JP4768920B2 - 廃プラスチックの熱分解法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は廃プラスチックの熱分解法に関し、特にコスト高を将来することなく、汚れの付着した混合廃プラスチックを効率よく、しかも高品質で油化できるようにした方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニルを含む混合廃プラスチックを油化する場合、破砕及び異物分別を含む前処理、溶融、脱塩化水素、熱分解及び改質蒸留の各工程を経て処理されるが、これらは連続処理されるのが一般的である。かかる溶融、脱塩化水素及び熱分解に必要な熱は次のような方法にて供給されていた。
1.溶融及び脱塩化水素に必要な熱は押出機と熱媒加熱部を設け、熱媒油を導入して間接加熱によって供給する。
2.溶融及び熱分解に必要な熱は電気ヒータや燃焼ガスによって槽外壁を直接加熱することによって供給する。
3.熱分解に必要な熱は一定量の熱分解槽の残油をポンプで熱分解槽から抜き出し、加熱部を経て熱分解槽に循環させ、加熱部にて熱分解に必要な熱量を与えることによって供給する。
4.熱分解生成油のある留分を加熱炉で高温加熱して熱分解槽に直接吹き込むことにより熱を供給する。
【0003】
また、混合廃プラスチックを熱分解する場合、各プラスチックの熱分解速度は温度によって異なり、特に塩化ビニル、ポリスチレン及びポリプロピレンはポリエチレンより低い温度で熱分解するが、混合廃プラスチック全体の処理速度を速くするために、分解に最も時間のかかるポリエチレンの熱分解速度に対応する温度に処理温度の設定を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の廃プラスチックの熱分解法では次のような問題があった。
1.熱媒油によって加熱する方法では、市販の熱媒油の限界温度が約300°Cと低く、廃プラスチックの溶融にしか使用できない一方、脱塩化水素の温度は300°C〜320°Cであり、温度差△Tが小さいので、効率的に加熱できず、熱媒油の温度を限界温度以上に上げると、熱劣化し寿命が短くなる。特に、混合廃プラスチックにはポリスチレン樹脂が含まれていることが多く、ポリスチレン樹脂は脱塩化水素の処理の間に一部が分解してしまい、軽質油が塩化水素と共に留出し、この軽質油は有機塩素化合物を多く含み、製品とならない。
2.熱分解残油を循環させて加熱する方法では管内コーキングが生じる。
3.熱分解生成油を高温加熱して槽内へ吹き込むことのみによって熱を供給すると、加熱炉が大型となる。
4.電気ヒータや高温燃焼ガスによって槽外壁を直接加熱する方法では槽内壁にコーキングが生成しやすい。
5.特に、回分処理の時に熱媒装置等で各槽や各機器の保熱を行うと、コスト高となる。
【0005】
さらに、従来の廃プラスチックの熱分解法では処理速度を向上させるために熱分解温度は高く設定され、特に混合廃プラスチックを熱分解するときは最も分解しにくいポリエチレンの熱分解温度や反応時間に設定しているので、ポリエチレンより分解しやすいプラスチックは早期に分解し気化し、生成した残渣はポリエチレンの反応時間内に高温雰囲気に曝されるので、アスファルト、ピッチ、さらにはコークに変成してしまう。
【0006】
また、従来の廃プラスチックの熱分解法では塩化ビニルを含む混合廃プラスチックを連続的に油化する場合に下記の問題があった。
1.脱塩化水素処理は押出機でかつ連続的に行うので、破砕、分別、乾燥等の前処理設備がコスト高となる。
2.原料が廃棄物であるので、各機器や配管等での閉塞が生じやすい。連続法では閉塞が発生した場合の対応が難しく、更に機器数が多くなって複雑となり、高度な運転技術が必要となる。
3.連続的に脱塩化水素を行っているので、ショートパスが発生しやすく、脱塩化水素率が安定せず、結果として製品物性に悪影響を与える。
【0007】
これに対し、本件発明者は、塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解槽にて回分で溶融及び脱塩化水素処理した後、熱分解することにより廃プラスチックを油化するにあたり、熱分解槽において廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの低温度で廃プラスチックのマイルド熱分解を行わせて廃プラスチックの半部を油化し、廃プラスチック投入量の約2倍の量の半熱分解油を熱分解槽内に残留させ、該残留した半熱分解油の保有熱によって次の投入廃プラスチックの溶融及び脱塩化水素に必要な熱量を供給する一方、マイルド熱分解の残渣を熱分解槽から抽出し、廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの高温度で残渣のハード熱分解を行わせて残渣を油化させ、もって溶融、脱塩化水素、熱分解を回分式で行って塩化ビニルを含む廃プラスチックを効率よく、しかも高品質に油化できるようにした廃プラスチックの熱分解法を開発し、出願するに至った(平成11年特許願第232106号)。
【0008】
ところで、上述の熱分解方法を実施するにあたり、前処理として混合廃プラスチックを破砕して種類別に分離する必要がある。かかる分離作業は比重、風力、静電気、X線、近赤外線等、種々な方法を用いて行われていたが、形態の異なる混合廃プラスチックから油化に適しないプラスチックを分離する場合には比重1の水を媒体として分離するのが主流であった。
【0009】
また、家庭ゴミや産業廃棄物として回収された混合廃プラスチックには汚れが付着していることが多く、熱分解を行う前に洗浄をする必要がある。かかる洗浄作業は単に水を用いることもあったが、温水を用いたり、洗剤や中和剤を加えたりすることもあった。
【0010】
