロックループ182の複数の遅延回路からの互いに位相の異なる複数の遅延信号は、セレクタ184に供給される。遅延ロックループ182の各遅延回路での遅延信号は、同期捕捉及び同期追跡に必要な時間分解能を有する。セレクタ184には、図5と同様な制御回路Cntの出力の制御信号S209が供給される。セレクタ184は遅延ロックループ182の複数の遅延回路からセレクタ184に供給された複数の遅延信号のタイミングを選択して、論理回路192に供給する。これらのタイミング信号は論理回路192で合成され、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ130、131、可変利得増幅器140、141、アナログデジタル変換器150、151の動作期間を制御する間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208が論理回路192から出力される。
図6に示した動作タイミング制御ユニット190、クロック生成ユニット180の構成は、図5に示した遅延回路列191の機能を図5の遅延ロックループ182に持たせているので、図5の遅延回路列191を不必要としている。そのため図6の構成は、図5の構成において遅延回路列191の遅延回路の直列接続数が大きい場合に特に好適である。更に、図3の波形図の間欠動作のように、各段の回路の間欠動作制御信号が等しい動作期間及びタイミングである場合に、セレクタ184の出力信号を3本に減少してセレクタ184の回路規模を縮小する場合にも好適である。もちろん、セレクタ184の本数の減少した出力信号をさらに遅延させて、複数のタイミングの間欠動作制御信号を生成することも可能である。
図7は、直列接続された複数の信号反転回路を間欠動作させるための複数のスイッチによる制御動作を説明するための図である。一方、図1のUWB−IR無線通信の受信装置では、1段目の低雑音増幅器110と、2段目のミキサ120、121と、3段目の低域通過フィルタ130、131と、4段目の可変利得増幅器140、141と、5段目のアナログデジタル変換器150、151とが直列に接続されている。
図1のUWB−IR無線通信の受信装置の直列接続回路では、1段目と3段目と5段目の電子回路の間欠動作を制御するスイッチは接地電圧GNDの側に接続され、2段目と4段目の電子回路の間欠動作を制御するスイッチは電源電圧Vddの側に接続されている。一般に種々の電子回路はMOSトランジスタ等の増幅トランジスタを含むので、電子回路の信号入力端子に供給される入力電圧の位相と逆位相の出力電圧が出力端子から生成されることが多い。
図7の回路では、直列接続された信号反転回路301、302を間欠動作させるためのスイッチ311、312が全て接地電圧GNDの側に接続されている。従って、信号反転回路301、302をディスエーブル状態として信号反転回路301、302の電流を遮断するようにスイッチ311、312をオフに制御している時には、信号反転回路301、302の出力端子のレベルはともに電源電圧Vddとなる。信号反転回路301、302を活性状態にするためにスイッチ311、312をオン状態に制御すると、信号反転回路301、302に動作電流が流れ始めるので、信号反転回路301、302の出力端子のレベルはともに電源電圧Vddから所定の接地電圧GNDに低下しようとする。実際に、1段目の信号反転回路301は、入力電圧のレベルに応答して出力電圧レベルは電源電圧Vddから所定の接地電圧GNDに低下する。この1段目の信号反転回路301の出力電圧レベルの電源電圧Vddから所定の接地電圧GNDへのレベル低下は2段目の信号反転回路302の入力電圧レベル変化となるので、2段目の信号反転回路302は入力電圧レベル変化と逆のレベル上昇の出力電圧を発生しようとする。しかし、信号反転回路302に動作電流が流れ始めていたので、信号反転回路302の出力端子の電圧レベルは電源電圧Vddから所定の接地電圧GNDへ低下しようとしていた。従って、2段目の信号反転回路302では、出力端子の出力電圧レベルの制御に関して互いに矛盾する動作が行われるので、出力電圧レベルが電源電圧Vddから最終レベルまで安定するための安定化時間STが長くなってしまう。
図8は、図1のUWB−IR無線通信の受信装置で直列接続された複数の信号反転回路を間欠動作させるための複数のスイッチによる制御動作を説明するための図である。
上述したように、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の直列接続回路では、1段目と3段目と5段目の電子回路の間欠動作を制御するスイッチは接地電圧GNDの側に接続され、2段目と4段目の電子回路の間欠動作を制御するスイッチは電源電圧Vddの側に接続されている。
図8の回路でも、直列接続された信号反転回路303、304の1段目の信号反転回路303を間欠動作させるためのスイッチSW313が接地電圧GNDの側に接続され2段目の信号反転回路304を間欠動作させるためのスイッチSW314が電源電圧Vddの側に接続されている。従って、信号反転回路303、304をディスエーブル状態として信号反転回路303、304の電流を遮断するようにスイッチ313、314をオフに制御している時には、1段目の信号反転回路303の出力端子の出力電圧レベルは電源電圧Vddとなり、2段目の信号反転回路304の出力端子の出力電圧レベルは接地電圧GNDとなっている。信号反転回路303、304を活性状態にするためにスイッチ313、314をオン状態に制御すると、信号反転回路303、304に動作電流が流れ始めるので、1段目の信号反転回路303の出力端子の出力電圧レベルは電源電圧Vddから所定の接地電圧GNDに低下して、2段目の信号反転回路304の出力端子の出力電圧レベルは接地電圧GNDから所定の電源電圧Vddに上昇する。この1段目の信号反転回路303の出力電圧レベルの電源電圧Vddから所定の接地電圧GNDへのレベル低下は2段目の信号反転回路304の入力電圧レベル変化となるので、2段目の信号反転回路304の出力電圧レベルの接地電圧GNDから所定の電源電圧Vddへの上昇が更に加速されることになる。従って、2段目の信号反転回路304では、出力端子の出力電圧レベルの制御に関して加速動作が行われるので、出力電圧レベルが接地電圧GNDから最終レベルまで安定するための安定化時間STを短縮することができる。
従って、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の直列接続回路では、1段目と3段目と5段目の電子回路の間欠動作を制御するスイッチは接地電圧GNDの側に接続され、2段目と4段目の電子回路の間欠動作を制御するスイッチは電源電圧Vddの側に接続されているので、各段での安定化時間STを短縮することができる。
