JP4770472B2 - 土圧式シールド工法の推進管理方法 - Google Patents

土圧式シールド工法の推進管理方法 Download PDF

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Description

本発明は、土圧式シールド工法の推進管理方法に関するものである。
近年、都市部では地下構造物を構築する際に、交通混雑の激しい道路での工事をスムーズに行うとともに、周辺住民に与える工事の影響を軽減するために、シールド工法が採用されており、特に、トンネル建設時に多く採用されている。また、都市部の地上には十分な作業基地面積を確保することが難しいために、設備配置スペースの必要面積の大きい泥水式シールドに比べて設備配置スペースの必要面積の小さい土圧式シールドによる施工のニーズが高まっている。
しかし、土圧式シールドによる掘削工法は、切羽の安定を保持するうえで重要なチャンバー内における掘削土砂の塑性流動状態の把握方法が確立されておらず完全に地盤変状を抑制することが困難であるために、大断面のシールド工法には適用されることが少なかった。塑性流動化とは、図19に示すように、掘削土砂に生ずるずり応力がある値(τ0)を超えてずり速度を発生し流動する状態である。ここで、ずり応力とは、掘削土砂内で相対的に速度差を有する流動(以下、ずりひずみという)を生じさせる単位面積当たりの力で、ずり速度とは、ずりひずみの単位時間当たりの変化を表すひずみ速度である。
チャンバー内における掘削土砂の塑性流動状態を把握するために、例えば、特許文献1には、掘削土砂の流動状態を測定するための測定装置が開示されている。また、この特許文献1には、非特許文献1及び2にて示されたチャンバー内の流動解析手法を実際のシールド機に適用した例も開示されている。
この測定装置は、チャンバー内に設置される回転板と該回転板を駆動するためのモータとを備え、このモータを駆動させて回転板を所定角度だけ回転させ、回転抵抗が最大位置において、回転板の主面の直交する方向を掘削土砂の流動方向とし、そのときの回転トルクに対応した値を流速と算出するものである。
そして、非特許文献1及び2にて示された流動解析手法にて、砂地盤、粘度地盤等の複数の地質条件毎にチャンバー内における掘削土砂の流動解析を行って、それぞれの場合における流動方向、流速等を推定し、該流動解析から推定した流動方向及び流速と上述した測定装置にて算出した流動方向及び流速とを照合して、流動解析結果のうち、最も相関の良いものを選択して、これを測定点における流動状態とするものである。
特開2005−90174号公報 「トンネルと地下」 1994年8月 35〜39頁「シールドチャンバ内の泥土・泥水の流動解析」 「大林組技術研究所報」No.48 1994年8月 「シールドチャンバ内における掘削土砂流動解析」
しかしながら、特許文献1に記載の流動解析からは、チャンバー内の流動方向及びその流速のみが推定されており、チャンバー内の塑性流動状態を表す指標のずり速度に関する解析がなされていないという問題点があった。
また、測定装置から算出された流速及び流向と流動解析から推定された流速及び流向とをそれぞれ作業者が現場で比較し、相関の良し悪しを判断することはデータ量が多いために困難であるという問題点があった。
さらに、測定装置から算出された流速及び流向と流動解析から推定された流速及び流向とを比較して、チャンバー内が塑性流動状態であると判断するための判定基準が設けられていないという問題点があった。
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、トンネル掘進中のチャンバー内における掘削土砂の塑性流動状態をリアルタイムで把握し、管理することができる土圧式シールド工法の推進管理方法を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するため、本発明の土圧式シールド工法の推進管理方法は、チャンバ内に設置された回転板の回転トルクを測定するための測定装置を有するシールド機を用いた土圧式シールド工法の推進管理方法において、前記回転板の回転トルクを前記測定装置で測定する工程と、チャンバー内における掘削土砂の塑性流動状態を流動解析し、チャンバー内全体の掘削土砂の流速及びずり速度をシミュレーションして前記回転板の回転トルクを推定する工程と、前記測定装置で測定した回転トルクと前記流動解析で推定した回転トルクとを比較し、前記流動解析にて推定した回転トルクの精度を検証する工程と、該検証において前記流動解析にて推定した回転トルクの精度が高い場合は、前記流速及び前記ずり速度を可視化する工程と、前記可視化した結果に基づいてチャンバー内全体の掘削土砂の塑性流動状態を確認する工程とを備えること特徴とする(第1の発明)。