さらに、有機物の熱分解反応ではカーボン残渣が生じる。従って、上述の熱分解法を実施するにあたり、カーボンを如何に効率よく系外に排出するかが重要なポイントであり、系外への排出が不十分な場合には熱分解槽の内部に強固なコークが形成され、運転不能に至る。そこで、熱分解コーキング対策として、(1).砂を媒体とする方式、(2).触媒流動床式、(3).残渣濃縮後系外に排出する方式、(4).械的な排出方式、等を採用している。
【0011】
また、廃プラスチックや廃潤滑油の熱分解油はオレフィンが多く非常に不安定であり、空気に触れると、短時間でガム質やタール分等の沈殿物を生成し、しかも匂いや色も悪くなる。また、廃プラスチックや廃潤滑油は添加剤等により硫黄、窒素、塩素分を多く含んでおり、上述の熱分解法を実施する場合、大規模処理では触媒の存在下、高温・高圧で水素を付加することにより、又小規模では活性白土で対応するようにしている。
【0012】
また、廃プラスチックの中には発泡ポリスチレンが含まれていることがある。かかる発泡ポリスチレンをそのまま洗浄し比重分離すると、嵩比重が非常に小さく、処理上は好ましくない。そこで、発泡ポリスチレンを、(1).油化、(2).ガス化、(3).熱(燃焼ガス、電熱、摩擦熱)や溶剤(リモネン等柑橘類、特殊な鉱物油)によるインゴット化やペレット化することが行われているが、最近は熱によってインゴット化又はペレット化する方法が主流である。
【0013】
しかし、上述の処理法では次のような問題があり、上述の熱分解法を実施する上で解決すべき技術的な課題であることが判明した。
1.汚れた混合廃プラスチックを洗浄する場合、水又は温水による処理が主流であるが、多量の排水処理が必要となる。特に、農業用プラスチックの場合には肥料等が付着しているので、注意が必要である。また、水によるフィルム洗浄効果は小さく、洗浄効果を上げるために、洗浄剤や中和剤を使用する必要がある。
2.汚れは醤油、ソース、マヨネーズ等に起因することが多いが、それらには塩分が含まれ、洗浄媒体としての水は長時間使用すると塩水となり、プラスチックに塩分が付着し、そのプラスチックをそのまま燃焼するとダイオキシン問題が懸念される。また、水の比重も重くなり、洗浄能力に悪影響を与える。
3.熱風によって発泡ポリスチレンを減容する方法ではかなりの熱エネルギーを必要とし、又プラスチックが重なり合うと、熱が行き渡らず、減容を十分に行えないことがある。逆に、熱の与えすぎると、他のプラスチックを溶融してしまうおそれがある。
4.比重分離を行う場合、汎用プラスチックの比重は例えばポリプロピレン0.90、低密度ポリエチレン0.92、中高密度ポリエチレン0.94〜0.96、ポリスチレン1.05〜1.06、ABS樹脂1.03,ポリ塩化ビニル1.22〜1.38、PET樹脂1.60であり、比重1の水を比重分離の為の媒体として使用すると、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、PET樹脂は沈降し、他のプラスチックは浮上するが、油化に適するポリスチレン及びABS樹脂も沈降してしまうことは望ましくない。
5.熱分解時に生成するカーボンを効率よく安全に系外へ排出するために、砂又は触媒を媒体とし、流動床で且つ連続再生ができる設備を採用しているが、それらは大規模となり、小中型の油化システムを構築する場合には採用し難い。
6.機械的にカーボンを排出する方法では、閉塞等がしばしば発生し、高温における操業安全上、好ましくない。
7.廃プラスチックや廃潤滑油の熱分解油を良質な製品にする主な方法は触媒のもと、高温高圧下、水素添加にて行われるが、大規模操業で成り立つものであり、小規模操業では採用し難い一方、活性白土処理は酸化安定性は改善されるが、窒素、塩素、硫黄等の除去には効果はない。特に、廃活性白土処理に高い経費がかかり経済的でない。
【0014】
本発明は、かかる状況に鑑み、コスト高を将来することなく、汚れの付着した混合廃プラスチック、必要に応じて廃潤滑油を効率よく、しかも高品質で油化できるようにした廃プラスチックの熱分解法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明に係る廃プラスチックの熱分解法は、塩分を含む汚れの付着した混合廃プラスチックを熱分解槽で回分にて溶融及び脱塩化水素処理した後に熱分解することにより、廃プラスチックを油化するにあたり、混合廃プラスチックから金属及び陶器類(陶器片やガラス片等、金属以外の異物をいう)を分離するとともに、混合廃プラスチックを20mm以下の粒径に破砕し、所定量の水とほぼ60°Cに加温したポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油、又はパラフィンリッチな鉱物油とを用い、発泡ポリスチレンを減容するとともに、混合廃プラスチックを洗浄して汚れに含まれる塩分を水に移行させ、脱水を行った後、混合廃プラスチックの破砕片を比重1.05〜1.06の比重分離液によって油化に適するプラスチック片を浮上させ、油化に適しないプラスチック片を沈降させることにより油化に適した廃プラスチックを回収し、該回収した廃プラスチックを熱分解槽で溶融して脱塩化水素を行った後、熱分解しうる温度範囲のうちの低温度で廃プラスチックのマイルド熱分解を行わせて廃プラスチックの半部を油化し、その残渣を熱分解槽から抽出し、廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの高温度で残渣のハード熱分解を行わせて残渣を油化させるようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明の特徴の1つは汚れた混合廃プラスチックから油化原料を選別する前提条件として、混合廃プラスチックから金属や陶器類を除去して20mm以下の粒径に破砕した後、ほぼ60°Cに加温した油を用いて発泡ポリスチレンを減容するとともに混合廃プラスチックの洗浄するようにした点にある。
【0017】