尚、各段の回路の伝達遅延時間が極めて大きい場合には、安定時間の短縮の効果をそれ程発揮しないものとなる。なぜなら、スイッチのオンよる出力電圧レベルの変化と入力電圧変化に応答した出力電圧変化とが略同時に発生しないためである。また、スイッチの配置は、各段の回路構成によって適切な場所が異なる。適切な場所の条件は、スイッチのオン・オフ制御動作により充放電する容量の容量値が小さく、その容量を充放電する電流が十分に大きいことである。スイッチのオン・オフ制御動作時に充放電する容量の容量値が大きく、その容量を充放電する電流が小さい場合には、容量の充放電時間が長くなるため、出力電圧の低下あるいは上昇の安定化時間が長くなる。そのため、たとえスイッチを電源電圧側とグラウンド側とで交互に配置したとしても、各段の出力電圧の安定化時間が長くなることがある。この場合には、スイッチは電源電圧側とグラウンド側とのいずれか一方に配置した方が、安定化時間が短くなる可能性もある。また、スイッチの制御により間欠動作を実行する各段の回路を、差動入力信号が供給され差動出力信号を生成する差動型の回路で構成することが推奨される。なぜなら、スイッチのオン・オフによる前段の差動型回路の差動出力端子の電圧レベルの変化は同相となるため、一般的に次段の差動型回路の同相信号除去比が高いので、次段の差動型回路は前段の差動型回路の差動出力電圧レベルの同相変化には略不感応となるためである。
図9は、図1に示したUWB−IR無線通信の受信装置の1段目の低雑音増幅器110、2段目のミキサ120、121、3段目の低域通過フィルタ130、131、4段目の可変利得増幅器140、141、5段目のアナログデジタル変換器150、151の各段を構成するスイッチの制御によって電流経路が遮断される回路を示す図である。図9は低雑音増幅器LNAの例であり、差動入力信号INが供給され差動出力信号OUTを生成する差動型の回路で構成されている。差動入力信号INは差動対トランジスタQ1、Q2で増幅され負荷R1、R2で差動出力信号OUTが生成される。差動対トランジスタQ1、Q2のバイアス電流は、定電流トランジスタQ3、ダイオード接続トランジスタQ4、バイアス端子BIASと制御端子CTRLとに接続されたバイアストランジスタQ5により設定される。制御端子CTRLの制御電圧をローレベルとすると、バイアストランジスタQ5はオフとなり、差動対トランジスタQ1、Q2のバイアス電流が遮断される。従って、定電流トランジスタQ3は、グランドGND側の電流遮断スイッチとしても機能している。
図10は、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の1段目の低雑音増幅器110、2段目のミキサ120、121、3段目の低域通過フィルタ130、131、4段目の可変利得増幅器140、141、5段目のアナログデジタル変換器150、151の各段を構成するスイッチの制御によって電流経路が遮断される回路の他の例を示す図である。図10も低雑音増幅器LNAの例であり、差動入力信号INが供給され差動出力信号OUTを生成する差動型の回路で構成されている。差動入力信号INは差動対トランジスタQ1、Q2で増幅され負荷トランジスタQ5、Q6で差動出力信号OUTが生成される。差動対トランジスタQ1、Q2のバイアス電流は、一定のバイアス電圧BIASでバイアスされた定電流トランジスタQ3の電流により設定されている。図10の低雑音増幅器LNAが活性状態の場合には、負荷トランジスタQ5、Q6のゲートには電源電圧Vddより若干低い一定の電圧レベルの制御電圧CTRLが供給されている。図10の低雑音増幅器LNAをディスエーブル状態にする場合には、制御電圧CTRLは電源電圧Vddのレベルとされ、負荷トランジスタQ5、Q6はオフとなり、差動対トランジスタQ1、Q2の電流が遮断される。従って、負荷トランジスタQ5、Q6は、電源電圧Vdd側の電流遮断スイッチとしても機能している。
図11は、図1のUWB−IR無線通信の受信装置の1段目の低雑音増幅器110、2段目のミキサ120、121、3段目の低域通過フィルタ130、131、4段目の可変利得増幅器140、141、5段目のアナログデジタル変換器150、151の各段を構成するスイッチの制御によって電流経路が遮断される回路の他の例を示す図である。図11も低雑音増幅器LNAの例であり、差動入力信号INが供給され差動出力信号OUTを生成する差動型の回路で構成されている。差動入力信号INは差動対トランジスタQ1、Q2で増幅され、ゲートに一定の電圧レベルの制御電圧CTRLが供給されたカスケード接続トランジスタQ7、Q8を介して負荷コイルL1、L2で差動出力信号OUTが生成される。カスケード接続トランジスタQ7、Q8は、負荷コイルL1、L2の差動出力信号OUTの高周波信号が差動対トランジスタQ1、Q2のゲート入力への負帰還される負帰還量を低減する機能を持っている。従って、図11に示す低雑音増幅器LNAは、極めて良好な高周波特性を有する。図11の低雑音増幅器LNAが活性状態の場合には、カスケード接続トランジスタQ7、Q8のゲートには一定の電圧レベルの制御電圧CTRLが供給されている。図11の低雑音増幅器LNAをディスエーブル状態にする場合には、制御電圧CTRLはグランドGNDの電圧レベルとされ、カスケード接続トランジスタQ7、Q8はオフとなり、差動対トランジスタQ1、Q2の電流が遮断される。従って、カスケード接続トランジスタQ7、Q8は、差動出力信号OUTから見るとグランドGND側の電流遮断スイッチとして機能して、差動対トランジスタQ1、Q2から見ると電源電圧Vdd側の電流遮断スイッチとしても機能している。
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、動作タイミング制御ユニット190が各段の回路110、120、121、130、131、140、141、150、151に間欠動作をさせることで、受信装置全体の消費電力を低減することができる。また、動作開始と動作停止のタイミングを、各段の回路の安定化時間と伝達遅延時間とに基づいて個別に設定することで、更に消費電力を低減することができる。また、同期捕捉と同期追跡の結果に基づいてタイミングを設定したクロック信号を遅延させて間欠動作制御信号を生成することにより、同期捕捉後のみならず待ち受け時にも間欠動作が可能となる。
また、電流経路遮断のためのスイッチを縦続接続された各段の回路の出力端子から見て、電源側とグラウンド側とで交互に配置することにより、各段の回路の安定化時間の短縮が可能となる。また各段の回路の動作期間を短縮できることから、更に消費電力を低減することができる。
