JP4769979B2 - 圧電膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、圧電膜の製造方法に関する。
圧電材料等の粒子を用いて基板上に成膜する方法として、エアロゾルデポジション法(AD法)が知られており、例えばインクジェットプリンタのプリンタヘッド等に用いられる圧電アクチュエータ等の製造に使用可能である。これは、圧電材料の微粒子を気体中に分散させたもの(エアロゾル)を基板表面に向けて噴射させ、微粒子を基板上に衝突・堆積させることにより圧電膜を形成させるものである(例えば特許文献1)。
特開平11−330577号公報
ところが、上記のような方法では、基板の種類により、圧電膜の基板への密着性や成膜速度が大きく変わってしまうという問題があった。このため、基板上にチタン膜等の中間層を設けるなどの改善策が提案されてきたが、密着性や成膜速度の向上には必ずしも十分ではなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電膜等の膜の基板への密着性を改善できる簡易な圧電膜の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、膜の基板への密着性を改善できる簡易な膜の製造方法を開発すべく鋭意研究してきたところ、以下の知見を見出した。
AD法においては、成膜材料の粒子が基板表面に高速で衝突し、これらが粉砕されつつ基板にめり込んで付着する。このAD法について、本発明者らは、成膜材料の粒子の硬さと基板材料の硬さとが大きく異なる場合には、成膜材料の粒子が基板に付着しないことを知見し、その理由を以下のように考察した。
まず、成膜材料の粒子の硬さが基板材料の硬さに比べて十分に大きい場合は、基板面に衝突した成膜材料の粒子が粉砕されないと考えられる。そして、粒子が粉砕されず大粒のまま基板表面にめり込むため、粒子が粉砕されて基板にめり込む場合と比較して、粒子と基板との密着面積が小さくなり、粒子の基板に対する密着力が低下すると考えられる。
加えて、粒子が十分に粉砕されないことにより、電気的、化学的に活性である新生面(粒子が粉砕されることで初めて表面に露出する面。酸化や汚れがないため電気的、化学的な反応が生じやすい)が形成されにくく、この新生面が基板表面と電気的、化学的に結合する度合いが低下することで粒子の基板表面に対する密着力が低下するものと考えられる。
また、基板が脆性な材料からなる場合に、衝突した材料粒子が基板をエッチングする現象が顕著に確認されているが、この現象は、粒子が基板に比べて十分に硬いため粉砕されず、粒子が粉砕されるときに費やされるはずのエネルギーが基板面を破壊するために使われて生じたものと考えれば、粒子が粉砕されていないことが推測できる。
一方、成膜材料の粒子の硬さが基板材料の硬さに比べて十分に小さい場合には、基板面に衝突した粒子がこの基板面に弾かれてめり込むことができず、十分なアンカー層が形成されないため、成膜し難いと考えられる。この場合において、粒子の衝突エネルギーを大きくすれば、増大した衝突エネルギーによって、粒子を基板面にめり込ませることが可能になるとも考えられる。しかしながら、粒子の硬さが極端に小さい場合には、粒子の衝突エネルギーを大きくしても粒子自体が破壊されるに止まり、基板表面にめり込むことができないと考えられる。
なお、新生面の形成については、基板表面においても生ずるものであり、これが粒子と基板の密着力を上昇させるように作用するものと考えられる。すなわち、粒子と基板との硬度比が適度な範囲にある場合には、粒子だけではなく基板表面においても、変形、亀裂、構造欠陥、転位、ひずみが生じ、密着面積の増大と新生面の形成がなされ、粒子と基板との密着力が上昇するものと考えられる。
以上の知見及び考察に基づいて、本発明者らは、粒子が基板へ付着して成膜する際の成膜性をコントロールするために、粒体の硬さと基板表面の硬さとの相対関係を考慮することが極めて効果的であることを見出した。すなわち、粒子の硬さと基板表面の硬さとの比をある範囲内とすることによって、粒子を粉砕させた状態で基板にめり込ませることができ、あるいは、電気的、化学的に活性な新生面を粒子および基板表面に形成することができ、もしくはこれらが複合的に作用することにより、粒子と基板との密着性を向上させることができるのである。本発明は、かかる新規な知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、圧電材料の粒子を含むエアロゾルを基板に吹き付けて前記粒子を付着させることで前記基板上に圧電膜を形成する圧電膜の製造方法であって、前記基板において前記粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と前記粒子のビッカース硬さHv(p)との比が、0.68≦Hv(p)/Hv(b)≦1.38の範囲にあることを特徴とする。