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、流動解析で推定した回転トルクの精度を検証するために、流動解析の精度を確認することが可能となる。また、この検証は、測定装置で算出した回転トルクと流動解析で推定した回転トルクとを比較するだけでよく、作業員が現場でも容易に比較検討することが可能となる。そして、流動解析にて推定した回転トルクの精度が高い場合は、掘削土砂の流速及びずり速度を可視化するために、チャンバー内全体の塑性流動状態を把握することが可能となる。さらに、可視化された塑性流動状態を確認できるために、トンネル掘削時にチャンバー内を確実に塑性流度状態にすることが可能となる。
第2の発明は、第1の発明において、前記確認においてチャンバー内の塑性流動状態が適切な場合は、前記測定装置で測定した回転トルクから測定点における掘削土砂の流動方向及び流速を算出する工程と、該流動方向及び該流速を可視化する工程と、該可視化した結果に基づいて加泥材の注入量の調整、掘進速度の調整等の切羽状態を管理する工程とを更に備えることを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、測定点における掘削土砂の流動方向及び流速をリアルタイムでモニタ等にて表示するために、掘削地盤性状の急変に対して、加泥材の注入量変更、掘進速度の調整等の対応が可能となる。
第3の発明は、第1の発明において、前記検証において、実施工の塑性流動状態と前記流動解析にて推定した塑性流動状態とがほぼ同一であって、前記流動解析にて推定した回転トルクの精度が低い場合は、前記流動解析の入力条件を変更して、前記回転板の回転トルクを推定する工程を再度行うことを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、流動解析にて推定した回転トルクの精度が低い場合でも、流動解析の入力条件を変更して再び流動解析を行うことにより精度の高い解析結果を得ることが可能となる。また、解析精度を検証することで、解析技術の精度を向上させることが可能となる。
第4の発明は、第1又は第3の発明において、前記検証は、実施工の流動状態と前記流動解析にて推定した流動状態とがほぼ同一の場合に、前記測定装置で測定した回転トルクの時系列の測定値と前記流動解析で推定した回転トルクの時系列の推定値とを比較し、両値の変動パターンが類似している場合は精度が高く、両値の変動パターンが類似していない場合は精度が低いと判定することを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、検証は回転トルクの変動パターンのみを比較することにより短時間で容易に行うことが可能となる。
第5の発明は、第1又は第2の発明において、前記確認においてチャンバー内の塑性流動状態が不適切な場合は、前記流動解析の入力条件を変更する工程を経て、前記回転板の回転トルクを推定する工程を再度行うことを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、チャンバー内の塑性流動状態が不適切な場合でも、流動解析の入力条件を変更して再び流動解析を行うことにより精度の高い解析結果を得ることが可能となる。また、解析結果を確認することで、解析技術の精度を向上させることが可能となる。
第6の発明は、第1、第2、第5のいずれかの発明において、前記確認は、前記流速と前記ずり速度との関係を評価し、前記流速と前記ずり速度との関係が所定の範囲内に入っている場合は適切であり、所定の範囲に入っていない場合は不適切であると判定することを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、流速とずり速度との関係が図にて評価されるために、流速とずり速度との関係が所定の範囲内に入っているか否かを容易に判定することが可能となる。したがって、土圧式シールド工法に熟練した者でなくても判定をすることが可能となる。
第7の発明は、第1又は2の発明において、前記流動方向及び前記流速をベクトルにて表示することを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、掘削土砂の流向及び流速を容易に把握することが可能となる。
第8の発明は、第1の発明において、前記ずり速度をスカラーにて表示することを特徴とする。
本発明による土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、ずり速度の分布状態を容易に把握することが可能となる。