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の構成例を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
第2の実施形態の受信装置は、受信アンテナ101、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ132、133、可変利得増幅器142、143、アナログデジタル変換器150、151、ベースバンド処理ユニット161、位相ロックループ170、クロック生成ユニット180、動作タイミング制御ユニット193で構成されている。
UWB−IR無線通信でのインパルス信号の周波数スペクトルは、中心周波数が略4GHzで周波数帯域が約500MHzの周波数帯域幅の超高周波帯域信号であることは上記に説明した通りである。しかし、UWB−IR無線通信での約500MHzの周波数帯域幅は、各国の法規制や電波使用環境の相違によって異なることもある。
図13は、UWB−IR無線通信で使用されるインパルス信号の約500MHzの周波数帯域幅の違いによるインパルス受信信号の違いを説明する波形図である。同図の上に示すように、使用する周波数帯域幅が広ければ、インパルス受信信号Implsのパルス幅Tpは狭くなる。使用する周波数帯域幅が狭ければ、逆に同図の下に示すように、インパルス受信信号Implsのパルス幅Tpは広くなる。
図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置で、低域通過フィルタ132、133は、5GHz無線LAN等による約1GHz妨害波の混入した受信信号から妨害波を抑圧する一方、所望の周波数帯域である約500MHzのUWB−IR無線通信のインパルス受信信号Implsを抽出すると言う重要な機能を持っている。従って、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置では、上記の相違によって、UWB−IR無線通信で使用されるインパルス信号の周波数帯域幅が約500MHzよりも著しく狭い狭周波数帯域である場合には、それに対応するように低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcは例えば略300MHzと低い周波数に設定される。逆に、UWB−IR無線通信で使用されるインパルス信号の周波数帯域幅が約500MHzと広周波数帯域である場合には、それに対応するように低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcは例えば略350MHzと高い周波数に設定される。この低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcの高低の切り換えは、例えば図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置のパワーオン時のモード設定により可能である。
また、低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcの高低の相違は、低域通過フィルタ132、133の伝播遅延時間の小大の相違に影響する。すなわち、低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcが高い周波数であれば低域通過フィルタ132、133の伝播遅延時間は小さくなり、低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcが低い周波数であれば低域通過フィルタ132、133の伝播遅延時間は大きくなる。従って、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置では、低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcが低い周波数に設定される場合には、低域通過フィルタ132、133とそれより後段の可変利得増幅器142、143とアナログデシタル変換器150、151の間欠動作タイミングが低雑音増幅器110とミキサ120、121の間欠動作タイミングによりも更に遅延するように構成されている。逆に、低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcが高い周波数に設定される場合には、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作の動作期間が更に短く制御されて、より一層の低消費電力化が可能となる。
また、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置では、ベースバンド処理ユニット161は、アナログデジタル変換器150、151の出力のデジタルベースバンド信号に基づいて、低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいるか否かを検出するように構成されている。従って、ベースバンド処理ユニット161が低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいることを検出すると、ベースバンド処理ユニット161は低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcを高い周波数に制御する。この制御と同時に、ベースバンド処理ユニット161は、間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のタイミングの制御によって図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作の動作期間を短い時間に制御して、より一層の低消費電力化を実現する。逆に、ベースバンド処理ユニット161が低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいないことを検出すると、ベースバンド処理ユニット161は低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcを低い周波数に制御する。また、ベースバンド処理ユニット161は、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作の動作期間を長い時間に制御する。
