本発明による車両用警報装置は、上記課題に対処するために為されたものであり、
自車両と障害物との相対関係を表す情報に基づいて、同自車両と同障害物との衝突の可能性に応じた衝突可能性指標値を取得する衝突可能性指標値取得手段と、
前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したときに運転者に衝突の可能性を認識させる警報制動を実行する警報制動実行手段と、
を備える車両用警報装置において、
前記警報制動実行手段は、
前記衝突可能性指標値が前記所定の閾値に達したときの前記自車両の加速度を取得するとともに、前記取得した加速度に基づいて前記警報制動実行中に目標とする加速度である目標加速度を決定する目標加速度決定手段と、
前記目標加速度を達成するように前記自車両の加速度を制御することにより前記警報制動を実行する加速度制御手段と、
を備える。
これによれば、自車両と障害物との相対関係を表す情報、例えば自車両と障害物との距離や相対速度等が各種センサ等によって取得され、自車両と障害物との相対関係を表す情報に基づいて衝突可能性指標値が取得される。そして、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したとき、つまり自車両と障害物との衝突の可能性が高くなったとき、運転者に危険を認識させるための警報制動が実行される。
この際、衝突可能性指標値が所定の閾値に達したとき(即ち、警報制動を開始する直前)の自車両の加速度が取得され、その加速度に基づいて「警報制動実行中の目標加速度」が決定され、その目標加速度が達成されるように自車両の加速度が制御される。
従って、警報制動開始直前において自車両が加速していたとしても、その加速度に基づいて目標加速度が適切な値に設定され得るから、同警報制動を開始する前後における加速度の変化量が過大とならないようにすることができる。その結果、運転者に過大な衝撃を与えることを回避できる。加えて、警報制動開始直前において自車両が定速走行又は減速していたとしても、その加速度に基づいて目標加速度が適切な値に設定され得るから、同警報制動を開始する前後における加速度の変化量が過小とならないようにすることができる。その結果、運転者に警報制動が行われていることを確実に認識させることができる。
この場合、
前記加速度制御手段は、
前記駆動力を、前記自車両に負の加速度をもたらす駆動力になるように変更する駆動力制御手段と、
前記目標加速度を達成するように制動力を変更する制動力制御手段と、
を備えることが好ましい。
これによれば、衝突可能性指標値が所定の閾値に達したときの自車両の加速度に基づいて決定された目標加速度が達成されるように、駆動力が負の加速度をもたらす駆動力(例えばエンジンブレーキ状態)になるように変更され、更に、制動力が変更される。この結果、自車両を加速させる駆動力が発生している状態においてその駆動力に打ち勝つ制動力を付与する必要がないので、無駄な制動力を発生させることを回避することができる。
この場合、
前記駆動力制御手段は、
前記警報制動中及び同警報制動終了後に、前記自車両の駆動力を同自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力に設定するように構成され、
前記目標加速度決定手段は、
前記衝突可能性指標値が前記所定の閾値に達したときの前記自車両の加速度の大きさが大きいほど前記警報制動を開始する前後の同自車両の加速度の変化量が大きくなるように前記目標加速度を設定するように構成されてもよい。
これによれば、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したとき、つまり自車両と障害物との衝突の可能性が高くなったとき、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したときの自車両の加速度の大きさが大きいほど、警報制動による加速度の変化量の大きさが大きくなるように目標加速度が決定され、警報制動中及び警報制動後においては、自車両の駆動力を自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力にする制御が実行される。
警報制動が行われると言うことは衝突の可能性が高いということである。よって警報制動後に制動力が0になったとしても、駆動力は自車両の走行に対し抵抗を発生するように設定されることが望ましい。従って、本発明は警報制動後も駆動力を自車両の走行に対して抵抗を発生するように維持することにより所定の負の加速度となるように構成している。
ところで、このような場合、警報制動開始前後の自車両の加速度の変化量が一定だとすると警報制動開始直前の加速度の大きさが大きいほど駆動力を自車両の走行に対して抵抗を発生させる駆動力に変更することによる加速度の減少量が大きいので、警報制動中に必要となる制動力は少なくなる。よって、警報制動終了時に制動力を0としたときの加速度の変化量は小さくなり、警報制動終了前後に発生する衝撃による警報効果は少なくなる。
これに対し、上記構成によれば、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したときの自車両の加速度の大きさが大きいほど、加速度の変化量が大きくなるため、警報制動中にある程度の制動力を発生させることができる。従って、警報制動終了前後の加速度変化量を適量にすることができる。その結果、運転者に警報制動が行われていることを確実に認識させることができる。尚、ここで言う自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力とは、例えば、エンジンブレーキ状態における駆動力である。また、警報制動は、例えば、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達した時点から所定時間(一定時間又は可変時間)だけ経過した時点の間に行われる。