以上、説明したように、本発明の土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、トンネルを掘進中のチャンバー内における掘削土砂の塑性流動状態をリアルタイムで把握し、管理することができる。また、中、大断面の土圧式シールド機を用いた場合でも切羽を安定させた状態で安全にトンネルを掘削することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るシールド機の断面図、図2は、図1のA−A’矢視図である。
図1及び図2に示すように、土圧式シールド機1は、進行方向前部で切羽の掘削を行うフード部3と、後部で覆工を行うテール部と、フード部3及びテール部を結ぶとともに推進設備等を内方に装備するガーダー部5とから構成され、外部から作用する荷重に対し前述した各部を保護するための矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート9とを備える。
土圧式シールド機1の前部は、土圧式シールド機1の前面側にカッタービットを有するカッター11と、カッター11を駆動するための駆動源13と、駆動源13の駆動力をカッター11に伝達する回転軸15と、掘削土砂に一定の圧力を与えてこれを保持するために隔壁17とカッター11とで密閉されたチャンバー19と、掘削土砂をチャンバー19から排出するための排土機構21と、チャンバー19内の掘削土砂を撹拌、混練するための撹拌装置23と、掘削土砂と加泥材との混練効果を高めるための固定翼24と、チャンバー19内の掘削土砂の流動方向及び流速を推定するための測定装置25とから構成される。
回転軸15の外周面には、チャンバー19内に突出するようにアジテータ27が設けられており、このアジテータ27は、ガーダー部5内に設置された駆動モータ29により、カッター11と独立して回転駆動される。
撹拌装置23は、土圧式シールド機1の中心軸と同心で、かつ異なる径の3つの円周上にそれぞれ周方向に所定の間隔で配置され、チャンバー19内に突出するように、カッター11の背面側に複数台設けられている。
固定翼24は、土圧式シールド機1の中心軸と同心で、かつ異なる径の3つの円周上にそれぞれ周方向に所定の間隔で配置され、チャンバー19内に突出するように、隔壁17の前面側に複数台設けられている。
測定装置25は、掘削土砂の流動方向と対向するように配置される板状の回転板31と、回転板31を駆動するためのモータ33と、モータ33の駆動力を回転板31に伝達するロッド35と、モータ33の電流値を測定するための電流測定器37と、回転板31の回転角度を検出するための角度検出器39と、回転板31を土圧式シールド機1の中心軸方向に移動可能にするためのシリンダ41とを備える。この測定装置25は、土圧式シールド機1の中心軸と同心円上で、周方向に所定の間隔で複数台配置され、攪拌装置及びアジテータ27との相互干渉を避ける位置に設けられる。なお、本実施形態においては、測定装置25は、土圧式シールド機1の中心軸と同心円上で、周方向に所定の間隔で設置する方法について説明したが、この位置に限定されるものではなく、任意の位置に設置することが可能である。
測定装置25の回転板31は長方形状の平板であって、平板状の主面がチャンバ内で流動する掘削土砂の流動方向と対向するように配置される。そして、チャンバー19内で掘削土砂が流動すると、回転板31の主面は土圧式シールド機1の中心軸と平行な軸線回りに回転する。
以下に、上述した土圧式シールド機1にてトンネルを掘進する際の推進管理方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る推進管理の手順を示すフロー図である。図3のS10において、測定装置25で回転板31の回転トルクを算出する。回転トルクは、モータ33に供給する電流値に比例することから、モータ33の電流値を電流測定器37にて測定し、この測定値に予め設計時に決められた係数を乗じることにより回転トルクを算出する。
図4は、本実施形態に係るチャンバー19内をモデル化した図である。図3のS20において、上述した非特許文献2及び3に開示されている方法にて、図4に示すように、土圧式シールド機1のチャンバー19内をモデル化する。
図5は、本実施形態に係る地盤の粒度曲線を示す図で、図6は、本実施形態に係る流動解析の入力条件を示す図である。図3のS22において、モデル化したモデル及び入力条件(後に示す)に基づいて、上述した非特許文献2及び3に開示されている方法にて掘削土砂の流動解析を行い、流速及びずり速度をシミュレーションして回転板31の回転トルクを推定する。