混合廃プラスチックの汚れの主たる原因は廃プラスチックの表面に付着した醤油、ソース、食物油、マヨネーズ、砂、肥料等である。これらは水で洗浄すると、洗浄水全体が汚れ、しかも油質は溶解できない。水の代わりに油を使用するとこれら問題が大幅に改善される。
【0018】
また、醤油等には塩分が含まれているので、醤油を付着させたまま廃プラスチックを燃焼させると、ダイオキシンが発生するおそれがあり、水を所定量加えて塩分を水側に移行させることが重要である。さらに、混合廃プラスチックの比重分離の処理速度を向上させるために、嵩比重を非常に小さくしている発泡ポリスチレンを減容させることが必要である。
【0019】
そこで、本発明では減容及び洗浄には油を使用しており、この油にはポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油又はパラフィンリッチな鉱物油(例えば、パラフィン系灯油)が有効である。この油を約60°Cに加温して汚れた混合廃プラスチックと短時間接触させることにより、発泡ポリスチレンのみ減容し、他の廃プラスチックの品質に影響することがなく、しかも廃プラスチックに付着した汚れは油によって分離され洗浄される。
【0020】
汚れた液及び塩水は短時間で沈降し、油と分離される。減容された発泡ポリスチレンと他の廃プラスチックは系外に取り出され、油を除去してから比重分離槽へ送る。汚水は沈降濃縮されて槽底から取り出すことができる。
【0021】
減容及び洗浄に使用する油はポンプで槽底から引き抜き、フィルタ処理した後、加熱器にて温度約60°Cに加熱して減容・洗浄・脱水機に再び送り込むのがよい。油の温度は常に均一にすることが重要であり、局部的に温度が上がると、混合廃プラスチックの一部が溶解し、比重分離性能に悪影響が発生する。油の加熱はジャケットは避け、外部熱交換が好ましい。
【0022】
発泡ポリスチレン以外の発泡プラスチック、例えば発泡ポリエチレンは上記条件では減容できず、入口液面に浮上するので、処理能力を上げるためには減容・洗浄・脱水機を攪拌に加え、移送ができる構造とするのが望ましい。
【0023】
また、上記減容積・洗浄・脱水に用いる装置も新規である。即ち、本発明によれば、発泡ポリスチレンの減容及び混合廃プラスチックの洗浄・脱水に用いる減容・洗浄・脱水機であって、本体はその上端から廃プラスチックが投入されるとともに、一定量の水を注入される槽状をなし、該槽状本体の内部には約60°Cに加温されたポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油、又はパラフィンリッチな鉱物油と混合廃プラスチックの破砕片とが接触する領域が設けられる一方、上記槽状本体の底部には混合廃プラスチックの破砕片と油及び汚水とを攪拌混合しながら送り出す第1移送コンベアが設けられ、該第1移送コンベアの終端には混合廃プラスチックの破砕片を比重分離槽へ移送する第2移送コンベアが接続され、該第1、第2の移送コンベアの接続部位には混合廃プラスチックの破砕片と油及び汚水とを分離する分離板が介設されるとともに、汚水と油とを比重分離する滞留領域が設けられていることを特徴とする混合廃プラスチックの減容・洗浄・脱水機を提供することができる。
【0024】
比重分離液はエチレングリコールと水とを約60:40の容量比で混合した液を常温で使用するのがよい。その時の比重は1.05あり、水では浮上できないポリスチレンやABS樹脂を浮上させることができる。但し、比重1.05〜1.06の比重分離液であれば、他の液を使用することもでき、油化に適するプラスチックを浮上させ、油化に適しないプラスチックを沈降させることにより油化に適した廃プラスチックを回収することができる。
【0025】
減容・洗浄・脱水された混合廃プラスチックの破砕片は油分を切った後、比重分離槽に送る。比重分離槽の構造は従来型でよい。但し、処理能力を上げるためにハイドロサイクロン方式を採用する場合は廃プラスチック破砕片のサイズは10mm以下の粒径に破砕するのが好ましい。
【0026】
浮上したポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂は遠心分離にて比重分離液を分離して乾燥し、油化装置等の原料とする。回収された液は比重分離槽へ再度送り込むのがよい。
【0027】
また、第1の熱分解槽の熱源は特に限定しないが、本件発明者らの先行出願と同様に、廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの低温度でマイルド熱分解を行わせ、半熱分解油の一部を熱分解槽内に残留させ、該残留した半熱分解油の保有熱によって熱量を供給するようにしてもよい。
【0028】
さらに、有機物を熱分解すると、カーボンが生成する。これを系外に排出しなければ、内面側の強固なコークとなり、熱伝達を阻害し、配管等を閉塞して運転不能に至る。本発明の熱分解法では第1の熱分解槽でマイルド熱分解反応のみを行っており、第2の熱分解槽でハード熱分解反応を行わせているので、カーボンのの生成は第2の熱分解槽で起こる。
【0029】
そこで、第2の熱分解槽では縦又は横型のジャケット付き筒状槽、例えば円筒槽を使用し、槽内には中空状の羽根及び軸を有する攪拌機を設け、その中空状の軸及び羽根にスチームを流し、羽根先端の穴から槽内壁にスチームを吹き出させる構造を採用するのがよい。
【0030】
第2の熱分解槽ではハード熱分解を間欠的に行うので、ハード熱分解時はスチームを吹き込まず、ハード熱分解が終了した後、槽内残渣冷却と排出及び内壁洗浄を兼ねてスチームを導入する。残渣とスチームは残渣受槽に、スチームはその槽で分離した後、クーラで凝縮後、油水分離槽に送ることができる。
【0031】
また、本例の廃プラスチックの熱分解法を利用して廃潤滑油も油化することができる。即ち、廃潤滑油を脱水した後、ほぼ400°Cに加熱し、混合廃プラスチックとともに熱分解槽に導入して熱分解するようにすることもできる。
【0032】
