JP4770144B2 - 記憶素子 - Google Patents
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Description
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
一方、記録された情報を書き換えるためには、アドレス配線にある程度の電流を流さなければならない。
そして、MRAMを構成する素子の微細化に従い、アドレス配線も細くなるため、充分な電流が流せなくなってくる。
スピン注入による磁化反転とは、磁性体の中を通過してスピン偏極した電子を、他の磁性体に注入することにより、他の磁性体において磁化反転を起こさせるものである。
そして、スピン注入による磁化反転は、素子が微細化されても、少ない電流で磁化反転を実現することができる利点を有している。
このため、不揮発性を維持したまま、記録電流の低減を実現することが難しかった。
このとき、記憶層の磁化状態を変化させて情報を記録するために必要となる電流量は、記憶層の体積、飽和磁束密度、並びに制動定数に比例し、分極率に反比例する。
そして、記憶層が、Fe,Co,Niの3d遷移金属元素とGdとを含有する構成となっていることにより、Gdによって飽和磁束密度を低減することができ、制動定数の増加が少なく、分極率の低下が飽和磁束密度の低下と比較して少ないため、情報を記録するための電流を低減させることができる。
そして、磁場を印加して磁化状態を変化させる、従来のMRAM用の磁気記憶素子と比較して、磁場を印加するための配線が不要となるため、記憶素子の占める体積を低減することができる。
これにより、消費電力を低減することができる。
また、記憶層の体積を小さくしなくても記録電流を低減させることが可能になるため、記憶層の体積を小さくすることによる熱ゆらぎの影響を抑制し、記録された情報を長期間安定に保持することができる。
これにより、本発明の記憶素子をメモリセルに用いてメモリを構成すれば、メモリを小型化したり、高密度化して記憶容量を大きくしたりすることが容易に可能になる。
従って、本発明によれば、省電力動作可能な高密度の不揮発性メモリを実現することができる。
また、記憶層に対して、前述したスピン注入による磁化反転を用いて、記憶層を構成する磁性層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行う。
さらに、本発明では、記憶層をFe,Co,Niから選ばれる少なくとも1種の元素とGdとを含む構成とする。
一方、熱ゆらぎに対する情報保持特性は、記憶層の体積及び磁気異方性エネルギーが大きいほど良好になる。
従って、熱に対する情報保持特性を維持しながら記録電流を下げるには、飽和磁束密度と制動定数を下げ、磁気異方性エネルギーと分極率を上げればよい。
また、Fe,Co,Niの3d遷移金属元素の飽和磁束密度を効果的に下げるには、Gd,Tb,Dy,Ho等の重希土類元素を添加すると効果的である。
しかし、Gd以外の重希土類元素を添加した場合には、制動定数の増加が著しく、記録電流の低減には効果がない。
一方、Gdを添加した場合には、分極率が低下するものの、分極率の低下が飽和磁束密度の低下よりもずっと少なくなる。
このように記録電流を低下させることができるのは、Gdを添加したときのみである。
記憶層中のGdの含有率は、好ましくは20%(原子%)以下、より好ましくは10〜20%(原子%)とする。10〜20%とすると、記録電流の低減効果が大きい。一方、Gdの含有量が多くなり過ぎると、分極率が大きく低下するので好ましくない。
記憶層は合金として形成しても良いし、各元素又はそれらの合金を適当な周期で積層して形成しても良い。
そのため、記憶層全体の組成(Gdの含有比率)が同一であっても、記憶層の非磁性層側界面で3d磁性金属(Fe,Co,Ni)の含有量を増やすことにより、飽和磁束密度を減らしながら、分極率の低下を抑えることができる。
そして、非磁性層に酸化物を用いた場合には、記憶層の非磁性層側界面のGdが選択的に酸化し、記憶層の非磁性層側界面の分極率が大きくなるので、好ましい。
上述のように、記憶層の非磁性層側界面の分極率を大きくすることによって、磁化反転に必要な電流量を低減することができると共に、読み出し時の抵抗変化が大きくなり容易に読み出しが可能となる。
非磁性層に絶縁体を用いた場合は、記録された情報を読み出す際の信号出力が大きくなるが、素子の絶縁破壊を防ぐために流せる記録電流には制限がある。
非磁性層に金属等の導電体を用いた場合は、多くの電流を流すことができるが、情報を読み出す際の信号は小さくなる。