また、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置を近距離通信だけでなく中距離通信や遠距離通信にも対応させるため、ベースバンド処理ユニット161は、アナログデジタル変換器150、151の出力のデジタルベースバンド信号に基づいて、可変利得増幅器142、143の利得を制御する。ちなわち、インパルス受信信号Implsの受信レベルが大きい場合には、可変利得増幅器142、143のバイアスを減少させて増幅利得を小さく制御するとともに、可変利得増幅器142、143の消費電流を削減する。
図14は、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置の1段目の低雑音増幅器110、2段目のミキサ120、121、3段目の低域通過フィルタ132、133、4段目の可変利得増幅器142、143、5段目のアナログデジタル変換器150、151の各段の電流遮断スイッチがオンにされた後、出力信号が安定するまでを示す波形図である。
例えば、この回路が、低域通過フィルタ132、133であると仮定する。あるタイミング321で低域通過フィルタ132のスイッチがオンにされたとする。すると、出力信号S213は、電源電圧Vddからある経過時間を経て所定の安定電圧まで低下する。この経過時間の間に、出力信号S213が上下に振動する場合がある。この振動は雑音となるため、回路に供給される入力信号のレベルの大小に応じて、許容される振動の大小が決定される。
すなわち、低域通過フィルタ132の入力信号S212のレベルが大きい場合には、許容される出力信号S213の振動のレベルも大きくなる。従って、この場合には、タイミング321で低域通過フィルタ132の電流遮断スイッチSW132がオンにされた後の比較的早いタイミング322以降に供給される大きなレベルの入力信号S212に低域通過フィルタ132に応答して、低域通過フィルタ132は低域通過出力信号S213を出力する。この低域通過出力信号S213のレベルと比較すると、電流遮断スイッチSW132のオンによる低域通過フィルタ132の出力の比較的早いタイミング322での振動レベルは無視できるものとなる。
しかし、低域通過フィルタ132の入力信号S212のレベルが小さい場合には、許容される出力信号S213の振動のレベルは小さくなる。従って、この場合には、タイミング321で低域通過フィルタ132の電流遮断スイッチSW132がオンにされた後の比較的遅いタイミング323以降に供給される小さなレベルの入力信号S212に低域通過フィルタ132に応答して、低域通過フィルタ132は低域通過出力信号S213を出力する。この低域通過出力信号S213のレベルと比較すると、電流遮断スイッチSW132のオンによる低域通過フィルタ132の出力の比較的遅いタイミング323での振動レベルは無視できるものとなる。
従って、UWB−IR無線通信の受信装置により受信されたインパルス受信信号の受信レベルが小さく、ベースバンド処理ユニット193により可変利得増幅器142の増幅利得が大きな値に制御されている場合には、低域通過フィルタ132の電流遮断スイッチSW132がオンにされた後に低域通過出力信号S213のレベルが安定化するまでの安定化時間を長く取る必要がある。従って、低域通過フィルタ132の電流遮断スイッチSW132がオンにされるタイミングを、早く設定しなければならない。逆に、UWB−IR無線通信の受信装置により受信されたインパルス受信信号の受信レベルが大きく、ベースバンド処理ユニット193により可変利得増幅器142の増幅利得が小さな値に制御されている場合には、低域通過フィルタ132の電流遮断スイッチSW132がオンにされた後に低域通過出力信号S213のレベルが安定化するまでの安定化時間を短く取ることができる。従って、低域通過フィルタ132の電流遮断スイッチSW132がオンにされるタイミングを、遅く設定することができ、各段の回路の間欠動作の動作期間を短縮でき、低消費電力化が可能となる。
また、可変利得増幅器142、143の増幅利得が大きい場合には、バイアス電流が大きくされているので、伝達遅延時間は短くなる。従って、可変利得増幅器142、143の増幅利得が大きい場合には、可変利得増幅器142、143と後段のアナログデジタル変換器150、151の間欠動作タイミングを遅延できるため、より一層の消費電力削減が可能とすることができる。
尚、ベースバンド処理ユニット161が低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいないことを検出して、ベースバンド処理ユニット161が図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作の動作期間を著しく長い時間に制御する場合には、各段の回路の間欠動作を中止して常時動作に切り換えることも可能である。
また、ベースバンド処理ユニット161による制御よって、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、アナログデジタル変換器150、151、位相ロックループ170等の各段の回路の利得や周波数特性が制御されて、各段の回路の伝達遅延時間や安定化時間が変化する場合には、この第2の実施形態を適用することが推奨される。また、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置の構成は一例に過ぎず、各段の回路の段間にフィルタや増幅器等を追加したり、一部の回路を削除することもできる。この場合でも、この第2の実施形態を適用して、各段の回路で間欠動作を行うことで、消費電力を削減することができる。
図15は、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置の動作タイミング制御ユニット193、クロック生成ユニット180の構成を示すブロック図である。動作タイミング制御ユニット193は遅延回路列191、論理回路192、セレクタ194で構成され、クロック制御ユニット180は発振器181,遅延ロックループ182、セレクタ183で構成されている。
すなわち、図5に示した動作タイミング制御ユニット190と比較すると、図15に示した動作タイミング制御ユニット193にはベースバンド処理ユニット161から生成される制御信号S215により制御されるセレクタ194が追加されている。ベースバンド処理ユニット161から生成される制御信号S215は、ベースバンド処理ユニット161がアナログデジタル変換器150、151の出力のデジタルベースバンド信号に基づいて低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいるか否かを検出した検出結果である。ベースバンド処理ユニット161が低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいることを検出すると、ベースバンド処理ユニット161は低域通過フィルタ132、133のカットオフ周波数fcを高い周波数に制御する。この制御と同時に、ベースバンド処理ユニット161から生成される制御信号S215により制御されるセレクタ194は遅延回路列191の適切な複数の中間タップの遅延信号を選択することによって、間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のタイミングを制御して、図12に示したUWB−IR無線通信の受信装置を構成する各段の回路の間欠動作の動作期間を短い時間に制御して、より一層の低消費電力化を実現することができる。