また、粒子のビッカース硬さHv(p)に代えて、粒子の圧縮破壊強度Gv(p)を指標として使用することもできる。エアロゾルデポジション法は基板への衝突エネルギーにより粒子が粉砕し、基板へ密着するものであるため、その圧縮破壊強度を密着力の指標とすることもまた有意義であり、対応する基板についてはその表面硬度が対応する指標となる。
すなわち、本発明は、圧電材料の粒子を含むエアロゾルを基板に吹き付けて前記粒子を付着させることで前記基板上に圧電膜を形成する圧電膜の製造方法であって、前記基板において前記粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と前記粒子の圧縮破壊強度Gv(p)との比が、0.18≦{Gv(p)/Hv(b)}×100≦1.38の範囲にあることを特徴とする。
なお、基板のビッカース硬さ、粒子のビッカース硬さおよび圧縮破壊強度は、薄膜および微小領域の硬さを測定することが可能なナノインデンション法によって測定することができる。粒子の圧縮破壊強度は、以下の式(1)によって定義される。
Gv(p)=0.9×Fd/d...(1)
但し、Gv(p):圧縮破壊強度(単位 GPa)
Fd :粒子破壊時の圧縮力(単位 kN)
d :粒子の直径(単位 mm)
また、本発明において使用できる粒子及び基板としては、ビッカース硬さHv(p)が300以上400以下の粒子と、ビッカース硬さHv(b)が290以上440以下の基板との組み合わせ、あるいは、圧縮破壊強度Gv(p)が0.8GPa以上4.0GPa以下の粒子と、ビッカース硬さHv(b)が290以上440以下の基板との組み合わせが特に好ましい。このような粒子としては、例えばPZTを使用することができる。また基板としては、例えばSUS430等のステンレス鋼を使用することができる。
本発明によれば、圧電材料の粒子を含むエアロゾルを基板に吹き付けて粒子を付着させることで基板上に圧電膜を形成する圧電膜の製造方法において、基板において粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と粒子のビッカース硬さHv(p)との比を0.68≦Hv(p)/Hv(b)≦1.38の範囲とすること、あるいは、基板において粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と粒子の圧縮破壊強度Gv(p)との比を0.18≦{Gv(p)/Hv(b)}×100≦1.38の範囲とすることにより、粒子の基板への密着性をより向上させ、コストメリットのある圧電膜の製造方法を実現することができる。
本発明の圧電膜等の膜を形成させるための成膜装置の概略図を、図1に示した。この成膜装置1は、材料粒子2をキャリアガスに分散させてエアロゾル3を形成させるエアロゾル発生器10、エアロゾル3をノズルから噴出させて基板に付着させるための成膜チャンバー20、使用後のエアロゾル3から材料粒子2を回収するための粉体回収装置30を備えている。
エアロゾル発生器10には、内部に成膜材料の粒子2を収容可能なエアロゾル室11と、このエアロゾル室11に取り付けられてエアロゾル室11を振動させる加振装置12とを備えている。エアロゾル室11には、キャリアガスを導入するためのガスボンベ13が導入管14を介して接続されている。導入管14の先端はエアロゾル室11内部において底面付近に位置し、材料粒子2中に埋没するようにされている。キャリアガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスや空気、酸素等を使用することができる。成膜材料としては、特に制限はない。また、膜として圧電膜を成膜する場合には、圧電膜の材料として通常に使用されるもの、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、酸化亜鉛等を使用することができる。