ところで、有機物の熱分解から得られた製品はオレフィンが多く、酸化安定性が悪く、空気と接触すれば、時間の経過とともにガム質及びタール分が生成し、しかも臭気も悪化する。また、廃プラスチックや廃潤滑油の中には多くの添加剤が含まれ、熱分解すると、塩素、窒素、硫黄化合物が製品のなかに含まれ好ましくない。
【0033】
そこで、廃プラスチック、又は廃プラスチック及び廃潤滑油の熱分解により得られた熱分解生成油のうち、蒸留温度約170°C以上の留分については常温でメタノール溶媒と接触させ、上記留分に含まれる不純物をメタノール溶媒に移行させて分離するようにすると、2カ月経過しても沈殿物(ガム質、タール分)及び悪臭がほとんど発生せず、しかも塩素、窒素、硫黄化合物等の不純物が大幅に低減できることが確認された。この高品質化処理は廃潤滑油の再生に関する米国特許第5855768号(Stanciulescu,etal.)の技術を採用することができる。
【0034】
クリーンな鉱物油は極性がほとんどないが、不純物(塩素、窒素、硫黄、ガム生成物質等)の極性は高い。本発明ではかかる極性の差を利用してメタノール溶媒でこれら不純物を抽出している。これら不純物を分離する場合、熱分解及び蒸留と一緒に組み合わせて行うのがよい。特に、窒素の極性は高いため、窒素化合物の除去率は85wt%以上を示す。処理条件は常温、常圧で連続・多段抽出法で行うのがよく、メタノール溶媒は回収して再利用できる。回収率は98%以上である。抽残液はアスファルトに混合再利用できる。
【0035】
本件発明者らの先行出願(平成11年特許願第232106号)に係る廃プラスチックの熱分解法では溶融、脱塩化水素及び熱分解を1つの工場で処理することを前提としているが、本件発明の考え方によれば、分別収集された混合廃プラスチックはまず前処理工場において破砕し、比重分離した後、脱塩化水素工程において高嵩比重の脱塩化水素プラスチックとすることができ、次いで熱分解、蒸留、必要に応じて高品質化を行う大規模工場に集め、熟練した作業者によって安全に高品質の油化を行うことができる。前処理工場は各地に分散させるのがよい。また、廃潤滑油についても脱水後、本例の熱分解法によって処理することができる。
【0036】
即ち、処理する廃プラスチックは粗破砕の状態で熱分解軽質油(溶剤)と接触させ、ほぼ150°Cに加温すると溶解し、加圧式脱塩化水素反応槽へ導入すると、熱分解工程とは別工程において高効率で脱塩化水素の処理を行うことができる。オートクレーブにて試料ポリプロピレン(90wt%)/塩化ビニル(10wt%)の脱塩化水素実験を行ったところ、温度320°C、滞留時間2時間で、99%の脱塩化水素率が得られた。攪拌なしで圧力は最高50.0×104Pa(5.1kgf/cm2)を示した。塩化水素分圧が高いほど脱塩化水素率は高くなるので、加圧(3〜5kgf/cm2)法を採用する。また、脱塩化水素するとき、ポリスチレン樹脂の軽質油留出を防止するため、脱塩化水素反応槽の運転温度と圧力は軽質油が蒸発しないよう調整する。更に、反応槽で塩素のショートパスを防止する為、反応槽は少なくとも2基設けて切換え方式にて対応するのがよい。
【0037】
本発明に係る廃プラスチックの熱分解法は、塩分を含む汚れの付着した混合廃プラスチックを溶融及び脱塩化水素処理した後に熱分解することにより、廃プラスチックを油化するにあたり、混合廃プラスチックから金属及び陶器類を分離するとともに、混合廃プラスチックを20mm以下の粒径に破砕し、所定量の水とほぼ60°Cに加温したポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油、又はパラフィンリッチな鉱物油とを用い、発泡ポリスチレンを減容するとともに、混合廃プラスチックを洗浄して汚れに含まれる塩分を水に移行させ、脱水を行った後、混合廃プラスチックの破砕片を比重1.05〜1.06の比重分離液によって油化に適するプラスチック片を浮上させ、油化に適しないプラスチック片を沈降させることにより油化に適した廃プラスチックを回収し、ほぼ150°Cに加温した熱分解軽質油を溶剤として上記回収した廃プラスチックを溶解するとともに減容した後、該溶解・減容した廃プラスチックを上記熱分解軽質油とともに、温度ほぼ300°C、滞留時間ほぼ1時間の条件下、29.4×104Pa〜49.0×104Pa(3〜5kgf/cm2)の圧力範囲に加圧して、脱塩化水素反応を行い、該溶融・脱塩化水素を行った廃プラスチックを熱分解槽にて熱分解しうる温度範囲のうちの低温度で廃プラスチックのマイルド熱分解を行わせて廃プラスチックの半部を油化し、その残渣を熱分解槽から抽出し、廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの高温度で残渣のハード熱分解を行わせて残渣を油化させるようにしたことを特徴とする。
【0038】
溶融・脱塩化水素処理以外は第1の発明(請求項1)と実質的に同様であり、それらの説明もそのまま適用されるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
また、発泡ポリスチレンの処理法として溶剤等による溶解ではなく、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油(蒸留範囲100〜250°C)又はパラフィン系油(灯油留分)と温度約60°Cで接触させることにより、短時間(約30秒)で脱泡・減容し、餅状の樹脂の固まりが槽底に得られる。1リットルの油で発泡スチロール約3Kgを減容化できる。この樹脂の固まりの表面は油が付着しているため、真空加熱等で分離すれば、再生樹脂が得られる。
【0040】
本発明によれば、沸点100°C〜250°Cのポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油、又はパラフィンリッチな鉱物油を約60°Cに加温し、該熱分解軽中質油又は鉱物油と発泡スチロールとを接触させて脱泡・減容し、更に該減容物を溶融真空脱気して再生ポリスチレン樹脂を得るようにしたことを特徴とするポリスチレン樹脂の再生方法を提供することができる。