(第3の実施形態)
図16は、本発明の第3の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の構成例を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態および第2の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
第3の実施形態の受信装置は、受信アンテナ101、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ130、131、可変利得増幅器140、141、アナログデジタル変換器152、153、ベースバンド処理ユニット162、位相ロックループ170、クロック生成ユニット180、動作タイミング制御ユニット195で構成されている。
動作タイミング制御ユニット195はベースバンド処理ユニット162からの制御信号S216に基づいて、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ130、131、可変利得増幅器140、141に対してクロック信号S203、S205、S206、S207を出力するとともに、アナログデジタル変換器152、153を構成する複数のアナログデジタル変換器とベースバンド処理ユニット162とに対してクロック信号S217、S218、S219を出力する。図16に示したベースバンド処理ユニット162からの制御信号S216は、図12に示したベースバンド処理ユニット161から生成される制御信号S215と同様に、ベースバンド処理ユニット161がアナログデジタル変換器150、151の出力のデジタルベースバンド信号に基づいて低域通過フィルタ132、133の出力のアナログベースバンド信号が略350MHzの高い周波数成分を含んでいるか否かを検出した検出結果も含んでいる。しかし、それだけではなくベースバンド処理ユニット162からの制御信号S216は、図17の波形図に示すように、UWB−IR無線通信でのペイロードデータDataの転送の前に転送されるプリアンブルデータPreambleの受信データRx_Dataを利用した図16に示したUWB−IR無線通信の受信装置の同期捕捉の情報も含んでいる。
図17は、UWB−IR無線通信でのペイロードデータDataの転送の前に転送されるプリアンブルデータPreambleの受信インパルスを示すとともに図16に示したUWB−IR無線通信の受信装置の同期捕捉を説明する波形図である。プリアンブルデータPreambleの受信期間ではプリアンブルデータのインパルスが到来するタイミングは略一定間隔となっており、ペイロードデータDataの受信期間ではペイロードデータの4つのインパルスが連続して到来する。4つのインパルスの到来期間と次の4つのインパルスの到来期間との間隔は、略30ナノ秒と略一定である。尚、インパルスが連続して到来する数は4つに限定されるものではなく、転送レートを向上するために通信速度や平均パルス繰返し周期を変化してインパルスの連続到来数を増加することもできる。
図16に示したUWB−IR無線通信の受信装置がプリアンブルデータPreambleの受信インパルスを受信している状態では、図17に示すようにベースバンド処理ユニット162の出力からの制御信号S216に応答して動作タイミング制御ユニット195はクロック信号をS203のみ出力してその他のクロック信号S217、S218、S219は電源電圧またはグラウンド電圧に固定している。従って、アナログデジタル変換器152、153はクロック信号S203のタイミングで可変増幅器140、141の出力のプリアンブルデータであるアナログベースバンド信号をサンプリングして、プリアンブルデータであるデジタルベースバンド信号に変換する。ベースバンド処理ユニット162は、クロック信号S203に同期して、アナログデジタル変換器152、153の出力信号を取り込み、同期捕捉や同期追跡を行う。この同期捕捉及び同期追跡の結果に基づいて、ベースバンド処理ユニット162はクロック生成ユニット180に制御信号S209を出力する。
UWB−IR無線通信の受信装置がプリアンブルデータPreambleの受信インパルスの受信を終了してペイロードデータDataの受信インパルスを受信している状態では、図17に示すようにベースバンド処理ユニット162の出力からの制御信号S216に応答して動作タイミング制御ユニット195は4本のクロック信号をS203、S217、S218、S219を出力するようになる。このクロック信号S203、S217、S218、S219のそれぞれの間隔は、それぞれに対応する連続して到来するペイロードデータDataの受信インパルスの間隔と一致するように設定されている。アナログデジタル変換器152、153を構成する複数のアナログデジタル変換器のそれぞれは複数のクロック信号S203、S217、S218、S219の対応するクロック信号のタイミングでペイロードデータであるアナログベースバンド信号をサンプリングして、ペイロードデータであるデジタルベースバンド信号に変換する。ベースバンド処理ユニット162は、4本のクロック信号S203、S217、S218、S219のタイミングでアナログデジタル変換器152、153を構成する複数のアナログデジタル変換器の出力からの複数のペイロードデータであるデジタルベースバンド信号をパイプライン方式で取り込んでパイプライン方式でベースバンド信号処理を行う。
尚、この第3の実施形態では、動作タイミング制御ユニット195からのクロック信号はS203、S217、S218、S219の4信号であるが、本発明では必ずしもこれらのクロック信号は4信号に限定されるものではない。システムに応じて、2信号や、16信号や、それ以外の信号数とすることもできる。
図18は、図15に示したUWB−IR無線通信の受信装置の動作タイミング制御ユニット195、クロック生成ユニット180の構成を示すブロック図である。動作タイミング制御ユニット195は遅延回路列191、論理回路192、セレクタ196で構成され、クロック制御ユニット180は発振器181,遅延ロックループ182、セレクタ183で構成されている。