この場合、
前記目標加速度決定手段は、
前記目標加速度を前記自車両の駆動力を同自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力とした場合の加速度にするように構成されることが好ましい。
警報制動中において、警報制動開始直前の自車両の加速度が十分大きいと、警報制動中の衝撃が十分であり(即ち、警報制動開始時に自車両の駆動力を同自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力に設定することによりもたらされる加速度と、警報制動開始直前の加速度と、の変化量(の大きさ)が十分に大きく)、警報制動終了時に制動力を0としたときに加速度が変化しなかったとしても十分な警報効果を見込める。このような場合、前記目標加速度を、前記自車両の駆動力を同自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力とした場合の加速度よりも小さくしてしまうと、警報制動のために無駄な制動力を発生させていることになり、且つ、運転者が違和感を覚えるおそれもある。よって上記構成のように、前記目標加速度を「前記自車両の駆動力を同自車両の走行に対して抵抗を発生する駆動力とした場合の加速度」に設定することが好適である。これにより、無駄な制動力の付与を回避しながら、適切な警報制動を行うことができる。
本発明において、
前記目標加速度決定手段は、
前記衝突可能性指標値が前記所定の閾値に達したときの前記自車両の加速度から予め定められた所定の値を減じた値を前記目標加速度とするように構成されることが好ましい。
これによれば、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したとき、つまり自車両と障害物との衝突の可能性が高くなったとき、前記衝突可能性指標値が所定の閾値に達したときの自車両の加速度から所定の値(所定の正の値)を減じることで目標加速度が算出される。
従って、警報制動開始前後における加速度の変化量が常に一定であるために、運転者に加わる衝撃も一定にすることができる。その結果、加速度の変化が大きすぎる場合に運転者が違和感を覚えてしまうという問題や、加速度の変化が小さすぎる場合に警報効果が小さくなってしまうという問題を回避することができる。
更に、本発明において、
前記衝突可能性指標値取得手段は、
前記自車両が進行する方向に存在する障害物と同自車両とが衝突するまでの時間である衝突予測時間を前記衝突可能性指標値として取得する衝突予測時間取得手段を備え、
警報制動実行手段は、
前記取得された衝突予測時間が所定の値以下になったときに前記衝突可能性指標値が前記所定の閾値になったと判定して前記警報制動を実行するように構成されることが好ましい。
これによれば、自車両と障害物との相対関係を表す情報から自車両進行方向に存在する障害物に衝突するまでの予測時間である衝突予測時間が取得され、衝突予測時間が所定の値以下になった場合に、駆動力及び制動力の少なくとも何れか一方の制御が行われることで警報制動が実行される。従って、運転者に適切なタイミングにて警報を与えることができる。
以下、本発明による車両用警報装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用警報装置10の概略構成を示している。
この車両用警報装置10は車両(自動車である自車両)11に搭載されている。車両11は右前輪12FRと、左前輪12FLと、右後輪12RRと、左後輪12RLと、エンジン14と、エンジン14のスロットル弁を駆動するスロットル弁アクチュエータ16と、油圧回路22と、右前ホイールシリンダ24FRと、左前ホイールシリンダ24FLと、右後ホイールシリンダ24RRと、左後ホイールシリンダ24RLと、ブレーキぺダル26と、マスタシリンダ28と、を備えている。
また、この車両用警報装置10は電子制御装置(以下、ECU)30と、レーダセンサ32と、車速センサ34と、加速度センサ36と、車両前方カメラ38と、運転者顔向きカメラ40と、警報灯42と、を備えている。
操舵輪である右前輪12FR及び左前輪12FLは運転者による図示しないステアリングホイールの転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のステアリング装置により右タイロッド及び左タイロッドを介して操舵されるようになっている。
また、各車輪の制動力は、オイルリザーバ、オイルポンプ及び種々の電磁弁等によって構成されている油圧回路22により、各ホイールシリンダの制動圧が変更されることによって制御されるようになっている。マスタシリンダ28は運転者によるブレーキペダル26の操作に応じて駆動され、油圧回路22を通じて各ホイールシリンダの制動圧を変更するようになっている。なお、後述するように電気制御装置30により制動力目標値に応じて油圧回路22を介する制動圧の変更が行われている場合であっても、運転者のブレーキペダル26の操作に基づく制動圧の方が高ければ、運転者のブレーキペダル操作に基づく制動圧にて制動力が付与される。
ECU30は、互いに接続されたCPU、CPUが実行するプログラム及びマップ(ルックアップテーブル)等を予め記憶したROM、CPUが必要に応じてデータを一時的に格納するRAM、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納されたデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM及びADコンバータを含むインターフェース等からなるマイクロコンピュータである。