【0041】
発泡ポリスチレンの減容は約60°Cと低温で行われ、熱エネルギーは小さく、再生樹脂の熱劣化は全く受けていない。使用される液は安価(50〜80円/リットル)で約95%以上を回収、再利用できる。餅状の樹脂からの再生品化コストはリモネン等の溶解法と比較して設備が簡単なだけに経済的である。
【0042】
また、本発明によれば、塩分を含む汚れの付着した混合廃プラスチックを熱分解することにより、廃プラスチックを油化するにあたり、ほぼ150°Cに加温した熱分解軽質油を溶剤としてポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン樹脂を溶解するとともに減容した後、熱分解軽質油と塩化ビニルを含む混合廃プラスチックとを混合した状態で、温度約300°C、滞留時間約1時間の条件下、29.4×104Pa〜49.0×104Pa(3〜5kgf/cm2)の圧力範囲に加圧して、脱塩化水素反応を行うようにしたことを特徴とする廃プラスチックの脱塩化水素方法を提供できる。
【0043】
この場合も混合廃プラスチックの溶解・減容を溶解・減容機にて行った後、パラレルに設けた少なくとも2基の加圧式脱塩化水素反応器に交互に又は順次導入して溶剤・加圧下における脱塩化水素反応を行わせるのがよい。
【0044】
熱分解軽質油(溶剤)はほぼ150°Cの温度に加熱すると、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンは溶解するので、そのフィルム又は発泡品は粗破砕でよい。スラリー状態で脱塩化水素反応槽へ供給できるので、安全である。また、加圧状態で脱塩化水素を行うので、高い効率が得られる。
【0045】
熱分解軽質油(溶剤)は脱塩化水素の処理温度までは液体であるので、廃プラスチック昇温時における熱伝達率は高い。また、熱分解軽質油(溶剤)はリサイクルでき、反応槽の圧力を低下させれば、脱塩化水素時に分解した軽質油が確保され、スタートアップのみ準備すれば、後は少量の補給でよい。
【0046】
本脱塩化水素方法では溶解・脱塩化水素・減容まで処理でき、油化以外の用途にも適用できる。反応槽は少なくとも2基設けてあるので、塩素分のショートパスはなく、安定した運転が可能である。
【0047】
脱塩化水素時には反応槽の液面でかなりの泡が発生し、液面管理が困難となるが、加圧状態で行うことにより、泡発生は抑制され、安定した運転が可能となる。また、圧力調整弁、槽底排出弁の差圧を大きくすることにより、排出が容易となる。
【0048】
PVC樹脂の溶剤中における分解反応は、溶剤としてニトロベンゼン、リン酸トリクレジル、フタル酸ジオクリルなどを使用して行われている。それぞれ塩化水素発生量の生成割合が測定され、塩化水素は自己触媒的な働きをして脱塩化水素反応を促進していることが明らかにされている。また、熱分解軽質油(主にポリスチレン熱分解軽質油)はほぼ130°Cに加熱することにより、ポリオレフィン系樹脂と容易に溶解する。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン及びPVC樹脂はポリスチレンが混入することにより、分解開始温度が低下する。熱分解軽質油(主にポリスチレン熱分解軽質油)に加えPVC樹脂に含まれるフタル酸ジオクリルも溶剤とし、しかも29.4×104Pa〜49.0×104Pa(3〜5kgf/cm2)に加圧することにより、塩化水素濃度を上げて脱塩化水素反応を促進することができる。
【0049】
また、熱分解軽質油はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンを溶解してスラリー化するので、反応槽への導入をスムーズにでき、又反応槽で加圧下、比較的低い粘性液状で加熱するので、熱伝達も樹脂100%と比較して大幅に改善される。
【0050】
PVC樹脂を含む混合廃プラスチックは常圧で脱塩化水素(約300°C)を行う場合、ポリスチレン樹脂が一部分解し、塩化水素と一緒に留出して後処理が難しい。反応槽を加圧し、分解したポリスチレン樹脂等の軽質油を液化した状態で脱塩化水素反応を行い、塩化水素が反応槽から排出された後、順次槽内圧力を下げながら、分解した軽質油を凝縮器及び軽質油受槽へ送るのがよい。脱塩化水素された溶融樹脂は熱分解槽へ導入する。
【0051】
本発明によれば次のような効果が得られる。
混合廃プラスチックの分離について
1.発泡スチロールを含み、醤油、ソース、マヨネーズ等の汚れと水分の付着した混合廃プラスチックの場合でも発泡ポリスチレンのみを減容して嵩比重及び比重分離効率を改善でき、又汚れを洗浄し、脱水も同時に行うことが可能である。また、油中で発泡ポリスチレンと接触させるので、均一に接触し、確実に減容できる。
2.比重1.05〜1.06の比重分離液を使用しているので、従来は回収できていなかったポリスチレンやABS樹脂を回収することが可能となり、歩留まりを大幅に改善できる。
3.油化に適しないPVC樹脂、PET樹脂、熱硬化性樹脂を分離できるので、油化装置の経済性、安定性、製品性状を大幅に改善できる。
4.本発明の熱分解法の用途は広く、農業用のビニールやポリ塩化ビニル等も分離し、洗浄・脱水することが可能であり、従来法より経済的である。また、高炉還元材、セメントの燃料化にも適用できる。
5.油洗浄を採用したので、汚れ成分は落ち易く、廃水処理も大幅に緩和できる。
【0052】
第2の熱分解槽におけるカーボン対策について
1.第2の熱分解槽はほぼ460°Cで熱分解反応を行うので、短時間でハード熱分解を行うことができ、処理速度を大幅に改善できる。例えば、400°C近辺で10°C高くすれば、反応速度は2倍速くなる
2.カーボンが熱分解槽の内壁に付着しても、早期の場合にはスチームにて洗浄しながら除去でき、熱伝達率の低下を防止できる。