この記憶素子10は、下層から、下部電極11、反強磁性層12、磁性層13、非磁性層14、磁性層(参照層)15、トンネル絶縁層16、記憶層17、保護層18、上部電極19が積層されて成る。
記憶層17は、磁性体から成り、情報を磁化状態(磁化の向き)で保持することができるように構成される。
磁性層13・非磁性層14・磁性層(参照層)15の3層により、積層フェリ構造の磁化固定層21が構成される。このうち、磁性層13は反強磁性層12により磁化の向きが固定される。磁性層(参照層)15は、磁性層13とは磁化の向きが反平行になり、また記憶層17に対する磁化の向きの基準となるものである。
上部電極19から下部電極11に向けて、即ち記憶層17から磁性層(参照層)15に向けて電流を流すと、磁性層(参照層)15から記憶層17に偏極電子が注入され、記憶層17の磁化の向きが参照層15の磁化の向きと平行になる。
下部電極11から上部電極19に向けて、即ち参照層15から記憶層17に向けて電流を流すと、記憶層17から参照層15に偏極電子が注入され、記憶層17の磁化の向きが参照層15の磁化の向きと反平行になる。
このようにして、電流を流す向きによって、記録する情報を選択することができる。
なお、読み出し時に流す電流は、スピン注入による記憶層17の磁化反転が生じないように、反転電流よりも小さくする。
組成分布を有している場合には、特に、記憶層17のトンネル絶縁層16側界面において、他の部分よりもFe,Co,Niの含有量が多くなっていることが好ましい。このようにトンネル絶縁層16側界面においてFe,Co,Niの含有量が多くなっていることにより、この界面の分極率を上げて、情報を記録するための電流を低減させることができ、また情報の読み出しの際の抵抗変化も大きくすることができる。
このようなメモリにおいては、各メモリセルの記憶素子10に対して、電流を流すために、下部電極11及び上部電極19に、それぞれ配線等を接続する。そして、情報の記録や読み出しを行う際には、駆動回路から配線等を通して対象となるメモリセルの記憶素子10に電流を供給する。
このように情報を記録するための電流を低減させることができるため、少ない電流量で情報の記録を行うことが可能である。
これにより、消費電力を低減することができる。
そして、磁場を印加して磁化状態を変化させる、従来のMRAM用の磁気記憶素子と比較して、磁場を印加するための配線が不要となるため、記憶素子10の占める体積を低減することができる。
これにより、本実施の形態の記憶素子10によりメモリセルを構成したメモリを小型化したり、高密度化して記憶容量を大きくしたりすることが容易に可能になる。
ここで、本発明の記憶素子の構成において、具体的に記憶層の寸法や組成等を設定して、特性がどのようになるか検討を行った。
即ち、膜厚10nmのTa膜から成る下部電極11の上に、膜厚30nmのPtMn膜から成る反強磁性層12、膜厚2nmのCoFe膜から成る磁性層13、膜厚0.8nmのRu膜から成る非磁性層14、膜厚2nmのCoFe膜から成る磁性層(参照層)15、膜厚0.9nmの酸化アルミニウム膜から成るトンネル絶縁層16、膜厚3nmの記憶層17、膜厚10nmのTa膜から成る保護層18を、順次積層形成した。このうち、磁性層13、非磁性層14、磁性層(参照層)15の3層の積層により、磁化固定層21が構成される。なお、トンネル絶縁層16は、Al膜を成膜した後に、Al膜を酸化処理して酸化アルミニウム膜(AlOx膜)とした。
次に、磁性層13から保護層18までの各層をパターニングして、長軸約200nm・短軸約150nmの楕円形状のパターンとした。
さらに、パターニングされた保護層18の上に、膜厚50nmのCu膜から成る上部電極19を形成した。
その後に、磁場中熱処理炉で、370℃・10時間の熱処理を行い、反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理を行った。
このようにして、図1に示した構成の記憶素子10を作製した。
下部電極11と上部電極19との間に流す電流量を掃引しながら記憶素子10の抵抗を測定し、抵抗が変化したときの電流値から、反転電流Icを求めた。
そして、記憶層17の磁化の向きが、参照層15の磁化の向きに対して、平行状態から反平行状態に変化する電流値と、反平行状態から平行状態に変化する電流値とをそれぞれ測定し、これら電流値の絶対値の平均を反転電流Icの値とした。
まず、CoFe(組成比Co:Fe=1:1)に各種元素M(M=Si,Tb,Ho,Gd)をそれぞれ添加した合金膜により記憶層17を構成し、各添加元素Mについてそれぞれ添加量を変えて、添加量(原子%)に対する反転電流Icの変化を調べた。