すなわち、図5に示した動作タイミング制御ユニット190と比較すると、図18に示した動作タイミング制御ユニット195にはベースバンド処理ユニット162から生成される制御信号S216により制御されるセレクタ196が追加されている。ベースバンド処理ユニット162から生成される制御信号S216により制御されるセレクタ196は遅延回路列191の適切な複数の中間タップの遅延信号を選択することによって、間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208のタイミングを制御する。
更に、遅延回路列191からの複数の遅延信号はスイッチ197に供給され、ベースバンド処理ユニット162から生成される制御信号S216により選択される。そして、スイッチ197で選択された遅延信号は、アナログデジタル変換器152、153とベースバンド処理ユニット162とへのクロック信号S203、S217、S218、S219として出力される。
例えば、図17に示したプリアンブルデータPreambleの受信インパルスの受信期間の場合には、スイッチ197は制御信号S216の制御によってクロック信号S203のみを出力する。図17に示したペイロードデータDataの受信インパルスの受信期間の場合には、スイッチ197は制御信号S216の制御によってクロック信号S203、S217、S218、S219を出力する。
更に、ベースバンド処理ユニット162から生成される制御信号S216の制御によってセレクタ196は、プリアンブル受信期間とペイロードデータ受信期間とで、1回の動作期間中に受信するパルス数に合わせて、動作タイミングを切り換える。セレクタ196は、プリアンブル受信期間では1個のインパルスを受信するための動作タイミングを選択して、ペイロードデータ受信期間では連続する4個のインパルスを受信するための作タイミンを選択する。すなわち、セレクタ196での選択動作の停止のタイミングを決定する信号は、最も遅いタイミングのクロック信号となる。すなわち、最も遅いタイミングのクロック信号は、プリアンブル受信期間ではクロック信号S203で決定され、ペイロードデータ受信期間ではクロック信号S219で決定される。
前述したように、この第3の実施形態によれば、受信パルスが連続して到来するパルス数に基づいて、動作タイミング制御ユニット195が間欠動作制御信号及びクロック信号を変更して、適切なインパルス受信動作を行うことができる。
(第4の実施形態)
図19は、本発明の第4の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の構成例を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
図19に示した本発明の第4の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の特徴は、これまでの実施形態ではミキサ120、121に供給されるローカル信号S200、S201が位相ロックループ170により形成されていたのに対して、図19に示した受信装置ではミキサ120、121に供給されるローカル信号S220、S221がパルス生成器171により形成されることである。
従って、第4の実施形態の受信装置は、受信アンテナ101、低雑音増幅器110、ミキサ120、121、低域通過フィルタ130、131、可変利得増幅器140、141、アナログデジタル変換器150、151、ベースバンド処理ユニット160、上述したパルス生成器171、クロック生成ユニット180、動作タイミング制御ユニット190で構成されている。
受信アンテナ101で受信したインパルス受信信号は、低雑音増幅器110によって増幅される。低雑音増幅器110の増幅信号はミキサ120、121でパルス生成器171から出力されたローカル信号S220、S221と乗算されて周波数が変換され、アナログベースバンド信号が形成される。パルス生成器171にミキサ120、121の動作期間を制御する間欠動作制御信号S205が供給されることにより、ローカル信号S220、S221がパルス生成器171により形成される。尚、ローカル信号S220、S221のパルスは、以前の実施形態のローカル信号S200、S201の位相が90度異なっていたのと同様に、2つのパルスのタイミングが90度異なっている。
図20は、図19に示したUWB−IR無線通信の受信装置のパルス生成器171の構成を示すブロック図である。同図に示すように、パルス生成器171は遅延ロックループ172とエッジコンバイナ173とで構成さていれる。ミキサ120、121に供給される間欠動作制御信号S205が、パルス生成器171の遅延ロックループ172に供給されている。遅延ロックループ172では、直列接続された複数の遅延回路列の初段の遅延回路の出力信号S222の位相と最終段の遅延回路の入力信号S223の位相とが一致するように、位相比較器PDとチャージポンプCPとは直列接続された複数の遅延回路列の遅延時間を負帰還制御する。例えば、初段の遅延回路の出力信号S222の立ち下がりエッジと最終段の遅延回路の入力信号S223の立ち上がりエッジとが同期するようにする。こうすることで、信号S222の立ち上がりエッジと信号のS223の立ち上がりとを同期させる場合と比較して、遅延回路列の直列接続数を小さくすることができる。なぜなら、両信号の立ち上がりを同期させると、ミキサ120、121のための間欠動作制御信号S205の1周期分の遅延時間の遅延回路列が必要となる。しかし、上記のように立ち上がりエッジと立ち下がりエッジでタイミングを合わせると、間欠動作制御信号S205がミキサ120、121を動作させる動作期間(信号S205のハイレベル期間)に対応する遅延時間の遅延回路列で良くなるためである。
また、遅延ロックループ172の遅延回路列の各遅延回路の遅延時間は、ローカル信号S220、S221のタイミングの差90°を生成できる程度で良い。エッジコンバイナ173は遅延ロックループ172からの供給される複数の遅延出力信号を合成して、ローカル信号S220、S221を形成する。尚、図20ではローカル信号S220、S221は差動相補信号S220(S240)、S221(S225)とされている。これらの差動相補信号のローカル信号S220、S221を生成する場合には、エッジコンバイナ173の出力から信号S220と逆位相の信号S224と信号S221と逆位相の信号S225とを生成すれば良い。