ECU30はレーダセンサ32と、車速センサ34と、加速度センサ36と、車両前方カメラ38と、運転者顔向きカメラ40と接続され、CPUに各センサ及びカメラからの信号を供給するようになっている。
また、ECU30は警報灯と接続され、CPUの指示に応じて警報灯42に警報灯点灯信号を送出するようになっている。更に、ECU30は、スロットル弁アクチュエータ16と接続され、CPUの指示に応じてスロットル弁アクチュエータ16にスロットル弁駆動信号を送出し、スロットル弁の開度を制御するようになっている。更に、ECU30は、油圧回路22に備えられた図示しない電磁弁と接続され、CPUの指示に応じてこれらの電磁弁に駆動信号を送出することによって各ホイールシリンダの制動圧を制御するようになっている。
レーダセンサ32は、車両(自車両)11の前部に設けられたミリ波を探知波とするミリ波レーダであり、前方の車両や道路標識等の障害物を検出し、その障害物と車両11との相対距離及び相対速度を検出し、検出値を信号としてECU30に送出するようになっている(例えば特開2005−31967号公報を参照)。
車速センサ34は車両11の所定の位置に備えられ、車両11の速度を検出し、検出値を信号としてECU30に送出するようになっている。加速度センサ36は車両11の所定の位置に備えられ、車両11の前後方向の加速度を検出し、検出値を信号としてECU30に送出するようになっている。
車両前方カメラ38は、車両11の前方の左右に設置された2台のCCDカメラで構成されており、2台のカメラの視差を利用して、前記ミリ波レーダで検出した障害物を画像データとして認識することにより障害物の位置をより正確に検出し、検出値を信号としてECU30に送出するようになっている。運転者顔向きカメラ40は、車両11のステアリングコラムに設置されたCCDカメラであり、運転者の顔を撮影し、画像データを信号としてECU30に送出するようになっている。ECU30のCPUは、得られた画像データを処理することにより、運転者の顔の向きを検出し、運転者がわき見をしているか否かの判定を行うようになっている。
(作動の概要)
次に本発明の実施形態に係る車両用警報装置10の作動の概要について説明する。なお、本実施形態においては、説明を簡単にするために障害物は車両11の前方の正面に存在するものとする。
車両用警報装置10は車両11の障害物との衝突の回避及び被害の軽減のために状況に応じて警報制動と被害軽減制動の二種類の制動を行う。車両用警報装置10は警報制動及び被害軽減制動を実行するか否かを、障害物との衝突予測時間(現時点から衝突までに要する時間)tによって決定する。車両用警報装置10は衝突予測時間tを、自車両と障害物との相対距離Lを自車両と障害物との相対速度Vで除することにより算出する。車両用警報装置10における警報制動や被害軽減制動はエンジン14による駆動力を減じたり、ホイールシリンダの制動圧を増加させて制動力を増加させることにより行う。
例えば、図2に示すように、衝突予測時間がT1に到達し、且つ運転者がわき見をしていた場合に、車両用警報装置10は警報制動を所定時間(警報制動時間Tw)だけ実行する。また、衝突予測時間がT2(T2<T1)に到達した場合には車両用警報装置10は被害軽減制動を実行する。警報制動は運転者に対して警報を行うことが目的であるため、車両の緊急停止を目的とする被害軽減制動と比較して、加速度の減少量は少なくて良い。
ここで、本実施形態に係る車両用警報装置の作動の理解を容易にするため、先ず、従来の車両用警報装置の作動を図3を参照して説明する。前述したように、従来の車両用警報装置において、制動中の目標加速度bは負の一定加速度(図3においてはb=−1.5m/s2)であった。このとき、図3の(A)に示したように、警報制動開始直前において車両が加速(図3の(A)においては警報制動開始直前の加速度=1.0m/s2)中であると、警報制動開始前後の加速度の変化量Δは2.5m/s2となる。ここでは、警報制動開始前後の加速度の変化量Δが、2.0m/s2から3.5m/s2の範囲内であれば、警報制動として運転者に適切な衝撃を与えることができると仮定する。
しかしながら、図3の(B)に示したように警報制動開始直前において車両が定速走行していた場合の警報制動開始前後の加速度の変化量Δは1.5m/s2となり、運転者に与える衝撃が過小で、運転者に対する警報効果が小さくなってしまうおそれがあった。一方、図3の(C)に示したように警報制動開始直前において車両が急加速していた(図3の(C)においては警報制動開始直前の加速度=2.5m/s2)場合の警報制動開始前後の加速度の変化量Δは4.0m/s2となり、運転者に与える衝撃が過大で、運転者が違和感を覚えるおそれがあった。
そこで、本実施形態に係る車両用警報装置10は警報制動中の目標加速度を負の一定加速度に設定するのではなく、警報制動開始直前の加速度に基づいて目標加速度bを定めて警報制動を実行する。具体的に説明すると、図4の(A)に示したように警報制動直前の加速度aが閾値c(図4では0)以下の場合には車両用警報装置10は警報制動開始前後の加速度変化量Δ1がα=2.0m/s2となるように目標加速度bを定めて警報制動を実行する。即ち目標加速度bはa−αとなる。一方、図4の(B)に示したように、警報制動直前の加速度aが閾値cより大きい場合には車両用警報装置10は加速度変化量Δ1がαより大きいβ=2.5m/s2となるように目標加速度bを定めて警報制動を実行する。即ち、目標加速度bはa−βとなる。