結果を図2に示す。図2の横軸は、組成(Co50Fe50)100−xMx中の添加元素Mの含有量x(原子%)を示している。
これに対して、Gdを添加した場合には、反転電流Icの減少が見られる。
即ち、記録電流を低減するためには、記憶層へのGdの添加が有効であることが確認できる。
また、Gdの含有量xが2%程度でも反転電流Icを低減する効果があるが、特に含有量xが10〜20%のときに、充分な低減効果が得られることがわかる。なお、含有量xが20%を超えてさらに多くなると、スピン分極率が小さくなるため、反転電流Icの低減効果も小さくなっていく。
各種添加元素Mの含有量x(原子%)とKuV/kTとの関係を図3に示す。
これに対して、Gdを添加した場合には、飽和磁束密度が小さくなるが、磁気異方性エネルギーKuが大きくなるので、KuV/kTの値は添加量に大きく依存はしない。
また、Siを添加した場合には、添加量を増やすと、KuV/kTが小さくなり記憶の保持特性が低下するが、Gdを添加した場合には添加量によるKuV/kTの変化が少ないため、記憶の保持特性の大きな低下は見られない。
各種添加元素Mの含有量(原子%)とMR比の大きさとの関係を図4に示す。
希土類元素M(M=Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho)の添加量と反転電流Icとの関係を図5に示す。図5の横軸は、(Co50Fe50)90Gd10に対して、10%のGdの一部をx(原子%)の希土類元素Mで置き換えた場合の希土類元素Mの添加量x(原子%)を示している。また、比較対照として、(Co50Fe50)90Gd10の場合をGdとして示している。
しかしながら、Gdには完全に取り除くのが難しい希土類元素が不純物として含まれやすい。
そこで、反転電流Icを大きく増加させないために、Gd以外の希土類元素の含有量を1原子%以下にすることが望ましい。
次に、CoFeGdから成る記憶層17の構成を変更して、反転電流Icや特性の違いを調べた。具体的には、均一な組成のCoFeGd合金により記憶層17を構成した場合と、CoFeとGdに組成分布をもたせて記憶層17を構成した。
次に、非磁性層16の上に、膜厚1.5nmのGd膜と膜厚1.5nmのCoFe膜とを順次積層して記憶層を形成し、記憶素子10を作製して試料2の記憶素子とした。この試料2の記憶素子は、図6Bに示すように、記憶層17が、下側のGdを多く含む部分22と上側のCoFeを多く含む部分23とを有する組成分布となっている。
次に、非磁性層16の上に、膜厚1.5nmのCoFe膜と膜厚1.5nmのGd膜とを順次積層して記憶層を形成し、記憶素子10を作製して試料3の記憶素子とした。この試料3の記憶素子は、図6Cに示すように、記憶層17が、下側のCoFeを多く含む部分23と上側のGdを多く含む部分22とを有する組成分布となっている。
次に、Gd膜とCoFe膜とを積層して記憶層を形成した場合のうち、Gd膜を参照層15側に積層した試料2はMR比が小さく、また1mA以下(素子が破壊しない範囲)の電流では磁化反転の動作を確認できなかった。
一方、CoFe膜を参照層15側に積層した試料3は、合金膜とした試料1よりもさらに反転電流Icが小さく、MR比も大きくなる。これは、CoFeの方がGdよりも分極率が大きいため、CoFe膜を参照層15側に積層することにより、反転電流Icの低減及びMR比の向上に効果があるためである。
また、磁化固定層を単層の磁性層(参照層)のみにより構成してもよく、また各磁性層を材料や組成の異なる複数の磁性層の積層により構成してもよい。
また、記憶層と磁化固定層との間に、トンネル絶縁層16の代わりに非磁性導電層を設けて記憶素子を構成してもよい。
Claims (2)
- 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層と、
前記記憶層に対してトンネル絶縁層を介して設けられ、磁化の向きが固定された磁化固定層とを少なくとも有し、
前記トンネル絶縁層を通じて、前記記憶層と前記磁化固定層との間に電流を流すことにより情報の記録が行われる記憶素子であって、
前記記憶層が、Fe,Co,Niから選ばれる少なくとも1種の元素と、Gdとを含有し、
前記記憶層のFe,Co,Niの含有量が、前記トンネル絶縁層側界面で他の部分よりも多くなっている
記憶素子。 - 前記記憶層に含まれるGd以外の希土類元素が1原子%以下である請求項1に記載の記憶素子。
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