成膜チャンバー20には、基板4を取り付けるためのステージ21と、このステージ21の下方に設けられた噴出ノズル22が備えられている。噴出ノズル22は、エアロゾル供給管23を介してエアロゾル室11に接続されており、エアロゾル室11内のエアロゾル3が、エアロゾル供給管23を通って噴出ノズル22に供給されるようになっている。また、ステージ21は、図示しない駆動装置によって、基板4を取り付けた状態で板面方向に移動可能とされているとともに、噴出ノズル22からのエアロゾル噴射方向に対する基板面の角度を調整できるようになっている(図1中矢印参照)。また、この成膜チャンバー20には、粉体回収装置30を介して真空ポンプ25が接続されており、その内部を減圧できるようにされている。
この成膜装置1を用いて膜を形成させる際には、エアロゾル室11の内部に材料粒子2を投入する。そして、ガスボンベ13からキャリアガスを導入して、そのガス圧で材料粒子2を舞い上がらせる。それととともに、加振装置12によってエアロゾル室11を振動させることで、材料粒子2とキャリアガスとを混合してエアロゾル3を発生させる。そして、成膜チャンバー20内を真空ポンプ25により減圧することにより、エアロゾル室11と成膜チャンバー20との間の差圧により、エアロゾル室11内のエアロゾル3を高速に加速しつつ噴出ノズル22から噴出させる。噴出したエアロゾル3に含まれる材料粒子2は基板4に衝突して堆積し、膜5を形成する。エアロゾルの吹き付けは、ステージ21に取り付けられた駆動装置によって基板4を板面方向に移動させながら行われ、これにより、基板4の全面に渡って膜5が形成される。
個々の成膜条件の好ましい範囲は、例えば成膜チャンバー内圧力50〜400Pa、エアロゾル室内圧力10000〜80000Pa、ノズル開口サイズ10mm×0.4mm、キャリアガス種類He、Air、ノズル基板相対速度1.2mm/sec、ノズル−基板間距離10〜20mm、材料粒子の平均粒子径0.3〜1μm、粒子速度150〜400m/secという条件の下で、基板4のビッカース硬さHv(b)と粒子2のビッカース硬さHv(p)との比が0.39≦Hv(p)/Hv(b)≦3.08の範囲を満たすように基板と材料粒子を選択すると、基板4上に膜5を形成することができる。
特に、基板4へ圧電材料(PZT)の粒子2を噴射して圧電材料の膜5を形成する場合は、基板4のビッカース硬さHv(b)と粒子2のビッカース硬さHv(p)との比が0.43≦Hv(p)/Hv(b)≦1.43の範囲にあるようにする。このような粒子2と基板4との組み合わせの一例としては、例えば硬さHv(p)が300〜400であるPZT粒子と、硬さHv(b)が280〜700であるSUS430製の基板とを挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
[基板及び材料粒子の硬さと成膜の良否との関係を調べる実施例群]
最初に、ガラス基板にPZTの材料粒子とフェライトの材料粒子とを吹き付ける成膜試験を行った実施例について説明する。
参考例1−1>
1.成膜
基板としては、エアロゾルが吹き付けられる付着面のビッカース硬さHv644であるガラス板を使用した。付着面には十点平均粗さRz≦0.7となるように研磨処理を施した。また、成膜材料の粒子としては平均粒子径0.3〜1μm、ビッカース硬さHv300〜400、圧縮破壊強度0.8〜4.0GPaのPZTを用いた。
なお、ビッカース硬さの測定は、ナノインデンション法により行った。測定装置として+csm社製Nano−Hardness Testerを用い、圧子としてバーコビッチ圧子を使用して、試験力F=0.008Nで試験を行った。また、圧縮破壊強度の測定は、同じく測定装置として+csm社製Nano−Hardness Testerを用いて行い、粒子破壊時の圧縮力Fdから式(1)により算出した。
Gv(p)=0.9×Fd/d...(1)
但し、Gv(p):圧縮破壊強度(単位 GPa)
Fd :粒子破壊時の圧縮力(単位 kN)
d :粒子の直径(単位 mm)
上記実施形態と同様の成膜装置によってガラス基板上に厚さ10μmの圧電膜(PZTの膜)を形成した。成膜条件は、成膜チャンバー内圧力150Pa、エアロゾル室内圧力30000Pa、ノズル開口サイズ10mm×0.4mm、キャリアガス種類He、ノズル基板相対速度1.2mm/sec、ノズル−基板間距離10〜20mm、粒子速度250m/secとした。成膜の成否については目視により確認した。
参考例1−2>
基板としては、エアロゾルが吹き付けられる付着面のビッカース硬さHv644のガラス板を使用した。付着面には十点平均粗さRz≦0.7となるように研磨処理を施した。また、成膜材料の粒子としては平均粒子径0.3〜1μm、ビッカース硬さHv960〜1120、圧縮破壊強度9.6〜11GPaのフェライトを用いた。それ以外は参考例1−1と同様にして成膜を行い、成膜の成否を目視により確認した。