3.スチームによってカーボン残渣冷却と系外排出ができ、排出バルブの閉塞がなく、安全に作業ができる。
4.油化装置の残渣収率が大幅に減少する。
【0053】
熱分解生成油の高品質化について
熱分解油のうち、主要製品である灯油及び軽油留分の品質を大幅に改善できることとなる。即ち、
イ)酸化安定性は石油製品並みとなる。
ロ)不純物である有機塩素化合物、窒素化合物、硫黄化合物、臭素化合物が低減し、特に窒素化合物は80wt%以上低減する。
ハ)長期保存が可能となり、ボイラー燃料は勿論のこと、自家発電燃料として安心して使用できる。
【0054】
加圧式脱塩化水素処理について
1.加圧処理にて脱塩化水素効率を改善できる。
2.脱塩化水素時にポリスチレン樹脂は一部熱分解してしまうが、加圧することにより軽質油の回収が可能となり、油化率を向上できる。
3.塩化水素吸収塔の容量が小型になり、運転も安定化する。
4.加圧式脱塩化水素反応器にを少なくとも2基設けて交互に又は順次処理を行うようにしたので、塩素のショートパスを防止でき、脱塩化水素率が安定化する。
5.前処理工場を各地に分散化することができ、収集・運搬費のコスト低減を図ることができる。
6.廃棄物に関して地域ごとに責任をもたせることにより、コスト意識が高まり減量化につながる。
7.前処理施設は破砕、比重分離及び脱塩化水素工程であり、高度な技術は必要なく、安心して処理できる。
8.熱分解・蒸留操作については高度な技術を必要とするので、熟練した作業者によって大規模な処理を行うことにより、安全性、品質、経済性を大幅に改善できる。
9.廃潤滑油と廃プラスチックを混合処理することができ、再生品の性状はパラフィンリッチとなり、燃焼性が改善される。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図6は本発明に係る廃プラスチックの熱分解法の好ましい実施形態を示す。処理原料は一般廃棄物から廃プラスチックを分別収集したものであり、異物としてはアルミニウムを含む金属材料、PETボトル、ビン、陶器等、熱硬化性樹脂が含まれている。それらの異物及び混合廃プラスチックには醤油、マヨネーズ、ソース等の汚れや水分が付着している。
【0056】
図1に示されるように、分別収集された処理原料は破袋後、磁選機によって鉄系材料を、アルミ分離機によってアルミ缶等を分離し、さらに油化不適物である陶器片やガラス片を分離し、選別された混合廃プラスチックが破砕機によって約20mm径以下、比重分離の処理能力を上げるためにハイドロサイクロン方式を採用する場合は10mm径以下に破砕する。使用する前処理装置には公知の装置を使用することができる。
【0057】
次に、減容・洗浄・脱水機では、本体10は上端から廃プラスチックが投入されるとともに、一定量の水を注入される槽状をなし、本体10の内部にはポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の熱分解軽中質油が加熱器12によって約60°Cに加温され、循環ポンプ11によって循環されている。破砕された混合廃プラスチックの破砕片Pは減容・洗浄・脱水機の本体10に内に上端から連続的に投入され、約60°Cの熱分解軽中質油と接触し、こうして混合廃プラスチックの破砕片Pは攪拌され洗浄され、醤油、ソース、マヨネーズ等の汚れは除去され、又は発泡ポリスチレン樹脂は減容される。また、減容・洗浄・脱水機の本体10には上端から水w1が少量注入されており、洗浄された汚れのうちのの塩分は水w1側に移行される。
【0058】
洗浄され減容された混合廃プラスチックの破砕片Pと熱分解軽中質油及び水とは第1の移送コンベア13によって攪拌されながら縦型の第2の移送コンベア14に向けて移送され、汚れを含む熱分解軽中質油と塩水w2とは縦型コンベア14下端の分離板21によって廃プラスチックから容易に分離される。
【0059】
汚れた塩水w2と汚れを含む熱分解軽中質油とは分離板21下方の槽内において比重差によって容易に分離し、汚れた塩水w2は槽底から排出され、熱分解軽中質油は循環ポンプ11によって槽から引き抜かれ、フィルタ16でフィルタ処理され、加熱器12によって約60°Cに加温され、減容・洗浄・脱水機の本体10へ循環される。汚水の性状は生活廃水と同程度である。
【0060】
洗浄され減容された混合廃プラスチックの破砕片Pは縦型コンベア14によって上昇されて油切りされ、分散機23を経て比重分離槽15に連続的に送り込まれる。比重分離槽15にはエチレングリコールと水とをほぼ6:4の容量比で混合し溶解した常温の比重分離液17が循環されている。比重分離槽15に導入された混合廃プラスチックの破砕片Pのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びABS樹脂は比重分離液17との比重差によって浮上し、PVC樹脂、PET樹脂、熱硬化性樹脂は沈降する。後者の樹脂を効率的に沈降させるようにシャワー設備18が設けられ、シャワー液が浮上しているプラスチックに吹きかけられ、比重分離液17には一定速度の流れが与えられている。
【0061】
浮上したプラスチックP1及び沈降したプラスチックP2はそれぞれの遠心分離機20、19に移送され、脱液後乾燥される。脱液は遠心分離機20、19及び分離板22の受け槽から回収ポンプ24にて回収され、フィルタ25でフィルタ処理された後、比重分離槽15に循環される。
【0062】
次に、図2ないし図4に示されるように、油化に適したプラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びABS樹脂)P1とほぼ1wt%の塩化ビニルとは溶融・減容機30に導入される。この溶融・減容機30はジャケット31を備えた構造をなし、該溶融・減容機30には熱分解軽質油(溶剤)Oがほぼ150°Cに加熱されて供給されており、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンのフィルム及び発泡品はほぼ150°Cの熱分解軽質油(溶剤)Oと接触して溶解し、スラリー状となる。