また、上記に示したローカル信号S220、S221の信号波形は、一例に過ぎず、ローカル信号S220、S221のパルスのサイクル数はこれに限定されるものではない。このパルスのサイクル数は、ミキサ120、121の間欠動作の動作期間を満足するように設定する。もしくは、ミキサ120、121の動作期間内の一部の期間のみにパルスが存在するようにサイクル数を設定することもできる。
図21は、図19に示したUWB−IR無線通信の受信装置のパルス生成器171の他の構成を示すブロック図である。図19と図21とには明確に図示されていないが、動作タイミング制御ユニット190はミキサ120、121のための間欠動作制御信号S205をミキサ120、121の動作開始タイミング信号S226と動作停止タイミング信号S227から生成する。動作開始タイミング信号S226を遅延ロックループ174の遅延回路列の初段の遅延回路の入力に供給して、動作停止タイミング信号S227を他の遅延回路の入力に供給することにより遅延信号S228を生成する。遅延ロックループ174の位相比較器PDとチャージポンプCPとは、遅延回路列の最終段の遅延回路の入力の遅延信号S229と他の遅延回路の出力の遅延信号S228とのタイミングが同期するように遅延回路列の遅延時間を制御する。この場合には、両信号S228、S229の両方の立ち上がりエッジもしくは両方の立ち下がりエッジのタイミングが同期するようにする。その結果、立ち上がりエッジもしくは立ち下がりエッジでのスロープの時間幅の差によるタイミング誤差が生じることがなく、高精度にタイミングを合わせることができる。
図22は、図19に示したUWB−IR無線通信の受信装置のパルス生成器171の他の構成を示すブロック図である。図22では、上述した本発明の第2の実施形態や第3の実施形態のように、ミキサ120、121の間欠動作での動作期間が変化する場合に対応するものである。すなわち、ベースバンド処理ユニット160は、ミキサ120、121の動作期間の大小を示す制御信号S230を生成する。この制御信号S230に応答してセレクタ176は、遅延回路列の遅延タップから適切な遅延時間を持つ遅延信号を選択して遅延出力信号S229を位相比較器PDに供給する。図12、図16、図19に図示されていないベースバンド処理ユニット160、161、162から出力される制御信号S230はミキサ120、121の動作期間の大小の情報を含んでいるので、制御信号S230に応答してセレクタ176は適切な遅延信号を遅延出力信号S229として選択して出力する。また、他の遅延回路を介して動作停止タイミング信号S227が供給されるダミーのセレクタ177は、セレクタ176から出力される遅延出力信号S229に含まれるセレクタ176での遅延時間をキャンセルする目的で追加した回路である。従って、ダミーのセレクタ177には、多入力信号を選択して出力すると言うセレクタの真の機能は必要ではない。
また、遅延ロックループ175の遅延回路列では、セレクタ176で選択された信号よりも後段の遅延回路から出力される信号はエッジコンバイナ173では必要としない。なぜなら、セレクタ176で選択された遅延出力信号S229のタイミングはミキサ120、121の間欠動作での動作停止のタイミングであるため、それ以降にパルスを出力する必要がないためである。従って、セレクタ176で選択された信号よりも後段の遅延回路の動作を停止させて、更なる低消費電力化を行うこともできる。尚、図20に示したパルス生成器171に、図22のダミーのセレクタ176とセレクタ177とを追加することもできる。
図23は、図19に示したUWB−IR無線通信の受信装置のパルス生成器171の他の構成を示すブロック図である。図23のパルス生成器171は、図20に示したパルス生成器171の遅延ロックループ172、エッジコンバイナ173と略同様な遅延ロックループ172、エッジコンバイナ178で構成されているとともに、ポリフェーズフィルタ179を含んでいる。図23に示したパルス生成器171のエッジコンバイナ178から生成されるパルス信号S231、S232のタイミングの差は、図20、図21、図21に示したパルス生成器171の差動相補ローカル信号S220(S240)、S221(S225)の互いに逆位相の信号S220、S224のタイミングの差180°に対応している。
図23に示したパルス生成器171のポリフェーズフィルタ179は、8個の容量C1・・・C8と8個の抵抗R1・・・R8とスイッチ330とで構成され、スイッチ330にはエッジコンバイナ178からの制御信号S233が供給され、容量C1の一端にはエッジコンバイナ178からのパルス信号S231が供給され、容量C3の一端にはエッジコンバイナ178からのパルス信号S232が供給される。ミキサ120、121の間欠動作での動作期間中は、エッジコンバイナ178からの制御信号S233によりスイッチ330はオフ状態に制御される。エッジコンバイナ178の各回路ノードN1・・・N8では容量と抵抗とによる信号積分、信号微分、信号合成が行われ、出力ノードN5から位相0°のローカル信号S220が生成され、出力ノードN6から位相90°のローカル信号S221が生成され、出力ノードN7から位相180°のローカル信号S224が生成され、出力ノードN8から位相270°のローカル信号S225が生成され、これらの差動相補ローカル信号S220(S240)、S221(S225)はミキサ120、121に供給される。ミキサ120、121の間欠動作での動作停止期間中はエッジコンバイナ178からの制御信号S233によりスイッチ330はオン状態に制御されるので、出力ノードN5、N6、N7、N8からのローカル信号S220、S221、S224、S225は全て同一の電圧とされる。
図23に示したパルス生成器171の遅延ロックループ172の遅延回路列の複数の遅延出力信号の相互の間の遅延時間差は、図20、図21、図22に示したパルス生成器171の遅延時間差の2倍とすることができる。図20、図21、図22に示したパルス生成器171では、エッジコンバイナ173の出力信号がパルス生成器171のローカル出力信号S220(S224)、S221(S225)であるため、ローカル出力信号S220(S224)、S221(S225)のタイミングの差を生成する遅延時間を遅延ロックループ172、174、175で付加しなければならない。
それに対して、図23に示したパルス生成器171では、パルス生成器171のローカル出力信号S220(S224)、S221(S225)のタイミングの差はポリフェーズフィルタ179で生成する。従って、遅延ロックループ172で付加する遅延時間は、ポリフェーズフィルタ179に供給されるパルス信号S231、S232のタイミングの差を生成できる遅延時間となる。そのため、図23に示したパルス生成器171の遅延ロックループ172の遅延回路列の複数の遅延出力信号の相互の間の遅延時間差を、図20、図21、図22に示したパルス生成器171の遅延時間差の2倍とすることができる。従って、遅延ロックループ172内の遅延回路列の段数を低減することができ、遅延回路の遅延時間の精度も緩和されるため、更なる低消費電力化が可能である。