<実施例1−3>
基板としては、エアロゾルが吹き付けられる基板表面に厚さ3〜5μmのフェライトの膜が形成されたガラス板を使用した。フェライト膜の表面には算術平均粗さRa≦0.8,十点平均粗さRz≦0.7となるように研磨処理を施した。このフェライト膜表面(付着面)のビッカース硬さはHv985であった。また、成膜材料の粒子としては平均粒子径0.3〜1μm、ビッカース硬さHv960〜1120、圧縮破壊強度9.6〜11GPaのフェライトを用いた。それ以外は参考例1−1と同様にして成膜を行い、成膜の成否を目視により確認した。
参考例1−4>
基板としては、エアロゾルが吹き付けられる基板表面に厚さ3〜5μmのPZTの膜が形成されたガラス板を使用した。PZT膜の表面には十点平均粗さRz≦0.7となるように研磨処理を施した。このPZT膜表面(付着面)のビッカース硬さはHv611であった。また、成膜材料の粒子としては平均粒子径0.3〜1μm、ビッカース硬さHv960〜1120、圧縮破壊強度9.6〜11GPaのフェライトを用い、PZT膜の上にフェライトの膜を形成するようにした。それ以外は参考例1−1と同様にして成膜を行い、成膜の成否を目視により確認した。
<結果と考察>
基板及び材料粒子の種類と成膜の成否との関係を表1に示す。
Figure 0004769979
表1に示すように、ガラス基板(ビッカース硬さHv644)にPZTの粒子(ビッカース硬さHv300〜Hv400、圧縮破壊強度0.8〜4.0GPa)を含むエアロゾルを吹き付けた場合、ガラス基板(ビッカース硬さHv644)にフェライトの粒子(ビッカース硬さHv960〜Hv1120、圧縮破壊強度9.6〜11GPa)を含むエアロゾルを吹き付けた場合、ガラス基板の上のフェライト膜(ビッカース硬さHv985)にPZTの粒子(ビッカース硬さHv300〜Hv400、圧縮破壊強度0.8〜4.0GPa)を含むエアロガスを吹き付けた場合の3つの場合には、吹き付けられた粒子の成膜が確認された。詳細には、成膜材料が基板を露出させないよう隙間無く覆い尽くすまで成膜したことが目視により確認された。これらの場合におけるHv(p)/Hv(b)の値は順に、0.47〜0.62、1.49〜1.74、0.30〜0.41であり、{Gv(p)/Hv(b)}×100の値は順に、0.12〜0.62、1.49〜1.70、0.08〜0.41である。
対して、ガラス基板上のPZT膜(ビッカース硬さHv611)にフェライトの粒子(ビッカース硬さHv960〜1120、圧縮破壊強度9.6〜11GPa)を含むエアロガスを吹き付けた場合には、フェライト膜がPZT膜上に形成されていることが目視により確認された。但し、部分的に剥離が生じている場合もあった。この場合におけるHv(p)/Hv(b)の値は、1.57〜1.83であり、{Gv(p)/Hv(b)}×100の値は1.57〜1.80である。
実施例1−3と参考例1−4とを対比すると、基板となる材料と吹き付けられる粒子の材料とが入れ替わっただけであり、他の条件は全て同じである。積層された二つの材料層の間における拡散や化学反応の作用に違いはないことを考慮すると、これら2例において相違する条件と考えられるのは、基板の硬さと吹き付けられる粒子の硬さまたは粒子の圧縮破壊強度との関係のみである。したがって、この相違が成膜の良否に影響したものと思われる。すなわち、参考例1−4では基板の硬さに対する粒子の硬さおよび圧縮破壊強度が実施例1−3の場合より大きく、基板に衝突したときに粉砕する粒子の割合が少ないため、粉砕によって消費されるエネルギーが少なく、形成された膜にたくさんのエネルギーが蓄積され、このエネルギーが膜の内部応力を大きくするために剥離が生じやすくなるものと考えられる。
以上より、成膜性が基板の粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と粒子のビッカース硬さHv(p)または圧縮破壊強度Gv(p)との関係に依存することがわかった。特に0.30≦Hv(p)/Hv(b)<1.57、または0.08≦{Gv(p)/Hv(b)}×100<1.57の範囲とすると、剥離の生じがたい成膜がなされて好ましいことが分かった。
[基板の硬さと成膜速度との関係を調べる実施例群]
次に、ステンレス(SUS430)鋼からなる基板、および基板表面にPt膜を成膜したものにPZT粒子を吹き付けて圧電膜を形成する試験を行った実施例について説明する。