更に、本実施形態に係る車両用警報装置10は、車両が加速されているときに制動力を付与して警報制動を行う無駄を排除し、且つ、警報制動終了後も衝突が予測されているから車両を減速させた方が得策であるという考えに基づき、警報制動中及び警報制動後においてエンジン14のスロットルバルブを全閉状態に維持する(即ち、エンジンブレーキ状態を達成する)ことにより、駆動力を車両に走行抵抗を発生する駆動力に設定する。従って、警報制動終了後において車両の加速度はe(e<0)となる。エンジンブレーキ状態とはエンジンへの燃料噴射量が少ない状態であり、好ましくは燃料噴射量を0にするフューエルカット状態であると良い。フューエルカット状態においては自車両の走行に対して最大の抵抗を発生する駆動力を発生する。
この結果、図4の(A)及び(B)に示したように、警報制動終了前後(警報制動を行うための制動力が0に戻される時点の前後)においても、車両に加速度変化量Δ2の加速度変化が生じる。この加速度変化量Δ2によっても、運転者に衝撃を与えることができるので、運転者に警報を発生させることができる。
ところが、図4の(C)に示したように、警報制動開始直前の加速度aが大きく、加速度aから加速度変化量β(=2.5m/s2)を減じて求めた目標加速度bが加速度eよりも大きい場合が生じる。この場合、車両用警報装置10は、目標加速度bに拘らず、駆動力を車両に走行抵抗を発生する駆動力に設定するとともに、制動力を0に設定する。この場合、警報制動終了前後の加速度変化量Δ2は0となるので、警報制動終了前後の衝撃による警報はできなくなる。しかしながら、警報制動開始前後の加速度変化量Δ1が図4の(A)及び(B)の場合と比較して大きくなるので、全体として運転者に与える衝撃(即ち、警報制動効果)を図4の(A)及び(B)の場合と同程度にすることができる。
このように本実施形態によれば、警報制動直前の加速度aに関わらず、常に同程度の衝撃を運転者に付与する警報制動を行うことができるため、警報によって運転者が違和感を覚えてしまう問題や、警報効果が小さくなってしまう問題を回避することができる。
次に、上記のように構成された車両警報装置10の実際の作動について、以下五つの場合に分けて説明する。
(A)障害物が自車両前方にない(若しくは、なくなった)場合
ECU30は、図5にフローチャートによって示した、自車両の障害物との衝突の回避及び被害の軽減のための車両の制動を開始するか否かを判定するルーチン(自動制動開始判定ルーチン)を所定時間の経過毎に実行するようになっている。
従って、所定のタイミングになると、ECU30は自動制動開始判定ルーチンのステップ501から処理を開始し、ステップ502に進んで、レーダセンサ32により自車両11の前方に障害物があるか否かの判定を行う。
いま、自車両11の前方に障害物が存在しないため、ECU30はステップ502において「No」と判定してステップ503に進み、スロットル弁の開度を最小値(スロットル弁全閉)とするスロットル弁全閉要求を停止する。このスロットル弁全閉要求は、後述するように、警報制動が実行される際に出力される。次いで、ECU30はステップ504に進み、制動力目標値を「0」に設定する。制動力目標値が「0」であるとき運転者によるブレーキペダル操作がない限り制動力は付与されない。
そして、ECU30はステップ505にて衝突予測フラグXの値を「0」に設定する。衝突予測フラグXの値が「0」であることは、衝突の可能性は低く、警報制動及び警報制動に続く衝突時の被害を軽減する制動(被害軽減制動)を実行する要求がないことを示す。衝突予測フラグXの値が「1」であることは、衝突の可能性が高く、警報制動及び被害軽減制動を実行する要求があることを示す。なお、衝突予測フラグXの値は、後述するように、衝突するまでの時間(衝突予測時間)tが警報制動開始時間T1以下になったときに「1」に設定される。
次に、ECU30はステップ506に進み、警報制動用制動力発生フラグXWBKの値を「0」に設定する。警報制動用制動力発生フラグXWBKの値が「0」であることは、警報制動のための制動力が発生されていない(警報制動のための制動力が0である)ことを示す。警報制動用制動力発生フラグXWBKの値が「1」であることは、警報制動のための制動力が発生されている(制動力が正の値である)ことを示す。その後、ECU30はステップ513に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
(B)前方に障害物があるものの、衝突予測時間が警報制動時間に達していない場合
この場合にも、ECU30は所定のタイミングにて自動制動開始判定ルーチンのステップ501から処理を開始し、ステップ502に進んで、レーダセンサ32により自車両の前方に障害物があるか否かの判定を行う。いま、前方に障害物がある状態なので、ECU30は「Yes」と判定し、ステップ507に進む。
ステップ507おいて、ECU30は衝突予測フラグXの値が「0」であるか否か判定する。この場合、衝突予測フラグXの値は先のステップ505にて「0」設定されている。従って、ECU30はステップ507にて「Yes」と判定し、ステップ508に進む。
ステップ508において、ECU30はレーダセンサ32と車両前方カメラ38により、自車両11と前方の障害物との距離Lを取得する。次いでECU30はステップ509へと進み、レーダセンサ32により、自車両と前方の障害物との相対速度Vを取得する。