【0063】
PVC樹脂の混入量は比重分離槽15で約1wt%まで低下しているが、この1wt%のPVC樹脂を限りなくゼロに近づけるために、2基の加圧脱塩化水素槽32、32をパラレルに設け、切替え方式で運用する。
【0064】
加圧脱塩化水素槽(加圧式脱塩化水素反応器)32はジャケット33を備えた構造をなし、内部には攪拌移送機41が設けられている。この加圧脱塩化水素槽32に熱分解軽質油とともに送り込まれたスラリー状のプラスチックは29.4×104Pa〜49.0×104Pa(3〜5kgf/cm2)の圧力範囲に加圧され、温度ほぼ320°Cまで昇温されてほぼ1時間滞留され、脱塩化水素処理がなされる。
【0065】
脱塩化水素反応が終了すると、圧力調整弁36によって系内圧力を低下させ、熱分解軽質油(溶剤)Oを受槽40で回収した後、槽底バルブ35を開とし、脱塩化水素されたプラスチックを第1の熱分解槽42に投入する。脱塩化水素ガスは吸収塔37で塩酸回収又は中和処理される。2基の加圧脱塩化水素槽32、32は交互に運転される。
【0066】
本例の油化システムは連続運転を想定している。第1の熱分解槽42にチャージされたプラスチックは温度ほぼ400°C、常圧にてほぼ1.5時間滞留され、半熱分解(マイルド熱分解)される。この第1の熱分解槽42はジャケット43を有する方式(又は釜方式)が採用され、ほぼ700°C以下の温度で熱供給される。
【0067】
半熱分解による分解ベーパは第1の熱分解槽42から蒸留塔44に送り込まれ、半熱分解の残渣はスクリュ45によって第1の熱分解槽42の槽底から第2の熱分解槽46に間欠的に送り込まれる。
【0068】
第2の熱分解槽46は温度ほぼ460°C、常圧でほぼ30分滞留され、攪拌機47によって攪拌されながら、高温のハード熱分解される。第2の熱分解槽46はジャケット48を有する方式(又は釜方式)が採用され、ハード熱分解のための熱はほぼ700°C以下の温度で供給される。熱分解ベーパは第2の熱分解槽46から第1の熱分解槽30に送られる。
【0069】
また、第2の熱分解槽46では図5に示されるように、攪拌機47軸及び羽根は中空状をなし、外部から低圧スチームSが供給されるようになっている。ハード熱分解時に生成したカーボン残渣は第2の熱分解槽46の内壁等に付着しているが、ハード熱分解が終了した後、槽底バルブ49を開き、羽根の先端の穴から低圧スチームを噴出させ、第2の熱分解槽46の内壁に付着したカーボンを除去しながら冷却し、スチーム圧力にて残滓を残渣受槽(系外)50に排出することができる。
【0070】
残渣受槽50内の低圧スチームは蒸発分離し、冷却器51で凝縮された後、ドレイン水槽52で油水分離される。残渣は冷却後、系外へ排出される。第1、第2の熱分解槽30、46から発生した熱分解ペーパは蒸溜塔44に導入されるが、その導入前に蒸溜塔44の塔底液で400°Cから300°Cまで急冷された後、蒸溜塔44へ導入され、分解ガス、軽質油、中重質油に分離される。分解ガスと軽質油の一部は高温ガス発生炉53の燃料として使用される。中重質油は冷却器56でほぼ40°Cまで冷却され、高品質化装置54に送り込まれる。
【0071】
中重質油は高品質化装置54においてメタノール媒体と所定の割合で常圧で、一定時間混合されて接触され、中重質油に含まれる不純物はメタノール媒体側へ溶解して中重質油から分離される。不純物を除去された中重質油は製品に、不純物を含む液は蒸発器にてメタノール媒体が蒸発されてリサイクルされ、残液は系外へ排出される。
【0072】
ABS樹脂熱分解の分解ガス中にはシアンガス、臭素ガスが含まれるので、分解ガスを冷却することなく、約100°Cのまま燃焼炉に送り込み、過剰酸素の下、1100°C以上の高温で燃焼する。
【0073】
本例のシステムでは廃潤滑油も同時に処理することができ、廃潤滑油を脱水した後、ほぼ400°Cに加熱して廃プラスチックと同じ第1の熱分解槽42に導入すればよい。
【0074】
図6は本発明に係るポリスチレンの再生に用いる廃発泡ポリスチレンの減容・洗浄・再生品化装置の好ましい実施形態を示し、基本的には図1に示される混合廃プラスチックの減容・洗浄・脱水機と同じ構成を有する。即ち、装置本体62は上端から廃発泡ポリスチレン60が投入されるとともに、一定量の水61が注入される槽状をなし、装置本体62の内部にはポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂の熱分解軽中質油が加熱器64によって約60°Cに加温され、循環ポンプ65によって循環されている。
【0075】
廃発泡ポリスチレン60は装置本体62に内に上端から連続的に投入され、約60°Cの熱分解軽中質油と接触し、廃発泡ポリスチレンは攪拌され洗浄され、醤油、ソース、マヨネーズ等の汚れは除去され、同時に減容される。また、装置本体62には上端から水61が少量注入され、洗浄された汚れのうちの塩分は水側に移行される。
【0076】
洗浄され減容された廃ポリスチレンと熱分解軽中質油及び水とは第1の移送コンベア63によって攪拌されながら縦型の第2の移送コンベア68に向けて移送され、汚れを含む熱分解軽中質油と塩水とは縦型コンベア68下端の分離板67によって廃ポリスチレンから容易に分離されて受槽69に貯留される。
【0077】
汚れた塩水と汚れを含む熱分解軽中質油とは受槽69内において比重差によって容易に分離し、汚れた塩水70は受槽69の槽底から排出され、熱分解軽中質油は循環ポンプ65によって受槽69から引き抜かれ、フィルタ66でフィルタ処理され、加熱器64によって約60°Cに加温され、装置本体62へ循環される。
【0078】