流動解析に用いる基礎方程式は、チャンバー19内の掘削土砂を地山の土砂と加泥(気泡)材とから構成される流体と仮定し、密度成層を考慮した非圧縮ナビエ・ストークス方程式を用いた。また、カッター11の回転などの複雑な移動境界部分には動的マルチブロック法を適用した。
流動解析の解析対象は、本実施形態においては、例えば、図5に示すような粒度曲線を有する地盤である。また、本実施形態において、流動解析の入力条件は図6に示すように、例えば、アジテータ27の回転数は1.365rpm、カッター11の回転数は0.46rpm、回転板31の回転数は1.88rpm、土圧式シールド機1の掘進速度は20mm/minである。さらに、流動解析の入力条件として、地山密度と加泥材密度の体積占有率比により算出される流体密度、各土質における粘度式等(図示しない)も入力する。
図7は、本実施形態に係る測定装置25にて算出した回転トルクと流動解析にて推定した回転トルクとを比較した図である。図3のS30において、測定装置25にて測定して算出した回転トルクの時系列の算出値と流動解析で推定した回転トルクの時系列の推定値とを比較し、流動解析にて推定した回転トルクの精度を検証する。図7に示すように、算出値と推定値との変動パターンが類似している場合は、推定値の精度は高いと判定する。
一方、実際の流動状態と流動解析にて推定した流動状態とが同一の入力条件で、かつ算出値と推定値との変動パターンが類似していない場合は、推定値の精度は低いと判定する。そして、推定値の精度が低い場合は、図3のS32において、上述した流動解析の入力条件を変更し、再度、S22の流動解析を行う。
図8、図9、図10は、それぞれ本実施形態に係るカッターフェース近傍、チャンバー19中央付近、隔壁17近傍の流速分布図である。また、図11、図12、図13は、それぞれ本実施形態に係るカッターフェース近傍、チャンバー19中央付近、隔壁17近傍のずり速度分布図である。本実施形態において、カッターフェース近傍、チャンバー19中央付近、隔壁17近傍は、それぞれ隔壁17から、例えば、1.7m、0.9m、0.45m前方の位置とする。
流動解析にて推定した回転トルクの精度が高い場合は、図3のS34において、流速及びずり速度を図8〜図13に示すように可視化する。流速はベクトル表示され、矢印の長さ、方向により、それぞれ掘削土砂の流動する流速、流向が表示される。また、ずり速度はスカラー表示され、色の濃淡により、速度の大きさが表示される。
チャンバー19内の掘削土砂には、カッター11の回転により流速が与えられるとともに、撹拌装置23及びアジテータ27等によりずり応力が生じる。チャンバー19内の掘削土砂が塑性流動状態である場合は、ずり応力が生じる際に、ずり速度が発生すると推測される。
図8〜図13に示すように、本実施形態においては、横断方向において、流速及びずり速度の分布は、土圧式シールド機1の外周付近とアジテータ27周辺と回転軸15付近とでは一様にならず、それぞれ異なる状態が確認される。また、縦断方向においても、流速及びずり速度の分布は、カッターフェース近傍とチャンバー19中央付近と隔壁17近傍付近とでは、一様にならず、それぞれ異なる状態が確認される。
図14は、本実施形態に係る掘削土砂の流動状態を示す図である。図14に示すように、流速とずり速度との関係に着目してチャンバー19内の掘削土砂の流動状態を分類すると、Iの領域は、適切な流速及びずり速度が得られているために、チャンバー19内の掘削土砂は塑性流動化していると推測される。また、IIの領域は、流速が小さく、かつ、ずり速度も小さいために、チャンバー19内の掘削土砂は、塑性流動化していない状態、又は、掘削土砂が滞留し、攪拌されにくい状態であると推測される。そして、IIIの領域は、流速が小さく、かつ、ずり速度が大きいために、チャンバー19内の掘削土砂は、流動性が非常に高い状態であると推測される。IVの領域は、流速が大きく、かつ、ずり速度が小さいために、チャンバー19内の掘削土砂は、塑性流動化していない状態、又は、攪拌効果が少ない箇所であると推測される。
図15、図16、図17は、それぞれ本実施形態に係るカッターフェース近傍、チャンバー19中央付近、隔壁17近傍の掘削土砂の流動状態を示す図であり、縦軸は流速、横軸は対数表示したずり速度である。また、横断方向の領域を(1)アジテータ27領域(0〜1/3R 、Rはシールド半径とする)、(2)カッター支持部(1/3R〜2/3R)、(3)外周部(2/3R〜1R)の3つに区分して、流速とずり速度との関係を示した。