次いで、ECU30はステップ510へと進み、自車両11と前方の障害物との距離Lを自車両11と前方の障害物との相対速度Vで除することにより、自車両11と前方障害物との衝突予測時間tを算出する。次いで、ECU30はステップ511へと進み、衝突予測時間tが警報制動開始時間T1以下であるか否かの判定を行う。衝突予測時間tは自車両11と障害物との衝突の可能性に応じた衝突可能性指標値である。よって、ECU30は、ステップ511にて衝突可能性指標値が警報制動を開始すべき閾値に達しているか否かを判定している。
いま、衝突予測時間tが警報制動開始時間T1に達していない状態であるので、衝突予測時間tが警報制動開始時間T1より大きい。よってECU30はステップ511において「No」と判定してステップ513へと直接進み、自動制動開始判定ルーチンを一旦終了する。
(C)前方に障害物があり、衝突予測時間が警報制動時間となった場合
この場合、ECU30は所定のタイミングにて自動制動開始判定ルーチンのステップ501から処理を開始してステップ502、ステップ507〜510に続くステップ511にて「Yes」と判定してステップ512に進み、衝突予測フラグXに「1」を代入する。換言すると、ECU30はステップ512において自動制動開始要求を出力する。次いで、ECU30は、ステップ513に進み、自動制動開始判定ルーチンを一旦終了する。
一方、ECU30は、図6にフローチャートによって示した、自車両11の障害物との衝突の回避及び被害の軽減のために運転者に衝突の可能性を伝えるための車両の制動を開始するルーチン(警報制動開始ルーチン)を所定時間の経過毎に実行するようになっている。
従って、所定のタイミングになると、ECU30はステップ601から警報制動開始ルーチンの処理を開始し、ステップ602に進んで、衝突予測フラグXの値が0から1に変化した直後であるか否かの判定を行う。現時点が図5のステップ512の処理が実行された直後であるとすると、衝突予測フラグXの値は「0」から「1」へ変化した直後である。従って、ECU30はステップ602にて「Yes」と判定してステップ603へと進む。
ステップ603において、ECU30は運転者がわき見をしているか否かの判定を行う。警報制動は、運転者がわき見をしている場合において実行される。具体的には、ECU30はステップ603において運転者顔向きカメラ40により取得された画像データの画像処理を行い運転者の顔の向きを検出し、運転者の顔が車両前方に向いていなかった場合にわき見であると判定する。わき見があると判断されなかった場合は警報制動を行う必要はないので、ECU30はステップ603にて「No」と判定し、ステップ613へと直接進んで、警報制動開始ルーチンを一旦終了する。
一方、ECU30はステップ603にて運転者がわき見をしていると判定した場合、同ステップ603にて「Yes」と判定してステップ604へと進み、加速度センサ36より自車両11の加速度aを検出する。次いで、ECU30はステップ605へと進み、加速度aが加速度閾値c(例えばc=0であるが、cは正の所定の値であれば良い)より大きいか否かの判定を行う。
加速度aが加速度閾値cより大きかった場合、ECU30はステップ605にて「Yes」と判定し、ステップ606に進んで警報制動中の目標加速度bを下記に示した(1)式を用いて算出し、ステップ608に進む。一方、速度aが加速度閾値c以下であった場合、ECU30はステップ605にて「No」と判定して、ステップ607に進み、目標加速度bを下記に示した(2)式を用いて算出する。
b=a−β…(1)
b=a−α…(2)
なお、α及びβは正の値であり、βはαよりも大きい値である。また、α及びβは過大な衝撃を発生させることなく、かつ、充分な警報効果を達成することができる値(例えば2.0〜3.5m/s2の範囲の値)に設定されている。これにより警報制動中の目標加速度bが警報制動直前(衝突予測時間が警報制動開始時間T1になったとき、即ち衝突可能性指標値が所定の閾値に達したとき)の自車両11の加速度aに基づいて決定される。更に具体的には、衝突可能性指標値が所定の閾値に達したときの自車両の加速度aの大きさが大きいほど警報制動を開始する前後の同自車両の加速度の変化量(の大きさ)が大きくなるように目標加速度bが設定される(β>α)。
次にECU30はステップ608に進み、スロットル全閉要求を出力する。このとき、ECU30は後述する図9のフローチャートによって示したスロットルバルブ制御ルーチンを実行することによりスロットルバルブの開度制御を行っているので、スロットル弁が全閉となるように制御される。
次いで、ECU30はステップ609に進み、目標加速度bがスロットル全閉時加速度e(e<0)より小さいか否かを判定する。スロットル全閉時加速度eとは、スロットルバルブが最小開度(全閉)に維持されたときに自車両11に生じる加速度である。スロットル全閉時加速度eは一定値でも良く、現時点の車速、シフト位置及び路面傾斜角度等に基づいて求められても良い。目標加速度bがスロットル全閉時加速度eより小さい場合には、ECU30はステップ609において「Yes」と判定し、ステップ610に進み、(b−e)に相当する値(加速度の大きさ|b−e|だけ自車両11を減速するために必要な制動力)を制動力目標値に設定する。これによって(図示しない制動力制御ルーチンにより、制動力目標値に応じた制動力が発生するように)油圧回路22の電磁弁に駆動信号が送出され、各ホイールシリンダの制動圧が制御されることにより制動力が発生される。この結果、自車両11の加速度が目標加速度bに一致させられる。これにより、警報制動前の加速度aの大きさが小さければ小さいほど目標加速度bが小さくなる(負の値であって絶対値が大きい値となる)ため、制動力目標値の大きさは大きくなり、自車両11に付与される制動力の大きさは大きくなる。