参考例2−1>
基板としてはエアロゾルが吹き付けられる基板表面(付着面)のビッカース硬さがHv210のステンレス(SUS430)板を使用した。基板表面には、十点平均粗さRz≦0.7となるように研磨処理を施した。また、材料粒子としては平均粒子径0.3〜1μm、ビッカース硬さHv300〜400、圧縮破壊強度0.8〜4GPaのPZTを用いた。
なお、ステンレス基板の基板表面の硬さの調整は、空気中または真空中で基板を400〜800℃で加熱しその表面性状を変化させることにより行った。また、ビッカース硬さの測定は、ナノインデンション法により行った。測定装置として+csm社製Nano−Hardness Testerを用い、圧子としてバーコビッチ圧子を使用して、試験力F=0.015Nで試験を行った。また、圧縮破壊強度の測定は、同じく測定装置として+csm社製Nano−Hardness Testerを用いて行い、粒子破壊時の圧縮力Fdから式(1)により算出した。
Gv(p)=0.9×Fd/d...(1)
但し、Gv(p):圧縮破壊強度(単位 GPa)
Fd :粒子破壊時の圧縮力(単位 kN)
d :粒子の直径(単位 mm)
上記実施形態と同様の成膜装置によって基板上に厚さ10μmの圧電膜を形成した。成膜条件は、成膜チャンバー内圧力150Pa、エアロゾル室内圧力30000Pa、ノズル開口サイズ10mm×0.4mm、キャリアガス種類He、ノズル基板相対速度1.2mm/sec、ノズル−基板間距離10〜20mm、粒子速度250m/secとした。圧電膜の成膜速度を測定した。
参考例2−2>
基板としてエアロゾルが噴き付けられる基板表面のビッカース硬さがHv280のステンレス(SUS430)板を使用した他は、参考例2−1と同様にして成膜を行い、成膜速度を調べた。
<実施例2−3>
基板としてビッカース硬さHv290のステンレス(SUS430)板を使用した他は、参考例2−1と同様にして成膜を行い、成膜速度を調べた。
<実施例2−4>
基板としてビッカース硬さHv440のステンレス(SUS430)板を使用した他は、参考例2−1と同様にして成膜を行い、成膜速度を調べた。
参考例2−5>
基板としてステンレス(SUS430)板の表面(エアロゾルが吹き付けられる面)にあらかじめスパッタによりPtを成膜し、表面のビッカース硬さをHv700としたものを使用した他は、参考例2−1と同様にして成膜を行い、成膜速度を調べた。
参考例2−6>
基板としてビッカース硬さHv130の金メッキ板を使用した他は、参考例2−1と同様にして成膜を行い、成膜速度を調べた。
参考例2−7>
基板としてセラミック板の表面(エアロゾルが吹き付けられる面)にあらかじめペースト状のPtを塗布して850〜1200℃で焼結することで表面のビッカース硬さをHv770としたものを使用した他は、参考例2−1と同様にして成膜を行い、成膜速度を調べた。
<結果と考察>
基板の材質、ビッカース硬さおよび成膜速度のデータを表2および表3に示した。
Figure 0004769979
Figure 0004769979
表2および表3に示すように、基板の硬さHv130の場合には、成膜速度は0.13μm/secと遅かった。基板の硬さを大きくすると成膜速度は徐々に大きくなり、特に硬さHv280付近では急激に大きくなり、Hv290のときに0.29μm/secで最大となった。これは、基板面に衝突した微粒子が粉砕される割合が大きくなることにより、微粒子が基板または先に付着した粒子上に強く付着するようになったためであると考えられる。
基板の硬さをさらに大きくすると、成膜速度は徐々に低下し、Hv700付近では成膜速度は大幅に低下した。これは、微粒子が基板面で弾かれ基板面にめり込み難くなったためと考えられる。基板の硬さHv700までの範囲では、成膜速度は実用上良好な程度であり、目視によって圧電膜が隙間なく形成されて密着性が良好であることが確認された。さらに硬さを大きくすると、成膜速度はさらに低下した。