図3のS36において、カッターフェース近傍、チャンバー19中央付近、隔壁17近傍における流速とずり速度との関係をそれぞれ評価する。図15〜図17に示すように、カッターフェース付近よりもチャンバー19中央付近が、また、チャンバー19中央付近よりも隔壁17近傍が流速とずり速度との関係はグラフ中央付近に推移している。これは、掘削土砂がカッターフェース近傍から隔壁17近傍に移動すると、撹拌装置23及びアジテータ27の効果により塑性流動化している状態である。また、実施工において、排土状況が良好で切羽の安定が図れていたことを考慮すると、本流動解析結果はチャンバー19内の土砂が適切に塑性流動化している場合をシミュレーションしており、解析精度が高いことを示している。
ここで、流速とずり速度との関係がII、III、IVの範囲に入り、塑性流動状態が不適切の場合は、図3のS32において、流動解析の入力条件を変更し、再度、S22の流動解析を行う。
そして、流速とずり速度との関係がIの範囲に入り、塑性流動状態が適切の場合は、図3のS38において、掘削土砂の流動方向及び流速を算出する。
図7にて示した回転トルクの算出値のうち、回転抵抗が最大位置において、回転板31の主面の直交する方向を掘削土砂の流動方向とし、そのときの回転トルクに対応した値を流動方向の流速と推定する。
図18は、本実施形態に係るチャンバー19内の掘削土砂の流動状態を表示した図である。図3のS40において、図18に示すように、チャンバー19内の掘削土砂の流動方向及び流速をモニタ等に表示することにより、掘削土砂の流動状態をリアルタイムで確認する。本実施形態において、流動方向、流速は、それぞれ角度検出器39、電流測定器37にて測定された角度、電流値をそのまま表示した。なお、本実施形態においては、流動方向、流速をそれぞれ角度検出器39、電流測定器37により測定された測定値をそのまま表示したが、これに限定されるものではなく、例えば、角度検出器39、電流測定器37により測定された測定値をそれぞれ流向、流速に変換して表示する方法を用いてもよい。
図3のS42において、電流測定器37にて測定した電流値が、予め設定した所定の値よりも大きくなった場合は、警告音の発令、警告灯の点灯等にて土圧式シールド機1のオペレーターに警告する。オペレーターは、直ちに加泥材の添加量、添加位置、種類等の調整や掘進速度の調整等を行い、切羽管理を行う。
以上説明した本実施形態における土圧式シールド工法の推進管理方法によれば、流動解析で推定した回転トルクの精度を検証するために、流動解析の精度を確認することが可能となる。また、この検証は、測定装置25で算出した回転トルクの算出値と流動解析で推定した回転トルクの推定値とを比較するだけでよく、作業員が現場でも容易に比較検討することが可能となる。そして、流動解析にて推定した推定値の精度が高い場合は、掘削土砂の流速及びずり速度を可視化するために、チャンバー19内全体の塑性流動状態を把握することが可能となる。さらに、可視化された塑性流動状態を確認できるために、トンネル掘削時にチャンバー19内を確実に塑性流度状態にすることが可能となる。
また、測定点における掘削土砂の流動方向及び流速をリアルタイムでモニタ等に表示するために、掘削地盤性状の急変に対して、加泥材の注入量変更、掘進速度の調整等の対応が可能となる。
そして、流動解析にて推定した回転トルクの推定値の精度が低い場合でも、流動解析の入力条件を変更して再び流動解析を行うことにより精度の高い解析結果を得ることが可能となる。また、解析精度を検証することで、解析技術の精度を向上させることが可能となる。
さらに、チャンバー19内の塑性流動状態が不適切な場合でも、流動解析の入力条件を変更して再び流動解析を行うことにより精度の高い解析結果を得ることが可能となる。また、解析結果を確認することで、解析技術の精度を向上させることが可能となる。
また、流速とずり速度との関係を図示して評価するために、流速とずり速度との関係が所定の範囲内に入っているか否かを容易に判定することが可能となる。したがって、土圧式シールド工法に熟練した者でなくても判定をすることが可能となる。
そして、掘削土砂の流向及び流速をベクトル表示で、ずり速度をスカラー表示することにより、チャンバー内の掘削土砂の流動状態を容易に把握することが可能となる。
なお、本実施形態において、切羽状態を管理する方法について加泥材の添加量、添加位置、種類等の調整及び掘進速度の調整について説明したが、これらに限定されるものではなく、例えば、排土機構の排土速度の調整等でも切羽状態を管理することが可能である。