洗浄され減容された廃ポリスチレンは縦型コンベア68によって上昇されて油切りされ、脱気式溶融機71に連続的に送り込まれ、熱媒72によって所定の溶融温度まで加熱されつつ脱気され、スラリー状となる。このスラリー状のポリスチレンはスクリュー78によって脱気式溶融機71から冷却水槽14に送り出されて冷却され、ペレタイザ77によってペレット化されて再生製品とされる。
【0079】
他方、廃ポリスチレンに付着した熱分解軽中質油は脱気式溶融機71から蒸発し、凝縮器74で凝縮され、真空ポンプ76によって油受槽75内に吸引されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る廃プラスチックの熱分解法の好ましい実施形態における混合廃プラスチックの減容・洗浄・脱水機の構造例を示す図である。
【図2】 上記実施形態における熱分解工程のシステム構成例を示す図である。
【図3】 上記熱分解工程における脱塩化水素工程のシステム構成例を示す図である。
【図4】 上記脱塩化水素工程のシステムを全体構成例を示す図である。
【図5】 上記熱分解工程における第2熱分解槽の構造例を示す図である。
【図6】 本発明に係るポリスチレンの再生方法に用いるシステム構成例を示す図である。
【符号の説明】
10 減容・洗浄・脱水機の本体
13 第1の移送コンベア
14 第2の移送コンベア
15 比重分離槽
16 比重分離液
21 分離板
30 溶融・減容機
32 加圧脱塩化水素槽(加圧脱塩化水素反応器)
42 第1の熱分解槽
46 第2の熱分解槽
Claims (7)
- 塩分を含む汚れの付着した混合廃プラスチックを熱分解槽で回分にて溶融及び脱塩化水素処理した後に熱分解することにより、廃プラスチックを油化するにあたり、
混合廃プラスチックから金属及び陶器類を分離するとともに、混合廃プラスチックを20mm以下の粒径に破砕し、
所定量の水と60°Cに加温したポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油、又はパラフィン含有鉱物油とを用い、発泡ポリスチレンを減容するとともに、混合廃プラスチックを洗浄して汚れに含まれる塩分を水に移行させ、脱水を行った後、
混合廃プラスチックの破砕片を比重1.05〜1.06の比重分離液によって油化に適するプラスチック片を浮上させ、油化に適しないプラスチック片を沈降させることにより油化に適した廃プラスチックを回収し、
該回収した廃プラスチックを熱分解槽で溶融して脱塩化水素を行った後、熱分解しうる温度範囲のうちの400°Cまでの低温度で廃プラスチックの熱分解を行わせて廃プラスチックの半部を油化し、その残渣を熱分解槽から抽出し、廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの460°Cまでの高温度で残渣の熱分解を行わせて残渣を油化させるようにしたことを特徴とする廃プラスチックの熱分解法。 - 塩分を含む汚れの付着した混合廃プラスチックを溶融及び脱塩化水素処理した後に熱分解することにより、廃プラスチックを油化するにあたり、
混合廃プラスチックから金属及び陶器類を分離するとともに、混合廃プラスチックを20mm以下の粒径に破砕し、
所定量の水と60°Cに加温したポリエチレン及び/又はポリプロピレンの熱分解軽中質油、又はパラフィン含有鉱物油とを用い、発泡ポリスチレンを減容するとともに、混合廃プラスチックを洗浄して汚れに含まれる塩分を水に移行させ、脱水を行った後、
混合廃プラスチックの破砕片を比重1.05〜1.06の比重分離液によって油化に適するプラスチック片を浮上させ、油化に適しないプラスチック片を沈降させることにより油化に適した廃プラスチックを回収し、
150°Cに加温した熱分解軽質油を溶剤として上記回収した廃プラスチックを溶解するとともに減容した後、該溶解・減容した廃プラスチックを上記熱分解軽質油とともに、温度300°C、滞留時間1時間の条件下、29.4×104 Pa〜49.0×104 Pa(3〜5kgf/cm2 )の圧力範囲に加圧して、脱塩化水素反応を行い、
該溶融・脱塩化水素を行った廃プラスチックを熱分解槽にて熱分解しうる温度範囲のうちの400°Cまでの低温度で廃プラスチックの熱分解を行わせて廃プラスチックの半部を油化し、その残渣を熱分解槽から抽出し、廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの460°Cまでの高温度で残渣の熱分解を行わせて残渣を油化させるようにしたことを特徴とする廃プラスチックの熱分解法。 - 廃プラスチックを熱分解しうる温度範囲のうちの400°Cまでの低温度で熱分解を行わせ、半熱分解油の一部を熱分解槽内に残留させ、該残留した半熱分解油の保有熱によって熱量を供給するようにした請求項1又は2記載の廃プラスチックの熱分解法。
- エチレングリコールと水とを6:4の容量比で混合した比重分離液を用い、常温にて混合廃プラスチックの破砕片の比重分離を行うようにした請求項1ないし3のいずれかに記載の廃プラスチックの熱分解法。
- 高温度での残渣の熱分解の終了後、熱分解槽内に設けられた攪拌機の中空状の軸及び羽根を経て羽根先端からスチームを噴出させ、熱分解槽の内壁に付着したカーボンを除去しながら冷却し、スチーム圧力にて残滓を系外へ排出するようにした請求項1ないし4のいずれかに記載の廃プラスチックの熱分解法。
- 廃潤滑油を脱水した後、400°Cに加熱し、混合廃プラスチックとともに熱分解槽に導入して熱分解するようにした請求項1ないし5のいずれかに記載の廃プラスチックの熱分解法。
- 混合廃プラスチック又は、混合廃プラスチック及び廃潤滑油の熱分解により得られた熱分解生成油のうち、蒸留温度170°C以上の留分をメタノール溶媒と接触させ、上記留分に含まれる不純物をメタノール溶媒に移行させて分離するようにした請求項1ないし6のいずれかに記載の廃プラスチックの熱分解法。
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