以上より、基板において微粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)を130〜770の範囲とすること、すなわち、付着面のビッカース硬さHv(b)と微粒子のビッカース硬さHv(p)との比を0.39≦Hv(p)/Hv(b)≦3.08の範囲とする(あるいは、付着面のビッカース硬さHv(b)と粒子の圧縮破壊強度Gv(p)との比を0.10≦{Gv(p)/Hv(b)}×100≦3.08の範囲とする)ことにより、膜の成長が確実に見込まれることが確認された。その中でも特に、基板のビッカース硬さHv(b)を280〜700の範囲とすること、すなわち、0.43≦Hv(p)/Hv(b)≦1.43(あるいは0.11≦{Gv(p)/Hv(b)}×100≦1.43)の範囲とすることにより、密着性を十分に満たした圧電膜が短時間で確実に形成され好ましいことが分かった。さらに、基板のビッカース硬さHv(b)を290〜440の範囲、すなわち、0.68≦Hv(p)/Hv(b)≦1.38(あるいは0.18≦{Gv(p)/Hv(b)}×100≦1.38)の範囲とすることにより、圧電膜を形成する成膜速度は高速で安定し、生産性や製造コスト(微粒子の材料コスト)の面においても優れた圧電膜の製造方法を実現できることが分かった。
[エアロゾルの噴射速度が成膜の成否に及ぼす影響を調べる実施例群]
次に、エアロゾルの噴射速度を変化させたときの成膜の成否について検討した。
参考例3>
基板と材料粒子は上記参考例2−1と同様のものを選択し、材料粒子の粒子速度を150m/sから400m/sの範囲で変化させた。それ以外の成膜条件は参考例2−1と同様とした。
<結果と考察>
粒子速度を変化させたときの成膜の成否に関するデータを表4に示した。成膜速度が0.1μm/s以上のときを「○」、0.1μm/s未満のときを「X」で表示した。また、測定を行わなかった粒子速度と硬度比との組み合わせについては「−」と表示した。
Figure 0004769979
表4に示すように、基板においてエアロゾルが吹き付けられる付着面のビッカース硬さHv(b)と微粒子のビッカース硬さHv(p)との比が0から0.25の範囲にあるときは、エアロゾルの粒子速度を200m/s〜400m/sの範囲内で変化させたとしても成膜は全くなされなかった。しかし、Hv(b)とHv(p)との比が0.25から3.0の範囲にあるときは、エアロゾルの粒子速度を150m/s〜400m/sの範囲内のいずれに設定した場合であっても成膜が確認された(成膜速度が測定されていない硬度比と粒子速度の組み合わせを除く)。以上の結果より、エアロゾルの粒子速度が成膜の成否に及ぼす影響は小さいと考えられる。
以上の実施例によって製造された圧電膜は、基板との界面においては圧電材料の粒子が粉砕されつつ基板にめり込んだ状態で付着している。このような状態では、粒子が粉砕されないで基板に付着する場合と比べると、粒界の距離が長くなっているものと推測される。したがって、製造された圧電膜を圧電アクチュエータとして使用する場合には、耐電圧特性において優れた圧電アクチュエータを提供することができる。
本実施形態の成膜装置の概略図

Claims (6)

  1. 圧電材料の粒子を含むエアロゾルを基板に吹き付けて前記粒子を付着させることで前記基板上に圧電膜を形成する圧電膜の製造方法であって、
    前記基板において前記粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と前記粒子のビッカース硬さHv(p)との比が、0.68≦Hv(p)/Hv(b)≦1.38の範囲にあることを特徴とする圧電膜の製造方法。
  2. 前記基板がステンレスであり、前記粒子がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であることを特徴とする請求項1に記載の圧電膜の製造方法。
  3. 前記粒子のビッカース硬さHv(p)が300以上400以下であり、前記基板のビッカース硬さHv(b)が290以上440以下であることを特徴とする請求項2に記載の圧電膜の製造方法。
  4. 圧電材料の粒子を含むエアロゾルを基板に吹き付けて前記粒子を付着させることで前記基板上に圧電膜を形成する圧電膜の製造方法であって、
    前記基板において前記粒子が付着する付着面のビッカース硬さHv(b)と前記粒子の圧縮破壊強度Gv(p)との比が、0.18≦{Gv(p)/Hv(b)}×100≦1.38の範囲にあることを特徴とする圧電膜の製造方法。
  5. 前記基板がステンレスであり、前記粒子がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であることを特徴とする請求項に記載の圧電膜の製造方法。
  6. 前記粒子の圧縮破壊強度Gv(p)が0.8GPa以上4.0GPa以下であり、前記基板のビッカース硬さHv(b)が290以上440以下であることを特徴とする請求項5に記載の圧電膜の製造方法。
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