本発明の第一実施形態に係る土圧式シールド機の断面図である。 図1のA−A’矢視図である。 本実施形態に係る推進管理の手順を示すフロー図である。 本実施形態に係るチャンバー内をモデル化した図である。 本実施形態に係る地盤の粒度曲線を示す図である。 本実施形態に係る流動解析の入力条件を示す図である。 本実施形態に係る測定装置にて算出した回転トルクと流動解析にて推定した回転トルクとを比較した図である。 本実施形態に係るカッターフェース近傍の流速分布図である。 本実施形態に係るチャンバー中央付近の流速分布図である。 本実施形態に係る隔壁近傍の流速分布図である。 本実施形態に係るカッターフェース近傍のずり速度分布図である。 本実施形態に係るチャンバー中央付近のずり速度分布図である。 本実施形態に係る隔壁近傍のずり速度分布図である。 本実施形態に係る掘削土砂の流動状態を示す図である。 本実施形態に係るカッターフェース近傍の掘削土砂の流動状態を示す図である。 本実施形態に係るチャンバー中央付近の掘削土砂の流動状態を示す図である。 本実施形態に係る隔壁近傍の掘削土砂の流動状態を示す図である。 本実施形態に係るチャンバー内の掘削土砂の流動状態を表示した図である。 掘削土砂の塑性流動状態を示す図である。
符号の説明
1 土圧式シールド機
3 フード部
5 ガーダー部
9 スキンプレート
11 カッター
13 駆動源
15 回転軸
17 隔壁
19 チャンバー
21 排土機構
23 撹拌装置
24 固定翼
25 測定装置
27 アジテータ
29 駆動モータ
31 回転板
33 モータ
35 ロッド
37 電流測定器
39 角度検出器

Claims (8)

  1. チャンバ内に設置された回転板の回転トルクを測定するための測定装置を有するシールド機を用いた土圧式シールド工法の推進管理方法において、
    前記回転板の回転トルクを前記測定装置で測定する工程と、
    チャンバー内における掘削土砂の塑性流動状態を流動解析し、チャンバー内全体の掘削土砂の流速及びずり速度をシミュレーションして前記回転板の回転トルクを推定する工程と、
    前記測定装置で測定した回転トルクと前記流動解析で推定した回転トルクとを比較し、前記流動解析にて推定した回転トルクの精度を検証する工程と、
    該検証において前記流動解析にて推定した回転トルクの精度が高い場合は、前記流速及び前記ずり速度を可視化する工程と、
    前記可視化した結果に基づいてチャンバー内全体の掘削土砂の塑性流動状態を確認する工程とを備えること特徴とする土圧式シールド工法の推進管理方法。
  2. 前記確認においてチャンバー内の塑性流動状態が適切な場合は、前記測定装置で測定した回転トルクから測定点における掘削土砂の流動方向及び流速を算出する工程と、
    該流動方向及び該流速を表示する工程と、
    該表示した結果に基づいて加泥材の注入量の調整、掘進速度の調整等の切羽状態を管理する工程とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
  3. 前記検証において、実施工の塑性流動状態と前記流動解析にて推定した塑性流動状態とがほぼ同一であって、前記流動解析にて推定した回転トルクの精度が低い場合は、前記流動解析の入力条件を変更して、前記回転板の回転トルクを推定する工程を再度行うことを特徴とする請求項1に記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
  4. 前記検証は、実施工の流動状態と前記流動解析にて推定した流動状態とがほぼ同一の場合に、前記測定装置で測定した回転トルクの時系列の測定値と前記流動解析で推定した回転トルクの時系列の推定値とを比較し、両値の変動パターンが類似している場合は精度が高く、両値の変動パターンが類似していない場合は精度が低いと判定することを特徴とする請求項1又は3に記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
  5. 前記確認においてチャンバー内の塑性流動状態が不適切な場合は、前記流動解析の入力条件を変更する工程を経て、前記回転板の回転トルクを推定する工程を再度行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
  6. 前記確認は、
    前記流速と前記ずり速度との関係を評価し、前記流速と前記ずり速度との関係が所定の範囲内に入っている場合は適切であり、所定の範囲に入っていない場合は不適切であると判定することを特徴とする請求項1、2、5のいずれかに記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
  7. 前記流動方向及び前記流速をベクトルにて表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
  8. 前記ずり速度をスカラーにて表示することを特徴とする請求項1に記載の土圧式シールド工法の推進管理方法。
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