次に、ECU30はステップ611に進み、警報制動のために制動力を自車両11に付与している状態であることを示すための警報制動用制動力発生フラグXWBKに「1」を代入し、ステップ613に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、自車両11の加速度が加速度aから目標加速度bに変更される。換言すると、自車両11の加速度は加速度aが閾値cより大きい場合は、加速度aからβを減じた加速度へ、加速度aが閾値c以下である場合は、加速度aからαを減じた加速度へ変更される。
また、目標加速度bがスロットル全閉時加速度e以上であった場合は、ステップ609においてECU30は「No」と判定し、ステップ612にて制動力目標値を「0」にし、ステップ613に進んで警報制動開始ルーチンを一旦終了する。従って、この場合、エンジンブレーキのみによる警報制動が行われる。以上により、目標加速度bが設定され、スロットル全閉及び制動力の付与が行われることによって、警報制動が開始される。
ステップ609においてECU30が「Yes」と判定し、ステップ610の処理により、制動力を自車両に付与した場合には、その制動力の付与を解除することで警報制動を終了する。そのために、ECU30は、図7にフローチャートによって示した、警報制動終了ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。
従って、所定のタイミングになるとECU30はステップ701から警報制動終了ルーチンの処理を開始し、ステップ702に進んで警報制動用制動力発生フラグXWBKの値が「1」であるか否かを判定する。いま、警報制動のために(目標加速度bを実現するために)制動力目標値を0でない値((b−e)に相当する値)に設定してから所定の警報制動時間Twが経過していないものとして説明を続ける。この場合、図6の警報制動開始ルーチンのステップ611にて警報制動用制動力発生フラグXWBKの値は「1」に設定されている。従って、ECU30はステップ702にて「Yes」と判定し、ステップ703へと進む。
ステップ703においてECU30は、警報制動用制動力発生フラグXWBKの値が0から1へ変化してから所定の警告制動時間Twが経過しているかどうかの判定を行う。前述の仮定によれば、制動力の付与を開始して警告制動時間Twがまだ経過していないため、ECU30は、ステップ703において「No」と判定し、ステップ706へと直接進んで警報制動終了ルーチンを一旦終了する。
その後、時間が経過して制動力の付与を開始してから警告制動時間Twが経過した場合、ステップ703においてECU30は「Yes」と判定し、ステップ704へと進む。ステップ704において、ECU30は制動力の付与を停止するために制動力目標値を0に設定し、ステップ705に進んで警報制動用制動力発生フラグXWBKに0を代入し、ステップ706へと進んで警報制動終了ルーチンを一旦終了する。この段階にて警報制動が終了する。これにより、警報制動のための制動力及びエンジンブレーキによる負の駆動力が自車両11に加わっていた状態から、エンジンブレーキによる負の駆動力のみが自車両11に加わる状態に変更される。よって、自車両11が(e−b)だけ加速することにより運転者に衝撃が加えられるため、運転者が警報を認識することができる。
ところで、警報制動が開始された後、運転者が衝突の可能性を認識して操舵操作及び/又は制動操作等の衝突回避操作を行った場合、或いは、障害物である先行車が進路変更を行った結果、自車両11の前方に障害物が存在しなくなる場合がある。この場合、車両用警報装置10は被害軽減制動を行う必要がない。一方、運転者が衝突回避操作を行わず又は先行車が進路変更を行わない等、状況が変化しなければ、車両用警報装置10は被害軽減制動を実行する。
この被害軽減制動を実行するため、ECU30は、図8にフローチャートによって示した、被害軽減制動ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。いま、警報制動がなされた後も障害物が存在していて、且つ被害軽減制動が必要なタイミングになってない状態であるとして説明を続ける。
所定のタイミングになると、ECU30はステップ801から被害軽減ルーチンの処理を開始し、ステップ802へと進んで、衝突予測フラグXの値が「1」であるか否かの判定を行う。衝突予測フラグXの値は、衝突回避操作等によって前方に障害物が存在しなくなったとき、図5のステップ502及びステップ505により「0」に設定される。これに対し、障害物が依然として存在していれば、ステップ505は実行されないので、衝突予測フラグXの値は「1」に維持されている。従って、前述の仮定によれば、衝突予測フラグXの値が「1」のままであるから、ECU30はステップ802において「Yes」と判定し、ステップ803へと進む。
ステップ803において、ECU30は衝突予測フラグXが「0」から「1」へ変化した後、警報制動時間T1から被害軽減制動時間T2を減じた時間であるΔTが経過したか否かの判定を行う。換言すれば、ECU30は現時点が被害軽減制動時間T2に到達しているか否かの判定を行う。前述の仮定に従えば、現時点は被害軽減制動時間T2に到達していない状態、即ち衝突予測フラグXが「0」から「1」へ変化した後、ΔTが経過していないから、ECU30はステップ803において、「No」と判定し、ステップ805へと進んで被害軽減ルーチンを一旦終了する。
その後、時間が経過して現時点が被害軽減制動時間T2に到達した場合、ECU30はステップ802に続くステップ803にて「Yes」と判定し、ステップ804へと進んで、被害軽減のための制動力を自車両11に加え、ステップ805へと進んで被害軽減ルーチンを一旦終了する。被害軽減のための制動力は、例えば、最大の減速度が実現されるように周知の方法に基づき設定される。