図20に示したクロック生成器171にポリフェーズフィルタ179を適用したのが図23に示したクロック生成器171であるが、図21もしくは図22に示したクロック生成器171にポリフェーズフィルタ179を適用することもできる。
また、パルス生成器171は、ミキサ120、121の間欠動作での動作期間と略等しい期間でローカル出力信号S220(S224)、S221(S225)を出力するものである。しかし、ミキサ120、121の間欠動作での動作期間よりも、パルス生成器171がローカル出力信号を出力する期間を短くすることができ、逆に長くすることもできる。すなわち、パルス生成器171がローカル出力信号を出力する期間は、パルス生成器171の安定化時間や、パルス生成器171のローカル出力信号がミキサ120、121に供給されるまでの伝播遅延時間に応じて、適切に設定することが推奨される。
本発明の第1の実施形態から第3の実施形態までのUWB−IR無線通信の受信装置では、ミキサ120、121にローカル出力信号S220(S224)、S221(S225)を供給する回路が、間欠動作が困難で大きな消費電力の位相ロックループ(PLL)170で構成されていた。これに対して、本発明の第4の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置では、ミキサ120、121にローカル出力信号S220(S224)、S221(S225)を供給する回路が、間欠動作が容易で動作停止期間に消費電力を削減できるパルス生成器171で構成されている。従って、受信性能を劣化させることなく、更なる低消費電力化が可能となる。また、パルス生成器171にポリフェーズフィルタを使用した場合には、遅延ロックループの遅延回路列の段数を削減でき、更なる低消費電力化が可能となる。
(第5の実施形態)
図24は、本発明の第5の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の構成例を示すブロック図であり、上述した第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
図24に示した本発明の第5の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の特徴は、これまでの実施形態では低域通過フィルタ130、131に供給されるアナログベースバンド信号S212がミキサ120、121により形成されていたのに対して、図24に示した受信装置では低域通過フィルタ130に供給されるアナログベースバンド信号が自乗型復調器122により形成されることである。
従って、第5の実施形態の受信装置は、受信アンテナ101、低雑音増幅器110、上述した自乗型復調器122、低域通過フィルタ130、可変利得増幅器140、アナログデジタル変換器150、ベースバンド処理ユニット160、クロック生成ユニット180、動作タイミング制御ユニット190で構成されている。尚、図24に示したUWB−IR無線通信の受信装置の構成は一例に過ぎず、各段の回路の段間にフィルタや増幅器等を追加したり、一部の回路を削除することもできる。この場合でも、各段の回路で間欠動作を行うことで、消費電力を削減することができる。また、低雑音増幅器110の前段や後段に帯域通過フィルタを追加したり、自乗型復調器の前段に可変利得増幅器を追加することもできる。その場合には、アナログデジタル変換器150の前段の可変利得増幅器140を削除することもできる。
受信アンテナ101で受信したインパルス受信信号は低雑音増幅器110によって増幅された後、自乗型復調器122によって自乗される。その後、低域通過フィルタ130で所望の信号帯域のアナログベースバンド信号を抽出して、可変利得増幅器140で所定のレベルに増幅した後、アナログデジタル変換器150でデジタルベースバンド信号に変換される。これらの各段の回路は、動作タイミング制御ユニット190からの間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208によるスイッチSW110、SW122、SW130、SW140、SW150のオン・オフ動作を行うことで、間欠動作を行う。
図24に示した本発明の第5の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置の自乗型復調器122は、以前の種々の実施形態で使用されたミキサ120、121と同一の回路構成であるギルバートセルにより実現することが可能である。良く知られているように、ギルバートセルはミキサとしても動作することができるとともに、アナログ乗算器としても動作することができる。自乗型復調器122およびアナログ乗算器としてのギルバートセルの2つのアナログ入力端子に低雑音増幅器110の出力からのインパルス増幅信号を共通に供給することより、インパルス増幅信号の自乗に比例する出力信号が形成される。また、自乗型復調器122およびアナログ乗算器としてのギルバートセルの2つのアナログ入力端子に共通のインパルス増幅信号が供給されるので、この受信装置は以前の実施形態による受信装置のように位相の同期を取るコヒーレントな受信装置ではなく、インパルス受信信号のエネルギーを検知して受信データを復元するノンコヒーレントな受信装置である。
図24に示した本発明の第5の実施形態によるUWB−IR無線通信の受信装置は以前の実施形態による受信装置と比較して回路数を削減でき、低消費電力化を実現している。また、アナログデジタル変換器150の出力のデジタルベースバンド信号を基にベースバンド処理ユニット160がクロック生成ユニット180の出力信号S202のタイミングを制御して、各段の回路の間欠動作制御信号S204、S205、S206、S207、S208を生成することにより、低消費電力化を実現している。
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、5GHz無線LANによる1GHzスプリアス妨害信号の妨害信号レベルを十分に低減するための低域通過フィルタ(LPF)130、131は、多数のオペレーショナルトランスコンダクタンスアンプと多数の容量とを含む高次フィルタに限定されるものではなく、オペレーショナルアンプと容量とを含む高次アクティブフィルタ、ジャイレータ(負性インダクタンス回路)と容量とによりインダクタをエミュレートした高次アクティブフィルタを使用することができる。