一方、警報制動開始後において衝突回避操作等によって前方に障害物が存在しなくなったとき、衝突予測フラグXの値は、図5のステップ502及びステップ505により「0」に設定される。従って、ECU30が図8のルーチンの処理をステップ801から開始してステップ802に進んだとき、ECU30はステップ802にて「No」と判定してステップ805に直接進む。この結果、被害軽減制動は実行されない。
(D)前方に障害物があり、且つ自動制動開始要求が既に出されている場合
この場合にも、ECU30は所定のタイミングにて自動制動開始判定ルーチンのステップ501から処理を開始して、ステップ502にて「Yes」と判定して、ステップ507に進み、ECU30は自動制動開始要求が出力されているか否かの判定を行う。いま、自動制動開始要求が既に出力されている状態であるため、ECU30はステップ507において「No」と判定し、ステップ513へと直接進み、自動制動開始判定ルーチンを一旦終了する。
また、所定のタイミングになると、ECU30はステップ601から警報制動開始ルーチンの処理を開始し、ステップ602に進んで、衝突予測フラグXが「0」から「1」に変化した直後であるか否かの判定を行う。この場合、既に自動制動開始要求が出力されているから、衝突予測フラグXが「0」から「1」に変化した直後ではない。よってECU30はステップ602において「No」と判定し、ステップ613へと進み、警報制動開始ルーチンを一旦終了する。
(E)その他の状態
警報制動用制動力発生フラグXWBKの値が「0」である場合は、警報制動のための制動力が自車両11に付与されていないので、警報制動のための制動力の付与を終了する必要もない。そのため、ECU30は図7に示した警報制動終了ルーチンのステップ702において「No」と判定し、ステップ706へと進んで同ルーチンを一旦終了する。
(スロットルバルブ制御ルーチン)
ECU30は、図9にフローチャートによって示した、エンジンのスロットルバルブを制御することにより車両11の駆動力を制御するルーチン(スロットバルブ制御ルーチン)を所定時間の経過毎に実行するようになっている。スロットルバルブの開度の大きさが大きいほど、車両11に付与される駆動力は大きくなる。
より具体的には、所定のタイミングになると、ECU30はステップ901から本ルーチンの処理を開始し、ステップ902へと進んで、運転者によるアクセルペダル操作量Accpを図示しないアクセルペダル操作量センサから取得する。次いで、ECU30は、ステップ903へと進んで、ステップ903の枠内に示したようなアクセルペダル操作量と目標スロットル弁開度の関係のマップを参照し、ステップ902にて取得したアクセルペダル操作量Accpから目標スロットル弁開度TAを取得する。
次いで、ECU30はステップ904へと進んで、スロットル全閉要求があるか否かの判定を行う。スロットル全閉要求があった場合には、ECU30はステップ904において「Yes」と判定し、ステップ905へと進んで目標スロットル弁開度TAに0を代入してステップ906へと進む。スロットル全閉要求がなかった場合には、ECUはステップ904において「No」と判定し、そのままステップ906へと進む。ステップ906においてECU30はスロットル弁の開度が目標スロットル弁開度TAとなるようにスロットル弁アクチュエータ16に駆動信号を送出し、ステップ907へと進んで一旦本ルーチンを終了する。このように、通常、目標スロットル弁開度TAはアクセルペダル操作量Accpの関数になっており、スロットル全閉要求があったときに目標スロットル弁開度TAが「0」になるようにスロットル弁アクチュエータ16が制御される。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る車両用警報装置10は、衝突予測時間tが警報制動時間T1に到達したときの自車両11の加速度に基づいて、警報制動中の目標加速度bを決定する。その上で、スロットルバルブを全閉することにより駆動力を0にする。即ち、駆動力を自車両11に負の加速度をもたらす駆動力(自車両11の前方の走行に対して抵抗を発生する駆動力)に設定する。更に、目標加速度bが達成されないと考えられる場合には制動力を付与する。その結果、警報制動開始直前において自車両11が加速していたとしても、その加速度に基づいて目標加速度bが適切な値に設定され得るから、同警報制動を開始する前後における加速度の変化量が過大とならないようにすることができ、運転者に過大な衝撃を与えることを回避できる。加えて、警報制動開始直前において自車両11が定速走行又は減速していたとしても、その加速度に基づいて目標加速度bが適切な値に設定され得るから、同警報制動を開始する前後における加速度の変化量が過小とならないようにすることができ、運転者に警報制動が行われていることを確実に認識させることができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において以下に述べるような種々の変形例を採用することができる。
例えば、上記実施形態の車両用警報装置10のECU30は、図6に示した警報制動開始ルーチンのステップ605において加速度aが加速度閾値cより大きいか否かの判定を行い、その判定結果から二種類の方法で目標加速度bを算出するようにしているが、二種類の閾値を用いて加速度aの区別を行い、三種類の方法で目標加速度を算出するようにしても良い。
具体的には、ECU30は図6のステップ603において「Yes」と判定した場合、図10に示したフローチャートの「S」に進み、その後「E」まで進んだ場合に図6のステップ608に進むようにプログラムを変更する。この場合、ECU30は「S」に続く、ステップ1001にて、加速度aが加速度閾値CHより大きいか否かの判定を行う。加速度aが加速度閾値CHより大きかった場合には、ECU30はステップ1001において「Yes」と判定しステップ1002に進み、図11の(A)に示したように加速度目標値bにスロットル全閉時加速度eを代入し、「E」まで進む。加速度閾値CHは正の値であり、自車両11の加速度がCHより大きいとき、急加速あると判定できる値に設定されている。
加速度aが加速度閾値CH以下であった場合には、ECU30はステップ1001において「No」と判定し、ステップ1003に進み、加速度aが加速度閾値CLより大きいか否かの判定を行う。加速度閾値CLは「0」以上の値であり、加速度閾値CHよりも小さい値(この例ではCL=0)に選ばれている。加速度aが加速度閾値CLより大きかった場合には、ECU30はステップ1003において「Yes」と判定しステップ1004に進み(図11の(B)に示したように)加速度目標値bにb1を代入し、「E」まで進む。
加速度aが加速度閾値CL以下であった場合には、ECU30はステップ1003において「No」と判定して、ステップ1005に進み、図11の(C)に示したように、加速度目標値bにb2を代入し、「E」まで進む。ここで、eは0より小さく、b1はeよりも小さく、b2はb1よりも小さい値である(b2<b1<e<0)。なお、b1はe−b1が正の値となればよく、b2より小さくても良い。
以上により、加速度aが加速度閾値CHより大きい場合においては、図11の(A)に示したように警報制動前後の加速度の変化量Δ3は(a−e)となる。また、加速度aが加速度閾値CH以下であり、且つ、加速度閾値CLより大きい場合には図11の(B)に示したように警報制動前後の加速度の変化量Δ3は(a−b1)となる。また、加速度aが加速度閾値CL以下である場合には、図11の(C)に示したように警報制動前後の加速度の変化量Δ3は(a−b2)となる。よって、加速度閾値CH、加速度閾値CL、b1及びb2の値を適切に設定すれば、加速度の変化量を適切な量にすることができる。
また、上記実施形態の車両用警報装置10は、図6のステップ605において警報制動直前の自車両11の加速度aが加速度閾値cより大きいか否かの判定を行い、その判定結果から二種類の方法で目標加速度bを算出するようにしているが、加速度aから所定の正の値xを減じた値を目標加速度bとするように算出することができる。これによれば、警報制動開始前後における加速度の変化量が一定であるために、運転者に加わる衝撃も一定にすることができる。
また、上記実施形態の車両用警報装置10は自車両11の加速度を変化させることで運転者に衝撃を与え、障害物と自車両との衝突の可能性を認識させているが、それに加え、障害物と自車両との衝突の可能性が高くなったときに、加速度を変化させるとともに、警告灯42を点灯させることができる。これによれば、より運転者に障害物と自車両との衝突の可能性を認識させやすくすることもできる。更に、警報制動中において自車両11の加速度を目標加速度bと一致させるように、加速度センサ36から取得した実際の加速度と目標加速度bとの大小に応じて警報制動中の制動力(制動圧)をフィードバック制御にしても良い。
また、上記実施形態の車両用警報装置10は、衝突時間がT1に到達し、且つ運転者がわき見をしていた場合に、警報制動を実行するようになっているが、わき見を検知しない場合であっても警報制動を実行するようにしても良い。これによれば、運転者顔向きカメラ40を備えない車両においても本発明を実施することができる。また、上記実施形態の車両用警報装置10は、運転者が運転に適していない状態としてわき見を検出しているが、その他の運転者の運転に適していない状態を検出して警報制動を実行しても良い。例えば、運転者の覚醒度を検出することにより、運転者の居眠りを検出した場合に警報制動を行うようにしても良い。
更に、衝突予測時間tが警報制動時間T1に到達したときに運転者に減速意思がないとき警報制動を実行しても良い。換言すれば、運転者に減速意思があるとき、即ち運転者による制動操作があるときは警報制動を制限するようにしても良い。これによれば、運転者が障害物と自車両との衝突の可能性を認識して制動操作をしているのにも関わらず、警報制動が実行されることで、運転者に違和感を与えてしまうことを防止できる。
なお、上記実施形態において図5に示した自動制動開始ルーチンのステップ508〜ステップ510は衝突可能性指標値取得手段及び衝突予測時間取得に相当している。図6に示した警報制動開始ルーチン及び図7に示した警報制動終了ルーチンは警報制動実行手段に相当している。
更に、図6に示した警報制動開始ルーチンのステップ604〜ステップ607は目標加速度決定手段に相当し、ステップ608〜ステップ612及び図7に示した警報制動終了ルーチンは加速度制御手段に相当している。
加えて、上記実施形態において図6に示した警報制動開始ルーチンのステップ608は駆動力制御手段に相当し、ステップ609〜ステップ611及び図7に示した警報制動終了ルーチンは制動力制御手段に相当している。
10…車両用警報装置、11…車両、12RR…右後輪、12FR…右前輪、12RL…左後輪、12FL…左前輪、14…エンジン、16…スロットル弁アクチュエータ、22…油圧回路、24RR…右後ホイールシリンダ、24FR…右前ホイールシリンダ、24RL…左後ホイールシリンダ、24FL…左前ホイールシリンダ、26…ブレーキペダル、28…マスタシリンダ、32…レーダセンサ、34…車速センサ、36…加速度センサ、38…車両前方カメラ、40…運転者顔向きカメラ、42…警報灯。